(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】推定システム、及び推定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20240924BHJP
G06Q 50/16 20240101ALI20240924BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20240924BHJP
G01N 3/34 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
G01N29/12
G06Q50/16
G01N29/46
G01N3/34
(21)【出願番号】P 2020005835
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512098186
【氏名又は名称】株式会社ペガソス・エレクトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【氏名又は名称】松下 恵三
(72)【発明者】
【氏名】内田 成明
(72)【発明者】
【氏名】村松 正康
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康夫
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204334(JP,A)
【文献】特開2002-340726(JP,A)
【文献】特開平11-014782(JP,A)
【文献】特開2019-052441(JP,A)
【文献】特開2003-150646(JP,A)
【文献】特開平09-204459(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1648027(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第107145619(CN,A)
【文献】建築BIMの将来像と工程表,国土交通省のウェブページ [online],国土交通省,2019年09月,2023年10月10日検索, インターネット<https://www.milt.go.jp/jutakukentiku/build/content/001350733.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G06N 20/00-20/20
G06Q 50/16
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定システムであって、
前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する第1取得手段と、
予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第1参照情報と、の間における第1連関性が記憶された第1参照データベースと、
前記第1参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する第1生成手段と、
前記推定データに基づく推定結果を出力する出力手段と、
を備え、
前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の前記部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有すること、
且つ、前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された前記位置情報を有すること
を特徴とする推定システム。
【請求項2】
前記部材データは、前記部材の材料、大きさ、製品型番、及び製造ロットの少なくとも何れかを含み、
前記組合せデータは、建造物に関する設計図、建造物に関する施工図、及び製造物に関する設計図の少なくとも何れかを含むこと
を特徴とする請求項1記載の推定システム。
【請求項3】
前記推定結果に基づき出射されたレーザーを用いて、前記評価対象物に発生した振動を計測した振動データに基づく評価対象情報を取得する第2取得手段と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第2参照情報と、の間における第2連関性が記憶された第2参照データベースと、
前記第2参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する第2生成手段と、
を更に備えること
を特徴とする
請求項1又は請求項2記載の推定システム。
【請求項4】
前記推定データと、前記評価データとを比較した比較結果を生成する比較手段を更に備えること
を特徴とする
請求項3記載の推定システム。
【請求項5】
前記第2取得手段は、前記振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換した結果から、前記評価対象情報に含まれる第1データを取得すること
を特徴とする
請求項3記載の推定システム。
【請求項6】
前記評価対象情報及び前記過去の評価対象情報は、前記振動データを計測するために、前記評価対象物に対して前記振動を与えた方法に関する打音情報を含むこと
を特徴とする
請求項3記載の推定システム。
【請求項7】
前記第2参照情報は、前記評価対象物の内部に発生する欠陥の特徴に関する特徴情報を含むこと
を特徴とする
請求項3記載の推定システム。
【請求項8】
複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定システムであって、
前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する第1取得手段と、
予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第1参照情報と、の間における第1連関性が記憶された第1参照データベースと、
前記第1参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する第1生成手段と、前記推定データに基づく推定結果を出力する出力手段と、
前記推定結果に基づき出射されたレーザーを用いて、前記評価対象物に発生した振動を計測した振動データに基づく評価対象情報を取得する第2取得手段と、
予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第2参照情報と、の間における第2連関性が記憶された第2参照データベースと、
前記第2参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する第2生成手段と、
を備え、
前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報に対して注目すべき内容に関する情報を示す注目情報を有すること
を特徴とする推定システム。
【請求項9】
複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定装置であって、
前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する取得部と、
予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、
前記参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する生成部と、
前記推定データに基づく推定結果を出力する出力部と、
を備え、
前記参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の前記部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有すること、
且つ、前記参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された前記位置情報を有すること
を特徴とする推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定システム、及び推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物等の評価対象物を設計する際、設計方法を統一化する手段として、例えば特許文献1のようなBIMシステム等が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたBIMシステムは、制御部と記憶部と表示部とを少なくとも備える。前記記憶部は、建築物のBIMモデルを記憶するBIMモデル記憶手段と、パーツ情報を記憶するパーツ情報記憶手段と、を備える。前記制御部は、前記BIMパーツを作成する昇降機モデリング手段と、統合BIMモデルを作成する統合モデリング手段と、前記建築物の躯体及び前記BIMパーツの配置の情報と、前記躯体と前記BIMパーツとの相対的な位置を定めるための部材に関する情報と、前記統合BIMモデルに関する評価条件と、に基づき前記統合BIMモデルを評価するモデル評価手段と、前記モデル評価手段の評価結果を前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、建造物等の評価対象物は、施工後における状態の評価を、定期的に実施することが求められる。このとき、評価対象全体を評価するには、膨大な時間を費やす必要がある。特に、建造物においては、複数の部材を組合わせて形成されるため、部材の組合せによる僅かな差異によって建造物全体のバランスが変化し、評価すべき条件が変化する。このため、評価対象物の状態を効率的に評価することが、課題として挙げられている。
【0006】
