(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】プラスチック廃材を利用したプラスチック製容器用蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240924BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240924BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240924BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240924BHJP
C08L 59/00 20060101ALI20240924BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240924BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C08L23/06
C08L23/12
C08L23/08
C08L59/00
C08L67/02
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2021010665
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 篤史
(72)【発明者】
【氏名】落合 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 明日子
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261751(JP,A)
【文献】特開2005-305981(JP,A)
【文献】特開2001-246621(JP,A)
【文献】特開2001-220473(JP,A)
【文献】特開2004-204210(JP,A)
【文献】特開2009-030062(JP,A)
【文献】国際公開第1994/007946(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0031837(US,A1)
【文献】国際公開第2020/221756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
C08L 23/06
C08L 23/12
C08L 23/08
C08L 59/00
C08L 67/02
B29C 45/00
B29B 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック廃材を含むプラスチック原料を射出成型することにより得られる
プラスチック製容器用蓋材であって、
前記プラスチック廃材は、主材料として、ポリエチレン及び/又はポリプロ
ピレンを含み、副材料とし
て、ポリアセタール樹脂を含み、
前記プラスチック原料は、添加樹脂として、ポリエチレン及び/またはオレフィン系熱可塑性エラストマー
から選ばれる1種以上を、前記プラスチック廃材100重量%に対し10重量%以上30重量%未満含み、
落下試験(5℃、高さ70cmから落下、試料数10点)時の割れの発生がゼロであることを特徴とするプラスチック製容器用蓋材。
【請求項2】
請求項
1に記載のプラスチック製容器用蓋材であって、
前記容器用蓋材を容器に嵌着したときの抜け荷重(37℃)が50N以上であることを特徴とするプラスチック製容器用蓋材。
【請求項3】
請求項1に記載のプラスチック製容器用蓋材であって、
前記副材料は、ポリアセタール樹脂及びポリブチルテレフタレートを含むことを特徴とするプラスチック製容器用蓋材。
【請求項4】
請求項
1または3に記載のプラスチック製容器用蓋材であって、
前記プラスチック廃材における前記主材料の割合は70重量%以上90重量%以下、前記副材料の割合は10重量%以上30重量%以下であることを特徴とするプラスチック製容器用蓋材。
【請求項5】
請求項
1に記載のプラスチック製容器用蓋材であって、
前記添加樹脂が、メタロセンポリエチレン及び/またはメタロセンプラストマーであることを特徴とするプラスチック製容器用蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製容器や容器用蓋材などのプラスチック成型品に関し、特にプラスチック廃材を利用したプラスチック成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、容器や包装のリサイクルが進み、プラスチック成型品についても、製造工程で複製される廃材(プレコンシューマ材料)や、消費者が使用した後に回収された材料(ポストコンシューマ材料)などをリサイクルする試みが広く浸透しつつある。リサイクルには、廃棄プラスチックを溶かしてペレット化し、再びプラスチック材料として使用するマテリアルリサイクルや、廃棄プラスチックに化学的処理を施し、化学原料として使用するケミカルリサイクルなどがあるが、このうちマテリアルリサイクルは、環境への負荷が少なく且つ安価で利用効率が高いという観点から有望なリサイクル方法である。
