(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ペーパー、フィルタ部材、金属回収装置、金属回収方法
(51)【国際特許分類】
D21H 13/00 20060101AFI20240924BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240924BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20240924BHJP
B01D 39/18 20060101ALI20240924BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
D21H13/00
C02F1/28 B
B01D39/14 C
B01D39/18
B01J20/24 B
(21)【出願番号】P 2020218994
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】521001951
【氏名又は名称】株式会社ジャパンモスファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】井藤賀 操
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-275619(JP,A)
【文献】特開2018-198591(JP,A)
【文献】特開2013-188692(JP,A)
【文献】特開2002-171830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 13/00
C02F 1/28
B01D 39/14
B01D 39/18
B01J 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コケ植物の原糸体を含むペーパーであって、
面積あたりの前記原糸体の乾燥質量が10~40g/m
2である、ペーパー。
【請求項2】
前記コケ植物が、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)に属するコケ植物である、請求項1に記載のペーパー。
【請求項3】
前記コケ植物が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)およびヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択される1種以上のコケ植物である、請求項1または2に記載のペーパー。
【請求項4】
前記コケ植物が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属するコケ植物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のペーパー。
【請求項5】
前記ペーパーの厚さの標準偏差σが、4.5μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のペーパー。
【請求項6】
前記ペーパーの平均厚さが、90μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のペーパー。
【請求項7】
前記原糸体の含有量が、前記ペーパーの全質量に対して98質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のペーパー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペーパーを有する、フィルタ部材。
【請求項9】
前記ペーパーを2枚以上有する、請求項8に記載のフィルタ部材。
【請求項10】
通液可能な隔壁を更に有し、
前記隔壁が2枚の前記ペーパーの間に配置されている、請求項9に記載のフィルタ部材。
【請求項11】
前記隔壁がポリエーテル系ポリウレタンからなる多孔質材料で構成されている、請求項10に記載のフィルタ部材。
【請求項12】
前記ペーパーを内包するカートリッジを更に有する、請求項8~11のいずれか1項に記載のフィルタ部材。
【請求項13】
金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収装置であって、
前記溶液が移送される管路と、
前記管路に配置されている、請求項8~12のいずれか1項に記載のフィルタ部材とを備える、金属回収装置。
【請求項14】
金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収方法であって、
前記溶液を請求項1~7のいずれか1項に記載のペーパーに接触させて、前記ペーパーに前記金属を吸着させる工程Aと、
前記金属が吸着した前記ペーパーから前記金属を抽出する工程Bとを有する、金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーパー、フィルタ部材、金属回収装置、金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属を吸収および蓄積する性質を有する植物を利用して、鉱山、めっき処理、表面処理および無機化学などの各種産業から排出される金属含有排水から金属を回収する技術(ファイトマイニング)が報告されている。この植物を利用する金属回収技術は、環境への負荷が少なく、かつ、低コストの環境浄化技術としても期待されている。
【0003】
上記金属回収技術として、金属を吸収および蓄積する性質を有するコケ植物を用いる技術が知られている。
例えば、特許文献1には、原糸体乾燥重量の70%以上のPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体をPb含有汚染水と接触させることを含むPb浄化方法に関する発明、および、貯留槽と、該槽に収容された、原糸体乾燥重量の70%以上のPb蓄積能を有するコケ植物の原糸体の懸濁液とを含むPb浄化装置に関する発明が開示されている。
また、特許文献2には、銀よりイオン化傾向が低い金属を回収する方法であって、ヒョウタンゴケ科に属するコケ植物由来の原糸体を金属が溶解した溶液と接触させることを含む方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5388124号公報
【文献】特許第5429740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の方法を、例えば、金属含有排水から重金属または貴金属等の金属(対象金属)を回収する実際の工業プロセスに適用する場合、より大量の原糸体を使用して対象金属の吸着処理が行われ、金属含有排水の処理量が所定の量を超えた時点で、金属蓄積量が飽和状態に近づいた原糸体と新鮮な原糸体とを交換する処理が定期的に行われる。
ここで、上記特許文献には、対象金属が蓄積された原糸体の懸濁液を貯留槽から排出した後、原糸体から対象金属を抽出したと記載されている。従って、上記特許文献に記載の方法に従って金属含有排水から対象金属を回収する場合、交換すべき原糸体が懸濁した大量の金属含有排水を回収装置から排出した上で、懸濁液から原糸体または対象金属を分離するという負荷が大きい処理工程を必要とする。また、原糸体または対象金属を除去した後の廃液には、対象金属以外の他の金属が多く含有されているため、このような大量の廃液の処理工程は、取り扱いに多大な注意を必要とし、負担がかかる工程を実施しなければならない。
