(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】熱拡散抑制構造を含む電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240924BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240924BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20240924BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240924BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240924BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240924BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240924BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240924BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/211
H01M50/213
H01M50/271 B
H01M50/271 S
H01M50/289
H01M10/613
H01M10/6568
(21)【出願番号】P 2023500415
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2021016707
(87)【国際公開番号】W WO2022108290
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0157821
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キュン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ブム・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・オ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・キ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ギュ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ジュネ・チ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・パク
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131221(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/190062(WO,A1)
【文献】特開2012-252909(JP,A)
【文献】特開2019-029245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを収容する電池モジュール;
前記電池モジュールが2個以上収納された電池パックケース;及び
前記電池モジュールの下部に位置するヒートシンク;
を含み、
前記電池モジュールは、
複数の電池セル、前記複数の電池セルの上部に位置するウォータータンク、及び前記複数の電池セルとウォータータンクを収容するモジュールケースを含
み、
前記ウォータータンクは、前記複数の電池セルと対面する一面に貫通口が形成されており、前記貫通口の内部は密封部材で充填されており、前記密封部材は、前記電池セルから放出する高温ガス又はスパークによって溶融する素材からなる、電池パック。
【請求項2】
前記ヒートシンクの内部には、流入及び排出される冷却水の流れをガイドするための流路が形成されている、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記ウォータータンクは、前記モジュールケースの上面の内側面と一体型に装着されている、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記モジュールケースは、上部が開放された形態であり、
前記ウォータータンクは、開放された前記モジュールケースの上面を覆う形態で前記モジュールケースと結合する、請求項1または2に記載の電池パック。
【請求項5】
前記密封部材の溶融によって前記貫通口が開放され、
前記貫通口から、前記ウォータータンクの内部に収容された冷却水が前記電池セルに投入される、請求項
1~4のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記貫通口は、前記ウォータータンクの一面に複数の孔が均一に分散された形態で形成されている、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記モジュールケース同士の間には隔壁が付加されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項8】
