(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】結線作業支援装置
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
H02B3/00 P
(21)【出願番号】P 2021046961
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大地 秀二
(72)【発明者】
【氏名】川谷 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 宣雅
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135107(WO,A1)
【文献】特開2017-175738(JP,A)
【文献】特開2013-003909(JP,A)
【文献】特開2020-005335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
G06F 111/00 - 119/22
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色に着色された複数本の配線を結線対象物に結線する作業を支援する結線作業支援装置において、
前記複数本の配線のカラー画像の取得と、前記複数本の配線の全てを単一の視野に収めた作業報告書用写真の取得とを実行可能な撮像部と、
正規の並び位置にある前記複数本の配線の相対位置に関する情報が予め記憶された記憶部と、
前記撮像部で取得されたカラー画像を利用して、前記配線の相対位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致していると判定された場合には、前記撮像部による前記作業報告書用写真の撮像を許可する一方、前記判定部により、前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致していないと判定された場合には、前記撮像部による前記作業報告書用写真の撮像を禁止する撮像制御部とを備えていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結線作業支援装置において、
前記位置推定部は、前記撮像部で取得されたカラー画像に、前記配線の色を抽出するマスク処理を実行することによって検出した検出領域に前記配線が位置すると推定するように構成されていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の結線作業支援装置において、
前記記憶部には、前記配線の形状に対応した形状を有する形状テンプレートが記憶されており、
前記位置推定部は、前記記憶部に記憶されている形状テンプレートと前記検出領域の形状との形状類似度を求め、求めた形状類似度が所定以上の場合に、前記検出領域に前記配線が位置すると推定するように構成されていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の結線作業支援装置において、
前記位置推定部は、前記記憶部に記憶されている情報に基づいて前記配線の本数を特定し、特定した本数と同じ数の前記配線を推定できたか否かを判定し、同じ数の前記配線を推定できなかった場合には、欠落した配線の位置を推定するように構成されていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の結線作業支援装置において、
前記位置推定部は、複数の配線の位置が推定された場合、最小二乗法によって配線の位置を示す近似曲線を導出し、決定係数が所定のしきい値以上であるか否かを判定し、決定係数が所定のしきい値以上であると判定されたときには、前記近似曲線に基づいて前記欠落した配線の位置を推定するように構成されていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の結線作業支援装置において、
前記位置推定部は、前記撮像部で取得されたカラー画像の一部の領域のみ利用して、前記配線の相対位置を推定するように構成されていることを特徴とする結線作業支援装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の結線作業支援装置において、
前記撮像部の撮像視野を照明する照明部を備えていることを特徴とする結線作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧変成器やチェックターミナル、電力量計等への結線作業を支援する結線作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等を経て送電された電力は、高圧変成器に入力されて電力需要家へ供給される。電力需要家の電力使用量は、電力量計によって計測されるようになっており、この電力量計は、チェックターミナルを介して高圧変成器の二次側端子に接続されている。
【0003】
高圧変成器を新設する場合や電力量計を取り替える場合には、高圧変成器の二次側端子とチェックターミナルとの間の結線作業、チェックターミナルと電力量計との間の結線作業が必要になる。高圧変成器の二次側端子とチェックターミナルとの間の配線及びチェックターミナルと電力量計との間の配線は、それぞれ、複数本あるので、作業者が誤って結線しないように、全ての配線が互いに異なる色に着色されているのが一般的である。
【0004】
例えば特許文献1には、結線作業支援装置として、解線前と結線後の配線をそれぞれ撮像し、解線前の映像信号から配線の色順と、結線後の影像信号から配線の色順を生成し、解線前の色順と結線後の色順とで異なる箇所を判定し、その判定結果を作業者に提供するように構成されたものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、作業者の視線を追跡し、作業者の目視範囲にある画像から色情報を抽出し、予め記憶されている配線情報に基づいて作業情報枠を表示し、作業情報枠によって作業者が配線の確認が行えるように構成された結線作業支援装置が開示されている。このシステムでは、配線の照合結果が作業者に案内されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-175738号公報
【文献】特開2015-61339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の結線作業支援装置では、解線前の配線の色順と、結線後の配線の色順とが異なっていればその判定結果が作業者に提供されるようになっているが、作業者が判定結果を見落とすといった極めて初歩的なケアレスミスをしないとも限らない。そうした場合にはせっかくの判定結果を活かすことができず、誤った結線のまま作業を終えるおそれがある。
【0008】
また、特許文献2の結線作業支援装置では、作業者が見た配線がどこに結線されるべきか作業情報枠で表示されるようになっているが、その作業情報枠は画面に表示されるものであることから、作業者の実視野との間でずれが生じるのは避けられない。このずれによって誤った結線をしてしまうおそれがある。また、特許文献2のものでは、配線の照合結果が作業者に案内されるようになっているが、やはり、作業者が初歩的なケアレスミスをして、誤った結線であるという照合結果を見誤り、正しく結線されたものと認識してしまった場合には、照合結果を活かすことができず、誤った結線のまま作業を終えるおそれがある。
【0009】
ここで、結線作業後には、結線状態をカメラで撮像して作業が完了した証拠写真として作業報告書に添付する場合がある。結線状態をカメラで撮像する際には、作業者が誤った結線の有無を再度確認するのであるが、ここでも初歩的なケアレスミスをして、誤った結線であるのに正しく結線されているものと思い込み、そのまま撮像して作業報告書に添付してしまうことが考えられる。
【0010】
上述したような作業者の初歩的なケアレスミスや思い込みによる誤った認識は、作業者自身の注意やチェックリストの記入等に頼った方法では予防効果が高いとは言えず、システム上で予防する手段が望まれていた。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数本の配線を結線する場合に誤った結線のままで作業の完了報告がなされないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本開示に係る第1の側面では、互いに異なる色に着色された複数本の配線を結線対象物に結線する作業を支援する結線作業支援装置を前提とすることができる。結線作業支援装置は、前記複数本の配線のカラー画像の取得と、前記複数本の配線の全てを単一の視野に収めた作業報告書用写真の取得とを実行可能な撮像部と、正規の並び位置にある前記複数本の配線の相対位置に関する情報が予め記憶された記憶部と、前記撮像部で取得されたカラー画像を利用して、前記配線の相対位置を推定する位置推定部と、前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致しているか否かを判定する判定部と、撮像制御部とを備えている。
【0013】
前記撮像制御部は、前記判定部により、前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致していると判定された場合には、前記撮像部による前記作業報告書用写真の撮像を許可する。一方、前記撮像制御部は、前記判定部により、前記位置推定部で推定された前記配線の相対位置と、前記記憶部に記憶された情報に基づく前記相対位置とが一致していないと判定された場合には、前記撮像部による前記作業報告書用写真の撮像を禁止するように構成されている。
【0014】
この構成によれば、互いに異なる色に着色された複数本の配線を、例えば高圧変成器やチェックターミナル、電力量計等の結線対象物に結線した後、撮像部が複数本の配線のカラー画像を取得すると、位置推定部は、カラー画像を利用して配線の相対位置を推定する。判定部は、推定された配線の相対位置と、記憶部に記憶された情報に基づく配線の相対位置とが一致しているか否かを判定する。その結果、両者が一致していれば、結線後の配線が正規の並び位置にあるということであり、この場合には作業報告書用写真の撮像を許可するので、複数本の配線の全てを単一の視野に収めた作業報告書用写真が撮像部によって撮像される。一方、推定された配線の相対位置と、記憶部に記憶された情報に基づく配線の相対位置とが一致していない場合には、結線後の配線が正規の並び位置ではないということであり、この場合には作業報告書用写真の撮像が禁止されるので、作業報告書用写真を撮像できない。つまり、結線後の配線が正規の並び位置にあるときにのみシャッターを切ることが可能なので、誤った結線状態が作業報告書用写真とされてしまうのを防止することができる。作業報告書用写真を撮像できないと作業を終了することができないので、作業者は結線状態を再び確認する必要が生じ、この時に正しい結線に修正することができる。尚、再度誤って結線したとしても、作業報告書用写真を撮像できないので、誤った結線であることを作業者に気付かせることができる。
【0015】
本開示の第2の側面では、前記位置推定部は、前記撮像部で取得されたカラー画像に、前記配線の色を抽出するマスク処理を実行することによって検出した検出領域に前記配線が位置すると推定するように構成されている。
【0016】
この構成によれば、撮像部で取得されたカラー画像に基づいて、配線が存在する領域を高い確度で推定することができる。
【0017】
本開示の第3の側面では、前記記憶部には、前記配線の形状に対応した形状を有する形状テンプレートが記憶されており、前記位置推定部は、前記記憶部に記憶されている形状テンプレートと前記検出領域の形状との形状類似度を求め、求めた形状類似度が所定以上の場合に、前記検出領域に前記配線が位置すると推定するように構成されている。
【0018】
すなわち、配線の形状は予め決まっているので、その形状に対応した形状テンプレートを用意しておくことで、形状テンプレートと検出領域の形状との形状類似度を求めることができる。形状類似度が所定以上であると、検出領域に配線が位置している可能性が高まるので、配線の位置を精度よく推定することができる。
【0019】
本開示の第4の側面では、前記位置推定部が、前記記憶部に記憶されている情報に基づいて前記配線の本数を特定し、特定した本数と同じ数の前記配線を推定できたか否かを判定し、同じ数の前記配線を推定できなかった場合には、欠落した配線の位置を推定するように構成されている。
【0020】
例えば、黒色の配線を撮像した時、背景色が黒であると当該配線を検出することが困難になり、実際には存在している配線が欠落したもの推定されるおそれがある。配線が欠落したものと推定された場合には、記憶部に記憶されている情報に基づいて特定した正規の配線の本数よりも少ない数の配線が推定されることになる。この場合は、欠落した配線の位置を推定することで、実際に存在している配線の数と同じ数の配線を位置推定部で推定できる。
【0021】
本開示の第5の側面では、前記位置推定部が、複数の配線の位置が推定された場合、最小二乗法によって配線の位置を示す近似曲線を導出し、決定係数が所定のしきい値以上であるか否かを判定し、決定係数が所定のしきい値以上であると判定されたときには、前記近似曲線に基づいて前記欠落した配線の位置を推定するように構成されている。
【0022】
この構成によれば、複数の配線の位置が推定されると、最小二乗法によって配線の位置を示す近似曲線を導出することができる。決定係数が所定のしきい値以上である場合には、推定された配線の並びが正しいということであり、この場合には、近似曲線に基づいて欠落した配線の位置を推定することができる。上記所定のしきい値は、1に近い値であり、例えば、0.994以上、または0.996以上とすることができる。
【0023】
本開示の第6の側面では、前記位置推定部が、前記撮像部で取得されたカラー画像の一部の領域のみ利用して、前記配線の相対位置を推定するように構成されている。
【0024】
この構成によれば、配線の相対位置を推定する際の処理速度を向上させることができる。
【0025】
本開示の第7の側面では、前記撮像部の撮像視野を照明する照明部を備えているので、複数の配線の色を正確に取得することができる。これにより、配線の位置の推定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、複数本の配線を結線する場合に、結線後の配線が正規の並び位置にあるときにのみ作業報告書用写真の撮像が可能になるので、誤った結線のままで作業の完了報告がなされないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る結線作業支援装置の斜視図である。
【
図3】高圧変成器、チェックターミナル及び電力量計の結線図である。
【
図4】結線作業支援装置に表示されるユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
【
図5】結線作業支援の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】結線作業支援中に表示されるユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
【
図8】マスク処理で使用されるしきい値の例を示す一覧表である。
【
図10】形状類似度が所定以上の領域を特定した場合を示す図である。
【
図11】欠落した配線の位置を推定した場合を示す図である。
【
図12A】7本の配線を左から撮像した場合の部分画像を示す図である。
【
図12B】7本の配線を右から撮像した場合の部分画像を示す図である。
【
図13】正面、左、右からそれぞれ撮像した場合に導出した近似曲線を示すグラフである。
【
図14】配線色の相対評価時に適用されるしきい値の例を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る結線作業支援装置1の斜視図であり、
図2は、結線作業支援装置1のブロック図である。結線作業支援装置1は、互いに異なる色に着色された複数本の配線201~207、301~307(
図3に示す)を、結線対象物である高圧変成器100、電力量計110、チェックターミナル120等に結線する作業を支援するための装置である。この実施形態の説明では、結線作業支援装置1の構造について説明する前に、電力系統の結線について説明する。
【0030】
(高圧変成器、チェックターミナル及び電力量計の結線)
図3に示すように、電源側と負荷側との間には、高圧変成器100が設けられている。この高圧変成器100には、電力量計110がチェックターミナル120を介して接続されている。高圧変成器100には、チェックターミナル120との電気的な接続を行うための第1~第7接続端子101~107が直線状に並ぶように設けられている。チェックターミナル120には、第1~第7変成器側接続端子121~127が直線状に並ぶように設けられるとともに、第1~第7計器側接続端子131~137が直線状に並ぶように設けられている。また、電力量計110には、第1~第7接続端子111~117が直線状に並ぶように設けられている。接続端子の数は、上述した数に限れるものではなく、6つ以下であってもよいし、8つ以上であってもよい。接続端子の数に応じて配線の数を変えることになる。
【0031】
この実施形態では、高圧変成器100の第1~第7接続端子101~107及び電力量計110の第1~第7接続端子111~117が水平方向に並んでいるが、これに限られるものではなく、上下方向に並んでいてもよい。また、チェックターミナル120の第1~第7変成器側接続端子121~127と、第1~第7計器側接続端子131~137とが上下方向に並んでいるが、これに限られるものではなく、水平方向に並んでいてもよい。
【0032】
高圧変成器100の第1~第7接続端子101~107と、チェックターミナル120の第1~第7変成器側接続端子121~127とは、それぞれ、第1~第7変成器側配線201~207により接続されている。すなわち、第1接続端子101と第1変成器側接続端子121とが第1変成器側配線201によって接続され、また、第2接続端子102と第2変成器側接続端子122とが第2変成器側配線202によって接続され、また、第3接続端子103と第3変成器側接続端子123とが第3変成器側配線203によって接続され、また、第4接続端子104と第4変成器側接続端子124とが第4変成器側配線204によって接続され、また、第5接続端子105と第5変成器側接続端子125とが第5変成器側配線205によって接続され、また、第6接続端子106と第6変成器側接続端子126とが第6変成器側配線206によって接続され、さらに、第7接続端子107と第7変成器側接続端子127とが第7変成器側配線207によって接続されている。
【0033】
チェックターミナル120の第1~第7計器側接続端子131~137と、電力量計110の第1~第7接続端子111~117とは、それぞれ、第1~第7計器側配線301~307により接続されている。すなわち、第1計器側接続端子131と第1接続端子111とが第1計器側配線301によって接続され、また、第2計器側接続端子132と第2接続端子112とが第2計器側配線302によって接続され、また、第3計器側接続端子133と第3接続端子111とが第3計器側配線303によって接続され、また、第4計器側接続端子134と第4接続端子114とが第4計器側配線304によって接続され、また、第5計器側接続端子135と第5接続端子115とが第5計器側配線305によって接続され、また、第6計器側接続端子136と第6接続端子116とが第6計器側配線306によって接続され、さらに、第7計器側接続端子137と第7接続端子117とが第7計器側配線307によって接続されている。配線201~207及び配線301~307の太さは略同じである。
【0034】
高圧変成器100の第1~第7接続端子101~107、電力量計110の第1~第7接続端子111~117、チェックターミナル120の第1~第7変成器側接続端子121~127及び第1~第7計器側接続端子131~137は、導体で構成されており、例えばネジによって配線201~207、301~307を締結することによって電気的に接続可能になっている。各接続端子101~107、111~117、121~127及び131~137は、ネジによる接続(結線)でなくてもよく、クリップやコネクタ等によって接続可能な構造であってもよい。
【0035】
この実施形態では、第1変成器側配線201と第1計器側配線301とが黒色に着色されている。また、第2変成器側配線202と第2計器側配線302とが赤色に着色されている。また、第3変成器側配線203と第3計器側配線303とが青色に着色されている。また、第4変成器側配線204と第4計器側配線304とが茶色に着色されている。また、第5変成器側配線205と第5計器側配線305とが黄色に着色されている。また、第6変成器側配線206と第6計器側配線306とが白色に着色されている。また、第7変成器側配線207と第7計器側配線307とが緑色に着色されている。尚、配線201~207、301~307の色は、上述した色に限られるものではなく、任意の色に着色されていればよい。配線201~207、301~307の色は、導線を被覆する被覆材の色である。
【0036】
(結線作業支援装置の構成)
図1に示すように、結線作業支援装置1は、作業者(ユーザ)が携帯可能な携帯型端末で構成されており、例えばスマートフォン型、タブレット端末型とすることができる。
図2にも示すように、結線作業支援装置1は、本発明の撮像部の一例であるカメラ2と、照明部3と、表示部4と、操作部5と、制御ユニット6と、記憶部7とを備えている。記憶部7は、例えばソリッドステートドライブ等で構成することができるが、これに限られるものではない。結線作業支援装置1は、充電池等の電力供給部が内蔵された構造であってもよいし、外部からの電力が供給可能に構成されていてもよい。
【0037】
図2に示すように、カメラ2は、複数枚のレンズを含む光学系2aと、光学系2aから出射した光を受光する受光センサ2bとを備えている。光学系2aは、例えば周知のオートフォーカス機構を備えたものであってもよい。光学系2aの画角は、上記第1~第7接続端子101~107と、当該第1~第7接続端子101~107に接続された7本全ての配線201~207の端部とを単一の視野に収めて一度に撮像できるように設定されている。この画像は、結線作業後に作成して業務依頼者へ提出する作業報告書に添付する作業報告書用写真となる画像である。撮像時の被写体と受光センサ2bの距離としては、例えば数十cm程度に設定することができる。
【0038】
同様に、カメラ2は、第1~第7変成器側接続端子121~127と、当該第1~第7変成器側接続端子121~127に接続された7本全ての配線201~207の端部とを単一の視野に収めて一度に撮像できる。また、第1~第7計器側接続端子131~137と、当該第1~第7計器側接続端子131~137に接続された7本全ての配線301~307の端部とを単一の視野に収めて一度に撮像できる。また、第1~第7接続端子111~117と、当該第1~第7接続端子111~117に接続された7本全ての配線301~307の端部とを単一の視野に収めて一度に撮像できる。これら画像も作業報告書用写真となる画像である。
【0039】
受光センサ2bは、互いに異なる色に着色された複数本の配線のカラー画像の取得が可能なCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等の受光素子からなるイメージセンサである。この受光センサ2bには、多数の受光素子が横及び縦(X方向及びY方向)に並ぶように設けられている。光学系2aを通して得られた画像は、受光センサ2bで電気信号に変換されて制御ユニット6に入力されるようになっている。
【0040】
照明部3は、例えば自然光に近い波長の光を照射する発光ダイオード等で構成されている。照明部3から照射された光がカメラ2の撮像視野に照射されるように、照明部3の光軸の向きや照射角等が設定されている。
【0041】
表示部4は、例えば有機ELディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネル等からなるものであり、カラー画像の表示が可能に構成されている。操作部5は、例えば感圧式のタッチ操作パネル等で構成されており、表示部4を構成している表示パネルと重なった状態で配設されている。操作部5は、図示しないが結線作業支援装置1の電源をON、OFFするための電源ボタンと、カメラ2の立ち上げボタン(カメラ起動ボタン)と、カメラ2に撮像させるためのシャッターボタンとを含んでいる。カメラ起動ボタンやシャッターボタンは、物理的なボタンであってもよいし、表示部4にボタン状の画像を表示し、その画像をタッチしたことを検出するように構成されたものであってもよく、後者の場合はタッチ操作パネルでカメラ起動ボタンやシャッターボタンの操作を検出できる。この構成は、従来のスマートフォンの操作検出手段と同様である。
【0042】
表示部4や操作部5は、従来のスマートフォンやタブレット型端末に搭載されているものを使用することができる。表示部4や操作部5の面積は、特に限定されるものではなく、作業者が見やすく、かつ、携帯が容易な大きさであればよい。
【0043】
制御ユニット6は、例えば中央演算処理装置(CPU)、ROM、RAM等で構成されており、
図2に示すように、撮像制御部61、照明制御部62、位置推定部63及び判定部64を備えている。例えばROM等に予め記憶されているプログラムに従って中央演算処理装置を動作させることにより、撮像制御部61、照明制御部62、位置推定部63及び判定部64を構成することができる。撮像制御部61、照明制御部62、位置推定部63及び判定部64は、ハードウエアのみで構成されていてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0044】
制御ユニット6は、
図4に示すようなユーザーインターフェース画面400を生成して表示部4に表示させる。ユーザーインターフェース画面400には、画像表示領域401と、メッセージ表示領域402と、照明ボタン403と、チェックボックス404a~404cとが設けられている。
【0045】
画像表示領域401には、カメラ2で撮像されたカラー画像が表示される。すなわち、カメラ2が起動して撮像を開始すると、当該カメラ2で撮像されている画像が画像表示領域401に表示される。このとき、画像表示領域401に表示されている画像は、所定のフレームレートで更新されており、いわゆるライブビュー画像となっている。この状態で作業者がシャッターボタンを操作すると、当該シャッターボタンが押されたことを撮像制御部61が検出し、当該シャッターボタンが押された時にカメラ2で取得されたカラー画像を撮像制御部61が一時的に記憶する。撮像制御部61は、シャッターボタンが押された時にカメラ2で取得されたカラー画像を画像表示領域401に静止画として表示させる。また、シャッターボタンが押された時にカメラ2で取得されたカラー画像は、記憶部7に記憶させることもできる。
【0046】
ユーザーインターフェース画面400にある照明ボタン403は、照明部3のONとOFFとを切り替えるためのボタンである。照明ボタン403の操作は、タッチ操作パネルによって検出することができる。照明制御部62は、照明ボタン403が操作されたことを検出すると、照明部3を点灯させる。照明部3が点灯状態にあるときに照明ボタン403が操作されたことを照明制御部62が検出すると、照明部3を消灯させる。つまり、照明部3は作業者が必要に応じて点灯させることができる。尚、照明部3は、画像が暗い場合に自動的に点灯させるようにしてもよい。
【0047】
ユーザーインターフェース画面400にあるチェックボックス404a~404cは、結線作業対象を選択するための選択手段の一例であり、「チェックターミナル」のチェックボックス404aは、チェックターミナル120の第1~第7変成器側接続端子121~127、または第1~第7計器側接続端子131~137への接線作業を行う際にチェックするためのものである。「変成器」のチェックボックス404bは、高圧変成器100の第1~第7接続端子101~107への接線作業を行う際にチェックするためのものである。「高圧計器」のチェックボックス404cは、電力量計(高圧計器)110の第1~第7接続端子111~117への接線作業を行う際にチェックするためのものである。
図4に示す例では、「高圧計器」のチェックボックス404cにチェックがなされている状態を示している。
【0048】
ユーザーインターフェース画面400にあるメッセージ表示領域402には、カメラ2による撮像対象を作業者へ知らせるためのメッセージが表示されるようになっている。「高圧計器」のチェックボックス404cにチェックがなされると、メッセージ表示領域402には「高圧計器の写真を撮って下さい」と表示されるので、作業者は電力量計110の第1~第7接続端子111~117及び配線301~307の端部を間違うことなく、撮影することができる。同様に、「チェックターミナル」のチェックボックス404aにチェックがなされると、メッセージ表示領域402には「チェックターミナルの写真を撮って下さい」と表示され、また、「変成器」のチェックボックス404bにチェックがなされると、メッセージ表示領域402には「変成器の写真を撮って下さい」と表示される。
【0049】
図2に示す記憶部7には、正規の並び位置にある複数本の配線の相対位置に関する情報が予め記憶されている。この情報には、例えば配線の色順や配線の本数が含まれている。例えば、
図3に示すように、高圧変成器100の第1~第7接続端子101~107には、左から右へ順に、黒色、赤色、青色、茶色、黄色、白色、緑色の配線101~107が接続されるようになっており、この色の並びが配線の正規の並び位置を示す情報である。また、電力量計110の第1~第7接続端子111~117にも同じ色の並びで配線301~307が接続されるようになっており、この並びが正規の並び位置である。
【0050】
チェックターミナル120の第1~第7変成器側接続端子121~127及び第1~第7計器側接続端子131~137には、上から下へ順に、黒色、赤色、青色、茶色、黄色、白色、緑色の配線101~107が接続されるようになっており、この並びが正規の並び位置である。このように、第1~第7接続端子101~107、第1~第7接続端子111~117、第1~第7変成器側接続端子121~127及び第1~第7計器側接続端子131~137ごとに区別された状態で、上記正規の並び位置及び本数に関する情報が記憶部7に記憶されている。
【0051】
詳細は後述するが、位置推定部63は、カメラ2で取得されたカラー画像を利用して、配線の相対位置を推定する部分である。また、判定部64は、位置推定部63で推定された配線の相対位置と、記憶部7に記憶された情報に基づく配線の相対位置とが一致しているか否かを判定する部分である。撮像制御部61は、判定部64の判定結果に応じて作業報告書用写真の撮像を許可する場合と、作業報告書用写真の撮像を禁止する場合とがある。
【0052】
以下、
図5に示すフローチャートに基づいて、位置推定部63、判定部64及び撮像制御部61等の具体的な動作を説明する。スタート後のステップS1では、
図4に示すようなユーザーインターフェース画面400を制御ユニット6が表示部4に表示させるとともに、カメラ2を立ち上げる。このステップS1は、作業者が結線作業支援装置1の電源をONにするか、カメラ起動ボタンを操作することで実行されるステップである。本例では、「高圧計器」のチェックボックス404cにチェックがなされている場合について説明する。「高圧計器」のチェックボックス404cにチェックがなされていることを検出すると、制御ユニット6は、第1~第7接続端子111~117に接続される配線301~307の相対位置に関する情報を記憶部7から読み込む。
【0053】
ステップS1において作業者は、チェックボックス404a~404cのうち、結線作業に応じた結線作業対象を選択する。ステップS1では、結線作業支援装置1の電源がONにされるか、カメラ起動ボタンが操作されたことを撮像制御部61が検出すると、カメラ2に撮像を継続的に開始させる。これにより、ユーザーインターフェース画面400の画像表示領域401にはライブビューが表示されるので、作業者はそのライブビューを見ながら、
図6に示すように、第1~第7接続端子111~117と配線301~307の端部及びその近傍とがカメラ2の視野に入るように結線作業支援装置1を移動させる。
【0054】
ステップS1に続くステップS2では、制御ユニット6が、ユーザーインターフェース画面400の画像表示領域401に、
図6に示すような第1~第7枠501~507を表示させる。第1~第7枠501~507は、配線301~307の色及びその並びに対応しており、第1枠501は黒色の枠、第2枠502は赤色の枠、第3枠503は青色の枠、第4枠504は茶色の枠、第5枠505は黄色の枠、第6枠506は白色の枠、第7枠507は緑色の枠である。第1~第7枠501~507の大きさ及び間隔は、記憶部7に記憶されている配線301~307の相対位置に関する情報に基づいて設定することができ、ライブビューに重畳表示される。作業者は、第1~第7枠501~507が配線301~307の一部をそれぞれ囲むように結線作業支援装置1の位置決めを行う。
【0055】
その後、
図5に示すフローチャートのステップS3に進み、カメラ2が撮像を実行する。このステップS3は、作業者がシャッターボタンを操作することによって実行される。具体的には、撮像制御部61は、シャッターボタンが押されたこと検出すると、その時にカメラ2で取得されたカラー画像を一時的に記憶するとともに、画像表示領域401に静止画として表示させる。このステップS3では、
図6に破線で示す枠510で囲まれた領域のみを他の領域と区別可能に記憶しておく。この枠510は、第1~第7枠501~507を全て含む領域であるが、カメラ2で撮像された静止画よりも小さな領域(部分画像)である。ステップS4以降では、枠510で囲まれた領域のみ利用する。これにより、ステップS4以降の処理速度を向上させることができる。
【0056】
ステップS4では、カメラ2で取得したカラー画像のRGBをHSVに変換する。すなわち、カメラ2で取得したカラー画像の各画素の色は、赤・緑・青の3つが組み合わされて表現されているが、後述するステップでは、色相・彩度・明度の3つの情報を利用する必要があることから、ステップS4においてカラー画像をHSVに変換しておく。RGBからHSVへの変換は、従来から周知のソフトウエア処理で実行することができる。
【0057】
ステップS5では、位置推定部63が、カメラ2で取得されたカラー画像に、配線の色を抽出するマスク処理を実行し、このマスク処理を実行することによって検出した検出領域に配線301~307が位置すると推定する。このマスク処理の目的は、各色の配線領域を検出するためであり、最終的な判定はここでは行わない。ここで検出された配線領域に実際の配線が位置する場合もあるし、推定が覆って実際の配線が位置しないと最終的に判断される場合もあり得る。
【0058】
具体的には、
図7に示すように、位置推定部63が枠510で囲まれた領域を抽出する。その後、枠510で囲まれた領域に対して第1マスク処理を実行する。第1マスク処理は、黒色の配線301をカラー画像中から抽出するための処理であり、黒色領域を抽出するしきい値に基づいて実行する。しきい値の一例を
図8に示す表の「黒」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、黒色領域を抽出することができる。ただし、黒色の領域は配線301だけでなく、その背景も含まれるため、
図7に示す第1マスク処理では、配線301が背景と同化してしまい、両者の区別が行えない。よって、
図7に示す第1マスク処理では、全ての配線301~307を破線で示している。
【0059】
次に、
図7に示す第2マスク処理を実行する。第2マスク処理は、赤色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「赤」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、赤色領域を抽出することができるので、
図7に示す第2マスク処理では、赤色の配線302のみ実線で示し、他の配線301、303~307は破線で示している。
【0060】
次に、
図7に示す第3マスク処理を実行する。第3マスク処理は、青色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「青」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、青色領域を抽出することができるので、
図7に示す第3マスク処理では、青色の配線303のみ実線で示し、他の配線301、302、304~307は破線で示している。
【0061】
次に、
図7に示す第4マスク処理を実行する。第4マスク処理は、茶色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「茶」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、茶色領域を抽出することができるので、
図7に示す第4マスク処理では、茶色の配線304のみ実線で示し、他の配線301~303、305~307は破線で示している。
【0062】
次に、
図7に示す第5マスク処理を実行する。第5マスク処理は、黄色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「黄」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、黄色領域を抽出することができるので、
図7に示す第5マスク処理では、黄色の配線305のみ実線で示し、他の配線301~304、306、307は破線で示している。
【0063】
次に、
図7に示す第6マスク処理を実行する。第6マスク処理は、白色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「白」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、白色領域を抽出することができるので、
図7に示す第6マスク処理では、白色の配線306のみ実線で示し、他の配線301~305、307は破線で示している。
【0064】
次に、
図7に示す第7マスク処理を実行する。第7マスク処理は、緑色領域を抽出する処理であり、しきい値の一例を
図8に示す表の「緑」の行に記載している。このしきい値に基づいてマスク処理を実行すると、緑色領域を抽出することができるので、
図7に示す第7マスク処理では、緑色の配線307のみ実線で示し、他の配線301~306は破線で示している。
【0065】
マスク処理で検出された各領域は、当該領域の位置座標や範囲、色情報と共に記憶部7に一時的に記憶しておく。マスク処理が終了すると、
図5に示すフローチャートのステップS6に進む。ステップS6では、形状類似度判定を実行する。すなわち、記憶部7には、配線の形状に対応した形状を有する形状テンプレート520(
図9に示す)が記憶されている。この形状テンプレート520は、枠510内に位置する配線301~307の一部の形状に類似した形状の白色部分520aを有しており、他の部分は黒色である。配線301~307の太さは略同じなので、白色部分520aは、配線301~307のどれかの形状に類似していればよい。つまり、同じ形状テンプレート520を使用して、各配線301~307との形状類似度を求めることができる。この場合、例えば従来から画像処理の手法として用いられている手法を採用することができ、テンプレートのマスクを画像に重ねて、マスク部分に背景画像を存在している場合にはフィルタを通過して白色とし、マスク部分に背景画像が存在していない場合にはフィルタを通過せず、黒色とする。
【0066】
位置推定部63は、記憶部7に記憶されている形状テンプレート520を読み込んだ後、形状テンプレート520と、ステップS5で検出した各検出領域の形状との形状類似度を求め、求めた形状類似度が所定以上の場合に、前記検出領域に配線が位置すると推定するように構成されている。具体的には、
図9に示すように、例えば第2マスク処理で配線302、即ち赤色領域が検出されていた場合を例にして説明すると、形状テンプレート520を枠510内の部分画像の左端から右端まで1pix(画素)ずらしながら当該形状テンプレート520を適用し、形状テンプレート520と、当該形状テンプレート520の大きさと同等の部分画像との差が所定画素数以下となる位置を検出する。そして、形状テンプレート520と最も類似している位置と、その位置における形状類似度を特定する。上記所定画素数は、例えば400pix、450pix等とすることができる。形状類似度は、例えば形状テンプレート520と部分画像との一致点と相違点とを抽出し、一致点が多いほど、また相違点が少ないほど、高くなる。形状類似度が所定以上となった領域は、配線302が存在する領域であると推定する。このようにして推定された領域を
図10に示すように枠602で囲んで他の領域と区別することができる(ステップS7)。
【0067】
同様にして、第3~第7マスク処理で特定された領域についても、形状テンプレート520との形状類似度を求めると、
図10に示すように、特定された各領域を枠603~607で区別することができる(ステップS7)。尚、第1マスク処理では、上述したように黒色の配線301の領域を抽出しようとしたが、背景と同化していて抽出できなかったので、形状テンプレート520との形状類似度を求めることはできない。
【0068】
その後、ステップS8に進み、欠落した配線(黒色の配線301)の位置推定処理を実行する。このステップS8では、位置推定部63が、記憶部7に記憶されている情報(例えば配線の本数に関する情報)に基づいて配線の本数が7本であることを特定する。そして、位置推定部63は、特定した本数と同じ数の配線を推定できたか否かを判定し、同じ数の配線を推定できなかった場合には、欠落した配線の位置を推定するように構成されている。尚、この時点で欠落した配線の数が2以上である場合には、異常である可能性が高いので、エラー表示を行い、以下のステップは省略する。
【0069】
例えば、上記ステップS7では、形状類似度が所定以上の領域(配線302~307に対応する領域)を枠602~607で特定しているが、黒色の配線301については特定できていない。つまり、6本の配線302~307しか特定できていない。特定できていない黒色の配線301が欠落した配線であり、ステップS8では黒色の配線301の位置を推定する。例えば
図11に示すように、枠602~607の中心部を通る直線Lを引いた時に、その直線Lの延長線上に枠601を設定することで、当該枠601内に黒色の配線301が位置していると推定することができる。このとき、配線301~307の並びは等間隔であること、配線301~307の色の順番が上述したとおりであることは、記憶部7に記憶されている情報に基づいて取得することができるので、直線Lの延長線のどちらの方向に枠601を設定するべきかを位置推定部63によって判断することができる。
【0070】
位置推定部63は、7本の配線301~307中、6本の配線が検出された場合には、最小二乗法によって配線の位置を示す近似曲線を導出し、決定係数が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。そして、位置推定部63は、決定係数が所定のしきい値以上であると判定されたときには、前記近似曲線に基づいて欠落した配線の位置を推定するように構成されている。
【0071】
以下、この推定手順について具体的に説明する。
図10に示す枠510内の画像は、配線301~307を真正面から撮像した場合であり、真正面から撮像すれば、配線301~307は等間隔で撮像される。一方、
図12Aに示す枠510内の画像は、配線301~307を左から撮像した場合であり、左から撮像すれば、配線301、302の間隔が最も広く、配線306、307の間隔が最も狭く撮像される。また、
図12Bに示す枠510内の画像は、配線301~307を右から撮像した場合であり、右から撮像すれば、配線301、302の間隔が最も狭く、配線306、307の間隔が最も広く撮像される。
【0072】
図13に示すように、真正面から撮像した場合、近似曲線は直線に近い形状になるので、
図11に示す直線Lの延長線上のどこに黒色の配線301が存在するか推定できる。また、
図13に示すように、左から撮像した場合には近似曲線は破線で示す線になり、右から撮像した場合には近似曲線が一点鎖線で示す線になるので、これら近似曲線に基づいて、どこに黒色の配線301が存在するか推定できる。
【0073】
決定係数Rは、以下の式で求めることができる。
【0074】
【0075】
【0076】
ここで、Nは、配線の番号(黒=1、赤=3、… 緑=7)とする。また、xnは、推定できた配線のx座標とする。また、f(N)は、近似式による各配線の推定位置である。
【0077】
決定係数Rが1に近ければ近いほど、6本の配線302~307の並びが正しいということである。決定係数Rが所定のしきい値以上である場合には、6本の配線302~307が正しく並んでいる可能性が高いということであり、この場合には、上記近似曲線に基づいて欠落した配線の位置を推定する。上記所定のしきい値は、上述したように1に近い値であり、例えば、0.994以上、または0.996以上とすることができる。決定係数Rが所定のしきい値未満である場合には、何らかの異常である可能性が高いので、エラー表示して以下のステップは省略する。
【0078】
以上のようにして欠落した配線301を推定した後、ステップS9に進む。ステップS9では、配線色の相対評価処理を実行する。配線色の相対評価処理では、
図14に示すしきい値を適用する。すなわち、枠601~607内において配線であると特定された領域の色を評価対象として、7つの色の中で明度が最小の色を黒色とする。また、色相が「110」である色を青色とし、色相が「75」である色を緑色とする。赤色、茶色、黄色、白色についても
図14に示すしきい値を適用して評価する。これにより、枠601~607内の配線301~307の色が特定されるとともに、その色の並びも特定される。配線色の相対評価処理を実行することで、退色した配線であっても色を特定することが可能になるとともに、照明環境が変化しても配線の色を特定することができる。そして、配線301~307の色とその並びに関する情報、即ち、配線301~307の相対位置に関する情報は、判定部64に入力される。尚、
図14に示す数値は一例であり、必要に応じて変更してもよい。
【0079】
その後、ステップS10に進み、判定部64が、上述のようにして得られた配線301~307の相対位置(推定によって特定された相対位置)と、記憶部7に記憶された情報に基づく配線301~307の相対位置とが一致しているか否かを判定する。判定の結果、推定によって特定された相対位置と、予め記憶されている相対位置とが一致している場合には、ステップS11に進む。ステップS11では、撮像制御部61が、カメラ2による作業報告書用写真の撮像を許可する。これにより、作業者はシャッターボタンを操作すると、ステップS12で撮像制御部61がカメラ2に撮像処理を実行させるので、作業報告書用写真を取得することができる。作業報告書用写真は、例えば記憶部7等に記憶され、作業報告書の作成時に読み込んで利用することができる。
【0080】
一方、ステップS10で推定によって特定された相対位置と、予め記憶されている相対位置とが一致していないと判定された場合には、結線が誤っているということであり、この場合にはステップS13に進む。ステップS13では、撮像制御部61が、カメラ2による作業報告書用写真の撮像を禁止するので、作業者がシャッターボタンを操作してもカメラ2による撮像処理は実行されない。撮像を禁止した後、結線順序が正常であると判断できない理由を作業者にメッセージを報知してもよい。作業者への報知の形態としては、例えば表示部4にメッセージを表示する形態であってもよいし、音声を発する形態であってもよい。他の配線201~207、接続端子101~107、111~117、121~127、131~137についても同様に判定することができる。
【0081】
図6に符号700で示す直線は、正誤表示線である。ステップS10で一致していると判定された場合には、正誤表示線700の色を緑色にして画像に重畳表示させる一方、ステップS10で一致していないと判定された場合には、正誤表示線700の色を赤色にして画像に重畳表示させる。上記緑色正誤表示線700は、結線が正しく行われていることを表示する形態の一例であり、他の色であってもよいし、文字や記号によって結線が正しく行われていることを表示してもよい。上記赤色の正誤表示線700は、結線が正しくないことを表示する形態の一例であり、他の色であってもよいし、文字や記号によって結線が正しくないことを表示してもよい。正誤表示線700は必要に応じて表示させればよく、表示を省略してもよい。
【0082】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、結線後の配線が正規の並び位置にあるときにのみカメラ2のシャッターを切ることが可能なので、誤った結線状態が作業報告書用写真とされてしまうのを防止することができる。作業報告書用写真を撮像できないと作業を終了することができないので、作業者は結線状態を再び確認する必要が生じ、この時に正しい結線に修正することができる。尚、再度誤って結線したとしても、作業報告書用写真を撮像できないので、誤った結線であることを作業者に気付かせることができる。
【0083】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明に係る結線作業支援装置は、例えば高圧変成器やチェックターミナル、電力量計等への結線作業を行う場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 結線作業支援装置
2 カメラ(撮像部)
3 照明部
4 表示部
5 操作部
6 制御ユニット
7 記憶部
61 撮像制御部
62 照明制御部
63 位置推定部
64 判定部