(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】スイッチングレギュレータ、電源回路および方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240924BHJP
H01H 59/00 20060101ALI20240924BHJP
H02M 3/16 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
H02M3/00 S
H01H59/00
H02M3/16
(21)【出願番号】P 2021161336
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 原
(72)【発明者】
【氏名】芝田 泰
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】下村 典子
(72)【発明者】
【氏名】石黒 巧真
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-078203(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019919(WO,A1)
【文献】特開2013-229951(JP,A)
【文献】特表2014-533083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H01H 59/00
H02M 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と、
弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、
前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部と
を有し、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成され、
前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続に
し、
前記接続部が、前記電源ラインの高電位側端子と低電位側端子とに接続するために、前記高電位側端子と前記低電位側端子との間を通って前記電源ラインを挟んで反対側から前記可動電極側に向かって蓋をするように構成された、スイッチングレギュレータ。
【請求項2】
固定電極と、
弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、
前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部と
を有し、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成され、
前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続にし、
前記接続部が、前記電源ラインの一方の端部に設けられた固定接点と、前記電源ラインの他方の端部に設けられたカンチレバー上の可動接点とを含み、前記固定接点と前記可動接点とが接触するように構成された、スイッチングレギュレータ。
【請求項3】
前記静電引力と前記弾性支持部による弾性力とが等しく、釣り合っている位置を基準として、前記静電引力が前記弾性力より大きい場合に、前記固定電極と前記可動電極とが近接することで、前記接続部が前記電源ラインを接続し、
前記静電引力が前記弾性力より小さい場合に、前記固定電極と前記可動電極とが離れることで、前記接続部が前記電源ラインを非接続にする、請求項1
または2に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項4】
前記固定電極および前記可動電極が対向する面には、複数の櫛歯電極が噛合するように形成されている、請求項1から
3のいずれか1項に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項5】
交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する電源回路であって、
前記外部負荷に対して並列に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに対して並列に接続された請求項1から
4のいずれか1項に記載されたスイッチングレギュレータとを備え、
前記スイッチングレギュレータは、前記直流電圧を供給するための前記電源ラインのオン/オフ状態を制御する、電源回路。
【請求項6】
前記スイッチングレギュレータは、前記コンデンサの充電電圧が所定の値以下である場合はオン状態であり、前記コンデンサの充電電圧が所定の値より大きい場合にオフ状態となる、請求項
5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記交流電圧を全波整流する整流回路をさらに備えた、請求項
5または
6に記載の電源回路。
【請求項8】
前記整流回路はダイオードブリッジ回路である、請求項
7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記交流電圧は発電素子によって供給される、請求項
5から
8のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項10】
前記発電素子は振動発電素子である、請求項
9に記載の電源回路。
【請求項11】
交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する方法であって、
前記外部負荷に対して並列に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに対して並列に接続されたスイッチングレギュレータであって、固定電極と、弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部とを有するスイッチングレギュレータとを備え、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成された電源回路において、
前記エレクトレットによる静電引力と前記弾性支持部による弾性力とが等しく、釣り合っている位置を基準として、前記静電引力が前記弾性力より大きく、前記固定電極と前記可動電極とが近接することで、前記接続部が前記電源ラインを接続し、
前記静電引力が前記弾性力より小さく、前記固定電極と前記可動電極とが離れることで、前記接続部が前記電源ラインを非接続に
し、
前記接続部が、前記電源ラインの高電位側端子と低電位側端子とに接続するために、前記高電位側端子と前記低電位側端子との間を通って前記電源ラインを挟んで反対側から前記可動電極側に向かって蓋をするように構成された、方法。
【請求項12】
交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する方法であって、
前記外部負荷に対して並列に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサに対して並列に接続されたスイッチングレギュレータであって、固定電極と、弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部とを有するスイッチングレギュレータとを備え、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成された電源回路において、
前記エレクトレットによる静電引力と前記弾性支持部による弾性力とが等しく、釣り合っている位置を基準として、前記静電引力が前記弾性力より大きく、前記固定電極と前記可動電極とが近接することで、前記接続部が前記電源ラインを接続し、
前記静電引力が前記弾性力より小さく、前記固定電極と前記可動電極とが離れることで、前記接続部が前記電源ラインを非接続にし、
前記接続部が、前記電源ラインの一方の端部に設けられた固定接点と、前記電源ラインの他方の端部に設けられたカンチレバー上の可動接点とを含み、前記固定接点と前記可動接点とが接触するように構成された、方法。
【請求項13】
固定電極と、
弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、
前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部と
を有し、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成されたスイッチングレギュレータにおいて、
前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続にする
方法であって、
前記接続部が、前記電源ラインの高電位側端子と低電位側端子とに接続するために、前記高電位側端子と前記低電位側端子との間を通って前記電源ラインを挟んで反対側から前記可動電極側に向かって蓋をするように構成された、方法。
【請求項14】
固定電極と、
弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、
前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部と
を有し、
前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成されたスイッチングレギュレータにおいて、
前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続にする方法であって、
前記接続部が、前記電源ラインの一方の端部に設けられた固定接点と、前記電源ラインの他方の端部に設けられたカンチレバー上の可動接点とを含み、前記固定接点と前記可動接点とが接触するように構成された、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチングレギュレータ、電源回路および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DC-DCコンバータにおいて、タイミング回路によって2つのサンプリングスイッチ(S0、S1)のオン/オフを制御して、抵抗性分圧器(R0、R1)による消費電力を低減することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したDC-DCコンバータでは、抵抗性分圧器(R0、R1)による消費電力を低減することができたとしても、タイミング回路自体による消費電力が残ってしまう。すなわち、タイミング回路のような制御回路によりスイッチを制御しても、その制御のための電力は必要になってしまう。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものであり、消費電力をより低減することが可能なスイッチングレギュレータ、電源回路および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるスイッチングレギュレータは、固定電極と、弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部とを有し、前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成され、前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続にする。
【0006】
また、本開示の一態様によると、交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する電源回路は、前記外部負荷に対して並列に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに対して並列に接続された上記スイッチングレギュレータとを備え、前記スイッチングレギュレータは、前記直流電圧を供給するための前記電源ラインのオン/オフ状態を制御する。
【0007】
また、本開示の一態様によると、交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する方法は、前記外部負荷に対して並列に接続されたコンデンサと、前記コンデンサに対して並列に接続されたスイッチングレギュレータであって、固定電極と、弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部とを有するスイッチングレギュレータとを備え、前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成された電源回路において、前記エレクトレットによる静電引力と前記弾性支持部による弾性力とが等しく、釣り合っている位置を基準として、前記静電引力が前記弾性力より大きく、前記固定電極と前記可動電極とが近接することで、前記接続部が前記電源ラインを接続し、前記静電引力が前記弾性力より小さく、前記固定電極と前記可動電極とが離れることで、前記接続部が前記電源ラインを非接続にする。
【0008】
また、本開示の一態様によるスイッチングレギュレータの制御方法は、固定電極と、弾性支持部に弾性支持され、前記固定電極に対向する可動電極と、前記可動電極の動作に応じて電源ラインを接続または非接続にする接続部とを有し、前記固定電極および前記可動電極のうちの少なくとも一方にエレクトレットが形成されたスイッチングレギュレータにおいて、前記エレクトレットによる静電引力を変化させることで、前記接続部の前記電源ラインを接続または非接続にする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、消費電力をより低減することが可能なスイッチングレギュレータ、電源回路および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る電源回路の概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係る電源回路の動作を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る電源回路の動作を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る電源回路の概略構成図である。
【
図5】一実施形態に係る電源回路の概略構成図である。
【
図6】一実施形態に係る電源回路の概略構成図である。
【
図7】一実施形態に係る電源回路の概略構成図である。
【
図9】一実施形態に係るスイッチングレギュレータの概略構成図である。
【
図10】一実施形態に係るスイッチングレギュレータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。本明細書及び添付の図面を通して同じ要素には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(従来技術)
図8は、従来の電源回路の概略構成図である。
【0013】
電源回路800は、スイッチングレギュレータ801と、コンデンサ802と、外部負荷803と、交流電源804と、整流回路805とを有する。
【0014】
スイッチングレギュレータ(以下、単にレギュレータとも称する)801は、制御回路810、およびスイッチ811を含み、制御回路810は、コンデンサ802の充電電圧を監視し、スイッチ811のオン/オフ状態を制御する。
【0015】
制御回路810は、コンデンサ802の充電電圧が所定の値未満である場合は、スイッチ811をオン状態とし、交流電源804から整流回路805を介して流れる電流は、コンデンサ802および外部負荷803へ流れる。また、コンデンサ802には電荷が蓄積される。
【0016】
一方、制御回路810は、コンデンサ802の充電電圧が所定の値以上になると、スイッチ811をオフ状態にする。スイッチ811がオフ状態になると、交流電源804からの電流は流れなくなるが、外部負荷803には、コンデンサ802から電流が流れる。
次いで、コンデンサ802の充電電圧が低下して所定の値未満になると、制御回路810は、スイッチ811をオン状態とし、交流電源804からの電流が流れるようになる。
このように、電源回路800のスイッチングレギュレータ801が、コンデンサ802の充電電圧に応じてスイッチ811のオン/オフ状態を制御することにより、所定の電圧値を超えない範囲で外部負荷803に供給される電圧が安定化される。
【0017】
しかしながら、従来のスイッチングレギュレータ801は、制御回路810がコンデンサ802の充電電圧を監視し、当該充電電圧に基づいてスイッチ811を制御するための直流電源を必要とする。尚、通常のスイッチングレギュレータの制御回路を駆動させるには、200nA~500nAの駆動電流を必要とすることが知られている。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る電源回路100の概略構成図である。電源回路100は、交流電圧を直流電圧に変換して外部負荷に供給する電源回路である。
【0019】
本実施形態に係る電源回路100は、スイッチングレギュレータ101と、コンデンサ102と、外部負荷103と、交流電源104と、整流回路105とを有する。
【0020】
交流電源104は、発電素子とすることができ、例えば、振動発電素子とすることができる。整流回路105は、交流電源104から供給される交流電圧を全波整流するダイオードブリッジ回路とすることができる。コンデンサ102は、整流回路105と外部負荷103との間で、外部負荷103に対して並列に接続されたコンデンサとすることができる。
【0021】
スイッチングレギュレータ101は、交流電源104から整流回路105を介して外部負荷103へ印加される電圧を制御して安定化させる。例えば、スイッチングレギュレータ101は、整流回路105から外部負荷103への出力電圧が所定の電圧値を超えないように制御する。
【0022】
スイッチングレギュレータ101は、固定部110、固定部110に対向する可動部111、接続部112を含む。可動部111に設けられた接続部112は、コンデンサ102に対して直列に配置され、電源ラインを接続または非接続にする。可動電極である可動部111および固定電極である固定部110の少なくとも一方にはエレクトレットが形成されている。エレクトレットには、例えば、カリウムイオンエレクトレットを用いることができる。また、可動部111は、不図示の弾性支持部により弾性支持されている。通常、可動部111と固定部110との間のエレクトレットに起因する静電引力は、可動部111を弾性支持する弾性支持部の弾性力より大きく(静電引力>弾性支持部の弾性力)、電源ラインの高電位側端子と低電位側端子とを接続する接続部112は閉じており(すなわち、オン状態)、電流が流れる状態にある。図示されるように、接続部112は、電源ラインの高電位側端子と低電位側端子との間を通って電源ラインを挟んで反対側から前記可動部111側に向かって蓋をするように、高電位側端子と低電位側端子とに接続する。このように、スイッチングレギュレータ101は、ノーマルクローズである。
【0023】
一方、コンデンサ102の充電電圧が所定の値より大きくなると、充電電圧がエレクトレットの帯電を打ち消すことで静電引力が低下し、静電引力が弾性支持部の弾性力より小さくなる((静電引力)<(弾性支持部の弾性力))。そのため、弾性支持部の弾性力により可動部111が固定部110から離れ、それとともに接続部112が電源ラインの高電位側端子および低電位側端子から離れる(すなわち、オフ状態となる)。したがって、整流回路105から電流は流れなくなる。オフ状態では、コンデンサ102から外部負荷103へ電流が流れ、充電電圧は低下する。充電電圧の低下に伴い、静電引力が大きくなることで、可動部111が再び固定部110に近接するようになり、接続部112はまた閉じた状態となる(すなわち、オン状態)。
【0024】
このように、固定部110および可動部111は、コンデンサ102に対して並列に接続されたアクチュエータとして動作し、スイッチである接続部112のオン/オフ状態を制御する。すなわち、スイッチングレギュレータ101は、可動部111および固定部110のうちの少なくとも一方に形成されたエレクトレットによる静電引力を変化させることで、接続部112の電源ラインを接続または非接続する。
【0025】
本実施形態に係るスイッチングレギュレータ101は、コンデンサ102の充電電圧を監視する電圧センサと、回路のオン/オフ状態を制御するスイッチの機能を兼ね備えており、従来の電源回路のような充電電圧の監視およびスイッチの制御のための電源が不要となる。さらには、従来のスイッチングレギュレータを動作させる制御回路が不要となり、制御回路を駆動するための200nA~500nAの駆動電流が不要となる為、スイッチングレギュレータの動作電流を限りなく0nAに近付けることができ、電源回路の消費電力を低減することができる。
【0026】
次に、
図2および
図3を参照して、一実施形態に係る電源回路200の動作を説明する。
図2は、オン状態にある電源回路200を示し、
図3は、オフ状態にある電源回路200を示す。
【0027】
電源回路200は、スイッチングレギュレータ201と、コンデンサ202と、外部負荷203と、交流電源204と、整流回路205とを有し、
図1の電源回路100と同様の構成を有する。すなわち、電源回路200のスイッチングレギュレータ201、コンデンサ202、外部負荷203、交流電源204、および整流回路205はそれぞれ、電源回路100のスイッチングレギュレータ101、コンデンサ102、外部負荷103、交流電源104、および整流回路105に対応する。
【0028】
スイッチングレギュレータ201は、固定部210、可動部211、および接続部212を含む。
図2では、固定部210と可動部211は近接しており、固定部210と可動部211との間のエレクトレットによる静電引力が、可動部211の弾性支持部(不図示)の弾性力より大きく(静電引力>弾性支持部の弾性力)、接続部212が高電位側端子および低電位側端子と接触した状態にある。したがって、接続部212はオン状態にあり、整流回路205からの出力電流は、接続部212を介してコンデンサ202、外部負荷203、可動部211へ流れる。図中の矢印は、電流の流れる方向を示す。
【0029】
接続部212は、コンデンサ202の充電電圧が所定の値以下である場合、オン状態を維持する(すなわち、ノーマルクローズ)。所定の値は、例えば、5Vとすることができる。
【0030】
【0031】
エレクトレットの静電力と弾性支持部(不図示)の弾性力とが釣り合った位置を基準として、コンデンサ202の充電電圧が所定の電圧より大きくなり、エレクトレットの静電引力が低下すると、相対的に弾性支持部(不図示)の弾性力の方が大きくなる(静電引力<弾性支持部の弾性力)。したがって、可動部211が弾性支持部の弾性力により固定部210から離間し、それに伴い、接続部212も高電位側端子および低電位側端子から離間し、オフ状態となる。
【0032】
レギュレータ201のオフ状態では、コンデンサ202から外部負荷203に対して電流が流れ(図中の矢印方向)、コンデンサ202の充電電圧は低下していく。したがって、コンデンサ202の充電電圧がふたたび所定の電圧値より低下すると、エレクトレットの静電引力が大きくなり、可動部211が固定部210に近接し、接続部212が閉じ、オン状態となる。
【0033】
このように、本実施形態に係るレギュレータ201は、外部負荷203にかかる電圧が所定の電圧値を超えないように安定化させることができる。また、レギュレータ201は、その他の電源を必要とすることなく、充電電圧を監視する電圧センサと、回路のオン/オフ状態を制御するスイッチの機能およびその方法を実現することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図4および
図5は、別の実施形態に係る電源回路400の概略構成図である。
図4は、オン状態にある電源回路400を示し、
図5は、オフ状態にある電源回路400を示す。
【0035】
電源回路400は、スイッチングレギュレータ401と、コンデンサ402と、外部負荷403と、交流電源404と、整流回路405とを有する。電源回路400は、スイッチングレギュレータ401の構成が、上述した電源回路200とは異なり、その他の構成は、上述した電源回路200と同様である。
【0036】
レギュレータ401は、可動部410と、固定部411、412と、固定接続部414、416とを含み、可動部410の可動接点413と、固定接続部414、416の固定接点415、417とが接触することによって電源ラインが導通する。可動部410の動作は、上述した電源回路200と同様である。すなわち、可動部410および固定部411、412の少なくとも一方に形成されたエレクトレットによる静電引力と、可動部410の弾性支持部(不図示)の弾性力との関係に応じて可動部410が動作し、可動接点413と、固定接点415、417との接触/非接触(オン/オフ状態)が制御される。
【0037】
可動接点413および固定接点415、417は、低摩耗性の金属薄膜によって形成されてよい。金属薄膜は、例えば、Ru、Pb、またはAuによって形成することができる。また、固定接点415を電源ラインの高電位側固定接点とも称し、固定接点417を電源ラインの低電位側固定接点とも称する。
【0038】
図5は、オフ状態にある電源回路400を示す。可動部410の動作は、上述した電源回路200と同様である。すなわち、コンデンサ402の充電電圧が所定の電圧値を超え、エレクトレットの静電引力が低下し、可動部410の弾性支持部(不図示)の弾性力が相対的に大きくなることにより、可動部410が固定部411、412から離れ、可動接点413が固定接点415、417から離れた状態である。
【0039】
このように、レギュレータ401は、可動部410の可動接点413と、固定接続部414、416の固定接点415、417とによってスイッチを構成することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図6および
図7は、さらに別の実施形態に係る電源回路600の概略構成図である。
図6は、オン状態にある電源回路600を示し、
図7は、オフ状態にある電源回路600を示す。
【0041】
電源回路600は、スイッチングレギュレータ601と、コンデンサ602と、外部負荷603と、交流電源604と、整流回路605とを有する。電源回路600は、スイッチングレギュレータ601の構成が、上述した電源回路200、400と異なり、その他の構成は、上述した電源回路200、400と同様である。
【0042】
レギュレータ601は、可動部610と、固定部611、612と、固定接続部613と、カンチレバー615とを含み、カンチレバー615上の低電位側接点616(すなわち、可動接点)と、固定接続部613の高電位側接点614(すなわち、固定接点)とが接触することによって電源ラインが導通する。上述した電源回路200、400のレギュレータ201、401はいずれも、2つの接触点を有するが、レギュレータ601は1つの接触点だけで、オン/オフ状態を制御することができる。したがって、スイッチの信頼性や耐久性などを向上させることができる。
【0043】
なお、固定接続部613が電源ラインの高電位側の端部に設けられ、カンチレバー615が電源ラインの低電位側の端部に設けられものとして説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、固定接続部613が、電源ラインの一方の端部に設けられ、カンチレバー615が電源ラインの他方の端部に設けられればよい。
【0044】
可動部610の動作は、上述した電源回路200、400と同様である。すなわち、可動部610および固定部611、612の少なくとも一方に形成されたエレクトレットによる静電引力と、可動部610の弾性支持部(不図示)の弾性力との関係に応じて可動部610が動作し、高電位側接点614と、低電位側接点616との接触/非接触(オン/オフ状態)が制御される。
【0045】
図7は、オフ状態にある電源回路600を示す。可動部610の動作は、上述した電源回路200、400と同様である。すなわち、コンデンサ602の充電電圧が所定の電圧値を超え、エレクトレットの静電引力が低下し、可動部610の弾性支持部(不図示)の弾性力が相対的に大きくなることにより、可動部610が固定部611、612から離れ、さらに、可動部610がカンチレバー615から離れ、低電位側接点616が高電位側接点614から離れた状態である。
【0046】
(スイッチングレギュレータの詳細な構成)
図9は、一実施形態に係るスイッチングレギュレータ900の概略構成図である。
図9(a)はオン状態を示し、
図9(b)はオフ状態を示す。
【0047】
スイッチングレギュレータ900は、ハンドル層901、接合部902、固定部903、可動部904、および弾性支持部905を有する。可動部904の可動接点906と、固定接点907とが接触することにより、不図示の電源ラインが導通する。また、固定部903および可動部904が対向する面には、複数の櫛歯電極が噛合するように形成されており、複数の櫛歯電極の少なくとも一部には、エレクトレット電位が与えられている。
【0048】
図9(a)のスイッチングレギュレータ900は、固定部903および可動部904の少なくとも一方に形成されたエレクトレットによる静電引力(矢印A方向)が、弾性支持部905の弾性力(矢印B方向)より大きい状態にある。この状態では、可動部904は固定部903に近接しており、可動接点906と固定接点907とが接触している(ノーマルクローズ)。
【0049】
図9(b)のスイッチングレギュレータ900は、固定部903および可動部904の少なくとも一方に形成されたエレクトレットによる静電引力(矢印A方向)がコンデンサ(不図示)の充電電圧により低下することで、弾性支持部905の弾性力(矢印B方向)が相対的に大きくなった状態にある。この状態では、可動部904が弾性支持部905により矢印B方向に引っ張られ、固定部903から離れることで、可動接点906と、固定接点907とが非接触となる。
【0050】
すなわち、固定部903および可動部904の少なくとも一方に与えられるエレクトレット電圧は、静電引力(矢印A方向)が弾性力(矢印B方向)より大きくなるように設計される。
【0051】
このように、少なくとも一方にエレクトレットが形成された固定部903および可動部904を含むアクチュエータ構造によってノーマルクローズを実現したことにより、スイッチングレギュレータにおけるスイッチを実装できるようになった。すなわち、ノーマルクローズスイッチでなければコンデンサの充電が始まらず、電源回路は機能しない。
【0052】
図10は、別の実施形態に係るスイッチングレギュレータ1000の概略構成図である。
図10(a)はオン状態を示し、
図10(b)はオフ状態を示す。
【0053】
スイッチングレギュレータ1000は、ハンドル層1001、接合部1002、固定部1003、可動部1004、および弾性支持部1005を有する。可動部1004の動作によって、カンチレバー1008上に設けられたスイッチ接点電極1006と、対抗するスイッチ接点電極1007とが接触することにより、電源ラインが導通する。
【0054】
スイッチングレギュレータ1000は、
図9のスイッチングレギュレータ900と比較して、可動接点906および固定接点907の代わりに、カンチレバー1008上に設けられたスイッチ接点電極1006と、対抗するスイッチ接点電極1007とを有する点で異なり、その他の構成は、スイッチングレギュレータ900と同様である。
【0055】
図9(a)では、固定部1003と可動部1004とが近接した状態にあり、可動部1004によってカンチレバー1008上のスイッチ接点電極1006と対向するスイッチ接点電極1007とが接触している。
図9(b)では、固定部1003と可動部1004とがより離れた状態にあり、カンチレバー1008上のスイッチ接点電極1006と対向するスイッチ接点電極1007とが非接触となる。可動部1004の動作原理は、
図9を参照して説明した可動部904の動作原理と同様である。
【0056】
スイッチングレギュレータ1000は、1つの接点だけでオン/オフ状態を制御することができるので、スイッチの信頼性や耐久性などを向上させることができる。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0058】
(1)コンデンサの充電電圧を監視し、スイッチを制御するための大きな駆動電圧が必要なくなり、消費電力を低減することができる。
【0059】
(2)低電圧でスイッチングが行えるため、電流により発生する磁界がスイッチングサイクルに同期して発生するために必要であった電磁ノイズ対策が不要になる。
【0060】
(3)スイッチの接続箇所を減らすことにより、スイッチの信頼性や耐久性などを向上させることができる。
【符号の説明】
【0061】
100 電源回路
101 スイッチングレギュレータ
102 コンデンサ
103 外部負荷
104 交流電源
105 整流回路
110 固定部
111 可動部
112 接続部