【0003】
しかし、プラスチック製品の材料は一様ではなく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系材料や、ポリスチレン等のエステル系材料、さらにはポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックと称される機械的強度の高い材料など、種々の材料があり、マテリアルリサイクルに適した材料もあれば、マテリアルリサイクルには適していない材料もある。マテリアルリサイクルは、廃材を構成するプラスチック原料がマテリアルリサイクルに適したものであれば、比較的容易に実現できるが、廃材として回収される材料には、マテリアルリサイクルに適していない材料が混入している場合も多々あるし、またプラスチック製品には、複数の材料やエラストマー等の複合資材を混合して成型した材料も多く、この場合、ペレット化して再利用したとしても、目的とするプラスチック成型品に求められる特性を満たさない可能性もある。
【0004】
即ちマテリアルリサイクルにおいては、再生されたプラスチック材料が、目的とするプラスチック製品に必要となる特性を満たすものでなければ、本来のリサイクルは実現できない。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリスチレン樹脂を含む再生プラスチックに対して、再生ゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、スチレンブタジエンスチレンブロックポリマー、スチレンイソプレンスチレンブロックポリマーなどの弾性高分子を、再生プラスチック50~99重量%に対し1~50重量%加えることで、再生されるプラスチック製品の耐衝撃性や可撓性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、廃材として回収されるプラスチック材料の多くは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)であるが、それよりは少ないものの一定量のポリアセタール(POM)やポリブチレンテレフタレート(PBT)がある。PEやPPに対し、POMやPBTを加えて、それをペレット化して成型用の再生プラスチック材料とした場合、成型は可能であるが、成型品の特性(物性)がPOMやPBTを加えていない再生プラスチックの成型品とは異なり、その用途に適しない場合があることがわかった。例えば、成型品として容器の蓋材を製造した場合、容器の蓋材には、容器に嵌めたときに容器から簡単に抜け落ちないこと、即ち適正な抜け荷重があり、且つ落とした時に割れないことなどが要求されるが、POMやPBTのような硬い樹脂を入れると、落下時に割れが生じやすく蓋材としては不適である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、容器や容器用蓋材に適した廃プラスチック利用の成型品を提供すること、特に、POMやPBT等を含むプラスチック廃材を用いて、所定の性能を満たす成型品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明のプラスチック成型品は、プラスチック廃材を含むプラスチック原料を射出成型することにより得られるプラスチック成型品であって、プラスチック廃材は、主材料として、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含み、副材料として、ポリブチルテレフタレート及び/又はポリアセタール樹脂を含み、プラスチック原料は、添加樹脂として、ポリエチレン及びオレフィン系熱可塑性エラストマー()を含むことを特徴とする。添加樹脂として、特に、メタロセンプラストマー及び/またはメタロセンポリエチレンが好ましい。
【0010】
