IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダスティ ロボティックス インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図1
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図2
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図3
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図4
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図5
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図6A
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図6B
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図6C
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7A
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7B
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7C
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7D
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7E
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図7F
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図8
  • 特許-風防を用いて印刷する移動ロボット 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】風防を用いて印刷する移動ロボット
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240924BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240924BHJP
【FI】
B41J2/01 303
G05D1/43
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022516236
(86)(22)【出願日】2020-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2020050594
(87)【国際公開番号】W WO2021051026
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】62/900,278
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521465256
【氏名又は名称】ダスティ ロボティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DUSTY ROBOTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジョセフ ハーゲット
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソプ リー
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-289638(JP,A)
【文献】特開2009-096057(JP,A)
【文献】特開昭57-110105(JP,A)
【文献】特開昭49-097319(JP,A)
【文献】特開2005-324377(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107685539(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動印刷ロボットであって、
駆動システムと、
制御システムと、
水平な施工面上に印刷するために前記制御システムの指示の下でインク液滴を吐出するように構成されたプリントヘッドを有する印刷システムと、
前記プリントヘッドから前記水平な施工面までの軌跡の少なくとも一部分に沿う前記インク液滴の風による偏向を緩和するための風防と、
を含み、
前記風防は、前記水平な施工面に関連付けられた表面の破片及び表面の凹凸に適応するように弾性的に適合可能である、
移動印刷ロボット。
【請求項2】
前記プリントヘッドは、2ピコリットルから100ピコリットルの液滴サイズの範囲でインク液滴を吐出する、請求項1に記載の移動印刷ロボット。
【請求項3】
前記風防は、複数の弾性ヒンジ式フラップを含む、請求項1に記載の移動印刷ロボット。
【請求項4】
前記風防は、複数の入れ子状の内側及び外側風防部を含む、請求項1に記載の移動印刷ロボット。
【請求項5】
前記風防の少なくとも一部は、取り外し可能或いは調節可能である、請求項1に記載の移動印刷ロボット。
【請求項6】
移動印刷ロボットであって、
駆動システムと、
制御システムと、
水平な施工面上にレイアウトを印刷するために前記制御システムの指示の下でインク液滴を吐出するように構成されたプリントヘッドを有する印刷システムと、
建設現場の衛生及び安全の最大風速である40MPH以下の風速の範囲にわたって前記水平な施工面に到達する前記インク液滴の風による偏向を2mm未満に緩和するための風防と、
を含み、
前記風防は、複数の弾性屈曲可能なフラップを含む、移動印刷ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動ロボット技術に関する。より詳細には、本開示は、水平面上にマーキングを実施し得る移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
移動ロボットは、様々な用途に使用され得る。移動ロボットが使用され得る環境の1つは、建設現場のような空間であり、移動ロボットは、その環境において様々な機能を実行し得る。そのような用途の1つは、建設中の建物のコンクリート床のような表面における図面、テキスト、又は他のマーキングの印刷である。
【0003】
そのような移動印刷ロボットを作るための課題の1つは、ロボットがマーキングを行わなければならない精度である。建設用途では、1/16インチ(1.6mm)未満の精度が一般的に要求される。移動ロボットの位置決めは、一般的にこの精度ではない。空間内のロボットの位置(「定位」)を決定するための一般的に受け入れられているアルゴリズムは、壁のような既知の目印からのロボットの距離のセンサ信号(典型的にはLiDAR)を使用する。しかしながら、最上級のLiDARユニットでさえもセンチメートル(cm)以内の精度までの距離をリポートするのみであり、ロボット自身の位置を正確に決定するロボットの能力を制限する。
【0004】
建築レイアウトの現行の運用は、床面を物理的にマークすることで、壁、ダクト、及び配線のような、建物の構成要素をレイアウトするために人間の作業員を雇うことである。位置は、建築家によって作成された図面から参照され、典型的には大きなロール状の設計図又はタブレットコンピュータのデジタル形式で現場に搬送される。典型的なレイアウト作業は、コンクリートの柱又は測量士によってコンクリートに記された制御点のような既知の目印からの距離を計測するためにメジャーを使用すること、及び直線をマークするために2つのピンの間にチョークで覆われた糸を張ることを含む。線の位置を示すためにメジャーを使用することの代替は、所望の位置の1~2mmまでの公差内に線の端点を正確に配置するためのトータルステーションの使用である。これは、レイアウト作業のスピード及び精度の両方を向上し得る。
【0005】
レイアウトを印刷するために移動ロボットを使用する問題のいくつかは、建設環境において移動ロボットを操作することに関連付けられた様々な実用的な問題を含む。例えば、建設現場の環境条件は、広範囲にわたって変化し得る。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、移動印刷ロボットのインク液滴の風による偏向を防止するための風防を提供するシステム及び方法に関する。
【0007】
例示的な移動印刷ロボットは、駆動システムと、制御システムと、水平な施工面上にレイアウトを印刷するために制御システムの指示の下でインク液滴を吐出するように構成されたプリントヘッドを有する印刷システムとを含む。移動ロボットはまた、プリントヘッドから水平な施工面までの軌跡の少なくとも一部分に沿うインク液滴の風による偏向を緩和するための風防を有する。風防は、水平な施工面に関連付けられた表面の障害物及び表面の凹凸に適応するために弾性的に適合可能である。
【0008】
