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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電線およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20240924BHJP
   H01B 13/14 20060101ALI20240924BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01B7/02 G
H01B13/14 B
H01B13/24 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021197355
(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公開番号】P2023072619
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2024-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】満永 章
(72)【発明者】
【氏名】平岡 重道
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-6622(JP,A)
【文献】実開昭62-120214(JP,U)
【文献】特開2001-291432(JP,A)
【文献】特開2012-104371(JP,A)
【文献】特開2007-138006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01B 13/14
H01B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周を珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被覆して絶縁されている電線の製造方法において、一般式 O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程と、前記珪酸ナトリウムの微小粒と合成樹脂材とを混合する混合工程と、前記珪酸ナトリウムの微小粒と合成樹脂材との混合物を前記被処理電線の外周に移送する移送工程と、前記混合物を前記合成樹脂材の融点以上の温度で加熱して前記多数個の珪酸ナトリウムの微小粒から多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒を得るとともに前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒が独立気泡状態となって前記合成樹脂材で囲堯されて前記被処理電線の外周を被覆して発泡絶縁層を得る混合物加熱工程と、前記発泡絶縁層とともに前記被処理電線を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする電線の製造方法。
【請求項6】
裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周を珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被覆して絶縁されている電線の製造方法において、一般式 O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒を得る微小粒加熱工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材とを混合する混合工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材との混合物を前記被処理電線の外周に移送する移送工程と、前記混合物を前記合成樹脂材の融点以上の温度で加熱して前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒が独立気泡状態となって前記合成樹脂材で囲堯されて前記被処理電線の外周を被覆する発泡絶縁層を得る混合物加熱工程と、前記発泡絶縁層とともに前記被処理電線を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする電線の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程の作業中に、若しくは前記冷却工程の終了後に、前記発泡絶縁層を水分遮断部材で被覆する表面処理工程を有していることを特徴とする請求項5または6に記載の電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が絶縁された電線とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪酸ナトリウム粒の発泡剤を合成樹脂材と混合してできた絶縁層で被処理電線の外周が被覆された電線として、特許文献1が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の珪酸ナトリウム粒は二珪酸ナトリウムの粉末などであって、この粉末をポリ塩化ビニルと溶融混練したペレットを導体の外周に用いて絶縁層を形成する被覆電線を製造して、その電線の燃焼試験を行うことが記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1の電線においては、二珪酸ナトリウムの粉末には水分が含まれておりこれが燃焼時の熱により気化し発泡すること、および、この作用により被覆材が膨張し強固な殻を形成して落下を防止することにより二珪酸ナトリウムの粉末は電線用難燃被覆組成物であることが記載されているので、珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が合成樹脂材で囲堯されてできた発泡絶縁層で被処理電線の外周を被覆して絶縁することは開示されていない。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-279065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するために、珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒を有する発泡絶縁層で裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周を被覆して電気絶縁性能の向上やノイズ発生防止が可能な電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の電線は、珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で裸電線若しくは絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周が被覆され絶縁されていることを特徴とする。