前記密封部材は前記貫通口を充填しており、前記ウォータータンクの外側面から前記貫通口の周りよりも外側にさらに延長された延長部を含む、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項9】
前記電池セルは、パウチ形電池セル、角形電池セル又は円筒形電池セルである、請求項1~
8のいずれか一項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月23日付け韓国特許出願第2020-0157821号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本願発明は、熱拡散抑制構造を含む電池パックに関する。具体的には、電池パックの内部にある電池セルで発火した火炎が広がることを防止するために、発火した電池セルに冷却水を直接注入できるように熱拡散抑制構造を含む電池パックに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池に対する持続した研究開発の結果、容量が増加し且つ出力が向上したリチウム二次電池の製造及び商用化が可能になっている。また、環境汚染の問題がある化石燃料を代替できるエネルギー源としてリチウム二次電池の需要が増加しつつある。
【0004】
そこで、様々なデバイスに対するリチウム二次電池の適用が増加しており、例えば、多機能小型製品であるワイヤレスモバイル機器(wireless mobile device)又は身体に着用するウェアラブル機器(wearable device)のエネルギー源として広範囲に用いられている他にも、既存のガソリン車両及びディーゼル車両の代案として提示される電気自動車とハイブリッド電気自動車などのエネルギー源又は電力貯蔵装置(ESS)として用いられている。
【0005】
このように、リチウム二次電池が大容量及び高出力のエネルギー源として用いられることに伴い、前記リチウム二次電池の安全性を確保する問題が重要な関心対象となっている。
【0006】
一般に、電力貯蔵装置は、内部に収容された電池セルで火災が発生する場合に、別の注水装置を用いて電池モジュールや電池パックの内部に水を注入する方法を利用している。
【0007】
しかしながら、このような場合、前記注水装置を備えるための施設と空間が必要であり、電池セルのベンティング(venting)によって排出されたガスのセンシング時点から注水までにかかる時間差によって発火が広がってしまうという問題がある。
【0008】
又は、電池モジュールや電池パックの内部又は外部に断熱材や消火薬剤などを配置し、電池セル同士間に熱が伝達されることを遮断したり発火した電池セルを冷却させたりする方法を用いることができる。
【0009】
しかしながら、断熱材を使用する場合に、火炎の伝播することを防ぐことはできるが、消火機能を発揮できないという問題がある。消火薬剤を使用する場合には、エネルギー密度を考慮して電池パックの内部の空いた空間に消火薬剤を配置しているため、消火薬剤が火災発生地点に正確に撒かれないという問題がある。
【0010】
このように、電池パックの熱暴走を防止するための技術として、特許文献1は、バッテリーの上部に水を含む封筒が位置し、前記封筒は比較的に融点の低い材料で形成され、前記バッテリー温度が増加すると前記封筒が溶けて内部の水が前記バッテリーに排出される装置を開示している。
【0011】
特許文献1は、封筒全体が融点の低い材料からなるため、バッテリー温度が増加する場合に、封筒の特定部分のみから水が排出されるのではなく、封筒が溶融しながら内部の水が全て排出されてしまう。
【0012】
したがって、封筒が電池セルの下部にくるように配置される場合には、水を電池セルに注入することができず、消火機能を発揮できなくなる。このため、封筒が電池セルの上部に配置されるように容器の方向を一定の方向にのみ使用しなければならないという制約がある。
【0013】
特許文献2は、外ケース内に中ケースと内ケースが収容され、複数の単電池が前記中ケースに収容され、消火剤は前記内ケースに収容され、前記単電池が上限温度以上に発熱すると、前記中ケース内に前記消火剤を投入するための注入管を含む。前記単電池が上限温度以上に発熱すると、前記注入管が開き、前記内ケースに収容された消火剤が中ケース内に注入される。
【0014】
特許文献2は、消火剤を噴射するための圧縮ガス、注入管として用いるノズル、及び消火剤を内蔵する内ケースを含んでいるところ、それらを備えるための追加空間が必要であり、消火剤及び圧縮ガスを備えるための費用もさらに発生してしまう。
【0015】
特許文献3は、セルアセンブリー、前記セルアセンブリーの外側面と接するように位置し、内部に冷媒が移動するように構成された冷媒流路が形成されたヒートシンク、及び前記セルアセンブリーと前記ヒートシンクとが密着し合うように熱収縮した熱収縮性チューブを含むバッテリーモジュールを開示している。
【0016】
特許文献3は、ヒートシンクをセルアセンブリーと密着するように配置することによってセルアセンブリーの放熱効果を得ることができるが、セルアセンブリーが発火した場合に火炎が隣接の電池モジュールに広がることを防止する機能を発揮することはできない。
【0017】
このように、電池パックの内部に収容された電池セルが発火する場合に、火炎が広がることを最小化できながら、追加空間を必要とせず、エネルギー密度が低くなることを防止できる技術に対する必要性が高い実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開第2014-523622号公報