しかしながら、特徴及び利点のこのリストは全てを網羅するものではなく、多くの追加の特徴及び利点は企図され、本開示の範囲に含まれることを理解されたい。さらに、本開示で使用される用語は、主として可読性及び教示目的のために選択されており、本明細書に開示される対象の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示は、類似の要素を参照するために同様の参照番号が使用される添付の図面の図において、例として示され、限定するものではない。
【0010】
図1図1は、一実施形態による移動印刷ロボットシステムを示す図である。
図2図2は、一実施形態による移動ロボットの主要な構成要素のブロック図である。
図3図3は、一実施形態による風防付き移動印刷ロボットの斜視図である。
図4図4は、一実施形態による風防付き移動印刷ロボットの斜視図である。
図5図5A及び図5Bは、一実施形態による弾性的に適合可能な風防の断面図を示す。
図6A図6Aは、一実施形態による風防なしで施工面上に線を印刷する移動ロボットのプリントヘッド部分を示す。
図6B図6Bは、一実施形態による追加の風防付き移動ロボットのプリントヘッド部分を示す。
図6C図6Cは、一実施形態による切り欠き部を有する風防付き移動ロボットのプリントヘッド部分を示す。
図7A図7Aは、一実施形態による剛性ウィンドシールド部及び可撓性接合又はヒンジ式接合を有する、プリントヘッドのための風防の一例の断面図を示す。
図7B図7Bは、一実施形態によるブリストルタイプの風防付き風防の断面図を示す。
図7C図7Cは、一実施形態によるインクを滴下から防止するための内側貯留部から形作られた風防部付き風防の断面図を示す。
図7D図7Dは、一実施形態による風防部がプリントヘッドノズルを保護するために任意に折り畳まれる風防の断面図を示す。
図7E図7Eは、一実施形態による複数の入れ子状の風防部を有する風防の断面図を示す。
図7F図7Fは、一実施形態によるプリントヘッドを保護するために任意に折り畳まれる複数の入れ子状の風防部を有する風防の断面図を示す。
図8図8Aは、一実施形態による弾性的に適合可能な風防が表面の高さにおける表面の凹凸に適応する方法を示す断面図である。図8Bは、一実施形態による弾性的に適合可能な風防が表面の破片に適応することを示す断面図を示す。
図9図9は、一実施形態によるエアカーテンが環境から風を遮断する実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、環境内を動き回って特定の場所にマーキングを行う移動ロボットを支援するために風防を使用するシステム及び方法を説明する。本願で使用されるように、風防は、外部風による印刷媒体(例えば、インク液滴)の風による偏向を低減する構造である。このように、風防は、ウィンドシールドよりも、より広い用語であるが、風防は、ウィンドシールド、又はウィンドシールド部を含んでもよい。しかしながら、風防は、固形の又は連続したシールドである必要はなく、隙間、穴、スリット、切り欠きなどを有してもよい。風防はまた、連続した遮風部を有するような、複合部を含んでもよい。風防は、インク液滴の軌跡の実質的な部分に沿う風の速度を減少させることによって、印刷操作に対する風の影響を緩和し得る。風防は、静風領域を作成するように設計されてもよいが、場合によっては風速の減少で十分であり得る。風防はまた、弾性可撓性材料から形成されてもよく、或いは風防が屈曲し、蝶番で動き、或いは撓うことを可能にする特徴を有してもよい。
【0012】
図1の例を参照すると、移動印刷ロボット104は、コンクリート表面上で自律的にナビゲートし、建物がどのように施工されるべきかという建築家の計画に対応して床に建物のレイアウトを印刷し得る。正しい、正確なレイアウトは、建設事業にとって最も重要である。例えば、壁が誤った場所に施工され、取り壊されて再施工されなければならない場合、間違って描画されたレイアウトは、コスト高なリワークを生じ得る。間違ったレイアウトはまた、各国の建築基準によって壁から指定された距離にトイレを配置することができないような、基準違反を生じ得る。
【0013】
移動印刷ロボットの周りの環境における風は、印刷媒体(例えば、インクジェット印刷のためのインク液滴)の軌跡の偏向の原因となり得、場合によってはレイアウト精度を低下させる。風が強すぎる場合、許容範囲内で正確な印刷ができない可能性があり、環境条件が変わるまで印刷操作を中止せざるを得ないことがある。同様に、強風は、一斉に印刷を妨げ得る。プリントヘッドから吐出された小さなインク液滴は、空中を移動するときに急激に減速する。経路長が長すぎる場合、表面に着弾する前に液滴の速度はゼロ(又はゼロ付近)になり、画像は形成されない。強風は、インクを横に偏向させることにより経路長を長くし、媒体が表面に到達しないという結果を生じ得る。このように、移動ロボットが風防を含むことは、印刷精度を向上し、且つ/或いは、より広範囲の風況にわたって移動印刷ロボットを操作することをサポートし得る。
