(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】業務管理装置及び業務管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240924BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2021105074
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】523220905
【氏名又は名称】Casley Deep Innovations株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】砂川 和雅
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-064245(JP,A)
【文献】特開2021-072093(JP,A)
【文献】特開2011-054085(JP,A)
【文献】特開2006-235948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
前記リスク度合算出手段は、
労働作業の予定時間と、該予定時間に対応付けられた前記実績時間とに基づいて、該予定時間を該実績時間が超過した時間が多いほど、前記リスク度合いを高く算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項2】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
前記リスク度合算出手段は、
1日あたりの前記実績時間が規定時間を上回る日が、所定期間中に所定日数以上ある場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項3】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
前記リスク度合算出手段は、
1日あたりの前記実績時間が規定時間を下回る日が、所定期間中に所定日数以上ある場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項4】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者により所定日数以上連続して同一の労働作業が実施された場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項5】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者により所定日数の間に所定数以上の異なる労働作業が実施された場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項6】
発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、
所定の技術毎に、技術難易度に応じたリスク度合いが予め対応付けて記憶されており、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者による労働作業に用いられる技術に対応付けられた前記リスク度合いを算出すること、
を特徴とす
る業務管理装置。
【請求項7】
コンピュータ
を、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ
、
前記リスク度合算出手段は、
1日あたりの前記実績時間が規定時間を上回る日が、所定期間中に所定日数以上ある場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出する、
業務管理プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ、
前記リスク度合算出手段は、
1日あたりの前記実績時間が規定時間を上回る日が、所定期間中に所定日数以上ある場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出する、
業務管理プログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ、
前記リスク度合算出手段は、
1日あたりの前記実績時間が規定時間を下回る日が、所定期間中に所定日数以上ある場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出する、業務管理プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者により所定日数以上連続して同一の労働作業が実施された場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出する、業務管理プログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者により所定日数の間に所定数以上の異なる労働作業が実施された場合、該所定日数が多いほど前記リスク度合いを高く算出する、業務管理プログラム。
