(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】自動車のサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 3/20 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
B60G3/20
(21)【出願番号】P 2021058035
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】本村 浩一
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347338(JP,A)
【文献】特開2006-192932(JP,A)
【文献】特開2006-347337(JP,A)
【文献】実開平2-065681(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0327219(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014211203(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、
上記ホイールサポートの上部と車体とを連結するアッパアームおよびリーディングアーム、および、上記ホイールサポートの下部と車体とを連結するトレーリングアームおよびロアアームを含むマルチリンク式の複数のサスペンションアームと、
車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバを含み、上記複数のサスペンションアームをそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持するサブフレームと、
このサブフレームを車体に連結する弾性マウントであって、上記サイドメンバの前側において左右の2箇所に設けられる前側弾性マウント、および、上記サイドメンバの後側において左右の2箇所に設けられる後側弾性マウントを有する弾性マウントと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、
上記複数のサスペンションアームの配置、および、上記複数のサスペンションアームのそれぞれの弾性ブッシュの硬さが、車輪沈み込み時に車輪がトーイン傾向になるように設定され、
車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時、上記サブフレームの上記後側弾性マウントに上記サスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力が、上記前側弾性マウントに上記サスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力よりも大きく、これらの合力が加わるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるような上記サブフレームの変位を許容するよう、上記後側弾性マウントの前後方向の硬さの値が上記前側弾性マウントの前後方向の硬さの値より大きい値に設定されている、ことを特徴とする自動車のサスペンション装置。
【請求項2】
車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、
上記ホイールサポートの上部と車体とを連結するアッパアームおよびリーディングアーム、および、上記ホイールサポートの下部と車体とを連結するトレーリングアームおよびロアアームを含むマルチリンク式の複数のサスペンションアームと、
車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバを含み、上記複数のサスペンションアームをそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持するサブフレームと、
このサブフレームを車体に連結する弾性マウントであって、上記サイドメンバの前側において左右の2箇所に設けられる前側弾性マウント、および、上記サイドメンバの後側において左右の2箇所に設けられる後側弾性マウントを有する弾性マウントと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、
上記複数のサスペンションアームの配置、および、上記複数のサスペンションアームのそれぞれの弾性ブッシュの硬さが、車輪沈み込み時に車輪がトーイン傾向になるように設定され、
上記ロアアームは、上記ホイールサポートの上記開口部の下方部分に連結されると共に上記サブフレームの後方側かつ下方側で上記サブフレームに連結され、
車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時、上記サブフレームの上記前側弾性マウントおよび上記後側弾性マウントに、上記サスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力が加わるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるような上記サブフレームの変位を許容するよう、上記後側弾性マウントの前後方向の硬さの値が上記前側弾性マウントの前後方向の硬さの値より大きい値に設定されている、ことを特徴とする自動車のサスペンション装置。
