(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】染毛方法、及び毛髪用品
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20240924BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20240924BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240924BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A45D44/00 A
A61Q5/10
A61B5/00 101A
A61K8/00
(21)【出願番号】P 2024074893
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523021139
【氏名又は名称】株式会社LOWBAL
(74)【代理人】
【識別番号】110003546
【氏名又は名称】弁理士法人伊藤IP特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健吾
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-122571(JP,A)
【文献】特開2013-84081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A61K 8/00
A61Q 5/10
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛するための染毛方法であって、
前記仕上色に近づけるための色相で該仕上色の色味を含んだ目的色と、染毛前の前記対象者の毛髪色を打ち消すための色相である補色と、染毛前の前記対象者の毛髪の色素の差を調整するための色相である補正色と、の3つの色相の組合せにより染毛を行うことを特徴とする、染毛方法。
【請求項2】
前記補色は、染毛前の前記対象者の毛髪色の彩度を打ち消すための色相であって、シアン、バイオレット、マゼンタの3色のうちの何れか1色によって構成される、
請求項1に記載の染毛方法。
【請求項3】
前記補色は、染毛前の前記対象者の毛髪色の明度に基づいて選定され、該明度が所定の低レベルである場合にはシアンが選定され、該明度が所定の中レベルである場合にはバイオレットが選定され、該明度が所定の高レベルである場合にはマゼンタが選定される、
請求項2に記載の染毛方法。
【請求項4】
前記補正色は、茶系の色味によって構成される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の染毛方法。
【請求項5】
前記補正色は、その分量が、染毛前の前記対象者の毛髪の毛束における隣り合う毛束の明度の差として定義される色ムラ強度に基づいて選定され、該色ムラ強度が高くなるほど該分量が多くなるように選定される、
請求項4に記載の染毛方法。
【請求項6】
請求項1に記載の染毛方法に用いられる毛髪用品であって、
前記目的色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、前記補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、前記補正色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、がキット化された毛髪用品。
【請求項7】
請求項2に記載の染毛方法に用いられる毛髪用品であって、
前記補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤である、シアン、バイオレット、マゼンタの3色の薬剤がキット化された毛髪用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛するための染毛方法に関する。また、本発明は、その染毛方法に用いられる毛髪用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、美容室または理髪店(ヘアサロン)において毛髪の染毛(ヘアカラー)を行う場合、サロン店員は、雑誌などのカタログを用いて複数の色味を顧客に提示し、その中から所望の仕上色を選択させることが行われている。
【0003】
一方で、実際に染毛を行った後の毛髪の色相は、対象者の毛髪のベースの色相(ベースカラー)の影響を受けることが知られている。そこで、対象者が所望する仕上色をベースカラーに関わりなく一定の色に仕上げるための染毛方法が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、毛髪の染毛に際して、先ず毛髪に下地色の染毛を行い、該下地色の上に仕上色の染毛を行うことで、選択した染毛色を髪色に関わりなく一定の色に仕上げる染毛方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
染毛を行った後の毛髪の色相は、対象者の毛髪のベースの色相(ベースカラー)の影響を受けることが多い。そのため、この影響を抑えられるよう、毛髪を染毛させる薬剤には、高い浸透性と発色性を有するものが使用される傾向にある。しかしながら、染毛前のベースカラーの影響が強い場合には、染毛後に所望の髪色が発現しないことがある。
【0007】
一方で、特許文献1に記載の技術によれば、先ず毛髪に下地色の染毛を行い、該下地色の上に仕上色の染毛を行うことで、毛髪の色の相違による仕上色への影響を回避できるようにも思われる。しかしながら、当該技術では、下地色と仕上色の2度の染毛を行う必要があり、染毛の施術者および対象者にとって負担が大きい。また、特許文献1に記載の技術では、下地色が対象者の肌色によって選定されるため、対象者のベースカラーによっては、やはり染毛後に所望の髪色が発現しないことがある。そして、実際に染毛を行った後の色相の出来映えは、施術者の感覚や経験によるところが大きく、対象者が希望する毛髪の仕上色に簡易且つ安定的に染毛する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の染毛方法は、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛するための染毛方法であって、前記仕上色に近づけるための色相で該仕上色の色味を含んだ目的色と、染毛前の前記対象者の毛髪色を打ち消すための色相である補色と、染毛前の前記対象者の毛髪の色素の差を調整するための色相である補正色と、の3つの色相の組合せにより染毛を行うことを特徴とする。