【請求項12】
コンピュータを、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、
して機能させ、
所定の技術毎に、技術難易度に応じたリスク度合いが予め対応付けて記憶されており、
前記リスク度合算出手段は、
請負労働者による労働作業に用いられる技術に対応付けられた前記リスク度合いを算出する、業務管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務管理装置及び業務管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SES(System Engineering Service)は、近年特にIT業界においてよく利用される契約形態の一つである。例えば企業のシステム担当者がシステム開発や運営のためにITエンジニアを雇用したいと考える場合に、エンジニアを抱える企業(請負事業主)に依頼をして、システム担当者が所属する会社にそのエンジニア(請負労働者)の技術力や労働力を提供してもらう。
【0003】
SES契約は、派遣契約とは業務の命令系統や契約の内容に異なる点があり、例えば企業のエンジニアは自身が所属する請負事業主企業の指示に従って業務を行うこととなっている。また、エンジニアの勤怠管理はエンジニアが所属する請負事業主企業が行う点、エンジニアの報酬は技技術力や成果物等に関係なく、勤怠管理に基づく労働時間に対して対価が支払われる点も特徴である。
【0004】
このような背景の下、近年、クラウド型SES業務管理ツールが普及し始めている。SES業務管理ツールにおいては、例えば請負事業主企業・エンジニアの情報管理、見積・注文業務、SES契約業務、エンジニアの勤怠管理、発注者企業への請求業務、入出金処理といった一連のSES業務管理を、一元的に行うことが可能である。
【0005】
これに関する技術として、例えば特許文献1には、派遣先と派遣元との間の契約条件を示す契約情報と、派遣先での派遣社員の勤務実績を示す勤務実績情報とに基づいて、派遣社員の派遣に係る派遣元から派遣先への請求額を算出し、算出された請求額に基づいて派遣社員に係る請求書情報を生成することが記載されている。
また、例えば特許文献2には、企業・事業所等の派遣先30に派遣又は出向しているスタッフSの業務及び労務を管理するシステムであって、ネットワーク20を介して相互通信可能に接続した管理サーバー10と、スタッフ端末31,32とからなり、前記管理サーバー10は、前記スタッフ端末31,32からスタッフSの勤怠を入力する勤怠情報入力手段1と、入力された勤怠情報を管理する勤怠管理手段2と、前記スタッフ端末31,32からスタッフSの業務実績を入力する業務情報入力手段3と、入力された業務情報を管理する業務管理手段4と、前記勤怠情報及び業務情報を記憶する記憶手段を有する業務・労務管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-235948号公報
【文献】特開2007-004360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、請負事業主企業からは、例えば資金繰り等の理由により、発注者企業から将来支払われるべき請求額を先払い(前払い)してほしいとの要望がある。しかしながら、一方の支払者側からすると現在時点で未履行契約に対する支払いは一定のリスクを伴うという問題がある。このため、支払者側が先払いの要望に応じるとしても、先払いに係るリスクを適切に評価し、その先払い額を適切に設定する必要がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、一つの側面では、SES業務管理システムにおいて、先払いに係るリスクに応じた与信枠を設定し、請負事業主に対して一部先払い資金を融通するための金融機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る業務管理システムは、発注者から請負事業主に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置であって、発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段と、請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間を記憶する実績管理記憶手段と、前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額を算出する第1金額算出手段と、先払いに係るリスク度合いを算出するリスク度合算出手段と、前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額を算出する第2金額算出手段と、を有し、前記リスク度合算出手段は、労働作業の