【0014】
一般的な移動印刷システムの一例を図1に示す。図1に示すように、システム100の一実施形態は、移動ロボット104と、1又は複数の絶対位置決定装置(APD)106と、タブレットのような、ユーザインタフェース114を含む任意の携帯装置とを含む。APDは、ロボット104に一時的に取り付けられ得る、反射器、プリズム、又は同様の再帰反射装置105の位置を検出するために、レーザを使用することによりロボットの位置を計測する。レーザは、図中で破線として示される。計測された位置は、無線リンク120を介してロボットに伝達される。このリンクは、WiFiのような既存のネットワークを使用してもよく、代わりにそれは、APD106とロボット104との間の無線接続又は光接続を使用する直接通信チャネルを通じて起こってもよい。
【0015】
図2の例に示すように、移動ロボット104の一実施形態は、コントローラ290と、IMU、加速度計、ジャイロスコープ、又はコンパスを含む、1つまたは複数のセンサ202と、移動基地204と、通信装置206と、反射器208と、GPSセンサ201と、カメラシステム214と、印刷システム216と、視覚オドメトリモジュール218と、障害物検出器220と、印刷される建物のレイアウトに関する情報を有する建築情報モデル(BIM)モジュール222と、バッテリ224と、クリフ検出器226とを含む。
【0016】
印刷システム216は、インクジェットプリントヘッドのような、プリントヘッドを含んでもよい。印刷システムは、施工面上にレイアウトを印刷するためにコントローラ290によって制御される。
【0017】
図3の例では、移動印刷ロボットは、一組の駆動輪と、制御システム(仮想で図示)と、ロボットの位置を正確に計測する手段(例えば、再帰反射装置を使用する)と、プリントヘッド(仮想で図示)を有する印刷システム(仮想で図示)と、プリントヘッドによって吐出されるインク液滴(破線矢印で図示)の付近の気流を低減するように設計された、機械的な風防306とを備えていることを示す。
【0018】
風防306は、移動ロボットに恒久的に取り付けられてもよい。しかしながら、より一般的には、それは、取り外し可能に取り付けられてもよく、例えば、風の強い条件で移動印刷ロボットを操作するためのオプションとして追加され、且つ/或いは必要に応じて交換されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、アクチュエータ又は他の並進機構が、高さにおける障害物、破片又は表面の段差を取り除くために必要に応じて風防306を上下させるために提供されてもよい。
【0019】
ロボットは、一組の駆動輪302と、ロボットの地上高さを設定するキャスタ(図示せず)とを含んでもよい。この例では、風防306は、ロボットの周囲回りに位置する。この風防は、3つの目的を念頭に置いて設計されている。1)風防は、ロボットの下でプリントヘッドから噴射されているインクの経路を乱すことから環境中の風を遮断する(或いは実質的に低減する)、2)風防は、より大きな破片をロボットの下に通過させるために可撓性であるように設計され、表面の高さの変化のような、表面の凹凸に適応するように設計されている、3)風防は、プリントヘッドの周りの空気中の埃の発生を防止するように設計されている。これは、典型的には風防と地面との間に小さなクリアランスを有することによって果たされる。
【0020】
図3の例では、風防306は、ロボットの底部周辺のあたりに位置しているように示されている。このように、それは、風の力を断ち切り、プリントヘッドから吐出されるインク液滴の軌跡の偏向を防止するのに役立つ。風防は、弾性的に適合するように実装され得る。例えば、それは、弾性的に適合するブリストル(bristles)から形成されてもよい。それはまた、弾性的に適合する1つ又は複数の部分品又は部品から形成されてもよい。それはまた、固形のウィンドシールド部を含んでもよい。例えば、それは、特定のタイプのゴム、プラスチック、及びポリマーのような、屈曲可能な材料から形成されてもよい。それは、屈曲し、或いは蝶番で動くバネ状部によって取り付けられた固形の部品から形成されてもよい。
【0021】
前述したように、風防は、必ずしもスロット、穴、又は隙間がない必要はない。実際、風防306の底部と施工面との間に意図的な隙間があってもよい。また、より詳細に後述するが、スロット、穴、隙間、又は切り欠きは、小片の通過を可能にするためなど、様々な目的のために意図的に含まれてもよい。
【0022】