【文献】特開第2012-252909号公報
【文献】韓国公開特許第2020-0030964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本願発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、電池セルの発火及び爆発時に当該電池セルの発火を鎮火し、且つ隣接の電池セルに火炎が伝達されることを防止できる消火機能と熱拡散抑制構造を含む電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するための本発明に係る電池パックは、複数の電池セルを収容する電池モジュール、前記電池モジュールが2個以上収納された電池パックケース、及び前記電池モジュールの下部に位置するヒートシンクを含み、前記電池モジュールは、複数の電池セル、前記複数の電池セルの上部に位置するウォータータンク、及び前記複数の電池セルとウォータータンクを収容するモジュールケースを含んでよい。
【0021】
本発明に係る電池パックにおいて、前記ヒートシンクの内部には、流入及び排出される冷却水の流れをガイドするための流路が形成されてよい。
【0022】
本発明に係る電池パックにおいて、前記ウォータータンクは、前記モジュールケースの上面の内側面と一体型に装着されてよい。
【0023】
本発明に係る電池パックにおいて、前記モジュールケースは、上部が開放された形態であり、前記ウォータータンクは、開放された前記モジュールケースの上面を覆う形態で前記モジュールケースと結合してよい。
【0024】
本発明に係る電池パックにおいて、前記ウォータータンクは、前記複数の電池セルと対面する一面に貫通口が形成されており、前記貫通口には密封部材が付加されてよい。
【0025】
本発明に係る電池パックにおいて、前記密封部材は、前記電池セルから放出する高温ガス又はスパークによって溶融する素材からなってよい。
【0026】
本発明に係る電池パックにおいて、前記密封部材の溶融によって前記貫通口が開放され、前記貫通口から、前記ウォータータンクの内部に収容された冷却水が前記電池セルに投入されてよい。
【0027】
本発明に係る電池パックにおいて、前記貫通口は、前記ウォータータンクの一面に複数の孔が均一に分散された形態で形成されてよい。
【0028】
本発明に係る電池パックにおいて、前記モジュールケース同士の間には隔壁が付加されてよい。
【0029】
本発明に係る電池パックにおいて、前記密封部材は前記貫通口を充填しており、前記ウォータータンクの外側面から前記貫通口の周りよりも外側にさらに延長された延長部を含んでよい。
【0030】
本発明に係る電池パックにおいて、前記電池セルは、パウチ形電池セル、角形電池セル又は円筒形電池セルであってよい。
【発明の効果】
【0031】
以上で説明したように、本願発明に係る電池パックは、電池パックの内部にウォータータンクを備えることによって、電池パックの外形を増加させない上にも、発火した電池セルを迅速に冷却させることができるので、電池セルの熱暴走現象を確実に抑制することができる。
【0032】
また、電池セルと対面するウォータータンクの一面に密封部材を付加するので、前記密封部材が溶融して除去される場合に、電池パックの位置及び方向に関係なく、発火した電池セルに向けて冷却水の噴射が可能である。
【0033】
また、ウォータータンクの一面に貫通口を形成し、密封部材が前記貫通口を充填している形態であるので、密封部材の付加によって電池パックの重さが増加することを最小化できる。
【0034】
また、電池セルスタックを構成する全体電池セルのいずれか一つの電池セルが発火しても、発火した電池セルに正確に冷却水の注入が可能な形態であるので、大容量の電池パックに適用しても熱拡散遮断の効果を得ることができる。
【0035】
また、高単価の消火薬剤の代わりに水を使用する場合に、生産原価を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1実施例による電池パックの斜視図である。
【
図2】第1実施例による電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した電池パックにおいてA-A’線に沿って切断した断面図である。
【
図4】第1実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【
図5】第2実施例による電池モジュールの分解斜視図である。
【
図6】第2実施例による電池パックの断面図である。
【
図7】第2実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【
図8】第3実施例による電池モジュールの分解斜視図である。
【
図9】第3実施例による電池パックの断面図である。
【
図10】第3実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本願発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するに当たって、関連した公知機能又は構成に関する具体的な説明が本願発明の要旨を却って曇らせ得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0038】