この点、特許文献1の開示技術では、昇降機の据付時の安全性や、昇降機の耐震性等を評価できるが、パーツを組合わせた建築全体においてどのように評価すべきかを把握することができない。このため、上記課題を解決することができない。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、評価対象物の状態を効率的に評価することができる推定システム、及び推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る推定システムは、複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定システムであって、前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する第1取得手段と、予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第1参照情報と、の間における第1連関性が記憶された第1参照データベースと、前記第1参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する第1生成手段と、前記推定データに基づく推定結果を出力する出力手段と、を備え、前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の前記部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有することを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る推定システムは、第1発明において、前記部材データは、前記部材の材料、大きさ、製品型番、及び製造ロットの少なくとも何れかを含み、前記組合せデータは、建造物に関する設計図、建造物に関する施工図、及び製造物に関する設計図の少なくとも何れかを含むことを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る推定システムは、第1発明において、前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された前記位置情報を有することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る推定システムは、第1発明~第3発明において、前記推定結果に基づき出射されたレーザーを用いて、前記評価対象物に発生した振動を計測した振動データに基づく評価対象情報を取得する第2取得手段と、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の前記過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第2参照情報と、の間における第2連関性が記憶された第2参照データベースと、前記第2参照データベースを参照し、前記評価対象情報に対する評価データを生成する第2生成手段と、を更に備えることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る推定システムは、第4発明において、前記推定データと、前記評価データとを比較した比較結果を生成する比較手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る推定システムは、第4発明において、前記第2取得手段は、前記振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換した結果から、前記評価対象情報に含まれる第1データを取得することを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る推定システムは、第4発明において、前記評価対象情報及び前記過去の評価対象情報は、前記振動データを計測するために、前記評価対象物に対して前記振動を与えた方法に関する打音情報を含むことを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る推定システムは、第4発明において、前記第2参照情報は、前記評価対象物の内部に発生する欠陥の特徴に関する特徴情報を含むことを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る推定システムは、複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定システムであって、前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する第1取得手段と、予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の第1参照情報と、の間における第1連関性が記憶された第1参照データベースと、前記第1参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する第1生成手段と、前記推定データに基づく推定結果を出力する出力手段と、を備え、前記第1参照情報は、紐づけられた前記過去の推定対象情報に対して注目すべき内容に関する情報を示す注目情報を有することを特徴とする。
【0017】
第10発明に係る推定装置は、複数の部材を組合わせた評価対象物の状態を推定する推定装置であって、前記部材の特徴を示す複数の部材データと、前記評価対象物に含まれる複数の前記部材の組合せを示す組合せデータと、を有する推定対象情報を取得する取得部と、予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の前記過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報と、の間における連関性が記憶された参照データベースと、前記参照データベースを参照し、前記推定対象情報に対する推定データを生成する生成部と、前記推定データに基づく推定結果を出力する出力部と、を備え、前記参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の前記部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第9発明によれば、第1生成手段は、第1参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた推定データを生成することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0019】
また、第1発明~第8発明によれば、第1参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有する。このため、評価対象物毎に異なる部材や部材の組合せに対し、最適な位置情報に基づく推定結果を出力することができる。これにより、評価対象物の形成時や形成後において注意すべき位置を容易に把握することが可能となる。
【0020】
特に、第2発明によれば、部材データは、部材の材料、大きさ、製品型番、及び製品ロットの少なくとも何れかを含む。このため、部材毎の詳細な特徴を踏まえた推定結果を出力することができる。これにより、推定結果の精度向上を図ることが可能となる。
【0021】
特に、第3発明によれば、第1参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された位置情報を有する。このため、蓄積された情報が少ない部材や、部材の組合せに関しても、容易に推定結果を出力することができる。これにより、推定システムの用途拡大を図ることが可能となる。
【0022】
特に、第4発明によれば、特定手段は、推定結果又は推定データに基づき、評価対象物の評価領域を特定する。このため、評価対象物に対して重点的に評価すべき部分を容易に把握することができる。これにより、利用者等の経験に依存する評価バラつきを抑制することが可能となる。
【0023】
特に、第4発明によれば、第2生成手段は、第2参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた評価データを生成することができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0024】
特に、第5発明によれば、比較手段は、推定データと、評価データとを比較した比較結果を生成する。このため、推定データを基準とした評価データの定量的な評価を実現することができる。これにより、利用者等の主観を排除した評価結果を実現することが可能となる。
【0025】
特に、第6発明によれば、第2取得手段は、信号パターンをフーリエ変換した結果から、第1データを取得する。このため、評価対象物における状態の差異に伴う僅かな振動データの違いに対しても、状態の差異を反映させた評価結果を出力することができる。これにより、評価対象物の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0026】
特に、第7発明によれば、評価対象情報及び過去の評価対象情報は、振動データを計測するために、評価対象物に対して振動を与えた方法に関する打音情報を含む。このため、評価対象物に振動を与える様々な打音方法毎に、最適な評価データを生成することができる。これにより、得られる評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0027】
特に、第8発明によれば、第2参照情報は、評価対象物の内部に発生する欠陥の特徴に関する特徴情報を含む。このため、評価対象物の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、外観では判断できない内部状態の評価結果を高精度に得ることが可能となる。
【0028】
また、第9発明によれば、第1参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報に対して注目すべき内容に関する情報を示す注目情報を有する。このため、評価対象物毎に異なる部材や部材の組合せに対し、注目すべき内容を含んだ推定結果を出力することができる。これにより、評価対象物の形成時や形成後において注目すべき内容を容易に把握することが可能となる。
【0029】
第10発明によれば、生成部は、参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた推定データを生成することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0030】