【0006】
以上から、本発明者らは、上記特許文献に記載されたコケ植物の原糸体を用いる金属回収方法を工業プロセスに適用するに際して、より簡易な方法でコケ植物の原糸体から対象金属を回収でき、かつ、取り扱い性に優れた金属回収部材が有用であることを明らかとした。
そこで、本発明は、コケ植物の原糸体を含有する部材であって、より簡易な方法でコケ植物の原糸体から対象金属を回収でき、かつ、取り扱い性に優れた金属回収部材を提供することを課題とする。また、本発明は、上記部材を有するフィルタ部材、上記部材を有する金属回収装置、および、上記部材を用いた金属回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕
コケ植物の原糸体を含むペーパーであって、面積あたりの上記原糸体の乾燥質量が10~40g/m2である、ペーパー。
〔2〕
上記コケ植物が、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)に属するコケ植物である、〔1〕に記載のペーパー。
〔3〕
上記コケ植物が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)およびヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)からなる群より選択される1種以上のコケ植物である、〔1〕または〔2〕に記載のペーパー。
〔4〕
上記コケ植物が、ヒョウタンゴケ属(Funaria)に属するコケ植物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のペーパー。
〔5〕
上記ペーパーの厚さの標準偏差σが、4.5μm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のペーパー。
〔6〕
上記ペーパーの平均厚さが、90μm以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のペーパー。
〔7〕
上記原糸体の含有量が、上記ペーパーの全質量に対して98質量%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のペーパー。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のペーパーを有する、フィルタ部材。
〔9〕
上記ペーパーを2枚以上有する、〔8〕に記載のフィルタ部材。
〔10〕
通液可能な隔壁を更に有し、上記隔壁が2枚の上記ペーパーの間に配置されている、〔9〕に記載のフィルタ部材。
〔11〕
上記隔壁がポリエーテル系ポリウレタンからなる多孔質材料で構成されている、〔10〕に記載のフィルタ部材。
〔12〕
上記ペーパーを内包するカートリッジを更に有する、〔8〕~〔11〕のいずれかに記載のフィルタ部材。
〔13〕
金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収装置であって、上記溶液が移送される管路と、上記管路に配置されている〔8〕~〔12〕のいずれかに記載のフィルタ部材とを備える、金属回収装置。
〔14〕
金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収方法であって、上記溶液を〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のペーパーに接触させて、上記ペーパーに上記金属を吸着させる工程Aと、上記金属が吸着した上記ペーパーから上記金属を抽出する工程Bとを有する、金属回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コケ植物の原糸体を含有する部材であって、より簡易な方法でコケ植物の原糸体から対象金属を回収でき、かつ、取り扱い性に優れた金属回収部材を提供できる。また、本発明によれば、上記部材を有するフィルタ部材、上記部材を有する金属回収装置、および、上記部材を用いた金属回収方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るフィルタ部材の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る金属回収装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、特に言及した場合を除いて、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において「対象金属」とは、金属回収プロセスにおいて目的物となる金属を意味する。
【0012】
[ペーパー]
本発明に係るペーパー(以下、単に「本ペーパー」ともいう。)は、コケ植物の原糸体を含むペーパーであって、面積あたりの原糸体の乾燥質量が10~40g/m2である。
本明細書において「ペーパー」の用語は、平坦な形状を有する部材であることを意味する。本ペーパーの形状は、例えば、シート状またはフィルム状であってもよい。
以下、本明細書において「コケ植物の原糸体」を単に「原糸体」とも表記する。
【0013】
〔原糸体〕
原糸体とは、コケ植物の胞子由来の細胞が細胞分裂を繰り返し、分枝した糸状の組織をいう。原糸体は多くの葉緑体を含んでいるため緑色を呈し、外見上は糸状緑藻類のような形態をとる。
【0014】
原糸体は、対象金属を吸着および蓄積可能であれば特に制限されず、例えば、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)に属するコケ植物の原糸体が挙げられる。
ヒョウタンゴケ科に属するコケ植物としては、例えば、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)、ヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)およびヒョウタンゴケ属(Funaria)に属するコケ植物が挙げられる。
原糸体としては、金属蓄積能により優れる点で、ヒョウタンゴケ属に属するコケ植物由来の原糸体が好ましく、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)由来の原糸体がより好ましい。
【0015】
原糸体は、コケ植物に人工的な変異を導入して作製したコケ植物の変異体に由来する原糸体であってもよい。変異の導入方法としては、重イオンビーム、X線、ガンマー線および中性子線等のエネルギー線の照射が挙げられる。例えば、重イオンビームを用いた変異体コケ植物の作製方法については、特許第3577530号公報および国際公開第03/056905号明細書に記載されている。
【0016】
本明細書中で使用する用語「原糸体」は、生細胞形態の原糸体、原糸体の細胞壁調製物、および、生細胞形態の原糸体と該細胞壁調製物との混合物を含む意味で使用される。原糸体の細胞壁調製物は、生細胞形態の原糸体と同様に高い金属吸着能を有すると考えられている(特許文献1および2参照)。