また、図面全体を通じて類似の機能及び作用をする部分に対しては同一の図面符号を使用する。明細書全体において、ある部分が他の部分と連結されているとするとき、これは直接に連結されている場合の他、それらの中間にさらに他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むということは、別に断りのない限り、他の構成要素を除外することではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0039】
また、構成要素を限定又は付加して具体化する説明は、特に限定がない限り、いずれの発明にも適用可能であり、特定の発明に関する説明に限定されない。
【0040】
また、本願の発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、特に言及しない限り、複数である場合も含む。
【0041】
また、本願の発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって「又は」は、特に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「A又はBを含む」は、Aを含む、Bを含む、A及びBを含む3つのいずれの場合をも意味する。
【0042】
また、全ての数値範囲は、明確に除外するという記載がない限り、両端の値とそれらの間の全ての中間値を含む。
【0043】
本願発明を、図面を参照して詳細な実施例のように説明する。
【0044】
図1は、本発明の第1実施例による電池パックの斜視図であり、
図2は、第1実施例による電池モジュールの分解斜視図であり、
図3は、
図1に示した電池パックにおいてA-A’線に沿って切断した断面図である。
【0045】
図1~
図3を参照すると、本願発明に係る電池パックは、複数の電池セル120を収容する電池モジュール200、電池モジュール200が2個以上収納された電池パックケース100、電池モジュール200の下部に位置するヒートシンク300を含み、電池モジュール200は、複数の電池セル120、複数の電池セル120の上部に位置するウォータータンク210、及び複数の電池セル120とウォータータンク210を収容するモジュールケース110を含む。
【0046】
ウォータータンク210の下面には貫通口が形成されており、電池パックが正常状態の時に前記貫通口から冷却水が排出されることを防止するために密封部材220が付加されている。密封部材220はウォータータンクの下面に付加されており、電池パックの外面からは見えない状態であるが、
図2では、説明の便宜のために密封部材220を点線で示している。
【0047】
一つの具体的な例において、複数の電池セル120はパウチ形電池セルであってよく、前記パウチ形電池セルが、電極組立体収納部が互いに密着するように積層された状態で前記電極組立体収納部の底が地面に対して垂直となるように配置された状態であってよい。
【0048】
前記パウチ形電池セルは、正極リードと負極リードが互いに反対方向に突出する両方向電池セルであってよく、又は、正極リードと負極リードが互いに同一方向に突出する単方向電池セルであってよい。
【0049】
モジュールケース110は、電極組立体収納部の底が地面に対して垂直となるように配置された電池セルスタックにおいて電極組立体収納部の底に平行な両端と上面及び下面を包む形態であってよい。
【0050】
モジュールケース110内で電池セルスタックの上部にウォータータンク210が配置されるが、電池セルスタックとウォータータンク210とは隣接して配置されてもよく、又は、電池セルスタックとウォータータンクとの間に離隔間隔が存在するように配置されてもよい。
【0051】
ウォータータンク210がモジュールケース110の上面と一体型に装着されてよく、ウォータータンク210はモジュールケース110の上面になり得る。
【0052】
他の実施例において、モジュールケース110は、電池セルスタックにおいて電極組立体収納部の底に平行な両端と下面を包むU字状に形成されてよい。
【0053】
又は、モジュールケース110は、電池セルスタックの上面以外の外面を包む箱の形態であって、上部が開放された形態であってよく、ウォータータンク210は、開放されたモジュールケース110の上面を覆う形態でモジュールケース110と結合してよい。
【0054】
すなわち、ウォータータンク210が電池セルスタックの上面に配置されることにより、上面が開放されたモジュールケース110の蓋として働き得る。
【0055】
ウォータータンク210は、モジュールケース110と対面する下面及びそれと反対方向の上面が広い直方体の形態で形成されてよく、前記上面及び下面の面積は、モジュールケース110に収容された複数の電池セル120の上面を覆う大きさを有する。
【0056】
このように、本発明に係る電池パックは、モジュールケースの内部に装着される大きさで形成されるウォータータンク210を複数の個数で含んでおり、特定の電池モジュール内の電池セルが発火する場合に、当該電池モジュールに含まれたウォータータンクによる火災鎮圧が可能な形態である。
【0057】
したがって、隣接の電池モジュールに熱拡散が起きることを防止できるだけでなく、発火した電池セルを含む電池モジュールのみを交替して使用可能な形態である。