同請求項2に記載の電線は、請求項1において、前記発泡絶縁層の表面には前記微小気泡粒が存在しないスキン層が形成されていることを特徴とする。同請求項3に記載の電線は、請求項1または2において、前記合成樹脂材はフッ素樹脂材であることを特徴とする。同請求項4に記載の電線は、請求項1から3の何れかひとつにおいて、前記発泡絶縁層が水分遮断部材で被覆されていることを特徴とする。同請求項5に記載の電線の製造方法は、裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周を珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被覆して絶縁されている電線の製造方法において、一般式 O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程と、多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒を得る微小粒加熱工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材とを混合する混合工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材との混合物を前記被処理電線の外周に移送する移送工程と、前記混合物を前記合成樹脂材の融点以上の温度で加熱して前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒が独立気泡状態となって前記合成樹脂材で囲堯されて前記被処理電線の外周を被覆する発泡絶縁層を得る混合物加熱工程と、前記発泡絶縁層とともに前記被処理電線を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする。同請求項6に記載の電線の製造方法は、裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線の外周を珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被覆して絶縁されている電線の製造方法において、一般式 O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒を得る微小粒加熱工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材とを混合する混合工程と、前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒と合成樹脂材との混合物を前記被処理電線の外周に移送する移送工程と、前記混合物を前記合成樹脂材の融点以上の温度で加熱して前記多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒が独立気泡状態となって前記合成樹脂材で囲堯されて前記被処理電線の外周を被覆する発泡絶縁層を得る混合物加熱工程と、前記発泡絶縁層とともに前記被処理電線を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする。同請求項7に記載の電線の製造方法は、請求項5または6において、前記冷却工程の作業中に、若しくは前記冷却工程の終了後に、前記発泡絶縁層を水分遮断部材で被覆する表面処理工程を有している前記冷却工程の作業中に、若しくは前記冷却工程の終了後に、前記発泡絶縁層を水分遮断部材で被覆する表面処理工程を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電線及びその製造方法によると、裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が絶縁された電線において、珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で前記被処理電線の外周が被覆され絶縁されている電線を容易に製造できて、電気絶縁性能の向上やノイズ発生防止が可能な電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電線の実施形態1を示す断面図である。
図2図1におけるA―A断面図であり、(A)は裸電線からなる被処理電線が絶縁された電線で、(B)は予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が絶縁された電線である。
図3】本発明の電線の実施形態2を示す断面図である。
図4図3におけるB―B断面図であり、(A)は裸電線からなる被処理電線が絶縁された電線で、(B)は予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が絶縁された電線である。
図5】本発明の電線の製造方法の実施形態1の製造工程を示す作業図である。
図6】本発明の電線の製造方法の実施形態2の製造工程を示す作業図である。
図7(A)は銅線が絶縁された電線の断面図で、(B)は発泡絶縁層の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(電線の実施形態1)
図1および図2(A)(B)は、被処理電線2、21が絶縁された電線の実施形態1を示す。
【0012】
電線1は、図1および図2(A)において裸電線からなる被処理電線2の外周が珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4が独立気泡の状態となって合成樹脂材5で囲堯された発泡絶縁層3で被覆されて絶縁されている。また、図1および図2(B)において、予め絶縁が施されている被処理電線21の外周が珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4が独立気泡の状態となって合成樹脂材5で囲堯された発泡絶縁層3で被覆されて絶縁されている。
【0013】
また、図1および図2(A)(B)において、発泡絶縁層3の表面には、微小気泡粒4が存在しないスキン層が形成されている。このスキン層の形成には、発泡絶縁層3に用いる合成樹脂材5の粘度を低くしてその融点以上の加熱により熱可塑性樹脂の溶融状や熱硬化性樹脂の液状で使用することにより行うが、押出成形装置(図示せず)により電線を製造する際には、押出成形装置のダイ(ダイス)の表面の摩擦係数を小さくする鏡面仕上げなどの表面処理や特開昭59-169825や特開昭63-216220に開示されている潤滑剤をダイ(ダイス)に供給するなどにより、合成樹脂材5の流動性をよくしておけばよい。
