(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/04 20060101AFI20240924BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20240924BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C08G64/04
C08G64/02
C08G63/64
(21)【出願番号】P 2020200923
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 英文
(72)【発明者】
【氏名】磯部 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】新開 洋介
(72)【発明者】
【氏名】下川 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】冨重 圭一
(72)【発明者】
【氏名】中川 善直
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122007(JP,A)
【文献】特開2010-037551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 63/00 -64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位(A)を含む熱可塑性樹脂。
【化1】
【請求項2】
さらに、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
【化2】
[一般式(2)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数1~7のアルコキシ基、及び炭素数7~17のアラルキル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CO-、炭素数6~12のシクロアルキレン基、又は下記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよく、
Y及びZは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキレン基を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。
【化3】
(一般式(3)中、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよく、
nは0~20の整数を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数
7~
24の炭素環、又は炭素数
5~
24の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。)]
【請求項3】
前記構成単位(B)が、下記式(5)で表される、請求項2に記載の熱可塑性樹脂。
【化5】
【請求項4】
前記構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比(A/B)が、1/99~99/1である、請求項2または3に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項5】
前記式(1)で表される構成単位(A)のみからなる、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂である、請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
前記ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、1,000~100,000である、請求項6に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、90~200℃である、請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
前記ポリカーボネート樹脂の5%質量減少熱分解温度が、200~500℃である、請求項6~8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項10】
前記ポリカーボネート樹脂のOH末端が10~200,000ppmである、請求項6~9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項11】
前記ポリカーボネート樹脂のPh末端が1~10mol%である、請求項6~10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項12】
下記式(1)で表される構成単位(A)を含む熱可塑性樹脂の製造方法であって、炭酸ジエステルとジオール化合物の合計とのモル比(炭酸ジエステル/ジオール化合物の合計)を0.97~1.20にして反応を行う工程を含む、前記製造方法。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂及びその製造方法に関し、特に、ポリカーボネート樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、中でもポリカーボネート樹脂は、その優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性、難燃性、透明性等により、電気電子及びOA機器、光メディア、自動車部品、建築部材等に広く使用されている。
【0003】
一方、近年では、環境負荷低減の動きから、天然物由来の樹脂の需要が増加している。天然物由来のプラスチック材料の一つとして、糖や炭水化物から生成される化合物を単量体として用いたポリマーが注目されており、研究開発が進められている。例えば、特許文献1には、フランジカルボン酸由来の構成単位を有する生分解性ポリエステルが記載されている。非特許文献1には、マンニトール骨格を有するポリカーボネートが記載されている。非特許文献2~3には、マンニトール骨格、イソソルビド骨格、グルシトール骨格を有するポリエステルが記載されている。非特許文献4には、グルシトール骨格やイソソルビド骨格を有するポリエステルウレタンが記載されている。
しかしながら、これらの天然物由来の樹脂は一般に各種物性に関してバランスが良いとは言えず、実用上、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Macromol. Res., 26, 246-253 (2018)
【文献】Macromolecules, 45,8257-8266 (2012)
【文献】Designed Monomers and Polymers, 20, 157-166 (2016)
【文献】Journal of Applied Polymer Science, 114, 3723-3736 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天然物由来の原料を用いて製造され、ガラス転移温度や5%質量減少温度が極端に高すぎたり低すぎたりせず、実用上バランスの取れた熱可塑性樹脂、中でもポリカーボネート樹脂が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明により上記課題を解決することができることを見出した。本発明は、例えば次の通りである。
【0008】
<1> 下記式(1)で表される構成単位(A)を含む熱可塑性樹脂である。
【化1】
