(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ロキソプロフェン含有皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240924BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20240924BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240924BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240924BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240924BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240924BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240924BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240924BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240924BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240924BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240924BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240924BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/355
A61K31/045
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/12
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/70 401
A61P29/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2024032125
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2023086985
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500091634
【氏名又は名称】株式会社 雪の元本店
(74)【代理人】
【識別番号】110004233
【氏名又は名称】弁理士法人NSI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 紀章
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-036050(JP,A)
【文献】特開2022-176349(JP,A)
【文献】特開2011-068610(JP,A)
【文献】特開2021-120419(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111167(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/191293(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/008909(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩、
2)テルペン類および/またはトコフェロール類、
3)
アジピン酸ジエチルまたはアジピン酸ジイソプロピル、
4)0.01~0.3質量%の範囲内の乳酸および1.5~20質量%の範囲内の乳酸塩を、1:10~1:150(乳酸:乳酸塩、質量比)の割合で含むpH調節剤、
ならびに
5)トコフェロール類を含む場合は、可溶化剤
を含む皮膚外用剤であって、
前記テルペン類が、イソボルネオール、イロン、オシメン、カルベオール、カルボタナセトン、カルボメントン、カルボン、カレン、カロン、カンフェン、カンフル、ゲラニオール、サビネン、サフラナール、シクロシトラール、シトラール、シトロネラール、シトロネル酸、シトロネロール、シネオール、シメン、シルベストレン、チモール、イソツジョール、ツジョン、テルピネオール、テルピネン、テルピノレン、トリシクレン、ネロール、ピネン、ピノカンフェオール、ピノール、ピペリテノン、フェランドラール、フェランドレン、フェンチェン、フェンチルアルコール、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ボルネオール、ミルセン、メントール、メントン、ヨノール、ヨノン、リナロール、またはリモネンであり、
前記トコフェロール類が、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、もしくはδ-トコトリエノール;これらの酢酸エステル、コハク酸エステル、もしくはニコチン酸エステル;またはこれらの塩であり、かつ
前記可溶化剤が、ポリソルベート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル、またはラウロマクロゴールであることを特徴とする、前記皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに、粘稠化剤、低級アルコール、および/または水を含
み、
かつ
前記粘稠化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、またはケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記テルペン類が、l-メントールまたはdl-メントールである、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
ロキソプロフェンの医薬上許容される塩が、ロキソプロフェンナトリウムまたはその水和物である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記粘稠化剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリル酸から選択される1種以上の高分子である、請求項2に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記低級アルコールが、エチルアルコール、プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールである、請求項2に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記トコフェロール類が、トコフェロール酢酸エステルである、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
前記皮膚外用剤が、半固形または液状製剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
前記皮膚外用剤が、液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、フォーム剤、貼付剤、またはスプレー剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤の技術分野に属する。本発明は、ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩、メントール等のテルペン類および/またはトコフェロール酢酸エステル等のトコフェロール類などを含む新規な皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るロキソプロフェンは、プロピオン酸系非ステロイド解熱鎮痛消炎剤(NSAID)の一つであって、プロスタグランジンの生合成を抑制することにより解熱・鎮痛・消炎作用を発揮する。ロキソプロフェンの優れた鎮痛・消炎作用から、経口剤のみならず、液剤、ゲル剤、テープ剤等の様々な形態の外用剤としても、ロキソプロフェンは用いられている。
【0003】
テルペン類は、イソプレンを構成単位とする炭化水素を含むアルコールなどであって、芳香を持つ。そのため香水の成分として、また菓子や医薬品の清涼剤などとして多用されている。代表的なテルペン類としては、メントールを挙げることができる。メントールは、外用剤に配合することにより、例えば、対象者に対して冷却感を与えることができる。
トコフェロール酢酸エステルに代表されるトコフェロール類は、皮膚の末梢血管拡張作用で血行を促進し、ニキビ、シミ、ソバカスなどの肌荒れを防止する作用や、皮膚の酸化を防ぐ抗酸化作用、ホルモンバランス是正作用、抗炎症作用などが期待できる薬物である。
【0004】
ロキソプロフェンとメントールなどのテルペン類を配合した消炎鎮痛外用剤も良く知られている。また、これらを有効成分として含む皮膚適用型の医薬組成物であって、医薬製剤としての安定性を高めたり、経皮吸収性を高めるための発明も多く開示されている(例えば、特許文献1~5)。ロキソプロフェンとトコフェロール類とを配合した外用剤も知られている(例えば、特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-185132号公報
【文献】特開2015-083563号公報
【文献】特開2017-132816号公報
【文献】特開2019-006835号公報
【文献】特開2020-059666号公報
【文献】特開2018-021002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、少なくともロキソプロフェンとテルペン類および/またはトコフェロール類とを有効成分として含有する消炎鎮痛外用剤は広く知られているところ、本発明は、少なくともこれら2つないし3つの有効成分を含み、製剤的な保存安定性を有しうる新たな皮膚外用剤を提供することを主な課題とする。
【0007】
ここで「製剤的な保存安定性を有しうる」とは、加速試験など適当な安定性試験において、外観が白濁せず、透明または半透明であり、結晶が析出せず、液性(pH)が保たれ、有効成分の含量変化(分解物の生成)が±10%、好ましくは±5%以下であることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、上記課題を解決しうる組成を見出し、本発明を完成するに到った。
本発明として、例えば、下記の態様のものを挙げることができる。
[1]次の成分1~5を含むことを特徴とする、皮膚外用剤:
1)ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩、
2)テルペン類および/またはトコフェロール類、
3)炭素数10~13、または分子量185~250の範囲内のエステル、
4)0.01~0.3質量%の範囲内の乳酸および1.5~20質量%の範囲内の乳酸塩を、1:10~1:150(乳酸:乳酸塩、質量比)の割合で含むpH調節剤、
5)トコフェロール類を含む場合は、可溶化剤。
[2]さらに、粘稠化剤、低級アルコール、および/または水を含む、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[3]前記テルペン類が、l-メントールまたはdl-メントールである、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[4]前記エステルが、アジピン酸ジエチルまたはアジピン酸ジイソプロピルである、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[5]ロキソプロフェンの医薬上許容される塩が、ロキソプロフェンナトリウムまたはその水和物である、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[6]前記粘稠化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリル酸から選択される1種以上の高分子である、上記[2]に記載の皮膚外用剤。
[7]前記低級アルコールが、エチルアルコール、プロピルアルコール、またはイソプロピルアルコールである、上記[2]に記載の皮膚外用剤。
[8]前記トコフェロール類が、トコフェロール酢酸エステルである、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[9]前記可溶化剤が、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル類、ラウリン酸デカグリセリルおよびラウロマクロゴール類からなる群から選択される1種以上である、上記[1]に記載の皮膚外用剤。
[10]前記皮膚外用剤が、半固形または液状製剤である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
[11]前記皮膚外用剤が、液剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、フォーム剤、貼付剤、またはスプレー剤である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロキソプロフェンとテルペン類および/またはトコフェロール類とが配合された、製剤的な保存安定性を有しうる、消炎鎮痛用の新たな皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1 本発明に係る皮膚外用剤
本発明に係る皮膚外用剤(以下、「本発明外用剤」という。)は、次の成分1~5を含むことを特徴とする。
1)ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩、
2)テルペン類および/またはトコフェロール類、
3)炭素数10~13、または分子量185~250の範囲内のエステル、
4)0.01~0.3質量%の範囲内の乳酸および1.5~20質量%の範囲内の乳酸塩を、1:10~1:150(乳酸:乳酸塩、質量比)の割合で含むpH調節剤、
5)トコフェロール類を含む場合は、可溶化剤。
【0011】
1.1 成分1について
本発明外用剤は、成分1に係る「ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩」を含む。かかるロキソプロフェン(遊離体)、あるいはその医薬上許容される塩は、公知の化合物(医薬)であって、公知の方法により製造することができる他、市場から入手することもできる。ロキソプロフェンの医薬上許容される塩としては、ロキソプロフェンナトリウムが好ましいが、それに拘らない。また、「ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩」には、これらと水との水和物(例えば、ロキソプロフェンナトリウム水和物)やこれらとアルコール等との溶媒和物も含まれる。
【0012】
本発明外用剤における成分1の含有量は特に制限されず、所望の消炎鎮痛効果に応じて適宜設定することができる。具体的には、本発明外用剤の全質量に対して、ロキソプロフェンとして、例えば、0.01~10質量%の範囲内が適当であり、好ましくは0.1~5質量%の範囲内であり、より好ましくは0.5~3質量%の範囲内である。0.01質量%より少ないと、消炎鎮痛効果を得られないおそれがあり、10質量%より多いと、副作用が懸念される。
【0013】
1.2 成分2について
本発明外用剤は、成分2に係る「テルペン類および/またはトコフェロール類」を含む。
本発明において「テルペン類」とは、環状または鎖状のモノテルペンまたはセスキテルペンであって、医薬上許容されるものをいう。具体的には、当該テルペンとして、例えば、イソボルネオール、イロン、オシメン、カルベオール、カルボタナセトン、カルボメントン、カルボン、カレン、カロン、カンフェン、カンフル、ゲラニオール、サビネン、サフラナール、シクロシトラール、シトラール、シトロネラール、シトロネル酸、シトロネロール、シネオール、シメン、シルベストレン、チモール、イソツジョール、ツジョン、テルピネオール、テルピネン、テルピノレン、トリシクレン、ネロール、ピネン、ピノカンフェオール、ピノール、ピペリテノン、フェランドラール、フェランドレン、フェンチェン、フェンチルアルコール、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ボルネオール、ミルセン、メントール、メントン、ヨノール、ヨノン、リナロール、リモネンを挙げることができる。これらのテルペン類の中には、光学異性を有するものがあるが、本発明においてはいずれの光学異性体も用いることができる。
【0014】
これらのテルペン類の中でも、例えば、カンフル、ゲラニオール、シトロネラール、テルピネオール、ボルネオール、メントール、リモネンが好ましく、d-カンフル、dl-カンフル、チモール、ボルネオール、l-メントール、dl-メントールがより好ましく、l-メントール、dl-カンフルが特に好ましい。
【0015】
本発明においては、上記テルペン類を単独で用いても、または任意の2種以上を併用することもできる。
【0016】
また、上記テルペン類を本発明外用剤に含有する場合、上記のようなテルペン類を含む精油を用いてもよい。かかる精油としては、例えば、アニス油、イランイラン油、イリス油、ウイキョウ油、オレンジ油、カナンガ油、カミツレ油、カヤプト油、カラウェー油、クベブ油、グレープフルーツ油、ケイヒ油、コリアンダー油、サフラン油、サンショウ油、シソ油、シトリオドラ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、ショウズク油、樟脳油、ジンジャーグラス油、スペアミント油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、ダイウイキョウ油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、バジル油、ハッカ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレン油、ベイ油、ペニローヤル油、ヘノポジ油、ベルガモット油、ボアドローズ油、ホウショウ油、マジョラン油、マンダリン油、メリッサ油、ユーカリ油、ライム油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油を挙げることができる。
【0017】
これらの精油の中でも、例えば、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、ケイヒ油、シソ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、樟脳油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、ハッカ油、パルマローザ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油が好ましく、樟脳油、セイヨウハッカ油、テレビン油、ハッカ油、ユーカリ油がより好ましく、ハッカ油が特に好ましい。
【0018】
本発明においては、上記精油を単独で用いても、または任意の2種以上を併用することもできる。
【0019】
本発明外用剤におけるテルペン類の含有量は、用いるテルペン類ないし精油などによって異なるが、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、テルペン類を0.01~15質量%の範囲内が適当であり、好ましくは0.1~10質量%の範囲内であり、より好ましくは0.5~7質量%の範囲内である。また、上記精油を用いる場合、本発明外用剤の全質量に対し、精油として、例えば、0.1~40質量%の範囲内が適当であり、好ましくは0.5~30質量%の範囲内であり、より好ましく1~20質量%の範囲内である。テルペン類の含有量が0.01質量%より少ないと、清涼感などの所望の効果が得られないおそれがあり、15質量%より多いと、副作用が大きくなったり、保存安定性が担保できないおそれがある。
【0020】
本発明において「トコフェロール類」とは、トコフェロール、トコトリエノールおよびそれらの誘導体(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステル、ニコチン酸エステル等のエステル化誘導体など)ならびにそれらの塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩など)をいう。具体的には、トコフェロールとして、例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールを挙げることができる。この中、α-トコフェロールが好ましい。トコトリエノールとしては、例えば、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールを挙げることができる。この中、α-トコトリエノールが好ましい。本発明においては、α-トコフェロール、その酢酸エステル、そのコハク酸エステルおよびそのニコチン酸エステルならびにそれらの塩が適当である。
【0021】
トコフェロールやトコトリエノールには光学異性を有するものがあるが、本発明においてはいずれの光学異性体も用いることができる。本発明においては、トコフェロール類の成分名として特定の光学異性体を指定しない限り、かかる成分表記は各種光学異性体単独及びそれらの任意の割合の混合物の全てを包含し、単一の光学異性体であってもよく各種光学異性体の任意の割合の混合物であってもよい(例えば、「α-トコフェロールの酢酸エステル」との記載は、dl-α-トコフェロールの酢酸エステル、d-α-トコフェロールの酢酸エステルのいずれをも包含する。)。
【0022】
好ましいトコフェロール類としては、例えば、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、およびそれらの塩を挙げることができる。dl-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、dl-α-トコフェロール酢酸エステル、dl-α-トコフェロールニコチン酸エステルがより好ましく、dl-α-トコフェロール酢酸エステルが特に好ましい。
【0023】
本発明においては、上記トコフェロール類を単独で用いても、または任意の2種以上を併用することもできる。
【0024】
本発明外用剤におけるトコフェロール類の含有量は、用いるトコフェロール類の種類などによって異なるが、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、0.01~8質量%の範囲内であり、好ましくは0.03~4質量%の範囲内であり、より好ましくは0.05~2質量%ないし0.1~1質量%の範囲内である。トコフェロール酢酸エステルを用いる場合も同様である。
【0025】
1.3 成分3について
本発明外用剤は、成分3に係る「炭素数10~13、または分子量185~250の範囲内のエステル」を含む。かかるエステルは、基剤として用いられる。具体的な当該エステルとしては、例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルを挙げることができる。この中、アジピン酸ジイソプロピルが好ましい。
【0026】
本発明においては、当該エステルを単独で用いても、または任意の2種以上を併用することもできる。
本発明外用剤における成分3の含有量は、用いる当該エステルの種類や他の成分の含有量などによって異なるが、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、1~10質量%の範囲内が適当であり、好ましくは1.5~8質量%の範囲内であり、より好ましくは2.5~6質量%の範囲内である。1質量%より少なくても、10質量%より多くても、基剤としての効果が得られないおそれがあり、また保存安定性が保てないおそれがある。
【0027】
1.4 成分4について
本発明外用剤は、成分4に係る「0.01~0.3質量%の範囲内の乳酸および1.5~20質量%の範囲内の乳酸塩を、1:10~1:150(乳酸:乳酸塩、質量比)の割合で含むpH調節剤」を含む。かかるpH調節剤は、本発明外用剤の液性を約pH6.5に保つために用いられる。
【0028】
成分4に係る「乳酸塩」は、乳酸イオンを生成する塩であれば特に制限されないが、具体的には、例えば、カリウム塩やナトリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩を挙げることができる。この中、乳酸のナトリウム塩が好ましい。
【0029】
本発明外用剤における乳酸の含有量は、本発明外用剤の全質量に対して、0.01~0.3質量%の範囲内であるが、好ましくは0.02~0.2質量%の範囲内であり、より好ましくは0.03~0.1ないし0.15質量%の範囲内である。本発明外用剤における乳酸塩の含有量は、本発明外用剤の全質量に対して、1.5~20質量%の範囲内の範囲内であるが、好ましくは2~15質量%の範囲内であり、より好ましくは2.5~8ないし10質量%の範囲内である。好ましい乳酸ナトリウムの場合も同様である。そして、乳酸と乳酸塩との質量比は、本発明外用剤において1:10~1:150の範囲内であるが、好ましくは1:20~1:100の範囲内であり、より好ましくは1:30~1:50の範囲内である。
【0030】
1.5 成分5について
本発明外用剤は、成分2に係る「トコフェロール類」を含む場合、「可溶化剤」を含む。かかる可溶化剤は、トコフェロール類を溶解するものである。
【0031】
当該「可溶化剤」としては、トコフェロール類を溶解できるものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル類、ラウリン酸デカグリセリルおよびラウロマクロゴール類を挙げることができる。この中、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類が好ましい。
【0032】
本発明外用剤における可溶化剤の含有量は、本発明外用剤の全質量に対して、0.01~10.0質量%の範囲内が適当であり、好ましくは1.0~10.0質量%の範囲内であり、より好ましくは2.0ないし3.0~8.0ないし10.0質量%の範囲内である。0.01%より少ないとトコフェロール類が溶解しないおそれがあり、10.0%より多いと皮膚刺激性が生じるおそれがある。
【0033】
1.6 その他の成分
本発明外用剤は、上記成分1~5以外に、剤型などに応じて、粘稠化剤、低級アルコール、水や各種添加剤を適宜含むことができる。
【0034】
粘稠化剤は、医薬製剤において粘稠化剤として用いられるものであれば特に制限されないが、具体的な粘稠化剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体;カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの高分子やケイ酸マグネシウムアルミニウムを挙げることができる。これら1種以上を適量含むことができる。当該適量としては、剤型や用いる粘稠化剤などによって異なるが、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、0.01~10質量%の範囲内の量を挙げることができる。
【0035】
低級アルコールは、例えば、炭素数1~4のアルコールであって、具体的には、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールを挙げることができる。これら1種以上を適量含むことができる。当該適量としては、剤型や用いる低級アルコールなどによって異なるが、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、10~70質量%の範囲内の量を挙げることができる。
【0036】
水は、水として用いられるものであれば特に制限されず、具体的には、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、滅菌水、RO水を挙げることができる。これらを剤型などに応じて適量用いることができる。当該適量としては、本発明外用剤の全質量に対して、例えば、10~70質量%の量を挙げることができる。
【0037】
各種添加剤としては、医薬上許容されるものであれば特に制限なく用いることができるが、例えば、安定(化)剤(例、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム)、可溶化剤(例、上記の他、トリアセチン、D-マンニトール、D-ソルビトール、安息香酸ベンジル、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム)、抗酸化剤(例、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール、塩酸システイン、クエン酸)、液化ガス噴射剤(例、塩化フッ化炭素類、塩化フッ化炭化水素類、液化石油ガス類、ジメチルエーテル類)、圧縮ガス噴射剤(例、窒素ガス、二酸化炭素ガス、亜酸化窒素ガス)、湿潤剤(例、1,3-ブチレングリコール、メチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤(例、タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カラメル、銅クロロフィンナトリウム、メチレンブルー、クチナシ色素、マリーゴールド色素、カロテン色素、アントシアニン色素、果汁色素、野菜色素、三二酸化鉄などの合成または天然由来の色素)、乳化剤(例、ショ糖脂肪酸エステル、水素添加大豆リン脂質)、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、刺激低減剤を挙げることができる。必要に応じて、これら1種以上を適量含むことができる。
【0038】
また、所望により、他の薬理成分を含むこともできる。そのような他の薬理成分としては、例えば、ジクロフェナクおよび/またはその医薬上許容される塩等の消炎鎮痛剤(成分1以外);グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等の抗炎症剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミンおよびその医薬上許容される塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;リドカインおよびその医薬上許容される塩、ジブカインおよびその医薬上許容される塩、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤;ニコチン酸のエステル誘導体(例、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、ニコチン酸メチルエステル等)、アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス等の生薬等が挙げられる。この中、好ましい他の薬理成分としては、例えば、トコフェロールのエステル誘導体を挙げることができ、より好ましくはトコフェロール酢酸エステルを挙げることができる。これら1種以上を、薬理活性を有する量含むことができる。
【0039】
1.7 剤型
本発明外用剤の剤型としては、経皮への局所適用が可能な形態であれば特に制限されないが、例えば、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、ポンプスプレー剤、乳液剤、リニメント剤を含む。)、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、フォーム剤、貼付剤(テープ剤、パップ剤を含む。)を挙げることができる。この中、液剤とゲル剤、クリーム剤が好ましい。
【0040】
2 本発明外用剤の使用方法と製造方法
本発明外用剤は、その剤型に応じて、消炎鎮痛が求められる皮膚に対して局所的に外用投与することにより使用することができる。本発明外用剤は、外用の消炎鎮痛剤として、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、腰痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘等)、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、神経痛、変形性関節症、関節炎等に対する治療目的で使用することができる。
【0041】
本発明外用剤は、その剤型に応じて、常法により製造することができる。本発明外用剤が液剤の場合、例えば、所望量の成分1と成分2とが溶解した溶液を調製し、これに、別途、所望量の成分3が溶解した溶液を加え混合し、混合後、所望量の成分4を追加して均一に混合することにより本発明外用剤(液剤)を製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例ないし試験例を示して本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0043】
[試験例]エステル基剤の検討
表1に示す6つのエステルについて評価した。
【0044】
【0045】
表2または表3に示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)および処方量のl-メントールをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予め表1の各エステルに分散させたヒプロメロース(メトローズ(登録商標)60SH-4000、信越化学工業社製;以下同じ。)0.2gおよび精製水を入れ、室温で溶解させた。溶解後、乳酸0.12gおよび乳酸ナトリウム4.0gを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、液剤を製造した。
なお、以下の表中における各成分分量の単位は「g」である。
【0046】
【0047】
【0048】
各液剤について、下記の評価基準に従い評価した。その結果を表2および表3に示す。表2および表3に示す通り、酢酸エチル、サリチル酸エチレングリコール、およびサリチル酸メチルでは、pHが低下し、サリチル酸メチルでは結晶も析出し、セバシン酸ジエチルおよびミリスチン酸イソプロピルでは、外観が白濁化した。一方、アジピン酸ジイソプロピルについては、皮膚外用剤として特段の問題は見られなかった。これらの結果を総合すると、炭素数10~13、または分子量185~250の範囲内のエステルが良好であることが分かった。
【0049】
<評価基準>
(1)外観:製剤を室温に戻した後、目視で観察
○:透明
△:半透明
×:白濁
(2)pH:製剤を室温に戻した後、pHメーター(F-2000PI、堀場アドバンスドテクノ社製)で直接測定
【0050】
(3)結晶析出:製剤を室温に戻した後、目視で結晶析出を観察
○:結晶析出なし
×:結晶析出あり
(4)ロキソプロフェン含量:製剤中のロキソプロフェン含量を下記のカラム・装置にてHPLC法で測定
カラム:Inertsil ODS-2(ジーエルサイエンス社製)
装置:Prominence-i LC-2030C Plus(島津製作所社製)
(5)l-メントール含量:製剤中のl-メントール含量を下記のカラム・装置にてGC法で測定
カラム:G-column G-250(一般財団法人化学物質評価研究機構製)
装置:GC-2014(島津製作所社製)
【0051】
[実施例1~7]本発明外用剤(液剤)の調製とその評価
表4または表5に示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)および処方量のl-メントールをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予め処方量のアジピン酸ジイソプロピルに分散させたヒプロメロース0.2gおよび精製水を入れ、室温で溶解させた。溶解後、乳酸および乳酸ナトリウムを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、本発明外用剤(液剤)を製造した。
【0052】
【0053】
【0054】
実施例1~7について、前記の評価基準に従い評価した。その結果を表4および表5に示す。表4および表5から明らかな通り、いずれの液剤も皮膚外用剤として特段の問題は見られなかった。
【0055】
[実施例8、比較例6]本発明外用剤(ゲル剤)および比較用外用剤(ゲル剤)の製造
表6に示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)およびl-メントール3gをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予めアジピン酸ジイソプロピル5.0gに分散させたヒプロメロース1gおよび疎水化ヒドロキシプロピルセルロース(サンジェロース(登録商標)60L、大同化成工業社製)1.0g、精製水30gを入れ、室温で混合した。混合後、処方量の乳酸および処方量の乳酸ナトリウムを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように混合し、本発明外用剤(ゲル剤)を製造した。
【0056】
【0057】
表6に示す通り、乳酸0.03~0.12gおよび乳酸ナトリウム2.0~8.0gの範囲内(乳酸:乳酸ナトリウム=1:33~1:100)であれば、外観は透明、pHは初期からほとんど変化がなく、結晶析出もなく、またロキソプロフェンおよびl-メントールの含量の低下もほとんど認められなかった。
乳酸が0.6g、乳酸ナトリウムが12.0g(乳酸:乳酸ナトリウム=1:20)の比較例6では、外観が白濁し、pHも低下し、ロキソプロフェンおよびl-メントールの含量は低かった。
【0058】
[実施例9]本発明外用剤(ロキソプロフェン・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)の製造
ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)をステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予めアジピン酸ジイソプロピル5g、トコフェロール酢酸エステル0.5gおよびポリソルベート60 5gに分散させたヒプロメロース0.2g、ならびに精製水30gを入れ、室温で溶解させた。溶解後、乳酸0.1gおよび乳酸ナトリウム4.0gを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、本発明外用剤(ロキソプロフェン・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)を製造した。
【0059】
[実施例10~14、比較例7]本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)および比較用外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)の製造
表7~9に示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)、l-メントール3gおよびトコフェロール酢酸エステル0.5gをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予めアジピン酸ジイソプロピル5gに分散させたヒプロメロース0.2g、ならびに精製水30gを入れ、室温で溶解させた。溶解後、処方量の可溶化剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ニッコールHCO-60(登録商標)、日光ケミカルズ社製)、ポリオキシエチレンプロピレンセチルエーテル(20EO)(4PO)(ニッコールPBC-34(登録商標)、日光ケミカルズ社製)、ラウリン酸デカグリセリル(ニッコールDecaglyn 1-L(登録商標)、日光ケミカルズ社製)、またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(ニッコールHCO-50(登録商標)、日光ケミカルズ社製))、乳酸0.1gおよび乳酸ナトリウム4.0gを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)または比較用外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)を製造した。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表7に示す通り、可溶化剤を配合した本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)は、液が透明であったが、可溶化剤を配合していない比較用外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)は、白濁した。
また、表8に示す通り、可溶化剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を4~6質量%の範囲内で配合した本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)は、外観、pH、結晶析出、ロキソプロフェン、l-メントールおよび酢酸トコフェロールの含量に問題は認められなかった。
表9に示す通り、可溶化剤としてラウリン酸デカグリセリルを10質量%で配合した本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)や可溶化剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50を4.0質量%で配合した本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)についても、外観、pH、結晶析出、ロキソプロフェン、l-メントールおよび酢酸トコフェロールの含量に問題は認められなかった。
【0064】
[実施例15]本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)の製造
表10に示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)、l-メントール3.0gおよびトコフェロール酢酸エステル0.5gをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予めアジピン酸ジイソプロピル5gに分散させたヒプロメロース0.2g、ならびに精製水30gを入れ、室温で溶解させた。溶解後、可溶化剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ニッコールHCO-60(登録商標)、日光ケミカルズ社製)5g、処方量の乳酸および処方量の乳酸ナトリウムを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、本発明外用剤(ロキソプロフェン・l-メントール・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)を製造した。
【0065】
【0066】
表10に示す通り、、乳酸0.03~0.12gおよび乳酸ナトリウム2.5~10.0gの範囲(乳酸:乳酸ナトリウム=1:33~1:100)内で、外観は透明、pHは初期からほとんど変化がなく、結晶析出もなく、ロキソプロフェン、l-メントールおよび酢酸トコフェロールいずれの含量低下もほとんど認められなかった。
【0067】
[実施例16]本発明外用剤(ロキソプロフェン・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)の製造
表11示す処方に従い、ロキソプロフェンナトリウム水和物1.13g(無水物として1g)およびトコフェロール酢酸エステル0.5gをステンレス容器に秤量し、エタノール45.0gを添加して室温で溶解させた。ここに、予めアジピン酸ジイソプロピル5gに分散させたヒプロメロース0.2g、ならびに精製水30gを入れ、室温で溶解させた。溶解後、可溶化剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(ニッコールHCO-60(登録商標)、日光ケミカルズ社製)5g、処方量の乳酸および処方量の乳酸ナトリウムを入れ、更に精製水を全量100gとなるように添加し、室温で均一となるように撹拌し、本発明外用剤(ロキソプロフェン・トコフェロール酢酸エステル配合液剤)を製造した。
【0068】
【0069】
表11に示す通り、乳酸0.03~0.12gおよび乳酸ナトリウム2.5~10.0gの範囲(乳酸:乳酸ナトリウム=1:33~1:100)内で、外観は透明、pHは初期からほとんど変化がなく、結晶析出もなく、ロキソプロフェン、および酢酸トコフェロール含量の低下もほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明外用剤は、ヒトなどに対する消炎鎮痛用の皮膚外用剤として有用である。従って、本発明外用剤は、例えば、医薬品産業において利用することができる。
【要約】
【課題】少なくともロキソプロフェンとテルペン類および/またはトコフェロール類とを有効成分として含み、製剤的な保存安定性を有しうる新たな皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】本発明として、次の成分1~5を含むことを特徴とする皮膚外用剤を挙げることができる。
1)ロキソプロフェンまたはその医薬上許容される塩(例えば、ナトリウム塩)、
2)テルペン類および/またはトコフェロール類(例えば、l-メントールや酢酸トコフェロール)、
3)炭素数10~13、または分子量185~250の範囲内のエステル(例えば、アジピン酸ジイソプロピル)、
4)0.01~0.3質量%の範囲内の乳酸および1.5~20質量%の範囲内の乳酸塩を、1:10~1:150(乳酸:乳酸塩、質量比)の割合で含むpH調節剤、
5)トコフェロール類を含む場合は、可溶化剤。
【選択図】なし