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特許7558553回転駆動機構及びそれを用いたプラネタリウム投影機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】回転駆動機構及びそれを用いたプラネタリウム投影機
(51)【国際特許分類】
   G09B 27/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
G09B27/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020127641
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024828
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】508067839
【氏名又は名称】有限会社大平技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 貴之
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-065449(JP,U)
【文献】実開昭55-144242(JP,U)
【文献】特開昭63-180753(JP,A)
【文献】特開2007-333870(JP,A)
【文献】実公昭43-028910(JP,Y1)
【文献】サーボモータとは,ASPINA,2020年07月13日,[2024年5月1日検索]、インターネット:<URL:https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/004/>,「トルク/回転数」の欄
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 27/00
H02P 5/68、5/695、5/74
F16H 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合って当該太陽歯車を中心として自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合って当該遊星歯車の外側に設けられる内歯車と、前記遊星歯車の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの何れかに、その回転軸が接続されている第1のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータが接続されていない何れかに、その回転軸が接続されている第2のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータ及び前記第2のモータが接続されていないものに接続され、前記第1のモータの回転と前記第2のモータの回転とを所定の減速比で合成した回転数が可変である連続的な回転を取り出すように構成された出力軸と
を備える回転駆動機構と、
星の像を投影する投影機と、
前記投影機を回転可能に支持する支持部材と
を備え、
前記回転駆動機構は、前記支持部材を回転させるように構成されている、
プラネタリウム投影機
【請求項2】
前記第1のモータは、ステッピングモータである、請求項1に記載のプラネタリウム投影機
【請求項3】
前記第2のモータは、サーボモータである、請求項1又は2に記載のプラネタリウム投影機
【請求項4】
前記第2のモータは、前記第1のモータよりも高速で回転するように構成されている、請求項1~3の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項5】
前記第1のモータは、前記太陽歯車に接続されており、
前記第2のモータは、前記内歯車に接続されており、
前記出力軸は、前記遊星キャリアに接続されている、
請求項1~4の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項6】
前記第1のモータは、前記太陽歯車に接続されており、
前記第2のモータは、前記遊星キャリアに接続されており、
前記出力軸は、前記内歯車に接続されている、
請求項1~4の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項7】
前記出力軸の回転数を所定の臨界回転数未満にするときには、前記第1のモータのみを回転させて前記第2のモータを停止させ、前記出力軸の回転数を前記臨界回転数以上にするときには、前記第2のモータを回転させるように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作を制御するモータ制御部をさらに備える、請求項1~6の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項8】
前記モータ制御部は、前記臨界回転数を変更できるように構成されている、請求項7に記載のプラネタリウム投影機
【請求項9】
前記モータ制御部は、前記出力軸の回転数を前記臨界回転数以上にするときには、回転数の増加分に対する前記第1のモータの回転数の増加分を回転数が高いほど減らし、所定の回転数以上では、前記第1のモータの回転数を一定とするように制御する、請求項7又は8に記載のプラネタリウム投影機
【請求項10】
前記モータ制御部は、前記第2のモータのみを回転させて前記第1のモータを停止させる動作モードをさらに有する、請求項7~9の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項11】
前記第1のモータと前記第2のモータとのうち少なくとも一つの回転位置角度を検出するように構成された角度検出装置をさらに備える、請求項1~10の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項12】
前記第2のモータに係る回転入力機構に設けられ、前記第2のモータの停止時に作動して当該第2のモータに係る回転入力機構の回転を固定するように構成されたブレーキ機構をさらに備える、請求項1~11の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項13】
前記第1のモータに係る回転入力機構に設けられ、前記第1のモータの停止時に作動して当該第1のモータに係る回転入力機構の回転を固定するように構成されたブレーキ機構をさらに備える、請求項1~12の何れかに記載のプラネタリウム投影機
【請求項14】
太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合って当該太陽歯車を中心として自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合って当該遊星歯車の外側に設けられる内歯車と、前記遊星歯車の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの何れかに、その回転軸が接続されている第1のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータが接続されていない何れかに、その回転軸が接続されている第2のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータ及び前記第2のモータが接続されていないものに接続され、前記第1のモータの回転と前記第2のモータの回転とを所定の減速比で合成した回転数が可変である連続的な回転を取り出すように構成された出力軸と
前記出力軸の回転数を所定の臨界回転数未満にするときには、前記第1のモータのみを回転させて前記第2のモータを停止させ、前記出力軸の回転数を前記臨界回転数以上にするときには、前記第2のモータを回転させるように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作を制御するモータ制御部と
を備え
前記モータ制御部は、前記臨界回転数を変更できるように構成されている、
回転駆動機構。
【請求項15】
太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合って当該太陽歯車を中心として自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合って当該遊星歯車の外側に設けられる内歯車と、前記遊星歯車の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの何れかに、その回転軸が接続されている第1のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータが接続されていない何れかに、その回転軸が接続されている第2のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータ及び前記第2のモータが接続されていないものに接続され、前記第1のモータの回転と前記第2のモータの回転とを所定の減速比で合成した回転数が可変である連続的な回転を取り出すように構成された出力軸と
前記出力軸の回転数を所定の臨界回転数未満にするときには、前記第1のモータのみを回転させて前記第2のモータを停止させ、前記出力軸の回転数を前記臨界回転数以上にするときには、前記第2のモータを回転させるように、前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作を制御するモータ制御部と
を備え
前記モータ制御部は、前記出力軸の回転数を前記臨界回転数以上にするときには、回転数の増加分に対する前記第1のモータの回転数の増加分を回転数が高いほど減らし、所定の回転数以上では、前記第1のモータの回転数を一定とするように制御する、
回転駆動機構。
【請求項16】
太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合って当該太陽歯車を中心として自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合って当該遊星歯車の外側に設けられる内歯車と、前記遊星歯車の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリアとを含む遊星歯車機構と、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの何れかに、その回転軸が接続されている第1のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータが接続されていない何れかに、その回転軸が接続されている第2のモータと、
前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータ及び前記第2のモータが接続されていないものに接続され、前記第1のモータの回転と前記第2のモータの回転とを所定の減速比で合成した回転数が可変である連続的な回転を取り出すように構成された出力軸と
前記第1のモータと前記第2のモータとのうち少なくとも一つの回転位置角度を検出するように構成された角度検出装置と
を備える回転駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動機構及びそれを用いたプラネタリウム投影機に関する。
【背景技術】
【0002】
滑らかな回転や低速回転から高速回転まで実現できる回転速度制御が要求される例は、産業機器をはじめとして様々ある。特にプラネタリウム投影機では、投影機の回転運動がスクリーンに拡大して投影されるため、その回転は滑らかであることが要求される。このため、プラネタリウム投影機には、回転角の制御性に優れたステッピングモータが使用され、かつマイクロステップ駆動が用いられることがある。これにより、低速時の振動や騒音を抑えた滑らかな回転が実現されている。例えば特許文献1には、ステッピングモータを用いたプラネタリウムについて開示されている。
【0003】
プラネタリウム投影機では、通常は星の動きなどを再現するために高速回転は要求されないものの、シーンの切替り、宇宙船から見た星空を再現するなどの演出において、高速回転する制御を要求されることがある。しかしながら、上述のようなステッピングモータを用いたプラネタリウム投影機などは、高速回転が不得手であって十分な速度を得られなかったり、マイクロステップ駆動の効果が十分得られずに騒音が大きくなってしまったりして、様々な演出に十分に対応できないことがある。例えばこの場合のように、低速から高速まで滑らかに回転できる回転駆動機構があると便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-333870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低速から高速まで滑らかな回転を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、回転駆動機構は、太陽歯車と、前記太陽歯車と噛み合って当該太陽歯車を中心として自転しながら公転する遊星歯車と、前記遊星歯車と噛み合って当該遊星歯車の外側に設けられる内歯車と、前記遊星歯車の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリアとを含む遊星歯車機構と、前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの何れかに、その回転軸が接続されている第1のモータと、前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータが接続されていない何れかに、その回転軸が接続されている第2のモータと、前記太陽歯車、前記内歯車、及び前記遊星キャリアのうちの前記第1のモータ及び前記第2のモータが接続されていないものに接続され、前記第1のモータの回転と前記第2のモータの回転とを所定の減速比で合成した回転数が可変である連続的な回転を取り出すように構成された出力軸とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低速から高速まで滑らかな回転を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るプラネタリウムシステムの構成例の概略を示す模式図である。
図2図2は、一実施形態に係るプラネタリウム投影機の構成例の概略を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る回転駆動機構の外観の概要を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る回転駆動機構の構成例の概略を示す模式図である。
図5図5は、一実施形態に係る制御における出力軸の回転数と各モータの回転数との関係の一例を示す図である。
図6図6は、一実施形態に係る回転駆動機構の制御例の概略を示すフローチャートである。
図7図7は、等加速度で変化する出力軸の角位置を示す指令値が入力された場合の、経過時間に対するステッピングモータ及びACサーボモータの目標角位置を示す図である。
図8図8は、一変形例に係る制御における出力軸の回転数と各モータの回転数との関係の一例を示す図である。
図9図9は、等加速度で変化する出力軸の角位置を示す指令値が入力された場合の、経過時間に対するステッピングモータ及びACサーボモータの目標角位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、2種類のモータを使った回転駆動機構に関する。本実施形態の回転駆動機構は、低速から高速まで滑らかな回転駆動を実現できる。特に本実施形態は、この回転駆動機構を用いたプラネタリウム投影機とそれを備えるプラネタリウムシステムに関する。
【0010】
[プラネタリウムシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るプラネタリウムシステム1の構成例の概略を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態のプラネタリウムシステム1は、内面がスクリーン2になっている半球状のドーム3を備える。ドーム3の中央部には、プラネタリウム投影機10が配置されている。プラネタリウム投影機10は、ドーム3の内面のスクリーン2に、星の像を投影する。この投影のためのプラネタリウム投影機10の動作は、制御装置4によって制御される。制御装置4は、コンピュータを備える。制御装置4は、Central Processing Unit(CPU)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等の集積回路を備える。また、制御装置4は、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)、ストレージ、入力装置、表示装置、各種インターフェースなどを備える。制御装置4は、プログラム又はハードウェアに従って動作する。
【0011】
[プラネタリウム投影機の構成]
図2は、本実施形態に係るプラネタリウム投影機10の構成例の概略を示す図である。プラネタリウム投影機10は、それぞれ半球状であり互いに正対して取り付けられた、北天用投影機11aと南天用投影機11bとを含む投影機としての恒星球11を備える。北天用投影機11aは、第1の円板12a上に設けられており、南天用投影機11bは、第2の円板12b上に設けられている。互いに平行な第1の円板12aの中心と第2の円板12bの中心とを通り、第1の円板12a及び第2の円板12bに対して垂直に、日周軸部材13が設けられている。日周軸部材13は、日周軸受14に支持されている。日周軸受14は、日周軸部材13に対して垂直に伸びる日周ベース15に固定されている。日周ベース15には、日周軸モータ20が配置されている。日周軸モータ20の出力回転軸には、日周モータ歯車22が固定されている。日周軸部材13には、日周軸歯車23が固定されている。日周モータ歯車22と日周軸歯車23とは噛み合っている。日周軸モータ20の回転が日周軸部材13に伝達されることで、日周軸モータ20の回転に応じて、日周軸部材13がその軸周りに回転し、恒星球11が日周軸部材13と一致する日周軸周りに回転する。日周軸部材13と日周ベース15との部分には、ロータリーエンコーダ26が設けられており、日周軸部材13の回転角度が検出される。
【0012】
日周ベース15には、日周軸部材13と直交する緯度軸部材33が設けられている。緯度軸部材33は、緯度軸受34に支持されている。緯度軸受34は、U字型をした架台フォーク35の両端部分に固定されている。架台フォーク35には、緯度軸モータ40が配置されている。緯度軸モータ40の出力回転軸には、緯度モータ歯車42が固定されている。緯度軸部材33には、緯度軸歯車43が固定されている。緯度モータ歯車42と緯度軸歯車43とは噛み合っている。緯度軸モータ40の回転が緯度軸部材33に伝達されることで、緯度軸モータ40の回転に応じて、緯度軸部材33がその軸周りに回転し、日周軸が緯度軸部材33と一致する緯度軸周りに回転する。緯度軸部材33と架台フォーク35との部分には、ロータリーエンコーダ46が設けられており、緯度軸部材33の回転角度が検出される。
【0013】
U字型をした架台フォーク35の中央部分下部には、緯度軸部材33と直交する方位軸部材53が設けられている。方位軸部材53は、方位軸受54に支持されている。方位軸受54は、台座55に固定されている。方位軸部材53は、鉛直に設けられている。したがって、緯度軸部材33は水平に設けられている。台座55には、方位軸モータ60が配置されている。方位軸モータ60の出力回転軸には、方位モータ歯車62が固定されている。方位軸部材53には、方位軸歯車63が固定されている。方位モータ歯車62と方位軸歯車63とは噛み合っている。方位軸モータ60の回転が方位軸部材53に伝達されることで、方位軸モータ60の回転に応じて、方位軸部材53がその軸周りに回転し、架台フォーク35が方位軸部材53と一致する方位軸周りに回転する。方位軸部材53と台座55との部分には、ロータリーエンコーダ66が設けられており、方位軸部材53の回転角度が検出される。
【0014】
日周軸が天の北極及び天の南極を指すように、恒星球11から投影される星は、地球の自転軸を基準とする赤道座標に基づいた座標で配置されている。したがって、恒星球11を日周軸周りに回転させることで、星々が投影されるドーム3のスクリーン2にはその星々の日周運動が再現される。また恒星球11を緯度軸周りに回転させることで、プラネタリウム投影機10は、地球上の任意の緯度の観測地の星空を再現できる。また、プラネタリウム投影機10は、方位軸周りにその全体を水平方向に回転させることで、正面の方位を自在に変更することができる。
【0015】
上述の日周軸モータ20、緯度軸モータ40及び方位軸モータ60に、本実施形態に係る2種類のモータを使った回転駆動機構が用いられる。上述のプラネタリウム投影機10の構造は一例であり、他の構造も取り得る。ただし、一般にプラネタリウム投影機は回転する部分を有しており、回転する部分を回転可能に支持する軸などの支持部材を有する。この支持部材が本実施形態に係る回転駆動機構で回転させられる。
【0016】
[回転駆動機構の構成]
本実施形態に係る回転駆動機構100について説明する。図3は、回転駆動機構100の外観の概要を模式的に示す斜視図である。図4は、回転駆動機構100の構成例の模式図である。図3及び図4に示すように、回転駆動機構100は、ステッピングモータ112と、ACサーボモータ116と、遊星歯車機構120とを備える。ステッピングモータ112は、比較的低速で回転する低速側モータとして機能し、ACサーボモータ116は、比較的高速で回転する高速側モータとして機能する。
【0017】
遊星歯車機構120は、一般に知られているように、太陽歯車122と、太陽歯車122と噛み合って太陽歯車122を中心として自転しながら公転する複数の遊星歯車124と、遊星歯車124と噛み合って遊星歯車124の外側に設けられる内歯車126と、遊星歯車124の公転運動を取り出す回転要素である遊星キャリア128とを含む構造を有している。
【0018】
本実施形態の回転駆動機構100では、ステッピングモータ112の出力軸である回転軸は、遊星歯車機構120の太陽歯車122に接続されている。また、ステッピングモータ112の回転位置角度は、ロータリーエンコーダ113といった角度検出装置で検出される。また、ステッピングモータ112の回転軸には、ブレーキ114が設けられていてもよい。ブレーキ114には、例えば電磁ブレーキが用いられてもよい。ステッピングモータ112の停止時には、ステッピングモータ112の回転軸は、ブレーキ114によって固定される。これは、遊星歯車機構120の太陽歯車122がブレーキ114によって固定されていることと等しい。したがって、ブレーキ114のようなブレーキ機構は、ステッピングモータ112の回転軸に限らず、ステッピングモータ112から遊星歯車機構120の太陽歯車122に至る回転入力機構のどこに設けられてもよい。ブレーキ機構は、ステッピングモータ112の停止時に作動してステッピングモータ112に係る回転入力機構の回転を固定する。
【0019】
ACサーボモータ116の出力軸である回転軸は、遊星歯車機構120の内歯車126に接続されている。図3に示す例では、遊星歯車機構120の内歯車126にはプーリ143が設けられており、このプーリ143と等しい外径を有するプーリ141がACサーボモータ116の出力軸に設けられている。ACサーボモータ116のプーリ141と遊星歯車機構120の内歯車126のプーリ143との間にはベルト142が掛けられている。このように、ACサーボモータ116の回転は、遊星歯車機構120の内歯車126に伝達される。なお、ACサーボモータ116の出力軸と遊星歯車機構120の内歯車126との間の動力伝達は、プーリとベルトによらず歯車による等、他の機構によってもよい。
【0020】
また、ACサーボモータ116の回転軸には、ブレーキ118が設けられている。ACサーボモータ116の停止時には、ACサーボモータ116の回転軸は、必要に応じてブレーキ118によって固定可能となっている。これは、遊星歯車機構120の内歯車126がブレーキ118によって固定されていることと等しい。したがって、ブレーキ118のようなブレーキ機構は、ACサーボモータ116の回転軸に限らず、ACサーボモータ116から遊星歯車機構120の内歯車126に至る回転入力機構のどこに設けられてもよい。また、ACサーボモータ116に、電磁ブレーキ内蔵のモータが用いられてもよい。ブレーキ機構は、ACサーボモータ116の停止時に作動してACサーボモータ116に係る回転入力機構の回転を固定する。
【0021】
遊星歯車機構120の遊星キャリア128には、出力軸132が設けられており、遊星キャリア128の回転が、回転駆動機構100の出力として出力軸132を介して取り出される。この出力軸132が、図2を参照して説明したプラネタリウム投影機10においては、日周モータ歯車22、緯度モータ歯車42、方位モータ歯車62に接続されており、それぞれ、日周軸、緯度軸、方位軸を回転させる。
【0022】
勿論これに限らないが一例として、本実施形態では、各歯車の歯数は以下のようになっている。すなわち、太陽歯車122の歯数は20であり、遊星歯車124の歯数は30であり、遊星歯車124は太陽歯車122の周囲に4つ設けられており、内歯車126の歯数は80である。したがって、ACサーボモータ116を停止させて内歯車126が回転していない状態でステッピングモータ112を回転させた場合、遊星キャリア128の回転数、すなわち、出力軸132の回転数は、ステッピングモータ112の回転数の1/5になる。また、ステッピングモータ112を停止させて太陽歯車122が回転していない状態でACサーボモータ116を回転させた場合、遊星キャリア128の回転数、すなわち、出力軸132の回転数は、ACサーボモータ116の回転数の4/5になる。また、ステッピングモータ112とACサーボモータ116との両者を回転させた場合には、出力軸132の回転数は、上述の回転数の加算となり、各々のモータの回転数に上述の各々の比率を乗じた値が加算された回転数となる。すなわち、ステッピングモータ112の回転数をSTP、ACサーボモータ116の回転数をACとしたときに、出力軸132の回転数OUTは、
OUT= STP×0.2 + AC×0.8
となる。
【0023】
ステッピングモータ112及びACサーボモータ116の動作は、制御装置4内のモータ制御部152によって制御される。また、ステッピングモータ112のブレーキ114及びACサーボモータ116のブレーキ118の動作は、制御装置4内のモータ制御部152によって制御される。また、ロータリーエンコーダ113の出力は、モータ制御部152によって取得される。
【0024】
[回転駆動機構の動作]
回転駆動機構100の動作について説明する。一例として、モータ制御部152は、入力される指令速度、すなわち、要求されている出力軸132の回転数に応じて、図5に示すように、ステッピングモータ112及びACサーボモータ116の回転数を制御するものとする。
【0025】
この例では、出力軸132の回転数の指令速度が100rpm未満の場合、モータ制御部152は、ACサーボモータ116を停止させ、ブレーキ118にACサーボモータ116の回転軸を固定させる。この状態で、モータ制御部152は、要求されている出力軸132の回転数の5倍の回転数でステッピングモータ112を回転させる。ブレーキ118は、ステッピングモータ112から伝達される逆トルクがACサーボモータ116の主軸にかかって停止しているべき部材が回転して、回転駆動機構100の回転精度が乱されることを防止する。
【0026】
出力軸132の回転数の指令速度が100rpm以上の場合、モータ制御部152は、ステッピングモータ112を500rpmで回転させ、ブレーキ118を解除させ、ACサーボモータ116を、
AC=(OUT-100)×5/4
で算出される回転数で回転させる。ステッピングモータ112の回転が減速比1/5で減速され、ACサーボモータ116の回転が減速比4/5で減速され、これらが合成された指令速度に対応した回転数の回転が、出力軸132から取り出される。
【0027】
ACサーボモータ116が回転して出力軸132が高速回転している状態から、出力軸132が減速してACサーボモータ116が停止するときには、次のように動作する。すなわち、モータ制御部152は、ACサーボモータ116への例えば指令パルスといった回転指令を停止とした後に、ACサーボモータ116のロータリーエンコーダといった回転位置角度センサの出力に基づいて、ACサーボモータ116の回転軸が停止又は極めて低速回転になったときを判定する。そして、モータ制御部152は、回転軸が停止又は極めて低速回転になったときに、ブレーキ118を作動させる。このように回転軸が停止又は極めて低速回転のときにブレーキ118を作動させることで、制動にかかる騒音が抑制され、ブレーキ118の摩耗が防止される。
【0028】
このように、本実施形態に係る回転駆動機構100では、低速回転では、低速の位置制御特性に優れたステッピングモータ112が用いられ、高速回転では、高速性能に優れたACサーボモータ116が主に用いられる。ここで、ステッピングモータ112の回転とACサーボモータ116の回転とは所定の減速比で合成されるので、出力軸132からは回転数が可変である連続的な回転が取り出され得る。
【0029】
出力軸132の回転数が100rpm未満の低速回転時には、出力軸132はステッピングモータ112によって動作する。ステッピングモータ112は、回転中に指令パルスに正確に追従した角位置を取るため、出力軸132の角位置は正確に制御される。また、このとき、ACサーボモータ116は停止しているので、低速駆動時に生じやすいACサーボモータ116の回転のジッターは発生しない。出力軸132の回転数が100rpmをわずかに超える領域では、ACサーボモータ116の回転のジッターが発生する可能性があるが、この状況においては、ステッピングモータ112によりある程度の回転速度が出力軸132に与えられているため、ACサーボモータ116に由来するジッターは目立たない。
【0030】
また、ステッピングモータ112の最高回転数が低く抑えられているので、ステッピングモータ112のマイクロステップ駆動による制振効果が最大限に発揮される。
【0031】
ステッピングモータ112に接続された太陽歯車122と出力軸132に接続された遊星キャリア128との減速比が、ACサーボモータ116に接続された内歯車126と出力軸132に接続された遊星キャリア128との減速比よりも大きいので、仮にACサーボモータ116が急加速して高トルクが発生しても、ステッピングモータ112にかかる逆トルクは減速比に応じて低く抑えられる。また、ステッピングモータ112の使用領域は、トルクが十分に高い低速領域にとどめられる。また、ACサーボモータ116が高トルクを出力しているときは、ステッピングモータ112の励磁電流は上げられて、脱調が防がれる。これらによって、ステッピングモータ112が脱調するなどの問題は生じにくい。
【0032】
また、ステッピングモータ112の最高回転数が低く抑えられている。特に、ステッピングモータ112の最高回転数は自起動周波数領域に収まるように抑えられている。このようにすることで、万が一、ステッピングモータ112が脱調したとしても、回転は直ちに再開され得る。また、このようにして復帰する場合にも、ステッピングモータ112の回転位置角度は、ロータリーエンコーダ113を用いて取得されており、位置精度は維持される。
【0033】
ステッピングモータ112のみを用いる場合と、ステッピングモータ112とACサーボモータ116との両方を用いる場合との切替えを行う出力軸132の回転数を、ここでは臨界回転数と呼ぶことにする。上述の例では、臨界回転数を一例として100rpmとして説明したが、臨界回転数はもちろんどのような値に設定されてもよい。また、臨界回転数は装置により固定された値でなくてよく、条件により変更可能なように回転駆動機構100は構成されていてもよい。ステッピングモータ112を用いた方が位置制御に優れるため、例えば騒音などをある程度許容しながら位置制御を優先させて高速でもステッピングモータ112を用いることが好ましい場合もある。また、高速移動中のフィードバックに伴う遅れなどのため位置精度に劣ることがあっても、ある位置からある位置までできるだけ速く移動させたい場合、低速からACサーボモータ116を用いて高い加速を得ることが好ましい場合もある。
【0034】
なお、ここでは、出力軸132の回転数が高いときには、ステッピングモータ112とACサーボモータ116との両方が回転する例を示したが、これに限らない。回転数が高いときには、ACサーボモータ116のみが回転し、ステッピングモータ112が停止するように回転駆動機構100は制御されてもよい。
【0035】
回転駆動機構100の動作として、低速回転ではステッピングモータ112が用いられ、高速回転ではACサーボモータ116が主に用いられる動作モードについて説明したが、回転駆動機構100は、ステッピングモータ112をブレーキ114で固定して、ACサーボモータ116のみが用いられる、高加速・高速動作モードを備えていてもよい。例えば、ACサーボモータ116は、高加速のときはジッターが発生することは殆どなく、ある位置からある位置へ高速で移動させたい場合などには、ACサーボモータ116のみが用いられる高加速・高速動作モードが用いられてもよい。このとき、ステッピングモータ112のブレーキ114は、ACサーボモータ116の急な加減速による大きな逆トルクがACサーボモータ116からステッピングモータ112に伝達され、脱調させることを防ぐ。
【0036】
[回転駆動機構のプラネタリウム投影機への適用]
一般に、プラネタリウム投影機では、超低速での滑らかな動きが要求される。このため、プラネタリウム投影機では、回転角の制御性に優れたステッピングモータが使用され、かつマイクロステップ駆動が併用される。これにより、低速時の振動や騒音が抑えられ、滑らかな回転が実現される。一方で、ステッピングモータは、高速回転が不得手であり、十分な速度を得られなかったり、高速回転しようとしてモータコイルの時定数や逆起電力の影響によりマイクロステップ駆動の効果が十分に得られずに騒音が大きくなってしまったりする問題を有する。
【0037】
通常の星の動きを再現するにあたっては、高い回転速度は要求されないのでステッピングモータの使用で問題は生じない。しかしながら、プラネタリウム投影機では、特定の軸について極めて高い回転速度が要求されることもある。例えば、冬の星空から夏の星空に切替るといったシーンの切替りや、世界中の様々な土地を旅する演出などで土地間を移動した場合の星空の切替りなどの場合である。たとえ投影を止めて星を消したままプラネタリウム投影機を回転させる場合であっても、長い所要時間は演出上の妨げになる。また、宇宙船に乗って宇宙から見た星空を再現する演出では、宇宙船の姿勢の変化を表す回転は、地上から見上げる星空を再現する場合より速く、また複雑な動きとなる。このような場合に、プラネタリウム投影機の日周軸、緯度軸、方位軸の3軸の回転制御では、所望の姿勢の変化を表現するために、特定の軸に要求される回転速度が極めて高くなることがある。したがって、低速のステッピングモータによる動作では、実現できる演出効果が制約されることになる。
【0038】
高速回転が可能となるように、駆動機構に、ステッピングモータに代えて例えばACサーボモータを使用した場合、上述のような演出上の高速回転の問題は解決される。一方で、通常の星の動きを再現するための低速回転時では、回転が滑らかでなくなり、特有のジッターが生じ、スクリーンに投影される天体の動きが滑らかでなくなり見苦しくなるという問題が生じてしまう。
【0039】
これに対して本実施形態に係る回転駆動機構100によれば、通常の星の動きを再現するにあたっては、ステッピングモータ112により、その特性を活かして超低速での滑らかな動きが実現される一方、演出上必要な場合には、ACサーボモータ116により、その特性を活かして高速回転が実現される。さらに、遊星歯車機構120を用いることで、ステッピングモータ112とACサーボモータ116とのそれぞれの長所を互いに妨げることなく発揮させることができる。また、遊星歯車機構120を用いることで、ステッピングモータ112の回転とACサーボモータ116の回転とが加算され、出力回転数を滑らかに変化させることができる。
【0040】
本実施形態に係る回転駆動機構100の制御例について説明する。ここでは、プラネタリウム投影機10を用いた投影が行われる場合を考える。このとき、投影内容に応じて、日周軸モータ20、緯度軸モータ40、方位軸モータ60としての各々の回転駆動機構100の動作が要求される。各々の回転駆動機構100は、要求に応じて停止したり回転したりする。また、要求に応じて、回転駆動機構100が2つの動作モードで切替えて用いられる。2つの動作モードとは、低速ではステッピングモータ112を用い、高速ではACサーボモータ116を併用する標準動作モードと、ACサーボモータ116のみを用いる高加速・高速動作モードとである。また、ここに示す例では、標準動作モードにおいて、演出等に応じて、ステッピングモータ112のみを用いる場合とACサーボモータ116を併用する場合とを切替える出力軸132の回転数である臨界回転数が変更可能である。
【0041】
ある一つの回転駆動機構100に関する制御例を図6に示すフローチャートを参照して説明する。この例では、回転駆動機構100には、所定時間間隔で定期的に出力軸132の目標の角位置が指令値として入力される。回転駆動機構100は、この所定時間の処理サイクルで、入力された目標の角位置に出力軸132の角位置を追従させるような制御を繰り返す。ここで、所定時間とは、例えば20ミリ秒といった値であり、その場合、指令値が毎秒50回更新されるとことになる。指令値が入力されてから次の指令値が入力されるまでに出力軸132の角位置を目標位置まで移動させる必要があるので、上述の時間間隔に応じた出力軸132の回転速度が決まることになる。上述のとおり、臨界回転数に応じて、ステッピングモータ112のみを用いて出力軸132の角位置を目標位置まで移動させることと、ACサーボモータ116を併用することとが切替えられるので、ここでは、この切替えに対応する出力軸132の角位置の移動量を臨界移動量と称することにする。
【0042】
ステップS1において、モータ制御部152は、要求される動作特性に応じて決定される動作モードと臨界回転数とに関する情報を取得して、動作モードを設定し、また、臨界移動量を設定する。
ステップS2において、モータ制御部152は、出力軸132の角位置に関する指令値を取得する。
ステップS3において、モータ制御部152は、現在の出力軸132の角位置と指令値に係る目標角位置とに基づいて、出力軸132の移動量を算出する。
【0043】
ステップS4において、モータ制御部152は、動作モードが標準動作モードであるか否かを判定する。動作モードが標準動作モードであるとき、処理はステップS5に進む。
ステップS5において、モータ制御部152は、ステップS3で算出した出力軸132の移動量が、ステップS1で設定した臨界移動量未満であるか否かを判定する。移動量が臨界移動量未満であるとき、処理はステップS6に進む。
【0044】
ステップS6において、モータ制御部152は、ステッピングモータ112の現在の角位置と出力軸132の移動量と減速比とに基づいて、ステッピングモータ112の目標角位置を算出する。
【0045】
ステップS7において、モータ制御部152は、ACサーボモータ116を停止させ、ACサーボモータ116のブレーキ118を掛けた状態にさせる。この状態で、モータ制御部152は、ステッピングモータ112をその目標角位置まで移動させる。その後、処理はステップS1に戻る。すなわち、標準動作モードで出力軸132の移動量が臨界移動量未満の場合には、ステッピングモータ112を用いて出力軸132を指令された角位置まで回転させたり停止させたりすることが行われる。
【0046】
ステップS5において、出力軸132の移動量が臨界移動量以上であると判定されたとき、処理はステップS8に進む。ステップS8において、モータ制御部152は、ステッピングモータ112の現在の角位置と出力軸132の臨界移動量と減速比とに基づいて、ステッピングモータ112の目標角位置を算出する。ここで、モータ制御部152は、ステッピングモータ112を臨界回転数に応じた最高速度で処理サイクルに関する所定時間移動させたときの位置を目標角位置として算出する。また、モータ制御部152は、ACサーボモータ116の現在の角位置と出力軸132の移動量及び臨界移動量と減速比とに基づいて、ACサーボモータ116の目標角位置を算出する。ここで、モータ制御部152は、出力軸132を目標角位置に移動させるためにステッピングモータ112の回転に加えて必要なACサーボモータ116の回転に関する目標角位置を算出する。
【0047】
ステップS9において、モータ制御部152は、ステッピングモータ112をその目標角位置まで移動させる。また、モータ制御部152は、ACサーボモータ116をその目標角位置まで移動させる。その後、処理はステップS1に戻る。すなわち、標準動作モードで出力軸132の移動量が臨界移動量以上の場合には、ステッピングモータ112とACサーボモータ116とを用いて出力軸132を指令された角位置まで回転させることが行われる。
【0048】
ステップS4において、動作モードが標準動作モードではなく、高加速・高速動作モードであると判定されたとき、処理はステップS10に進む。ステップS10において、モータ制御部152は、ACサーボモータ116の現在の角位置と出力軸132の移動量と減速比とに基づいて、ACサーボモータ116の目標角位置を算出する。
【0049】
ステップS11において、モータ制御部152は、ステッピングモータ112を停止させ、ステッピングモータ112のブレーキ114を掛けた状態にさせる。この状態で、モータ制御部152は、ACサーボモータ116をその目標角位置まで移動させる。その後、処理はステップS1に戻る。すなわち、高加速・高速動作モードでは、指令値に応じてACサーボモータ116を用いて出力軸132を指令された角位置まで回転させたり停止させたりすることが行われる。
以上のように、回転駆動機構100は、要求に応じた特性を発揮するように動作する。
【0050】
図7は、図5に示す特性で動作する場合において、出力軸132の角位置が等加速度となるような指令値が入力されたときの経過時間に対するステッピングモータ112及びACサーボモータ116の目標角位置を示す図である。点線が出力軸132の指令角位置を示し、実線がステッピングモータ112の目標角位置を示し、破線がACサーボモータ116の目標角位置を示す。このように、出力軸132の角位置が指令値として入力されたときに、その移動量に応じて出力軸132の移動量が、ステッピングモータ112の移動量とACサーボモータ116移動量とに振り分けられることになる。
【0051】
ここでは、本実施形態に係る回転駆動機構100をプラネタリウム投影機10に適用する場合について説明を行ったが、回転駆動機構100の用途はもちろんこれに限らない。回転駆動機構100は、種々の回転体や直動装置の駆動に用いられ得る。例えば、本実施形態に係る回転駆動機構100は、天体望遠鏡やビデオカメラの支持台、医療機器、半導体製造装置、分析機器などの精密な低速駆動と高速駆動の双方を要求される駆動機構としても好適である。
【0052】
[変形例]
〈2つのモータへの回転の振り分けについて〉
上述した例では、図5を参照して説明したように、所定の臨界回転数までは、ステッピングモータ112が出力軸132を回転させ、臨界回転数以上の回転数では、ステッピングモータ112の回転数は臨界回転数に対応した回転数で一定となり、ACサーボモータ116が出力軸132をさらに回転させる。しかしながらこれは一例であり、ステッピングモータ112とACサーボモータ116とへの回転の振り分けはこれに限らない。例えば、所定の臨界回転数までは、ステッピングモータ112が出力軸132を回転させ、臨界回転数以上の回転数では、出力軸132の回転数が高いほど、ACサーボモータ116が担う回転の割合が徐々に高くなっていくように、ステッピングモータ112とACサーボモータ116とが制御されてもよい。すなわち、モータ制御部152は、出力軸132の回転数を臨界回転数以上にするときには、回転数の増加分に対するステッピングモータ112の回転数の増加分を回転数が高いほど減らし、所定の回転数以上では、ステッピングモータ112の回転数を一定とするように制御してもよい。
【0053】
図8は、この場合の出力軸132の回転数とステッピングモータ112及びACサーボモータ116の回転数との関係の一例を示す図である。この例では、出力軸132の臨界回転数は100rpmに設定されている。図5に示した例と同様に、出力軸132の回転数の指令速度が100rpm未満の場合、すなわち、ステッピングモータ112の回転数が500rpm未満の場合、モータ制御部152は、ACサーボモータ116を停止させ、要求されている出力軸132の回転数の5倍の回転数でステッピングモータ112を回転させる。
【0054】
出力軸132の回転数の指令速度が100rpm以上の場合、モータ制御部152は、出力軸132の回転数が高くなるほど、ステッピングモータ112の回転数STPを、出力軸132の回転数OUTの5倍よりも徐々に低くしていき、ある回転数から一定回転数とする。一方、出力軸132の回転数の指令速度が100rpm以上、すなわち、臨界回転数以上において、モータ制御部152は、ACサーボモータ116の回転数ACを、例えば二次関数に応じて徐々に高くしていき、ステッピングモータ112が一定回転数となった回転数以上では出力軸132の回転数の増加に比例して増加させる。この場合も当然に、
OUT=STP×1/5+AC×4/5
の関係が常に維持される。
【0055】
ステッピングモータ112及びACサーボモータ116の回転数をこのように制御することで、滑らかな加速及び減速が実現される。
【0056】
図9は、図8に示す特性で動作する場合において、出力軸132の角位置が等加速度となるような指令値が入力された場合の経過時間に対するステッピングモータ112及びACサーボモータ116の目標角位置を示す図である。点線が出力軸132の指令角位置を示し、実線がステッピングモータ112の目標角位置を示し、破線がACサーボモータ116の目標角位置を示す。この図に示すように、出力軸132の角位置が指令値として入力されたときに、その移動量に応じて出力軸132の移動量が、ステッピングモータ112の移動量とACサーボモータ116移動量とに振り分けられてもよい。
【0057】
〈遊星歯車への接続について〉
上述の実施形態では、ステッピングモータ112が太陽歯車122に接続され、ACサーボモータ116が内歯車126に接続され、遊星キャリア128が出力軸132とされる例を示したが、これに限らない。例えば、ステッピングモータが太陽歯車に接続されることは変わらずに、ACサーボモータが遊星キャリアに接続され、内歯車が出力軸とされてもよい。ステッピングモータを太陽歯車以外に接続してもよいが、一般に、太陽歯車の減速比が大きいので、太陽歯車にはステッピングモータ112が接続されていることが好ましい。
【0058】
〈モータについて〉
2つのモータの組み合わせも、ステッピングモータ112とACサーボモータ116との組み合わせに限らない。例えば、2つのステッピングモータが用いられてもよい。この場合でも、両モータに係る減速比が異なるため、単一のモータで駆動するよりも広い範囲の回転数が得られる。また、ステッピングモータやACサーボモータに代えて、DCサーボモータ、コアレスモータなど、種々の他のモータが用いられてもよい。2種類の特性が異なるモータが用いられることで、回転駆動機構は、それぞれの特性が活かされたものとなり、また、回転数を幅広い範囲で可変とすることができる。減速比を考慮すると、太陽歯車に低速用のモータが接続され、内歯車又は遊星キャリアに高速用のモータが接続されるのが好ましい。
【0059】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 プラネタリウムシステム
2 スクリーン
3 ドーム
4 制御装置
10 プラネタリウム投影機
11 恒星球
11a 北天用投影機
11b 南天用投影機
12a 第1の円板
12b 第2の円板
13 日周軸部材
14 日周軸受
15 日周ベース
20 日周軸モータ
22 日周モータ歯車
23 日周軸歯車
26 ロータリーエンコーダ
33 緯度軸部材
34 緯度軸受
35 架台フォーク
40 緯度軸モータ
42 緯度モータ歯車
43 緯度軸歯車
46 ロータリーエンコーダ
53 方位軸部材
54 方位軸受
55 台座
60 方位軸モータ
62 方位モータ歯車
63 方位軸歯車
66 ロータリーエンコーダ
100 回転駆動機構
112 ステッピングモータ
113 ロータリーエンコーダ
114 ブレーキ
116 ACサーボモータ
118 ブレーキ
120 遊星歯車機構
122 太陽歯車
124 遊星歯車
126 内歯車
128 遊星キャリア
132 出力軸
141 プーリ
142 ベルト
143 プーリ
152 モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9