<2> さらに、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を含む、上記<1>に記載の熱可塑性樹脂である。
【化2】
[一般式(2)中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数1~7のアルコキシ基、及び炭素数7~17のアラルキル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CO-、炭素数6~12のシクロアルキレン基、又は下記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよく、
Y及びZは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキレン基を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表す。
【化3】
(一般式(3)中、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20の炭素環又は炭素数1~20の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよく、
nは0~20の整数を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数7~17のアラルキル基、及び炭素数2~15のアルケニル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数
7~
24の炭素環、又は炭素数
5~
24の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。)]
<3> 前記構成単位(B)が、下記式(5)で表される、上記<2>に記載の熱可塑性樹脂である。
【化5】
<4> 前記構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比(A/B)が、1/99~99/1である、上記<2>または<3>に記載の熱可塑性樹脂である。
<5> 前記式(1)で表される構成単位(A)のみからなる、上記<1>に記載の熱可塑性樹脂である。
<6> 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂である。
<7> 前記ポリカーボネート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、1,000~100,000である、上記<6>に記載の熱可塑性樹脂である。
<8> 前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が、90~200℃である、上記<6>または<7>に記載の熱可塑性樹脂である。
<9> 前記ポリカーボネート樹脂の5%質量減少熱分解温度が、200~500℃である、上記<6>~<8>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂である。
<10> 前記ポリカーボネート樹脂のOH末端が10~200,000ppmである、上記<6>~<9>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂である。
<11> 前記ポリカーボネート樹脂のPh末端が1~10mol%である、上記<6>~<10>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂である。
<12> 下記式(1)で表される構成単位(A)を含む熱可塑性樹脂の製造方法であって、炭酸ジエステルとジオール化合物の合計とのモル比(炭酸ジエステル/ジオール化合物の合計)を0.97~1.20にして反応を行う工程を含む、前記製造方法である。
【化6】
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天然物由来の原料を用いて製造され、ガラス転移温度や5%質量減少温度が極端に高すぎたり低すぎたりせず、実用上バランスの取れた熱可塑性樹脂、中でもポリカーボネート樹脂を提供することができる。
好ましい態様のポリカーボネート樹脂は、従来の糖由来のポリカーボネート樹脂と比較して耐熱性(例えば、高いガラス転移温度(Tg)および/または熱分解温度(5%質量減少温度))に優れており、電子機器や自動車等の筐体、内外装材などの多様な用途へ適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0011】
<熱可塑性樹脂>
本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂は、下記式(1)で表される構成単位(A)を含む。
【化7】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂は、原料であるジオールモノマーとして、下記構造式で表されるメチル-β-D-3,4-ジデオキシ-ガラクトピラノシド(MDG)を用いることによって製造することができる。本発明で使用されるMDGは、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【化8】
本発明は、上記構成単位(A)のような構造を備えた熱可塑性樹脂とすることにより、主鎖に環構造を持つことに起因して、耐熱性(高いガラス転移温度(Tg)および/または熱分解温度(5%質量減少温度))が向上するものと考えられる。しかも、上記構成単位(A)は、天然物由来のモノマーから得ることができ、本発明の熱可塑性樹脂は環境負荷低減の面からも好ましいものである。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂は、上記式(1)で表される構成単位(A)のみからなるものでもあってもよく、上記式(1)で表される構成単位(A)以外にも、一般的にポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂の構成単位として用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位や芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含むこともできる。
具体的には、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、様々なものが挙げられるが、特に、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2-(5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-オール、イソソルビド、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、様々なものを挙げることができるが、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、及びビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビスフェノキシエタノールフルオレン等を挙げることができる。
【0014】
中でも、本発明の熱可塑性樹脂は、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を含むことが、耐熱性(高いガラス転移温度(Tg))の点で好ましい。
【化9】
