(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】静電エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
B03C 3/45 20060101AFI20240924BHJP
B03C 3/47 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B03C3/45 A
B03C3/47
(21)【出願番号】P 2021569215
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 GB2020000050
(87)【国際公開番号】W WO2020234553
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510264279
【氏名又は名称】ダーウィン テクノロジー インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】ジョフリー ノーマン ウォルター ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ グリフィス
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/162792(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3031345(JP,U)
【文献】特開平07-323242(JP,A)
【文献】特表平09-505522(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113102108(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00- 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電集塵機用のフィルタであって、前記フィルタは、
複数の離間した電極フィルムであって、前記電極フィルムは、導電性を有し、高い電位および低い電位で交互に電力供給されるように配置され、前記電極フィルムの各々は、前縁、後縁、およびそれらの間にある空気流の方向で延在する2つの対向する側縁を備える電極フィルムと、
第1の複数の離間した剛性の隔離部材および第2の複数の離間した剛性の隔離部材と、を備え、前記隔離部材は、複数の電極フィルムの前記前縁および前記後縁の各々に、それぞれ接合され、隔離部材の各々は、実質的に連続し
、かつ、実質的に平坦な前記隔離部材の表面を介して、前記前縁または前記後縁の少なくともいくつかに接合され、それによって前記電極フィルムを、必要とされる離間した配置に固定する、フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタであって、すべての電極フィルムは金属である、すべての電極フィルムは非金属である、または、いくつかの電極フィルムは金属であり、いくつかの電極フィルムは非金属である、フィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルタであって、隣接する電極フィルムの間隔は、2mm以下である、フィルタ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のフィルタであって、電極フィルムの各々は、0.5mm以下の厚さを有する、フィルタ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のフィルタであって、電極フィルムの各々は、50mm以下の深さ(空気流の方向の寸法)を有することができる、フィルタ。
【請求項6】
請求項2に記載のフィルタであって、非金属電極フィルムの1つ以上はポリマー材料製であり、前記ポリマー材料は、その中に、および/またはその上に導電性粒子を有する、フィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタであって、電極フィルムの1つ以上は、炭素含有ポリプロピレン製である、フィルタ。
【請求項8】
請求項2に記載のフィルタであって、非金属電極フィルムの1つ以上は、その面の一方または両方の少なくとも一部分の上にコーティング、インク、または塗料が施されたポリマー材料製である、フィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルタであって、前記コーティング、インク、または塗料は、導電性または半導電性である、フィルタ。
【請求項10】
請求項8または9に記載のフィルタであって、前記コーティング、インク、または塗料は、1つ以上の非金属電極フィルムの前縁および後縁の各々からへこんで、前記前縁および前記後縁の各々と前記コーティング、インク、または塗料との間にギャップを形成する、フィルタ。
【請求項11】
請求項10に記載のフィルタであって、前記コーティング、インク、または塗料と、非金属電極フィルムの前縁との間のギャップは、前記コーティング、インク、または塗料と非金属電極フィルムの後縁との間のギャップよりも大きい、フィルタ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のフィルタであって、一連のノッチは、複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々に設けられ、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材は、前記ノッチの間で、前記前縁および前記後縁に接合される、フィルタ。
【請求項13】
請求項12に記載のフィルタであって、(i)前縁のノッチが後縁のノッチからオフセットしている、または(ii)前縁のノッチが後縁のノッチと正反対である、フィルタ。
【請求項14】
請求項13の(ii)に記載のフィルタであって、隣接する電極フィルムは相互にオフセットされ、その結果、1つおきの電極フィルムのノッチが前縁および後縁の各々に沿って相互に整列する、フィルタ。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載のフィルタであって、一連のスロットは複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々に設けられ、スロットの各々はへこんだ縁部分を画定し、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材は、前記スロットの前記へこんだ縁部分に接合され、少なくとも部分的に前記スロットによって収容される、フィルタ。
【請求項16】
請求項15に記載のフィルタであって、請求項12~14の何れか一項に従属する場合、一連のスロットの各スロットは、一連のノッチの少なくとも1つのノッチに隣接して設けられる、フィルタ。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載のフィルタであって、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材の一方または両方の、いくつかの隔離部材またはすべての隔離部材は、(i)ロッド、バー、バトン、スティック、または他の同様の構成要素または構造要素である、または(ii)剛性接着剤、樹脂、または他の同様の材料の線である、フィルタ。
【請求項18】
請求項17の(i)に記載のフィルタであって、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材の一方または両方の隔離部材は、上側の隔離フレーム部材および/または下側の隔離フレーム部材によって、離間した平行な関係で保持されてよく、それによって、前縁の隔離フレームおよび/または後縁の隔離フレームが形成される、フィルタ。
【請求項19】
請求項18に記載のフィルタであって、一連の縁部のスロットは、上側の隔離フレーム部材および/または下側の隔離フレーム部材に設けられ、スロットの各々は、へこんだフレーム部分を画定し、隔離部材は、前記スロットの間に配置される、フィルタ。
【請求項20】
請求項1~19の何れか一項に記載のフィルタであって、第1対の剛性支持板および第2対の剛性支持板は、複数の電極フィルムにおいて、最初の電極フィルムおよび最後の電極フィルムに隣接して設けられ、第1対の板における各板は最も外側にあり、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材の各々における交互の隔離部材は、(a)第1対の剛性支持板に、および(b)第2対の剛性支持板に、それぞれ接合される、フィルタ。
【請求項21】
請求項20に記載のフィルタであって、電極フィルムは、第2対の剛性板における各板の最も内側の面の上に設けられる、フィルタ。
【請求項22】
請求項20または21に記載のフィルタであって、結束用隔離部材は
、前記結束用隔離部材の各々は、第1対の剛性支持板および第2対の剛性支持板の両方に接合される、フィルタ。
【請求項23】
請求項22に記載のフィルタであって、結束用隔離部材は、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材にわたる間隔で設けられる、フィルタ。
【請求項24】
請求項22
または23に記載のフィルタであって、前記結束用隔離部材は、第1の複数の隔離部材および第2の複数の隔離部材の両方の端部の各々に、1つずつ、少なくとも終端位置に設けられる、フィルタ。
【請求項25】
請求項1~
24の何れか一項に記載のフィルタであって、複数の電極フィルムに対して平行に延在する第1端部および第2の端部を備え、シールドは、フィルタの前記端部のうちの1つに設けられ、前記シールドは、第1の複数の隔離部材の隔離部材の端部部分にわたって、前記フィルタの上流面の上で延在する、フィルタ。
【請求項26】
請求項
25に記載のフィルタであって、前記シールドは、フィルタの上流面の上の第1の複数の隔離部材の隔離部材の前記端部部分から、前記フィルタの下流面の上の第2の複数の隔離部材の隔離部材の対応する端部部分まで延在する、フィルタ。
【請求項27】
請求項
26に記載のフィルタであって、(i)前記シールドは前記シールドが設けられたフィルタの端部を覆うように延在する、または(ii)前記シールドは、前記フィルタの端部の周りを包むバンドの形態である、フィルタ。
【請求項28】
請求項1に記載のフィルタを備える静電集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関する。フィルタの動作および設計は、電気集塵原理に基づく。本発明は、特に、静電集塵機での使用に適したエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
静電集塵機は、様々な大きさおよび形状のものがあり、工業用、商業用、および家庭用の広範な用途にわたって使用されている。例えば、工業においては、静電集塵機は、石炭火力発電所の高温の廃棄ガスから浮遊粒子を除去するために使用される。広範囲の化学工業にわたって、静電集塵機は、高温および低温のガス流を洗浄するために使用される。静電集塵機のほとんどの商業用途、およびすべての家庭用途は、不所望な「汚染物質」粒子の周囲空気を浄化するために使用される。
