(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】二次元材料積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 37/02 20060101AFI20240924BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240924BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240924BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240924BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240924BHJP
C09J 9/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B32B37/02
B32B7/06
B32B7/12
B32B9/00 A
C09J7/38
C09J9/00
(21)【出願番号】P 2021501945
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005841
(87)【国際公開番号】W WO2020170977
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019027773
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲士
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚史
(72)【発明者】
【氏名】増田 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 憲治
(72)【発明者】
【氏名】小山 諄
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008089(JP,A)
【文献】特開2008-115273(JP,A)
【文献】特開2009-242733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00- 43/00
C09J1/00- 5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上の二次元材料を、基材と、
紫外線により粘着力が低下する粘着剤層とを有する粘着シートの該粘着剤層側の面に貼り合わせて転写し、該粘着シートと、該二次元材料との積層体を得る工程と、
前記積層体の前記二次元材料側の面が第2の基板に接するように、前記積層体を該第2の基板に載置する工程と、
前記積層体に前記
紫外線を与える工程と、
前記粘着シートを剥離することにより前記第2の基板上に前記二次元材料を転写する工程とを含み、
前記積層体に前記紫外線を与える工程は、前記積層体を前記第2の基板に載置する工程の後に行い、
前記
紫外線を与える前の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Aが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、1.0N/20mm~20.0N/20mmであり、
前記紫外線を与えた後の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Bが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、0.01N/20mm~1.00N/20mmであり、
前記
紫外線を与えた後の前記粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである、
二次元材料積層体の製造方法。
【請求項2】
前記二次元材料が、二次元炭素材料、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又は六方晶窒化ホウ素である、請求項1に記載の二次元材料積層体の製造方法。
【請求項3】
前記二次元炭素材料が、グラフェン又はグラフェン誘導体である、請求項2に記載の二次元材料積層体の製造方法。
【請求項4】
前記粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤を含む、請求項2
又は3に記載の二次元材料積層体の製造方法。
【請求項5】
前記基材が、紫外線透過性を有する、請求項2~
4のいずれか1項に記載の二次元材料積層体の製造方法。
【請求項6】
前記二次元材料の転写率が30%以上である請求項
5に記載の二次元材料積層体の製造方法。
【請求項7】
基材と、
紫外線により粘着力が低下する粘着剤層とを有する粘着シートと、二次元材料との積層体であって、
該
紫外線を与える前の粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Aが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、1.0N/20mm~20.0N/20mmであり、
前記紫外線を与えた後の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Bが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、0.01N/20mm~1.00N/20mmであり、
該
紫外線を与えた後の粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである積層体。
【請求項8】
前記二次元材料が、二次元炭素材料、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又は六方晶窒化ホウ素である、請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
前記二次元炭素材料が、グラフェン又はグラフェン誘導体である、請求項
8に記載の積層体。
【請求項10】
前記粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤を含む、請求項
8又は9に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材が、紫外線透過性を有する、請求項
8~10のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元材料積層体の製造方法および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元炭素材料等の二次元材料は、その優れた電気的特性や光学的特性から配線材料や透明電極等、様々な応用が期待される。二次元炭素材料のなかでも、sp2結合した炭素原子による導電性の平面状結晶であるグラフェンは、高い光透過率と電気伝導性を有し、透明導電膜や透明電極、トランジスタ等への利用が期待されている。
グラフェンの製造方法としては、触媒金属の表面への化学気相合成法(CVD)等が用いられている。しかし、グラフェンをデバイスに用いる際は、触媒金属の表面に形成したグラフェンを基板の表面に転写する工程が必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、グラフェン製造用銅箔の表面にグラフェンを形成するグラフェン形成工程と、グラフェンの表面に転写シートを積層し、グラフェンを転写シート上に転写しながら、グラフェン製造用銅箔をエッチング後、グラフェンを他の基板に移して転写シートを剥がすグラフェンの製造方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリオールと多官能イソシアネート化合物を含む粘着剤組成物を硬化して得られるポリウレタン系樹脂を主成分とし、グラフェン等の脆弱部材の仮固定に用いる脆弱部材仮固定用粘着部剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、グラフェンは薄膜であるため、大面積のグラフェンの転写は技術的に難易度が高いばかりでなく、転写時の品質の低下も問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特許第5850720号公報
【文献】日本国特開2014-172989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グラフェン等の二次元材料は、ナノオーダーの厚みの薄膜であるため、大面積になるにつれ転写の際の転写率が低下するという課題があった。
特許文献1に記載されているように、触媒金属上からその基板上にグラフェンを転写する際に、触媒金属をエッチング除去すると、グラフェンに破れや微細な傷が生じる場合があり、歩留りやグラフェンの性能の低下につながると考えられる。また、特許文献1に記載の技術によれば、触媒金属をエッチングするため、金属のコストがかかるとともに、エッチング廃液の処理が必要となり、生産性には課題がある。
また、エッチング後にさらに別の基板にグラフェンを転写させる場合には、特許文献1に記載のPETフィルムでは接着性を制御できないため、転写させることが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、生産性に優れ、二次元材料を高い転写率で転写し得る、積層体及び二次元材料積層体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、二次元材料と特定の粘着剤層を積層した積層体を用いることにより、従来技術における上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
〔1〕
第1の基板上の二次元材料を、基材と、紫外線または熱により粘着力が低下する粘着剤層とを有する粘着シートの該粘着剤層側の面に貼り合わせて転写し、該粘着シートと、該二次元材料との積層体を得る工程と、
前記積層体の前記二次元材料側の面が第2の基板に接するように、前記積層体を該第2の基板に載置する工程と、
前記積層体に前記紫外線または熱を与える工程と、
前記粘着シートを剥離することにより前記第2の基板上に前記二次元材料を転写する工程とを含み、
前記紫外線または熱を与える前の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Aが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、1.0N/20mm~20.0N/20mmであり、
前記紫外線または熱を与えた後の前記粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである、
二次元材料積層体の製造方法。
〔2〕
前記二次元材料が、二次元炭素材料、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又は六方晶窒化ホウ素である、〔1〕に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔3〕
前記紫外線または熱を与えた後の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Bが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、0.01N/20mm~1.00N/20mmである、〔1〕又は〔2〕に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔4〕
前記二次元炭素材料が、グラフェン又はグラフェン誘導体である、〔2〕に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔5〕
前記粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤を含む、〔2〕~〔4〕のいずれか1項に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔6〕
前記基材が、紫外線透過性を有する、〔2〕~〔5〕のいずれか1項に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔7〕
前記二次元材料の転写率が30%以上である〔6〕に記載の二次元材料積層体の製造方法。
〔8〕
基材と、紫外線または熱により粘着力が低下する粘着剤層とを有する粘着シートと、二次元材料との積層体であって、
該紫外線または熱を与える前の粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Aが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、1.0N/20mm~20.0N/20mmであり、
該紫外線または熱を与えた後の粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである積層体。
〔9〕
前記二次元材料が、二次元炭素材料、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又は六方晶窒化ホウ素である、〔8〕に記載の積層体。
〔10〕
前記紫外線または熱を与えた後の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Bが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、0.01N/20mm~1.00N/20mmである、〔9〕に記載の積層体。
〔11〕
前記二次元炭素材料が、グラフェン又はグラフェン誘導体である、〔9〕に記載の積層体。
〔12〕
前記粘着剤層が、紫外線硬化型粘着剤を含む、〔9〕~〔11〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔13〕
前記基材が、紫外線透過性を有する、〔9〕~〔12〕のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性に優れ、二次元材料を高い転写率で転写し得る積層体、及び該積層体を用いた二次元材料積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法を説明するための概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る製造方法を説明するための概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る積層体の概略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る製造方法を説明するための概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る製造方法を説明するための概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例を説明するための画像データを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例を説明するための画像データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る二次元材料積層体の製造方法は、
第1の基板上の二次元材料を、基材と、紫外線または熱により粘着力が低下する粘着剤層とを有する粘着シートの該粘着剤層側の面に貼り合わせて転写し、該粘着シートと、該二次元材料との積層体を得る工程と、
前記積層体の前記二次元材料側の面が第2の基板に接するように、前記積層体を該第2の基板に載置する工程と、
前記積層体に前記紫外線または熱を与える工程と、
前記粘着シートを剥離することにより前記第2の基板上に前記二次元材料を転写する工程とを含み、
前記紫外線または熱を与える前の前記粘着剤層のシリコンウエハーに対する25℃における粘着力Aが、引張速度300mm/minで180°ピールを行ったとき、1.0N/20mm~20.0N/20mmであり、
前記紫外線または熱を与えた後の前記粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、第1の基板21上に二次元材料30を有する積層体101を示す概略図である。
【0015】
第1の基板21としては、特に制限はなく、金属基板、セラミック基板、シリコン基板、樹脂基板等のいずれであってもよい。
第1の基板21としては、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、金、白金、モリブデン、タングステン等の遷移金属単体からなる金属基板;これら金属の合金金属基板;単結晶基板であるサファイア、マグネシア、スピネル、マイカ、SiC、SiN、Si、および単結晶基板表面を酸化処理されたもの;石英基板;これらの各基板表面に先に挙げた遷移金属の薄膜が形成された二次元材料の成膜用の基板、前記の各基板の上に二次元材料が形成された基板等が挙げられる。第1の基板21は、二次元材料の成膜用の基板であることが好ましい。
【0016】
成膜用の金属基板上に二次元材料を形成する方法としては特に制限はなく、好ましくはCVD法が用いられる。成膜方法としては、例えば、触媒金属の存在下で原料ガスを導入し、原料ガスの熱分解により処理する熱CVD法や、マイクロ波プラズマにより処理する表面波マイクロ波プラズマ化学気相蒸着(CVD)法などがあるが、二次元材料30が第1の基板21上に形成できればよい。
【0017】
二次元材料30は、単一種、ないしは二種以上の元素からなる二次元的な層状構造を有し、極めて薄いシート構造を有する材料である。炭素のみからなる二次元シートであるグラフェンはその代表的なものである。また、二次元材料30は、ナノ単位の幅を持つリボン状の膜であってもよい。
二次元材料としては、例えば、二次元炭素材料、遷移金属カルコゲナイド、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、黒リン等、及びそれらの誘導体が挙げられ、二次元炭素材料、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又は六方晶窒化ホウ素が好ましい。
二次元炭素材料としては、グラフェン、又はグラフェン誘導体が好ましい。
グラフェンとは、1原子の厚さのsp2結合炭素原子により形成された膜であり、炭素原子とその結合からできた六角形格子構造を形成している。本明細書では、これらの膜が2層~100層、積層した多層グラフェンも「グラフェン」と称する。
【0018】
グラフェン誘導体としては、酸化グラフェン、スルホン化グラフェン酸化物、水酸化グラフェン、炭酸グラフェン、窒化グラフェン等が挙げられ、酸化グラフェンが好ましい。
【0019】
積層体101は、前処理として、水に浸漬する処理を施しても良い。例えば、二次元材料がグラフェンである場合、積層体101のグラフェン成膜触媒がCuの際は、積層体101を4~100℃の水に4~72時間浸漬する。当処理により、グラフェンとCuの界面に水がインターカレーションされ、Cu表面が酸化される。浸漬の間、水は静置しても撹拌してもよい。水を攪拌することによりCuの表面がより酸化されやすくなる。また、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの金属塩を水に加えてCuの酸化を促す方法や、水蒸気に接触させてCuを酸化させる方法などもあるが、そのいずれの方法でもグラフェンとCuの界面に水がインターカレーションされ、Cuの表面が酸化される。
この酸化により、グラフェンとCuの間の相互作用が弱まり、粘着シート10への転写が効果的に行えるようになる。
【0020】
図2及び
図3は、第1の基板21上の二次元材料30を、基材11と、紫外線または熱により粘着力が低下する粘着剤層12とを有する粘着シート10の粘着剤層側の面に貼り合わせ転写し、該粘着シート10と、二次元材料30との積層体103を得る工程を示す概略図である。
第1の基板21と二次元材料30との積層体101に粘着シート10を貼り合わせる際は、積層体101上に粘着シート10を載置し、積層体102とすることができる。
積層体102は、例えば、ローラー等を用いて、二次元材料30と粘着シート10とを圧着させてもよい。
【0021】
二次元材料30が粘着シート10に接着するため、積層体102から粘着シート10と、二次元材料30との積層体103を剥離することにより、二次元材料30は、第1の基板21から粘着シート10に転写される。または積層体102を水酸化カリウム水溶液や塩酸水溶液などに浸漬させて第1の基板21の二次元材料に対向している表面をエッチングすることで、二次元材料30が粘着シート10に転写した積層体103を得ることもできる。
【0022】
本実施形態により得られる積層体103によれば、例えば、触媒金属上に形成した二次元材料を他の基板上に高い転写率で転写し得る。
【0023】
図4は、積層体103の前記二次元材料側の面が第2の基板40に接するように、積層体103を第2の基板40に載置する工程を示す概略図である。第2の基板40と、積層体103とを積層した積層体104が得られる。積層体103(積層体104)に紫外線または熱を与えることにより、粘着剤層12の粘着力を低下させ、粘着シート10を剥離しやすくなる。
積層体103に前記紫外線または熱を与える工程は、積層体103を第2の基板40に載置する工程の前に行っても、後に行ってもよいが、後に行うことが好ましい。
図5は、粘着シート10を剥離することにより第2の基板40上に二次元材料30を転写する工程を示す概略図である。積層体104の粘着シート10を剥離することにより第2の基板40上に二次元材料30が転写され、二次元材料積層体105が得られる。
【0024】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、基材と、紫外線または熱により粘着力が低下する粘着剤層とを有する。粘着剤層の粘着力が紫外線または熱により低下することにより、二次元材料を第2の基板上に高い転写率で転写し得る。
例えば、粘着シートは、金属基板上に形成した二次元材料を金属基板から剥離して粘着剤層に転写する際は高い粘着力を発揮する。そして、粘着シートと二次元材料との積層体を、他の基板上に貼り合わせた後、紫外線または熱により粘着剤層の粘着力を低下させてから粘着シートを除去することにより、二次元材料に破れやクラック、しわ等を生じることを防ぎ、高い転写率で転写することができる。
【0025】
積層体102より積層体103を剥離する際の剥離角度は、特に制限はなく、通常180度以下であるが、剥離角度が小さいと、積層体103の形状の変化により二次元材料30に破れやクラック等の不具合が生じるのを防ぐことができる。このため、上記剥離角度は小さい方が好ましく、好ましくは90度以下であり、より好ましくは60度以下である。また、剥離角度は剥離装置自体の大型化の観点から、0度以上であることが好ましい。
なお、剥離角度とは、積層体102より積層体103を剥離する際の、第1の基板21と、積層体103の剥離した部分とのなす角をいう。
【0026】
積層体102より積層体103を剥離する際の剥離速度は、特に制限はないが、上記剥離速度が速いと、積層体103の形状の変化が生じる時間が短くなるため、二次元材料30に破れやクラック等の不具合が生じるのを防ぐことができる。このため、通常10mm/min以上であるが、剥離速度は速いことが好ましく、1000mm/min以上が好ましく、より好ましくは2000mm/min以上である。また、剥離速度は装置の安定的な可動の観点から、100000mm/min以下であることが好ましく、90000mm/min以下であることがより好ましい。
なお、剥離速度とは、積層体102より積層体103を剥離する際の、単位時間当たりに積層体102から積層体103が剥離した長さをいう。
【0027】
二次元材料の転写率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0028】
ここで、二次元材料の転写率は以下のようにして求めることができる。
例えば、二次元材料がグラフェンである場合、Cu/サファイア基板の表面に熱CVDによりグラフェンを成長させ、その後にCuを酸化させる。Cu/サファイア基板におけるCu表面をグラフェンが完全に覆っている場合は、Cuの酸化は基板全面で均一に生じる。一方、Cu表面をグラフェンが完全に覆っていない場合は、グラフェンの結晶粒群の真下のCu領域(グラフェンで覆われたCu領域)と、グラフェンで覆われていないCu領域とで酸化の態様が異なるため、グラフェン結晶粒群を明瞭に観察できるようになる。
その後、グラフェンに対して粘着テープを貼り付け剥離し、粘着テープ/グラフェンを被転写材である300nmの酸化膜をもつ0.5mm厚のシリコン基板(例えば、SUMCO製)の上に貼り付ける。粘着テープ/グラフェン/シリコン基板に、紫外線照射または熱を加えて粘着テープの粘着力を低下させたのち、粘着テープを剥がす。
Cu表面をグラフェンが完全に覆っていた場合は、粘着テープを剥がした後の被転写材の表面に転写されたグラフェンの像を顕微鏡観察し、画像中に占めるグラフェンの面積比を百分率で表したものを転写率とする。
Cu表面をグラフェンが完全に覆っていない場合は、粘着テープ貼り付け前のCu/サファイア基板上のグラフェン結晶粒群と、粘着テープにより転写された被転写材上のグラフェン結晶粒群を顕微鏡観察で対比させて、Cu/サファイア基板上のグラフェン結晶粒群の面積と被転写材表面に転写された結晶粒群の面積の比を百分率で表したものを転写率とする。
【0029】
基材11としては、例えば、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンおよびオレフィン系エラストマーからから選択されるいずれかの樹脂を主成分とする基材やこれらの架橋体等を用いることができる。基材11は紫外線透過性を有することが好ましい。
【0030】
また基材11は、無延伸のフィルムを用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。
基材11の厚さは、特に制限されず適宜選択できるが、一般的には5~200μm程度である。
【0031】
粘着剤層12は、紫外線または熱により粘着力が低下する。
紫外線または熱を与える前の、粘着力A(初期粘着力)は、粘着シートへのグラフェン転写率の観点から、シリコンウエハーに対する25℃における粘着力が1.0N/20mm以上が好ましく、1.5N/20mm以上がより好ましく、2.0N/20mm以上が更に好ましく、20.0N/20mm以下が好ましく、17.0N/20mm以下がより好ましく、15.0N/20mm以下が更に好ましい。
【0032】
紫外線または熱を与えた後の、粘着剤層の粘着力Bは、粘着シートからのグラフェン転写率の観点から、シリコンウエハーに対する25℃における粘着力が0.01N/20mm以上が好ましく、0.03N/20mm以上がより好ましく、0.05N/20mm以上が更に好ましく、1.00N/20mm以下が好ましく、0.50N/20mm以下がより好ましく、0.25N/20mm以下が更に好ましい。
ここで、粘着力A及び粘着力Bは、それぞれ、シリコンウエハーに対し25℃において、引張速度300mm/minで180°ピールを行った場合の粘着力である。
紫外線または熱を与えた後の粘着力は、紫外線または熱を与える前の粘着力に対し30%以下にまで低下することが好ましく、10%以下にまで低下することがより好ましい。
【0033】
粘着剤層は、紫外線の照射により粘着剤層に含まれる樹脂の架橋や重合を進行させて、粘着剤層の粘着力を低下させることができる。
また、粘着剤層は、加熱または冷却等の熱により粘着剤層の粘着力が低下する。例えば、加熱により粘着剤層に含まれる樹脂の架橋や重合を進行させて、粘着剤層の粘着力を低下させることができる。また、例えば、粘着剤層に発泡剤を添加し、加熱により発泡させて粘着剤層と二次元材料との接触面に凹凸を生じさせ、粘着剤層の粘着力を低下させてもよい。粘着剤層の接触面に凹凸を生じた場合であっても、転写率の低下を防ぐため、粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである必要がある。
【0034】
本発明の実施形態に係る粘着剤層は、該紫外線または熱を与えた後の粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm~8.00μmである。粘着剤層の粘着面の表面粗さは、好ましくは0.03μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、更に好ましくは0.10μm以上であり、好ましくは5.00μm以下であり、より好ましくは4.00μm以下であり、更に好ましくは3.00μm以下である。
紫外線または熱を与えた後の粘着剤層の粘着面の表面粗さが8.00μmより大きいと、二次元材料の膜の破れや傷を生じ、転写率が低下する。また、粘着剤層の粘着面の表面粗さが0.01μm未満であると、粘着面自体の作製が困難となる。
粘着剤層の粘着面の表面粗さは白色光共焦点顕微鏡(レーザーテック株式会社製 Lasertec OPTELICS HYBRID)で20倍対物レンズを用いてソフトウェア「LMeye7」にて測定することができる。粘着剤層を別途シリコンウエハーに貼り付けたのち熱または紫外線で粘着力を低下させて剥離した粘着面を、粘着最表面にフォーカスを合わせ上下50μmの範囲でスキャンし測定できる。測定した750μm四方の画像を、同じくソフトウェア「LMeye7」にて、表面粗さラインプロファイルで任意のラインで5か所のRaを算出しその平均値を表面粗さとした。
【0035】
粘着剤層12は、紫外線硬化型粘着剤を含むことが好ましい。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
紫外線硬化型粘着剤は、ラジカル反応性炭素-炭素二重結合等の紫外線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものが好ましい。
紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤に、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の紫外線硬化型粘着剤を例示できる。
【0036】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1~30、特に炭素数4~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0037】
前記アクリル系ポリマーは、前記アクリル酸エステルと共重合可能なヒドロキシル基含有モノマーを必須成分として含む。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、アクリル酸エステルに対し10~30mol%の範囲内であることが好ましく、15~25mol%の範囲内であることがより好ましい。含有量が10mol%以上であると、紫外線照射後の架橋が十分となり、二次元材料の転写率が向上して生産性が上がる。
【0039】
前記アクリル系ポリマーは、必要に応じ、前記アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上を使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40質量%以下が好ましい。カルボキシル基含有モノマーの使用量は、全モノマー成分の0~3質量%以下が好ましい。その他、ヒドロキシル基含有モノマーやグリシジル基含有モノマーも、エポキシ樹脂におけるエポキシ基と反応し得るので、カルボキシル基含有モノマーの場合と同様にするのが好ましい。
【0040】
また、アクリル系ポリマーは、ラジカル反応性炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート化合物を含むことが好ましい。前記イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
前記ラジカル反応性炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート化合物の含有量は、ヒドロキシル基含有モノマーに対し含有量が50~90mol%の範囲内であることが好ましく、75~85mol%の範囲内であることがより好ましい。含有量が50mol%以上であると、紫外線照射後の架橋が十分に進行し、二次元材料の転写率が高くなるため好ましい。
【0042】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは35万~100万、更に好ましくは45万~80万程度である。
【0043】
また、粘着剤層12は、熱可塑性樹脂を含んでいても良い。熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴムなどの天然又は合成ゴム;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系エラストマー;スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、及びそれらの水素添加物などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどの各種熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、これらのゴム成分あるいは熱可塑性エラストマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
粘着剤層12は、上記の樹脂の他に、発泡剤を含んでいてもよい。なお、発泡剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。
発泡剤としては、特に限定されないが、無機物が好ましく挙げられる。上記無機物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;クレイ(特にハードクレイ);タルク;シリカ;ゼオライト;例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどアルカリ土類金属炭酸塩;例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナなどの金属酸化物;例えば、鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、亜鉛粉、チタン粉などの各種金属粉、合金の粉などの金属粉;マイカ;カーボン粒子;グラスファイバー;カーボンチューブ;層状ケイ酸塩;ガラスなどが挙げられる。
【0045】
粘着剤層の厚みは特に制限されないが、二次元材料に対して良好な接着性を発揮させる観点からは、好ましくは2μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上であり、平滑な粘着剤層の成膜性の観点から、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは50μm以下である。
【0046】
第2の基板40は、二次元材料被転写材である。第2の基板40は、その転写面と二次元材料30との接着力が、紫外線または熱を与えた後の粘着剤層12と、二次元材料30との接着力より強い基板であることが好ましい。このような第2の基板40は、それ自身が強い相互作用力を持つものでも、表面の加工により相互作用力を付与したものでよい。表面の加工とは、硬化性樹脂の塗布、表面の溶融、微細構造の形成や表面化学修飾などの方法があるが、方法はこの限りでない。
【0047】
第2の基板40としては、特に制限はなく、金属基板、セラミック基板、シリコン基板、樹脂基板等のいずれであってもよい。第2の基板40としては、例えば、SiO2/Si基板、石英基板、ガラス基板、PET基板、サファイア基板、ITO基板、二次元材料が積層された基板が好ましく、SiO2/Si基板がより好ましい。
【0048】
第2の基板40の厚さは、特に制限されず適宜選択できるが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは100μm以上であり、ハンドリングの観点から、好ましくは100mm以下であり、より好ましくは20mm以下であり、更に好ましくは5mm以下である。
【0049】
本発明の実施形態にかかる二次元材料積層体の製造方法により得られた二次元材料積層体は、タッチパネル用途等の透明導電膜、トランジスタや集積回路等の半導体デバイスまたは電子デバイス、広面積を必要とする透明電極や電気化学電極などへの応用が可能となる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<粘着シート1の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル(以下、「BA」という。)75質量部、アクリロイルモルフォリン(以下、「ACMO」という。)25質量部、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)20質量部、過酸化ベンゾイル0.2質量部及びトルエン65質量部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0052】
このアクリル系ポリマーAに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)をHEAに対し80mol%加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0053】
次に、アクリル系ポリマーA’100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8質量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5質量部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0054】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ17μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面に、厚さ115μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした後、粘着シート1を作製した。
【0055】
<粘着シート2の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)30質量部、アクリル酸メチル(以下、「MA」という。)70質量部、アクリル酸(以下、「AA」という。)10質量部、過酸化ベンゾイル0.2質量部及びトルエン65質量部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーBを得た。
【0056】
次に、アクリル系ポリマーB100質量部に対し、光重合性オリゴマーUV-1700B(日本合成化学社製)100質量部、メラミン樹脂(商品名「スーパーベッカミンJ-820―60N」、大日本インキ社製)1質量部、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)1質量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)3質量部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0057】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面に、厚さ150μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした後、粘着シート2を作製した。
【0058】
<粘着シート3の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、BA50質量部、アクリル酸エチル(以下、「EA」という。)50質量部、HEA10質量部、過酸化ベンゾイル0.2質量部及びトルエン65質量部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーCを得た。
【0059】
このアクリル系ポリマーCにMOIをHEAに対し50mol%加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーC’を得た。
【0060】
次に、アクリル系ポリマーC’100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8質量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5質量部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0061】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面に、厚さ50μmのPETフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした後、粘着シート3を作製した。
【0062】
<粘着シート4の作製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、EA20質量部、BA80質量部、AA10質量部、過酸化ベンゾイル0.2質量部及びトルエン65質量部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーDを得た。
アクリル系ポリマーD100質量部に、エポキシ系架橋剤(商品名「Tetrad-C」三菱ガス化学社製):1質量部、ロジン系粘着付与剤(商品名「タマノル361」荒川化学工業社製):5質量部、発泡剤(熱膨張性微小球;商品名「マツモトマイクロスフェアーF-501D」松本油脂製薬株式会社製;120℃発泡膨張タイプ):30質量部、およびトルエンを均一に混合し、溶解した塗工液を、厚さ100μmのPETフィルムの片面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し乾燥し、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面を貼り合わせて粘着シート4を作製した。
【0063】
<粘着シート5の作製>
アクリル系ポリマーB100質量部に対し、光重合性オリゴマーUV-1700B(日本合成化学社製)100質量部、メラミン樹脂(商品名「スーパーベッカミンJ-820―60N」、大日本インキ社製)1質量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8質量部を加えて、粘着剤溶液を作製した。
【0064】
前記で調製した粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面に、厚さ150μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間保存をした後、粘着シート5を作製した。
【0065】
<粘着シート6の作製>
粘着シート1の作製におけるMOIをHEAに対し50mol%に変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート6を作製した。
【0066】
<粘着シート7の作製>
粘着シート1の作製におけるACMOを30質量部、ならびにMOIをHEAに対し50mol%に変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート7を作製した。
【0067】
<粘着シート8の作製>
粘着シート1の作製におけるHEAをアクリル酸-4-ヒドロキシブチル(以下、「4HBA」という)に、ならびにMOIを4HBAに対し50mol%に変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート8を作製した。
【0068】
<粘着シート9の作製>
粘着シート1の作製におけるEVAフィルムを厚さ25μmのナイロンフィルムに変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート9を作製した。
【0069】
<粘着シート10の作製>
粘着シート1の作製におけるEVAフィルムを厚さ50μmのポリオレフィン(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート10を作製した。
【0070】
<粘着シート11の作製>
粘着シート1の作製におけるEVAフィルムを厚さ50μmのポリオレフィン(ポリ-4-メチルペンテン-1)フィルムに変更した以外は粘着シート1と同様に作製し、粘着シート11を作製した。
【0071】
<単結晶基板表面へのスパッタリングによるエピタキシャル金属膜の成膜>
単結晶基板としてアダマンド並木精密宝石株式会社から購入したサファイア(α-Al2O3)のc面(0001)を用いた。
上記の単結晶基板をRFマグネトロンスパッタリング装置(芝浦メカトロニクスCFS-4ES)のチャンバ内に装着して、単結晶基板表面にCu金属をスパッタリングした(Ar雰囲気、真空度は0.6Paが標準)。これにより、膜厚1000nmのCu膜をエピタキシャル的に堆積させCu/サファイア基板を得た。
【0072】
<グラフェンのCVD成膜>
アサヒ理化製作所のセラミック管状炉にセットした石英管(内径26mmφ)内部に、グラフェン成膜用基板として上記のCu/サファイア基板を設置した。基板サイズ10mm角のものを使用した。その後、大気圧下で、アルゴンと水素を流しながら所定の温度(1000~1075°C)まで昇温した。所定温度に到達後、同条件で0~3時間保持し、Cu表面の還元と平滑化を行った。その後、メタンを10~200ppm加えて、化学気相反応を行った。反応後は冷却し、室温(23℃)まで達した後、単層グラフェンが生成したCu/サファイア基板を石英管から取り出した。この反応により、結晶粒径が10~200μmの単層グラフェンをCu表面に形成した。
なお、90分の化学気相反応により、Cu表面の全面を覆う連続膜(全面)を形成し、30分の化学気相反応により、孤立したグラフェン結晶粒(グレイン)を形成した。反応時間により、孤立したグラフェン結晶粒から、Cu全面を覆う連続膜まで形成することが可能である。また、形成されたグラフェンの面積のうち、90%以上が単層である。
【0073】
<グラフェン/Cu/サファイア基板の水中での酸化>
50ml容量のサンプル管に3mlの超純水(Milli-Q)を入れ、上記でCu/サファイア基板上にグラフェンを成膜した積層体1a(全面とグレインの二種)をビーカー内の超純水に浸漬した。これを40℃に設定した恒温槽に入れ、4時間から72時間の間静置し、Cu表面の酸化処理を行った。
【0074】
〔実施例1〕
Cu表面の酸化処理後の積層体1aのグラフェン側の面に粘着シート1をローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け、50℃の5気圧で30分間のオートクレーブ処理を施し、30分間常温常圧で静置後、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで剥離し、Cu/サファイア基板から粘着シート1にグラフェンを転写させ積層体1bを得た。
その後、積層体1bのグラフェン側の面が酸化膜付きシリコン基板(SUMCO社製 シリコン(結晶面(100))、表面熱酸化-酸化膜厚300nm)に接するように載置し、ローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け積層体1cを得た。積層体1cを30分間常温常圧で静置した後、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1の基材側から450mJ/cm2の照射量でUV処理し、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで粘着シート1を剥離し、積層体1aのグラフェンをシリコン基板に転写させ、実施例1のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0075】
〔実施例2〕
実施例1における粘着シート1を粘着シート2に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0076】
〔実施例3〕
実施例1における粘着シート1を粘着シート3に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例3のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0077】
〔実施例4~7〕
Cu/サファイア基板から粘着シートにグラフェンを転写させる際の剥離角度を、表3に記載の角度に変更し、剥離速度を1000mm/minに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4~7のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
また、Cu/サファイア基板から粘着シートに転写したグラフェンを観察した。実施例4及び5で得られたグラフェンは、ヒビ(クラック)が殆どなく比較的良好であった。また、実施例6及び7で得られたグラフェンは、剥離方向(剥離始めから剥離終わりに向かう方向)に対し略垂直方向(剥離垂直方向)にヒビを生じた。観察結果を、表3に示した。
【0078】
〔実施例8~13〕
Cu/サファイア基板から粘着シートにグラフェンを転写させる際の剥離角度を、20度に変更し、剥離速度を表4に記載の速度に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8~13のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
また、Cu/サファイア基板から粘着シートに転写したグラフェンを観察した。実施例8及び9で得られたグラフェンは、ヒビが殆どなく比較的良好であった。実施例10~12で得られたグラフェンは、全体的にヒビを生じ破壊していた。また、実施例13で得られたグラフェンは、ヒビが無く良好であった。観察結果を表4に示した。
【0079】
〔実施例14~19〕
実施例1における粘着シート1を粘着シート6~11に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例14~19のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0080】
〔実施例20〕
(MoS2のCVD成膜)
アサヒ理化製作所のセラミック管状炉にセットした石英管(内径26mmφ)内部に、遷移金属カルコゲナイドの一種である二硫化モリブデン(MoS2)成膜用基板としてサファイア基板(京セラ株式会社製、c面)を設置した。また、石英管内部の成膜用基板に対してガス流の上流域に原料となる三酸化モリブデン粉末が入ったるつぼを設置し、さらに上流域に硫黄粉末が入ったるつぼを設置した。
サファイア基板はサイズ10mm角のものを使用し、三酸化モリブデン10~50mg、硫黄50~200mgを用いた。なお、サファイア基板と各るつぼの距離は、一番高い反応温度を要するサファイア基板を管状炉の中心に置き、そこから10~20cm離れた位置に三酸化モリブデンのるつぼを置き、三酸化モリブデンのるつぼから15~25cm離れた位置に硫黄のるつぼを置いた。
その後、大気圧下で、アルゴンを流しながら、サファイア基板と各るつぼを所定の温度(基板:850~950℃、三酸化モリブデン:580~600℃、硫黄:100~200℃)まで昇温し、30分の化学気相反応を行った。反応後は冷却し、室温(23℃)まで達した後、孤立したMoS2結晶粒が生成したサファイア基板を石英管から取り出した。この反応により、結晶粒径が5~50μm程度のMoS2をサファイア基板表面に形成した(積層体20a(グレイン))。
【0081】
(サファイア基板上に成長したMoS2のサファイア基板からの剥離/転写方法)
積層体20a(グレイン)のMoS2側の面に粘着シート1をローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け、50℃の5気圧で30分間のオートクレーブ処理を施し、30分間常温常圧で静置した。
その後、積層体20b(粘着シート/MoS2/サファイア基板)を1mol/L濃度の水酸化カリウム水溶液に浸漬させた。これにより、水酸化カリウムがサファイア基板の最表面のみをエッチングし、サファイア基板から粘着シート1にMoS2を転写させて積層体20cを得た。
その後、積層体20cをMoS2側の面が酸化膜付きシリコン基板(SUMCO社製 シリコン(結晶面(100))、表面熱酸化-酸化膜厚300nm)に接するように載置し、ローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け積層体20dを得た。
積層体20dを30分間常温常圧で静置した後、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1の基材側から450mJ/cm2の照射量でUV処理し、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで粘着シート1を剥離し、積層体20cのMoS2をシリコン基板に転写させ、実施例20のシリコン基板とMoS2との積層体を得た。
【0082】
〔実施例21〕
(WS2のCVD成膜)
アサヒ理化製作所のセラミック管状炉にセットした石英管(内径26mmφ)内部に、遷移金属カルコゲナイドの一種である二硫化タングステン(WS2)成膜用基板としてサファイア基板(京セラ株式会社製、c面)を設置した。また、石英管内部の成膜用基板に対してガス流の上流域に原料となる三酸化タングステン粉末が入ったるつぼを設置し、さらに上流域に硫黄粉末が入ったるつぼを設置した。
サファイア基板はサイズ10mm角のものを使用し、三酸化タングステン10~50mg、硫黄50~200mgを用いた。なお、サファイア基板と各るつぼの距離は、一番高い反応温度を要する三酸化タングステンのるつぼを管状炉の中心に置き、そこから5~15cm離れた位置にサファイア基板を置き、三酸化モリブデンのるつぼから15~25cm離れた位置に硫黄のるつぼを置いた。
その後、大気圧下で、アルゴンを流しながら、サファイア基板と各るつぼを所定の温度(基板:900~1000℃、三酸化タングステン:1050~1100℃、硫黄:100~200℃)まで昇温し、30分の化学気相反応を行った。反応後は冷却し、室温(23℃)まで達した後、孤立したWS2結晶粒が生成したサファイア基板を石英管から取り出した。
この反応により、結晶粒径が5~50μm程度のWS2をサファイア基板表面に形成した(積層体21a(グレイン))。
【0083】
(サファイア基板上に成長したWS2のサファイア基板からの剥離/転写方法)
積層体21avのWS2側の面に粘着シート1をローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け、50℃の5気圧で30分間のオートクレーブ処理を施し、30分間常温常圧で静置した。
その後、積層体21b(粘着シート/WS2/サファイア基板)を1mol/L濃度の水酸化カリウム水溶液に浸漬させた。これにより、水酸化カリウムがサファイア最表面のみをエッチングし、サファイア基板から粘着シート1にWS2を転写させて積層体21cを得た。
その後、積層体21cのWS2側の面が酸化膜付きシリコン基板(SUMCO社製 シリコン(結晶面(100))、表面熱酸化-酸化膜厚300nm)に接するように載置し、ローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け積層体21dを得た。積層体21dを30分間常温常圧で静置した後、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1の基材側から450mJ/cm2の照射量でUV処理し、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで粘着シート1を剥離し、積層体21cのWS2をシリコン基板に転写させ、実施例21のシリコン基板とWS2との積層体を得た。
【0084】
〔実施例22〕
(h-BNのCVD成膜)
アサヒ理化製作所のセラミック管状炉にセットしたアルミナ管(内径39mmφ)内部に、h-BN成膜用基板として鉄ニッケル合金ホイル基板(ニラコ製)を設置した。鉄ニッケル合金ホイル基板はサイズ10mm角のものを使用した。
その後、減圧下(10~1000Pa)で、アルゴンと水素を流しながら所定の温度(1000-1200°C)まで昇温した。所定温度に到達後、同条件で0~3時間保持し、鉄ニッケル合金基板の表面の還元と平滑化を行った。その後、ボラジンを分圧1Pa以下になるように加えて、30分の化学気相反応を行った。
反応後、室温(23℃)まで達した後、多層h-BNが生成した鉄ニッケル合金ホイル基板をアルミナ管から取り出した。この反応により、厚みが1~50nm程度の多層h-BNを鉄ニッケル合金基板の表面全面に形成した(積層体22a(全面)。
【0085】
(触媒基板上に成長したh-BNの触媒からの剥離方法)
積層体22aのh-BN側の面に粘着シート1をローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け、50℃の5気圧で30分間のオートクレーブ処理を施し、30分間常温常圧で静置した。
その後、積層体22b(粘着シート/h-BN/鉄ニッケル合金ホイル)を1mol/L濃度の塩酸に浸漬させた。これにより、塩酸が鉄ニッケル合金基板の表面をエッチングし、かつ、鉄ニッケル合金基板とh-BNの間に水素ガスを発生させ、鉄ニッケル合金基板から粘着シート1にh-BNを転写させて積層体22cを得た。
その後、積層体22cをh-BN側の面が酸化膜付きシリコン基板(SUMCO社製 シリコン(結晶面(100))、表面熱酸化-酸化膜厚90nm)に接するように載置し、ローラー(2kg/10mmの加圧力)で貼り付け積層体22dを得た。
積層体22dを30分間常温常圧で静置した後、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1の基材側から450mJ/cm2の照射量でUV処理し、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで粘着シート1を剥離し、積層体22cのh-BNをシリコン基板に転写させ、実施例22のシリコン基板とh-BNとの積層体を得た。
【0086】
〔比較例1〕
実施例1における粘着シート1を粘着シート4に変更し、UV処理を熱処理に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0087】
〔比較例2〕
実施例1における粘着シート1を粘着シート5に変更し、UV処理を実施しない以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例2のシリコン基板とグラフェンとの積層体を得た。
【0088】
実施例1~3、14~22、比較例1、2で得られた積層体について、表1及び表2に示した。
【0089】
【0090】
【0091】
<表面粗さ>
上記で作製した粘着シート1~3、6~11について、粘着シート1~3、6~11をそれぞれ幅20mm、長さ10cmになるように切断し、UV処理を行い、剥離ライナーを剥離除去した。
上記で作製した粘着シート4について、粘着シート4を幅20mm、長さ10cmになるように切断し、熱処理を行い、剥離ライナーを剥離除去した。
上記で作製した粘着シート5について、粘着シート5を幅20mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
【0092】
UV処理は、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1~3の基材側から450mJ/cm2の照射量で行った。
熱処理は150℃に加熱したホットプレート上に粘着シート4の基材側をホットプレートに接するようにして静置し1分後に取り出して空冷した。
【0093】
粘着剤層の粘着面の表面粗さを白色光共焦点顕微鏡(レーザーテック株式会社製 Lasertec OPTELICS HYBRID)で20倍対物レンズを用いてソフトウェア「LMeye7」にて測定した。粘着剤層を、別途シリコンウエハーに貼り付けたのち熱または紫外線で粘着力を低下させて剥離した粘着面を、粘着剤層最表面にフォーカスを合わせ上下50μmの範囲でスキャンし測定した。測定した750μm四方の画像を、同じくソフトウェア「LMeye7」にて、表面粗さラインプロファイルで任意のラインで5か所のRaを算出し、その平均値をトリガ後の粘着表面粗さ(μm)とした。
【0094】
<粘着力の測定>
上記で作製した粘着シート1~3、6~11について、UV処理前の粘着力(初期)を測定した。
粘着力の測定は、粘着シート1~3、6~11をそれぞれ幅20mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、シリコンウエハー(4インチのシリコンミラーウエハー)に、各例の粘着シートを2kgローラーで1往復して圧着して貼付した。
引張試験機(AUTOGRAPH AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで引きはがした際の力を粘着力(対シリコンウエハー180℃剥離力(初期))(N/20mm)として測定した。
【0095】
シリコンウエハー(4インチのシリコンミラーウエハー)に粘着シートを圧着した後にUV処理した以外は、上記と同様の操作により、UV処理した後の粘着力(対シリコンウエハー180℃剥離力(トリガ後))(N/20mm)を測定した。
UV処理は、UV照射機(日東精機社製 UM-810)で粘着シート1~3、6~11の基材側から450mJ/cm2の照射量で行った。
【0096】
上記で作製した粘着シート4について、熱処理前の粘着力(初期)を測定した。
粘着力の測定は、粘着シート4を幅20mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、シリコンウエハー(4インチのシリコンミラーウエハー)に、各例の粘着シートを2kgローラーで1往復して圧着して貼付した。
引張試験機(AUTOGRAPH AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで引きはがした際の力を粘着力(初期)(N/20mm)として測定した。
【0097】
シリコンウエハー(4インチのシリコンミラーウエハー)に粘着シートを圧着した後に熱処理した以外は、上記と同様の操作により、熱処理した後の粘着力(トリガ後)(N/20mm)を測定した。
熱処理は150℃に加熱したホットプレート上にシリコンウエハー側をホットプレートに接するようにして静置し1分後に取り出して空冷した。
【0098】
上記で作製した粘着シート5について、熱処理前の粘着力(初期)を測定した。
粘着力の測定は、粘着シート5を幅20mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、シリコンウエハー(4インチのシリコンミラーウエハー)に、各例の粘着シートを2kgローラーで1往復して圧着して貼付した。
引張試験機(AUTOGRAPH AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで引きはがした際の力を粘着力(初期)(N/20mm)として測定した。
【0099】
<転写率>
(グラフェンの転写率(全面))
実施例1~3、14~19、比較例1,2で得られたシリコン基板とグラフェンとの積層体(全面)の、被転写材の表面に残るグラフェンの像を、金属顕微鏡(Nikon製 ME600)とCCDカメラ(Nikon製 DS-Fi1)によるデジタル画像として取得した。なお、デジタル画像は、対物レンズ50倍の観察像で、その視野は160μm×120μmであり、任意の3箇所のデジタル画像を取得した。取得したデジタル画像を用いてソフトウェア「Win ROOF」(三谷商事製)にてRGB分離ならびに各成分像の二値化解析を行い、該当デジタル画像中に占めるグラフェンの面積比を百分率で求めた。3箇所のデジタル画像中に占めるグラフェンの面積比の平均値を転写率(全面)とした。
【0100】
(グラフェンの転写率(グレイン))
上記でCu/サファイア基板上にグラフェンを成膜した積層体1a(グレイン)を水中で酸化処理した後、粘着シート1を貼り付ける前に、Cu/サファイア基板上のグラフェン(グレイン)の観察像を、金属顕微鏡(Nikon製 ME600)とCCDカメラ(Nikon製 DS-Fi1)によるデジタル画像として取得した。
なお、デジタル画像は、対物レンズ50倍の観察像で、その視野は160μm×120μmであり、任意の3箇所のデジタル画像を取得した。
【0101】
つぎに、実施例1で得られたシリコン基板とグラフェンとの積層体(グレイン)の、被転写材の表面に転写されたグラフェンの観察像を、先に取得したCu/サファイア基板上のグラフェン(グレイン)の観察像と対応する位置において、同様の金属顕微鏡とCCDカメラによるデジタル画像として取得した。
【0102】
それぞれのデジタル画像より、先に取得したCu/サファイア基板上のグラフェン(グレイン)と、対応する位置のシリコン基板のグラフェン(グレイン)の面積比を百分率で求めた。3箇所のデジタル画像中に占めるグラフェンの面積比の平均値を転写率(グレイン)とした。
【0103】
図6は、粘着テープ貼り付け前のCu基板上のグラフェン結晶粒(グレイン)群として、実施例1のグラフェン/Cu/サファイア基板を水中で酸化処理後のグラフェン結晶粒(グレイン)の像を、金属顕微鏡(Nikon製 ME600)とCCDカメラ(Nikon製 DS-Fi1)によるデジタル画像として取得したものである。
また、
図7は、粘着テープにより転写された被転写材上の二次元材料結晶粒群として、実施例1のシリコン基板とグラフェンとの積層体の表面のグラフェンの像を、金属顕微鏡(Nikon製 ME600)とCCDカメラ(Nikon製 DS-Fi1)によるデジタル画像として取得したものである。
【0104】
図6及び7のグラフェン結晶粒群を顕微鏡観察で対比させて画像解析し、転写率(グレイン)を算出した。
実施例2、3、14~19、及び比較例1~3についても同様に画像解析し、グレインの転写率を求めた。
【0105】
(MoS2及びWS2の転写率(グレイン))
積層体20aに粘着シート1を貼り付ける前に、CVDにより形成されたサファイア基板上のMoS2の観察像を、金属顕微鏡(Nikon製 ME600)とCCDカメラ(Nikon製 DS-Fi1)によるデジタル画像として取得した。なお、デジタル画像は、対物レンズ50倍の観察像で、その視野は160μm×120μmであり、任意の3箇所のデジタル画像を取得した。
つぎに、実施例20で得られたシリコン基板とMoS2との積層体の、被転写材(シリコン基板)の表面に残るMoS2の像を、先に取得したサファイア基板上のMoS2の観察像と対応する位置において、同様の金属顕微鏡とCCDカメラによるデジタル画像として取得した。先に取得したサファイア基板上のMoS2と対応する位置のシリコン基板のMoS2の面積比を百分率で求めた。3箇所のデジタル画像中に占めるMoS2の面積比の平均値を転写率とした。
同様の操作によりWS2の転写率(グレイン)を求めた。
【0106】
(h-BNの転写率(全面))
グラフェンの転写率(全面)と同様の操作により、h-BNの転写率(全面)を求めた。
【0107】
【0108】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、生産性に優れ、二次元材料を高い転写率で転写し得る、積層体及び二次元材料積層体の製造方法を提供することができる。
【0110】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2019年2月19日出願の日本特許出願(特願2019-027773)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0111】
101、102、103、104:積層体
10:粘着シート
11:基材
12:粘着剤層
21:第1の基板
30:二次元材料
40:第2の基板
105:二次元材料積層体