一般式(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3、さらに好ましくは炭素数1)のアルキル基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数6)のアリール基、炭素数2~7(好ましくは炭素数2~5、より好ましくは炭素数2~3、さらに好ましくは炭素数2)のアルケニル基、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3、さらに好ましくは炭素数1)のアルコキシ基、及び炭素数7~17(好ましくは炭素数7~10、より好ましくは炭素数7)のアラルキル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基、及び前記アラルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
なお、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の「置換基」としては、「フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数1~7のアルコキシ基、炭素数7~17のアラルキル基」などが挙げられる(以下同様)。
【0015】
一般式(2)中、Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CO-、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数6)のシクロアルキレン基、又は下記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示される二価の基を表し、前記シクロアルキレン基は1~12個の炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよい。
【0016】
一般式(2)中、Y及びZは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2のアルキレン基を表す。
当該アルキレン基としては、直鎖アルキレン基であってもよく、分岐鎖アルキレン基であってもよく、例えば、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)、エチリデン基(-CH(CH3)-)、トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)、プロピリデン基(-CHCH2(CH3)-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)、テトラメチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)、1-メチルトリメチレン基(-CH(CH3)CH2CH2-)、2-メチルトリメチレン基(-CH2CH(CH3)CH2-)、及びブチレン基(-C(CH3)2CH2-)で表される基等が挙げられる。
【0017】
一般式(2)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0~10の整数を表し、好ましくは0~3の整数を表し、より好ましくは0を表す。
【0018】
【化10】
一般式(3)中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5、さらに好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、炭素数1~5(好ましくは炭素数1~3、より好ましくは炭素数1)のアルコキシ基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数6)のアリール基、炭素数7~17(好ましくは炭素数7~10、より好ましくは炭素数7)のアラルキル基、及び炭素数2~15(好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数2~3)のアルケニル基からなる群より選択され、
R
9およびR
10における前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
9及びR
10は互いに結合して、炭素数3~20(好ましくは炭素数3~10、より好ましくは炭素数3~5)の炭素環又は炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5)の複素環を形成してもよく、前記炭素環、及び前記複素環はそれぞれ置換基を有していてもよく、
nは0~20の整数を表し、好ましくは0~10の整数を表し、より好ましくは0~3の整数を表す。
【化11】
一般式(4)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5、さらに好ましくは炭素数1~3)のアルキル基、炭素数1~7(好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3、さらに好ましくは炭素数1)のアルコキシ基、炭素数6~12(好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数6)のアリール基、炭素数7~17(好ましくは炭素数7~10、より好ましくは炭素数7)のアラルキル基、及び炭素数2~15(好ましくは炭素数2~10、より好ましくは炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数2~3)のアルケニル基からなる群より選択され、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アリール基、前記アラルキル基、及び前記アルケニル基はそれぞれ置換基を有していてもよく、
R
11及びR
12は互いに結合して、炭素数
7~
24(好ましくは炭素数
7~
14、より好ましくは炭素数
7~
9)の炭素環、又は炭素数
5~
24(好ましくは炭素数
5~
14、より好ましくは炭素数
5~
9)の複素環を形成してもよく、前記炭素環及び前記複素環は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0019】
前記一般式(2)で表される構成単位(B)の例として、例えば、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA;BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールC;BPC)、4,4’-ビフェニルジオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロウンデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、4、4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(エタン-1-オール)、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(メタン-1-オール)、2,2’-(1,4フェニレンビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-アリルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)シクロドデカン、1-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)シクロドデカン、7-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、3,6-ジメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン等に由来する構成単位が例示される。