また本発明のプラスチック製容器用蓋材は、プラスチック廃材を含むプラスチック原料を射出成型することにより得られるプラスチック製容器用蓋材であって、プラスチック廃材は、主材料として、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含み、副材料として、ポリブチルテレフタレート及び/又はポリアセタール樹脂を含み、プラスチック原料は、さらに添加樹脂を含み、落下試験(5℃、高さ70cmから落下、試料数10点)時の割れの発生回数がゼロであることを特徴とする。なお、本落下試験における落下高さ70cmは、一般的な人の腰の高さやプラスチック製容器が置かれる台などの平均的な高さを基準としたものである。また温度は、室温よりも厳しい温度として冬季の温度5℃を設定している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主材料として、ポリエチレン及び/またはポリプロピレンを含み、副材料として、ポリブチルテレフタレート及び/またはポリアセタール樹脂を含むプラスチック廃材を利用して、柔軟性や硬度のバランスが取れたプラスチック成型品を提供することができる。特に蓋材に要求される性能を備えたプラスチック成型品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例で作製した蓋材の構造を示す図で、上側は蓋材の断面図、下側は蓋の開口側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のプラスチック成型品及び蓋材の実施形態を説明する。
【0014】
本発明のプラスチック成型品(蓋材を含む)は、プラスチック原料として、プラスチック廃材(リサイクル材料)を用い、これに添加樹脂を添加して射出成型により製造したものである。
【0015】
プラスチック廃材は、使用後のプラスチック製品を回収したもの及びプラスチック成型品を製造する工程で、射出成型時に成型品を型から外した時に残物として残る廃材を含み、主材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの混合物を含む。また副材料として、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンフタレートなどのエンジニアリング・プラスチック及びこれらの混合物を含む。
【0016】
混合物におけるPEとPPとの割合、及びPOMとPBTとの割合は、特に限定されないが、主材料に対する副材料の割合は、重量比で70:30~90:10が好ましく、副材料が30重量%未満であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。副材料の量が30重量%を超えた場合には、衝撃吸収性が低下し、添加樹脂を添加しても、低温下において落下等衝撃に対し割れを生じやすくなる。
【0017】
添加樹脂としては、ポリエチレンやオレフィン系エラストマーを用いることが好ましく、LDPE、LLDPEやそのαオレフィン重合体がより好ましい。特にメタロセン触媒により合成したポリエチレン(メタロセン系ポリエチレン)及びメタロセン触媒により、ブテン-1、ヘキセン-1、4メチルペンテン-1などのαオレフィンとポリエチレンとを共重合したポリエチレン・αオレフィン共重合体(メタロセンプラストマー)が好ましい。メタロセン系ポリエチレンやメタロセン系プラストマーは、分岐が少なく、通常のポリエチレン(LDPE)に比べ柔軟性や剛性に優れ、添加樹脂として加えることで、上述した機械的強度の高いエンジニアリング・プラスチックを副材料として含むプラスチック廃材に対し、耐衝撃性を改善することができる。但し、添加樹脂の添加量が多すぎると、逆に衝撃時の割れが発生しやすくなる。またプラスチック成型品が、容器の蓋材である場合、蓋を持った状態で容器から外れないこと、即ち抜け荷重が高いことが要求されるが、添加樹脂が30重量%を超えると抜け荷重が低下する傾向がある。
【0018】
従って添加樹脂の添加量としては、プラスチック廃材100重量%に対し、30重量%を超えないことが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。また添加量の下限としては、10重量%以上が好ましく、10重量%を超えることがより好ましい。
【0019】
本発明のプラスチック成型品は、基本的には、プラスチック材料として、上述したプラスチック廃材と添加樹脂とを用いるものであるが、リサイクルプラスチック以外のプラスチック材料や、PE、PP以外の樹脂(例えばPA(ナイロン)や、SBC(スチレン系熱可塑性エラストマー)などを含んでいてもよい。
さらに公知の顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、などの添加材を加えてもよい。
【0020】
本発明のプラスチック成型品は、プラスチック廃材から、樹脂の種類ごとに分別したプラスチック材料(プラスチック廃材)を粉砕機(例えば、樹脂だんごプレッシャー)で粉砕し、添加樹脂ととともに通常の射出成型機に供給する。プラスチック廃材は、粉砕後に、溶融してペレット化してもよい。またプラスチック廃材は、PPとPEとを分別しない形で供給される場合もあり、そのようなプラスチック廃材も使用することができる。粒状(粉状を含む)或いはペレット化したプラスチック廃材に、必要に応じて添加物を加え、通常の射出成型機に供給する。射出成型の条件は、成型品の形状や構造によって異なるが、通常PEやPPの射出成型条件と同様の条件で成型することができる。