風防306は、ゴム又は薄いプラスチックのような可撓性材料で作られるように設計されてもよい。さらに、プラスチック製又はゴム製の風防は、風防を通過する石礫が風防306の保護バリヤに対して最小限の外乱を生じるような切れ目を含んでもよい。同様に、風防306は、ブリストル、多孔質材料、又は可撓性である同様の材料で作られてもよい。他の例として、風防はまた、障害物及び破片を取り除くのに役立つように剛性部分を折り畳むことができる半剛接合又はヒンジを有する剛性材料(例えば、剛性金属板のような、剛性板)から構成されてもよい。例えば、剛性板は、環境中の要素及び研磨力に対するロバスト性を高め得る。
【0023】
典型的な建設現場では、野外での作業が実行され得る環境条件を制限する就業規則が存在する。米国では、建設作業は、40MPHより大きい風速の場合及びマテリアルハンドラーについては30MPHより大きい場合、労働作業者に続けさせるべきではないというOSHAガイドラインが存在する。風防は、全ての風を遮断する必要はない。むしろ、インクジェット液滴の軌跡に沿う風速を減少させることは、インク液滴の偏向を低減する。このように、風防は、移動ロボットが所定の最大偏向に対して、より広範囲の風速にわたって動作することを可能にする。例えば、いくつかの用途では、2mmの、インク液滴の風による最大偏向は、良好なレイアウト精度を有するために十分であり得る。いくつかの実施形態では、風防は、建設現場で働く人々のために最大許容風速の下で移動ロボットがレイアウトを印刷することを可能にするように設計されている(例えば、OSHA30MPH/40MPH制限)。
【0024】
一例として、再帰反射器を有し、移動ロボットの位置を計測するためにレーザビームを使用する絶対位置決定装置(APD)から位置情報を受信するように構成された移動ロボットは、移動ロボットの位置の制御が2mm未満の精度に正確に制御されることを可能にし得る。線位置公差(例えば、2mm)を超えるインク液滴の風による偏向はいずれも、いくつかのレイアウト用途において容認できないであろう。このように、いくつかの実施形態では、APDによって2mm未満に正確に制御された位置を有する移動ロボットは、風による偏向も2mm未満である風速の範囲にわたって動作し得る。例えば、風防は、少なくとも30MPHの風速に対して2mm未満の風による偏向をサポートするように設計されてもよい。
【0025】
さらに、風防は、全インク軌跡に沿う風速を均等に減少させなくてもよい。提示された設計の多くにおいて、風速及び乱流は、プリントヘッドの近くで、より大きな程度に減少し、地面の近くで、より小さな程度に減少する。これにより、インク液滴は軌跡の大部分においてまっすぐ飛び、偏向のサイズは縮小する。軌跡の最上部でのわずかな偏向は、末端での同じ偏向よりもはるかに大きな誤差の原因となる。
【0026】
風防を使用することの利点は、様々なインクジェット印刷技術にとって重要である。地面にレイアウトをマークする際の課題の1つは、正確に印刷することである。1/4インチから1インチまでの最大距離にわたってインクを噴射する、利用可能な商業印刷技術が多数存在する。これらのインクジェット技術はまた、それらが実現する滴サイズ及び1インチあたりのドット数(DPI)で大いに異なる。高DPIプリンタほど小さな面積に高密度の小さな滴を充填する。商業印刷システムでは、これらの高DPIヘッドは典型的に、環境条件によって引き起こされる外乱を最小限にするために印刷されている表面(典型的には紙)の極めて近くに位置する。
【0027】
しかしながら、商業的な建設現場では、典型的に存在する埃及び破片から保護するためにプリントヘッドを印刷表面から遠く離しておくことが好ましい。例えば、釘、ボルト、又は他の建設廃材は、建設現場に存在し得る。例えば、多くの建設現場では、直径で6mm又は1/4インチまでの破片が存在し得る。破片は、小片、ボルト、ねじ、釘などを含んでもよい。
【0028】
さらに、施工面は、表面の凹凸を有してもよい。例えば、支持構造に取り付けられた床パネルが全く同じ高さでないいくつかの建設現場では、約6mm又は約1/4インチまでの段差が存在してもよい。
【0029】
すなわち、表面の障害物及び表面の凹凸を考慮すると、長いスローディスタンスは、移動ロボットが障害物又は表面の凹凸の上を通過するときにプリントヘッドが損傷し、或いは詰まる可能性を最小限にするために好ましい。スローディスタンスは、ノズルプレートと印刷表面との間の距離である。風防は、構造物がなければ存在することになる風量を低減する、ノズルプレートの下方にある任意の構造物を含む。移動ロボットの設計の異なる要素は、インク液滴の風による偏向を低減するための風防の全体的な有効性に貢献し得る。
【0030】