中でも、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンに由来する構成単位が好ましく、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)に由来する構成単位がより好ましい。特に、汎用性があり、金属分などの不純物が混入していない良質なモノマーとして低価格で入手しやすく、耐熱性に優れることから、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に由来する下記構成単位が特に好ましい。
【化12】
【0020】
本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂において、構成単位(B)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂が、前記構成単位(B)を含む場合、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)とのモル比(A/B)は、1/99~99/1であることが好ましく、1/99~50/50であることがより好ましく、10/90~40/60であることが特に好ましい。
本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂は、構成単位(B)以外にも、上述したような、一般的にポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂の構成単位として用いられる脂肪族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位や芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される構成単位を含むこともできる。
本発明の熱可塑性樹脂が、2種以上の構成単位を含むコポリマーである場合、コポリマーは、ランダム、ブロックおよび交互共重合体のいずれの構造であってもよい。
【0021】
<ポリカーボネート樹脂の物性>
本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂であることがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、成型性の点で、好ましくは、1,000~100,000であり、より好ましくは5,000~50,000、特に好ましくは10,000~30,000である。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の分子量分布(Mw/Mn)としては、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5以下である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔Mw/Mn〕を意味する。
【0023】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは80~250℃、より好ましくは90~200℃、特に好ましくは90~125℃である。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差熱走査熱量計(DSC)を用いて測定した値であって、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0024】
ポリカーボネート樹脂において、5%質量減少する際の熱分解温度(5%質量減少温度)が、好ましくは200~500℃、より好ましくは250~370℃、特に好ましくは300~340℃である。なお、本明細書において、5%質量減少する際の熱分解温度(5%質量減少温度)は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/TDA)を用いて測定した値であって、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0025】
ポリカーボネート樹脂のOH末端は、好ましくは10~200,000ppm、より好ましくは100~150,000ppm、更に好ましくは1,000~10,000ppm、特に好ましくは2,000~6,000ppmである。なお、本明細書において、水酸基(OH)末端は核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した値であって、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0026】
ポリカーボネート樹脂のPh末端は、好ましくは1~10mol%、より好ましくは2~7mol%、特に好ましくは3~6mol%である。なお、本明細書において、フェニル(Ph)末端は核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した値であって、具体的には実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0027】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明の別の実施形態は、下記式(1)で表される構成単位(A)を含む熱可塑性樹脂(好ましくはポリカーボネート樹脂又はポリエステルカーボネート樹脂、より好ましくはポリカーボネート樹脂)の製造方法であって、炭酸ジエステルとジオール化合物の合計とのモル比(炭酸ジエステル/ジオール化合物の合計)を0.97~1.20にして反応を行う工程を含む、前記製造方法である。以下、より好ましいポリカーボネート樹脂を例に具体的に説明する。
【化13】
【0028】
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、特に制限されないが、エステル交換反応を行う工程を有する方法であることが好ましい。本工程では、原料モノマーであるジオール成分と炭酸ジエステルとのエステル交換反応を行うことで、上述のポリカーボネート樹脂を得る。
原料モノマーであるジオール成分としては、少なくとも下記構造式で表されるメチル-β-D-3,4-ジデオキシ-ガラクトピラノシド(MDG)を用いる。
【化14】
【0029】
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(DPC)、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、後述する副生アルコール系化合物の低減の観点から、炭酸ジアリール化合物(例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート等)が好ましく、反応性及び純度の観点から、ジフェニルカーボネートがより好ましい。炭酸ジエステルとして、炭酸ジアルキルを用いる場合、副生するアルキルアルコール系化合物の残存量が高くなる傾向がある。
これらの炭酸ジエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
炭酸ジエステルとジオール化合物の合計とのモル比(炭酸ジエステル/ジオール化合物の合計)は、0.97~1.20であるが、好ましくは1.00~1.10、より好ましくは1.00~1.05である。
【0031】
エステル交換反応においては、エステル交換触媒を用いることが好ましい。