【0010】
上記の染毛方法では、目的色を選定するステップと、補色を選定するステップと、補正色を選定するステップと、の3つのステップにより毛髪の染毛(ヘアカラー)に使用するヘアカラー薬剤を選定することで、簡易且つ安定的に対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することができる。
【0011】
ここで、上記の染毛方法において、前記補色は、染毛前の前記対象者の毛髪色の彩度を打ち消すための色相であって、シアン、バイオレット、マゼンタの3色のうちの何れか1色によって構成されてもよい。そして、この場合、前記補色は、染毛前の前記対象者の毛髪色の明度に基づいて選定され、該明度が所定の低レベルである場合にはシアンが選定され、該明度が所定の中レベルである場合にはバイオレットが選定され、該明度が所定の高レベルである場合にはマゼンタが選定され得る。これによれば、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の彩度を打ち消しつつ、つまり、ベースカラーを無彩色にさせつつ、対象者が所望する仕上りどおりに目的色を発色させることができる。
【0012】
そして、上記の染毛方法において、前記補正色は、茶系の色味によって構成されてもよい。この場合、前記補正色は、その分量が、染毛前の前記対象者の毛髪の毛束における隣り合う毛束の明度の差として定義される色ムラ強度に基づいて選定され、該色ムラ強度が高くなるほど該分量が多くなるように選定され得る。これによれば、隣り合う毛束の明度のムラである色ムラを整え、対象者が所望する仕上りどおりに目的色を発色させることができる。
【0013】
また、本開示は、以上に述べた染毛方法に用いられる毛髪用品として捉えることができる。すなわち、本開示の毛髪用品は、前記目的色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、前記補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、前記補正色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、がキット化されたものである。または、本開示の毛髪用品は、前記補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤である、シアン、バイオレット、マゼンタの3色の薬剤がキット化されたものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の染毛方法における薬剤選定のフローを示すフローチャートである。
【
図2】ベースカラーの明度に基づいて選定される補色について、その色相および分量を例示する図である。
【
図3】ベースカラーの色ムラ強度に基づいて選定される補正色について、その分量を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の染毛方法に関する図面に基づいて、本開示の実施の形態である、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛するための染毛方法を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0017】
実施形態における染毛方法について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本開示の染毛方法における薬剤選定のフローを示すフローチャートである。
【0018】
本フローでは、先ず、S101において、目的色を選定するステップが実行される。ここで、目的色とは、対象者が希望する毛髪の仕上色に近づけるための色相であって、該仕上色の色味を含んだものである。S101のステップでは、毛髪の染毛(ヘアカラー)を希望する対象者と、該対象者に対してヘアカラーを施術する美容室または理髪店(ヘアサロン)のスタッフと、のコミュニケーションによって、ヘアサロンのスタッフは、対象者が希望する毛髪の仕上色を把握し、該仕上色を実現するための目的色が選定される。
【0019】
なお、スタッフは、対象者とのコミュニケーションにおいて、白い毛を染めたカラーチャートを用いて対象者が希望する毛髪の仕上色を把握することができる。
【0020】
そして、目的色の選定ステップでは、対象者の毛髪のベースカラーと、後述する補色と、を踏まえて、グレー、ベージュ、ブラウン、ブルー、ピンク、パープル、グリーン、オレンジ、ダーク、ライト、クリア等のヘアカラー薬剤の中から、対象者が希望する毛髪の仕上色と同一の色相を目的色として選定してもよいし、混色により調整したものを目的色として選定してもよい。
【0021】
次に、S102において、染毛前の対象者の毛髪色を打ち消すための色相である補色を選定するステップが実行される。
【0022】
ここで、ヘアカラーにおいては、同一のヘアカラー薬剤を使用したとしても、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)によって、その仕上りの色相に大きな違いが生じることが知られている。そして、従来までのヘアカラーでは、対象者の毛髪のベースカラーによる仕上り色の変化が理論立てされることなく、施術者の感覚や経験によって薬剤選定が行われてきた。つまり、対象者が希望する毛髪の仕上色に簡易且つ安定的に染毛する技術については、これまで未知であった。
【0023】
そこで、本開示人は、鋭意検討を行った結果、上記の目的色に対して補色を組合わせることによって、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の彩度を打ち消しつつ、つまり、ベースカラーを無彩色にさせつつ、対象者が所望する仕上りどおりに目的色を発色させることができることを新たに見出した。
【0024】
ここで、ヘアカラーにおいては、ヘアカラー薬剤による脱色作用によって、対象者の毛髪におけるベースカラーのメラニンが壊された状態に対して、該ヘアカラー薬剤による色相が対象者の毛髪に付与される。そして、毛髪におけるメラニンの状態によって、毛髪色の明度は変化する。つまり、補色が有する色相によってベースカラーの彩度を打ち消すことができるものの、ベースカラーの明度によって染毛後の仕上がりに差異が生じてしまう可能性がある。