このように、建設現場で使用される移動ロボットのプリントヘッドのノズルを、表面から少なくとも約6mm(1/4インチ)の高さに維持することが望ましい。インクジェット印刷技術では、これは、プリントヘッドが紙から1mm以内にあり得る、紙上に印刷するインクジェット印刷の多くの従来の用途よりもはるかに長い「スロー」ディスタンスに相当する。6mmは例示的なスロー高さであるが、幾分わずかに低いスロー高さもまた有益である。これは、典型的な建設現場には、施工面の上方における破片の高さに分布を有する様々な破片があるからである。少なくとも3mmのスロー高さは、より小さなタイプの破片の上方にあることに関して有益である。スロー高さを3mmから6mmに高くするにつれ、徐々に大きな利点がある。
【0031】
別の考慮事項は、高DPIが、レイアウトの線を印刷するために好ましいということである。サーマルインクジェットプリンタ及び圧電式インクジェットプリンタは、高DPIを達成し得る。しかしながら、対応するインク液滴サイズは、典型的には2から10ピコリットルの範囲内であるが、より一般的には範囲は、2から100ピコリットルの範囲内である。これは、約1マイクロリットルの液滴サイズのスプレー塗装におけるいくつかの一般的な液滴サイズと対照的であろう。
【0032】
長いスローディスタンスと比較的小さな液滴サイズとの組み合わせは、風防のない高DPIインクジェットプリントヘッドが風による偏向の影響を非常に受けやすいことを意味する。風による偏向に対する脆弱性のための他の要素の中で、インク液滴は、比較的長い飛行時間を有する(長いスローディスタンス及び空力抵抗による減速のため)。
【0033】
さらに、インク液滴の風による偏向は、しばしば予測不可能である。建物は、しばしば、天井及び壁が立設される前にレイアウトを必要とし、レイアウトされる床を完全な屋外環境条件にさらす。液滴サイズは、2から10ピコリットルと同じくらい小さく、予測不可能な方法で気流によって容易に移動し得る。
【0034】
図4は、風防付き移動印刷ロボットの別の例を示す。図は、一組の駆動輪302と、ロボットの地上高を設定するキャスタ(図示せず)とを有する同様のロボットを示す。また、ロボットの端の近くに取り付けられているプリンタ404も示す。この例では、より小さな風防406は、プリントヘッドの活性部分を取り囲んで、局所的に位置する。これは、プリンタの活性領域の周りに静風空洞を作成する。
【0035】
小さな空洞を有する風防を設計することは、ロボットの端の周りにシールドを作成するよりもいくつかの利点がある。インクの偏向は、インク液滴が地面まで移動する距離にわたってインク液滴の軌跡に及ぼす風力の累積的な影響によって引き起こされる。狭い風防を作成することは、風をインクの移動距離の最下部分のみにとどめ、生じる偏向を最小限にする。
【0036】
図5Aは、風防付き移動ロボットの動作の追加の態様を示す。プリントヘッド504は、インクの移動距離の大部分にわたって狭い、静風空洞を形成する風防506を有する。プリントヘッドの側面から向かう風は、インクの移動の最下部分にのみ影響を及ぼす。底部では、風防と地面との間に隙間508があり、シールドが地面に衝突して埃をたてるのを防止する。
【0037】
図5Bは、移動印刷ロボットが地面512に敷かれている石、コンクリート片、釘、ねじ、ボルトなどのような小さな破片510の上を通過するときの風防の機能を示す。ここで、風防は、別の利点を提供する。風防は、物体の圧力で屈曲する可撓性ゴム材料から形成されてもよい。これにより、物体はヘッドの下を通過することができるが、同時に、風防は、プリントヘッド内の繊細なノズルを折り畳んで保護するように設計されてもよい。すなわち、風防は、2つ以上の弾性的に適合可能なウィンドシールド部として実装されてもよく、移動ロボットが障害物の上を通過するときにプリントヘッドの繊細な部分を保護する方法で屈曲して折り畳むように設計されてもよい。
【0038】
図6Aは、例示の目的で、移動印刷ロボットのプリントヘッドと、施工面に向かって移動するインクの液滴と、印刷線とを示す。プリントヘッドは、スロー高さHtだけ表面の上方に配置されている。しかしながら、風防がないと、インク液滴は、風による偏向の影響を受けやすい。これは、印刷線の質が低下する可能性を有する。図6Bは、インク液滴を風による偏向から保護する風防が提供される一例を示す。図6Bの例では、風防は、施工面の近くにクリアランスのための小さな隙間Hgのみを有してインク液滴の軌跡の実質的な部分の周りにウィンドシールドとして形成される。図6Cは、障害物を越えて風防を屈曲して折り畳むことを容易にするために風防に切り欠きがある変形形態を示す。特に、切り欠きによって、ナット、ボルト、ねじ、釘及び小片のような破片が通過しやすくなる。また、切り欠きは、弾性的に付勢されるフラップを形成するために使用され得る。
【0039】