【請求項3】
上記サブフレームの前側および後側の弾性マウントには、それぞれ、平面視で所定の軸線上に並ぶ2つのすぐり部が形成され、上記前側および後側の弾性マウントは、それぞれ、上記軸線上の2つのすぐり部が車両前後方向に位置するように上記サイドメンバに設けられている、請求項1または請求項2に記載の自動車のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンション装置に関し、特に、後輪のマルチリンク式サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチリンク式サスペンションとして、5本のIリンク(以下、「アーム」という)を備え、その各アームの車体側の端部が、車体に連結されるサブフレームに連結され、各アームの車輪側の端部が、車輪を支持するホイールサポート(ハブキャリア)に連結されたものが知られている。このような5本のアームを備えたマルチリンク式サスペンションは、後輪の上下ストロークを除く5つの運動の自由度に対してそれぞれの要求に合わせて最適に拘束するよう各アームを配設することが可能であるので、性能的に高いポテンシャルを有している。
【0003】
このようなマルチリンク式サスペンションにおいて、旋回時などの車輪沈みこみ時にトーイン傾向となるようなジオメトリに設定して外乱時の安定性を出す技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、旋回初期にロールし始めた段階で旋回外輪にトーインが生じると、運転者にステアリング応答性が悪いと感じさせる懸念がある。特に、重心が高くロールが大きい傾向のあるSUV車両では、これが顕著となる。一方で、車両の操安性を維持するため、車輪沈み込み時(車輪が車体に対して上向きに変位したとき)のトーイン傾向を無くすことはできない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、旋回初期時、車輪がトーアウト方向に変位するようサブフレームを変位させて、車両安定性を維持すると共にステアリング応答性を向上させることができる自動車のサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、ホイールサポートの上部と車体とを連結するアッパアームおよびリーディングアーム、および、ホイールサポートの下部と車体とを連結するトレーリングアームおよびロアアームを含むマルチリンク式の複数のサスペンションアームと、車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバを含み、複数のサスペンションアームをそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持するサブフレームと、このサブフレームを車体に連結する弾性マウントであって、サイドメンバの前側において左右の2箇所に設けられる前側弾性マウント、および、サイドメンバの後側において左右の2箇所に設けられる後側弾性マウントを有する弾性マウントと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、複数のサスペンションアームの配置、および、複数のサスペンションアームのそれぞれの弾性ブッシュの硬さが、車輪沈み込み時に車輪がトーイン傾向になるように設定され、サブフレームの前側および後側の弾性マウントには、それぞれ、平面視で所定の軸線上に並ぶ2つのすぐり部が形成され、前側および後側の弾性マウントは、それぞれ、軸線上の2つのすぐり部が車両前後方向に位置するようにサイドメンバに設けられ、車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時、サブフレームの後側弾性マウントにサスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力が、前側弾性マウントにサスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力よりも大きく、これらの合力が加わるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるようなサブフレームの変位を許容するよう、後側弾性マウントの前後方向の硬さの値が前側弾性マウントの前後方向の硬さの値より大きい値に設定されている、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、駆動力が加わった状態で、運転者がステアリングを回し始めて、車輪に横力が発生し始めるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるようなサブフレームの変位を許容するようにし(そのような変位を許容するような前後の弾性マウントの硬さを設定し)、これにより、旋回初期時、車体のロールに起因するサスペンション自身のトーインをキャンセルしてトーアウトとすることができる。したがって、旋回初期時、車輪がトーアウト方向に変位するようサブフレームを変位させて、車両安定性を維持すると共にステアリング応答性を向上させることができる。