予定時間と、該予定時間に対応付けられた前記実績時間とに基づいて、該予定時間を該実績時間が超過した時間が多いほど、前記リスク度合いを高く算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施の形態によれば、SES業務管理システムにおいて、先払いに係るリスクに応じた与信枠を設定し、請負事業主に対して一部先払い資金を融通するための金融機能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るSES業務管理システムのネットワーク構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る管理サーバのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る管理サーバのソフトウェア構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るプロジェクト管理テーブル、プロジェクト・WBSテーブル及びパートナー管理テーブルのデータ例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る労働時間管理テーブルのデータ例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る実績工数管理テーブルのデータ例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る勤怠管理画面例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る工数管理画面例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る先払いリクエスト画面例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る先払い可能清算金額の算出処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
<システム構成>
(ネットワーク構成)
図1は、本実施形態に係るSES業務管理システムのネットワーク構成例を示す図である。
図1のSES業務管理システム100は、管理サーバ10、顧客端末20及びパートナー端末30を含み、ネットワーク50を介して接続されている。
【0014】
管理サーバ10は、いわゆるクラウド型SES業務管理サーバ装置である。顧客及びパートナーに対して、例えばエンジニア(労働者)の情報管理、見積・注文業務、SES契約業務、エンジニアの勤怠管理、発注者企業への請求業務、入出金処理といった一連のSES業務管理サービスを提供する。
【0015】
顧客端末20及びパートナー端末30は、例えばスマートフォン、タブレット端末又はパーソナルコンピュータなどであり、顧客及びパートナーが管理サーバ10によるSES業務管理サービスを利用するためのユーザ情報端末である。顧客端末20及びパートナー端末30には、管理サーバ10にアクセスするために、予め所定のアプリケーションプログラム(汎用ウェブブラウザや専用アプリ)がインストールされる。
【0016】
ネットワーク50は、有線、無線を含む通信ネットワークである。ネットワーク50は、例えば、インターネット、公衆回線網、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などを含む。
【0017】
ここで、管理者、顧客、パートナーとの関係について説明する。管理者は、管理サーバ10を運営管理し、顧客及びパートナーに対してクラウド型SES業務管理サービスを提供する運営管理会社である。
【0018】
顧客は、SES契約上の発注者企業である。顧客がシステム開発や運営のためにITエンジニアを雇用したいと考える場合に、パートナー(請負事業主企業)に依頼をして、パートナー企業所属のエンジニア(請負事業主企業と雇用関係を有する請負労働者)に技術力や労働力を提供してもらいながら、システム開発を行う。
【0019】
パートナーは、SES契約上の請負事業主企業である。顧客に技術力や労働力を提供する。なお請負事業主企業は、法人に限られるものではなく、例えば個人事業主(例えば個人エンジニア)を含む。またパートナーはSES契約(準委任契約)の法的要件を満たす必要があるため、パートナー側の責務として必ずエンジニアの勤怠管理を行う。
【0020】
(ハードウェア構成)
図2は、本実施形態に係る管理サーバのハードウェア構成例を示す図である。管理サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、及び通信装置15を有する。
【0021】
CPU11は、各種プログラムの実行や演算処理を行う。ROM12は、起動時に必要なプログラムなどが記憶されている。RAM13は、CPU11での処理を一時的に記憶したり、データを記憶したりする作業エリアである。HDD14は、各種データ及びプログラムを格納する。通信装置15は、ネットワーク50を介して他装置との通信を行う。