【0021】
例えば、成型品が容器の蓋材等の比較的小さな部材である場合には、型温60℃、保圧30~50MPa 等の条件で行い、サイクルタイム15~30秒/セットで射出成型品が得られる。
【0022】
本発明のプラスチック成型品は、特性の異なるプラスチック廃材と添加樹脂とを用いて成型することで、特性の異なるプラスチックだけを配合した場合に比べ、PPやPE単独で用いた製品と比べて特性の劣らない耐衝撃性に優れた成型品を提供することができる。特にプラスチック成型品が、容器の蓋材である場合には、蓋材に求められる適正な抜け荷重を持つ製品が得られる。抜け荷重とは、容器に蓋材を嵌合した状態で、外力によって容器と蓋材との嵌合が外れる際に要する荷重を意味し、蓋材を持っただけで容器から外れることなく、且つ適正な力を加えることで容器から外れることができるために、容器との関係で適正な抜け荷重が求められる。
【0023】
一例として、
図1に示すように、内周面に突起11が設けられ、この突起11を容器の口部外周に形成された凹部に係合させて嵌合する構造の蓋材10(直径:34.8mm、高さ:34.8mm、肉厚:1.3mm、重さ:約3.5g)においては、蓋材を容器に嵌合した状態で、容器を下側にして固定し、蓋材を所定の引き上げ速度(200mm/分)で引き上げたときに、蓋材が容器から抜ける際の荷重(抜け荷重)が50N以上、70N以下であることが望ましい。これにより、容器と内容物との合計重量が250g程度の容器において、蓋材のみを持って容器を持ち上げても、容易に抜け落ちることがない蓋材を提供することができる。
【0024】
また耐衝撃性に優れていることから、通常の使用状況で物が当たったり落下するなどの衝撃を受けても、割れたりひびが入ることがない。具体的には、上記の構造の蓋材は、低温下(5℃)において、70cmの高さから床に落下した場合にも、試料数10点における割れの発生回数がゼロである。
【0025】
上述したように、本発明によれば、複数種類のプラスチック廃材を利用して、特性の良好なプラスチック製品、特に容器用蓋材を提供することができる。これによりPEやPPのみをリサクイルする場合に比べ、プラスチック廃材のリサイクル効率を高め、廃材の廃棄量を大幅に低減することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明のプラスチック成型品を、容器用蓋材で実施した実施例を説明する。以下の説明において、特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味するものとする。
【0027】
1.蓋材の製造
<実施例1>
プラスチック廃材として、リサイクルされた成型品及び射出成型時に生成された廃材を回収し、PEとPPとの混合材料(分別されていない材料):主材料Aと、PBTとPOMとの混合材料(分別されていない材料):副材料Bとをそれぞれ粉砕して粉状(粒状)とした後、材料Aを80%、材料Bを20%混合し、射出成型用のプラスチック原料とした。
【0028】
また、メタロセンポリエチレン(商品名:ハーモレックス:日本ポリエチレン社製)とメタロセン系ポリエチレン(商品名:カーネル、日本ポリエチレン社製)とを重量比90:10で混合し、これを添加樹脂Cとして、プラスチック廃材100%に対し10%添加した。
【0029】
添加樹脂を加えたプラスチック原料を、型温:60℃、サイクル時間:16.4秒/セット、保圧:40MPaの成型条件で射出成型し、
図1に示す形状の容器用蓋材(直径:34.8mm、高さ:34.8mm、肉厚:1.3mm、重さ:約3.5g)を作製した。この蓋材は、容器に対し、内周面にある突起が容器の凹部に係合することで容器に嵌合する。
【0030】
<実施例2~4>
添加材の添加割合を、表1に示すように異ならせて、それ以外は実施例1と同様にして、射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。
【表1】
【0031】
<実施例5>
添加剤の添加割合を、プラスチック廃材100%に対し30%として、実施例1と同様に射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。但し、射出成型時の条件は、サイクル時間:34.5秒、保圧:45MPaとした。
【0032】
<実施例6>
実施例1と同じプラスチック廃材(主材料A+副材料B)を用い、このプラスチック廃材100%に対し、添加樹脂Cとして、メタロセン系ポリエチレン(商品名:ハーモレックス、日本ポリエチレン社製)のみを10%添加し、実施例1と同様に射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。
【0033】
<実施例7>