【0003】
当技術分野で周知のように、静電集塵機には2つの段階がある。第1の段階またはセクションでは、空気流中の汚染物質または他の不所望な粒子が帯電される。第2段階またはセクションでは、荷電粒子の一部が適切なフィルタを使用して捕捉され、したがって空気流から除去される。荷電粒子の捕捉レベルは、集塵機の効率を定義し、典型的には80%から99.9%の範囲とすることができる。これらのより高い効率は、集塵機の位置に対して空間的な制約がほとんどない、または存在しない環境、例えば石炭火力発電所の煙突内で達成可能である。
【0004】
静電集塵機の第2段階またはセクションは、典型的には、荷電粒子を捕捉するように設計された平行な導電性板(電極)のグループを備える。板の代替物は、通常、比較的高い電位と低い電位とで動作するように配置されている。低電位板は、通常、接地電位にある。そのため、「接地板」または「接地電極」と称されることが多い。例として、高電位板に例えば+6kVの電力が供給され、低電位板が接地電位(0kV)に保持される場合、板間を通過する空気流中の正荷電粒子は、電界のおかげで、隣接する接地板に引き付けられ、その接地板に向かって移動し、そこで捕捉される。捕捉された粒子上の正電荷は、接地板に移動し、電気回路の一部として流れる。
【0005】
当技術分野でよく知られているように、静電集塵機を使用する荷電粒子の除去の効率は、以下を含む多くの変数の関数である:
(1)粒子上の電荷量;
(2)粒子のサイズ;
(3)板間の電界強度;
(4)板を通って流れる空気の速度;
(5)空気流の方向で測定される板の深さ;
(6)隣接する反対に帯電した板の間隔。
【0006】
理論的には、これらの変数を適切に変更することによって、非常に高い効率(99.9%のオーダー)を達成することができる。
【0007】
実際には、多くの用途で高い効率の粒子濾過が望ましい。例えば、世界の多くの主要都市の外気には、呼吸可能な炭素の微粒子が含まれていることがよくある。これは、周囲を移動する車両における燃料の不完全燃焼に起因する。この外気は、街中を移動する人々に呼吸器系の問題を引き起こす可能性がある。しかしながら、家、アパート、およびその他の住宅、ならびに就業場所に侵入する可能性もある。
【0008】
商業ビルおよびオフィス内の循環空気は、温度を快適なレベルに保つために、頻繁に調整される必要がある。さらに、建物内の人および装置からの二酸化炭素、臭気、揮発性有機化合物のレベルが蓄積し、これらの汚染物質を低レベルに保つために「新鮮な空気」を外部から導入する必要がある。ただし、この「新鮮な空気」には有害な粒子が含まれていることが多い。特に、上述の主要都市ではその傾向が強い。そのため、循環空調システムに導入される前に、そのような空気を清浄化することが重要である。
【0009】
一般に、人間が居住する建物では、99%以上の効率で、呼吸可能な空気から健康を害する粒子を除去することが望ましい。これは、理論的には可能である。しかしながら、実際には、このような環境において達成可能な高い効率には限界がある。多くの場合、空気流の方向のフィルタの深さが浅いことが、そのような制約の1つである。
【0010】
例として、(米国でみられるような)家庭用ダクト空調システム内に配置される静電集塵原理を使用する典型的な電子空気清浄機は、典型的に、1~3m/sの空気速度にさらされるであろう。このようなシステムは、電極として金属板を含むフィルタを備える。金属板は、約5mm間隔で配置されている。使用中の板全体に、約6kVの電圧が印加することができる。空気流の方向の板の深さは、約75mmである。このようなシステムは、0.3ミクロンの粒子径で、わずか90%のフィルタ効率、すなわち「低い」効率を提供する。
【0011】
さらなる例は、「ミニスプリット」または「ハイウォール」空調システムの例である。静電集塵フィルタは、1.5m/sの空気速度で動作する。空気流の方向の最大のフィルタの深さに関するスペースの制約は、15mm以下である。再び、典型的に90%の、同様に「低い」効率という結果となる。
【0012】
そのような「低い」効率を増加させるために、順に、上述の効率変数の各々に戻る:
(1)粒子上の電荷は、より高い電圧および電流を充電電極上に提供することによって増加させることができた。しかしながら、この手段によるいかなる増加も、改善される効率という点ではごくわずかであり、また有毒オゾンの増加は不所望であろう。
(2)粒子のサイズに関しては、実際には、通常、これに対する制御はない。効率測定は、通常、捕捉するのが最も困難な粒子サイズ、典型的には、直径約0.3ミクロンを対象とする。
(3)印加電圧は6kVを超えて増加させることができた。これによって、電界強度が、従って効率が向上するであろう。ただし、電圧を増加させると、特に電界強度が最も強い板エッジにおいて、板間のアーク破壊を引き起こす可能性がある。
(4)空気速度に関しては、制約は、通常、空調システムによって決定される。したがって、より低い空気速度で「高い」効率を達成することができるにもかかわらず、システムが空調設計によって予め定められた空気速度で動作するので、この選択肢は、現在は実行可能でない。
(5)板の深さを空気流の方向で増加させると、効率が著しく改善する。例えば、上述のダクト空調システムの深さを75mmから150mmに増加させると、効率を99%の望ましい値に増加させることができる。しかしながら、問題が発生するであろう。第一に、フィルタ自体の深さは2倍になり、システムサイズの制約によりフィルタが使用不能となる可能性がある。第二に、人間の居住空間で採用される空調システムでは、通常、エアフィルタを配置するための利用可能なスペースに制約がある。25mm以下という「浅い」フィルタの深さによって、広範な製品の再設計なしで、そのようなフィルタを含むことが可能である。第三に、金属板フィルタの重量は2倍となろう。それはまた、フィルタ材料のコストの増加を意味する。
(6)板の間隔を低減させて、望ましい99%の効率値を達成することができる。これは、上述のダクト空調システムにおいて、半分の2.5mmにすることができた。しかしながら、この間隔で、印加電圧を6kVに維持すると、アーク放電の問題が発生する可能性が高い。電圧を、例えば3kVに低減させる必要があり、したがって板間の元の電界強度が維持される。さらに、粒子‐板の間隔が短いために、そのような配置で所望のパーセンテージ効率につながる可能性はある。しかしながら、そのような配置の構築は、2倍の数の金属板を組立てることを含み、組み立て時間の観点から費用が嵩むであろう。さらに、完成したフィルタは2倍の重量があり、材料コストも増加する。また、板の空間密度が高いほど、フィルタを通過する圧力降下がより高まるであろう。
【0013】
本明細書で先に述べたように、静電集塵機は、工業用、商業用、および家庭用の広範な用途にわたって使用されている。それらの用途の各々が、電極板の隔離に異なる方法を必要とする。
【0014】
静電集塵機の機能において、高電位および接地である2セットの板の間の電気的絶縁は、非常に重要である。2セットの板の間の電流の著しい漏れは、いかなるものであっても、板間の電圧の低下をもたらし、粒子の捕捉効率が低下する。(これは内部抵抗を有する高電圧発生器によって電圧が供給されるためである。リーク電流が増加するにつれて、高電圧発生器の端子電圧は、内部抵抗の両端間の電圧降下によって低下する。しかながら、高電圧発生器が電圧的に安定化されている場合、リーク電流が増加するつれて電力消費が増加し、より高価な電源設計が必要となる。最大供給可能電流に達すると、電圧は、降下またはトリガーオフして、フィルタ効率を低減させる。
【0015】
静電集塵機における電流リークには、二つの主な原因がある。
【0016】
第一は、2セットの異なる極性板を接続する表面に沿ったリーク電流によるものである。この電流は、板間の電圧、リーク距離の長さ、および電流が通過する表面膜の導電率に依存する。「汚れた」空気が静電集塵機を通って流れると、時間とともに、埃の粒子およびその他の破片などの汚れがこれらの表面に蓄積することは避けられない。ほとんどの汚れには、かなりの導電性がある。これは、堆積した汚れが表面に蓄積することにつれて、リーク電流が増加することを意味する。導電率の増加に寄与する別の要因は水である。堆積した汚れは、湿度が変化する空気にさらされる。高湿度では、汚れたフィルムは、その上を通過する湿った空気からの水の吸収により、かなり導電性が高まる。これによって、リーク電流も増加し、板にわたって電圧を低減させ、したがってフィルタ効率を低減させる。
【0017】
第二は、コロナ放電によるものである。動作電圧に応じて板間の最小間隔が維持されているとすれば、新しくてきれいなときには、板間にコロナ放電は、ほとんど、または全くない。コレクタ板が汚れを蓄積すると、堆積した汚れの集合体の隆起した特徴からコロナ放電が発生する可能性がある。これによって、局所的な電界強度が、コロナ放電を引き起こすポイントにまで増加する。板が汚れるにつれて、板を定期的に洗浄して浄化する必要が生じる範囲まで、この電流が増加する可能性がある。板の縁部上の電界強度は、板間よりも高いことが多い。そのため、板の前縁に汚れが堆積することは、特別な問題である。これらの縁部上のコロナ放電は、リーク電流を更に増加させる。また、コロナの影響で、荷電した汚れ粒子と反対の極性のイオンを放出することでもある。その後の両者の衝突によって、粒子の電荷が低減される、または除去される傾向がある。したがって、効率が低減される。
【0018】
図1Aは、これらの2つの主要な漏れの原因の各々に悩まされる、従来技術のフィルタ10を示す。フィルタ10は、コレクタ板(電極)11を備える。コレクタ板11は、高電位11aで電力が供給されるように配置されたものと、低(または接地)電位11bで電力が供給されるように配置されたものと、の2つの交互のグループに分割されている。コレクタ板11は、フィルタの壁13の絶縁材料の溝またはスロット12に保持されている。吊り下げられた板11は、壁13間の間隙Gを、それらに高電圧が印加されたときに変形することなくブリッジするのに十分に硬く、または剛性が高く、かつ十分な厚さでなければならない。その結果、このような吊り下げられた板は、典型的には、150mmの典型的な間隙Gに対して、少なくとも0.2mmの厚さの金属製である。表面に沿ったリーク電流は、壁13における板11の間の間隔Dと、壁13上に堆積した汚れ(図示せず)の量に依存する。
【0019】
図1Aに示すようなフィルタの壁13内のスロット12に保持されている板11の縁部における、コロナ放出による電流リークの可能性を低減するために、一般的な方法は、板の高電圧セット11aと接地セット11bとの相対的な位置を「ステップ」またはシフトさせることである。これを
図1Bに示す。高電位板11aの縁部14aと、接地板11bの縁部14bとの間の間隔は、2セットの板が全て他方の上部に1つずつ整列されていた場合(
図1Aに示されるように)よりも大きい。そのため、前出の縁部における電界強度は、より小さい。
【0020】
板の縁部におけるコロナによるリーク電流を低減させる、他の代替的な方法も既知である。これには、Loreth et al.によってUS5766318Aに記載されているものが含まれる。
【0021】
家庭用/商業用の静電集塵器で使用される別の標準的なフィルタ設計が、