エステル交換触媒としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属の有機酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物及びアルコキシド等や、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、酢酸ジルコニウム、チタンテトラブトキサイド、炭酸セシウム等が挙げられる。中でも、炭酸セシウムが好ましく使用される。
これらのエステル交換触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エステル交換触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対して、好ましくは1×10-9~1×10-3モル、より好ましくは1×10-7~1×10-4モルである。
【0033】
具体的なエステル交換反応の反応条件としては、反応温度120~260℃(好ましくは180~260℃)で、反応時間0.1~5時間(好ましくは0.5~3時間)にて反応させることが好ましい。
次いで、反応系の減圧度を上げながら、反応温度を高めてジオール化合物と、他のモノマーとの反応を行い、最終的(最終減圧度)には300kPa以下(より好ましくは100kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下)の減圧下、180~280℃の温度で0.05~2時間重縮合反応を行うことが好ましい。さらに、後述するフェノール系化合物などのアルコール系化合物の低減の観点から、最終的に、1kPa以下の減圧下(最終減圧度)、200~280℃の温度で、0.05~2時間重縮合反応を行うことが特に好ましい。
一実施形態において、エステル交換反応は、1kPa以下の減圧下(最終減圧度)、200℃以上(好ましくは180~280℃)の温度の条件で行われる。
【0034】
エステル交換反応は、連続式で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。
上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型撹拌翼、マックスブレンド撹拌翼、ヘリカルリボン型撹拌翼等を装備した縦型であってもよく、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0035】
本発明の一態様のポリカーボネート樹脂の製造方法では、熱安定性及び加水分解安定性を保持させる観点から、重合反応終了後に、触媒を除去又は失活させてもよい。
また、触媒失活後、樹脂中の低沸点化合物を除去するために、1.33~133Paの圧力で、200~350℃の温度にて脱揮除去する工程を設けてもよい。この工程において、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた撹拌翼を備えた横型装置、又は薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0036】
このようにして得られた樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれるため、溶融原料の濾過、触媒液の濾過を行ってもよい。濾過で使用するフィルターのメッシュは、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【0037】
本工程で得られたポリカーボネート樹脂は、ペレット状あるいはフレーク状とし、ポリカーボネート樹脂組成物に調整してもよい。
また、必要に応じて、ポリカーボネート樹脂を周知の方法に基づき単離した後、例えば、周知のストランド方式のコールドカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物をストランド状に成形、冷却後、所定の形状に切断してペレット化する方法)、空気中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物を、空気中で水に触れぬうちにペレット状に切断する方法)、水中ホットカット方式のホットカット法(一度溶融させたポリカーボネート樹脂組成物を、水中で切断し、同時に冷却してペレット化する方法)によって、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットとしてもよい。
なお、得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットは、必要に応じて、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用いて乾燥させることが好ましい。
【0038】
このようにして得られたポリカーボネート樹脂には、製造時に副生成物として生じ得るフェノール系化合物などのアルコール系化合物や、反応せずに残存したジオール成分又は炭酸ジエステルが不純物として存在している場合がある。
不純物であるフェノール系化合物などのアルコール系化合物や炭酸ジエステルは、成形体としたときの強度低下や、臭気発生の原因ともなり得るため、これらの含有量は極力少ない程好ましい。
【0039】
残存するフェノール系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、好ましくは3000質量ppm以下、より好ましくは1000質量ppm以下、特に好ましくは300質量ppm以下である。
残存するジオール成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。
残存する炭酸ジエステルの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。
特に、フェノール、t-ブチルフェノールなどの化合物の含有量が、少ないことが好ましく、これらの化合物が上記範囲内であることが好ましい。
【0040】
ポリカーボネート樹脂中に残存するフェノール系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂から抽出したフェノール系化合物を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析する手法により測定することができる。
ポリカーボネート樹脂中に残存するアルコール系化合物の含有量についても、ポリカーボネート樹脂から抽出したアルコール系化合物を、ガスクロマトグラフィーを用いて分析する手法により測定することができる。
ポリカーボネート樹脂中に残存するジオール成分、炭酸ジエステルの含有量も、ポリカーボネート樹脂からこれらの化合物を抽出し、ガスクロマトグラフィーを用いて分析する手法により測定することができる。
【0041】
フェノール系化合物などの副生アルコール系化合物、ジオール成分及び炭酸ジエステルの含有量は、検出されないほど低減してもよいが、生産性の観点から、効果を損なわない範囲で、わずかに含有していてもよい。また、わずかな量であれば、樹脂溶融時に可塑性を良好とすることもできる。
【0042】
残存するフェノール系化合物、ジオール成分又は炭酸ジエステルのそれぞれの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、例えば、0.01質量ppm以上、0.1質量ppm以上、又は1質量ppm以上であってもよい。
残存するアルコール系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、例えば、0.01質量ppm以上、0.1質量ppm以上、又は1質量ppm以上であってもよい。
【0043】
なお、ポリカーボネート樹脂中のフェノール系化合物などの副生アルコール系化合物、ジオール成分及び炭酸ジエステルの含有量は、重縮合の条件や装置の設定を適宜調整することで、上記範囲となるように調節することは可能である。また、重縮合後の押出工程の条件によっても調節可能である。