実施例1と同じプラスチック廃材(主材料A+副材料B)を用い、このプラスチック廃材100%に対し、添加樹脂Cとして、メタロセンプラストマー(商品名:カーネル、日本ポリエチレン社製)のみを10%添加し、実施例1と同様に射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。
【0034】
<比較例1>
リサイクルPP90%とPOM10%とを混合したプラスチック廃材100%を用いて、添加樹脂を添加することなく、射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。射出成型時の条件は、サイクル時間:25.8秒/セット、保圧:35MPaとした。
【0035】
<比較例2>
実施例1と同様のプラスチック廃材を用いて、添加剤を添加することなく、射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。射出成型時の条件は、サイクル時間:25.8秒/セット、保圧:35MPaとした。
【0036】
<比較例3>
主材料Aと副材料Bの割合を、主材料A:70%、副材料B:30%に変えて、それ以外は実施例1と同様にして射出成型を行い、容器用蓋材を作製した。
【0037】
<参考例1、参考例2>
主材料Aのみを用いて、射出成型により容器用蓋材を作製した。
【0038】
2.成型品の評価
実施例1~6及び比較例1~3で作製した容器用蓋材に対し、溶剤耐性の目視評価、抜け荷重評価、及び落下試験を行った。また参考例1,2については、抜け荷重評価及び落下試験を行った。
【0039】
溶剤耐性の目視評価は、アルコールを含侵したウェスで成型品の表面を拭く塗布試験(塗布後24時間放置)と、アルコールを入れた容器に3日間浸漬する浸漬試験を行い、外観を目視で観察し、「シルバー」(表面の曇度)の発生を確認した。結果は10個の試料で、1個でもシルバーが発生したものは「×」、発生しなかった場合は「〇」とした。
【0040】
落下試験は、室温(RT)及び5℃の環境下において、成型品を床(Pタイル)から50cm、60cm及び70cmの高さから倒立状態で自然落下により落下させて、その際、蓋材に割れ(クラック)が生じるか否かを目視で観察した。結果は、10個の試料のうち1個も割れがない場合を「〇」、全部ではないが1個以上の割れがあった場合を「△」、8割以上に割れがあった場合を「×」とした。
【0041】
抜け荷重は、室温及び37℃の環境下において、蓋材を容器に嵌合した状態で、容器を下側にして固定し、蓋材を引き上げ速度200mm/分で引き上げたときに、蓋材が容器から抜ける際の荷重を測定した。なお容器の使用時に蓋だけ持って容器を持ち上げたり、移動したりする際に、蓋が容易に抜けてしまわないことが重要であり、抜け荷重の容器製造業界における標準(参考規格)として、高温環境(37℃)においても50N以上が適当であるとされている。
【0042】
【0043】
参考例1、2に示すように、主材料であるPP(参考例1)或いはPP+PE(参考例2)のみを用いている場合には、落下試験及び抜け荷重ともに優れた結果を示すが、これに対し、比較例1、比較例2に示すように、10%以上の副材料(POMやPBT)を混合した場合には、抜け荷重が低下するとともに落下時の割れを生じやすくなることがわかる。
【0044】
一方、主材料と副材料とを混合し且つ添加樹脂を添加した実施例1~7の成型品は、いずれも比較例1、2に比べ良好な抜け荷重及び落下試験の結果が得られた。
【0045】
具体的には、落下試験の結果、室温においては、比較例3以外は、いずれも割れは発生しなかったが、5℃では、比較例2、3では60cmからの落下で割れが発生した。また添加樹脂の量が10%の実施例1では70cmからの落下試験で10回のうち2~3回に割れが発生する場合があり、添加樹脂の量は10%を超えることが好ましいことがわかった。
【0046】
抜け荷重(37℃)については、実施例5以外の実施例はいずれも50N以上の高い値(参考規格以上)を示したが、比較例1では、約42N、比較例2、3ともに40N以下であった。また添加樹脂の添加量が30%の実施例5も抜け荷重が40N以下であり、蓋材とする場合の添加樹脂の添加量は30%を超えない量とすることが好ましいことがわかった。
【0047】
また実施例1と比較例3との比較から、添加樹脂の添加量を同じ(10%)にしても、副材料(PBT/POM)の量が多いと、落下試験及び抜け荷重ともに、蓋材としての要求性能が不十分であり、廃材中のPBTやPOMの量は30%未満が好ましいことがわかった。
【0048】
さらに実施例1~7の成型品は、いずれもアルコールに対し溶剤耐性が良好であることが確認された。一方、比較例1、2の成型品は、表2に示すように、蓋材の天面に「シルバー」が確認された。比較例2及び比較例3では、全プラスチック材料におけるPBTが多いため、PBTの乾燥不足が原因で「シルバー」が発生したものと考えられる。
【符号の説明】
【0049】
10:蓋材、11:突起