また、第10発明によれば、参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有する。このため、評価対象物毎に異なる部材の組合せに対し、最適な位置情報に基づく推定結果を出力することができる。これにより、評価対象物の形成時や形成後において注意すべき位置を容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第1実施形態における推定システムの概要の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における推定システムの動作の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、参照データベースの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、参照データベースの他の例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、参照データベースのさらに他の例を示す模式図である。
【
図6】
図6(a)は、第1実施形態における推定装置における構成の一例を示す模式図であり、
図6(b)は、第1実施形態における推定装置における機能の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態における推定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態における推定システムの概要の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態における推定システムの動作の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10(a)は、振動データの一例を示すグラフであり、
図10(b)は、信号パターンをフーリエ変換したデータの一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、評価用参照データベースの一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、評価用参照データベースの他の例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、評価用参照データベースのさらに他の例を示す模式図である。
【
図14】
図14(a)は、第2実施形態における推定装置における構成の一例を示す模式図であり、
図14(b)は、第2実施形態における推定装置における機能の一例を示す模式図である。
【
図15】
図15(a)は、評価データと、基準評価データとを比較した結果の一例を示す模式図であり、
図15(b)は、画像情報の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態における推定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を適用した実施形態における推定システム、及び推定装置の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1、2を参照して、第1実施形態における推定システム100、及び推定装置1の一例について説明する。
図1は、本実施形態における推定システム100、及び推定装置1の概要の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態における推定システム100、及び推定装置1の動作の一例を示す模式図である。
【0034】
(推定システム100)
推定システム100は、複数の部材を組合わせた評価対象物9の状態を推定するために用いられる。推定システム100を用いることで、評価対象物9において評価すべき条件を推定することができる。このため、例えば評価対象物9において欠陥が発生する可能性の高い場所や、経時変化が発生し易い箇所等を推定でき、評価すべき条件を特定することができる。
【0035】
評価対象物9は、例えばトンネルや橋梁等の建造物、ビル等の建築物、工場や住宅等の設備機器に接続された管工機材等を示す。評価対象物9は、例えば車両や電子機器を示してもよく、例えば打音により振動が発生する物質により製造された物を含む。
【0036】
推定システム100は、例えば
図1に示すように、推定装置1を備える。推定装置1は、例えば通信網4を介して端末5やサーバ6等と接続されてもよい。
【0037】
推定システム100では、例えば
図2に示すように、推定装置1は、推定対象情報を取得する。推定対象情報は、部材の特徴を示す複数の部材データと、評価対象物9に含まれる複数の部材の組合せを示す組合わせデータとを有する。
【0038】
その後、推定装置1は、参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成し、推定データに基づく推定結果を出力する。推定結果は、例えば組合せデータの中で、複数の部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有する。位置情報は、例えば「○○の位置に負荷が集中する可能性あり」等の文字列を示すほか、例えば少なくとも一部の部材に対し、作用する負荷を示すデータや、負荷が集中する可能性を百分率等で示してもよい。
【0039】
推定システム100を用いることで、例えば評価対象物9の設計時に、想定される負荷の集中箇所や、注目すべき内容が推定できる。このため、推定結果を踏まえた設計の見直しのほか、評価対象物9の形成後において重点的に評価すべき部分の特定等のような、評価対象物9毎に適切な評価条件を推定することができる。これにより、評価対象物9の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0040】
以下、推定システム100に用いられる部材データ、組合せデータ、及び参照データベースについて説明する。
【0041】
<部材データ>
部材データは、評価対象物9を形成する際に必要となる部材の特徴を示す。部材データは、例えば部材の材料、大きさ、製品型番、及び製造ロットの少なくとも何れかを含む。部材の材料は、例えばコンクリート、鋼板、組成等の材料種類を含むほか、例えば材料の重さ、密度、ヤング率等の物性値を示してもよい。部材の大きさは、寸法、体積、表面積、形状等を示す。部材データは、例えば硬質材料、セラミック、分散剤等の材料種類を含んでもよい。
【0042】
<組合せデータ>
組合せデータは、評価対象物9を形成する際に必要となる複数の部材の組合せの関係を示す。組合せデータは、例えば建造物に関する設計図、建造物に関する施工図、及び製造物に関する設計図の少なくとも何れかを含む。組合せデータは、2次元又は3次元で示されたデータであれば任意であり、例えば3Dプリンタのデータでもよい。
【0043】
<参照データベース>
参照データベース(第1参照データベース)には、予め取得された複数の過去の推定対象情報と、複数の過去の推定対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の参照情報(第1参照情報)と、の間における連関性(第1連関性)が記憶される。連関性は、例えば過去の推定対象情報、及び参照情報を一組の学習データとして、複数の学習データを用いた公知の機械学習により構築される。機械学習として、畳み込みニューラルネットワーク等の深層学習が用いられるほか、例えばランダムフォレストや、SVM(Support Vector Machine)等のような公知の技術が用いられてもよい。
【0044】
この場合、例えば連関性は、多対多の情報(複数の過去の推定対象情報、対、複数の参照情報)の間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば過去の推定対象情報、及び参照情報に基づいて最適化された関数(分類器)を示す。このため、推定システム100では、過去に同一又は類似する複数の評価対象物9の状態を推定した結果を全て踏まえた連関性を用いて、推定対象情報に対する推定データを生成することができる。これにより、複雑な部材の組合せが推定対象情報に含まれる場合においても、最適な推定データを生成することができる。また、推定対象情報が、過去の推定対象情報と同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、最適な推定データを定量的に生成することができる。なお、機械学習を行う際に汎化能力を高めることで、未知の推定対象情報に対する推定精度の向上を図ることができる。
【0045】
参照データベースには、例えば機械学習の学習データに用いられた過去の推定対象情報、及び参照情報が記憶されてもよい。なお、連関性は、例えば各情報の間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えば参照データベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0046】
過去の推定対象情報は、上述した推定対象情報と同種の情報を示す。過去の推定対象情報は、複数の過去の部材データと、過去の組合せデータとを有するほか、例えば過去の部材データ、及び過去の組合せデータの何れかのみを有してもよい。
【0047】
参照情報は、過去の推定対象情報に紐づき、過去に推定又は評価した評価対象物9の状態に関する情報を示す。このため、参照情報を用いることで、評価対象物9毎に異なる評価すべき条件を推定することができる。
【0048】
参照情報は、例えば位置情報を有する。位置情報は、参照情報に紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す。参照情報は、例えば紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の部材データ毎に作用する負荷の度合いを示してもよい。
【0049】
参照情報は、例えば注目情報を有してもよい。注目情報は、例えば参照情報に紐づけられた過去の推定対象情報において、過去に発生した事例、懸念事項、動作に関わる重要箇所、価値評価に影響を与える箇所等の、過去の推定対象情報に対して注目すべき内容に関する情報を示す。注目情報は、例えば過去の推定対象情報に基づく評価対象物9において、落下や使用に伴い欠陥が集中し易い箇所の情報を含む。
【0050】