【0044】
例えば、フェノール系化合物などの副生アルコール系化合物の残存量は、ポリカーボネート樹脂の重合に用いる炭酸ジエステルの種類や、重合反応温度および重合圧力等に関係する。これらを調整することでフェノール系化合物などの副生アルコール系化合物の残存量を低減し得る。
【0045】
例えば、炭酸ジエチルなどの炭酸ジアルキルを用いてポリカーボネート樹脂を製造した場合、分子量が上がりにくく、低分子量のポリカーボネートとなり、副生するアルキルアルコール系化合物の含有量が高くなる傾向にある。このようなアルキルアルコールは揮発性が高く、ポリカーボネート樹脂中に残存すると、樹脂の成形性が悪化する傾向にある。また、フェノール系化合物などの副生アルコール系化合物の残存量が多いと、樹脂の成形時に、臭気の問題が生じる可能性や、コンパウンド時に樹脂骨格の開裂反応が進行して分子量の低下が生じる可能性がある。したがって、得られたポリカーボネート樹脂中の残存する副生アルコール系化合物の含有量が、ポリカーボネート樹脂(100質量%)に対して、3000質量ppm以下であることが好ましい。残存するアルコール系化合物の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量%に対して、好ましくは3000質量ppm以下、より好ましくは1000質量ppm以下、特に好ましくは300質量ppm以下である。
【0046】
<ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明の別の実施形態は、上述した実施形態のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)である。
樹脂組成物において、上述した実施形態のポリカーボネート樹脂の含有量は、当該樹脂組成物の全量(100質量%)に対して、通常30~100質量%、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、特に好ましくは80~100質量%である。
【0047】
樹脂組成物は、上述した実施形態のポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。当該他の樹脂は、上述した式(1)で表される構成単位(A)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
このような他の樹脂としては、例えば、上述した実施形態のポリカーボネート樹脂以外のポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT樹脂)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクリレート-スチレン共重合体(MS樹脂)等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-アクリルゴム-スチレン共重合体(MAS)等のコア/シェル型のエラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー;環状シクロオレフィン樹脂(COP樹脂)、環状シクロオレフィン(COP)共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂(PA樹脂);ポリイミド樹脂(PI樹脂);ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂);ポリウレタン樹脂(PU樹脂);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE樹脂);ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂);ポリスルホン樹脂(PSU樹脂);ポリメタクリレート樹脂(PMMA樹脂);ポリカプロラクトン;等が挙げられる。
これらの他の樹脂は、単独で含有してもよく、2種以上を併用して含有してもよい。
【0048】
樹脂組成物において、これらの他の樹脂の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、例えば、当該樹脂組成物に含まれる本発明のポリカーボネート樹脂の全量100質量部に対して、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~20質量部、さらに好ましくは0~10質量部、特に好ましくは0~1質量部である。
【0049】
樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。
そのような各種添加剤としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等を含有することが好ましく、また、必要に応じて、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を含有してもよい。
【0050】
<成形体>
本発明の更に別の実施形態は、ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
成形方法は特に制限されず、例えば射出成形法、高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0051】
成形体において、形状、模様、色彩、寸法等は、その成形体の用途に応じて適宜選択することができる。樹脂や成形体に対して、必要に応じてハードコート、反射防止、等の表面処理を行ってもよい。
【0052】
成形体としては、例えば、電気電子機器、OA(Office Automation)機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品、各種家庭用電気製品等の部品、電気器具のハウジング、容器、カバー、収納部、ケース、照明器具のカバーやケース等とすることができる。
電気電子機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、テレビジョン受像機、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳や携帯情報末端(PDA)、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、各種音楽プレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。
また、成形体として、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、玩具、装飾品等も挙げられる。
中でも、成形体は、優れた耐熱性を有することから、電子機器や自動車等の筐体、内外装材として好ましく使用され得る。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書において、「常温」は通常約10℃から約35℃を示す。
実施例、比較例および参考例で得た樹脂の各物性の測定は、以下に示す要領に従って求めたものである。
【0054】
<評価>
1.重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、クロロホルムを展開溶媒として、分子量既知(分子量分布=1)の標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PStQuick MP-M)を用いて検量線を作成した。測定した標準ポリスチレンから各ピークの溶出時間と分子量値をプロットし、3次式による近似を行い、較正曲線とした。
[測定条件]
・装置;東ソー株式会社製、HLC-8320GPC