図7A図7Fは、様々な異なる設計要素を使用する風防設計のいくつかの変形形態を示す。例示の目的で、プリントヘッド及び風防を示す。図7Aは、剛性部が破片の上で揺れることを可能にするように付勢される半可撓性接合又はヒンジ式接合704によって取り付けられた剛性風防部702を有する、インク液滴(破線)を吐出するプリントヘッドの一例を示す。図7Bは、1つ又は複数の列のブリストル706によって実装された風防を有するブリストルタイプの風防を示し、ブリストルの厚さ及び材料は、弾性的に適合可能であるブリストルのために選択される。図7Cは、風防708が流れるインク液滴712を受け止めて滴下を防止するための貯留部710を有するように形作られている一例を示す。図7Dは、移動ロボットが印刷していないときに、風防部714がノズルキャップとしてインクジェットノズルの上に折り畳まれる716ように形作られている一例を示す。例えば、いくつかのタイプのインクジェットカートリッジは、長時間環境にさらされるとノズル詰まりの影響をより受けやすい。折り畳みは、手動又は電気機械アクチュエータ(図示せず)により実行されてもよい。例えば、詰まりが、高温で乾燥した環境では、より問題となり得る。ノズルキャップの代わりになる防風バリヤを使用することは、例えば、ロボットナビゲーションのような非印刷イベント中に有用であり得る。図7Eは、風防が複合部720を有する一例を示し、これらは、内側及び外側ウィンドシールド部を有する風防のような、複合部の風防を形成するように配置されてもよい。図7Fは、動作の継続性を保証するために折り畳まれたときにノズルが塞がれないままであることを保証するために制限された長さにさらに設計され得る複合部732及び734を有する風防の一例を示す。
【0040】
図8Aは、弾性的に適合可能な風防が、表面の高さの変化のような、表面の凹凸に適応し得る方法の一例を示す。図8Bは、弾性的に適合可能な風防が、小片との遭遇に適応し得る方法の一例を示す。
【0041】
図9は、エアカーテンがプリントヘッドの側部904に沿って流れる空気の流れ902によって生成される代替実施形態を示す。すなわち、風防は、エアカーテン906を形成する空気の層流である。
【0042】
空気源自体は、移動ロボット上の空気源から生じ得る(例えば、ファン又はコンプレッサー)。エアカーテンは、インクの経路(破線)の周りの空気の層流である。すなわち、空気の層流は、風を遮断するための物理的なバリヤを必要とせずに風を遮断する。空気の層流はまた、地面に印刷する準備をするために破片及び埃を一掃し、或いはインクジェットノズルを清潔に保つのに役立つために使用され得る。エアカーテンは、インクの風による偏向を防止するための唯一の手段として使用されてもよいが、より一般的には、機械的な風防と併用して使用されてもよい。
【0043】
上記の詳細な説明のいくつかの部分は、プロセス及びコンピュータメモリ内のデータビットに対する操作の記号表現の観点から提示された。プロセスは、一般に結果に至る自己矛盾のない一連の手順と考慮され得る。手順は、物理量の物理的操作を含み得る。これらの量は、記憶し、転送し、結合し、比較し、且つその他操作することが可能な電気信号又は磁気信号の形をとる。これらの信号は、ビット、値、要素、記号、文字、項、数などの形で参照され得る。
【0044】
これら及び類似の用語は、適切な物理量と関連付けられ、これらの量に適用されるラベルと考慮され得る。前述から明らかなように特に別段の記載がない限り、本明細書を通じて、例えば「処理」又は「計算」又は「算定」又は「決定」又は「表示」などの用語を利用する議論は、コンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又はその他情報ストレージ、伝送又は表示デバイス内で物理量として同様に表される他のデータに、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内で物理(電子)量として表されるデータを操作して変換し、コンピュータシステムの作用及びプロセス、又は同様の電子計算デバイスを参照してもよいことを理解できるであろう。
【0045】
開示された技術はまた、本明細書における操作を実行するための装置に関してもよい。この装置は、必要な目的のために特別に構成されてもよいし、或いはコンピュータに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に作動され、或いは再構成される汎用コンピュータを含んでもよい。
【0046】
開示された技術は、完全にハードウェア実装、完全にソフトウェア実装、又はソフトウェアとハードウェアとの両方の要素を含む実装の形をとり得る。いくつかの実施形態では、技術は、ソフトウェアで実装され、これは、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