【0014】
(被処理電線)
図2(A)において、被処理電線2は、絶縁が施されていない電線(以下、裸電線という)で断面円形を図示するが、矩形状であってもよい。また、その被処理電線2の素材は、銅(含む合金)が例示できる。また、図2(B)において、被処理電線21は、予め絶縁が施されており、3本を図示するが、単数でも複数でもよく、エナメル電線が例示できる。
【0015】
微小粒と微小気泡粒との関係)
珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4は、一般式M O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩やその水溶性アルカリ珪酸塩に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせた水溶性アルカリ珪酸塩を乾燥処理して得た粒径500μm以下で、好ましくは粒径100μmの多数個の微小粒を更に加熱処理して得られ、その粒径は10μm~300μmである。
【0016】
微小気泡粒4の主成分は水ガラスであり、分子式Na O・nSiO xH O(nはモル比を示し、xは含有水分量を示す)で表される水ガラスの水溶液を加熱乾燥することにより水ガラス固形物ができている。その水ガラス固形物にはその表面に水分がなくなり多数個の独立気泡が発生しているが、長時間加熱させても固形物には水分が残留しており、その残量している水分を飽和水分として含水分の飽和量比率を表1に示すデータを得た。その結果、各号の水ガラスの水溶液は、データNO.1、NO.3及びNO.5のように含水分の飽和量比率が20%を超えた水ガラスにあっては、固形物が高粘度のゲル状で粉砕しにくいことが判明した。
【0017】
【表1】
【0018】
また、上記表1には記載しないが、各号の水ガラスを加熱乾燥し水分を蒸発させる過程でモル比を増加させていくと、含水分の飽和量比率が減少することも判明した。これは、水ガラスの水溶液の分子式Na O・nSiO xH (nはモル比を示し、xは含有水分量を示す)における式Na が関係していると考えられる。
【0019】
以上のことから、分子式Na O・nSiO xH (nはモル比を示し、xは含有水分量を示す)で表される水ガラスの水溶液で、モル比nが2.0~3.8で、含有水分量xが3~20%である水ガラスの水溶液を乾燥させてできた水ガラス固形物には独立気泡を有しており、これを珪酸ナトリウムの微小気泡粒4に含めている。
【0020】
水ガラス固形物や水ガラス含有固形物を前記表1に記載の加熱温度で加熱時間、加熱処理することにより独立気泡が得られ、上記の水ガラスの水溶液を用いることにより、多数個の発泡粒状物となった珪酸ナトリウムの微小気泡粒4が得られ、その粒径として500μm以下、好ましくは100μmの発泡粒状物を選定する。この場合、水ガラス含有固形物としては、分子式Na O・nSiO xH (nはモル比を示し、xは含有水分量を示す)で表される水ガラスの水溶液におけるモル比nが2.0~3.8で、含有水分量xが3~20%である水ガラスの水溶液に硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種又は2種以上組み合わせて水ガラスの重量に対し5~15%含有し溶解させた混合水溶液を乾燥させてできており、水ガラス含有固形物とすることにより多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒が損傷しにくくすることができる。
【0021】
(合成樹脂材)
合成樹脂材5は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂およびフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂やシリコン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が例示できる。また、これらの素材は2種以上の素材を混合してもよい。これらの合成樹脂材のうち、物理的特性において電気抵抗が高く、吸水率の低い、柔軟性のあるフッ素樹脂が好ましい。
【0022】
(電線の実施形態2)
図3および図4(A)(B)は、実施形態1に示す電線1における発泡絶縁層3が水分遮断部材6で被覆された電線11を示す。
【0023】
電線11は、図3および図4(A)において、図1および図2(A)に示す珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4が独立気泡の状態となって合成樹脂材5で囲堯された発泡絶縁層3で被処理電線2の外周が被覆されて絶縁された電線1において、発泡絶縁層3が水分遮断部材6で被覆されている。また、図3および図4(B)において、電線11は、図1および図2(B)に示す珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4が独立気泡の状態となって合成樹脂材5で囲堯された発泡絶縁層3で被処理電線21の外周が被覆されて絶縁された電線1にさらにその発泡絶縁層3が水分遮断部材6で被覆されている。この水分遮断部材6は、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニリレン樹脂、シリコンゴムなどの撥水作用のある素材が例示でき、水分遮断部材6により外部から水分が合成樹脂材5を介して浸透して被処理電線2、21の電気絶縁を低下させることおよび珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒4に損傷を与えることを防止することができる。
【0024】
(電線の製造方法)
本発明の電線の製造は、裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡の状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被覆されて絶縁されている電線や前記発泡絶縁層が水分遮断部材で被覆されている電線において、以下の通り行う。
【0025】
本発明の電線の製造装置は、図示しないが、一般に知られている電線の押出成形装置で、電線の実施形態1に記載の珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡の状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被処理電線の外周が被覆されて絶縁された電線が製造される。その製造に際して、発泡絶縁層は珪酸ナトリウム粒の発泡剤を有するので、前記発泡剤が外部の水分に影響されないように発泡絶縁層の合成樹脂材に吸水率が低い素材、例えばフッ素樹脂であることが好ましいが、発泡絶縁層の表面が合成樹脂材のスキン層が形成されて珪酸ナトリウム粒の発泡剤が吸水されないように水分から遮断されていることも好ましい。