図2A、
図2B、および
図2Cに示される。フィルタ20は、金属板(電極)21を備える。金属板21は、(高電圧で)電力が供給されるように配置された板21aと、低(または接地)電圧で電力が供給されるように配置された板21bと、の2つの交互のグループに分割されている。両方のセットの板21a、21bには、その周縁に規則的な間隔で配置された2つの異なるサイズの穴、すなわち大Lおよび小Sが設けられている。穴は、板21aの大きな穴Lが板21bの小さい穴Sに対応し、逆もまた同様であるように配置されている。すべての板21の穴は、これらの板が整列されたときに、互いに整合する。一連の金属ロッド22は、コレクタ板21と同じ面積寸法の絶縁ベース板23に固定されている。
【0022】
板21の長辺に沿って隣接する金属ロッド22の対の間の間隔は、約125mmである。厚さが約0.5mm~1.0mmである金属板21の剛性によって、この比較的大きな間隔が可能である。隣接する金属ロッド22の対の間の間隔が125mmより長いと、板21が自重で湾曲可能となる。これでは、全体的なフィルタ20の構造が不安定になり、板21の間の電気の力を支持しないため、これは容認できない。この場合、板21の間隔は、コロナまたは他の放電が発生する点まで減少する可能性がある。または、板が接触して、短絡を引き起こす可能性さえある。
【0023】
コレクタ板21a、21bに大きな穴Lと小さな穴Sが交互に並んでいる「インレジスター」配置によって、板を、ロッド22上で一枚ずつ組み立てることができる。各板21a、21bは、一連のスペーサ、例えば金属スペーサ24を使用して支持されている。このスペーサ24は、小さな穴Sを通過しないが、大きな穴Lの円周に接触せずに大きな穴Lを通過する直径を有する。これによって、反対極性の板との接触を避けることができる。第1板21bは、同様にして、一連のスペーサ24を使用して、絶縁ベース板23から分離されている。このような全体構成は、2セットの板21a、21bが機械的にも電気的にも分離されていることを意味する。フィルタ20の隣接する金属板21の間の分離間隔は、7mmの領域にある。空気流の方向(
図2Cに矢印で示す)の板21の深さは、典型的には75mmであり、0.3ミクロンの粒子径で90%の濾過効率が得られる。
【0024】
図2Aおよび
図2Bは、明確にするために、3つのコレクタ板21のみを示す。しかしながら、当業者は、実際には、フィルタが
図2Cに部分的に示されるように多くの板を備え、すべてが
図2Aおよび
図2Bを参照して説明されるのと同じ方法で組み立てられていることを理解するであろう。
【0025】
コレクタ板を隔離する代替的な既知の方法は、
図3Aおよび
図3Bのフィルタ30に示される。フィルタ30は、コレクタ板(電極)31を備える。コレクタ板31は、高電位で電力が供給されるように配置された板31aと、低(または接地)電位で電力が供給されるように配置された板31bと、の2つの交互のグループに分割されている。絶縁材料(例えば、プラスチック材料)から形成され、櫛状の構造32a、32bを有する部品、すなわち、それらの間にギャップ34を有する個別の「歯」33を備える部品は、フィルタ30の一方の面に沿って高電圧板31aまたは接地板31bのいずれかを、個別に支持する。
図3Aおよび
図3Bからわかるように、「櫛」32a、32bは、同一のプロファイルであるが、相互に1つの櫛歯ピッチの半分だけずれている。そのため、
図3Aに示される「櫛」32aは高電圧板31aのみを支持してスペースを確保し、
図3Bに示される「櫛」32bは、接地板31bのみを支持してスペースを確保している。いずれの場合も、「櫛」32a、32bの歯33の先端には、支持される板を把持するための凹部35が設けられている。一方、隣接するギャップ34には、交互の板が、相互に接触することなく、収容されている。
【0026】
したがって、
図3Aは、「櫛」32aの歯33内の凹部35によって把持されて支持されている高電圧板31aを示し、一方では、接地板31bは、電気的に絶縁され、歯33に隣接する収容ギャップ34によって物理的に分離されている。同様に、接地板31bは、1つ以上の隣接する「櫛」32bの歯33の凹部35によって、把持されて支持されており、一方では、高電圧板31aは、電気的に絶縁され、歯33に隣接する収容ギャップ34によって物理的に分離されている。したがって、コレクタ板31は、トポロジー的にも電気的にも分離された状態に保たれ、リーク電流を低減させる。当業者には容易に理解されるように、「櫛」32a、32bのこれらの2つのバリエーションを増やして、フィルタ30の面にわたって交互に配置することが可能であり、フィルタ30の全幅にわたって板31を支持することができる。また、同様の櫛のセットをフィルタの反対側の面にわたって配置して、高電圧板および接地板を完全に支持することも、容易に理解されるであろう。
【0027】
板の隔離のこの特別な方法、すなわち「櫛」の使用は、2mmの板分離間隔までうまく働く。しかしながら、2mm未満の間隔では、大きな困難に遭遇する。第一に、プラスチックの「櫛」は、他の板のセットと干渉したり接触したりしないように、より薄いプラスチック材料で成形される必要がある。その結果、「櫛」の固有の強度が低下し、板を適切に支持することができない。第二に、この場合、「櫛」のプラスチック材料が他の板のセットに、はるかにより近接する。汚れが「櫛」の表面、すなわち歯の表面と介在するギャップに蓄積するにつれて、反対に帯電した隣接する板の間のギャップが低減され、これらの汚れた櫛の表面と近接する反対の極性の電極との間の電界強度が増加し、コロナリーク電流が発達し、フィルタの効率を低減させる。
【0028】
異なる電位の板の2つのファミリーは、
図2A、2B、2Cならびに
図3Aおよび3Bに示される既知のフィルタに、別々に保持されていることに留意されたい。したがって、反対の極性の板の間のリーク経路は、
図1Aに(および
図1Bでも)示されているフィルタの複数の小さなギャップから、2つのファミリーの支持ロッドまたは櫛が共に固定されている板スタックの上部と下部の、単一の経路に低減される。
【0029】
しかしながら、高湿度および/または汚れの多い環境下では、このように2つのファミリーの異なる電位の板を分離しても、支持ロッドまたは櫛の2つのファミリー自体が共に堅固に固定されて剛性フィルタを提供する箇所では、不所望なレベルのリーク電流が発生する可能性がある。電流は、一方の極性の各電極板またはフィルムから、その支持ロッドまたは櫛のファミリー、すなわち、電極板またはフィルムのセットと直接に電気的に接触しているもの、に流れ、これらのロッドまたは櫛の汚れた表面に沿って、支持ロッドまたは櫛の他方のファミリーとの接合部に流れ、したがって同様に、支持ロッドまたは櫛のこの第2のファミリーに沿って、反対の極性の電極板またはフィルムのファミリーに流れることになる。
【0030】
図1A~
図3Bに示される上述のフィルタ構成の各々は、隣接する板の間隔、すなわち板の分離が2mm以上であるとすれば、適切である。しかしながら、2mm未満の板の分離のための製造および長期間の隔離に関しては困難が生じる。
【0031】
板の分離が減少するつれて、板の数を増加する必要がある。2mm以下の分離間隔では、実用的な空調フィルタのための板の数は、板の平面性における小さな変動(すなわち、各々がどの程度完全に平坦であるか)および板の剛性不足による歪みのために、隔離壁の対応する溝と整列するには多すぎるようになる(
図1A、1B、3Aまたは3Bに示す構成に従う場合)。これによって、櫛が電極スタックに提供される際に、個別の板が支持ロッドまたは隔離壁の対応する溝と正しく整列することが妨げられる。
図2A~
図2Cに示すフィルタ構成と同様に、金属スペーサの数およびクリアランスの公差によって、間隔の狭いフィルタの組立が、非常に困難になる。
【0032】
多くの前述の問題にもかかわらず、2mm未満の板分離間隔を有するフィルタを提供することには、(空気流の方向で)比較的薄いフィルタ、例えば深さ15mmのフィルタにおいて、(約99%のオーダーの)「高い」濾過効率を可能にするという利点がある。したがって、このようなフィルタを提供する試みが以前になされており、US2948353AおよびUS4861356Aなど、Gaylord W Pennyの名前で特定の特許に記載されている。
【0033】
しかしながら、板の分離が2mm未満である粒子捕捉フィルタ(a)、および長期間の動作、すなわち洗浄前に1年以上成功した粒子捕捉フィルタ(b)、を有する静電集塵機は、たとえあったとしても非常に少ない。これは、(上述のような)適切な電気的絶縁の規定に遭遇する困難性のためである。これが、動作不良に、および/または頻繁で時間のかかるフィルタ洗浄の必要性につながっていた。
【0034】
本発明者らの詳細な理解によれば、この技術分野の現状は、空気流の方向で、(99%以上の)「高い」効率、および(15mm以下の)浅い深さで動作する静電エアフィルタの設計および構成において、2mm以下の板の分離を有する間隔の狭い板/電極を、物理的に支持し、かつ電気的に絶縁することの両方が困難である、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【文献】US5766318A
【文献】US2948353A
【文献】US4861356A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
したがって、本発明の課題は、静電集塵機に使用するための改良された空気フィルタを提供することである。その際、すべてではないとしても、前述の問題および設計課題の多くが、少なくとも緩和される。
【課題を解決するための手段】
【0037】
発明の第1態様
従って、第1態様において、本発明は静電集塵機用のフィルタを提供する。前述のフィルタは、複数の離間した電極フィルム(板)を備える。電極フィルム(板)は、導電性を有し、比較的高い電位および低い電位で交互に電力供給されるように配置されている。前述の電極フィルムの各々は、前縁、後縁、およびそれらの間にある空気流の方向で延在する2つの対向する側縁を備える。前述のフィルタは、更に、第1および第2の複数の離間した剛性の隔離部材を備える。隔離部材は、複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々に、それぞれ接合されている。隔離部材の各々は、実質的に連続した好適には平坦な隔離部材の表面を介して、前述の前縁または後縁の少なくともいくつかに接合され、それによって電極フィルムを、必要とされる離間した配置に固定する。
【0038】
電極フィルムの各々を(隔離部材の各々が備える実質的に連続した好適には平坦な面によって)複数の隔離部材に接合することにより、従来技術のフィルタで必要とされ得るスペーサ要素、または他のそのような追加要素を使用する必要なしに、電極フィルムの必要とされる離間した構成が提供される。このような接合は、フィルタに全体的な剛性および構造的な完全性を与える。隔離部材の各々は、電極フィルムの前縁および後縁の少なくともいくつかに接合され、電極フィルムへの比較的高い電位および低い電位で交互の電力供給を可能にし、隔離部材が電極フィルムのフルセットのサブセットにのみに架かることを可能にする(ただし、任意の隔離部材は電極フィルムのフルセットに架かることができる)。
【0039】