【0022】
(ソフトウェア構成)
図3は、本実施形態に係る管理サーバのソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ10は、主な機能部として、額面清算金額算出部101、リスク係数算出部102、先払い可能清算金額算出部103、先払い処理部104、及び記憶部105を有する。
【0023】
額面清算金額算出部101は、請負事業主と雇用関係を有する請負労働者から入力された請負労働者による労働作業の実績時間と、発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価とに基づいて、額面清算金額を算出する機能を有している。
【0024】
リスク係数算出部102は、先払いに係るリスク度合いを算出する機能を有している。
【0025】
先払い可能清算金額算出部103は、リスク度合いと額面清算金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な先払い可能清算金額を算出する機能を有している。
【0026】
先払い処理部104は、先払い可能清算金額を上限とする範囲内で、請負事業主に対して先払い清算希望金額の先払い処理を実行する機能を有している。
【0027】
なお、これら各機能部は、本発明に係る機能部であって、管理サーバ10がSES業務管理サービスを提供するための機能部を備えていることは言うまでもない。また各機能部は、管理サーバ10を構成するコンピュータのCPU、ROM、RAM等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラム及びアプリケーションプログラムによって実現されるものである。これらの機能部は、「手段」、「モジュール」、「ユニット」、又は「回路」に読替えてもよい。また、管理サーバ10における記憶部105の各テーブルは、ネットワーク50上の外部記憶装置に配置することも可能である。また、上記コンピュータプログラム及びアプリケーションプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に格納されていてもよい。
【0028】
(各種テーブル情報)
図4は、本実施形態に係るプロジェクト管理テーブル、プロジェクト・WBSテーブル及びパートナー管理テーブルのデータ例を示す図である。プロジェクト管理テーブルの情報は、例えばプロジェクト発足時にプロジェクト管理者等により登録される。プロジェクト管理テーブルは、例えば「発注者ID」、「プロジェクトコード」、「プロジェクト名」、「技術タグ」、「管理者コード」、「開始日」、「完了予定日」などのデータ項目を有する。
【0029】
「発注者ID」は、プロジェクトの発注者である顧客(発注者企業)毎に付番される固有の識別子を示す。「プロジェクトコード」は、プロジェクト毎に付番される固有の識別子を示す。「プロジェクト名」は、当プロジェクトに付されるプロジェクトの任意名称を示す。「技術タグ」は、当プロジェクトに関連する技術を示すタグ・キーワードを示す。例えばプロジェクト登録時に入力される。「管理者コード」は、当プロジェクトの管理者・リーダーのコードである。「開始日」及び「完了予定日」は、当プロジェクトの開始日及び完了予定日である。
【0030】
ここで「管理者コード」に関して、当該SES契約が顧客・パートナー間における直接委任契約の場合、プロジェクトの管理者を顧客自身が担うかパートナーが担うかに応じて「管理者コード」はこれら両者の何れかとなる。一方、当該SES契約が顧客・運営管理会社間における委任契約並びに運営管理会社・パートナー間における再委任契約の場合であって、プロジェクト管理全体を運営管理会社が担うという契約である場合は、「管理者コード」は運営管理会社を示す0000となる。なお後者の場合、一例として顧客がシステム企画やシステム上流工程を担当し、運営管理会社がプロジェクト進捗管理や工数管理、パートナーがシステム設計、プログラミング、テスト、エンジニアの勤怠管理といった役割を担う。
【0031】
また、プロジェクト・WBSテーブルは、例えば「プロジェクトコード」と紐付けられた「WBSコード」、「タスク名」、「パートナーID」、「予定工数」などのデータ項目を有する。例えばプロジェクト発足時、プロジェクト管理者は、プロジェクトの作業内容を各タスクに構造化・細分化し、プロジェクトのタスク毎に例えば「WBS(Work Breakdown Structure)コード」、「タスク名(作業名)」、タスク作業を行う作業者の「パートナーID」、タスク作業毎に要する「予定工数」を、プロジェクト・WBSテーブルに登録する。
【0032】
