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  • 特許-アキシャルギャップ型モータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240924BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
H02K1/18 A
H02K21/24 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020061922
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021164217
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】朝間 淳一
(72)【発明者】
【氏名】東 竜也
(72)【発明者】
【氏名】田中 孔明
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-028803(JP,U)
【文献】特開昭53-051414(JP,A)
【文献】特開2011-250537(JP,A)
【文献】特開平07-241050(JP,A)
【文献】実公昭48-025070(JP,Y1)
【文献】特開平07-264826(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142441(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104485794(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに固定されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータと前記ロータとの軸方向間に形成されたモータギャップと、前記ケースに対して前記ステータの周方向一部領域を前記モータギャップが小さくなる側に押し込み可能な押圧部材と、前記ケースと前記ステータとを軸方向に固定する固定用ボルトとを備え
前記ケースのうち、前記モータギャップと半径方向で重なる領域に貫通孔を設け、
前記貫通孔と前記固定用ボルトが同じ周方向位置に設けられたアキシャルギャップ型モータ。
【請求項2】
前記ステータが、積層鋼板からなるステータコアと、コイルとを有し、
前記ステータコアと前記ケースとの軸方向間にプレートが介在し、
前記押圧部材が、前記プレートを介して前記ステータコアを押し込む請求項1に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【請求項3】
前記プレートが、前記ステータコアよりも硬い材料で形成された請求項2に記載のアキシャルギャップ型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータとロータの軸方向間にモータギャップが形成されたアキシャルギャップ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータとロータとの間に形成されるモータギャップの精度は、モータの性能を大きく左右する。モータギャップの精度を高めるためには、モータを構成する各部品の寸法公差を厳しく管理して寸法精度を高めたり、適当な厚さのシムを部品間に組み込んだりすることが考えられる。しかし、上記の何れの方法でもコストと時間がかかる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1に示されているアキシャルギャップ型モータでは、ロータ(回転子)を、軸受を介してステータ(固定子)に取り付け、軸受の外周に設けられた軸受ハブに外周ねじ部を形成すると共に、ステータに内周ねじ部を形成している。軸受ハブの外周ねじ部とステータの内周ねじ部とを螺合させた状態で、軸受ハブとステータとを相対回転させることで、軸受及びロータがステータに対して軸方向に移動する。これにより、ロータとステータとの軸方向間のモータギャップ(アキシャルギャップ)を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-69697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アキシャルギャップ型モータにおいて、例えば、ステータの軸心がロータの軸心に対して僅かに傾斜している場合、モータギャップの大きさが周方向位置によって変動する。上記特許文献1の構成では、モータギャップ全体を大きくしたり小さくしたりすることはできるが、モータギャップの部分的な調整はできないため、モータギャップの周方向位置による変動を修正することはできない。
【0006】
そこで、本発明は、アキシャルギャップ型モータのモータギャップを部分的に調整可能とすることで、モータギャップの精度を高め、もってモータの性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、ケースと、前記ケースに固定されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータと前記ロータとの軸方向間に形成されたモータギャップと、前記ケースに対して前記ステータの周方向一部領域を前記モータギャップが小さくなる側に押し込み可能な押圧部材とを備えたアキシャルギャップ型モータを提供する。
【0008】
このアキシャルギャップ型モータでは、ケースに固定されたステータの周方向一部領域を、押圧部材(例えば、ねじ部材)によって押し込むことにより、この周方向領域におけるモータギャップを小さくすることができる。この場合、押圧部材の押し込み量を調整することによって、モータギャップの周方向一部領域の大きさを調整することができるため、モータギャップの周方向位置による変動を修正することが可能となる。
【0009】
上記のアキシャルギャップ型モータでは、ケースのうち、モータギャップと半径方向で重なる領域に貫通孔を設けることが好ましい。これにより、貫通孔を介してモータギャップの大きさを測定することができるため、この測定結果に基づいて、押圧部材によるステータの押し込み量を調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、アキシャルギャップ型モータのモータギャップを部分的に調整することができるため、モータギャップの大きさを全周で均一化することができ、もってモータの性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型モータの断面図であり、図2のX-X線断面図である。
図2】上記アキシャルギャップ型モータを図1のY方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型モータ1(以下、単に「モータ1」とも言う。)は、図1に示すように、固定側となるケース10及びステータ20と、回転側となるロータ30及び回転軸40とを備える。ステータ20とロータ30との間には、軸方向のモータギャップ(アキシャルギャップ)が形成される。図示例では、円盤状のロータ30の軸方向両側にステータ20が設けられ、ロータ30と一方のステータ20との軸方向間にモータギャップG1が形成され、ロータ30と他方のステータ20との軸方向間にモータギャップG2が形成される。
【0014】
ケース10は、円筒部11と、円筒部11の軸方向両端から内径側に延びる一対の平板部12とを有する。図示例では、円筒部11と一方の平板部12とが第1ケース部材10Aとして一体に設けられ、他方の平板部12が第2ケース部材10Bとして設けられる。第1ケース部材10Aと第2ケース部材10Bは、ボルト等の適宜の手段で固定される。第1ケース部材10Aの平板部12の軸心に設けられた軸孔12aは、キャップ13により閉塞されている。第2ケース部材10Bの平板部12の軸心に設けられた軸孔12aからは、回転軸40が突出している。
【0015】
ステータ20は、ステータコア21及びコイル22を有する。ステータコア21は、例えば積層鋼板からなり、円盤状のヨーク部21aと、ヨーク部21aから軸方向内側(ロータ30側)に突出し、周方向等間隔に設けられた複数のティース部21bとを有する。各ティースの周りにコイル22が設けられる。
【0016】
ステータコア21は、固定ボルト50によりケース10の平板部12に固定される。固定ボルト50は、図2に示すように、周方向に離隔した複数箇所(例えば4箇所)に設けられる。本実施形態では、ステータコア21とケース10の平板部12との間にはプレート51が介在している(図1参照)。ステータコア21の軸方向外側(ロータ30と反対側)の端面には、固定ボルト50が螺合する複数のねじ孔21cが形成される。ケース10の平板部12及びプレート51のうち、ステータコア21のねじ孔21cと同軸上の位置には、固定ボルト50が挿通される貫通孔12b、51aが形成される。
【0017】
ロータ30は、略円盤状のロータコア31と、複数のマグネット32とを有する。ロータコア31は、例えば積層鋼板で形成され、周方向複数箇所に軸方向の貫通孔31aが形成される。ロータコア31の軸心には、軸孔31bが形成される。マグネット32は、ロータコア31の各貫通孔31aに嵌め込まれ、例えば接着により固定される。
【0018】
回転軸40は、ロータコア31の軸孔31bに挿入され、例えば圧入により固定される。回転軸40は、軸受61、62を介してケース10に取り付けられる。これにより、回転軸40及びロータ30が、ケース10に対して一体に回転可能とされる。
【0019】
以上がモータ1の基本的な構成である。以下、本発明の特徴的構成である押圧部材について説明する。
【0020】
本実施形態では、押圧部材としてねじ部材が設けられ、図示例では押圧ボルト70が設けられる。ケース10の平板部12には、複数のねじ孔12cが設けられ、各ねじ孔12cの内周面のねじ部と押圧ボルト70の外周面のねじ部とが螺合している(図1参照)。押圧ボルト70は、周方向に離隔した複数箇所に設けることが好ましい。また、押圧ボルト70は、半径方向に離隔した複数箇所に設けることが好ましい。図示例では、半径の異なる2つの円周上で、それぞれ周方向に離隔した4箇所に、押圧ボルト70が設けられる(図2参照)。
【0021】
ケース10の円筒部11のうち、各ステータ20とロータ30との軸方向間のモータギャップG1、G2と半径方向で重なる領域には、半径方向の貫通孔11aが形成される(図1参照)。貫通孔11aは、周方向に離隔した複数箇所に形成され、例えば、周方向等間隔の複数箇所(例えば4箇所)に形成される。各貫通孔11aは、閉塞部材14で閉塞される。閉塞部材14は、取り外し可能な状態で貫通孔11aに装着される。
【0022】
上記のモータ1の組立工程では、まず、ステータ20をケース10の各平板部12に固定する。具体的には、固定ボルト50を、ケース10の平板部12の貫通孔12b及びプレート51の貫通孔51aに軸方向外側から挿通すると共に、ステータコア21のねじ孔21cに螺合させて締め付けることにより、ステータコア21とケース10の平板部12とがプレート51を挟んだ状態で固定される。
【0023】
その後、ロータ30の軸孔31bに回転軸40を固定すると共に、ケース10の各平板部12の内周面に、軸受61、62を介して回転軸40を組み付ける。そして、ケース10の第1ケース部材10A(円筒部11及び一方の平板部12)と第2ケース部材10B(他方の平板部12)とをボルト等で固定する。以上により、モータ1が組み立てられる。
【0024】
モータ1を組み立てた後、ケース10の円筒部11に設けられた閉塞部材14を取り外し、貫通孔11aを介してモータギャップG1、G2がケース10の外部から見える状態とする。この状態で、モータギャップG1、G2の大きさを確認しながら、ケース10の平板部12の各ねじ孔12cに螺合した押圧ボルト70を回転させて、押圧ボルト70の先端でステータコア21を軸方向内側(ロータ30側)に押し込む。例えば、ケース10の貫通孔11aを介して、モータギャップG1、G2に所定の厚さを有する板状のシックネスゲージ(図示省略)を挿入し、この状態で押圧ボルト70を回転させてステータコア21を軸方向内側に押し込む。本実施形態では、調整前のモータギャップG1、G2の大きさが規定値(シックネスゲージの厚さ)よりも若干大きくなるように、予め各部材の寸法等が設定される。
【0025】
上記のように押圧ボルト70でステータコア21を押し込むことにより、ステータコア21が撓んで周方向一部領域(押圧ボルト70で押圧された周方向領域)がケース10の平板部12から離れる方向に移動し、この周方向領域及びその近傍のティース部21bの先端がロータ30に近づく。これにより、当該周方向領域及びその近傍において、ステータコア21とロータ30との間のモータギャップG1、G2が小さくなる。そして、モータギャップG1、G2の大きさが規定値になったら、押圧ボルト70の回転を停止する。本実施形態では、ステータコア21のティース部21bの先端(軸方向内側の端面)とロータ30とでシックネスゲージが挟まれたら、押圧ボルト70の回転を停止する。これにより、当該押圧ボルト70の周方向領域及びその近傍において、モータギャップG1、G2の大きさを規定値に設定することができる。以上の作業を、他の押圧ボルト70でも同様に行うことにより、モータギャップG1、G2の大きさを全周で略均一な値(規定値)に設定することができる。
【0026】
以上のように、押圧ボルト70でステータコア21の周方向一部領域を軸方向内側に押し込むことにより、モータギャップG1、G2の大きさを部分的に調整することができる。これにより、例えば、ステータ20の中心軸がロータ30との中心軸に対して僅かに傾斜した状態でケース10に固定され、モータギャップG1、G2の大きさが周方向位置によって異なる場合でも、押圧ボルト70ごとに押し込み量を調整することで、モータギャップG1、G2の大きさを全周で略均一化することができる。
【0027】
また、ステータコア21の端面は、積層鋼板を構成する各鋼板の縁が露出した面であるため、この面を押圧ボルト70で直接押圧すると、ステータコア21が変形しやすい。そこで、本実施形態では、プレート51を介して、積層鋼板からなるステータコア21の端面を押圧ボルト70の先端で押圧することで、ステータコア21の変形を防止している。プレート51は、ステータコア21よりも硬い材料で形成することが好ましい。尚、ステータコア21の強度に問題が無ければ、プレート51を省略して、押圧ボルト70の先端でステータコア21を直接押圧してもよい。
【0028】
本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0029】
例えば、モータギャップG1、G2の大きさを測定器(図示省略)で測定しながら、押圧ボルト70でステータコア21を軸方向内側に押し込んでもよい。この場合、測定器により測定したモータギャップG1、G2の大きさが規定値になったら、押圧ボルト70の回転を停止する。測定器としては、例えば、ケース10の外部から貫通孔11aを介してモータギャップG1、G2を測定するものを使用できる。あるいは、予めケース10の内部に配した測定器で、モータギャップG1、G2の大きさを測定してもよい。この場合、ケース10の貫通孔11aが不要となる。
【0030】
また、押圧ボルト70の押し込み量の設定方法は上記に限られない。例えば、モータ1を組み立てた後、調整前のモータギャップG1、G2の大きさを測定し、この測定値と規定値との差を、押圧ボルト70の押し込み量として設定してもよい。この場合、押圧ボルト70の押し込み量は、押圧ボルト70の先端がプレート51に当接したときを原点として設定される。例えば、押圧ボルト70を回転させてトルクが急激に上昇したときを、押圧ボルト70の押し込み量の原点とすることができる。あるいは、押圧ボルト70の先端がケース10の平板部12の軸方向内側の端面と面一になった状態を、押圧ボルトの押し込み量の原点としてもよい。この場合、予め、押圧ボルト70の先端とケース10の平板部12の軸方向内側の端面とが面一なった状態で、押圧ボルト70と平板部12とを仮固定し、この状態でモータ1を組み立てた後、この位置を原点として押圧ボルト70を所定量だけ押し込む。
【0031】
また、モータギャップG1、G2の大きさは、上記のようにシックネスゲージや測定器で直接的に管理する場合に限らず、例えば、押圧ボルト70の締め付けトルクで管理することもできる。例えば、予め、生産ロットごとに、所望のモータギャップが得られる押圧ボルト70の締め付けトルクの値を検証し、その値で締め付けトルクを管理することにより、モータギャップを所望の大きさにすることができる。
【0032】
以上の実施形態では、固定ボルト50でステータコア21とケース10とを完全に固定してモータ1を組み立てた後、押圧ボルト70でステータコア21を押し込む場合を示したが、これに限られない。例えば、固定ボルト50を緩く締め付けてステータコア21とケース10の平板部12とを遊びを有する状態で一体化し、この状態でモータ1を組み立ててもよい。こうしてモータ1を組み立てた後、押圧ボルト70でステータコア21を軸方向内側に押し込むことで、固定ボルト50に軸力を発生させてステータコア21とケース10とを完全に固定すると共に、ステータコア21の周方向一部領域を軸方向内側に移動させてモータギャップG1、G2を調整することができる。。
【0033】
また、ステータコア21とケース10との固定方法は、ボルトに限らず、溶接や接着により行ってもよい。何れの場合でも、ステータコア21のうち、固定ボルト50や溶接等によりケース10に固定された領域以外の領域が、押圧部材(例えば押圧ボルト70)で押し込まれる。
【0034】
また、以上の実施形態では、ロータ30の軸方向両側にステータ20を設けた場合を示したが、これに限らず、ロータ30の軸方向一方のみにステータ20を設けたモータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 モータ
10 ケース
10A 第1ケース部材
10B 第2ケース部材
11 円筒部
12 平板部
13 キャップ
14 閉塞部材
20 ステータ
21 ステータコア
22 コイル
30 ロータ
31 ロータコア
32 マグネット
40 回転軸
50 固定ボルト
51 プレート
70 押圧ボルト(押圧部材)
G1、G2 モータギャップ
図1
図2