【0058】
本発明に係るウォータータンク210の下面には貫通口が形成されており、電池パックが正常状態の時に前記貫通口から冷却水が排出されることを防止するために密封部材220が付加されている。
【0059】
ヒートシンク300の内部には、流入及び排出される冷却水の流れをガイドするための流路が形成されているので、ヒートシンク300に/から流入及び排出される冷却水の温度を一定のレベルに保つことができる。したがって、リチウム二次電池の反復した充放電によって電池セル120が発熱しても、電池パック全般の温度が増加することを抑制することができる。
【0060】
電池セル120は、反復した充放電過程で電極組立体の膨脹と収縮が発生する他にも、充放電の副産物としてガスが生成される。このため、モジュールケースが膨脹することがあるが、モジュールケース110とモジュールケース110との間に隔壁101を付加することにより、モジュールケース110の体積膨脹が隣接のモジュールケースに影響を与えることを最小化し、且つモジュールケース110を固定支持することができる。
【0061】
図4は、第1実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【0062】
図3及び
図4を参照すると、電池パックケース100内に複数のモジュールケース110が配置され、モジュールケース110の内部には複数の電池セル120が収納され、複数の電池セル120の上部にはウォータータンク210が配置され、ウォータータンク210の内部には、発熱又は発火した電池セルの温度を下げるための冷却水が満たされている。
【0063】
ウォータータンク210において複数の電池セル120と対面する一面に貫通口が形成されており、貫通口には密封部材220が付加されて貫通口を密封している。密封部材220は、電池セル120から放出する高温ガス又はスパークによって溶融する素材からなる。すなわち、電池セル120が正常状態の時には密封部材220が貫通口を密封した状態を保持するが、電池セル120’のように発火した電池セルの温度が増加して火炎が発生し、隣接して位置する密封部材に広がると、溶融温度の低い密封部材220が溶融して貫通口230が開放され、ウォータータンク210中の冷却水が電池セルに直接投入され得る。
【0064】
ウォータータンク210に収容された冷却水は、電池セルの発火によって気化し、体積が増加して高圧状態になるので、貫通口230が開放される際に、発火した電池セルに向けて強い圧力で噴射され得る。
【0065】
この時、発火した電池セル120’と隣接していない密封部材220は、溶融せずに形態を保ち得るので、密封部材が除去された貫通口のみから冷却水の噴出がなされ得る。
【0066】
前記冷却水がパウチ形電池セルの内部に直接注入される点を考慮して、冷却水の注入によって前記パウチ形電池セルの火炎が大きくなったり爆発が起きたりすることを防止する必要がある。したがって、前記冷却水に含まれる添加剤としては可燃性物質が含まれないことが好ましい。又は、前記添加剤として可燃性物質が含まれる場合では、前記添加剤の量は、パウチ形電池セルの2次爆発を防止できる程度であると同時に、前記冷却水の凍ることを防止するために不凍液として使用される程度であってよい。
【0067】
前記密封部材は、溶融点が約200℃以下である熱可塑性の高分子樹脂が適用されてよく、例えば、前記熱可塑性の高分子樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、溶融点が約100℃以上200℃以下である物質が使用されてよい。
【0068】
図2の密封部材220は貫通口を充填しており、前記ウォータータンクの外側面から前記貫通口の周りよりも外側にさらに延長された延長部225を含んでよい。延長部225はウォータータンクの外側面からさらに延長される部分であるので、正常状態の時にはウォータータンクに対する密封部材220の結合力を向上させることができ、電池セルの発火発生時には温度上昇によって延長部から溶融し始めて貫通口が開放され得る。
【0069】
リチウム二次電池からなる電池セルにおいて、電池セルに欠陥が発生したり、過充電又は過熱が発生したときに、電池セルの熱暴走現象が起きることがある。電池セルが熱暴走状態になると、電池セルの温度はガスベンティングが起きる温度である約260℃まで上がることがある。また、ガスベンティングが起きる間にも電池セルの温度は上昇し続くことがある。
【0070】
複数の電池セルを電池パックケースに収容して電池パックを製造する場合に、一つの電池セルが熱暴走状態になると、高熱及び火炎が隣接の電池セルに伝達され、隣接の電池セルも過熱されて熱暴走状態になることがある。さらに、熱暴走状態になった電池セルが隣接の電池セルを加熱させて熱暴走が発生する連鎖反応が起きることがある。したがって、熱暴走された電池セルが電池パックケース内に発生すると、複数の電池セルの熱暴走を招き、これはさらに広範囲に広がって大きな損害を起こすことがある。このように複数の電池セルが熱暴走状態になると、約1,000℃以上の温度に到達することがあり、これは電池セルが全焼するまで持続し、使用者が危険な状況に陥ることがある。
【0071】
したがって、発火した電池セルの火炎及び高熱が隣接の電池セルに広がる前に、発火した電池セルを消火させることが非常に重要な課題である。
【0072】