また、パートナー管理テーブルには、パートナーの情報が予め登録されており、例えば「パートナーID」、「パートナー名」、「所在地」、「担当者」、「時間単価(¥/H)」などのデータ項目を有する。「パートナーID」は、プロジェクトの被委託者であるパートナー(請負事業主企業)毎に付番される固有の識別子を示す。「パートナー名」は、パートナーの名称を示す。「担当者」は、パートナーの担当者を示す。パートナーが個人事業主の場合、「パートナー名」と「担当者」が同一の場合もある。「時間単価(¥/H)」は、顧客・パートナー間(直接委任契約)もしくは運営管理会社・パートナー間(再委任契約)で定められたパートナー毎の労働作業1時間当たりの時間単価を示す。上述したようにSES契約において、エンジニアの報酬は勤怠管理に基づく労働時間に対して対価が支払われる。
【0033】
図5は、本実施形態に係る労働時間管理(勤怠管理)テーブルのデータ例を示す図である。労働時間管理テーブルは、例えばプロジェクトに費やしたエンジニアの労働時間・稼働時間と紐付けるための「パートナーID」、「従業員ID」、「氏名」、「日付」、「曜日」、「勤怠」、「出勤時間」、「退勤時間」、「休憩」、「勤務時間」、「備考」などのデータ項目を有する。上述したように、SES契約上、パートナー側の責務として必ずエンジニアの勤怠管理を行うため、労働時間管理テーブルの情報は、例えば毎日エンジニア自身等により登録される。なお「パートナーID」は、プロジェクト毎に費やしたパートナー所属のエンジニアの労働時間と紐付けるために用いられる。
【0034】
図6は、本実施形態に係る実績工数管理テーブルのデータ例を示す図である。実績工数管理テーブルは、例えば「日付」、「パートナーID」、「プロジェクトコード」、「WBSコード」、「実績工数(H)」などのデータ項目を有する。実績工数管理テーブルの情報は、例えば毎日エンジニア自身等により、その日の作業内容及び作業時間の内訳が登録される。
【0035】
ここで、実績工数管理テーブルの情報は、例えば毎日エンジニア自身等により、労働時間管理テーブルと整合する形で登録される。例えば、当該エンジニアが7/2に9:00-18:00の8:00勤務であった場合、工数管理の入力に際し、勤務時間8時間の内訳として、例えばプロジェクトコード「P0001」のWBSコード「0001」に「実績工数(H)」が4時間、プロジェクトコード「P0002」のWBSコード「0001」に「実績工数(H)」が2時間といったように、プロジェクトに費やしたタスク作業の実績工数時間を、勤務時間を上限に登録する。なお、例えば当該エンジニアは請負事業主企業の従業員であるため、勤務時間8時間の内残り2時間はプロジェクトとは関係のない「本社業務」に従事する場合があり、勤務時間と各タスク作業時間合計が必ずしも一致しないこともある。
【0036】
<画面例>
(勤怠管理画面)
図7は、本実施形態に係る勤怠管理画面例を示す図である。例えばパートナー(パートナーID:BP0001)に所属するエンジニア(例えば一般太郎)は、毎日業務を終了すると、パートナー端末30を用いて管理サーバ10にアクセスし、その日の「出勤時間」「退勤時間」といった勤怠情報を入力する。これによりパートナー側の責務としてのエンジニアの勤怠管理が行われる。
【0037】
(工数管理画面)
図8は、本実施形態に係る工数管理画面例を示す図である。勤怠管理と同様の要領で、例えばパートナー(パートナーID:BP0001)に所属するエンジニア(例えば一般太郎)は、毎日業務を終了すると、パートナー端末30を用いて管理サーバ10にアクセスし、工数管理情報を入力する。上述したように工数管理情報は、プロジェクト(プロジェクトコード)のタスク作業(WBSコード)毎に、その作業時間(実績)が、勤怠情報と整合する形で入力される。
【0038】
「受託労働時間」は、当該エンジニアがプロジェクトのタスク作業のために費やした当月の労働時間の合計である。なお、「受託労働時間」は、プロジェクトコード別やWBSコード別のそれぞれで集計し表示することも可能である。パートナーはこの「受託労働時間」と「時間単価(¥/H)」(
図4のパートナー管理テーブル)とに基づいて、当月の請求書を作成する。
【0039】
(先払いリクエスト画面)
図9は、本実施形態に係る先払いリクエスト画面例を示す図である。パートナー(請負事業主企業)が、例えば資金繰り等の理由により、顧客(再委託の場合は運営管理会社)から将来支払われるべき請求額を先払い(前払い)してほしいと考える場合、パートナー端末30を用いて管理サーバ10にアクセスし、当先払いリクエスト画面から先払いのリクエスト申請を行うことが可能である。
【0040】
通常の場合、パートナーが請求書の発行後、例えば請求書の発行日から30日後に運営管理会社に入金され、その後、運営管理会社からパートナー口座に入金処理が行われる。このようにパートナーの請求書の発行~入金まで一定のタイムラグがあるため、パートナーはときに入金を早めたい、即ち先払いを要請したい場合がある。
【0041】
先払いのリクエスト申請を行うに際し、先払いリクエスト画面上、パートナーはまず先払いリクエストを求める「先払い要求先(発注者ID)」111を選択入力するとともに、「プロジェクトコード」112を選択入力する。次いで「先払い対象期間」113を選択入力する。先払い対象となる期間は、未だ支払いが済んでいない期間であるので、既に支払いが済んでいる期間は選択不可とするとよい。本例の先払い対象期間では、支払いが済んでいない今月分2021/7/1~7/20となっている。パートナーは「先払い要求先(発注者ID)」111、「プロジェクトコード」112及び「先払い対象期間」113を選択入力後、「計算」114を押下する。