「実質的に連続した表面」とは、起伏を含む場合もあるが、表面が本質的に中断されていないことを意味する。「実質的に平坦な表面」とは、電極フィルムを支持または把持するために使用できる歯状、指状、または他のそのような要素が表面に設けられていないことを意味する。平坦な表面には、起伏または他の不完全な部分があってもよい。しかしながら、これらは、本明細書における「実質的に平坦」の定義のうちに含まれる。換言すると、(それぞれ比較的高い電位および低い電位で交互に電力供給される)電極フィルムまたは板の2セットは、接合を「唯一の」固定方法として使用して、適所に固定されることを理解されたい。外部の「櫛」、「ラック」、または従来技術で使用され説明されているような、電極フィルムを「把持」する、または他の方法でクランプする手段を備える任意の他の同様の構成要素は、本発明では単に、必要とされない。これらは、想定される間隔の狭い電極板またはフィルムと共に使用されると、実際に有害である。接合するのみで、「それによって」、電極フィルムを必要とされる離間した配置に固定する。
【0040】
特定の状況において、電極フィルムは金属であってよく、任意選択で2つ以上の金属の合金を含むことができる。そのような電極フィルムは、固有の導電性を有する。
【0041】
他の状況において、電極フィルムは非金属であってよい。しかしながら、それらの電極フィルムは、それらの意図された機能を果たすことを可能にするために、(以下により詳細に記載されるように)依然として導電性を有することができる。これらの実施形態では、電極フィルムの各々を複数の隔離部材に接合することにより、そうでなければ2kV/mm以上の電界を印加する際に生じる可能性のある非金属電極フィルムのたわみのあらゆる増加を、更に克服することができる。
【0042】
更に他の状況において、フィルタの設置状況によってそうした配置が最良であると決定される場合、いくつかの電極フィルムは(上述のように)金属であってよく、いくつかの電極フィルムは(上述のように)非金属であってよい。
【0043】
異なる構成を使用し、かつ非金属の電極フィルムの場合に、静電集塵機に使用するように設計された従来のエアフィルタとは異なる材料によって、「高い」効率の濾過(例えば、0.3ミクロン粒子径で99%)の達成が可能になる。
【0044】
電極間隔
好適には、隣接する電極フィルムの間隔は2mm以下であり、更に好適には1mm以下である。したがって、隣接する電極フィルムの間隔は、0.1mm~0.8mmの範囲、より好適には0.25mm~0.75mmの範囲とすることができる。一実施形態において、隣接する電極フィルムの間隔は0.5mmとすることができる。
【0045】
電極厚さ
したがって、電極フィルムの各々の厚さは、0.5mm以下、好適には0.25mm以下とすることができる。電極フィルムの各々は、0.01mm~0.1mmの範囲の厚さを有することができる。
【0046】
電極深さ
好適には、電極フィルムの各々は、50mm以下の深さ、更に好適には40mm以下の深さ、すなわち空気流の方向の寸法を、有することができる。したがって、電極フィルムの各々は、5mm~30mmの範囲の、より好適には10mm~25mmの範囲の深さを有することができる。このようにして、比較的「薄い」深さのフィルタを、すなわち、1~3m/sの領域の空気流中で動作する場合に有効である、空気流の方向で例えば深さ15mmの延長を有するフィルタを、設けることができる。
【0047】
電極材料
本発明のフィルタにおいて、板は、(a)固有の導電性を有する金属電極フィルムである、(b)導電性を有する非金属電極フィルムである、すなわち、それらは、例えばアルミニウムである1つ以上の金属、または例えば炭素である他の導電性材料を微量成分として含むことができるが、主成分としては金属以外の材料製である、または、(c)いくつかは金属電極フィルムであり、いくつかは非金属電極フィルムであり、好適には交互に設けられる。
【0048】
使用される厚さで、例えば0.1mmの場合、そのような板(a)、(b)または(c)は、本質的に剛性を有する、またはある程度の柔軟性を有することができる。しかしながら、支持されていない状態で2kV/mm以上の電界を印加すると、そのような板が、いくらかの(または増加する)撓みを示す可能性がある。これは、(フィルムの厚さなどの他の固有の利点のために選択された)フィルム材料の選択の不所望な結果である。しかしながら、本発明のフィルタの設計において考慮され、克服されるものである。これは、例えば0.5~1mmである、より厚い金属電極/板が設けられている多くの従来技術のフィルタとは対照的である。これらのフィルタは、本質的に剛性であり、2kV/mm以上の電界を印加する場合でも、剛性のままである。
【0049】
金属電極
したがって、いくつかの状況においては、電極フィルムの1つ以上は、金属箔またはシートの形態であってよい。適切な例は、ステンレス鋼箔、アルミニウム箔、およびチタン箔が含まれる。当業者であれば、他のそのような金属箔材料のいずれが、本発明によるフィルタにおいて使用可能であるかを容易に決定できるであろう。どの材料が選択されても、使用される箔の厚さ(上述の限界内)は、選択された材料の剛性または柔軟性によって決定される。
【0050】
非金属電極
他の状況においては、電極フィルムの1つ以上は、ポリマー材料製であってよい。ポリマー材料は、その中に、および/またはその上に導電性粒子を有する。一実施形態において、電極フィルムの1つまたは複数(好適には両方)は、炭素含有ポリプロピレン製であってよい。適切な剛性である、任意の他の市販のプラスチックフィルムを、代替的に使用することができる。適切な導電性粒子として、炭素およびグラフェンが含まれる。
【0051】
追加的に、または代替的に、電極フィルムの1つ以上は、その面の一方または両方の少なくとも一部分の上にコーティング、インク、または塗料が施されたポリマー材料製であってよい。前述のコーティング、インク、または塗料は、導電性または半導電性であってよい。一実施形態において、電極フィルムの1つまたは複数(好適には両方)は、その面の一方の上に酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)のコーティングを備えるプラスチックフィルム製であってよい。更なる実施形態において、電極フィルムの1つまたは複数(好適には両方)は、その面の一方の上に炭素含有インクのコーティングを備えるプラスチックフィルム製であってよい。
【0052】
好適には、コーティング、インク、または塗料は、1つ以上の電極フィルムの前縁および後縁の各々からへこんで、前述の縁部の各々とコーティング、インク、または塗料との間にギャップを形成することができる。特に、汚れが電極フィルムの前縁に蓄積するため、縁部でのコロナ放電の可能性を減少させるため、そのような構成は、電気的絶縁のレベルを増加させることができる。
【0053】
更に好適には、コーティング、インク、または塗料と電極フィルムの前縁との間のギャップは、コーティング、インク、または塗料と電極フィルムの後縁との間のギャップよりも大きくすることができる。多くの用途のために、空気流の方向の電極の深さを最小にしなければならない。したがって、より汚れる前縁において(比較的大きなギャップによって)より大きな隔離を提供し、濾過された空気の流れにさらされ、したがって汚れの蓄積がより少ない後縁において(比較的小さなギャップによって)より小さな隔離を提供することが望ましい場合がある。そのために、これが重要である。
【0054】
接合
第1および第2の複数の離間した剛性の隔離部材の各々の、複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々への接合は、塗布後に硬化する任意の流体または半流体の材料(接合手段)を使用して達成することができる。例えば、それは、本質的な急速硬化であってよい。または、UV硬化が必要とされる場合もある。そのような接合手段の適切な例には、重合樹脂、熱硬化性樹脂、接着剤、糊、ホットメルト接着剤、ワックス、および当業者に既知である他のそのような材料が含まれる。
【0055】
電極におけるノッチ
有利には、一連のノッチを、複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々に設けることができる。第1および第2の複数の隔離部材を、前述のノッチの間で、前述の縁部に接合することができる。そのような構成は、電極フィルムの高電位グループおよび低電位グループの各々が、独立して支持され、離間されることを可能にする。したがって、表面のリーク電流経路を最小限にすることができる。
【0056】
これらのノッチは、電極を隔離部材に固定する手段を、決して提供しないことを理解されたい。各ノッチは、単に、一方の極性の電極フィルム(例えば、高電位板)の縁部にギャップを提供し、反対の極性の隣接する電極フィルム(例えば、低電位板)の、または反対の極性の隣接する電極フィルムの各々の、対応する縁部のノッチのない部分に接合される隔離部材を、(なんら接触することなく)収容する。接合(手段)は、単独で、適切に支持され、配置された様式で電極板またはフィルムを固定する。
【0057】
好適には、前縁の前述のノッチは、空気流の方向から見て、後縁の前述のノッチからオフセットさせることができる。代替的に、前縁のノッチを、再び、空気流の方向から見て、後縁のノッチと正反対とすることができる。いずれの場合も、隣接する電極フィルムを相互にオフセットさせることができる。その結果、1つおきの電極フィルムのノッチが前縁および後縁の各々に沿って相互に整列され、第1の複数の隔離部材が一方の極性の電極フィルムにのみ接合され、第2の複数の隔離部材が反対の極性の電極フィルムにのみ接合され、したがって、2つの極性の電極のファミリーの間の隔離を保持することができる。特定の設計のフィルタでは、電極フィルムに対してより機械的な支持を提供するために、ノッチを互い違いにすることが好適な場合がある。
【0058】
電極におけるスロット
好適には、一連のスロットを、複数の電極フィルムの前縁および後縁の各々に設けることができる。スロットの各々は、へこんだ縁部分を画定する。第1および第2の複数の隔離部材は、前述のスロットの前述のへこんだ縁部分に接合され、少なくとも部分的に前述のスロットによって収容される。更に好適には、第1および第2の複数の隔離部材は、前述のスロットによって完全に収容される。
【0059】
隔離部材を少なくとも部分的に(完全ではないにしても)その中に収容するこのようなスロットを設けることは、空気流の方向のフィルタの全体の深さが、電極フィルムの深さに基づいて、可及的に浅く保たれることを意味する。換言すると、複数の隔離部材を設けることに起因して、注意深い制御の必要があるかもしれないフィルタの深さに対する悪影響が、完全に取り除かれないとしても、軽減される。
【0060】
有利には、一連のスロット内の各スロットを、上述の一連のノッチ内の少なくとも1つのノッチに隣接して設けることができる。換言すると、各電極フィルムの各長辺に沿う延在部分には、ノッチを設け、続いてスロット、続いてノッチ、続いてスロット等を設けることができる。電極フィルムの各縁部におけるノッチおよびスロットの配置は、相互に鏡像であってよい、またはオフセットされてよい。
【0061】