【0025】
したがって、本実施形態における染毛方法では、補色が、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の明度に基づいて選定される。詳しくは、補色は、シアン、バイオレット、マゼンタの3色のうちの何れか1色によって構成され、ベースカラーの明度が所定の低レベルである場合にはシアンが選定され、ベースカラーの明度が所定の中レベルである場合にはバイオレットが選定され、ベースカラーの明度が所定の高レベルである場合にはマゼンタが選定される。これについて、
図2に基づいて詳しく説明する。
【0026】
図2は、ベースカラーの明度に基づいて選定される補色について、その色相および分量を例示する図である。なお、明度レベルは、値が大きいほど明度が高くなるように髪の明度を15段階で記述する周知の指標である。また、
図2に例示される補色の分量は、目的色の量に対する割合である。
【0027】
図2に示すように、ベースカラーの明度が所定の低レベルである場合、ここでは、ベースカラーの明度レベルが5Lv~13Lvである場合、補色にはシアンが選定され、その分量は10%である。また、ベースカラーの明度が所定の中レベルである場合、ここでは、ベースカラーの明度レベルが14Lv~16Lvである場合、補色にはバイオレットが選定され、その分量は10%である。また、ベースカラーの明度が所定の高レベルである場合、ここでは、ベースカラーの明度レベルが17Lv~19Lvである場合、補色にはマゼンタが選定される。そして、その分量は、ベースカラーの明度レベルが17Lvである場合は10%、ベースカラーの明度レベルが18Lvである場合は5%、ベースカラーの明度レベルが19Lvである場合は3%である。
【0028】
なお、上記の補色の分量は、あくまで一例であって、ベースカラーの明度が所定の低レベルである場合のシアンの分量は、5~30%であってもよい。また、ベースカラーの明度が所定の中レベルである場合のバイオレットの分量は、5~30%であってもよい。
【0029】
そして、このように補色が選定されることによって、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の彩度を打ち消しつつ、つまり、ベースカラーを無彩色にさせつつ、対象者が所望する仕上りどおりに目的色を発色させることができ、以て、施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することができる。
【0030】
なお、上記の補色は、所定の情報処理装置によって自動で選定されてもよい。ここで、情報処理装置は、データの取得、生成、更新等の演算処理及び加工処理のための処理能力のあるコンピュータ機器であればどの様な電子機器でもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、タブレット端末、その他電子機器であってもよい。すなわち、情報処理装置は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納されている。
【0031】
また、情報処理装置は、本実施形態に係る染毛方法専用のソフトウェアやハードウェア、OS等を設けてもよいし、それらを設けずに、クラウドサーバによるSaaS(Software as a Service)、Paas(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)を適宜用いてもよい。
【0032】
そして、情報処理装置は、機能部として通信部、記憶部、制御部を有しており、補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各機能部等が制御されることによって、各機能部における所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0033】
ここで、通信部は、情報処理装置をネットワークに接続するための通信インタフェースである。通信部は、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。情報処理装置は、通信部を介して、ユーザ端末や、その他の外部装置と通信可能に接続される。
【0034】
記憶部は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。そして、記憶部には、上述したベースカラーの明度と補色の色相・分量との関係や、後述するベースカラーの色ムラ強度と補正色の分量との関係が記憶される。
【0035】
制御部は、情報処理装置が行う制御を司る機能部である。制御部は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。制御部は、更に、機能部として取得部や選定部を有して構成される。この機能部は、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0036】
ここで、取得部は、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の明度を取得する。施術者は、ユーザ端末を用いて、対象者のベースカラーを収めた画像等を情報処理装置に送信することができる。そうすると、情報処理装置は、送信されたベースカラーの明度を判定し、対象者のベースカラーの明度を取得することができる。
【0037】
ここで、本実施形態におけるユーザ端末は、機能部として通信部、入出力部、記憶部を有している。通信部は、ユーザ端末をネットワークに接続するための通信インタフェースであり、例えば、ネットワークインタフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。入出力部は、通信部を介して外部から送信されてきた情報等を表示させたり、通信部を介して外部に情報を送信する際に当該情報を入力したりするための機能部である。記憶部は、情報処理装置の記憶部と同様に主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。
【0038】