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、車輪を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部が形成されたホイールサポートと、ホイールサポートの上部と車体とを連結するアッパアームおよびリーディングアーム、および、ホイールサポートの下部と車体とを連結するトレーリングアームおよびロアアームを含むマルチリンク式の複数のサスペンションアームと、車幅方向左右両側でそれぞれ車両前後方向に延びる一対のサイドメンバを含み、複数のサスペンションアームをそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持するサブフレームと、このサブフレームを車体に連結する弾性マウントであって、サイドメンバの前側において左右の2箇所に設けられる前側弾性マウント、および、サイドメンバの後側において左右の2箇所に設けられる後側弾性マウントを有する弾性マウントと、を備えた自動車のサスペンション装置であって、複数のサスペンションアームの配置、および、複数のサスペンションアームのそれぞれの弾性ブッシュの硬さが、車輪沈み込み時に車輪がトーイン傾向になるように設定され、ロアアームは、ホイールサポートの開口部の下方部分に連結されると共にサブフレームの後方側かつ下方側でサブフレームに連結され、サブフレームの前側および後側の弾性マウントには、それぞれ、平面視で所定の軸線上に並ぶ2つのすぐり部が形成され、前側および後側の弾性マウントは、それぞれ、軸線上の2つのすぐり部が車両前後方向に位置するようにサイドメンバに設けられ、車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時、サブフレームの前側弾性マウントおよび後側弾性マウントに、サスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力が加わるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるようなサブフレームの変位を許容するよう、後側弾性マウントの前後方向の硬さの値が前側弾性マウントの前後方向の硬さの値より大きい値に設定されている、ことを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、まず、ロアアームは、ホイールサポートの開口部の下方部分に連結されると共にサブフレームの後方側かつ下方側でサブフレームに連結されているので、旋回初期時、接地面から車輪に加わる横力を主にロアアームが受け止め、その受け止めた横力がサブフレームの後方側かつ下方側に伝達され、これにより、サブフレームの後側弾性マウントにサスペンションアームを介して旋回外輪から入力される横力および駆動力の合力が、前側弾性マウントの合力よりも大きくなる。本発明においては、旋回初期時にこのような合力が発生するサスペンション装置において、駆動力が加わった状態で、運転者がステアリングを回し始めて、車輪に横力が発生し始めるとき、車輪をトーアウト方向に変位させるようなサブフレームの変位を許容するようにし(そのような変位を許容するような前後の弾性マウントの硬さを設定し)、これにより、旋回初期時、車体のロールに起因するサスペンション自身のトーインをキャンセルしてトーアウトとするようにしている。したがって、旋回初期時、車輪がトーアウト方向に変位するようサブフレームを変位させて、車両安定性を維持すると共にステアリング応答性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、サブフレームの前側および後側の弾性マウントには、それぞれ、平面視で所定の軸線上に並ぶ2つのすぐり部が形成され、前側および後側の弾性マウントは、それぞれ、軸線上の2つのすぐり部が車両前後方向に位置するようにサイドメンバに設けられている。
このように構成された本発明によれば、前側および後側の弾性マウントは、それぞれ、軸線上の2つのすぐり部が車両前後方向に位置するようにサイドメンバに設けられているので、サブフレームの車幅方向の微小な変位(トーアウト方向の変位)をより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動車のサスペンション装置によれば、旋回初期時、車輪がトーアウト方向に変位するようサブフレームを変位させて、車両安定性を維持すると共にステアリング応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図である。
【
図2】
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図である。
【
図3】
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
【
図4】本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図である。
【
図5】
図4のリアサスペンションの左側面図である。
【
図7】
図4のリアサスペンションを車幅方向内方から見た図である。
【
図8】リアサスペンションに入力される横力を主に説明するための斜視図である。
【
図9】リアサスペンションに入力される駆動力を主に説明するための左側面図である。
【
図10】リアサスペンションからサブフレームの前後の弾性ブッシュに入力される駆動力および横力を説明するための上面図である。
【