【0017】
原糸体の細胞壁調製物は、例えば以下のようにして調製できる。最初に、コケ植物の原糸体を0.05Mリン酸緩衝液(pH=6.5)中で、乳鉢および乳棒を用いて破砕した後、遠心分離する(3000rpm、10分間)。次いで、沈殿物にアセトンを添加して室温で一晩放置した後、1000rpmで10分間の遠心分離を3回繰り返す。その後、室温で一晩乾燥させた後の沈殿物を粗細胞壁として回収する。回収した粗細胞壁は、超純水、メタノールおよびクロロホルムを含む遠沈管に添加して1時間振とうした後、遠心分離する(3000rpm、10分間)。その後、メタノールを含有する水相を回収し、蒸発させて得られた画分を、必要に応じて凍結乾燥処理を施すことにより、細胞壁調製物が得られる。
【0018】
原糸体は、上記の通り糸状の形状を有する。原糸体は、糸状の形状を有し、かつ、その形状の均一性が高いため、金属の回収に有用なペーパー状部材を後述する抄紙方法により容易に製造することができる。
原糸体の長さおよび太さは、原糸体の培養条件によって異なり、特に制限されない。原糸体の全長は、例えば100~10,000μmであり、500~5,000μmが好ましい。また、原糸体の直径は、例えば5~60μmであり、20~40μmが好ましい。
原糸体の全長および直径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてペーパーの表面を観察し、任意に選択された原糸体の測定値を算術平均することにより得られる。
【0019】
本ペーパーに含まれる原糸体の含有量は、面積あたりの原糸体の乾燥質量が上記の範囲内であれば特に制限されず、例えば、ペーパーの全質量に対して10質量%以上であってよい。原糸体の含有量は、ペーパーの単位重量あたりの金属吸着性能がより優れる点で、ペーパーの全質量に対して、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
更に、本ペーパーの好ましい態様として、コケ植物の原糸体からなるペーパーが挙げられる。本明細書において、ペーパーが「コケ植物の原糸体からなる」とは、原糸体の含有量がペーパーの全質量に対して98質量%以上であることを意味する。なかでも、原糸体の含有量は、99.5質量%以上が好ましく、99.9質量%以上がより好ましい。上限値は特に制限されず、ペーパーの全質量に対して100質量%であってよい。
なお、ペーパーにおけるコケ植物の原糸体の含有量、および、後述する他の成分の含有量は、公知の方法(例えば赤外吸収分光法(IR)等)で定量できる。
【0020】
〔他の成分〕
本ペーパーは、原糸体以外の他の成分を含有していてもよい。
本ペーパーが含有していてもよい他の成分としては、原糸体の金属蓄積性能、および、ペーパーの通液機能をいずれも妨害しない成分であれば特に制限されず、例えば、パルプ等の天然繊維、セルロース及びビスコース等の半合成繊維、合成繊維、並びに、ガラス繊維等の無機繊維等の、ろ紙またはフィルターの製造に使用される公知の繊維素材が挙げられる。
また、本ペーパーは、他の成分として、本ペーパーの製造工程において不可避的に混入される不純物等の微量成分を含有していてもよい。そのような微量成分としては、例えば、製造工程で使用する水に含まれる金属化合物等が挙げられる。
他の成分の含有量は、ペーパーの全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が最も好ましい。下限値は特に制限されず、検出限界以下であってよい。
【0021】
〔ペーパーの物性等〕
本ペーパーは、面積あたりの原糸体の乾燥質量が10~40g/m2である。
面積あたりの原糸体の乾燥質量が10g/m2未満であると、ペーパーの強度が弱くなって、取り扱い性が低下する場合があり、また、ペーパーに蓄積される金属の総量が少なくなってしまうためである。面積あたりの原糸体の乾燥質量が40g/m2超であると、対象金属を含有する溶液の通液量が低下して処理効率が低下する場合があり、また、乾燥後のペーパーの取り扱い性が低下する場合がある。
ペーパーにおける面積あたりの原糸体の乾燥質量は、上記の観点から、20~35g/m2が好ましく、25~30g/m2がより好ましい。
【0022】
ペーパーにおける面積あたりの原糸体の乾燥質量は、以下の方法で測定する。測定対象のペーパーを、紙製タオルで挟み、更に0.3kPaの圧力で加圧した状態で、相対湿度35%および気温23℃の屋内環境にて1週間保管することにより、乾燥させる。次いで、保管後のペーパーの重さを、精密電子天秤等の公知の測定装置を用いて測定することにより、ペーパーの乾燥質量が得られる。
本ペーパーが原糸体からなるペーパーの場合、ペーパーの面積に対する上記で得られるペーパーの乾燥質量の比率(ペーパーの乾燥質量/ペーパーの面積)を、ペーパーの面積あたりの原糸体の乾燥質量と見なすことができる。本ペーパーが原糸体以外の他の成分を含む場合、ペーパーの全質量に対する原糸体の含有量の比率を用いて換算することにより、ペーパーの面積あたりの原糸体の乾燥質量を求めることができる。
なお、本明細書において、ペーパーの「面積」とは、特に言及しない場合、厚さ方向に対して直交する方向に沿ったペーパーの断面の面積を意味する。
【0023】
本ペーパーの平均厚さは、特に制限されないが、柔軟性により優れ、乾燥後のペーパーの取り扱い性により優れる点で、110μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、90μm以下が更に好ましく、80μm以下が特に好ましい。
本ペーパーの平均厚さの下限値は特に制限されないが、20μm以上であってよく、製造がより容易である点、および、ペーパーの強度が向上する点で、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。
【0024】
また、本ペーパーは、厚さの標準偏差σが、4.7μm以下であることが好ましく、4.5μm以下であることがより好ましく、3.1μm以下であることが更に好ましい。上記の厚さの標準偏差σは、ペーパーの厚さの均一性を示す尺度であり、厚さの標準偏差σが上記範囲内にあると、ペーパーの厚さがより均一となり、ペーパーをフィルタとして用いる際、対象金属を含有する溶液がペーパーに接触せずに通過するショートパスが形成され難くなる。
上記の厚さの標準偏差σの下限値は特に制限されず、0.0μmであってよい。
【0025】
ペーパーの平均厚さおよび厚さの標準偏差σは、以下の方法で測定される。
原糸体の乾燥質量の測定方法において記載した保管方法に従って保管された1枚のペーパーから、10枚の測定サンプル(例えば縦3cmおよび横3cmのサイズ)を切り出す。得られた10枚の測定サンプルの厚さを、デジタルノギス(例えば株式会社ミツトヨ製「DIGIMATIC CALIPER CD-15CX」等)で計測する。得られた10個の厚さデータから、平均厚さおよび標準偏差σをそれぞれ算出する。
【0026】
本ペーパーは、対象金属を含有する液体(本明細書において「被処理液」ともいう)を本ペーパーに接触させることにより、被処理液に含まれる対象金属を吸着および蓄積する機能(金属蓄積能)を有する。