そこで、本願発明に係る電池パックは、モジュールケース110の上部と隣接した位置に、冷却水を収容しているウォータータンク210を備え、前記冷却水が流れ出る貫通口を溶融点の低い密封部材が密封しており、発火した電池セルによって密封部材220が溶融すると貫通口230が開放される。したがって、前記貫通口から、ウォータータンク210の内部に収容された冷却水が電池セル120に直接投入される。
【0073】
このような過程によって、過熱又は発火したパウチ形電池セルを迅速に消火又は冷却させることによって熱暴走が拡大することを速かに防止でき、外部の注水施設を用いて電池セルの火炎を鎮火するのにかかる時間を確保することができる。
【0074】
また、本願発明の電池パックが電気自動車のように使用者と近接する位置に装着されても、電池セルの火炎を迅速に鎮圧でき、使用者の安全性を確保することができる。
【0075】
ウォータータンク210に形成された貫通口230は、ウォータータンクの一面に複数の孔が均一に分散された形態で形成されてよく、いかなる電池セルで発火が起きてもそれと隣接して位置する密封部材が溶融し得る。したがって、いかなる位置の電池セルが発火しても、電池セルの位置に関係なく、発火した電池セルへの直接の冷却水注入がなされ得る。すなわち、ウォータータンクに形成された貫通口の個数は、モジュールケースの大きさと個数、前記モジュールケースに配置される電池セルの形態、大きさ及び個数などを考慮して設計されてよい。
【0076】
図5は、第2実施例による電池モジュールの分解斜視図であり、
図6は、第2実施例による電池パックの断面図であり、
図7は、第2実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【0077】
図5~
図7を参照すると、電池パックは、複数の電池セル120を収容する電池モジュール200、電池モジュール200が2個以上収納された電池パックケース100、電池モジュール200の下部に位置するヒートシンク300を含み、電池モジュール200は、複数の電池セル120、複数の電池セル120の上部に位置するウォータータンク210、及び複数の電池セル120とウォータータンク210を収容するモジュールケース110を含む。
【0078】
複数の電池セル120は、全体的に六面体の構造を有し、金属素材からなる電池ケースに電極組立体が収納された角形電池セルであり、正極端子及び負極端子は、ウォータータンク210と対面するように上面から突出する形態であってよい。角形電池セルは、相対的に面積の広い側面が隣接して積層されるように密着配置されてよい。
【0079】
また、ウォータータンク210は、複数の電池セルと対面する一面に貫通口が形成され、前記貫通口には、溶融点の低い素材からなる密封部材220が付加されているので、電池セルの発火時に密封部材が溶融しながら前記貫通口が開放され、前記貫通口から、ウォータータンクの内部に収容された冷却水が電池セル120に直接投入され得る。
【0080】
その他に、前記第2実施例による電池パックに関する説明は、前記第1実施例による電池パックに関する説明を同一に適用できる。また、第1実施例と第2実施例の構成要素のうちその対象が同一である範囲で同一の図面符号が適用される。
【0081】
図8は、第3実施例による電池パックの分解斜視図であり、
図9は、第3実施例による電池モジュールの断面図であり、
図10は、第3実施例による電池パックで発火発生時に火炎が鎮火される状況を説明するための模式図である。
【0082】
図8~
図10を参照すると、電池パックは、複数の電池セル120を収容する電池モジュール200、電池モジュール200が2個以上収納された電池パックケース100、電池モジュール200の下部に位置するヒートシンク300を含み、電池モジュール200は、複数の電池セル120、複数の電池セル120の上部に位置するウォータータンク210、及び複数の電池セル120とウォータータンク210を収容するモジュールケース110を含む。
【0083】
複数の電池セル120は、全体的に円筒形の構造を有し、金属素材からなる電池ケースに電極組立体が収納された円筒形電池セルであり、正極端子がウォータータンク210と対面するように上方に突出する形態で配置されてよい。
【0084】
また、ウォータータンク210は、複数の電池セルと対面する一面に貫通口が形成され、前記貫通口には、溶融点の低い素材からなる密封部材220が付加されているので、電池セルの発火時に密封部材が溶融しながら前記貫通口が開放され、前記貫通口から、ウォータータンクの内部に収容された冷却水が電池セル120に直接投入され得る。
【0085】
その他に、前記第3実施例による電池パックに関する説明は、前記第1実施例による電池パックに関する説明を同一に適用できる。また、第1実施例と第3実施例の構成要素のうちその対象が同一である範囲で同一の図面符号が適用される。
【0086】
本願発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本願発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【符号の説明】
【0087】
100 電池パックケース
101 隔壁
110 モジュールケース
120,120’ 電池セル
200 電池モジュール
210 ウォータータンク
220 密封部材
225 延長部
230 貫通口
300 ヒートシンク