図11】本実施形態による自動車のサスペンション装置の旋回時の旋回外輪のトー角変化を比較例と共に示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を説明する。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、
図1乃至
図3により、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置の全体構成を説明する。
図1乃至
図3は、本発明の実施形態による自動車の後輪サスペンション装置1(以下、単にリアサスペンションという)を自動車の左右両側の後輪にそれぞれ適用した実施形態を示し、
図1は、本発明の実施形態による自動車のサスペンション装置を適用した自動車のリアサスペンションアッセンブリの斜視図であり、
図2は、
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの上面図であり、
図3は、
図1に示すリアサスペンションアッセンブリの後面図である。
本実施形態の自動車(車両)は、図示しないが、車体前部のエンジンルームにエンジンを搭載し、車体後部にディファレンシャルを配設して車軸(図示せず)により後輪2を駆動するようにした後輪駆動車である。
図1乃至
図3に示すように、後輪サスペンション装置1のリアサスペンションアッセンブリは、左右一対のリアサスペンション1とサブフレーム3を備えている。
【0016】
まず、リアサスペンション1の概略構成を説明する。
本実施形態のリアサスペンション1は、独立した5本のIリンク4~8によって後輪2のホイールサポート(支持部材、ハブキャリア)10を車体に対しストローク可能に連結したマルチリンク式のものである。サスペンション装置1は、仮想的に上方のアームを構成する前側のアッパリンク(以下、「アッパアーム」という)4、および、後側のリーディングリンク(以下、「リーディングアーム」という)5と、仮想的に下方のアームを構成する前側のトレーリングリンク(以下、「トレーリングアーム」という)6、および、後側のロアリンク(以下、「ロアアーム」という)7と、後述する仮想キングピン軸IK(
図5参照)周りの後輪2の回動変位を規制するトーコントロールリンク(以下、「トーコントロールアーム」という)8とを備えている。アッパアーム4、リーディングアーム5、トレーリングアーム6およびロアアーム7は、それぞれ車体側の連結部(44、52、60、68)を中心に上下に揺動することによって、ホイールサポート10及び後輪2が所定の軌跡に沿って上下にストロークするようになっている。
【0017】
また、そのような後輪2のストロークを許容しながら、同時に所定の付勢力及び減衰力を付与するための、コイルバネ12およびダンパ14を備えた緩衝装置16が設けられている。この緩衝装置16は、コイルバネ12とダンパ14とがほぼ同軸に配置された上下方向に長い円筒形状を有し、その上端部が車体に取り付けられている。緩衝装置16の下端部(ダンパ14の下端部)は、ロアアーム7に枢着されている。
また、サスペンション装置1には、左右のロアアーム7を連結するように延びるスタビライザーバー18が回動可能に取り付けられている。
【0018】
次に、サブフレーム3の概略構成を説明する。
サブフレーム3は、主に4つの鋼板製部材を平面視で矩形枠状に組み合わせて形成されており、それぞれ車幅方向に延びるフロントクロスメンバ20およびリアクロスメンバ22と、それらの左右両側の端部同士を連結するように車体の左右両側において前後方向に延びる一対のサイドクロスメンバ24、26を備えている。
【0019】
フロントクロスメンバ20は、車両上方から見て、直線状に車幅方向に延び、その車幅方向の両端部20aがそれぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各前端側の箇所に接合されている。フロントクロスメンバ20は、車両前後方向で見ると、その長手方向の中央部分が左右両端部よりも上方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。また、フロントクロスメンバ20の左右両端側には、それぞれサイドクロスメンバ24、26との接合部20aに近接した位置、かつ、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、アッパアーム4の取付座28およびトレーリングアーム6の取付座30が設けられている(
図4乃至
図6参照)。左右両側の取付座28には、それぞれ、アッパアーム4の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座30には、それぞれ、トレーリングアーム6の車体側の端部が連結されており、このような構成により、車輪2から各アーム4、6を介して伝達される横力をフロントクロスメンバ20で受け止めるようになっている。
【0020】
リアクロスメンバ22は、車両上方から見ると直線状に車幅方向に延び、その車幅方向の両端部22aがそれぞれ左右のサイドクロスメンバ24、26の各後端側の箇所に接合されている。リアクロスメンバ22は、
図3に示すように、車両前後方向に見るとその長手方向の中央部分が左右両端部よりも下方に位置するように全体に湾曲するアーチ形状に形成されている。リアクロスメンバ22の左右両端側には、各々サイドクロスメンバ24、26との接合部22aに近接した位置、かつ、サイドクロスメンバ24、26の上方側および下方側に、それぞれ、リーディングアーム5の取付座32およびロアアーム7の取付座34が設けられている(