・カラム;ガードカラム:TSKguardcolumn SuperMPHZ-M×1本
分析カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-M×3本
・溶媒;HPLCグレードクロロホルム
・注入量;10μL
・試料濃度;0.2w/v% HPLCグレードクロロホルム溶液
・溶媒流速;0.35ml/min
・測定温度;40℃
・検出器;RI
得られた較正曲線を基に、以下の計算式により、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)をポリスチレン換算値として求めた。また、分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及びポリスチレン換算数平均分子量(Mn)より以下の計算式より求めた。
[計算式]
Mw=Σ(Wi×Mi)÷Σ(Wi)
Mn=Σ(Ni×Mi)÷Σ(Ni)
分子量分布=Mw/Mn
(上記式中、iは分子量Mを分割した際のi番目の分割点、Wiはi番目の重量、Niはi番目の分子数、Miはi番目の分子量を表す。また分子量Mとは、較正曲線の同溶出時間でのポリスチレン分子量値を表す。)
【0055】
2.ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス製、DSC-7000)により測定した。
測定サンプルは、7~12mgの試験片をRDCアルミパン(AIオートサンプラ用試料容器 φ6.8 H2.5mm)に製秤し、AIオートサンプラ用カバーを用いてシールすることにより調製した。
測定は、窒素雰囲気下(窒素流量:50ml/min)で行った。参照セルには標準物質としてサファイア10.0mgを用いた。サンプル温度を30℃に調整し、10℃/minで220℃まで昇温した。その後、10℃/minで冷却を行い30℃まで降温した。その後、10℃/minで270℃まで昇温して測定した。
【0056】
3.熱分解温度(5%質量減少温度)
熱分解温度(5%質量減少温度)は示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)(日立ハイテクサイエンス製、TGDTA7300)により測定した。
測定サンプルは、2mgの試験片を白金パン(Ptオープン型試料容器 φ5.2 H2.5mm)に製秤して、調製した。
測定は、窒素雰囲気下(窒素流量:250ml/min)で行った。参照セルには基準物質としてα-アルミナ0.00519gを用いた。サンプル温度を30℃に調整し、10℃/minで550℃まで昇温して測定した。
【0057】
4.水酸基(OH)末端 [ppm]
得られた樹脂の水酸基(OH)末端は核磁気共鳴装置(NMR)により測定した。
樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で1H-NMRを測定することで求めた。具体的には、水酸基に由来するピークとその他の樹脂骨格に由来するピークの積分比より、算出した。
装置:BRUKER 500MHz核磁気共鳴装置 AVANCE III HD
【0058】
5.フェニル(Ph)末端 [mol%]
得られた樹脂のフェニル(Ph)末端は核磁気共鳴装置(NMR)により測定した。
樹脂サンプル0.05gを1mlの重水素クロロホルム(0.05w/v%TMS含有)に溶解し、23℃で1H-NMRを測定することで求めた。具体的には、フェニル基に由来するピークとその他の樹脂骨格に由来するピークの積分比より、算出した。
装置:BRUKER 500MHz核磁気共鳴装置 AVANCE III HD
【0059】
(合成例1)
実施例で用いたメチル-β-D-3,4-ジデオキシ-ガラクトピラノシドは、以下のように合成した。即ち、不均一系ReOx-Pd/CeO2触媒上でのメチル-β-D-ガラクトピラノシドの脱酸素脱水と水素化を行って合成した。
<ReOx-Pd/CeO2触媒の調製(連続含浸法)>
1. まず、CeO2 (ソルベイ・スペシャルケム・ジャパン株式会社、BET表面積155.3m2g-1、600℃で3時間焼成)をNH4ReO4(三津和化学薬品株式会社)の水溶液に混ぜて、ReOx/CeO2触媒を作製した。Reの添加量は2wt%であった。
2. 110℃で12時間乾燥させた後のReOx/CeO2をPd(NO3)2(N.E. Chemcat Corp.)の水溶液に混ぜて、ReOx-Pd/CeO2触媒を作製した。Pd/Reモル比は0.25であった。
3. 溶媒を蒸発させ、110℃で12時間乾燥させた後、触媒を空気中で500℃で3時間焼成した。
<反応手順>
1. メチル-β-D-ガラクトピラノシド、ReOx-Pd/CeO2触媒、溶剤および撹拌棒をガラスシリンダーに入れた。
2. ガラスシリンダーをステンレス鋼オートクレーブに入れ、次いでオートクレーブを十分に密封した。
3. 1MPaのH2で3回以上フラッシュしてオートクレーブ内のエアーをパージした後、水素圧を0.9MPaまで上昇させた。
4. オートクレーブを160℃に加熱し、これをオートクレーブに挿入した熱電対を用いてモニターした。温度が160℃に達したとき(約30分かかった)、時間を0時間と定義し、水素圧を0.9MPa、撹拌速度を500rpmに保持した。
5. 72時間後、オートクレーブ反応器をヒーターから取り出し、水浴中で室温に冷却した。
6. オートクレーブ内容物を、グローブボックス中で窒素雰囲気下でバイアルに変換した。洗浄(収集)溶剤はメタノールであり、触媒をろ過によって分離した。
7. 気体および液体生成物の両方を、TC-WAXキャピラリーカラム(直径0.25mm、30m)を備えたFID-GC(シマズ GC-2014)によって分析し、液体生成物を、溶離剤として水を使用するAminex HPX-87Cカラム(直径7.8mm、300mm)を用いたHPLC(シマズ LC-10A、屈折率検出器)によっても分析した。
8. 基質と単離生成物を用いて得た検量線により基質と生成物の量を計算した。
9. 得られた液体生成物から50℃でロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、次いで生成物をフラスコから5mlのガラスバイアルに変換した。得られたMDGの収率をバイアルの増分から計算し、GCおよび1H NMR、13C NMR、H-H COSY NMR、HMQC NMRおよびHMBC NMRにより分析した。純度は、GC結果に基づいて95.3%であった。引き続き、得られた粗MDG20gを超純水20gに溶解し、さらに酢酸エチル200gを加え混合した。有機層と水層に分液し、有機層を50℃、8mmHgでエバポレートした後、さらに室温、8mmHgで乾燥することにより、精製MDGを得た。純度は、GC結果に基づいて98.8%であった。
【0060】
【0061】
(実施例1)
原料ジオールモノマーとして、合成例1で調製したメチル-β-D-3,4-ジデオキシ-ガラクトピラノシド(Methyl-β-3,4-dideoxy-galactopyranoside/MDG)(5.837g、35.99mmol)およびビスフェノールA(BPA)(19.172g、83.982mmol)と、ジフェニルカーボネート(DPC)(27.244g、127.18mmol)と、触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3、MDGとBPAの合計1molに対し3×10-6mol)とを100mLの四つ口フラスコに精秤し、常温及び真空下で1時間減圧乾燥を行った。その後、窒素により置換し、反応系を窒素雰囲気下とした。