参照情報は、例えば紐づけられた過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された結果を用いてもよい。シミュレーションの方法として、例えば有限要素法等の公知の技術を用いることができる。また、参照情報として、例えば過去の推定対象情報に紐づく公知の情報(例えばインターネット上の情報等)や、利用者等の所属する組織に蓄積された情報等が用いられてもよい。
【0051】
参照情報は、例えば推定特徴情報を有してもよい。推定特徴情報は、例えば組合せデータ、及び複数の部材データに基づき、部材の選択、又は部材の組合せの内容が適しているか否かを示す。推定特徴情報は、例えば「最適」、「改善の余地あり」、「○○の部材を□□の部材へ変更することを推奨」等の組合せに関する情報を示すほか、例えば百分率等の数値により最適な度合いを示してもよい。
【0052】
推定特徴情報は、例えば評価対象物9を形成後、評価対象物9に発生する可能性のある欠陥の特徴に関する情報を含む。推定特徴情報は、評価対象物9内におけるひび割れの深さ、評価対象物9の厚さ方向に対するひび割れの角度、幅、テーパー角、空隙率、含水率、及び枝分かれ数の少なくとも何れかを含む。
【0053】
推定特徴情報は、「ひび割れの深さ15mm」、「ひび割れの幅13mm」等の一定値を示す値を含むほか、例えば「ひび割れの深さ10~20mm」、「ひび割れの幅5~10mm」等の範囲を示す値を含んでもよく、値の表示方法については任意である。
【0054】
推定特徴情報は、例えば評価対象物9の内部における異物混入の可能性、及び電子部材におけるはんだ付け部の不良(例えばはんだと基板との離間箇所、離間距離、異物噛み込みの有無等)の可能性の少なくとも何れかを含んでもよい。
【0055】
なお、参照情報は、例えば評価対象物9の形成後における一定期間毎に対応する推定特徴情報を有してもよい。この場合、推定特徴情報は、例えば「1年後:○○部分にひび割れ発生の可能性あり」、「3年後:□□部分に幅13mmのひび割れ発生の可能性あり」等の情報を含んでもよい。また、例えば参照情報は、「□□の範囲で計測することが望ましい」等の評価対象物9の具体的な評価条件に関する情報を含んでもよい。
【0056】
連関性は、例えば
図3に示すように、複数の過去の推定対象情報と、複数の参照情報との間における繋がりの度合いを示してもよい。この場合、連関性を用いることで、複数の過去の推定対象情報(
図4では「対象A」~「対象C」)のそれぞれに対し、複数の参照情報(
図3では「参照A」~「参照C」)の関係の度合いを紐づけて記憶させることができる。このため、例えば連関性を介して、1つの過去の推定対象情報に対して、複数の参照情報を紐づけることができ、多角的な推定データの生成を実現することができる。
【0057】
連関性は、各過去の推定対象情報と、各参照情報とをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、過去の推定対象情報に含まれる「対象A」は、参照情報に含まれる「参照A」との間の連関度AA「62%」を示し、参照情報に含まれる「参照B」との間の連関度AB「26%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。なお、上述した機械学習により連関性を構築する際、連関性が3段階以上の連関度を有するように設定してもよい。
【0058】
連関度は、例えば
図4に示すように、過去の推定対象情報の2以上の組み合わせ(
図4の破線)を1つの対象データとして、複数の参照情報とを紐づけてもよい。例えば、過去の推定対象情報に含まれる「対象A」、及び「対象D」の組み合わせは、「参照A」との間の連関度ADA「25%」を示し、「参照B」との間の連関度ADB「17%」を示す。この場合、参照データベースを参照して推定する推定対象情報が、「対象A」及び「対象D」の何れにも類似する場合等においても、定量的な推定を実施することができる。
【0059】
なお、例えば
図5に示すように、過去の推定対象情報に含まれる部材データ(
図5では「部材A」~「部材C」)と、組合せデータ(
図5では「組合せA」~「組合せC」)とを組み合わせたデータに対して、参照情報が紐づけられてもよい。
図3~
図5に示した連関性は、例えば上述した機械学習により構築されてもよい。
【0060】
上述した連関度を用いることで、それぞれ複数のデータを有する過去の推定対象情報と、参照情報との間における複雑な関係性を、高精度に表現することができる。このため、複雑な部材の組合せが推定対象情報に含まれる場合においても、最適な推定データを生成することができる。また、推定対象情報に含まれる未知の部材データや組合せデータに対しても、高精度な評価条件の推定を実現することができる。
【0061】
(推定装置1)
次に、
図6を参照して、本実施形態における推定装置1の一例を説明する。
図6(a)は、本実施形態における推定装置1の構成の一例を示す模式図であり、
図6(b)は、本実施形態における推定装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0062】
推定装置1として、ラップトップ(ノート)PC又はデスクトップPC等の電子機器が用いられる。推定装置1は、例えば
図6(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0063】
CPU101は、推定装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、参照データベースや推定対象情報等の各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(Solid State Drive)等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば推定装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0064】
I/F105は、データ通信手段を介して、必要に応じて通信網4を介して、端末5やサーバ6等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部分108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108として、例えばキーボードが用いられ、推定装置1の利用者等は、入力部分108を介して、各種情報、又は推定装置1若しくは計測装置2等の制御コマンド等を入力する。I/F107は、出力部分109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109は、保存部104に保存された各種情報、又は推定装置1の処理状況等を出力する。出力部分109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0065】
図6(b)は、推定装置1の機能の一例を示す模式図である。推定装置1は、取得部11と、生成部12と、出力部13と、記憶部14とを備え、例えば更新部15を有してもよい。なお、
図6(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0066】
<取得部11>
取得部11は、複数の部材データと、組合せデータとを有する推定対象情報を取得する。取得部11は、例えば入力部分108を介して利用者等により入力された推定対象情報を取得するほか、例えば端末5やサーバ6から推定対象情報を取得してもよい。取得部11は、例えば部材の名称等の一部の部材データを取得した後、部材データの詳細を保存部104又はサーバ6から取出し、推定対象情報として取得してもよい。この場合、保存部104又はサーバ6には、予め複数の部材データが記憶される。
【0067】
<生成部12>
生成部12は、参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。生成部12は、例えば連関性を介して、推定対象情報に紐づく1以上の参照情報を選択し、選択した参照情報を反映した推定データを生成する。
【0068】
生成部12は、例えば選択した複数の参照情報のうち、推定対象情報と紐づく連関度が最も高い参照情報を抽出し、推定データとして生成する。なお、抽出される参照情報は複数でもよく、その場合、例えば予め設定された閾値以上の連関度に紐づく参照情報を抽出するようにしてもよい。
【0069】
生成部12は、例えば
図3に示したような参照データベースを参照した場合、推定対象情報と同一又は類似する過去の推定対象情報(例えば「対象A」:第1対象データとする)を選択する。過去の推定対象情報として、推定対象情報と一部一致又は完全一致する対象データが選択されるほか、例えば類似する対象データが選択される。なお、選択される類似度の度合いについては、任意に設定できる。また、第1対象データとして、複数の対象データが選択されてもよい。
【0070】
生成部12は、選択した第1対象データに紐づく参照情報(第1参照データとする)、及び第1対象データと第1参照データとの間における連関度(例えば連関度AA:第1連関度とする)を選択する。例えば生成部12は、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照A」、及び「対象A」と「参照A」との間における第1連関度「62%」を選択し、選択した各データを含む推定データを生成する。
【0071】
また、参照データ及び連関度を複数選択する場合、上述した「参照A」及び「62%」に加えて、第1対象データ「対象A」に紐づく第1参照データ「参照B」、及び「対象A」と「参照B」との間における第1連関度「26%」、等を、第1参照データ及び第1連関度として選択してもよい。このように、生成部12は、選択された第1参照データ及び第1連関度を含む推定データを生成する。
【0072】
<出力部13>
出力部13は、推定データに基づく推定結果を出力する。出力部13は、例えば保存部104に予め記憶された表示用のフォーマットを用いて、推定データを利用者等が理解できる文字列等に変換した推定結果を生成し、出力する。出力部13は、I/F107を介して出力部分109に推定結果を送信するほか、例えばI/F105を介して、端末5等に推定結果を送信する。
【0073】
例えば参照情報が位置情報を有する場合、出力部13は、位置情報のうち、推定対象情報に紐づく位置情報(例えば第1位置情報)を含ませた推定結果を生成する。このため、評価対象物9を形成した際、欠陥が発生する可能性の高い位置を、定量的に推定することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物9の状態を効率的に評価するための評価条件を把握することが可能となる。
【0074】
例えば参照情報が注目情報を有する場合、出力部13は、注目情報のうち、推定対象情報に紐づく注目情報(例えば第1注目情報)を含ませた推定結果を生成する。このため、評価対象物9を形成した際、注目すべき内容を定量的に推定することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物9の状態を効率的に評価するための評価条件を把握することが可能となる。
【0075】
例えば参照情報が推定特徴情報を有する場合、出力部13は、推定特徴情報のうち、推定対象情報に紐づく推定特徴情報(例えば第1推定特徴情報)を含ませた推定結果を生成する。このため、評価対象物9を形成した際の内部状態を、定量的に推定することができる。
【0076】
<記憶部14>
記憶部14は、保存部104に保存された参照データベース等の各種データを必要に応じて取出す。記憶部14は、各構成11~13、15により取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104に保存する。
【0077】
<更新部15>
更新部15は、例えば参照データベースを更新する。更新部15は、過去の推定対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させる。例えば出力部13により出力された推定結果を踏まえて、利用者等が推定結果の精度を検討し、検討結果を推定装置1が取得した場合、更新部15は、検討結果に基づき参照データベースに含まれる連関性を更新する。連関性の更新は、例えば機械学習を用いる。
【0078】
<通信網4>
通信網4は、例えば推定装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。通信網4は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信網で実現してもよい。
【0079】
<端末5>
端末5は、例えば通信網4を介して、推定装置1と接続される。端末5は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。端末5は、例えば推定装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。
【0080】
<サーバ6>
サーバ6は、例えば通信網4を介して、推定装置1と接続される。サーバ6は、過去の推定に用いられた各種データ等が記憶され、必要に応じて推定装置1から各種データが送信される。
【0081】
(第1実施形態:推定システム100の動作の一例)
次に、本実施形態における推定システム100の動作の一例について説明する。
図7は、本実施形態における推定システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
推定システム100は、例えば
図7に示すように、取得手段S110と、生成手段S120と、出力手段S130とを備え、例えば更新手段S140を備えてもよい。
【0083】
<取得手段S110>
取得手段S110は、複数の部材データと、組合せデータとを有する推定対象情報を取得する。取得部11は、例えば組合せデータに示す組合せに用いられる必要最低限の部材データを取得するほか、例えば組合せに用いられる候補に挙げられた部材データも取得してもよい。また、取得部11は、例えば複数の部材データに対し、組合せの候補となる複数の組合せデータを取得してもよい。取得部11は、例えば記憶部14を介して、取得した推定対象情報を保存部104に保存する。
【0084】
<生成手段S120>
生成手段S120は、参照データベース(第1参照データベース)を参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。例えば生成部12は、参照データベースに記憶された連関性(第1連関性)を介し、推定対象情報との関係の度合いが高い参照情報(第1参照データ)を抽出する。生成部12は、抽出した第1参照データを含む推定データを生成する。生成部12は、例えば記憶部14を介して、生成した推定データを保存部104に保存する。
【0085】
上記のほか、例えば生成部12は、参照データベースに記憶された過去の推定対象情報のうち、推定対象情報と同一又は類似する情報を含む第1対象データを選択する。生成部12は、参照データベースに記憶された参照情報のうち、選択した第1対象データに紐づく第1参照データを選択し、第1対象データと第1参照データとの間における第1連関度を選択する。その後、生成部12は、例えば選択した第1参照データを含む推定データを生成するほか、例えば推定データに、第1連関度、及び推定対象情報の少なくとも何れかを含ませて生成してもよい。
【0086】
<出力手段S130>
出力手段S130は、例えば推定データに基づく推定結果を出力する。例えば出力部13は、推定データを利用者等が理解できる文字列等に変換した推定結果を生成し、出力する。
【0087】
これにより、本実施形態における推定システム100の動作が終了する。なお、推定システム100では、例えば更新手段S140を行ってもよい。
【0088】
<更新手段S140>
更新手段S140は、例えば過去の推定対象情報と、参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を連関性に反映させる。例えば更新部15は、推定結果に対する利用者等の検討結果に基づき、参照データベースに含まれる連関性を更新する。なお、更新部15を実施するタイミングや頻度は、任意である。
【0089】
本実施形態によれば、生成手段S120は、参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた推定データを生成することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物9の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態によれば、参照情報は、例えば紐づけられた過去の推定対象情報の有する過去の組合せデータの中で、複数の部材の組合せによって負荷が集中する位置を示す位置情報を有する。このため、評価対象物9毎に異なる部材や部材の組合せに対し、最適な位置情報に基づく推定結果を出力することができる。これにより、評価対象物の形成時や形成後において注意すべき位置を容易に把握することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態によれば、参照情報は、例えば紐づけられた過去の推定対象情報に対して注目すべき内容に関する情報を示す注目情報を有する。このため、評価対象物毎に異なる部材や部材の組合せに対し、注目すべき内容を含んだ推定結果を出力することができる。これにより、評価対象物9の形成時や形成後において注目すべき内容を容易に把握することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態によれば、部材データは、部材の材料、大きさ、製品型番、及び製品ロットの少なくとも何れかを含む。このため、部材毎の詳細な特徴を踏まえた推定結果を出力することができる。これにより、推定結果の精度向上を図ることが可能となる。
【0093】
また、本実施形態によれば、参照情報は、紐づけられた過去の推定対象情報に基づき、シミュレーションによって導出された位置情報を有する。このため、蓄積された情報が少ない部材や、部材の組合せに関しても、容易に推定結果を出力することができる。これにより、推定システム100の用途拡大を図ることが可能となる。
【0094】
また、本実施形態によれば、生成部12は、参照データベースを参照し、推定対象情報に対する推定データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた推定データを生成することができる。これにより、出力された推定結果を用いて、評価対象物9の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における推定システム100、及び推定装置1について、
図8及び
図9を参照して説明する。上述した実施形態と、第2実施形態との違いは、評価対象物9を評価する点である。なお、上述した実施形態と同様の内容に関しては、説明を省略する。
【0096】
本実施形態における推定システム100は、複数の部材を部材データに基づき形成した評価対象物9に対し、評価した評価データを生成する。推定システム100は、例えば推定結果に基づく評価領域9aを評価対象とする。
【0097】
評価領域9aは、例えば評価対象物9の構造において、重点的に評価したほうがよい部分を示す。評価領域9aは、上述した推定結果に明示されるほか、例えば推定結果を踏まえて利用者等が設定してもよい。推定システム100では、例えば評価領域9aを評価することで、効率的に評価結果を取得することができる。
【0098】
推定システム100では、例えば評価領域9aに対し、パルスレーザー等を用いた打音方法により、評価対象物9に振動を発生させる。その後、例えばレーザー干渉計を用いて、評価対象物9に発生した振動を計測し、振動データを生成する。すなわち、評価対象物9に対して非接触を維持した状態で、振動データを計測することができる。このため、例えば評価対象物9に対して接触して振動データを計測する方法に比べ、接触に伴う振動データのバラつきを抑制することができる。なお、評価対象物9に振動を発生させる打音方法として、上述したパルスレーザーを用いるほか、ハンマー、スピーカ、ガス、ウォータージェット等のような、公知のものを用いた方法が行われてもよい。
【0099】
推定システム100では、レーザーを用いて評価対象物9の振動を計測する。また、推定システム100では、過去に評価を実施した情報を利用する。このため、例えば超音波法のような評価対象物9に接触して計測する方法に比べ、非接触で振動データを生成することができる。このため、推定システム100は、過去に評価を実施した情報を利用する際、計測条件に伴うバラつきの影響を抑制した振動データに対する評価を実現することができる。これにより、評価対象物9の状態の評価を、効率的且つ高精度に評価を実施することが可能となる。
【0100】
推定システム100は、例えば
図8に示すように、推定装置1aを備えるほか、例えば計測装置2及び振動装置3の少なくとも何れかを備える。推定装置1aは、例えば計測装置2と接続されるほか、振動装置3や撮像装置7等と接続されてもよく、通信網4を介して端末5やサーバ6等と接続されてもよい。なお、推定装置1aは、例えば計測装置2等の機能を備えてもよい。
【0101】
推定システム100は、例えば
図9に示すように、評価対象物9の評価領域9aを対象として、評価対象物9の状態を評価する。推定システム100は、例えば振動装置3を用いて評価対象物9に振動を発生させ、計測装置2を用いて振動を計測する。このとき、計測装置2は、レーザーを出射し、評価対象物9に反射したレーザーを受光することで、振動を計測して振動データを生成する。推定システム100では、例えば外観から推定できる欠陥部91の近辺における振動を計測してもよい。
【0102】
そして、推定装置1aは、評価対象情報を取得する。評価対象情報は、例えば計測装置2により計測された振動データに基づくデータ(第1データ)を含む。その後、推定装置1aは、評価用参照データベース(第2参照データベース)を参照し、評価対象情報に対する評価データを生成し、例えば評価データに基づく評価結果を出力する。これにより、例えば評価対象物9の状態を示す指標を、評価結果として出力することができる。
【0103】
なお、推定システム100は、評価対象物9の内部状態を評価することができるため、例えば欠陥部91におけるひびの深さ等のような評価対象物9の内部状態を、評価結果として出力することができる。なお、評価結果は、評価対象物9の状態に関する内容(例えば「正常」、「異常」等)を1つ表示するほか、例えば「[深さ]30mm:50%、20mm:20%」等のように複数の候補を表示してもよい。
【0104】
以下、推定システム100に用いられる振動データ、評価対象情報、及び評価用参照データベースについて説明する。
【0105】
<振動データ>
振動データは、上述した推定結果に基づき出射されたレーザーを用いて、評価対象物9に発生した振動を計測することで生成される。振動データは、例えば計測装置2によって生成される。
【0106】
振動データは、例えば
図10(a)に示すように、時間(Time(s))に対する速度(Velocity(m/s))で表される時間波形の信号パターンを含む。振動データは、公知の振動計測結果を用いることができる。振動データは、例えば振動発生のタイミングから10~50msec程度後までの信号パターンを含み、状況に応じて任意に設定することができる。
【0107】
信号パターンは、主に評価対象物9の表面を経由する表面波、及び評価対象物9の内部を経由する内部弾性波の重ね合わせによる複雑な形状を示す。このため、信号パターンは、振動を発生させる打音方法、計測位置、評価対象物9の状態(例えば欠陥部91の形状)によって得られる内容が異なる。この点、推定システム100では、信号パターンに基づく評価を行うことができる。このため、厳密な測定位置を必須のパラメータとする必要が無い。また、測定位置を必須のパラメータとしないため、測定位置と、評価対象物9における欠陥部91の位置との距離を算出しなくてもよい。このため、評価対象物9における欠陥部91が内部のみに発生し、評価対象物9の表面に達していない場合においても、高精度な評価結果を得ることが可能となる。
【0108】
<評価対象情報>
評価対象情報は、例えば第1データを含む。第1データは、例えば時間波形の信号パターンをフーリエ変換したデータ(例えば
図10(b))から取得する。フーリエ変換したデータは、例えば周波数(Frequency(Hz))に対する強度(Magnitude)で示すことができる。この場合、フーリエ変換したデータから、例えば特徴的な値を複数抽出し、第1データとして取得する。このため、時間波形の信号パターンを直接評価する場合に比べて、重ね合わさった振動全体の特徴を評価対象とすることができる。これにより、評価対象物9における状態の差異に伴う僅かな振動データの違いに対しても、明確な違いを示す評価結果を出力することができる。
【0109】
上記のほか、例えば時間波形の信号パターンから特徴的な値を複数抽出し、評価対象情報に含まれる第1データとして取得してもよい。この場合、フーリエ変換等の処理を実行する必要がなく、データ処理工程の増加を抑制することができる。なお、上述した「特徴的な値」を抽出する方法として、例えば主成分分析等の公知技術を用いることができる。これにより、利用者等の主観を含めることなく評価に必要なデータ量を削減できる。また、不要なデータ(ノイズ)を削除することで、精度向上を図ることができる。
【0110】
評価対象情報は、例えば信号パターンからメル周波数スペクトルに変換したデータ、又はメル周波数ケプストラム係数(MFCC:Mel Frequency Cepstrum Coefficients)から取得してもよい。評価対象情報として、行列(例えばベクトル)形式のデータが取得されるほか、例えばスペクトログラム等のような画像形式のデータが取得されてもよい。
【0111】
評価対象情報は、例えば打音情報を含む。打音情報は、振動データを計測するために、評価対象物9に振動を与えた方法(即ち打音方法)に関する情報を示す。打音情報は、例えば評価対象物9に振動を与えるパルスレーザー、ハンマー、スピーカ、ガス、又はウォータージェット等の打音方法毎に異なる識別情報を含むほか、例えばパルスレーザーの発振条件や照射角度のほか、ハンマーの種類や振動を与える時間等の打音条件に関する情報を含んでもよい。評価対象情報が打音情報を含むことで、打音方法の違いに起因する僅かな信号パターンの差異についても、評価結果に反映することができるほか、例えば打音方法別に異なる検査を行うこともできる。
【0112】
<評価用参照データベース>
評価用参照データベース(第2参照データベース)には、予め取得された複数の過去の評価対象情報と、複数の過去の評価対象情報にそれぞれ紐づけられた複数の評価用参照情報(第2参照情報)と、の間における評価用連関性(第2連関性)が記憶される。評価用連関性は、例えば過去の評価対象情報、及び評価用参照情報を一組の学習データとして、複数の学習データを用いた公知の機械学習により構築される。機械学習として、畳み込みニューラルネットワーク等の深層学習が用いられるほか、例えばランダムフォレストや、SVM(Support Vector Machine)等のような公知の技術が用いられてもよい。
【0113】
この場合、上述した参照データベース(第1参照データベース)と同様に、例えば評価用連関性は、多対多の情報(複数の過去の評価対象情報、対、複数の評価用参照情報)の間における繋がりの度合いにより構築される。評価用連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば過去の評価対象情報、及び評価用参照情報に基づいて最適化された関数(分類器)を示す。このため、推定システム100では、過去に同一又は類似する複数の評価対象物9の状態を評価した結果を全て踏まえた評価用連関性を用いて、評価対象情報に対する評価データを生成することができる。これにより、複雑な振動データに基づく情報が評価対象情報に含まれる場合においても、最適な評価データを生成することができる。また、評価対象情報が、過去の評価対象情報と同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、最適な評価データを定量的に生成することができる。なお、機械学習を行う際に汎化能力を高めることで、未知の評価対象情報に対する評価精度の向上を図ることができる。
【0114】
評価用参照データベースには、例えば機械学習の学習データに用いられた過去の評価対象情報、及び評価用参照情報が記憶されてもよい。なお、評価用連関性は、例えば各情報の間における繋がりの度合いを示す複数の評価用連関度を有してもよい。評価用連関度は、例えば評価用参照データベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0115】
過去の評価対象情報は、上述した評価対象情報と同種の情報を示す。過去の評価対象情報が打音情報を含む場合、信号パターンに基づくデータと、打音情報とを一組の入力データとして、機械学習に用いることができる。上記のほか、例えば打音情報毎に分別した評価対象情報を入力データとして機械学習を行ってもよいほか、打音情報毎にアンサンブル学習を行ってもよい。
【0116】
評価用参照情報は、過去の評価対象情報に紐づき、過去に評価した評価対象物9の状態に関する情報を示す。評価用参照情報は、例えば評価対象物9に発生する欠陥の特徴に関する特徴情報を含む。特徴情報は、例えば評価対象物9内におけるひび割れの深さ、評価対象物9の厚さ方向に対するひび割れの角度、幅、テーパー角、空隙率、含水率、及び枝分かれ数の少なくとも何れかを含み、評価対象物9の表面画像のみでは判断できない状態を示す。特徴情報は、「ひび割れの深さ15mm」、「ひび割れの幅13mm」等の一定値を示す値を含むほか、例えば「ひび割れの深さ10~20mm」、「ひび割れの幅5~10mm」等の範囲を示す値を含んでもよく、値の表示方法については任意である。
【0117】
特徴情報は、例えば評価対象物9の内部における異物混入の有無、及び電子部材におけるはんだ付け部の状態(例えばはんだと基板との離間箇所、離間距離、異物噛み込みの有無等)の少なくとも何れかを含んでもよい。
【0118】
評価用参照情報は、例えば評価対象物9の状態を分類する分類情報を含んでもよい。分類情報は、例えば「健全(正常)」、「欠陥(異常)」等の断定的な分類を含むほか、例えば「ひび割れの深さが××mm以上」、「影響の範囲が広い可能性あり」等の欠陥部91の特徴や判断の指標を分類した内容を含んでもよい。なお、評価用参照情報は、例えば過去の検査結果の具体例を含んでもよく、例えば「2015年1月3日 ○○生産時の欠陥と類似」、「2011年9月5日 ○○生産品ではひび割れが××mmに拡大」、「2011年11月1日 ライン停止」等の経年変化や処置履歴等を含んでもよく、内容の組み合わせ等は任意に設定できる。
【0119】
評価用連関性は、例えば
図11~
図13に示すように、複数の過去の評価対象情報と、複数の評価用参照情報との間における繋がりを示してもよい。なお、評価用連関性の詳細は、上述した
図3~
図5を用いた説明の内容と同様のため、説明を省略する。
【0120】
評価用参照データベースには、例えば基準評価データが記憶されてもよい。基準評価データは、評価データを評価するための基準として予め取得され、評価用参照データベースに記憶される。基準評価データとして、例えば評価対象物9の健全な状態に対応するデータが用いられる。
【0121】
評価用参照データベースには、例えば画像情報が記憶されてもよい。画像情報は、評価対象物9の表面を撮像した画像を示し、例えば測定位置や振動位置がプロットされてもよい。画像情報は、例えば撮像装置7により予め撮像され、評価用参照データベースに記憶される。
【0122】
(推定装置1a)
推定装置1aとして、ラップトップPC又はデスクトップPC等の電子機器が用いられ、上述した推定装置1と同様の構成及び機能を備えてもよい。推定装置1aは、上述した推定装置1とは異なる機器が用いられるほか、例えば同様の機器が用いられてもよい。各推定装置1、1aとして、それぞれ異なる機器が用いられる場合、各推定装置1、1aは、それぞれ同様の機能を備え、例えば通信網4を介して接続され、各種情報の送受信を行うことができてもよい。
【0123】
推定装置1aは、例えば
図14(a)に示すように、筐体10aと、CPU101aと、ROM102aと、RAM103aと、保存部104aと、I/F105a~107aとを備える。各構成101a~107aは、内部バス110aにより接続される。
【0124】
CPU101aは、推定装置1a全体を制御する。ROM102aは、CPU101aの動作コードを格納する。RAM103aは、CPU101aの動作時に使用される作業領域である。保存部104aは、評価用参照データベースや評価対象情報等の各種情報が記憶される。保存部104aとして、例えばHDDのほか、SSD等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば推定装置1aは、図示しないGPUを有してもよい。
【0125】
I/F105aは、データ通信手段を介して、必要に応じて計測装置2、振動装置3等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースであり、例えば通信網4を介して端末5等との各種情報の送受信を行うために用いられてもよい。I/F106aは、入力部分108aとの情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部分108aとして、例えばキーボードが用いられ、推定装置1aの利用者等は、入力部分108aを介して、各種情報、又は推定装置1a若しくは計測装置2等の制御コマンド等を入力する。I/F107aは、出力部分109aとの各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。出力部分109aは、保存部104aに保存された各種情報、又は推定装置1a若しくは計測装置2等の処理状況等を出力する。出力部分109aとして、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0126】
図14(b)は、推定装置1aの機能の一例を示す模式図である。推定装置1aは、取得部11aと、生成部12aと、出力部13aと、記憶部14aとを備え、例えば更新部15a、及び制御部16aの少なくとも何れかを有してもよい。なお、
図14(b)に示した各機能は、CPU101aが、RAM103aを作業領域として、保存部104a等に記憶されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0127】
<取得部11a>
取得部11aは、振動データに基づく第1データを含む検査対象情報を取得する。取得部11aは、例えば計測装置2により計測された振動に基づき生成された振動データを取得し、振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換等の処理を行い、処理結果を第1データとして取得する。取得部11aは、例えば予め利用者等によって入力された打音情報を、評価対象情報の一部として取得してもよい。また、取得部11aは、例えば振動装置3から送信された打音条件等を含む打音情報を、評価対象情報の一部として取得してもよい。
【0128】
取得部11aは、例えば評価対象物9の表面を撮像した画像情報を取得してもよい。画像情報は、例えば利用者等によって予め入力されるほか、端末5等から受信してもよい。また、取得部11aは、例えば撮像機能を有する計測装置2や振動装置3によって撮像された画像情報を取得してもよいほか、撮像装置7によって撮像された画像情報を取得してもよい。
【0129】
取得部11aは、例えば画像情報における振動データの計測位置、及び画像情報における振動データを計測するために評価対象物9に振動を与えた振動位置、の少なくとも何れかを取得してもよい。
【0130】
計測位置は、振動データを取得するために計測装置2から出力されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、計測位置は、計測装置2から取得するほか、例えば撮像装置7によって取得してもよく、例えば利用者等により直接入力されてもよい。
【0131】
振動位置は、評価対象物9に振動を与えるパルスレーザーを用いた場合、振動装置3から出力されたレーザーのスポットによって特定することができる。このため、振動位置は、振動装置3から取得するほか、例えば撮像装置7によって取得してもよい。なお、ハンマー等を用いて評価対象物9に振動を与える場合、例えば利用者等が直接振動位置を入力してもよい。なお、取得部11aは、例えば計測位置及び振動位置の少なくとも何れかを、評価対象情報の一部として取得してもよい。この場合、各位置の情報を補助パラメータとした評価を実施することができ、さらなる精度向上を図ることが可能となる。
【0132】
<生成部12a>
生成部12aは、評価用参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。生成部12aは、例えば評価用連関性を介して、評価対象情報に紐づく1以上の評価用参照情報を選択し、選択した評価用参照情報を反映した評価データを生成する。
【0133】
生成部12aは、例えば選択した複数の評価用参照情報のうち、評価対象情報と紐づく評価用連関度が最も高い評価用参照情報を抽出し、評価データとして生成する。なお、抽出される評価用参照情報は複数でもよく、その場合、例えば予め設定された閾値以上の評価用連関度に紐づく評価用参照情報を抽出するようにしてもよい。
【0134】
生成部12aは、例えば
図11に示したような評価用参照データベースを参照した場合、評価対象情報と同一又は類似する過去の評価対象情報(例えば「対象A」:第1評価対象データとする)を選択する。過去の評価対象情報として、評価対象情報と一部一致又は完全一致する評価対象データが選択されるほか、例えば類似する評価対象データが選択される。なお、選択される類似度の度合いについては、任意に設定できる。また、第1評価対象データとして、複数の評価対象データが選択されてもよい。
【0135】
生成部12aは、選択した第1評価対象データに紐づく評価用参照情報(第1評価用参照データとする)、及び第1評価用対象データと第1評価用参照データとの間における評価用連関度(例えば評価用連関度AA:第1評価用連関度とする)を選択する。例えば生成部12aは、第1評価用対象データ「対象A」に紐づく第1評価用参照データ「参照A」、及び「対象A」と「参照A」との間における第1評価用連関度「62%」を選択し、選択した各データを含む評価データとして生成する。
【0136】
また、評価用参照データ及び評価用連関度を複数選択する場合、上述した「参照A」及び「62%」に加えて、第1評価用対象データ「対象A」に紐づく第1評価用参照データ「参照B」、及び「対象A」と「参照B」との間における第1評価用連関度「26%」、等を、第1評価用参照データ及び第1評価用連関度として選択してもよい。このように、生成部12aは、選択された第1評価用参照データ及び第1評価用連関度を含む評価データを生成する。
【0137】
<出力部13a>
出力部13aは、例えば評価データに基づく評価結果を出力する。出力部13aは、例えば保存部104aに予め記憶された表示用のフォーマットを用いて、評価データを利用者等が理解できる文字列等に変換した評価結果を生成し、出力する。出力部13aは、I/F107aを介して出力部分109aに評価結果を送信するほか、例えばI/F105aを介して、端末5等に評価結果を送信する。
【0138】
出力部13aは、例えば推定データと、評価データとを比較した比較結果を生成してもよい。この場合、出力部13aは、比較結果を含む評価結果を生成し、出力してもよい。
【0139】
例えば評価用参照情報が特徴情報を含む場合、出力部13aは、特徴情報のうち、評価対象情報に紐づく特徴情報(例えば第1特徴情報)を含ませた評価結果を生成する。このため、評価対象物9の内部状態を定量的に検査することができる。
【0140】
出力部13aは、例えば評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力する。出力部13aは、例えば
図15(a)に示すように、ピアソンの積率相関係数を用いて、基準評価データに対する各対象評価データ(
図15(a)では第1評価データ~第5評価データ)の比較結果を算出し、評価結果に含ませて出力する。出力部13aは、例えば比較結果に基づき、色分け、「健全」、「欠陥の可能性大」等の分類結果を評価結果に含ませて出力してもよい。
【0141】
出力部13aは、例えば画像情報における振動データの計測位置、及び画像情報における振動データを計測するために評価対象物9に振動を与えた振動位置の少なくとも何れかの位置に紐づけられた評価結果を出力する。出力部13aは、例えば
図15(b)に示すように、計測位置(例えば位置ref、位置s1~s5)や、振動位置(例えば位置int)をプロットした画像情報を、評価結果に含ませて出力する。出力部13aは、例えば画像における各位置(位置ref、位置s1~s5、位置int)に対応するX-Y座標等の数値を、評価結果に含ませて出力してもよい。
【0142】
<記憶部14a>
記憶部14aは、保存部104aに保存された評価用参照データベース等の各種データを必要に応じて取出す。記憶部14aは、各構成11a~13a、15a、16aにより取得又は生成された各種データを、必要に応じて保存部104aに保存する。
【0143】
<更新部15a>
更新部15aは、例えば評価用参照データベースを更新する。更新部15aは、過去の評価対象情報と、評価用参照情報との間の関係を新たに取得した場合には、関係を評価用連関性に反映させる。例えば出力部13aにより出力された評価結果を踏まえて、利用者等が評価結果の精度を検討し、検討結果を推定装置1aが取得した場合、更新部15aは、検討結果に基づき評価用参照データベースに含まれる評価用連関性を更新する。評価用連関性の更新は、例えば機械学習を用いる。
【0144】
<制御部16a>
制御部16aは、例えば計測装置2を制御する。制御部16aは、例えば利用者等により入力された内容に基づき、計測装置2から出射するレーザーの条件や、計測の条件を制御する。制御部16aは、例えば公知の技術を用いて計測装置2を制御するほか、例えば振動装置3や撮像装置7等を制御してもよい。
【0145】
<計測装置2>
計測装置2は、評価対象物9に発生した振動を計測するために用いられる。計測装置2は、例えば干渉レーザー光を用いて、評価対象物9に発生した振動に基づく振動データを生成する。計測装置2は、生成した振動データを推定装置1aに送信する。計測装置2は、例えば生成した振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換する機能を有してもよい。
【0146】
計測装置2は、推定装置1aと直接接続されるほか、例えば通信網4を介して接続されてもよい。計測装置2として、例えば公知のレーザー干渉計等が用いられる。
【0147】
<振動装置3>
振動装置3は、評価対象物9に振動を発生させる。振動装置3は、例えばパルスレーザー光を用いて、評価対象物9の表面に衝撃を与える。振動装置3として、公知のパルスレーザー発生装置が用いられほか、ハンマリング装置、スピーカ、ガス発生装置、ウォータージェット機器等のような、公知の衝撃発生機器が用いられる。この場合、例えば推定装置1aと接続され、推定装置1aによって制御されてもよい。
【0148】
(第2実施形態:推定システム100の動作の一例)
次に、本実施形態における推定システム100の動作の一例について説明する。
図16は、本実施形態における推定システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0149】
本実施形態における推定システム100は、第1取得手段S110aと、第1生成手段S120aと、第1出力手段S130aと、第2取得手段S210と、第2生成手段S220とを備え、例えば比較手段S230を備えてもよい。なお、推定システム100のうち、第1取得手段S110a、第1生成手段S120a、及び第1出力手段S130aは、主に上述した取得手段S110、生成手段S120、及び出力手段S130と同様のため、説明を省略する。
【0150】
<第2取得手段S210>
第2取得手段S210は、第1出力手段S130aのあと、レーザーを用いて、評価対象物9に発生した振動を計測した振動データに基づく評価対象情報を取得する。取得部11は、例えば計測装置2から振動データを取得する。取得部11aは、例えば振動データに含まれる信号パターンをフーリエ変換等の処理を行った結果から、評価対象情報に含まれる第1データを取得する。なお、レーザーは、例えば推定結果に基づき、評価対象物9の評価領域9a等を照射する方向に出射される。
【0151】
第2取得手段S210では、例えば制御部16aは、計測装置2からレーザーを出射させ、評価対象物9に反射したレーザーを計測装置2に受光させることで、計測装置2に振動データを生成させることができる。なお、制御部16aが計測装置2を制御する条件等は、例えば予め利用者等により入力部分108a等を介して入力され、例えば推定結果に基づき評価領域9aに対してレーザーが出射するように設定される。
【0152】
第2取得手段S210では、例えば制御部16aは、振動装置3を制御して評価対象物9に振動を発生させたあと、計測装置2を制御して振動データを生成させてもよい。なお、振動装置3を制御して評価対象物9に振動を発生させるタイミング、及び計測装置2を制御して振動データを生成させるタイミングは、それぞれ任意である。また、制御部16aが振動装置3を制御する条件等は、例えば予め利用者等により入力部分108a等を介して入力され、例えば推定結果に基づき評価領域9aに対して振動が発生するように設定される。
【0153】
<第2生成手段S220>
第2生成手段S220は、評価用参照データベース(第2参照データベース)を参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。例えば生成部12aは、評価用参照データベースに記憶された評価用連関性を介し、評価対象情報との関係の度合いが高い評価用参照情報(第1評価用参照データ)を抽出する。生成部12aは、抽出した第1評価用参照データを含む評価データを生成する。
【0154】
<比較手段S230>
比較手段S230は、推定データと、評価データとを比較した比較結果を生成する。例えば出力部13aは、比較結果を含めた評価結果を生成し、出力部分109a等に出力する。
【0155】
出力部13aは、例えば推定データと、評価データとの相違点を検出し、検出結果を比較結果として生成する。出力部13aは、例えば予め設定された推定データ毎に異なる閾値に基づき、評価データと、閾値とを比較することで、比較結果を生成してもよい。
【0156】
なお、例えば比較手段S230の代わりとして、上述した出力手段S130と同様に、出力部13aが評価データに基づき評価結果を生成し、出力してもよい。
【0157】
また、上述した更新手段S140を、評価用参照データベースに対して実施してもよい。この場合、例えば更新部15aは、評価結果に対する利用者等の検討結果に基づき、評価用参照データベースに含まれる評価用連関性を更新する。なお、更新部15aを実施するタイミングや頻度は、任意である。
【0158】
本実施形態によれば、上述した実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0159】
また、本実施形態によれば、第2生成手段S220は、評価用参照データベースを参照し、評価対象情報に対する評価データを生成する。このため、蓄積された過去の情報を踏まえた評価データを生成することができる。これにより、評価精度の向上を図ることが可能となる。
【0160】
また、本実施形態によれば、比較手段S230は、推定データと、評価データとを比較した比較結果を生成する。このため、推定データを基準とした評価データの定量的な評価を実現することができる。これにより、利用者等の主観を排除した評価結果を実現することが可能となる。
【0161】
また、本実施形態によれば、第2取得手段S210は、信号パターンをフーリエ変換した結果から、第1データを取得する。このため、評価対象物9における状態の差異に伴う僅かな振動データの違いに対しても、状態の差異を反映させた評価結果を出力することができる。これにより、評価対象物9の複雑な状態を示す評価対象情報に対しても、最適な評価データを容易に生成することが可能となる。
【0162】
また、本実施形態によれば、評価対象情報及び過去の評価対象情報は、振動データを計測するために、評価対象物9に対して振動を与えた方法に関する打音情報を含む。このため、評価対象物9に振動を与える様々な打音方法毎に、最適な評価データを生成することができる。これにより、得られる評価結果の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0163】
また、本実施形態によれば、第2参照情報は、評価対象物9の内部に発生する欠陥の特徴に関する特徴情報を含む。このため、評価対象物9の内部状態を定量的に評価することができる。これにより、外観では判断できない内部状態の評価結果を高精度に得ることが可能となる。
【0164】
また、本実施形態によれば、例えば出力部13aは、評価データと、基準評価データとを比較した結果を含む評価結果を出力してもよい。この場合、評価対象物9の設置環境や計測環境等の各種条件を踏まえた評価結果を出力することができる。これにより、各種条件に伴う信号パターンのバラつきを抑制することが可能となる。
【0165】
また、本実施形態によれば、例えば出力部13aは、計測位置及び振動位置の少なくとも何れかに紐づけられた評価結果を出力してもよい。この場合、経時変化を評価する場合等において、以前の計測条件等を容易に把握することができる。これにより、評価結果を踏まえた計測や分析等を容易に実施することが可能となる。
【0166】
なお、上述した推定装置1、及び推定システム100は、例えば計装配管、ガスタンク、飛行機、船、塀、壁、水道管、ガス管、建造物に取付けられる看板、及び鉄道等を対象(評価対象物9)として、評価対象物9における状態を推定又は評価することができる。このため、従来では推定若しくは評価が難しい、又は精度の向上が難しい等の事情がある評価対象物9においても、評価対象物9の状態を効率的に評価することが可能となる。
【0167】
本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0168】
1 :推定装置
10 :筐体
11 :取得部
12 :生成部
13 :出力部
14 :記憶部
15 :更新部
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部分
109 :出力部分
110 :内部バス
2 :計測装置
3 :振動装置
4 :通信網
5 :端末
6 :サーバ
7 :撮像装置
9 :評価対象物
9a :評価領域
91 :欠陥部
100 :推定システム
S110 :取得手段
S120 :生成手段
S130 :出力手段
S140 :更新手段