図4、
図5参照)。左右両側の取付座32には、それぞれ、リーディングアーム5の車体側の端部が連結され、左右両側の取付座34には、それぞれ、ロアアーム7の車体側の端部が連結されており、このような構成により、車輪2から各アーム5、7を介して伝達される横力をリアクロスメンバ22で受け止めるようになっている。
【0021】
また、リアクロスメンバ22には、上面視で、各サイドクロスメンバ24、26の車幅方向内方、かつ、リアクロスメンバ22の後面側に、トーコントロールアーム8の取付座36が設けられている。左右両側の取付座36には、それぞれ、トーコントロールアーム8の車体側の端部が連結されている。
【0022】
左右のサイドクロスメンバ24、26は、それぞれ、車両上方から見て、その長手方向の中央部分が両端部に比べて車幅方向内方に位置するよう湾曲するとともに、側面視では、後端部から前端部にわたって車両前方に斜め下方に延びている(
図5参照)。これらのサイドクロスメンバ24、26の前側の部分には、上述した取付座28、30が設けられ、その後側の部分には、上述した取付座32、34が設けられている。
【0023】
また、サイドクロスメンバ24、26には、サブフレーム3全体を車体に弾性支持させるための弾性マウント38、40が設けられている、これらの弾性マウント38、40は、各サイドクロスメンバ24、26の前端部および後端部の計4箇所に設けられている。各弾性マウント38、40は、上下方向に軸線を有する円筒形状を有し、各サイドクロスメンバ24、26に形成された凹部に取り付けられている。各サイドクロスメンバ24、26において、各弾性マウント38、40は、車両上方から見て、前端部の弾性マウント38と後端部の弾性マウント40とを結ぶ直線が、車体前後方向の中心線CL(
図2にのみ示す)とほぼ平行になるように配置される。
【0024】
次に、
図4乃至
図7により、車両左側のリアサスペンション装置1について、各アーム4~8の配置構成を説明する。
図4は、本実施形態による車両左側のリアサスペンションの上面図であり、
図5は、
図4のリアサスペンションの左側面図であり、
図6は、
図4のリアサスペンションの正面図であり、
図7は、
図4のリアサスペンションを車幅方向内方から見た図である。車両右側のリアサスペンション装置1は、車両左側のリアサスペンション1と同じ構成を有しているので、以下では、その説明を省略する。
【0025】
まず、
図4乃至
図6に示すように、アッパアーム4は、その車体側の端部が弾性ブッシュ(ゴム製のブッシュであり、以下、「ブッシュ」という)42を介して上述した取付座28に連結されている。アッパアーム4は、車両上方から見て、車体側の連結部44から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪2側の連結部46では、アッパアーム4の車輪2側の端部がブッシュ48を介してホイールサポート10に連結されている。
【0026】
次に、リーディングアーム5は、その車体側の端部がブッシュ50を介して上述した取付座32に連結されている。リーディングアーム5は、車両上方から見て、車体側の連結部52から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部54では、リーディングアーム5の車輪2側の端部がブッシュ56を介してホイールサポート10に連結されている。
【0027】
このように、2本の上方のアーム4、5は、車両上方から見て、車体外方側に向かって互いに接近するように配置されている。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ42、50および車輪2側の各ブッシュ48、56にピロボールジョイントを採用している。
【0028】
次に、トレーリングアーム6は、その車体側の端部がブッシュ58を介して上述した取付座30に連結されている。トレーリングアーム6は、車両上方から見て、車体側の連結部60から車幅方向外方に向かうほど徐々に後方に位置するように後傾して延びている。車輪2側の連結部62では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ64を介してホイールサポート10に連結されている。
【0029】
次に、ロアアーム7は、その車体側の端部がブッシュ66を介して上述した取付座34に連結されている。ロアアーム7は、車両上方から見て、車体側の連結部68から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部70では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ72を介してホイールサポート10に連結されている。
【0030】
このように、2本の下方のアーム6、7は、車両上方から見て、車幅方向外方に向かって互いに接近するように配置されており、主にこの配置によって、後輪2にはその車両後方への変位に伴い幾何学的にトーインが付与されるようになる(前後力コンプライアンスステア)。すなわち、たとえば制動時などに路面からの制動力が後輪2に作用すると(車両後方に向く力が作用すると)、2本の下方のアーム6、7がそれぞれブッシュ56、64の撓みによって車体側の端部の周りにわずかに回動変位し、これにより、後輪2のアライメントはトーインの向きに変化する。