【0042】
「計算」114が押下されると、画面上、「受託労働時間」115、「時間単価(¥/H)」116、「額面清算金額(A)」117、「リスク種別」118、「リスク係数」119、「控除額」120、「合計控除額(B)」121、「先払い可能清算金額:(A)-(B)」122が表示される。
【0043】
「受託労働時間」115は、「先払い対象期間」において、「プロジェクトコード」112で特定されるプロジェクトに、「パートナーID」で特定されるパートナー所属エンジニアが費やした合計労働時間(合計稼働時間)である。「時間単価(¥/H)」116は、「パートナーID」の労働作業の時間単価である。よって「額面清算金額(A)」117は、「受託労働時間」115と「時間単価(¥/H)」116とが乗算された値が算出される。
【0044】
具体的に、2021/7/1~7/20の間、現時点7/21において、エンジニアは当該プロジェクトのために60Hの労働時間を既に提供していることになる。つまり現時点で60Hは今月の請求分として確定している労働時間に、「時間単価(¥/H)」116を乗算した金額を、「額面清算金額(A)」117として算出することができる。
【0045】
その一方、支払者側からすると月中の現在時点での支払いは一定のリスクを伴うため、本実施形態においては、先払いに係るリスク分を「額面清算金額(A)」117から差し引くことで、その先払い額を適切に設定する。
【0046】
具体的に先払いに係るリスクに関して、「リスク種別」118毎に「リスク係数」119が設定されるとともに、「リスク係数」119に応じた「控除額」120が算出される。「リスク種別」118には、例えば「プロジェクトリスク」、「技術リスク」、「顧客クレジットリスク」があり、本例の場合には、それぞれのリスク度合いを示す「リスク係数」119が、10%、5%、3%となっている。「リスク係数」については詳しくは後述するが、それぞれの「リスク係数」119と「額面清算金額(A)」117とが乗算されることで、「リスク係数」119に応じた「控除額」120が、それぞれ¥36000、¥18000、¥10800と算出される。そして各々の「控除額」120の合計金額が「合計控除額(B)」121となる。
【0047】
実際に履行済みの労働時間に基づいて算出された「額面清算金額(A)」117から、リスク考慮分の「合計控除額(B)」121を除算した金額が、「先払い可能清算金額:(A)-(B)」122である。即ち、来支払われるべき請求額と支払い側のリスクとを考慮した「先払い可能清算金額:(A)-(B)」122が、パートナー(請負事業主企業)に対して先払い可能な清算金額(いわゆる与信枠)として算出される。
【0048】
パートナ(請負事業主企業)は、画面上で「先払い可能清算金額:(A)-(B)」122を参照し、当該金額を上限とする範囲内で「先払い清算希望金額」123を入力の上、「申請」124を押下する。パートナーから先払いリクエストがなされると、運営管理会社からパートナーに対して「先払い清算希望金額」の先払い処理が速やかに実行される。なお言うまでもなく、パートナーは次回の請求書では「先払い清算希望金額」123に相当する金額を差し引いて請求することになる。
【0049】
次いで本実施形態に係るリスク種別及びリスク係数について説明する。上述したように先払いに係るリスク種別には、例えば「プロジェクトリスク」、「技術リスク」、「顧客クレジットリスク」があり、リスク種別毎にリスクの大小に応じたリスク度合いを示すリスク係数(最小0~最大1)が設定される。
【0050】
(プロジェクトリスク)
プロジェクトの進捗が大幅に遅れれば、顧客からの支払いが遅れたり、支払い額が減額されるリスクが存在する。特に遅延原因がエンジニアにある場合、支払い額(請求額)に調整が入る可能性が高い。
【0051】
例えば
図4のプロジェクト管理テーブル及びプロジェクト・WBSテーブルを参照すると、プロジェクトはタスク毎に「予定工数(H)」が登録されている。また
図6の実績工数管理テーブルには、プロジェクトのタスク毎に「実績工数(H)」が登録されている。例えばプロジェクトにおいて「予定工数(H)」が40時間のタスク作業に、「実績工数(H)」に52時間を要している場合、「実績工数(H)」が「予定工数(H)」に対して12時間の時間超過である。
【0052】
よって、プロジェクトの(タスク毎の)超過時間aが少ないほど遅延はなく、多いほど遅延が大きいといえるため、リスク係数として、超過時間に応じたリスク係数を設定する。より具体的に、超過時間が小さいほどリスク係数を小さく、超過時間が大きいほどリスク係数を大きくなるように設定する。また超過時間は0時間未満の場合は、リスク係数は0としうる。
【0053】