いかなる誤解も避けるために、ノッチはスロットとは異なり、混同されるべきではない。それらは、異なる機能を実行する。すなわち、ノッチの各々は、一方の極性の電極フィルム(例えば、高電位板)の縁部にギャップを提供し、反対の極性の隣接する電極フィルム(例えば低電位板)の、または反対の極性の隣接する電極フィルムの各々の、対応する縁部のノッチのない部分に接合される隔離部材を(なんら接触することなく)収容する。それに対して、スロットの各々は、隔離部材を直接に接合できる、へんこんだ縁部分を提供する。
【0062】
両方が存在する場合、スロットは電極フィルムのノッチのない領域に提供される。すなわち、ノッチの間の領域は、「ノッチのない」と記載されるが、これは、前述の領域がスロットを含むことを排除しない。したがって、「ノッチのない」とは、「スロットのない」をも意味するわけではないことに、留意されたい。
【0063】
さらに、そのようなスロットは、隔離部材を電極フィルムに固定する手段を提供しない。電極フィルムの隔離部材への機械的な接合は、完全に接合に起因するものであり、スロットによっては決して提供されない。すなわち、電極フィルムの「把持」がスロットによって提供されないことを、理解されたい。
【0064】
隔離部材
好適には、フィルタに含まれる第1および第2の複数の隔離部材の一方または両方の、いくつかの隔離部材またはすべての隔離部材は、ロッド、バー、バトン、スティック、または他の同様の構成要素または構造要素であってよい。更に好適には、前述の隔離部材を、相互に平行な配置で設けることができる。
【0065】
好適には、隔離部材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリスチレン、ABSなどの剛性プラスチック材料から形成することができる。
【0066】
電極フィルムの少なくともいくつかが金属である場合、隔離部材は、セラミック材料などの高温耐性材料から形成することができる。
【0067】
好適には、第1および第2の複数の隔離部材の一方または両方の隔離部材は、上側の隔離フレーム部材および/または下側の隔離フレーム部材によって、離間した平行な関係で保持されてよい。換言すると、第1および第2の複数の隔離部材の一方または両方は、前縁の隔離フレームおよび/または後縁の隔離フレームが存在し得るように、個別の隔離部材を備える隔離フレームの形態であってよい。
【0068】
代替的に、第1および第2の複数の隔離部材の一方または両方の隔離部材は、単に、剛性接着剤、樹脂、または他の同様の材料などの接合手段の線の形態であってよい。換言すると、隔離部材自体は、追加的な構造部品を必要とせずに、接合手段のみで形成することができる。好適には、前述の隔離部材を、相互に平行な配置で設けることができる。
【0069】
したがって、前述のように、(本発明の第1態様によれば、比較的高電位および低電位で交互に電力供給される)2セットの電極フィルムまたは板は、唯一の固定手段および方法として、例えば接着剤である接合手段を使用して、所定の位置に、すなわち必要とされる離間した配置に固定されることを理解されたい。第1実施形態において、例えば接着剤である接合手段は、最初に、隔離部材の連続した実質的に平坦な細長い表面に塗布される。次いで、前述の隔離部材は、接着剤が離間した電極板またはフィルムの縁部と接触するように配置される。必要に応じて、接着剤は、次いで、固体に硬化すると(または、硬化されると、接着状態になると、など)、電極板を所定の位置に接着して固定する。
【0070】
第2実施形態において、例えば接着剤などの接合手段は、一連の接着剤ビードまたは連続的な堆積物として、正確に離間して配置された電極板またはフィルムの(例えば、適当な治具またはスペーサなどによって)一時的に保持された配列に、直接に塗布される。その後、接合手段が硬化すると(または硬化された、接着状態になった、など)、それ自体で複数の剛性の隔離部材を形成する。
【0071】
接合手段が、第1実施形態または第2実施形態のいずれに従って適用されるかどうかにかかわらず、それが硬化する(または、硬化される、接着状態になる、など)とき、接合手段によって固定される前に、電極板またはフィルムの間に離間した関係を維持するために電極板またはフィルムの間に配置されていた、取り外し可能な、一時的なスペーサまたは一時的な治具などが取り外され、接合された隔離部材を備える電極板またはフィルムが、正確に離間した自己安定性の構造として残される。本発明においては、従来技術で使用されている櫛状部材、把持ノッチおよび/もしくは位置決めノッチ、またはフレーム内のチャネルなどは、特に、近接した電極板またはフィルムに関して、それらの欠点のために全く使用されない。
【0072】
フレーム部材におけるスロット
好適には、一連の縁部のスロットを、上側の隔離フレーム部材および/または下側の隔離フレーム部材に設けることができる。スロットの各々は、へこんだフレーム部分を画定する。隔離部材は、前述のスロットの間に配置することができる。このようにして、スロットの間のリーク電流経路の長さを増加させることができる。
【0073】
いかなる誤解も避けるために、隔離フレーム部材に設けることができるスロットは、電極フィルムの長辺に沿って設けることができるスロットとは異なる。前者では、隔離部材は前述のスロットの間に配置される。後者では、隔離部材は、前述のスロットによって画定されるへこんだ縁部分内に配置され、へこんだ縁部分に接合される。
【0074】
剛性の支持板
好適には、第1対の剛性支持板および第2対の剛性支持板(すなわち、全体で4つの板)を、複数の電極フィルムにおいて、最初の電極フィルムおよび最後の電極フィルムに隣接して平行に設けることができる。第1対の板における各板は、最も外側にある。第1および第2の複数の隔離部材の各々における交互の隔離部材は、(a)第1対の剛性支持板に、および(b)第2対の剛性支持板に、それぞれ接合することができる。
【0075】
換言すると、複数の電極フィルムは、(第2対を形成する)2つの剛性支持板の間に「サンドイッチ」されることができる。複数の電極フィルムは、この「サンドイッチ」で、(第1対を形成し、そして最も外側になる)2つの更なる支持板の間に、更に「サンドイッチ」される。
【0076】
このような配置で、フィルタの上流面および下流面の各々の上において、それらの端部の各々における連続する隔離部材の接合は、第1対の板、第2対の板、第1対の板、第2対の板などのパターンに従う。
【0077】
これらの説明によって示唆されたように、このような剛性支持板を設けることは、フィルタが十分な全体的な剛性および構造的寿命を有することを保証し、各極性の隔離部材を別々に支持してリーク電流を最小限に抑えることを可能にする。
【0078】
更に好適には、電極フィルムを、第二対の剛性板における各板の最も内側の面の上に設けることができる。これは、さもなければ第2対の剛性板に平行し、隣接しうる2つの電極フィルムが、代わりに、前述の「第2」剛性板自体の各々に含まれることを意味する。第1対の剛性板には、そのような電極フィルムが設けられないことに注意されたい。
【0079】
結束用隔離部材
有利には、結束用隔離部材として既知の、追加の隔離部材を、好適には第1および第2の複数の隔離部材にわたる間隔で設けることができる。結束用隔離部材の各々は、第1対の剛性支持板および第2対の剛性支持板の両方に接合される。そのような結束用隔離部材の存在は、フィルタの全体構造に追加の安定性を提供し、2つのファミリーの剛性支持板を接続して、1つの単一の安定したフィルタを形成する。
【0080】
いくつかの例では、結束用隔離部材を、第1および第2の複数の隔離部材の両方の端部の各々に、1つずつ、少なくとも終端位置に設けることができる。換言すると、フィルタの上流面および下流面の両方にわたって広がるいくつかの結束用隔離部材が存在する。それらのうちの4つは「終端」位置に、すなわち、第1および第2の複数の隔離部材の各々の端部にある。これは、空気流に垂直な方向で「より長い」と考えられるフィルタの場合である。代替的に、4つの終端位置の結束用隔離部材は、フィルタ内に存在する唯一の結束用隔離部材であってよい。これは、空気流に垂直な方向で「より短い」と考えられるフィルタの場合である。
【0081】
フィルタの四隅の各々にこのような終端位置の隔離部材が存在すると、フィルタの全体構造に(また更なる)安定性が与えられ、2つのファミリーの剛性支持板を接続して、1つの単一の安定したフィルタを形成できる。
【0082】
シールド
本発明によるフィルタは、複数の電極フィルムに対して平行に延在する第1端部および第2端部を備える。有利には、シールドを、フィルタの前述の端部の1つに設けることができる。前述のシールドは、第1の複数の隔離部材の、隔離部材の端部部分にわたって、フィルタの上流面の上で延在する。このようなシールドは、ストリップの形態であってよい。ストリップは、濾過されていない空気流にさらされるフィルタの上流面の上でのみ、隔離部材の端部を覆う。
【0083】
いくつかの実施形態では、シールドは、フィルタの上流面の上の第1の複数の隔離部材の隔離部材の前述の端部部分から、フィルタの下流面の上の第2の複数の隔離部材の隔離部材の対応する端部部分まで延在できる。好適には、2つのシールドを、フィルタの端部の各々に1つずつ設けることができる。
【0084】
更に好適は、シールドは、それが設けられたフィルタの端部を覆うように延在することができる。このようなシールドは、断面で見るとU字形状を有することができる。代替的に、シールドは、フィルタの端部の周りを包むバンドの形態であってよい。
【0085】
発明の第2態様
発明の第2態様によれば、発明の第1態様によるフィルタを備える静電集塵機が提供される。
【0086】
より良い理解のために、本発明を、(原寸に比例していない)添付の図面を参照して、図面に示される非限定的な例としてのみ、より詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1B】
図1に示される従来技術のフィルタの変更バージョンの部分側面図である。
【
図2A】代替的な従来技術のフィルタの分解斜視図である。部品を、部分的に組み立てられた形態で示す。
【
図2B】
図2Aに示される従来技術のフィルタを、いったん組み立てられた状態で示す斜視図である。
【
図2C】
図2Bに示される組み立てられた従来技術のフィルタを通る概略的な断面図であり、図示された部品を追加的に繰り返して示す。
【
図3A】更なる代替的な従来技術のフィルタの連続的な/交互の側面図である。
【
図3B】更なる代替的な従来技術のフィルタの連続的な/交互の側面図である。
【
図4A】本発明の第1実施形態によるフィルタの側面図である。
【
図4C】
図4Aに示されるフィルタのより詳細な側面図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態によるフィルタの側面図である。
【
図6A】本発明の第3実施形態によるフィルタの側面図である。
【
図7A】本発明によるフィルタの部品の平面図である。
【
図7B】本発明によるフィルタの構成を示す図である。
【
図7C】本発明によるフィルタの構成を示す図である。
【
図8A】
図6Aおよび6Bに示されるフィルタの、部分的に組み立てられた形態で示される、代替的な分解斜視図である。
【
図8B】
図8Aに示されるフィルタを、いったん組み立てられた状態で示す斜視図である。
【
図9】本発明によるフィルタの部品の平面図である。