また、旋回時に車輪2に横力が加わると、主に下方のアーム6、7の各ブッシュ56、64が撓むことにより、車輪2がトーインの向きに変化するようになっている(横力コンプライアンスステア)。
本実施形態では、車体側の各ブッシュ58、66および車輪2側の各ブッシュ64、72にピロボールジョイントを採用している。
なお、本実施形態では、後述するように、旋回初期時、サブフレーム3の微小な変位により、車輪2がトーアウト方向に変位するようにしている。
【0031】
次に、トーコントロールアーム8は、その車体側の端部がブッシュ74を介して上述した取付座36に連結されている。トーコントロールアーム8は、車両上方から見て、車体側の連結部76から車幅方向外方に向かうほど徐々に前方に位置するように前傾して延びている。車輪2側の連結部78では、トレーリングアーム6の車輪2側の端部がブッシュ80を介してホイールサポート10に連結されている。
本実施形態では、車体側のブッシュ74および車輪2側のブッシュ80にピロボールジョイントを採用している。
【0032】
ここで、
図4乃至
図6に示すように、リアサスペンション1には、アッパアーム4の仮想延長線とリーディングアーム5の仮想延長線との交点P1と、トレーリングアーム6の仮想延長線とロアアーム7の仮想延長線との交点P2とを上下に結ぶ仮想キングピン軸IKが形成される。この仮想キングピン軸は、後輪2の操向方向(トー方向)への回動の瞬間回転中心である。
【0033】
次に、
図4乃至
図7により、ホイールサポート10の構成および各アームの取付構成を説明する。
まず、
図4乃至
図7に示すように、ホイールサポート10には、その中央部に、ハブ82が取り付けられると共に、車軸(図示せず)が貫通する開口部84が形成されている。
また、ホイールサポート10には、開口部84より車両前方側の部分に、車幅方向内方に突出する前方縦壁部86が形成され、この前方縦壁部86に、アッパアーム4、リーディングアーム5およびトレーリングアーム6が連結されている。この前方縦壁部86の外縁には補強リブ86aが形成されている。
また、ホイールサポート10には、開口部84の下方部分に、車幅方向内方に突出する下方縦壁部88が形成され、この下方縦壁部88にロアアーム7が連結されている。 さらに、ホイールサポート10には、開口部84より車両後方側の部分に、車幅方向内方に突出する後方縦壁部90が形成され、この後方縦壁部90にトーコントロールアーム8が連結されている。
【0034】
次に、
図8乃至
図11により、本実施形態によるサブフレーム3の弾性マウント38、40の構成を詳細に説明する。
図8は、リアサスペンションに入力される横力を主に説明するための斜視図であり、
図9は、リアサスペンションに入力される駆動力を主に説明するための左側面図であり、
図10は、リアサスペンションからサブフレームの前後の弾性ブッシュに入力される駆動力および横力を説明するための上面図であり、
図11は、本実施形態による自動車のサスペンション装置の旋回時の旋回外輪のトー角変化を比較例と共に示す線図である。
まず、
図8に示すように、前側の弾性マウント38および後側の弾性マウント40には、それぞれ、「すぐり」と言われる2つの空隙41が形成されている。ここで、各弾性マウント38、40は、その高さ方向の中心軸線に対し、それぞれ垂直に延びる前後方向軸線および左右方向軸線を有し、各弾性マウント38、40は、2つの空隙41によって、前後方向軸線に沿った硬さと、左右方向軸線に沿った硬さが異なるようになっている。
ここで、本実施形態において、弾性マウントの「硬さ」とは、所定のたわみ量(mm)を生じさせる荷重(N)の大きさで示される「静特性」(荷重を静的に加えたときの特性)として表される。
【0035】
本実施形態では、各弾性マウント38、40は、いずれも、車両前後方向の硬さに対して車幅方向の硬さが大きくなるような向きとなるよう、サイドクロスメンバ24、26に取り付けられている。
また、本実施形態では、各弾性マウント38、40は、その硬さ自体が互いに異なるものを用いており、後端部の弾性マウント40の車両前後方向の硬さが、前端部の弾性マウント38の車両前後方向の硬さより大きく(硬く)なるよう設定されている。
【0036】
ここで、上述したリアサスペンション1は、アッパアーム4、リーディングアーム5、トレーリングアーム6およびロアアーム7の各アーム長さや角度などの配置、および、各アームのそれぞれの車体側および車輪側の弾性ブッシュ(42、48など)の硬さが、車両旋回時などの車輪沈み込み時(車輪2およびホイールサポート10が車体に対して上向きに変位したとき)に車輪がトーイン傾向になるよう(車輪2およびホイールサポート10に平面視でのトーイン角が生じるよう)に設定されている。
【0037】
次に、
図8および
図9に示すように、運転者のステアリング操作により車両が旋回するとき(旋回開始時/旋回初期時)、旋回外輪の車輪2は、その接地面から横力LFを受ける。この横力LFは、各アーム4、5、6、7を介してサブフレーム3のサイドクロスメンバ24、26に伝達され、前後の弾性マウント38、40に入力される。
【0038】