入出力部は、更に、表示部、操作入力部、画像・音声入出力部を有している。表示部は、各種情報を表示する機能を有し、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等により実現される。操作入力部は、ユーザからの操作入力を受け付ける機能を有し、具体的には、タッチパネル等のソフトキーあるいはハードキーにより実現される。画像・音声入出力部は、静止画や動画等の画像の入力を受け付ける機能を有し、具体的には、Charged-Coupled Devices(CCD)、Metal-oxide-semiconductor(MOS)あるいはComplementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)等のイメージセンサを用いたカメラにより実現される。また、画像・音声入出力部は、音声の入出力を受け付ける機能を有し、具体的には、マイクやスピーカーにより実現される。
【0039】
施術者は、このように構成されたユーザ端末を用いて、対象者のベースカラーを収めた画像等を情報処理装置に送信することができる。ここで、情報処理装置は、このような情報を入力するためのインタフェースをユーザ端末に提供してもよい。
【0040】
そして、情報処理装置の判定部は、上述したようにして取得した対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の明度に基づいて、明度と補色の色相・分量との関係を用いて目的色と組合せる補色の色相および分量を選定することができる。
【0041】
なお、このような判定の処理について、上述した情報処理装置を介さず、ユーザ端末によって処理が実行されてもよい。
【0042】
そして、
図1に戻って、次に、S103において、染毛前の対象者の毛髪の色素の差を調整するための色相である補正色を選定するステップが実行される。
【0043】
ここで、染毛前の対象者の毛髪の毛束における隣り合う毛束の明度にムラがあると、ヘアカラー後の仕上りにおいてもその色相にムラが生じ得る。そして、このような事態を抑制するためには、染毛前の対象者の毛髪に対して事前にブリーチを施すことで、対象者の毛髪をフェオメラニンの黄味が発現する状態に変化させることが考えられるが、この場合でも、ブリーチでは色相のムラを抑えきれないことが判った。そこで、本開示人は、鋭意検討を行った結果、ユウメラニンの色相に近い茶系の色味によって構成される補正色を、上記の目的色、補色に組合わせることによって、隣り合う毛束の明度のムラである色ムラを整えることができることを新たに見出した。
【0044】
詳しくは、本実施形態における染毛方法では、補正色は、その分量が、染毛前の対象者の毛髪に毛束における隣り合う毛束の明度の差として定義される色ムラ強度に基づいて選定される。このとき、上記の色ムラ強度が高くなるほど、補正色の分量が多くなるように選定される。これについて、
図3に基づいて詳しく説明する。
【0045】
図3は、ベースカラーの色ムラ強度に基づいて選定される補正色について、その分量を例示する図である。なお、色ムラ強度の弱・中・強は、隣り合う毛束の明度差のLvによって表され、該明度差が、1Lv~2Lvの場合に色ムラ強度が弱で、3Lv~4Lvの場合に色ムラ強度が中で、5Lv以上の場合に色ムラ強度が強である。また、
図3に例示される補正色の分量は、目的色の量に対する割合である。
【0046】
図3に示すように、ベースカラーの色ムラ強度が弱である場合、補正色の分量は10%である。また、ベースカラーの色ムラ強度が中である場合、補正色の分量は20%である。また、ベースカラーの色ムラ強度が強である場合、補正色の分量は30%~である。
【0047】
なお、上記の補正色の分量は、あくまで一例であって、ベースカラーの色ムラ強度が弱である場合の分量は、10%以上20%未満であってもよい。また、ベースカラーの色ムラ強度が中である場合の分量は、20%以上30%未満であってもよい。また、ベースカラーの色ムラ強度が強である場合の分量は、30%~50%であってもよい。
【0048】
そして、このように補正色が選定されることによって、隣り合う毛束の明度のムラである色ムラを整え、対象者が所望する仕上りどおりに目的色を発色させることができ、以て、施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することができる。
【0049】
なお、上記の補正色は、補色の選定と同様に所定の情報処理装置によって自動で選定されてもよい。この場合、情報処理装置は、対象者の染毛前の毛髪色(ベースカラー)の色ムラ強度を取得し、それに基づいて、色ムラ強度と補正色の分量との関係を用いて目的色と組合せる補正色の分量を選定することができる。
【0050】
以上に述べた染毛方法によれば、施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することができる。
【0051】
<その他の変形例>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0052】
例えば、本開示は、上記の実施形態の説明で述べた染毛方法に用いられる毛髪用品であってもよい。
【0053】
この場合の毛髪用品では、目的色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、補正色の色相に毛髪を染毛させる薬剤と、がキット化され得る。または、補色の色相に毛髪を染毛させる薬剤である、シアン、バイオレット、マゼンタの3色の薬剤がキット化され得る。
【0054】
これによれば、施術者は、このような毛髪用品キットを用いることで容易に対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛することが可能になる。
【要約】
【課題】施術者の感覚や経験によらず、簡易且つ安定的に、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛する。
【解決手段】本開示の染毛方法は、対象者が希望する毛髪の仕上色に染毛するための染毛方法である。そして、この染毛方法は、仕上色に近づけるための色相で該仕上色の色味を含んだ目的色と、染毛前の対象者の毛髪色を打ち消すための色相である補色と、染毛前の対象者の毛髪の色素の差を調整するための色相である補正色と、の3つの色相の組合せにより染毛を行うことを特徴とする。そして、補色は、シアン、バイオレット、マゼンタの3色のうちの何れか1色によって構成されてもよい。
【選択図】
図1