本ペーパーが吸着および蓄積可能な対象金属の種類は特に制限されず、例えば、鉛、金、白金、パラジウム、銀、銅、タリウム、モリブデン、イットリウム、セレン、亜鉛、水銀、ヒ素、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、アルミニウム、スカンジウムおよび鉄等の金属が挙げられる。
なかでも、本ペーパーは重金属の回収に使用することが好ましく、鉛、銀よりイオン化傾向が低い金属(金、白金およびパラジウム等)、銀、銅およびクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の回収に使用することがより好ましく、鉛、金および白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の回収に使用することが更に好ましい。
【0027】
本ペーパーが有する金属を吸着および蓄積する性能は、被処理液の組成、および、対象金属の種類によって異なるが、例えば、本ペーパーに蓄積される金属の合計含有量の最大値は、ペーパーの乾燥質量に対して80質量%以上である。
また、対象金属が鉛である場合、本ペーパーに蓄積される鉛の含有量の最大値は、ペーパーの乾燥質量に対して70質量%以上である。対象金属が金である場合、本ペーパーに蓄積される金の含有量の最大値は、ペーパーの乾燥質量に対して10質量%以上であり、対象金属が白金である場合、本ペーパーに蓄積される白金の含有量の最大値は、ペーパーの乾燥質量に対して4質量%以上である。
【0028】
本ペーパーは、長時間液体に浸漬した後であっても形状が崩れず、浸漬前の形状を維持できる。加えて、本ペーパーは、湿潤した状態における強度に優れており、液体に浸漬した状態にあるペーパーの端部を掴んで液中から引き揚げても欠損が生じない程度の十分な強度を有する。
【0029】
〔ペーパーの製造方法〕
本ペーパーは、公知の抄紙方法により製造できる。本ペーパーの製造方法としては、例えば、原糸体が水に懸濁してなる懸濁液(紙料)を湿式抄紙法によって抄紙して湿紙を作製する抄紙工程と、作製された湿紙を乾燥する乾燥工程とを有する方法が挙げられる。
【0030】
<紙料>
上記抄紙工程において紙料として使用する懸濁液は、原糸体および水を少なくとも含有するものであれば特に制限されない。
紙料に含まれる分散媒としては、水が好ましい。水としては、超純水、純水(蒸留水および脱イオン水等)および水道水が挙げられ、不純物が少ない点で超純水または純粋が好ましい。
紙料に含まれる原糸体の含有量は、抄紙工程における具体的な抄紙方法に応じて適宜選択されるが、紙料に対する原糸体の含有量は、例えば、0.4~0.7g/Lであり、0.5~0.6g/Lが好ましい。
【0031】
抄紙工程に使用する懸濁液としては、原料を簡便に入手でき、かつ、大量に生産できる点で、以下の方法で培養して得られる原糸体を使用して調製される懸濁液が好ましい。
【0032】
(原糸体の培養方法)
原糸体の培養方法について説明する。
原糸体は、液体通気培養によって大量に増殖可能である。液体通気培養は、典型的には、原糸体を含む培養液を培養槽に充填し、無菌空気を通気することによって実施される。
液体通気培養に用いる液体としては、原糸体の生育を阻害しない限りいかなる液体を用いてもよく、例えば、水、超純水、蒸留水、水道水および海水が挙げられる。
培養液に含まれる原糸体の含有量は、培養条件によって適宜選択されるが、培養液の総体積に対する原糸体の乾燥質量が、0.1~1mg/mLであることが好ましい。
【0033】
液体通気培養は、リン源、無機塩、グルコース、アミノ酸およびビタミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの培養成分を含む培養液中で行うことが好ましい。
培養液は、培養の効率の観点から、培養成分として、KNO3(硝酸カリウム)、MgSO4(硫酸マグネシウム)、KH2PO4(第一リン酸カリウム)、FeSO4(硫酸鉄)、MnSO4(硫酸マンガン)、H3BO3(ホウ酸)、ZnSO4(硫酸亜鉛)、KI(ヨウ化カリウム)、Na2MoO4(モリブデン酸ナトリウム)、CuSO4(硫酸銅)、CoCl2(塩化コバルト)、(NH4)2C4H4O6(酒石酸アンモニウム)およびCaCl2(塩化カルシウム)を含むことが好ましい。培養液中に含まれる各培養成分の濃度は、当業者が適宜設定できる。
【0034】
原糸体の培養条件としては、以下の条件が挙げられる。
培養の温度条件は、例えば15~25℃であり、18~22℃が好ましく、20℃がより好ましい。
培養の光条件のうち、明:暗比は、例えば約16:8~約24:0であり、約16:8が好ましく、波長域は、400~700nmが好ましく、光強度は、6500~7500ルクスが好ましい。
通気量は、培養槽のサイズおよび培養液の量に応じて適宜設定できるが、例えば1~2L/minであり、1.4L/min程度が好ましい。
液体通気培養による原糸体の培養方法については、例えば、Decker EL.およびReski R. (2004). The moss bioreactor. Current Opinion in Plant Biology 7, 166-170;Hoche AおよびReski T. (2002). Optimisation of a bioreactor culture of the moss Physcomitrella patens for mass production of protoplasts. Plant Science 16f3, 69-74;、並びに、S.-Y. Chiouら、Journal of Biotechnology 85 (2001) 247-257を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0035】
原糸体を培養するための培養装置としては、例えば、培養槽、光源、培地成分供給装置、攪拌装置、温度制御装置、通気装置、供給口および排出口を備える態様が挙げられる。
【0036】
培養槽の形状およびサイズは特に制限されず、培養槽としては、カラム状、扁平状、管状および箱状を含むあらゆる形状の槽を使用できる。
培養槽が扁平状である場合、培養装置が攪拌装置を装備していなくても、通気による対流によって培養液を攪拌し、繊維状の原糸体が球状の凝集体を形成し、凝集体内部の原糸体が死滅する事態を回避できるため、好ましい。ここで扁平状とは、例えば直方体の容器の場合、上面の縦幅の長さが横幅の長さの約4分の1以下となるような平べったい縦長の形状をいう。
カラム状である培養槽としては、円筒型カラムおよび扁平型カラムが挙げられる。
培養槽の材質は、培養液の量に応じて選択でき、経時劣化しないものが好ましい。培養槽の材質としては、例えば、ガラス、金属(ステンレス等)、アクリル樹脂、プラスチック、および、ポリカーボネートが挙げられる。
【0037】
光源は、培養槽に収容された原糸体に光を供給する装置である。光源を用いて原糸体の光合成に必要な波長域の光を供給することにより、原糸体は光合成を行い、増殖できる。光源により照射する光の好ましい条件等は、上記の通りである。光源は、典型的には培養槽の内部の任意の位置に配置されるが、培養槽が光透過性の材質からなる場合には、培養槽の外部に設置してもよい。
【0038】