前記四つ口フラスコに、撹拌機及び留出装置を取り付け、窒素雰囲気下(圧力:101.3kPa)、180℃まで加熱した。加熱後に原料モノマーの完全溶解を確認した後、180℃/hの速度で210℃まで昇温を行い、10分間撹拌を行った。その後、反応器内の圧力を33kPaまで減圧し、40分間撹拌を行った。その後、60℃/hの速度で220℃まで昇温し、27kPaまで減圧し20分間撹拌を行った。その後、60℃/hの速度で230℃まで昇温し、減圧度を24kPaに調整し、10分間撹拌を行った。その後、20kPaまで減圧し、20分間撹拌を行った。その後、60℃/hで240℃まで昇温し、10分間撹拌を行った。その後、減圧度を13kPaに調整し、20分間攪拌を行った。引き続き、240℃で、減圧度を7Paに調整し、20分間攪拌し、減圧度を1kPa以下に調整した後、さらに60分間攪拌を行い、反応を終了させた(最終反応温度=240℃)。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、ポリカーボネート樹脂を得た。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂に対し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(5%質量減少温度)、樹脂のOH末端およびPh末端を測定し、それらの物性を下記表2に示した。
【0062】
(実施例2)
最終反応温度を230℃とする以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂の物性を下記表2に示した。
【0063】
(実施例3)
触媒として、炭酸セシウム(Cs2CO3、MDGとBPAの合計1molに対し6×10-6mol)を用い、最終反応温度を220℃とする以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂の物性を下記表2に示した。
【0064】
(実施例4)
原料ジオールモノマーとしてMDG(16.787g、103.51mmol)と、DPC(23.504g、109.72mmol)と、触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3、MDGの合計1molに対し50×10-6mol)とを用い、最終反応温度を230℃とする以外は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂の物性を下記表2に示した。
【0065】
(比較例1)
原料ジオールモノマーとしてシクロヘキサンジメタノール(CHDM)(25.00g、173.4mmol、シス体およびトランス体の混合物)と、DPC(36.17g、168.9mmol)と、触媒として炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、CHDM1molに対し6×10-6mol)とを100mLの四つ口フラスコに精秤し、常温及び真空下で1時間減圧乾燥を行った。その後、窒素により3回置換し、反応系を窒素雰囲気下とした。
前記四つ口フラスコに、撹拌機及び留出装置を取り付け、窒素雰囲気の圧力101.3kPaの下、180℃まで加熱した。加熱後に原料モノマーの完全溶解を確認した後、反応器内の圧力を20kPaまで減圧し、20分間撹拌を行った。その後、60℃/hの速度で200℃まで昇温を行い、200℃で30分間攪拌を行った。その後、60℃/hで225℃まで昇温を実施した。その後、減圧度を16kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、60℃/hで240℃まで昇温を実施し、同時に、減圧度を12kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、減圧度を8kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、減圧度を5.3kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、減圧度を2.7kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、減圧度を1.3kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、減圧度を1kPa以下に調整し、さらに60分間攪拌を行い、反応を終了させた。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。得られたポリカーボネート樹脂は、透明であった。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂の物性を下記表2に示した。
【0066】
(比較例2)
原料ジオールモノマーとしてスピログリコール(SPG)(30.61g、0.101モル)と、DPC(21.97g、0.103モル)と、触媒として炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、SPG1molに対し6×10-6mol)とを攪拌機および留出装置付きの300mL反応器に入れ、仕込み量以外は比較例1と同様に操作し、ポリカーボネート樹脂を得ることを試みたが、重合が進むと同時に結晶化が進行し、透明な重合体は得られなかった。製造条件を下記表1にまとめた。
【0067】
(参考例1)
原料ジオールモノマーとして、2:4-3:5-ジ-O-メチレン-D-マンニトール(DMAN-DOM)(7.48g、36.28mmol)及びビスフェノールA(BPA)(17.52g、76.74mmol)と、DPC(25.42g、118.66mmol)と、触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3、DMAN-DOMとBPAの合計1molに対し2×10-6mol)とを100mLの四つ口フラスコに精秤し、常温及び真空下で1時間減圧乾燥を行った。その後、窒素により3回置換し、反応系を窒素雰囲気下とした。
前記四つ口フラスコに、撹拌機及び留出装置を取り付け、窒素雰囲気下(圧力:101.3kPa)、180℃まで加熱した。加熱後に原料モノマーの完全溶解を確認した後、120℃/hの速度で200℃まで昇温を行い、同時に反応器内の圧力を27kPaまで減圧し、40分間撹拌を行った。その後、60℃/hの速度で210℃まで昇温を行った。その後、減圧度を24kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、60℃/hで220℃まで昇温を実施した。その後、60℃/hで230℃まで昇温を実施した。その後、減圧度を20kPaに調整し、10分間攪拌を行った。その後、60℃/hで240℃まで昇温を実施し、同時に、減圧度を14Paに調整し、10分間攪拌を行った。その後、60℃/hで250℃まで昇温を実施し、同時に、減圧度を7Paに調整し、10分間攪拌を行った。その後、60℃/hで260℃まで昇温を実施した。その後、60℃/hで270℃まで昇温を実施した。その後、減圧度を1kPa以下に調整し、さらに120分間攪拌を行い、反応を終了させた。反応終了後、反応器内に窒素を導入して常圧に戻し、ポリカーボネート樹脂を得た。製造条件を下記表1にまとめた。また、得られた樹脂の物性を下記表2に示した。
【0068】
【0069】
【0070】
表2の結果より、比較例1のガラス転移温度は低すぎ、参考例1の5%質量減少温度は実施例1~4と比べると高いことがわかる。
なお、上記実施例、比較例および参考例で用いたモノマー化合物の構造は以下の通りである。
【化16】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の熱可塑性樹脂、特にポリカーボネート樹脂は、耐熱性を有し、天然物由来の原料を用いて製造され得る樹脂として有用である。