【0026】
電線の実施形態2に記載の珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒が独立気泡状態となって合成樹脂材で囲堯された発泡絶縁層で被処理電線の外周が被覆されて絶縁された電線は、上記電線の実施形態1の押出成形装置により製造され、引き続き同押出成形装置のダイ(ダイス)中にフッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリ塩化ビニリレン樹脂、シリコンゴムなどの撥水作用のある素材を押し出して発泡絶縁層が水分遮断部材で被覆された電線が得られる。
【0027】
(電線の製造方法の実施形態1)
図5は、電線の製造方法の実施形態1を示し、以下の作業工程を有する。
【0028】
図5において、一般式 O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩若しくは硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせ水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程101と、珪酸ナトリウムの微小粒と合成樹脂材5とを混合する混合工程102と、珪酸ナトリウムの微小粒と合成樹脂材5との混合物を被処理電線2、21の外周に移送する移送工程103と、この混合物を合成樹脂材5の融点以上の温度で加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒から多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4を得るとともに多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4が合成樹脂材5で囲堯されて被処理電線2、21の外周を被覆する発泡絶縁層3を得る混合物加熱工程104と、発泡絶縁層3とともに被処理電線2、21を冷却する冷却工程105とを有する作業工程で電線1が得られ、好ましくは、冷却工程105の作業中に、若しくは冷却工程105の終了後に、発泡絶縁層3を水分遮断部材6で被覆する表面処理工程106を有する作業工程で電線11が得られる。
【0029】
(電線の製造方法の実施形態2)
図6は、電線の製造方法の実施形態2を示し、以下の作業工程を有する。
【0030】
図6において、一般式M O・nSiO (但し、Mはナトリウムやカリウムのアルカリ金属を示し、nはモル比を示す)で表される水溶性アルカリ珪酸塩若しくは硼砂、硼酸などの硼素化合物や水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水溶性金属化合物を1種または2種以上組み合わせた水溶性アルカリ珪酸塩を処理して形成した発泡剤を乾燥してできた珪酸ナトリウム固体を粉砕して多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を得る粉砕工程107と、多数個の珪酸ナトリウムの微小粒を加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4を得る微小粒加熱工程108と、多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4と合成樹脂材5とを混合する混合工程109と、多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4と合成樹脂材5との混合物を被処理電線2、21の外周に移送する移送工程110と、この混合物を合成樹脂材5の融点以上の温度で加熱して多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4が合成樹脂材5で囲堯されて被処理電線2、21の外周を被覆する発泡絶縁層 3を得る混合物加熱工程111と、発泡絶縁層3とともに被処理電線2、21を冷却する冷却工程112とを有する作業工程で電線1が得られ、好ましくは、冷却工程112中に、若しくは冷却工程112後に、発泡絶縁層3を水分遮断部材6で被覆する表面処理工程113を有する作業工程で電線11が得られる。
【0031】
(実施例の説明)
本発明の電線の製造方法の実施形態1にもとづき、水溶性アルカリ珪酸塩として水ガラス3号を用いて、モル比が3.16の珪酸ナトリウム水溶液を15~18重量%の含水分量となるように乾燥させてできた板状の珪酸ナトリウム固体を粉砕して微小粒を形成し(粉砕工程101)、この微小粒と20重量%のPFA樹脂の合成樹脂材5とを混合して(混合工程102)、微小粒とPFA樹脂の合成樹脂材5との混合物を断面円形の銅線の被処理電線2の外周に移送して(移送工程103)、300℃で加熱し粒径が150μmからなる多数個の珪酸ナトリウムの微小気泡粒4を有する発泡絶縁層3を得て(混合物加熱工程104)、冷却して(冷却工程105)、被処理電線2の外周に発泡絶縁層3が形成された電線1のサンプルを作成した。その電線1のサンプルを図2(A)に相当する断面となるようにニッパーで切断して、その断面をマイクロスコープで100倍に拡大して観察して図7(A)に記載の画像を得た。図7(A)に示す画像において中央の銅線にはニッパーで切断跡が撮像されているが、銅線の外周は発泡絶縁層3で被覆されていることが実証できた。また、その発泡絶縁層3の断面を観察したところ、発泡絶縁層3にはPFA樹脂の合成樹脂材に多数個の独立気泡が分布しており、その発泡絶縁層3の外周部位における表面には微小気泡粒が存在しないスキン層が形成されていることが発泡絶縁層3の一部断面を撮像した図7(B)に記載の画像に示すように実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は裸電線若しくは予め絶縁が施されている電線からなる被処理電線が珪酸ナトリウム粒の発泡剤でできた多数個の微小気泡粒を有する発泡絶縁層で被覆されて絶縁されてできた電線を構成して、各種電気電子機器や通信機器の電気接続用の電気接続線やケーブルなどの電気絶縁性能の向上やノイズ発生防止用として有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 11 電線
2、21 被処理電線
3 発泡絶縁層
4 微小気泡粒
5 合成樹脂材
6 水分遮断部材
101 粉砕工程
102 混合工程
103 移送工程
104 混合物加熱工程
105 冷却工程
106 表面処理工程
107 粉砕工程
108 微小粒加熱工程
109 混合工程
110 移送工程
111 混合物加熱工程
112 冷却工程
113 表面処理工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7