培地成分供給装置は、上記培養成分を所定の濃度で継続的に供給することにより、培養の効率性を向上できる装置である。培地成分供給装置は、上記培養成分の培養槽内の培養液に直接添加することにより、培養液中の培養成分の濃度を所望の範囲に維持できる。
【0039】
攪拌装置は、培養液を攪拌する装置である。攪拌装置を用いることにより、培養液中の原糸体が球状の凝集体を形成し、凝集体内部の原糸体が死滅する事態を回避できる。
攪拌装置としては、例えば、パッチ式ミキサー、インペラー式攪拌機、ブレードミキサー、ローター/ステーター式ミキサー、および、ロータリーシェーカーが挙げられる。
攪拌装置を用いて行う攪拌の速度は、培養槽のサイズおよび培養液の量に応じて適宜設定できるが、例えば50~100rpmである。
【0040】
温度制御装置は、培養液の温度を原糸体の培養に適した温度に維持する装置である。温度制御装置としては、例えば、サーモスタット、恒温培養器、人工気象器およびインキュベーターが挙げられる。培養に適した温度については、上記の通りである。
【0041】
通気装置は、培養液に無菌空気を供給する装置である。原糸体の培養における通気量については、上記の通りである。
また、通気装置は、攪拌装置に代えてまたは攪拌装置とともに、通気による対流によって培養液を攪拌する機能を有する。これにより、繊維状の原糸体が球状の凝集体を形成し、凝集体内部の原糸体が死滅する事態を回避できる。通気装置を用いて培養液を攪拌する場合、扁平状の培養槽を用いるとともに、通気量を、原糸体が球状にならない程度の攪拌スピードおよび通気流速に設定することが好ましい。このときの「原糸体が球状にならない程度の攪拌スピード」および「通気流速」は、培養槽のサイズに応じて適宜設定可能である。
【0042】
培養装置は、培養液を培養槽に供給する供給口、および、培養槽から培養液を排出する排出口を更に備える。培養装置が排出口を備えることにより、死滅した原糸体または培養により過剰増殖した原糸体を除去でき、その結果、培養槽内に収容される原糸体を培養に適した濃度で維持できる。
【0043】
上記の培養方法で培養された原糸体を含む培養液は、そのまま抄紙工程に使用してもよいが、不純物を低減できる点で、培養液から原糸体を分離して回収した後、得られた原糸体と水とを混合して、抄紙工程に使用する紙料を調製することが好ましい。
【0044】
培養液から原糸体を回収する方法は特に制限されず、例えば、原糸体を通過させずに水を通過させることができる透水性部材、遠心分離機、沈殿漕および吸引濾過等の公知の固液分離手段を用いて、原糸体または原糸体を含む懸濁液を培養液から取り出す方法が挙げられる。
上記透水性部材としては、原糸体の流出を抑制できる大きさの開口を有するものであれば特に制限されず、例えば、笊、ネット、不織布およびメッシュ網が挙げられる。上記の開口の大きさは、例えば、200~300μmである。
【0045】
原糸体と分散媒とを混合して紙料を調製する方法は特に制限されず、例えば、上記の培養方法で生産された原糸体と水(好ましくは超純水または純水)とを、ミキサー等の公知の混合機を用いて混合してスラリーを調製する方法が挙げられる。
【0046】
<抄紙工程>
抄紙工程では、原糸体の懸濁液である紙料を湿式抄紙法によって抄紙して、湿紙を作製する。抄紙工程に用いる紙料については、既に説明した通りである。
抄紙方法としては、特に制限されず、手すき機を用いて手動で抄紙してもよく、長網式、丸網式および傾斜網式等の抄紙網を備える抄紙機を用いて抄紙してもよい。手すき機を用いて抄紙する場合、円形または角形の手すき機を用いて、紙料をすき網の上に流し込み、すき網を揺り動かして原糸体をすき網の上に堆積させながら水を排出する。上記の一連の手すき処理を少なくとも1回、好ましくは2回以上行うことにより、原糸体を含む湿紙を作製する。
【0047】
なお、本ペーパーにおける原糸体の乾燥質量、平均厚さおよび厚さの標準偏差は、紙料に含まれる原糸体の含有量、抄紙網(すき網)の網目のサイズ、および、手すき機を用いる場合の抄紙処理の回数等の抄紙工程の各条件により適宜調整できる。例えば、抄紙工程において手すき機を用いる場合、原糸体の含有量が少ない紙料を使用し、かつ、上記の一連の手すき処理の回数を増やすことにより、厚さがより均一であり、厚さのバラツキが抑えられたペーパーを作製できる。
また、抄紙工程において手すき機を用いる場合の本ペーパーの製造方法については、JIS P 8222:2015(パルプ-試験用手すき紙の調製方法)に記載の方法を参照できる。
【0048】
<乾燥工程>
次いで、抄紙工程において作製された湿紙を乾燥させる乾燥工程を行う。
乾燥工程においては、湿紙を加熱せずに室温付近(例えば21~25℃)で乾燥させてもよく、湿紙を加熱して乾燥させてもよいが、金属吸着性能に優れる点で、湿紙を加熱せずに乾燥させることが好ましい。
乾燥工程において使用する加熱手段としては、特に制限されず、熱風ドライヤー、赤外線ドライヤー、ヤンキードライヤーおよび多筒ドライヤー等の公知の加熱手段が挙げられる。加熱温度としては、例えば、50~70℃が挙げられ、60℃付近が好ましい。
乾燥工程においては、湿紙の収縮を抑制するため、湿紙を加圧しながら乾燥することが好ましい。湿紙の加圧方法としては、例えば、手すき機を用いて作製された湿紙を、平板上に配置されたシート上に転写し、湿紙上に追加のシートを配置した後、プレス機または重石を用いて、2枚のシートに挟まれた状態の湿紙を加圧する方法が挙げられる。湿紙を挟むシートは、吸水機能を有するシートであり、例えば、ろ紙等の紙が使用できる。加圧時の圧力は特に制限されず、例えば0.3~0.4kPaが挙げられる。
【0049】
本ペーパーは、薄いペーパー状であって、かつ、優れた金属蓄積能と強度とを兼ね備えていることから、金属回収用フィルタ部材として好適に使用できる。上記の方法で製造される本ペーパーにおいては、糸状の原糸体がネットワーク構造を形成しているためと推測される。
【0050】
[金属回収方法]
本ペーパーを用いる金属回収方法について詳しく説明する。
本発明に係る金属回収方法は、金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収方法であって、上記溶液を本ペーパーに接触させて、本ペーパーに金属を吸着させる工程Aと、金属が吸着した本ペーパーから金属を抽出する工程Bとを有する。
本明細書においては、本発明に係る金属回収方法を「本方法」とも記載し、対象金属を含有する溶液であって、本方法において本ペーパーに接触させる溶液を「被処理液」とも記載する。
【0051】
〔被処理液〕
本方法に用いる被処理液としては、対象金属が溶解している溶液であれば特に制限されず、例えば、工業排水、生活廃水、廃棄物の燃焼飛灰溶出液、農業用水、溜池、河川、地下水、鉱山廃水、製錬排水、および、バラスト水が挙げられる。
特に、従来の方法を用いた金属回収に要するコストとの関連でその回収による経済的な利益が見込まれなかった溶液、例えば、金属のリサイクル工場での金属回収プロセスにおいて回収し切れなかった金属を含有する排液、および、海水のような超微量濃度で金属を含有する環境水等の溶液を、本方法に供することが好ましい。
【0052】
被処理液に含まれる対象金属の含有量は、特に制限されず、例えば、0.0001~0.001mg/mLであってよい。
対象金属が金である場合、被処理液中の金濃度は、例えば、0.0001~400mg/mLであってよく、0.0008~200mg/mLであることが好ましい。
