特許 7558627 ヒンジキャップ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-09-20

(45)【発行日】2024-10-01

(54)【発明の名称】ヒンジキャップ

(51)【国際特許分類】

   B65D 47/08 20060101AFI20240924BHJP

【ＦＩ】

B65D47/08 100

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2021072407

(22)【出願日】2021-04-22

(65)【公開番号】P2022166951

(43)【公開日】2022-11-04

【審査請求日】2023-11-14

(73)【特許権者】

【識別番号】000006909

【氏名又は名称】株式会社吉野工業所

(74)【代理人】

【識別番号】100186358

【弁理士】

【氏名又は名称】齋藤 信人

(74)【代理人】

【氏名又は名称】佐野 整博

(72)【発明者】

【氏名】山本 学

【審査官】二ッ谷 裕子

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１９－６４７２７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－９７９９０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－１５４７４７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１１６３１８（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２００３／０１４６２４８（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６５Ｄ ３９／００ － ５５／１６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

容器に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して取り付けられる蓋体とからなるヒンジキャップであって、
キャップ本体は、容器の口部に嵌着される装着部と、装着部の内縁から内方に延設され、口部の開口を封鎖する隔壁と、隔壁を貫通する注出口と、注出口の周囲から立設される注出筒とを備え、
隔壁は、注出筒が立設される平坦面部と、平坦面部の注出筒背面側からヒンジ側に向けて下方に傾斜する液戻し凹面部とを有し、高粘度の内容液の注出時に、キャップ本体の注出筒の下方に付着する内容液をヒンジ側に流下することを特徴とするヒンジキャップ。

【請求項2】

液戻し凹面部は、平坦面部の注出筒背面側からヒンジ側に向けて所定距離だけ隔てて形成されることを特徴とする請求項１に記載のヒンジキャップ。

【請求項3】

平坦面部は、装着部の内縁から延設され、注出側に半円状に形成される半円面と、ヒンジ側にリング状に形成される環状面とを有することを特徴とする請求項１または２に記載のヒンジキャップ。

【請求項4】

液戻し凹面部は、注出筒背面側からヒンジ側に向けて形成される注出側傾斜部と、ヒンジ側から注出側に向けて形成される背面側傾斜部と、注出側傾斜部と背面側傾斜部を繋ぐ屈曲部とを有することを特徴とする請求項１～３のいずれかに記載のヒンジキャップ。

【請求項5】

液戻し凹面部のヒンジ側に向けた傾斜は、水平面に対する角度が１０～６０°の範囲であることを特徴とする請求項１～４のいずれかに記載のヒンジキャップ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、容器の口部に装着されるヒンジキャップに関し、特に、高粘度の内容液が収納された容器に適したヒンジキャップに関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来から、容器の口部に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して取り付けられる蓋体とからなるヒンジキャップが知られている。
この種のヒンジキャップでは、容器の密閉性を確保するために、キャップ本体の開口予定部にプルリングなどを形成した除去部を有する隔壁を設けていた。
しかし、除去部を開口するために、蓋体を開けた後、プルリングなどを引っ張って除去部を除去する抜栓作業が必要となり、面倒であるとともに力の弱い利用者にとっては抜栓に苦労するという問題があった。

【0003】

このため、キャップ本体は、容器の口部に嵌着される装着部と、装着部から内方に延設され、注出口が開口された隔壁と、隔壁から立設された注出筒とを備え、蓋体は、頂壁と、頂壁の周縁部に垂設される側周壁と、頂壁の内面から垂設される密封筒とを備え、密封筒は、閉蓋時に注出筒の内周面に挿入されて密封状態とするシール部が形成されるとともに、シール部の下部に仮シール部が形成されるヒンジキャップが知られている（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０１９－１１６３１８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、特許文献１記載のヒンジキャップでは、液味噌、中濃ソース、とんかつソース、シーザードレッシングなどの高粘度（粘度が１０²～１０⁴ｍＰａ・ｓ程度）の内容液が収納された容器に装着されると、隔壁下面が平坦なため、内容液の注出時に、キャップ本体の隔壁下面に内容液が付着し、注出後も注出筒の下方に内容液が溜まって堆積することにより、注出筒の穴径が小さくなり、注出筒から内容液が注出し難くなるという問題があった。

【0006】

本発明は、上記問題を解決することを課題とし、高粘度の内容液の注出時に、キャップ本体の注出筒の下方に付着する内容液をヒンジ側に流下し、容器内に回収することができるヒンジキャップを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、上記の課題を解決するため、ヒンジキャップとして、容器に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して取り付けられる蓋体とからなるヒンジキャップであって、キャップ本体は、容器の口部に嵌着される装着部と、装着部の内縁から内方に延設され、口部の開口を封鎖する隔壁と、隔壁を貫通する注出口と、注出口の周囲から立設される注出筒とを備え、隔壁は、注出筒が立設される平坦面部と、平坦面部の注出筒背面側からヒンジ側に向けて下方に傾斜する液戻し凹面部とを有し、高粘度の内容液の注出時に、キャップ本体の注出筒の下方に付着する内容液をヒンジ側に流下することを特徴とする構成を採用する。

【0008】

ヒンジキャップの実施形態として、液戻し凹面部は、平坦面部の注出筒背面側からヒンジ側に向けて所定距離だけ隔てて形成されることを特徴とする構成を採用し、また、平坦面部は、装着部の内縁から延設され、注出側に半円状に形成される半円面と、ヒンジ側にリング状に形成される環状面とを有することを特徴とする構成を採用する。

【0009】

さらに、ヒンジキャップの具体的実施形態として、液戻し凹面部は、注出筒背面側からヒンジ側に向けて形成される注出側傾斜部と、ヒンジ側から注出側に向けて形成される背面側傾斜部と、注出側傾斜部と背面側傾斜部を繋ぐ屈曲部とを有することを特徴とする構成を採用し、また、液戻し凹面部のヒンジ側に向けた傾斜は、水平面に対する角度が１０～６０°の範囲であることを特徴とする構成を採用する。

【発明の効果】

【0010】

本発明のヒンジキャップは、上記構成を採用することにより、高粘度の内容液の注出時に、キャップ本体の注出筒の下方に付着する内容液をