(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂材料、繊維強化樹脂成形体、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
C08J5/04 CFC
(21)【出願番号】P 2020102463
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】710002440
【氏名又は名称】石川樹脂工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】石川 勤
(72)【発明者】
【氏名】河田 克明
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中山 武俊
(72)【発明者】
【氏名】林 豊
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕文
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251421(JP,A)
【文献】特開2010-195919(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143524(WO,A1)
【文献】特開2000-212875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
C08G 18/00-18/87
C08G 71/00-71/04
C08J 5/04-5/10;5/24
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスと強化繊維とを含み、
前記マトリックスが、(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造
であるウレア結合を有する多官能フェノール化合物と、を重付加させてなるオリゴマーを含む、
繊維強化樹脂材料。
【請求項2】
前記マトリックスが、さらに(C)非求核塩基を触媒として含む、
請求項
1に記載の繊維強化樹脂材料。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の繊維強化樹脂材料が3次元網目構造を形成してなる、
繊維強化樹脂成形体。
【請求項4】
200℃での貯蔵弾性率が10GPa以上である、
請求項
3に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項5】
(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造
であるウレア結合を有する多官能フェノール化合物と、を含む液体に、強化繊維を含浸させること、および、
含浸後の前記強化繊維を加熱することによって、前記(A)2官能エポキシ化合物と、前記(B)多官能フェノール化合物と、を重付加させてオリゴマーとすること、
を含む、繊維強化樹脂材料の製造方法。
【請求項6】
前記重付加の際の加熱温度が90℃以上150℃以下である、
請求項
5に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1
または2に記載の繊維強化樹脂材料を加熱すること、
を含む、繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
前記加熱の温度が150℃以上である、
請求項
7に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記加熱と同時に15MPa以上加圧することを含む、
請求項
7または
8に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、繊維強化樹脂材料、繊維強化樹脂成形体、およびそれらの製造方法を関示する。
【背景技術】
【0002】
高温環境下にて用いられるロボット部材や、オーブン中で使用されるロール、ハンダ耐熱性を要するプリント基盤、電線ケーブルのテンションメンバ用の耐熱ロッドなど、高い耐熱性と優れた機械物性を要求される部品に対し、従来、熱硬化性エポキシ樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料が用いられてきた。
【0003】
熱硬化性エポキシ樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料は、液状モノマーに強化繊維を含浸させ、マトリックスと強化繊維とが高度に一体化したプリプレグとし、後に前記プリプレグを成形することによって任意の形状の成形体とすることが一般的である。しかし、前記プリプレグを冷暗所で保管する必要があり、その取扱いは容易ではない。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料も知られている。重合釜などで重合して得られた熱可塑性樹脂を、加熱により溶融させて強化繊維に含浸し、プリプレグを得るものである。熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料は、加熱すればいつでも溶融状態となるため、熱硬化性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料のような取り扱いの困難さはないが、耐熱性が必要とされる部品に適用することはできない。また、熱可塑性樹脂は分子鎖に架橋構造を有していないので、分子鎖が3次元網目構造である熱硬化性樹脂と比較して機械物性に劣ることが多い。さらに、溶融した熱可塑性樹脂の粘度は、モノマーの粘度と比較して高く、強化繊維への含浸が不十分となり、高度に一体化させることが困難となり、バラつきなく安定して高い強度を有する成形体を得にくい。
【0005】
それらの課題を解決するため、架橋ネットワーク化前のエポキシプレポリマーに、硬化剤や熱可塑性樹脂を添加し、熱硬化させて熱硬化性エポキシ樹脂組成物としたプリプレグが提案されている(例えば特許文献1や特許文献2)。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されたようなプリプレグにおいては、少なからぬ量の添加成分がマトリックス中に存在し、そのため熱硬化性エポキシ樹脂が本来有する高い耐熱性や機械物性が犠牲となり易いという課題がある。また、これら添加成分はエポキシモノマーとの相溶性が悪く、均一に分散させるのに困難が伴うという課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-40317号公報
【文献】特開平6-9802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の通り、従来技術においては、繊維強化樹脂材料において、取り扱い性と、熱硬化後の耐熱性および機械物性とを両立することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、下記の(1)~(3)の繊維強化樹脂材料を開示する。
(1)マトリックスと強化繊維とを含み、前記マトリックスが、(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有する多官能フェノール化合物と、を重付加させてなるオリゴマーを含む、繊維強化樹脂材料。
(2)前記繊維強化樹脂材料において、前記熱解離してイソシアネート基を生成する構造が、ウレア結合であってもよい。
(3)前記繊維強化樹脂材料において、前記マトリックスが、さらに(C)非求核塩基を触媒として含んでいてもよい。
【0009】
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、下記の(4)および(5)の繊維強化樹脂成形体を開示する。
(4)前記本開示の繊維強化樹脂材料が3次元網目構造を形成してなる、繊維強化樹脂成形体。
(5)前記繊維強化樹脂成形体は、200℃での貯蔵弾性率が10GPa以上であってもよい。
【0010】
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、下記の(6)および(7)の繊維強化樹脂材料の製造方法を開示する。
(6)(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有する多官能フェノール化合物と、を含む液体に、強化繊維を含浸させること、および、含浸後の前記強化繊維を加熱することによって前記(A)2官能エポキシ化合物と前記(B)多官能フェノール化合物とを重付加させてオリゴマーとすること、を含む、繊維強化樹脂材料の製造方法。
(7)前記繊維強化樹脂材料の製造方法において、前記重付加の際の加熱温度が90℃以上150℃以下であってもよい。
【0011】
本願は、上記課題を解決するための手段の一つとして、下記の(8)~(10)の繊維強化樹脂成形体の製造方法を開示する。
(8)前記本開示の繊維強化樹脂材料を加熱すること、を含む、繊維強化樹脂成形体の製造方法。
(9)前記繊維強化樹脂成形体の製造方法において、前記加熱の温度が150℃以上であってもよい。
(10)前記繊維強化樹脂成形体の製造方法において、前記加熱と同時に15MPa以上加圧してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の繊維強化樹脂材料は、例えば冷暗所に保管する必要もなく、従来の繊維強化熱硬化性樹脂材料と比較して取り扱い性に優れる。また、本開示の繊維強化樹脂材料は、熱解離温度以上に加熱されることで、イソシアネート基がマトリックス中に均一に存在する系を容易に作ることができ、3次元網目構造を形成し得ることから、耐熱性や機械的物性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えうることはもちろんである。
【0014】
<繊維強化樹脂材料>
本実施の形態にかかる繊維強化樹脂材料は、マトリックスと強化繊維とを含む。マトリックスは、(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有する多官能フェノール化合物と、を重付加させてなるオリゴマーを含む。
【0015】
本実施の形態におけるオリゴマーを構成するのに有用な(A)2官能エポキシ化合物としては、分子中にエポキシ基を2つ有するものであれば特に限定なく使用し得る。繊維強化樹脂材料の貯蔵安定性、タックフリー性、熱可塑性、および繊維強化樹脂成形体の機械物性などの点からは、ビスフェノール型エポキシ化合物類およびこれらが部分縮合や付加したオリゴマー混合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂類)、ならびに、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つが好ましく、とくに低粘度であることからビスフェノール型エポキシ樹脂類が好ましい。
【0016】
本実施の形態におけるオリゴマーを構成するのに有用な(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有する多官能フェノール化合物としては、例えば、ブロック剤でブロックされたイソシアネート基(保護基で保護されたイソシアネート基とも言い得る)を分子鎖中に含み、かつフェノール性水酸基を合計2つ以上有する化合物が挙げられる。ブロック剤でブロックされたイソシアネート基(ブロックイソシアネート基)は、イソシアネート(R-N=C=O)と、ブロック剤として、例えば、アミン、アルコールまたはカルボン酸等の活性水素を有する化合物(HX)と、を反応させて得られる構造(-NHC(=O)-)を有していてもよい。(B)多官能フェノール化合物は、例えば、150℃以上、160℃以上または170℃以上、350℃以下の温度において、熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有するものであってもよい。また、(B)多官能フェノール化合物における上記熱解離の温度は、成分(A)のエポキシ基と、成分(B)のフェノール性水酸基との重付加反応が生じる温度よりも20℃以上、30℃以上または40℃以上、260℃以下高い温度であってもよい。このような熱解離温度を満たす構造としては、後述の1級アミノ基を有する化合物をブロック剤に用いたウレア結合の他、カプロラクタムのような2級アミノ基を有する化合物をブロック剤に用いた2級アミド結合、カルボキシル基を有する化合物をブロック剤に用いたウレタン結合等が挙げられる。
【0017】
前記熱解離してイソシアネート基を生成する構造の素となるイソシアネート化合物としては、1官能でも多官能でもよいが、最終的に得られる繊維強化樹脂成形体の架橋密度を高め、耐熱性や機械物性を高めやすいとの観点から、多官能のものが好ましい。また、成形前の繊維強化樹脂材料の熱溶融温度および粘度を低くするために分子構造はなるべく直鎖状であることが好ましいため、2官能であることが特に好ましい。すなわち、(B)多官能フェノール化合物は、前記熱解離してイソシアネート基を生成する構造を2つ以上有することが好ましく、2つ有することが特に好ましい。イソシアネート化合物としては、具体的には、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびこれらの誘導体のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0018】
前記ブロック剤としては特に限定されない。例えば、上述したように、アミン、アルコールまたはカルボン酸等の活性水素を有する化合物(HX)であってもよい。特に、ブロック剤は、熱解離してイソシアネート基が脱離した後のブロック剤側に1級アミノ基が生成する化合物が好ましい。1級アミノ基は熱解離温度が比較的高温であるため、比較的低温に加熱して成分(A)と成分(B)を重付加させオリゴマーとする工程では熱解離し難く、高温に加熱して成形する工程で熱解離し易いという利点を有する。さらに1級アミノ基は活性水素を2つ有しているため、最終的に得られる繊維強化樹脂成形体の架橋密度を高め、耐熱性や機械物性を高めやすいという利点も有する。以上より、前記熱解離してイソシアネート基を生成する構造は、イソシアネート基とアミノ基とを反応させてなる構造を含むことが好ましい。すなわち、(B)多官能フェノール化合物は、分子鎖中に、熱解離してイソシアネート基とアミノ基とを生成する構造を有するものであってよく、例えば、上記の「熱解離してイソシアネート基を生成する構造」が、ウレア結合であってもよい。尚、(B)多官能フェノール化合物は、熱解離してイソシアネート基を生成する構造として、複数の同じ構造を有していてもよく、複数の異なる構造を有していていもよく、例えば、複数のウレア結合を有していてもよいし、ウレア結合とともに、ウレア結合以外の構造を有していてもよい。
【0019】
さらに前記(B)多官能フェノール化合物は、2つ以上のフェノール性水酸基を有する。フェノール性水酸基と成分(A)のエポキシ基とが重付加することにより、マトリックスを構成するオリゴマーとなり得る。(B)多官能フェノール化合物がイソシアネート化合物とブロック剤とによって構成される場合、前記フェノール性水酸基は、イソシアネート化合物中に含まれていても、ブロック剤に含まれていてもよい。成形前の繊維強化樹脂材料の熱溶融温度および熱溶融粘度を低くするために分子構造はなるべく直鎖状であることが好ましいため、(B)多官能フェノール化合物は、分子全体として2官能のフェノール化合物であることが好ましい。
【0020】
前記の通り、成分(A)のエポキシ基と、成分(B)のフェノール性水酸基とが重付加し、マトリックスとなるオリゴマーが得られる。当該オリゴマーは、例えば常温にて高い安定性を有し、冷暗所にて保管する必要もない。オリゴマーの分子量は特に限定されるものではない。例えば、オリゴマーの質量平均分子量は、1000~15000g/molであってもよい。オリゴマーの熱溶融粘度や、最終的に得られる繊維強化樹脂成形体の靱性などを改善するため、鎖伸長成分としてカテコールやビスフェノールAといった一般的な多官能フェノール化合物(B)’を添加してもよい。
【0021】
成分(A)のエポキシ基と、成分(B)(および成分(B)’の合計)のフェノール性水酸基との比率は、重付加系での重合度を制御し、成形前の繊維強化樹脂材料のタックフリー化、および熱溶融温度および熱溶融粘度を調整する観点から、モル比で3:1~1:1の範囲であることが好ましい。また、成分(B)と成分(B)’を併用する場合は、成分(B)と成分(B)’のモル比が1:1~1:5の範囲であることが好ましい。
【0022】
また、前記重付加系中に(C)非求核塩基を触媒として含むことが好ましい。すなわち、本開示の繊維強化樹脂材料において、マトリックスが、上記成分(A)および(B)(並びに任意に(B)’等)に加えて、さらに(C)非求核塩基を触媒として含んでいてもよい。ジシクロヘキシルフェニルホスフィンやトリス(メチルフェニル)ホスフィンのような3つの嵩高い有機基を有する有機リン系化合物や、1,2-アルキレンベンゾイミダゾール、2-アリール-4,5-ジフェニルイミダゾールなどの求核性を著しく抑えられた非求核塩基は、エポキシ基のアニオン重合よりもエポキシ基とフェノール性水酸基との付加反応を優先する触媒活性を有するため、オリゴマー生成時の架橋反応を抑制し、分子鎖を直鎖状に成長させ、成形前の繊維強化樹脂材料の熱溶融温度および熱溶融粘度を低くすることに寄与する。(C)非求核塩基の添加量は、成分(A)100質量部に対して0.1~1質量部が好ましい。
【0023】
マトリックスは、上記のオリゴマーの他、任意に上記の(C)非求核塩基や、後述する添加剤を含んでいてもよい。マトリックスは上記オリゴマーを主体とするものがよく、例えば、マトリックスは、上記のオリゴマーを90質量%以上含んでいてもよく、95質量%以上含んでいてもよく、98質量%以上含んでいてもよい。
【0024】
本実施の形態における強化繊維としては特に限定されないが、無機繊維、有機繊維、金属繊維、またはこれらを複合して用いることができる。具体的には、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、フッ素繊維、ステンレス鋼繊維、鉄繊維などが挙げられる。軽量で強度が高いとの観点から、炭素繊維、バサルト繊維が好ましく、炭素繊維が特に好ましい。
【0025】
炭素繊維は、PAN系およびピッチ系のいずれの炭素繊維でも使用できるが、強度と弾性率のバランスの観点から、PAN系炭素繊維が好ましい。
【0026】
本実施の形態における強化繊維は、微細繊維や連続繊維といった種々の形態を採り得る。微細繊維を用いた場合に得られる繊維強化樹脂材料は、マトリックス中に繊維が分散している状態となり、連続繊維を用いた場合に得られる繊維強化樹脂材料は、繊維中にマトリックスが含浸している状態となる。最終的に得られる繊維強化樹脂成形体の強度の観点からは、連続繊維を用いるのが好ましい。なお、強化繊維として連続繊維を用いて得られた繊維強化樹脂材料を、その後切断や粉砕したものも好適に用いることができる。
【0027】
連続繊維は、繊維を引き揃えた一方向材、繊維または一方向材からなる織物、編物、組物、ノンクリンプファブリック、不織布などのシート状物などの形状としてもよい。
【0028】
繊維強化樹脂材料中に占める強化繊維の体積分率(Vf値)は、20%~80%であることが好ましい。この範囲であれば、繊維強化樹脂材料の成形のしやすさと、最終的に得られる繊維強化樹脂成形体の強度のバランスに優れる。
【0029】
繊維強化樹脂材料中には、必要に応じて種々の添加剤を添加してもよい。例えば、ビスマレイミドなどの他のモノマーまたはポリマー、セラミックスや金属粉末などの充填剤、顔料や染料などの着色剤、相溶化剤、分散剤、耐候剤、紫外線吸収剤、導電材、帯電防止剤などが挙げられる。
【0030】
以上の通り、本実施の形態にかかる繊維強化樹脂材料は、(1)例えば冷暗所で保管する必要もなく、従来の繊維強化熱硬化性樹脂材料と比較して取り扱い性に優れ、(2)熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に対して添加成分を添加した場合のような相溶性の問題も生じ難く、(3)後述するように、所定の温度域にて繰り返し熱可塑性を発現して容易に成形することができ、(4)後述するように、イソシアネート基がマトリックス中に均一に存在する系を容易に作ることもでき、3次元網目構造を形成して高い耐熱性および機械物性を発現し得る。
【0031】
<繊維強化樹脂材料の製造方法>
次に、本実施の形態の繊維強化樹脂材料の製造方法について説明する。なお、本発明は以下に説明する製造方法に限定されるものではない。なお、先に説明を行ったものと重複する事項については一部説明を省略または簡略化する。
【0032】
本実施の形態に係る繊維強化樹脂材料の製造方法は、(A)2官能エポキシ化合物と、(B)分子鎖中に熱解離してイソシアネート基を生成する構造を有する多官能フェノール化合物と、を含む液体に、強化繊維を含浸させること、および、含浸後の前記強化繊維を加熱することによって、前記(A)2官能エポキシ化合物と、前記(B)多官能フェノール化合物と、を重付加させてオリゴマーとすること、を含む。本実施の形態において、強化繊維を含浸させる液体は、成分(A)と成分(B)とを含んでいればよい。成分(A)と成分(B)とは、それ自体が液状であってもよいし、または適切な溶媒または分散媒に溶解または分散させたものであってよい。また、当該液体には、必要に応じて成分(B)’や成分(C)や前記添加剤等が添加されていてもよい。成分(A)と成分(B)とを含む液体は、その粘度の低さから、重付加させて得られるオリゴマーを含むマトリックスと、微細繊維とを互いに均一に分散させる、またはマトリックスを連続繊維の内部にまで含浸させることが容易となる。このようにマトリックスと強化繊維とが高度に一体化している場合、最終的に得られる繊維強化樹脂成形体にバラつきなく安定して一層高い強度を与えることができる。以上の観点から、強化繊維を含浸させる際、成分(A)と成分(B)とを含む液体の粘度は5~400mPa・sが好ましい。
【0033】
溶媒または分散媒としては、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン系、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル系、N,N-ジメチルホルムアミドやテトラヒドロフランなどのその他の非プロトン性極性溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族系、モノグリシジルエーテルなどの反応性希釈剤などが挙げられる。特に、重付加反応の際の加熱と同時に溶媒を容易に除去可能とする観点から、重付加反応における加熱温度未満の沸点を有する溶媒または分散媒を用いることが好ましく、沸点150℃以下の溶媒または分散媒を用いることが好ましい。
【0034】
本実施の形態においては、上記のような液体に強化繊維を含浸させる。例えば、強化繊維として微細繊維を用いた場合には、ミキサーを用いた撹拌、ニーダーを用いた混練などで微細繊維を液体に分散させればよい。強化繊維として連続繊維を用いた場合には、液体への浸漬、液体の塗付、転写、噴霧などにより当該連続繊維に対して液体を付与し、必要であればマングルで絞ったりロールで過剰分を除去したりすればよい。
【0035】
続いて、加熱によって成分(A)と成分(B)との重付加反応を行う。この段階で、溶媒または分散媒の除去を行ってもよい。重付加の際の加熱温度は、成分(A)と成分(B)との重付加反応が生じる温度以上で、且つ、成分(B)の前記構造が熱解離してイソシアネート基を生成する温度未満とすることができ、特に90℃以上150℃以下であることが好ましい。この範囲であれば、オリゴマー化の促進による加工時間の短縮と、イソシアネートの熱解離および架橋反応による繊維強化樹脂材料の熱可塑性の喪失を抑制しやすい。より好ましい加熱温度は、100℃以上140℃以下である。
【0036】
成分(A)と成分(B)との重付加反応は、得られた繊維強化樹脂材料のタックが無く、かつ熱可塑性が喪失しない程度に制御する。具体的には、重付加反応により得られるオリゴマーの質量平均分子量が1000~15000g/mol程度の低重合度となるように制御することが好ましい。オリゴマーの重合度は、成分(A)と成分(B)との混合比率、加熱温度および加熱時間等により調整すればよい。
【0037】
<繊維強化樹脂成形体>
次に、本実施の形態の繊維強化樹脂成形体について説明を行う。なお、先に説明を行ったものと重複する事項については一部説明を省略または簡略化する。
【0038】
本実施の形態にかかる繊維強化樹脂成形体は、前記繊維強化樹脂材料が3次元網目構造を形成してなる。3次元網目構造とは、例えば、熱解離したイソシアネートおよびイソシアネートの熱解離で再生したブロック剤の官能基が、マトリックスを形成するオリゴマー分子中に残存しているエポキシ基、オリゴマー生成時に開環したエポキシ基を由来とするオリゴマー鎖中のアルコール性水酸基とともに反応して架橋した構造である。尚、本実施の形態の繊維強化樹脂材料は、加熱した際、上記の熱解離温度に到達する前の低温域で熱可塑性を発現し得ることから、これを利用して熱解離温度に到達する前に成形することもできる。或いは、繊維強化樹脂材料を、熱解離温度以上に加熱して上記の3次元網目構造を形成させると同時に成形してもよい。成形の際は加熱とともに加圧してもよい。本実施の形態にかかる繊維強化樹脂成形体は、前記繊維強化樹脂材料を複数積層したうえで前記3次元網目構造が形成されてなるものであってもよい。
【0039】
本実施の形態における繊維強化樹脂成形体は、成形材料となる前記繊維強化樹脂材料の熱可塑性を利用して任意の形状に成形され得る。また、加熱によって熱解離したイソシアネート、およびイソシアネートの熱解離で再生したブロック剤の官能基が、マトリックスを形成するオリゴマー分子中に残存しているエポキシ基、オリゴマー生成時に開環したエポキシ基を由来とするオリゴマー鎖中のアルコール性水酸基とともに反応して架橋し、熱硬化性樹脂のような3次元網目構造を形成し得ることから、繊維強化樹脂成形体の耐熱性および機械物性は、熱硬化性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料による繊維強化樹脂成形体と同水準とすることができる。さらに、従来の架橋剤を熱可塑性樹脂に添加する方法やエポキシプレポリマーに硬化剤や熱可塑性樹脂を添加する方法と比較して、相溶性の問題が生じ難く、イソシアネート基がマトリックス中に均一に存在する系を容易に作ることができるため、樹脂中に架橋剤を分散させる工程を削減することができると同時に、マトリックス中に均一に架橋点が存在し、バラつきなく安定して高い強度を有する繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
【0040】
本実施の形態における繊維強化樹脂成形体は、例えば、200℃での貯蔵弾性率が10GPa以上となり得る。200℃での貯蔵弾性率が10GPa以上であれば、高温、高負荷環境下でも形状を維持する能力に優れるため好ましい。より好ましくは20GPa以上、特に好ましくは30GPa以上である。
【0041】
<繊維強化樹脂成形体の製造方法>
次に、本実施の形態にかかる繊維強化樹脂成形体について説明する。なお、本発明は以下に説明する製造方法に限定されるものではない。また、先に説明を行ったものと重複する事項については一部説明を省略または簡略化する。
【0042】
本実施の形態の繊維強化樹脂成形体の製造方法は、前記繊維強化樹脂材料を、加熱することを含む。上述したように、本実施の形態の繊維強化樹脂材料は、加熱した際、上記の熱解離温度に到達する前の低温度域で熱可塑性を発現し得ることから、これを利用して熱解離温度に到達する前に成形し、成形後に熱解離温度以上に加熱することで上記の3次元網目構造を形成してもよいし、或いは、繊維強化樹脂材料を、熱解離温度以上に加熱して上記の3次元網目構造を形成させると同時に成形してもよい。加工工程を簡略化する観点等からは、繊維強化樹脂材料を、熱解離温度以上に加熱して上記の3次元網目構造を形成させると同時に成形するとよい。なお、深絞り加工など、成形を複数回に分けて行う場合には、最終成形の際の加熱温度を熱解離温度以上に加熱して上記の3次元網目構造を形成させると同時に成形するとよい。また、成形性を一層高める観点や、後述するように強度を一層高める観点等から、成形の際は加熱とともに加圧することが好ましい。さらに、本実施の形態にかかる繊維強化樹脂成形体の製造方法においては、前記繊維強化樹脂材料を複数積層したうえで加熱してもよい。これにより、繊維強化樹脂成形体の機械物性が一層向上し得る。
【0043】
前記繊維強化樹脂材料は、ブロック状、シート状、テープ状、チップ状など適宜の形状のものを型枠内に入れて用いられる。
【0044】
加熱および加圧する方法としては、金型プレス法、オートクレーブ法、加熱・冷間プレス法などの方法が挙げられる。
【0045】
成形時の加熱温度は、成分(A)と成分(B)との重付加の際の加熱温度よりも高く、且つ、成分(B)の前記構造が熱解離してイソシアネート基を生成する温度以上とすることができ、特に150℃以上とすることが好ましい。150℃以上に加熱すれば、繊維強化樹脂材料を軟化させ賦形し、同時にイソシアネート基の熱解離、架橋反応を生じさせて硬化させることが一層容易となる。より好ましい加熱温度は160℃以上であり、さらに好ましくは170℃以上である。加熱温度の上限は、繊維強化樹脂成形体の焦げ付きや、樹脂の熱分解による強度低下を抑制するとの観点から、350℃以下が好ましい。
【0046】
加圧をする場合、その圧力は、例えば1~50MPaとすることができるが、熱解離で生成したイソシアネートが空気中の微量の水分と反応して発生する炭酸ガスや、シート状やチップ状などの複数の繊維強化樹脂材料を型枠内に積層、充填する場合において、シートやチップ間に存在する空気などをマトリックスから追い出し、ボイドの発生数を低減させ、バラつきなく安定して高い強度とする観点から、加熱と同時に15MPa以上に加圧することが好ましい。また、型枠内の減圧と組み合わせてもよい。
【0047】
加熱時間(加圧する場合は、加熱および加圧時間)は、例えば1分から24時間とすることができる。加熱および加圧後、冷却することにより任意の形状に成形された繊維強化樹脂成形体が得られる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。また、以下の実施例中の「部」は、質量部を表す。
【0049】
<液状モノマー(成分(A)と成分(B)とを含む液体)の粘度>
液状モノマーの粘度は、B型粘度計(TVB-15形粘度計、東機産業(株)製)、ロータNo.20、12rpm、室温(22℃)で測定した。
【0050】
<繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量>
繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにて測定した。具体的には、マトリックスをテトラヒドロフランに1mg/1mLとなるよう溶液を調製し、150mmのカラムを2本連結し、40℃としたC18カラム(Inertsil ODS分析カラム、ジーエルサイエンス(株)製)に注入し、0.5mL/分で送液し、示差屈折率計(RID-20A、島津製作所(株)製)にてクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムを用い、ポリスチレン標準試料により作成した検量線を基に、質量平均分子量を計算した。
【0051】
<繊維強化樹脂成形体の200℃での貯蔵弾性率>
繊維強化樹脂成形体から幅10mm、長さ50mm、厚み2mmの試料を採取し、粘弾性測定装置(DMS6100、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用い、3点曲げモード、支点間距離40mm、周波数1Hz、室温から昇温速度2℃/分で210℃まで昇温し、200℃での貯蔵弾性率を読み取った。
【0052】
(実施例1)
まず、強化繊維として、PAN系炭素繊維綾織物(PYROFIL TRK510 M、三菱ケミカル(株)製)を準備した。
【0053】
続いて、下記のとおり液状モノマーを配合した。得られた液状モノマーの粘度は200mPa・sであった。
【0054】
成分(A):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子量:340g/mol) 68部
成分(B):m-キシリレンジイソシアネートの2つイソシアネート基を、各々、4-ヒドロキシベンジルアミンでウレア結合を介してブロックしたもの(分子量:434g/mol、下記化1) 43部
溶媒:メチルエチルケトン 10部
【0055】
【0056】
次に、前記液状モノマーの入ったバス中に炭素繊維織物を浸漬し、120℃で10分加熱することにより、タックのないシート状の繊維強化樹脂材料を得た。
【0057】
得られた繊維強化樹脂材料のVf値は65%であった。また、得られた繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量は、2030g/molであった。
【0058】
得られたシート状の繊維強化樹脂材料を14日間実験室内で保管した後、繊維強化樹脂材料を4枚積層し、底の平らなお椀状の金型上に配置し、真空プレス機を用いて200℃、30MPaで10分間の加熱および加圧を行った。ひび割れなどの欠点なく、お椀型の繊維強化樹脂成形体を得た。
【0059】
得られた繊維強化樹脂成形体の200℃での貯蔵弾性率は57GPaであり、試験後の試料の外観は試験前と変化がなかった。
【0060】
(実施例2)
下記配合の液状モノマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でタックのないシート状の繊維強化樹脂材料を得た。液状モノマーの粘度は250mPa・sであった。
【0061】
成分(A):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子量:340g/mol) 68部
成分(B):m-キシリレンジイソシアネートの2つイソシアネート基を、各々、4-ヒドロキシベンジルアミンでウレア結合を介してブロックしたもの(分子量:434g/mol上記化1) 12部
成分(B)’:ビスフェノールA(分子量228g/mol) 16部
成分(C):トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン 0.4部
溶媒:メチルエチルケトン 10部
【0062】
得られた繊維強化樹脂材料のVf値は63%であった。また、得られた繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量は、12600g/molであった。
【0063】
得られたシート状の繊維強化樹脂材料を14日間実験室内で保管した後、繊維強化樹脂材料を4枚積層し、底の平らなお椀状の金型上に配置し、真空プレス機を用いて180℃、20MPaで5分間の加熱および加圧を行った。ひび割れなどの欠点なく、お椀型の繊維強化樹脂成形体を得た。
【0064】
得られた繊維強化樹脂成形体の200℃での貯蔵弾性率は33GPaであり、試験後の試料の外観は試験前と変化がなかった。
【0065】
(比較例1)
下記配合の液状モノマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でタックのないシート状の繊維強化樹脂材料を得た。液状モノマーの粘度は220mPa・sであった。
【0066】
成分(A):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子量:340g/mol) 68部
成分(B)’:ビスフェノールA(分子量228g/mol) 23部
硬化剤:2-メチルイミダゾール 0.4部
溶媒:メチルエチルケトン 10部
【0067】
得られた繊維強化樹脂材料のVf値は61%であった。また、得られた繊維強化樹脂材料のマトリックスは、重付加反応が制御されておらず、樹脂が3次元網目構造を形成しているため、テトラヒドロフランに不溶であった。
【0068】
繊維強化樹脂材料の製造から引き続き、得られた繊維強化樹脂材料のシートを4枚積層し、底の平らなお椀状の金型上に配置し、真空プレス機を用いて200℃、30MPaで10分間の加熱および加圧を行ったが、繊維強化樹脂材料が軟化せず、複数のひび割れが発生し、成形することができなかった。尚、比較例1について、成形前の繊維強化樹脂材料の200℃での貯蔵弾性率は37GPaであった。
【0069】
(比較例2)
比較例1と同様の配合の液状モノマーの入ったバス中に炭素繊維織物を浸漬し、90℃で10分加熱することにより、タックのないシート状の繊維強化樹脂材料を得た。
【0070】
得られた繊維強化樹脂材料のVf値は61%であった。また、得られた繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量は、8400g/molであった。
【0071】
得られたシート状の繊維強化樹脂材料を14日間実験室内で保管した。14日後の繊維強化樹脂材料の表面は、室温におけるエポキシ基の失活由来の白化および細かな気泡が発生していた。繊維強化樹脂材料を4枚積層し、底の平らなお椀状の金型上に配置し、真空プレス機を用いて200℃、30MPaで10分間の加熱および加圧を行ったが、繊維強化樹脂材料が硬化せず、室温でも手で変形できる程度の硬度の繊維強化樹脂成形体となった。
【0072】
(比較例3)
下記配合の液状モノマーを用いた以外は実施例1と同様の操作でタックのないシート状の繊維強化樹脂材料を得た。液状モノマーの粘度は230mPa・sであった。
【0073】
成分(A):ビスフェノールAジグリシジルエーテル(分子量:340g/mol) 68部
成分(B)’:ビスフェノールA(分子量228g/mol) 23部
成分(C):トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン 0.4部
溶媒:メチルエチルケトン 10部
【0074】
得られた繊維強化樹脂材料のVf値は63%であった。また、得られた繊維強化樹脂材料のマトリックスの質量平均分子量は、49300g/molであった。
【0075】
得られたシート状の繊維強化樹脂材料を14日間実験室内で保管した後、繊維強化樹脂材料を4枚積層し、底の平らなお椀状の金型上に配置し、真空プレス機を用いて180℃、20MPaで5分間の加熱および加圧を行った。ひび割れなどの欠点なく、お椀型の繊維強化樹脂成形体を得た。
【0076】
得られた繊維強化樹脂成形体の200℃での貯蔵弾性率は3GPaであり、試験後の試料の外観は表面が荒れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明にかかる繊維強化樹脂材料は、例えば、熱可塑性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料と同様の取り扱いができ、かつ熱硬化性樹脂をマトリックスに用いた繊維強化樹脂材料による繊維強化樹脂成形体と同水準の耐熱性や機械物性を有する成形体を作製することができる。そのため、高温環境下にて用いられるロボット部材や、オーブン中で使用されるロール、ハンダ耐熱性を要するプリント基盤、電線ケーブルのテンションメンバ用の耐熱ロッドなど、高い耐熱性と優れた機械物性を要求される部品として好適に用いることができる。