【0053】
被処理液のpHは、例えば1.0~12.0であってよく、金属吸着性能がより優れる点で、1.5~10.0が好ましい。本ペーパーは、強酸性条件下(例えばpH3以下)および強アルカリ性条件下(例えばpH10以上)のいずれであっても、金属蓄積能を発揮できる。従って、強酸性または共アルカリ性の被処理液に対しても、pHを中性に調整することなく、本方法を適用し、対象金属を吸収および蓄積できる。
また、本ペーパーは、Cu、Zn、CoおよびAs等の重金属に耐性を有するため、これら重金属イオンを含有する被処理液に対しても、本ペーパーの金属蓄積能は阻害されないか、または、阻害を最小限に抑制できる。
よって、本方法では、様々な被処理液の本ペーパーへの供給に際し、重金属を含有する溶液を取り扱う際に通常行われる中和等の処理以外に、特別な前処理(pHの調整、硫酸の添加およびシアンの分解を含む)を行う必要は無い。そのため、本方法は、簡便であり、かつ、環境負荷が低いという利点を有する。
【0054】
〔工程A〕
本方法が有する工程Aでは、被処理液を本ペーパーに接触させることにより、被処理液に含まれる対象金属を本ペーパーに吸着させる。
工程Aにおいて、本ペーパーに被処理液を接触させる方法は、本ペーパーの表面に被処理液が接触するように被処理液を供給する方法であれば特に制限されないが、対象金属の吸着および蓄積の効率がより優れる点で、被処理液が本ペーパーを通過するように被処理液を供給することが好ましい。
【0055】
工程Aにおける本ペーパーの使用態様については特に制限されないが、例えば、少なくとも1つの入口および少なくとも1つの出口を含み、入口と出口との間に少なくとも1つの流通路が形成されたハウジング内に本ペーパーを配置することが好ましい。
ハウジング内に配置される本ペーパーの向きは特に制限されないが、ハウジング内の流通路を横切るように配置されることが好ましい。この場合、ハウジング内に形成された流通路を被処理液が流通する際、流通路を横切るように配置された本ペーパーを被処理液が通過することによって、工程Aに係る吸着処理が行われる。
【0056】
工程Aにおいて、本ペーパーに接触させる被処理液の温度は、例えば15~30℃であってよく、20~25℃が好ましい。
【0057】
被処理液を本ペーパーに通過させる場合、被処理液に対する本ペーパーの接触面積あたりの被処理液の流量(L/分/m2)は、処理効率と本ペーパーの耐性とのバランスがより優れる点で、40~50L/分/m2が好ましく、40~45L/分/m2がより好ましい。
また、本ペーパーに対する被処理液の供給圧力は、特に制限されないが、本ペーパーに接触させる前の被処理液の圧力が0.1~0.3MPaであることが好ましい。
【0058】
工程Aにおいて、被処理液を供給する時間および被処理液の供給量は特に制限されず、工程Aの実施条件等に応じて適宜設定できる。より具体的には、本ペーパーにおける原糸体の乾燥質量、本ペーパーの使用枚数、および、被処理液の組成等に応じて、予め被処理液の処理量の閾値を設定した後、工程Aを実施し、本ペーパーを通過する被処理液の処理量が、設定した閾値を超えた時点で、本ペーパーの金属蓄積量が飽和状態に近づいたと判定して、被処理液の供給を停止し、使用済みの本ペーパーを未使用の本ペーパーと交換する態様が挙げられる。
本ペーパーは、上記の通り、被処理液に浸漬した状態においてもその形状を維持し、かつ、十分な強度を有しており、対象金属が蓄積した本ペーパーの交換を容易に実施できることから、原糸体が被処理液に懸濁した状態で原糸体に対象金属を吸着および蓄積させる場合と比較して、短時間かつ労力が極めて少ない簡易な方法で、対象金属が蓄積した原糸体と新鮮な原糸体との交換を実施することができる。
工程Aにおいて被処理液と接触し、対象金属を吸着した本ペーパーは、下記の工程Bに供される。
【0059】
〔工程B〕
本方法が有する工程Bでは、対象金属を吸着した本ペーパーから、対象金属を抽出することにより、対象金属を回収する。
工程Bにおける対象金属の抽出は、対象金属の種類に応じて、乾式精錬および湿式精錬等の公知の金属精錬技術に従って行うことができる。なかでも、乾式精錬が好ましい。
【0060】
工程Bを乾式精錬により行う方法としては、例えば、対象金属が吸着した本ペーパーを高温で加熱して溶融し、得られた溶融物を比重により分離することによって、対象金属を回収する方法が挙げられる。
工程Bを湿式精錬により行う方法としては、例えば、対象金属が吸着した本ペーパーに溶剤を接触させることにより、対象金属を溶剤中に溶出させた後、得られた溶液から対象金属を回収する方法が挙げられる。上記溶液から対象金属を回収する方法としては、例えば、対象金属の貧溶媒を上記溶液に大量に添加して対象金属を含む沈殿物を回収する方法、および、上記溶液を電解液として用いて電解精錬を行い、電極に析出した対象金属を回収する方法が挙げ有られる。
また、工程Bにおいて、乾式精錬と湿式精錬とを組み合わせて対象金属を回収してもよい。そのような方法としては、例えば、乾式精錬で得られた粗抽出物に対して電解精製を更に行い、より対象金属の純度が高い抽出物を回収する方法が挙げられる。
【0061】
〔フィルタ部材〕
以下、本方法に使用できるフィルタ部材について、
図1を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るフィルタ部材の一例であるフィルタ部材1の構成を示す模式図である。フィルタ部材1は、本ペーパーであるペーパー2と、ペーパー2を内包するカートリッジ3と、2枚のペーパー2の間に配置されている隔壁4と、カートリッジ3を収納するハウジング5と、を有する。
【0062】
フィルタ部材1は、複数のペーパー2を内包するカートリッジ3を有する。ペーパー2はいずれも本ペーパーであって、カートリッジ3の被処理液の流通方向に対して直交する断面の形状に応じて切り出された平板状の形状を有している。ペーパー2の形状以外の特徴については、既に説明した本ペーパーの特徴と同じである。
【0063】
カートリッジ3は、ペーパー2の外周部を把持することにより、工程Aにおいて被処理液を流通させている間、ペーパー2を保持する機能を有する。また、カートリッジ3は、ペーパー2の把持を解除して、ペーパー2を着脱できるように構成されている。
【0064】
ハウジング5は、フィルタ部材1の外殻を形成する部材である。ハウジング5には、ペーパー2に処理させる被処理液が流入する流入口6、および、ペーパー2を通過した処理済みの被処理液が流出する流出口7が設けられている。
また、ハウジング5は、開閉可能な蓋(図示しない)が設けられ、カートリッジ3を着脱できるように構成されている。これにより、カートリッジ3を交換することで、使用済みのペーパー2と未使用のペーパー2との交換を行うことができる。
【0065】
隔壁4は、被処理液を通液可能な部材である。隔壁4は、隣接する2枚のペーパー2の間に配置されることにより、2枚のペーパー2を互いに隔離し、被処理液の流れを改善するとともに、ペーパー2における詰まりを防止する機能を有する。
特に、
図1に示すフィルタ部材1では、ペーパー2と隔壁4とが互い違いに配置されているため、上記の隔壁4が有する上記の機能がより有効に発揮される。
【0066】
隔壁4としては、被処理液が通過できる部材であれば特に制限されず、被処理液が通過可能な材料で形成されていてもよく、被処理液が通過可能な構造を有していてもよい。
上記の被処理液が通過可能な材料としては、例えば、樹脂、ケイソウ土、織布、不織布およびガラス繊維等からなる多孔質材料が挙げられ、樹脂からなる多孔質材料が好ましい。樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルフォン、セルロース、および、フッ素樹脂が挙げられ、ポリウレタン、ポリプロピレンまたはポリエステルが好ましく、ポリエーテルモノマーに由来するポリエーテル系ポリウレタンがより好ましい。
また、被処理液が通過可能な構造としては、厚さ方向に開口しているメッシュ構造が挙げられる。
【0067】
フィルタ部材1が有するカートリッジ3およびハウジング5の構成材料としては、例えば、ガラス、金属(例えばステンレス等)、アクリル樹脂、プラスチックおよびポリカーボネート等の材料が挙げられる。また、カートリッジ3およびハウジング5の接液部は、被処理液に対して耐腐食性を有する材料で構成されていることが好ましい。
なお、本明細書において接液部とは、被処理液が接触する可能性のある部分(但し、本ペーパーを除く)を意味する。
【0068】
以下、上記フィルタ部材1を用いて工程Aを実施する方法について説明する。
【0069】
被処理液を、フィルタ部材1の流入口6から供給する。被処理液の供給は、フィルタ部材1と連通する管路に配置されたポンプを用いて行ってもよく、被処理液の重力による落下を利用して行ってもよい。
フィルタ部材1に供給された被処理液は、カートリッジ3に内包されているペーパー2を通過する。このとき、被処理液に含まれる対象金属がペーパー2を構成する原糸体に吸着され、被処理液から対象金属が除去される。
ペーパー2により対象金属の含有量が低減した処理済みの被処理液は、流出口7を通してフィルタ部材1から排出される。
【0070】
工程Aにおいて、フィルタ部材1に供給される被処理液の供給量が、予め設定した閾値を超えた場合、被処理液の供給を停止し、ペーパー2を内包するカートリッジ3をハウジング5から取り外して、未使用のペーパー2を内包する新たなカートリッジ3をハウジング5に設置する交換工程を実施する。
このように、上記のフィルタ部材1を用いる本方法では、カートリッジ3を交換することにより、金属蓄積量が飽和状態に近づいたペーパー2と未使用のペーパー2とを交換できるため、対象金属が蓄積した原糸体と新鮮な原糸体との交換をより簡易に実施できる。
【0071】
フィルタ部材1に供給される被処理液の温度、流量および供給圧力については、工程Aにおける本ペーパーに接触させる被処理液の温度、流量および供給圧力として記載したものと同じであってよい。
【0072】
本発明に係るフィルタ部材は、上記で説明したフィルタ部材1が備える構成に制限されず、上記以外の構成を有していてもよい。
【0073】
図1に示すフィルタ部材1では、4枚のペーパー2を有しているが、フィルタ部材が有する本ペーパーの枚数は制限されず、本ペーパーを1枚のみ有していてもよく、本ペーパーを2枚以上有していてもよい。フィルタ部材による被処理液の処理性能がより優れる点で、本ペーパーの枚数は2枚以上が好ましく、10枚以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100枚以下が多い。
また、
図1に示すフィルタ部材1が有するペーパー2は平板状の形状を有しているが、本ペーパーは、ハウジングおよび/またはカートリッジの形状並びに被処理液の流通方向に対応して、プリーツ状、らせん状および中空円筒状等の形状を有していてもよい。
【0074】
図1に示すフィルタ部材1は、ペーパー2と隔壁4とが1対1で互い違いに配置されているが、フィルタ部材が有する隔壁の枚数は、本ペーパーの枚数に応じて適宜選択でき、1枚のみであってもよく、2枚以上であってもよい。また、隔壁の枚数は、本ペーパーの枚数を超えないことが好ましい。
場合により、フィルタ部材は隔壁を有していなくてもよい。
【0075】
図1に示すフィルタ部材1において、ペーパー2はカートリッジ3に収容されているが、本ペーパーがカートリッジに収容されていない態様であってもよい。この場合、本ペーパーは、ハウジングに保持されており、対象金属が蓄積した本ペーパーの交換は、ハウジングから本ペーパーを直接取り出すことにより、行われる。
また、本発明に係るフィルタ部材は、本ペーパーのみで構成されていてもよい。
【0076】
〔金属回収装置〕
次に、本方法に使用できる装置について、
図2を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明に係る金属回収装置の構成の一例を示す模式図である。
図2に示す装置10は、貯留槽12と、管路14と、フィルタ部材1と、三方弁16と、排出口18と、返送路20とを備える。
【0077】
貯留槽12は、被処理液を貯留する機能を有する容器である。貯留槽12は、工程Aに使用する被処理液を貯留槽12の内部に供給する供給口(図示しない)を有する。
貯留槽12の形状は特に制限されず、扁平状、管状および箱状等の形状を有する容器が使用できる。
【0078】
管路14は、装置10が備える各部材と連通して、その内部において被処理液を移送する機能を有する。管路14は、貯留槽12とフィルタ部材1とを接続する管路14a、フィルタ部材1と三方弁16とを接続する管路14b、および、三方弁16と排出口18とを接続する管路14cによって構成されている。
【0079】
フィルタ部材1は、管路14上に配置されている部材である。フィルタ部材1について、詳しくは上述の通りであり、ペーパー2(
図2には表示しない)を内包するカートリッジ3(
図2には表示しない)がフィルタ部材1から着脱可能に収納されている。
【0080】
排出口18は、フィルタ部材1を通過して対象金属が除去された処理済みの被処理液を排出するために設けられ、排出口18は、処理済みの被処理液を充填するタンク(図示しない)に接続されている。
【0081】
返送路20は、三方弁16と貯留槽12とを接続する部材であり、被処理液は返送路20を通して、三方弁16から貯留槽12に返送される。三方弁16は、排出口18および返送路20のそれぞれに送出する被処理液の流量を制御する機能を有する。
装置10は、返送路20を備えることにより、フィルタ部材1を通過した被処理液をフィルタ部材1の上流側に返送して、フィルタ部材1に再度通過させる循環ろ過を行うことができる。
【0082】
管路14および返送路20には、三方弁16以外に、被処理液の流量を調整する機能を有する調整手段(図示しない)が設けられている。このような調整手段としては、例えば、開閉弁、自動開閉バルブ、ジョイント、カップリングおよび三叉分岐コックが挙げられる。
また、管路14および返送路20には、被処理液を移送する機能を有するポンプ(図示しない)が設けられている。ポンプを設ける位置は特に制限されないが、フィルタ部材1の上流側に少なくとも1つのポンプを設けることが好ましい。また、使用するポンプの個数は、1つであってもよく、2つ以上を組み合わせてもよい。このようなポンプとしては、例えば、ペリスタポンプおよびデジタルポンプが挙げられる。
【0083】
装置10が備える各部材の構成材料としては、例えば、ガラス、金属(例えばステンレス等)、アクリル樹脂、プラスチックおよびポリカーボネート等の材料が挙げられる。貯留槽、管路および返送路等の部材の接液部は、被処理液に対して耐腐食性を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0084】
以下、上記装置10を用いて工程Aを実施する方法について説明する。
【0085】
貯留槽12に貯留された被処理液を、管路14aを通してフィルタ部材1へと送出する。被処理液の移送は、管路14に配置されたポンプ(図示しない)を用いて行われる。
フィルタ部材1に供給された被処理液は、フィルタ部材を用いる工程Aについて既に説明した通り、カートリッジ3に内包されているペーパー2を通過する。その結果、被処理液に含まれる対象金属がペーパー2を構成する原糸体に吸着され、被処理液から対象金属が除去される。
フィルタ部材1により処理された被処理液は、フィルタ部材1から管路14bに排出され、三方弁16に送られる。
【0086】
三方弁16では、フィルタ部材1を通過した被処理液について、排出口18から装置外に排出する被処理液の流量、および、返送路20に導入して循環ろ過を行う被処理液の流量が制御される。フィルタ部材1を通過した被処理液は、その一部または全部が排出口18から排出されてもよいし、また、その一部または全部が返送路20に導入されてもよい。また、三方弁16は、被処理液の排出口18からの排出および返送路20への導入の両者を停止してもよい。
フィルタ部材1を通過した被処理液を返送路20に導入して循環ろ過を行うことにより、被処理液を繰り返しフィルタ部材1に通過させ、被処理液から回収する対象金属の回収量を増やすことができる。
循環ろ過の繰返し数、即ち、被処理液をフィルタ部材1に通過させる回数は、被処理液の組成、本ペーパーの対象金属に対する蓄積能、および、金属回収処理の効率等の要件に基づいて、適宜設定される。
【0087】
工程Aにおいて、フィルタ部材1に供給される被処理液の供給量が、予め設定した閾値を超えた場合、貯留槽12からフィルタ部材1への被処理液の供給を停止し、ペーパー2を内包するカートリッジ3をハウジング5から取り外して、未使用のペーパー2を内包する新たなカートリッジ3をハウジング5に設置する交換工程を実施する。
このように、上記の装置10を用いる本方法では、カートリッジ3を交換することにより、金属蓄積量が飽和状態に近づいたペーパー2と未使用のペーパー2とを交換できるため、対象金属が蓄積した原糸体と新鮮な原糸体との交換をより簡易に実施できる。
【0088】
一方、三方弁16から排出口18に移送された被処理液は、排出口18を経由して廃液タンク等の装置外の容器に排出される。
【0089】
なお、本発明に係る金属回収装置は、上記で説明した装置10が備える構成に制限されず、上記以外の構成を有していてもよい。
【0090】
図2に示す装置10では、1つのフィルタ部材1のみを備えているが、装置は、複数のフィルタ部材を備えていてもよい。その場合、装置が備える複数のフィルタ部材は、直列に配置されていてもよく、並列に配置されていてもよい。
複数のフィルタ部材を用いる場合、各フィルタ部材における本ペーパーの枚数等の構成は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0091】
図2に示す装置10では、フィルタ部材1から排出された被処理液を貯留槽12に返送可能な構成としているが、装置は、三方弁16および返送路20を備えず、被処理液のフィルタ部材1を1回のみ通過させる構成を有していてもよい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0093】
[実施例1:本ペーパーの製造]
特許第5429740号公報の実施例1に記載の方法に従って、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica Hedw.)の原糸体が懸濁してなる懸濁液を調製した。即ち、野外より採集したヒョウタンゴケの胞子体から胞子を播種し、単一胞子由来の原糸体を単離した後、原糸体を液体通気培養法により培養し、培養液中で原糸体を増殖させた。
次いで、原糸体を含有する培養液をネットに注ぎ入れることにより、培養液と原糸体を固液分離し、原糸体を含むスラリーを採取した。採取された原糸体を含むスラリーに水道水を添加して、得られた混合液をミキサーにかけて、原糸体が懸濁してなる紙料を調製した。紙料における原糸体の含有量は、0.6g/Lであった。
【0094】
上記の方法で調製された紙料を、手すき機(株式会社アーテック製)を用いて湿式抄紙により抄紙して、湿紙を作製した。
作製された湿紙を2枚のペーパータオル(日本製紙クレシア社製「コンフォートサービスタオル」)に挟んだ状態でプレート上に配置した後、更に重石を乗せることにより、0.3kPaの圧力で湿紙を加圧した。上記の加圧状態を維持しながら、温度23℃の環境下、湿紙を1週間乾燥させることにより、本発明に係る原糸体からなるペーパーを製造した。
【0095】
製造されたペーパーの各物性を、上記の方法に従って測定した。測定結果を以下に示す。
・サイズ:縦10cm×横15cm
・面積あたりの原糸体の乾燥質量:26.7g/m2
・平均厚さ:40μm
・厚さの標準偏差σ:3.1μm
・ペーパーの全質量に対する原糸体の含有量:100質量%
【0096】
[実施例2:金属回収試験]
被処理液として、金の含有量が50質量ppmである塩化金酸(HAuCl4)溶液(pH1.5)を準備した。
上記の方法で製造されたペーパーの外周部を保持部材で保持し、保持されたペーパーに上記被処理液を通過させた。ここで、ペーパーを通過する被処理液の流量が40L/分/m2になるようにペーパーに対して被処理液を供給した。供給した被処理液の総量は400mLであった。
【0097】
被処理液を通過させたペーパーに王水(塩酸:硝酸=3:1)を添加した後、マイクロウエーブ(Perkin Elmer MultiWave-3000)を用いて湿式分解し、分散液を得た。得られた分散液を定容後、ろ過して得られたろ液を測定サンプルとして、ICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)による定量分析を実施した。
定量分析の結果、本実施例で製造された原糸体からなるペーパーは、特許第5429740号公報の実施例2に記載の方法に従って、原糸体の懸濁液を使用して金属回収試験を行った場合と同程度の金属蓄積能(原糸体の乾燥質量に対する金含有量)を有することが明らかとなった。
【0098】
また、実施例1で製造されたペーパーを使用して、各種金属を含有する溶液から金属を回収する金属回収試験を行った。
その結果、本実施例で製造された原糸体からなるペーパーは、金以外の金属に対しても、原糸体の懸濁液を使用して金属回収試験を行った場合と同程度の金属蓄積能(原糸体の乾燥質量に対する金属含有量)を有することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0099】
1 フィルタ部材
2 ペーパー
3 カートリッジ
4 隔壁
5 ハウジング
6 流入口
7 流出口
10 装置
12 貯留槽
14,14a,14b,14c 管路
16 三方弁
18 排出口
20 返送路