【
図10A】本発明によるフィルタの構成の概略図である。
【
図11】本発明の第4実施形態によるフィルタの斜視図である。
【
図11A】
図8Bに示されるタイプのフィルタの隔離部材の間のリーク経路を示す図である。
【
図11B】
図11に示されるタイプのフィルタの隔離部材の間のリーク経路を示す図である。
【
図12A】本発明の第5実施形態によるフィルタの斜視図である。
【
図13A】本発明の第6実施形態による、隔離部材の間の電流リーク経路長を増加させる方法を示す図である。
【
図13B】本発明の第6実施形態による、隔離部材の間の電流リーク経路長を増加させる方法を示す図である。
【
図14A】本発明の第7実施形態による、電極にスロットのない場合の、電極の縁部に対する隔離部材の配置を示す図である。
【
図14B】本発明の第7実施形態による、電極にスロットのある場合の、電極の縁部に対する隔離部材の配置を示す図である。
【
図14C】本発明の第7実施形態による、電極にスロットのある場合の、電極の縁部に対する隔離部材の配置を示す図である。
【
図14D】本発明の第7実施形態による、電極にスロットのある場合の、電極の縁部に対する隔離部材の配置を示す図である。
【
図14E】本発明の第8実施形態によるフィルタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
第1実施形態
図4A~4Dは、フィルタ40を示す。フィルタ40は、複数の離間したプラスチック(すなわち非金属の)電極フィルム/板41を備える。電極フィルム/板41は、その主表面の両方に設けられた、例えば酸化インジウムスズの導電性コーティング43による導電性を有する。フィルム41は、高電位および低電位で電力が供給されるように配置され、したがって、2つのインターリーブする交互のセットに、すなわち高電圧フィルム41aおよび低電圧(または接地)フィルム41bに組織化されている。各フィルム41は、前縁X、後縁Y、および空気流の方向(
図4Aおよび4Dに矢印で示される;
図4Bにおいて、空気流はページ内に入る。一方、
図4Cでは、空気流は左から右に流れる)で延在する2つの対向する側縁Zを備える。フィルタ40は、更に、第1および第2の複数の離間した剛性の隔離部材42a、42bを備える。隔離部材42a、42bは、適切な接着剤(例えばUV硬化樹脂)を用いて、電極フィルム41の前縁Xおよび後縁Yの各々に、それぞれ接合されている。各隔離部材42a、42bは、その連続した実質的に平坦な表面を介して、前縁Xまたは後縁Yに接合されている。したがって、隔離部材42a、42bは、フィルタ40の前面および後面の両方に接合されている。
図4Bに示される隣接する隔離部材42aの間の間隔は、約10mmである。隣接するフィルム41の間の分離間隔は、約0.5mmである。空気流の方向のフィルム41の深さは、約15mmである。0.3ミクロンの粒子径で、99.9%の濾過効率が与えられる。フィルタ40は、
図2A~
図2Cに示される従来の静電フィルタと直接に比較され、それを改良したものである。
【0089】
静電集塵機において
図4A~
図4Dに示されるようなフィルタ40を使用すると、「高い」濾過効率(0.3ミクロンの粒子径で99.9%)が達成可能である。そのようなフィルタは、
図2A~
図2Cに示される従来技術のフィルタよりも空気流の方向で著しく、かつ有利にも薄くなる。このような濾過効率における著しい改善は、使用される材料(プラスチックフィルムまたは他の柔軟な軽量材料(従来の金属板と比較して軽量))、フィルムの分離の方法(電極フィルムに対して直接に接着接合を使用)、および比較的近接する板の分離を達成可能とすること、に対する、本発明者らの新規かつ進歩的なアプローチによって達成されるものである。さらに、当業者には理解されるように、フィルムの隔離は、そのようなフィルタを組み込んだ静電集塵機が使用される環境に適合するように、調整することができる。
【0090】
プラスチックフィルム自体は、剛性が非常に小さい。しかしながら、プラスチックフィルムが、一連の隔離ロッドに塗布された接着剤を使用して前面および背面上の両方で共にロックされると、フィルタ構造全体の強度は予想外に大きく、フィルタに2kV/mm以上の電界を印加したときに、板の他の固有の屈曲を許容しない間隔で、隔離部材によって電極フィルムが相互に平行に、かつ固定された分離間隔で保持される安定した強固なフィルタを作成するのに適している。
【0091】
近接するフィルムの分離がフィルタ40で採用されているために、フィルタ全体にわたって圧力降下が増加する傾向があるかもしれない。これを最小限に抑えるためには、フィルムの厚さに対するフィルムの分離の最大比を規定することが望ましい。これは、約0.03mm~約0.1mmの範囲の厚さの「薄い」プラスチックフィルム板を使用することによって達成される。このような厚さのプラスチックフィルムは、固有の剛性がほとんどなく、適切に支持されなければ自重で平坦な状態から変形する。比較すると、従来のフィルタに使用される金属板は、剛性であり、元来の固有の平坦性を維持するためのサポートは、たとえあったとしても、非常に少ない。
【0092】
薄いプラスチックフィルムを用いて剛性構造を作成するために、発明者らは、剛性の隔離部材を、フィルタの前面および背面(すなわち、フィルタへの空気流入およびフィルタからの空気流出の領域をそれぞれが画定する2つの面)上の電極フィルム板の前縁および後縁上に、直接に接合できることを発見した。板自体は、プラスチックまたは薄い金属箔(または同様の)材料製であるため、重力のもとで板の形状を維持するには柔軟性が高すぎる。しかしながら、これらの剛性の隔離部材は、フィルム板を、フィルタを備える板のスタックにおいて、平行に、かつ正しく分離させて保持する
【0093】
フィルタ40では、隔離部材42a、42bの表面にわたる経路を通るリーク電流は、隣接する高電圧フィルム41a、低電圧フィルム41bの間の間隔D1(
図4Cに示される)、印加電圧、汚れの蓄積度、汚れの種類、および湿度レベルに依存する。このようなフィルタにおいては、フィルタ40内に電極フィルム41が存在するのと同じ数だけ、リーク経路が存在する、と理解される。これらのリーク経路はすべて電気的に平行であるので、フィルタ40内に電極フィルム41がより多く設けられると、リーク電流がより大きくなる。
【0094】
電流リークの他の潜在的な源は、電極フィルム41の縁部、例えば、
図4DのCにおけるコロナである。フィルム41の前縁Xおよび後縁Yにおける電界強度は、フィルム自体の間よりも高くなる。この電極フィルム縁部の電界強度は、印加電圧とフィルム縁部の曲率半径に依存する。電界強度が高いと、コロナが発生する。特に、時間の経過と共にフィルタ40の前縁X上に、例えば髪の毛または汚れのデンドライトであるデブリが蓄積されると、コロナが発生する。
【0095】
したがって、本発明のこの第1実施形態によるフィルタ40は、空気中の粒子状物質の負荷が少なく、高度の隔離が必要とされない環境での静電集塵機での使用に最も適用可能である。
【0096】
もちろん、フィルタ40に関して生じるかもしれない電流リークの可能性のある源を低減させることは、前述のフィルタをより広く適用可能にするために有利である。
【0097】
第2実施形態
したがって、本発明の第2実施形態は、
図5Aおよび
図5Bに示される。
図5Aおよび
図5Bにおいては、
図4A~
図4Dに示されるフィルタ40と類似の設計のフィルタ50が示される。実際、フィルタ50とフィルタ40との間の類似性は、類似の要素に類似の参照番号が付与されるようなものであり(ただし、フィルタ50に関しては、数字を10だけ上げている)、相違点のみを以下に記載する。
【0098】
この第2実施形態では、電極フィルム51の主表面の両方に設けられた、例えば酸化インジウムスズの導電性コーティング53は、ギャップ54を形成するように、中央に配置されて、フィルム51の前縁X、後縁Yの各々からへこんでいる。この結果は、二つある。第一に、表面のリーク経路は、
図4Cに示される第1実施形態のD1から、
図5Aに示されるこの第2実施形態のD2まで増加している。間隔D2は、2つの隣接するフィルム51の間の分離間隔と、2つのギャップ54の間隔の合計として計算される。第二に、フィルムの前述のエッジがもはや導電性でなく、したがってコロナ放電をサポートすることができないので、フィルムの前縁Xおよび後縁Yにおけるコロナ放電は低減または排除されている。さらに、導電性コーティング53のエッジ上のコロナ放電に対するあらゆる傾向は、下にある絶縁フィルム基板のおかげで、抑制される。
【0099】
この第2実施形態によって、効率のレベルがより長い期間にわたって高く維持されるように、隔離のレベルが改善される。
【0100】
もちろん、フィルタ50に関して生じるかもしれない電流リークの可能性のある源を更に低減させることは、再び、前述のフィルタをより広く適用可能にするために有利である。
【0101】
第3実施形態
したがって、本発明の第3実施形態は、
図6Aおよび
図6Bに示される。
図6Aおよび
図6Bにおいては、
図5Aおよび
図5Bに示されるフィルタ50と類似の設計のフィルタ60が示される。実際、フィルタ60とフィルタ50との間の類似性は、類似の要素に類似の参照番号が付与されるようなものであり(ただし、フィルタ60に関しては、数字を10だけ上げている)、相違点のみを以下に記載する。
【0102】
この第3実施形態では、電極フィルムの前縁Xおよび後縁Yの各々に、一連のノッチ65が切り込まれている。図示のように、ノッチ65は、高電圧フィルム61aと低電圧フィルム61bにおいて交互の位置に設けられている。これにより、個別の隔離部材63a、63bの各々が、一方の極性のフィルムのみに接合されている。それによって、隣接する高電圧フィルム61aと接地電極フィルム61bとの間の、表面の電流リーク経路が排除される。フィルタ60内の任意の残りの表面のリーク経路は、(本発明の第1実施形態および第2実施形態の各々におけるリーク経路と比較して)はるかにより長い距離で、より高い電気抵抗を有する。
【0103】
この第3実施形態は、フィルム61a、61bの2つのグループが、各々が独自の複数の隔離部材63a、63bを備える2つの別個のファミリーとして支持されることを可能にする。そのため、最も高いレベルの隔離を提供する。
図6Bは、隔離部材63aが高電圧フィルム61aの前縁および後縁に接合されており、隔離部材63bがノッチ65に隣接し、かつノッチ65から離間していることを示す。図示されていないが、当業者であれば、この実施形態を低電圧フィルム61bに対して再現して、隔離部材63bを前述の低電圧フィルム61bの前縁および後縁に接合させ、隔離部材63aをノッチ65に隣接させ、かつノッチ65から離間させる方法を、容易に理解することができる。その結果、電極フィルムの二つの極性の間のリーク経路長が最大になり、一方リーク電流が最小になる。
【0104】
したがって、本発明のこの第3実施形態によるフィルタ60では、汚れの蓄積がリーク電流を著しく増加させない。そのため、高効率が維持され、(比較的に)とても長い寿命を有することになる。このようなフィルタ60は、粒子負荷が高く、粒子が導電特性を有する傾向がある空気清浄環境において特に有用である。
【0105】