さらに、開示された技術は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによる或いはそれに関連する使用のためのプログラムコードを提供する非一時的なコンピュータ使用可能又はコンピュータ読取可能な媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形をとり得る。本明細書の目的で、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読取可能な媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスによる或いはそれらに関連する使用のためのプログラムを包み、記憶し、通信し、伝播し、或いは輸送し得る任意の装置であり得る。
【0048】
プログラムコードを記憶し且つ/或いは実行するのに適したコンピューティングシステム又はデータ処理システムは、システムバスを介してメモリ素子に直接的に或いは間接的に結合された少なくとも1つのプロセッサ(例えば、ハードウェアプロセッサ)を含むことになる。メモリ素子は、プログラムコードの実際の実行中に採用されるローカルメモリ、バルクストレージ、及びコードが実行中にバルクストレージから取り出されなければならない回数を減らすために少なくともいくつかのプログラムコードの一時的なストレージを提供するキャッシュメモリを含み得る。
【0049】
入力/出力又はI/Oデバイス(キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイスなどを含むが、これらに限定されるものではない)は、直接的に或いは介在するI/Oコントローラを介してシステムに結合され得る。
【0050】
ネットワークアダプタはまた、データ処理システムが、介在する私設網又は公衆網を介して他のデータ処理システム又はリモートプリンタ又はストレージデバイスに結合されることを可能にするためにシステムに結合されてもよい。モデム、ケーブルモデム及びイーサネットカードは、ネットワークアダプタの現在利用可能なタイプのほんの一部である。
【0051】
最後に、本明細書に提示されたプロセス及び表示は、特にコンピュータ又は他の装置に本質的に関連しない場合がある。様々な汎用システムは、本明細書の教示に従ったプログラムと共に使用されてもよいし、或いは必要な方法手順を実行するためにより特殊な装置を構成するのに便利であることを証明してもよい。様々なこれらのシステムの必要な構造は、以下の説明から明らかになるであろう。さらに、開示された技術は、特にプログラミング言語を参照して説明されなかった。様々なプログラミング言語は、本明細書で説明された技術の教示を実装するために使用されてもよいことが理解されよう。
【0052】
本テクニック及び本技術の実装の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。それは、網羅することを意図したものではない。それは、網羅的であり、或いは開示された正確な形式に本テクニック及び本技術を限定することを意図していない。多くの変更及び変形は、上記の教示に照らして可能である。本テクニック及び本技術の範囲は、この詳細な説明によって制限されないことを意図している。本テクニック及び本技術は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形で実施されてもよい。同様に、モジュール、ルーチン、特徴、属性、方法論及び他の態様の特定の命名及び区分は、必須或いは重要ではなく、本テクニック及び本技術又はその特徴を実装する機構は、異なる名前、区分及び/又は形式を有してもよい。さらに、本技術のモジュール、ルーチン、特徴、属性、方法論及び他の態様は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はその3つの任意の組み合わせとして実装され得る。また、モジュールである一例の構成要素がソフトウェアとしてどこに実装されても、その構成要素は、スタンドアロンプログラムとして、より大きなプログラムの一部として、複数の別々のプログラムとして、静的又は動的にリンクされたライブラリとして、カーネルローダブルモジュールとして、デバイスドライバとして、及び/又はコンピュータプログラミングにおいて現在或いは将来的に知られているあらゆる及び他の方法で実装され得る。さらに、本技術は、特定のプログラミング言語での実装、或いは特定のオペレーティングシステム若しくは環境での実装に決して限定されるものではない。したがって、本テクニック及び本技術の開示は、例示的であることを意図しているが、限定的なものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9