また例えば、「実績工数(H)」/「予定工数(H)」によりプロジェクトのタスク毎の進捗度を測るとすると、その進捗度は1.3と算出され、プロジェクトの進捗が予定の1.3倍と大幅に遅れていることになる。この場合、納期遅延や人件費オーバー等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク(遅延期間における金利相当のリスク)、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0054】
よって、プロジェクトの(タスク毎の)進捗度が小さいほど遅延はなく、大きいほど遅延が大きいといえるため、リスク係数として、進捗度に応じたリスク係数を設定する。より具体的に、進捗度が小さいほどリスク係数を小さく、進捗度が大きいほどリスク係数を大きくなるように設定する。
【0055】
また、通常はエンジニアの1日の労働時間(勤務時間)が8Hであるところ、1日の労働時間が所定時間b(例えば12時間)を上回る日が、所定期間中(例えば1か月)に所定日数c(例えば10日)以上である場合、残業が続いていることから開発スケジュールに無理が生じていたり、プロジェクト作業に難航していることが推定される。このような場合、納品物の品質低下、荷重労働、納期遅延や人件費オーバー等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0056】
また、エンジニアが、所定日数c(例えば30日)以上連続して同一のタスク作業内容を実施している場合、当該タスク作業に難航していることが推定される。このような場合、納品物の品質低下、納期遅延や人件費オーバー等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0057】
また、1日の労働時間が所定時間b(例えば4時間)を下回る日が、所定日数c(例えば10日)以上である場合、上流工程に進捗遅延が発生しており、エンジニア担当工程の作業に着手できていないことが推定される。このような場合、納期遅延等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0058】
また、エンジニアが、所定日数c(例えば30日)の間に所定数d(例えば10)以上の異なるタスク作業内容を実施している場合、エンジニアが極めて散逸的に作業を実施している、即ち人が足りずパラレルで複数のタスク作業を掛け持ちしていることが推定される。このような場合、納品物の品質低下、納期遅延等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0059】
いずれの場合もa~dの値が高くなるほど、先払いに伴うリスクが高まるため、リスク係数として、これら値に応じてリスク係数を設定する。より具体的に、a~dの値が小さいほどリスク係数を小さく、進捗度が大きいほどリスク係数を大きくなるように設定する。
【0060】
(技術リスク)
例えば、比較的技術者が多く所定期間(例えば10年)以上の安定した開発実績のある技術(例えば伝統的な開発言語)を用いるプロジェクトは技術リスク(開発リスクともいう)が低いが、所定期間(例えば10年)未満の開発実績しかない技術は技術リスクがやや高い。また、技術者も少なく所定期間(例えば5年)未満の開発実績しかない技術(例えば新しい開発言語)は技術リスクが高い。また、安定した開発実績のある技術であっても、技術自体の難易度が高い技術は、相対的な技術リスクは高い。
【0061】
このように技術難易度が高い技術が用いられるプロジェクトの場合、納品物の品質低下、納期遅延や人件費オーバー等の理由で、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスクが存在する。
【0062】
よって、プロジェクトの(タスク毎の)技術リスクが小さいほど開発は順調であり、技術リスクが大きいほど開発が難航する可能性があるので、リスク係数として、技術リスクに応じたリスク係数を設定する。より具体的に、技術リスクが小さいほどリスク係数を小さく、技術リスクが大きいほどリスク係数を大きくなるように設定する。
【0063】
例えば
図4のプロジェクト管理テーブルを参照し、プロジェクトで用いられる開発言語を示す「技術タグ」と、予め技術タグ毎に定められたリスク係数とが対応付けられたDB(非図示)とから、今回のプロジェクトで用いられる「技術タグ」に応じたリスク係数を設定する。
【0064】
(顧客クレジットリスク)
一般の信用調査会社から取得される民間信用格付け、もしくは、運営管理会社による顧客過去支払い実績に基づく独自信用格付けに応じて、信用格付けが高いほどリスク係数を小さく、信用格付けが低いほどリスク係数を大きくなるように設定する。顧客の信用格付けが低い場合、顧客からの支払いが遅れるリスク、支払い額が減額されるリスク、支払額不払いのリスクが存在する。
【0065】
<情報処理>
図10は、本実施形態に係る先払い可能清算金額の算出処理を説明するフローチャートである。管理サーバ10のCPUが本フローチャートを実現可能なプログラムを読み込んで実行させることで、各ステップ(以下、「S」と表記する)を実現することができる。