フィルタ60の構成の更なる変更形態では、空気流の方向で空間が制限される用途において、電極フィルム61の後縁Yとその上の導電性コーティング63の対応する縁部との間のギャップ64と比較して、電極フィルム61の前縁Xとその上の導電性コーティング63の対応する縁部との間のギャップ64を、前縁のギャップがより大きくなるように増加させることが有利な場合がある。これは、前縁X上に汚れおよび他のデブリが最も密に堆積し、濾過された空気流と接触する後縁Yでは、デブリの堆積がはるかに少ないためである。これには、コロナおよびリーク電流が効率を低下させる前に、フィルタの寿命をより長くすることにつながる。後縁におけるギャップがより小さいことの主な利点は、空気流の方向でフィルタをより小さくすることができること、またはフィルタ全体の深さが同じであればフィルタの活性領域の深さを増加できることである。
【0106】
本発明の第3実施形態による、空気流方向の深さが15mm、フィルム分離間隔が0.5mmである薄いフィルタにおける高い効率性能は、実施例1として以下の表1のデータにより実証される。また、深さ50mm、板間隔2mmである市販の従来技術のフィルタ(例えば、フィリップス(登録商標)空気清浄機モデルAC4052/00に適合させるべく入手可能なPhilips(登録商標)CRP417/01 ESP粒子フィルタ)のデータも提供されている。従来技術のフィルタは、取り付け可能な空気清浄機の外側で動作させた。粒子を帯電させるためにフィールドチャージャを使用し、本発明のフィルタと同様にその効率を測定した。
【0107】
【0108】
従来技術のフィルタが、実施例1のフィルタより3倍以上深いにもかかわらず、性能効率は、特に、2m/sおよび3m/sのフィルタを通る空気速度において、かなり悪いことに留意されたい。
【0109】
組み立ての方法
本発明の第1、第2、または第3実施形態のいずれかによるフィルタを組み立てるためには、多数の電極フィルムの正確な位置決めが必要である。必要とされる電気的絶縁を維持するためには、新しい構成方法および異なる隔離方法が必要である。
【0110】
図7Aは、絶縁材料、好適にはポリプロピレンのようなプラスチック材料から製造された矩形の隔離フレーム70を示す。射出成形は、特に、適切な製造技術である。フレーム70のサイズは、フィルタのサイズに適合するように選択される。実際には、完成したフィルタの前面および背面の各々に1つずつの、2つの隔離フレームが必要である。フレーム70は各々、ロッド71の形態である複数の離間した隔離部材を組み込んでいる。
【0111】
図7Bは、スペーサ治具73内に保持された複数のプラスチックの電極フィルム72を示す。フィルム72は、スペーサ治具73の両端の圧力によって、必要とされるフィルタ設計における間隔および方位で、完全に平坦になるように保持される。所望の電極フィルムの分離間隔に等しい厚さの、取り外し可能なスペーサストリップ(図示せず)は、電極フィルム72の間に一時的に配置される。治具73は、フィルム72のスタックおよびインターリーブされたセパレータストリップ(図示せず)を圧縮する。フィルム72の前縁および後縁は、治具73から突出して、2つの隔離フレーム70の各々を、前述の各々の縁部に接着することを可能にする。
【0112】
2つの隔離フレーム70は、フィルム縁部に接触するように意図した隔離スペーシングロッド71の表面上に接着剤でコーティングされる。次いで、隔離フレーム70は、治具73から突出するフィルムの縁部に接触して配置される。これによって、
図7Cに示すように、隔離ロッド71上の接着剤層が、フィルムの縁部を隔離フレーム70の隔離ロッド71に接合させる。接着剤が乾燥する、接着状態になる、さもなければ硬化されると、治具73内のスペーサストリップは取り外される。次いで、2つの隔離フレーム70をフィルムスタックの外部で相互に接合させて、フィルタのための安定した「ボックス」フレームを作成することができる。
【0113】
このようにして、すべての電極フィルム72を隔離ロッド71に同時に接合することによって、フィルム72を、近接して分離させて1つのフィルタに実用的に組み立てることを可能にする。
【0114】
特に、本発明の第3実施形態のフィルタを参照すると、フィルタを組み立てるこの方法、および結果として得られる接合されたフィルタが、
図8Aおよび8Bに示されている。
【0115】
明確にするために、最上部の電極81のみがノッチと共に示されており、2つのフィルムのファミリー(高電圧および接地)の各々を、独自のセットの絶縁ロッド71に交互に接合して、その電気的絶縁を維持できるようにしている。
【0116】
相補的なノッチ付きの電極フィルムの一例が、
図9に示される。逆位相のノッチ90を備える高電圧電極フィルム91および接地電極フィルム92が示される。この反対の位相により、フィルム91、92の前縁および後縁の残り(ノッチのない部分)を、隔離部材に接着させることができる。その結果、異なる極性のフィルムが、対応する別々の隔離部材に接合される。
【0117】
代替的な組み立ての方法
電極フィルムのスタックを安定化して支持する代替的な方法が、
図10Aおよび10Bに示される。
【0118】
上述のように電極フィルム110を剛性の隔離フレームに接合する代わりに、接着剤、パテ、樹脂などのストリップ、または溶融材料111を、例えば、ノズル112から電極フィルム110の前縁および後縁上に押し出すことによって堆積させることができる。その際、フィルム110を同様の治具内で保持し、かつ/または圧縮しながら、一時的なスペーサストリップ(図示せず)でフィルム110を正しい所望の間隔で保持する。
【0119】
接着剤または溶融物は、好適には一定の流れで送達されて、スタックの高さにわたって走る均一なビードを形成することができる。これは、硬化すると、電極フィルムに接合し、一時的なスペーサストリップによって決定される間隔で、堅固な分離を作り出す。次いで、一時的なスペーサストリップを取り外すことができる。
【0120】
この接着剤ビードは、硬化されると、使用されるプラスチックフィルム材料の固有の柔軟性によって引き起こされる電極フィルムの分離における不規則性に適合する。フィルムを所定の位置に保持する従来技術の固体の「櫛」の挿入を妨げるこの不規則性は、わずかに誤って配置されたフィルムの縁部が例え一つであっても、「櫛」を全体として、スタックのすべてのフィルムへ取り付けることを妨げる、または、そうでなければ、反対の極性の2つの隣接フィルムが「櫛」の歯の同じ把持用凹部に入り、そのために短絡が引き起こされることが、理解されよう。
【0121】
好適には、接着剤など、または溶融物は、塗布時間と硬化時間との間に重力および/または表面張力のもとで流れることによるビードの誤配置を防止する適切な粘度を有する。ビード接着剤または溶融物があまりにも容易に流れると、それが、所望のフィルタ効率および/またはフィルタの圧力降下および/または電気的絶縁を損なう程度にまで、電極フィルムの間の空間に入る。例えば、反対の極性の電極が偶発的に接合されて、ファミリーの間の隔離を低減させる可能性もある。塗布後に硬化する任意の半流体の材料を使用できることが理解されよう。例えば、重合性樹脂、熱硬化性樹脂、接着剤、糊、ホットメルト接着剤、ワックスなどである。このようにして製造された平行なビード(隔離部材)は、その後、剛性のフィルタアセンブリを作成するために、適切なフレームによって共に「ロック」することができる。
【0122】
第4実施形態
もちろん、
図6Aおよび6Bに示されるフィルタ60に関して生じるかもしれない電流リークの可能性のある源を更に低減させることは、再び、前述のフィルタをより広く適用可能にするために有利である。
【0123】
したがって、本発明の第4実施形態が
図11に示される。
図11には、
図8Aおよび
図8Bに示されるフィルタと類似の設計の、フィルタ80がある。
【0124】
以下の説明において、
図11のフィルタ80の斜視図は、フィルタの上流面が見る人の方を向いており、フィルタの下流面が図面の後方にある。したがって、空気は、正面から図面に、すなわち紙面に入る方向でフィルタに入り、フィルタの上流面に入り、フィルタの背面で外に出る。
図11に示される向きで見た場合の、フィルタの最上縁は最上部と呼ばれる。同様に、最下縁は、最下部と呼ばれる。
【0125】
この第4実施形態では、電極板またはフィルム120(高電圧)および121(接地)は、隔離部材123b(高電圧電極を支持する)および123c(接地電極を支持する)によって、フィルタの上流面および下流面の上で支持される。加えて、高電圧電極120は、結束用隔離部材123aによって支持されている。これらの部材は、2つのファミリーの剛性支持板を結合して、1つの安定した剛性フィルタを形成する。
【0126】
結束用隔離部材を含むすべての隔離部材は、電極板の縁部に接着剤で接合されたプラスチックロッド、または電極板もしくはフィルムに対する接着剤の、フィルムもしくはビード状の接合部であってもよい。結束用隔離部材は、より大きな断面積を有することによって、構造的な剛性を更に高めることができる。
【0127】
電極および隔離部材のアセンブリ全体の剛性を提供するために、隔離部材の各々は、比較的剛性の高い支持板124aまたは124bに接合されることによって、フィルタの頂部および底部で終端する。隔離部材123cは、2つの支持板124a(「スタック」の頂部に1つ、また「スタック」の底部に1つ)の各々に接合される。一方、隔離部材123bは、支持板124b(再び、「スタック」の頂部に1つ、また「スタック」の底部に1つ)に接合される。したがって、合計で、フィルタ「スタック」の頂部に2つ、底部に2つの、4つの剛性支持板124a、124bがある。これらの4つの支持板は、第1対の剛性支持板および第2対の剛性支持板を形成する。これらは、複数の電極フィルムにおいて、最初の電極フィルムおよび最後の電極フィルムに隣接して設けられる。第1対の板における各板は、最も外側に位置している。第1および第2の複数の隔離部材の各々における交互の隔離部材は、(a)第1対の剛性支持板に、および(b)第2対の剛性支持板に、それぞれ接合される。
【0128】
その結果、
図11を参照すると、高電圧電極と接地電極との間のリーク電流経路の数が、大幅に低減される。すなわち、その間に10のギャップを有する11の隔離部材が、図示の構成ではなく、すべて同じ支持板またはフレーム上で終端すると仮定すると、合計40のリーク電流経路が存在することになる(フィルタの上流面および下流面上の両方において、上下の10のギャップの各々から40が発生する)。換言すると、リーク電流経路の数は、隔離ロッドの間のギャップ数の4倍に等しかったものが、
図11Bに示すように(後述する)、フィルタの両面上の上下で、4つの支持板124aおよび124bをブリッジする結束用隔離部材123aによって提供されるギャップ、すなわち8つのリーク経路の数に等しくなるように低減される。
【0129】
実際には、必要とされるフィルタは、ここで例示したものよりもはるかに大きくなり、何百もの隔離部材を備える可能性がある。そのため、リーク電流経路の数を減らすことが非常に重要になる。
【0130】
当業者には明らかなように、支持板は以下の条件で、多くの形態および方位をとることができる。すなわち、各々が隔離部材の対応するファミリーを高い剛性で保持し、その結果、それらが接合する隔離部材および電極が2つの分離されたファミリーとして保持され、2つの支持板自体が共にブリッジされて剛性フィルタアセンブリ全体を形成する場所でのみ接続されるという条件である。必然的に、そのようなブリッジ箇所の数は、