特に、ロアアーム7は、上述したように、車輪2側では、ホイールサポート10において、ハブ82が取り付けられる開口部84の下方縦壁部88(下方部分)に連結されると共に、車体側では、連結部68(取付座34)において、サブフレーム3の後方側かつ下方側でサブフレーム3に連結されている。このような配置により、旋回初期時、接地面から車輪2に加わる横力を主にロアアーム7が受け止め、その受け止めた横力がサブフレーム3の後方側かつ下方側に伝達される。これにより、後側の弾性マウント40にサスペンションアーム4~8を介して旋回外輪2から入力される横力LFおよび駆動力DFの合力が、前側の弾性マウント38の合力よりも大きくなる。
【0039】
また、運転者のアクセル操作により、エンジンから車軸を介して車輪2に駆動力が加えられるとき、そのような駆動力DFは、ホイールサポート10のハブ82の中心に入力される。この入力された駆動力DFは、ホイールサポート10、各アーム4、5、6、7を介してサブフレーム3に伝達されると共に、前後の弾性マウント38、40に入力される。
【0040】
次に、
図10に示すように、前後の弾性マウント38、40にそれぞれ伝達された横力LFおよび駆動力DFは、各弾性マウント38、40を変形させる力となる。また、横力LFおよび駆動力DFは、車体で受け止められる。
ここで、主に、各アーム4~8の長さや角度などの配置、特に、ロアアーム7の配置によって、横力LFおよび駆動力DFは、前側の弾性マウント38よりも後側の弾性マウント40に多く伝達される。すなわち、
図10に示すように、後側の弾性マウント40に入力される横力成分LF2および駆動力成分DF2の合力の大きさ(ベクトル)VF2は、前側の弾性マウント38に入力される横力成分LF1および駆動力成分DF1の合力の大きさ(ベクトル)VF1よりも大きくなる。
【0041】
ここで、本実施形態では、上述したように、後側の弾性マウント40の前後方向の硬さが、前側の弾性マウント38の前後方向の硬さより大きくなるようなバランスに設定されているが、それらの前後の弾性マウント38、40の硬さの大きさ自体は、車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時において、前後の弾性マウント38、40にベクトル力VF1、VF2が加わるとき、車輪2をトーアウト方向に変位させるようなサブフレーム3の変位を許容するよう設定されている。
なお、車輪2をトーアウト方向に変位させるようなサブフレーム3の変位は、
図11に仮想線で示すように、サイドクロスメンバ24(26)の後端部を基準(サイドクロスメンバ24(26)の後端部でのサブフレーム3の変位が0であるとした基準)としたとき、初期位置A1に対し、サブフレーム3のサイドクロスメンバ24(26)の後端部の車幅方向内方への変位D1(変位位置A2)である。
【0042】
すなわち、このようなサブフレーム3の変位の許容により、
図11の本実施形態の例B(実線)に示すように、旋回初期時、本例では、車輪2のバンプ量(車輪2/ホイールサポート10の車体に対する上向きの変位量であり、車体のロール量と捉えることもできる)が、本実施形態では、少なくとも0mm~20mmの車輪2の沈み込み(たとえば0G~0.3Gの横方向加速度の発生時)である旋回初期時に、車輪2がトーアウトとなるようにしている。
一方、旋回初期時を超えると、リアサスペンション装置1は、上述した各アーム4~8の配置や弾性ブッシュの硬さの設定により、車輪2がトーインとなるようにしている。なお、比較例A(一点鎖線)は、弾性マウント38、40によるサブフレーム3の変位を考慮しない場合の比較例であり、上述した、トーイン傾向になるように設定されている各アーム4~8の配置や弾性ブッシュ42、50、58、66、48、56、64、72、74、80の硬さに基づいて求められる例である。
なお、変形例として、たとえば
図11に実線Bで示すような絶対値としてのトーアウト変位を生じさせるサスペンション装置に限定されず、旋回初期時にトーアウト方向に変位するような傾向を生じさせるサスペンション装置でもよい。
【0043】
本実施形態では、このように、駆動力(DF)が加わった状態で、運転者がステアリングを回し始めるとき(車輪2に横力LFが発生し始めるとき)、サブフレーム3のサイドクロスメンバ24(26)の後端が、車幅方向内方に変位する(トーアウト傾向)ようにして、車体のロールに起因する、サスペンション自身のトーインがキャンセルされ、旋回初期時のステアリング応答性を向上するようにしている。すなわち、旋回初期の駆動力作用時、前後マウント38、40の変位差がサブフレーム3に微小にトーアウト変位を発生させ、ロール時のトーインを打ち消すようにしている。
【0044】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態による自動車のサスペンション装置1は、車輪2を支持し、中央部に車軸を貫通させる開口部84が形成されたホイールサポート10と、ホイールサポート10の下部と車体とを連結するトレーリングアーム6およびロアアーム7と、ホイールサポート10の上部と車体とを連結するアッパアーム4およびリーディングアーム5と、ホイールサポート10の後部と車体とを連結するコントロールアーム8と、上端部が車体に連結されると共に下端部がロアアーム7に連結されたダンパ14と、を備え、複数のサスペンションアーム4~8の配置、および、複数のサスペンションアーム4~8のそれぞれの弾性ブッシュ42、50、58、66、48、56、64、72、74、