【0066】
S1:管理サーバ10は、パートナー端末30から、先払い可能清算金額の算出要求を受信したか否かを判定する。先払い可能清算金額の算出要求は、パートナーにより選択入力された「先払い要求先(発注者ID)」、「プロジェクトコード」、「先払い対象期間」、及び「パートナーID」(ログイン情報)を含み、「計算」114が押下された場合に、パートナー端末30から管理サーバ10に送信される(
図9)。管理サーバ10が先払い可能清算金額の算出要求を受信した場合、S2へ進む。
【0067】
S2:次に管理サーバ10は、額面清算金額を算出する(
図9の「額面清算金額(A)」117)。具体的に管理サーバ10は、実績工数管理テーブル(
図6)を参照し、「先払い対象期間」において、「プロジェクトコード」112で特定されるプロジェクトに、「パートナーID」で特定されるパートナー所属エンジニアが費やした実績工数の合計を取得する。また管理サーバ10は、パートナー管理テーブル(
図4)を参照し、「パートナーID」に対応する「時間単価(¥/H)」を取得する。そして管理サーバ10は、実績工数の合計に対して「時間単価(¥/H)」を乗算した金額を、額面清算金額として算出することができる。
【0068】
S3:次に管理サーバ10は、リスク種別「プロジェクトリスク」、「技術リスク」、「顧客クレジットリスク」毎に、リスク係数を算出する(
図9の「リスク種別」118及び「リスク係数」119)。
【0069】
S4:次に管理サーバ10は、リスク種別毎の控除額を算出する(
図9の「控除額」120)。具体的に管理サーバ10は、S3で算出したリスク種別毎のリスク係数と、S2で算出した額面清算金額とをそれぞれ乗算することで、リスク種別に応じた控除額をそれぞれ算出することができる。
【0070】
S5:次に管理サーバ10は、先払い可能清算金額を算出する(
図9の「先払い可能清算金額:(A)-(B)」122)。具体的に管理サーバ10は、S2で算出した額面清算金額から、S4で算出したリスク種別に応じた控除額の合計(
図9の「合計控除額(B)」121)を除算することで、先払い可能清算金額(いわゆる与信枠)を算出することができる。
【0071】
<総括>
以上、本実施形態に係るSES業務管理システム100においては、SES業務管理サービス機能として、顧客(発注者)のプロジェクト管理、パートナー(請負事業主)管理、エンジニア(請負労働者)の労働時間管理が可能となっている。また、SES業務管理システム100は、一部前払い資金融通する金融機能を備えており、パートナーより顧客から将来支払われるべき請求額を先払い(前払い)してほしいとの要求操作があった場合、プロジェクト・技術・信用に関する先払いリスクを算定して先払い可能清算金額を設定する。これにより、パートナーによる先払いの要請に応じつつ、支払い側は、先払いに係るリスクを適切に評価し、その先払い額を適切に設定することができる。
【0072】
即ち、本実施形態によれば、一つの側面では、SES業務管理システムにおいて、先払いに係るリスクに応じた与信枠を設定し、請負事業主に対して一部先払い資金を融通するための金融機能を提供することが可能である。
【0073】
なお、本発明の好適な実施の形態により、特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0074】
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記録媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出し作動させる処理でも実現可能である。
【0075】
(付記1)
発注者(顧客)から請負事業主(パートナー)に将来支払われるべき請求金額の少なくとも一部に関して先払い処理を実行する業務管理装置(管理サーバ)であって、
発注者と請負事業主との間で契約された労働作業の時間単価を記憶した請負事業主情報記憶手段(パートナー管理テーブル)と、
請負事業主と雇用関係を有する請負労働者(エンジニア)から入力された請負労働者による労働作業(タスク作業)の実績時間(実績工数)を記憶する実績管理記憶手段(労働時間管理テーブル及び実績工数管理テーブル)と、
前記実績時間と前記時間単価とに基づいて、第1の金額(額面清算金額)を算出する第1金額算出手段と、
先払いに係るリスク度合い(リスク係数)を算出するリスク度合算出手段と、
前記リスク度合いと前記第1の金額とに基づいて、請負事業主に先払い可能な第2の金額(先払い可能清算金額)を算出する第2金額算出手段と、
を有することを特徴とする業務管理装置。
【符号の説明】
【0076】
10 管理サーバ
20 顧客端末20
30 パートナー端末30
50 ネットワーク
100 SES業務管理システム
101 額面清算金額算出部
102 リスク係数算出部
103 先払い可能清算金額算出部
104 先払い処理部
105 記憶部