図7A、
図7B、
図7C、
図8Aおよび
図8Bの隔離フレーム70に示されるのと同じ構造に対するすべての隔離部材の終端によって提供されるリーク経路の数よりも、著しく少ない。大型フィルタの場合、支持板をブリッジする結束用隔離部材123aの数を増やして、フィルタ全体の剛性を維持することができる。
【0131】
図8Bおよび
図11に示すタイプのフィルタで典型的に生じるリーク経路は、それぞれ、
図11Aおよび
図11Bに示される。点線の矢印133は、板の高電圧セットから板の接地セットへのリーク電流経路を示す。
図11Aにおいて、隔離フレーム70は、隔離部材71および72を支持する。これらの隔離部材は、それぞれ、高電圧電極および接地電極を交互に支持する。隔離部材の表面上に汚れおよび湿気が存在する場合、リーク電流は、高電圧電極から、隔離部材71に沿って、隔離フレーム70上に流れ、その結果反対極性の隔離部材72上に流れ、最後に接地電極上に流れる。明らかに、隔離部材の間のギャップと同数のリーク経路がある。図示の例では、各フィルタ面に10のギャップがあり、(フィルタの上部、底部、前部、および後部の各々の上の10の経路を合計することによって)合計40のリーク経路がある。
【0132】
対照的なのは、
図11Bに示される本発明の第4実施形態によるリーク経路の数である。ここでも、リーク電流経路は、点線の矢印133で示されている。このフィルタも、隔離部材の間に10のギャップを備えるが、2極の板の間のリーク電流経路の数は4に減少し、合計の経路は
図11Aよりも長くなる。この実施形態では、電流が、高電圧電極120から隔離部材123b上に流れ、したがって支持板124bに流れる。次いで、これらの電流は、まとまって支持板124bに沿って流れ、結束用隔離部材123aの上端および下端によって提供されるブリッジを介して、支持板124aへと渡る。このブリッジは、2つのファミリーの電極および隔離部材を高い剛性で共に結束する。経路長は、
図11Aに示されるフィルタよりも著しく長い。電流が支持板の間に流れるのは4点だけである。それによって、リーク電流が大幅に低減される。
【0133】
第5実施形態
リーク電流を更に低減させることができる本発明の更なる態様が、
図12A、12B、および12Cに示される。理想的に絶縁する隔離部材の上に汚れが蓄積されて部分的に導電性になると、リーク電流が大幅に増加する。そのため、シールドを設けて、フィルタの上流側の各隔離震部材の上部および底部を、汚れを含む空気との接触から保護することができる。
図12Aを参照すると、
図11、
図11Aおよび
図11Bのフィルタ80には、隔離部材123の上部領域および下部領域との間の接触および汚れを含んだ空気の流入を、防止する、または低減させるシールド140が取り付けられている。
図12Bは、
図12Aにおけるフィルタの外部の一部を切り取った斜視図である。シールドによって保護される隔離部材の領域は、括弧150によって示される。
図12Cは、同じフィルタを側面図で示す。矢印151は、入ってくる汚れた空気を示す。括弧150は、シールド140によって保護される隔離部材123の領域を示す。濾過された空気は、矢印152で示すようにフィルタを出る。
【0134】
このようにして保護される隔離部材の各々について結果として生じる領域は、比較的清浄に保たれ、かつ高い電気抵抗を保つことになる。したがって、リーク電流が大幅に低減される。これは、シールドが取り付けられている場合にはシールドによって保護される位置で、2つの反対極性の支持板をブリッジする
図11の結束用隔離部材123aで、特に重要である。シールドは、本発明の前述の実施形態のいずれかで採用できることが理解されよう。
【0135】
第6実施形態
本発明の、また更なる態様が存在する。それは
図8Aおよび8Bに示されるタイプのフィルタで利用することができる。この場合、すべての隔離部材は、すべてがこのフレームと接触し、リーク電流が上述のように流れるように、隔離フレーム70内に支持される。
図13Aを参照すると、隔離部材71aは接地電極を支持する。隔離部材71bは高電圧電極を支持する。(点線の矢印133によって示される)リーク電流は、隔離部材の間隔にわたって、隔離フレーム70に沿って流れることになる。
図13Bを参照すると、
図13Aと同じ構成であるが、隔離部材の間の電流経路の長さが、隔離フレーム70にスロット170を設けることによって増加されている点で異なる。この場合、電流はスロットの周りを流れる必要があり、電流経路長(および、したがって経路の電気抵抗)は、スロットの深さの2倍で増加し、したがってリーク電流が低減される。これらのスロットの使用は、本発明の実施形態のいずれにも使用できることが理解されよう。
【0136】
第7実施形態
上述のように、特定の用途、例えばある空調機内部の限られた空間内では、空気の流れ方向におけるフィルタの深さを最小限に抑えることが重要である。フィルタの上流面および下流面の上に隔離部材を配置すると、このフィルタの深さは、隔離部材の厚さの2倍で増加することになる。これを最小限に抑えるために、電極の縁部にスロットを設けてへこんだ縁部分を形成し、そこに隔離部材を接着剤によって接合することができる。
【0137】
図14Aを参照すると、隔離部材160は、接着剤161によって電極162の縁部に接合されている。スロットは設けられていない。したがって、隔離部材は、電極の縁部から突出し、空気流の方向でフィルタの深さを増加させる。この配置、および
図14B、14Cおよび14Dに示される以下の配置において、隔離部材は、代替的に糊のビードとすることができると理解されよう。
【0138】
図14Bは、スロット163内の電極162のへこんだ縁部に接合された隔離部材160を示す。そのため、隔離部材のフィルタの面からの突出は、より少ない。それによって、フィルタの深さが低減される。
【0139】
図14Cは、接着剤161を用いて、電極162のへこんだ縁部に接合された隔離部材160を示す。そのため、隔離部材は、へこんだスロット163の実質的に全幅を占め、一方でフィルタの深さも低減される。
【0140】
図14Dは、フィルタの面と同一平面上にあるように、スロット163内で電極162のへこんだ縁部に接合された隔離部材160を示す。そのため、フィルタの深さが最小化されている。
【0141】
これらの配置のすべてにおいて、スロットがフィルタの深さを低減させるという唯一の目的を有して備えられており、それ自体では、電極を隔離部材に固定しないと理解されるべきである。この固定は、完全に、接着剤によって電極の縁部(へこんだ縁部)上に提供される接合によるものである。スロット163によっては、隔離部材の把持は提供されない。(接着剤161などによって、または隔離部材が接着剤などで形成されることによって)隔離部材を電極の縁部に接合することが必須である。
【0142】
この観点から、
図14Cに示されるノッチ配置では、接着剤161が塗布されて、隔離部材160をスロット163の3つの縁部すべてでスロット163に接着したと仮定しても、接着の同じ原理が適用されると理解されよう。換言すれば、固定は完全に、スロット自体による隔離部材の把持ではなく、スロットの縁部への隔離部材の接合によるものである。実際、本発明で採用されるような薄い電極では、電極のノッチは、電極を所定の位置に保持するための、それ自体の強度および剛性を有していない。結合せず、把持だけに頼って構築されたフィルタは、有効な把持手段がなく、機械的な完全性が低く、通常の取り扱いを受ける、または電界がかけられると、崩壊するであろう。
【0143】
第8実施形態
図14Eは、(a)空気流の方向でフィルタの深さを低減させるために、隔離部材をその中で電極に接合できるスロットと、(b)隔離部材が電極と接触しないように、隔離部材を収容するノッチと、の両方を備えるフィルタを示す。
図14Eを参照すると、電極64には、隔離部材63bを収容する一連のノッチ65と、スロット163と、が備えられている。電極64を支持する隔離部材63aは、スロット163内で電極の縁部に接合され、隔離部材が空気流の方向でフィルタの全体的な深さ内にある。ノッチ65は十分な深さがあるため、隔離部材63bも空気流の方向で、フィルタの全体的な深さ内に位置決めされる。これによって、フィルタの深さを最小限に抑えることができる。これは、例えば空調設備の内部など、空間が限られている場所にフィルタを配置する場合の利点である。
【0144】
電極材料
本明細書に含まれる本発明の特定の説明のすべては、すべての非金属電極を参照して説明された。しかしながら、そのようなフィルタが適切でない状況が存在する。本発明はまた、それらの状況を想定し、それらの状況に適用される。したがって、前述の特定の説明における非金属電極へのすべての言及は、以下でより詳細に論じられるように、すべての金属電極、または(規則的な方法で相互の間にインターリーブされる)金属電極と非金属電極との組合せのいずれかを参照することによって、置き換えることができる。
【0145】
特に、本発明によるフィルタが、高温ガスの濾過の間のような特定の環境において動作する場合に、電極フィルムが遭遇し得る高温の条件下では、本発明の上記の実施形態において使用されるポリマー電極フィルムが、ポリマー融点に近づくにつれて軟化する傾向があり得る。これは重力、および印加される電界の影響下で、間隔の狭い電極に恒久的な歪みをもたらす。これにより、厳しい環境における特定の状況下で、上述の欠点を有する空気を通る電気放電を開始するのに十分なほど、分離が近接する電極に沿ったポイントが生成される可能性がある。極端な場合には、隣接する電極が接触し、短絡およびフィルタの故障の原因となることがある。これらの条件下では、高温でも幾何学的に安定なままである金属電極を使用することが有利である。このような状況下では、隔離部材を、例えばセラミックのような耐熱性材料で作ることができる。
【0146】
金属電極では、金属電極の外側縁部を耐熱性の非導電性コーティングで覆うことによって、導電性電極表面と電極の縁部との間の、縁部のギャップという利点を得ることができる。同じ電極厚さに対して、金属電極はポリマー電極よりも硬い。したがって、支持する隔離部材の間隔を増加させることができる。その結果、より少ない数の隔離部材が、汚れた空気中および/または湿った空気中で、より少ないリーク経路を提供する。したがって、不所望なリーク電流が全体的に減少する。
【0147】
さらに、隔離部材の数がより少ないと重量が減少する。これにより、ポリマー電極とは対照的な金属を使用することによって引き起こされる不可避の余分な重量を、ある程度相殺することができる。
【0148】
縁部のギャップのない金属電極を使用する場合には、特に高湿度条件における空気による絶縁破壊を避けるために、電極の間隔と印加電圧との間でバランスを取らなければならない。例えば、ポリマー電極フィルタは、1.5kVの印加電圧で0.5mmの板間隔で動作できる。対照的に、金属電極フィルタは、同じ状況下で、1kV以下の印加電圧で動作させる必要がある。
【0149】
このようなフィルタ内の典型的な金属電極は、厚さ0.05mm~0.2mmの板金製である。好適には、金属はステンレス鋼である。ステンレス鋼の1つの利点は、特に高湿度の条件下で腐食に耐えることである。ステンレス鋼電極の好適な厚さは、0.1mmである。