80の硬さが、車輪沈み込み時(車輪およびホイールサポートが車体に対して上向きに変位したとき)に車輪2がトーイン傾向になるよう(車輪およびホイールサポートに平面視でのトーイン角が生じるよう)に設定され、車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪に加わる旋回初期時、サブフレーム3の前側弾性マウント38および後側弾性マウント40に、サスペンションアーム4~8を介して旋回外輪2から入力される横力LFおよび駆動力DFの合力が、前側弾性マウント38よりも後側弾性マウント40の方が大きく、これらの合力が加わるとき、車輪2をトーアウト方向に変位させるようなサブフレーム3の変位を許容するよう、後側弾性マウント40の前後方向の硬さが前側弾性マウント38の前後方向の硬さより大きく設定されている。
また、本実施形態では、ロアアーム7は、ホイールサポート10において、ハブ82が取り付けられる開口部84の下方部分に連結されると共にサブフレーム7の後方側かつ下方側でサブフレーム3に連結され、車両の旋回が開始され、かつ、駆動力が車輪2に加わる旋回初期時、サブフレーム3の前側弾性マウント38および後側弾性マウント40に、サスペンションアーム4~8を介して旋回外輪2から入力される横力LFおよび駆動力DFの合力が加わるとき、車輪2をトーアウト方向に変位させるようなサブフレーム3の変位を許容するよう、後側弾性マウント40の前後方向の硬さが前側弾性マウント38の前後方向の硬さより大きく設定されている。
このように構成された本実施形態によれば、動力が加わった状態で、運転者がステアリングを回し始めて、車輪2に横力が発生し始めるとき、車輪2をトーアウト方向に変位させるようなサブフレーム3の変位を許容するようにし、これにより、旋回初期時、車体のロールに起因するサスペンション自身のトーインをキャンセルしてトーアウトとすることができる。したがって、旋回初期時、車輪2がトーアウト方向に変位するようサブフレーム3を変位させて、車両安定性を維持すると共にステアリング応答性を向上させることができる。
また、サブフレーム3の前側および後側の弾性マウント38、40には、それぞれ、平面視で所定の軸線上に並ぶ2つのすぐり部41が形成され、前側および後側の弾性マウント38、40は、軸線上の2つのすぐり部41が車両前後方向に位置するようにサイドクロスメンバ24、26に設けられているので、サブフレーム3の車幅方向の微小な変位(トーアウト方向の変位)をより確実に得ることができる。
【0045】
すなわち、本実施形態では、第1に、サスペンションアーム4~8の配置、車体側の弾性ブッシュ42、50、58、66、74の硬さ、および、車輪側の弾性ブッシュ48、56、64、72、80の硬さが、車輪沈み込み時(車輪およびホイールサポートが車体に対して上向きに変位したとき)にトーイン傾向になるよう(車輪およびホイールサポートに平面視でのトーイン角が生じるよう)なものであり、第2に、サブフレーム3の後側の合力(VF2、
図10参照)が大きく、サブフレーム3の変位により、車輪2のトーアウト方向への変位を生じさせやすいものでもあり、第3に、後側弾性マウント40が前側弾性マウント38より硬い値に設定されており、かつ、上述した「第2」のトーアウト変位を阻害するような硬さバランスであり、第4に、しかしながら、前側弾性マウント38および後側弾性マウント40の硬さは、旋回初期時に、車輪2のトーアウトを許容する範囲の値に設定されている。
【0046】
また、本実施形態では、より詳細には、第1に、ホイールサポート10が車体に対して上向きに変位した場合に、サスペンションアーム4~8に規制されてホイールサポート10およびホイールサポート10が支持する車輪2に平面視でトーイン角が生じるようにされており、第2に、旋回初期時に、旋回外輪2側のホイールサポート10に車輪2から入力された横力(LF)が、ロアアーム7を介してサブフレーム3のサイドクロスメンバ24、26の下方部分に伝達され、後側の弾性マウント40を車幅方向に変形させると共にサブフレーム3のサイドクロスメンバ24、26の後部を車体に対して車幅方向の内方向きに変位させ、第3に、旋回初期時に、ホイールサポート10に車両前後方向の前方向きに作用した車輪2の駆動力(Df)が、サスペンションアーム4~8を介してサブフレーム3に伝達され、後側弾性マウント40を車両前後方向の前方向きに変形させると共にサイドクロスメンバ24、26の後部を車体に対して車両前後方向の前方向きに変位させ、第4に、旋回初期時に、これらのサブフレーム3の変位により、サブフレーム3がホイールサポート10の車体中心線CLに対するトーアウト角を生じさせて、上述した「第1」のトーイン角を減少させる。
【符号の説明】
【0047】
1 自動車のサスペンション装置/リアサスペンション
2 後輪
3 サブフレーム
4 アッパアーム
5 リーディングアーム
6 トレーリングアーム
7 ロアアーム
8 トーコントロールアーム
10 ホイールサポート(支持部材、ハブキャリア)
16 緩衝装置
20 フロントクロスメンバ
22 リアクロスメンバ
24、26 サイドクロスメンバ
38 サブフレームの前側弾性ブッシュ
40 サブフレームの後側弾性ブッシュ
41 空隙(すぐり)
82 ハブ
84 ホイールサポートの開口部
A1 前後の弾性マウントの初期位置
A2 前後の弾性マウントの変位位置
D1 変位
IK 仮想キングピン軸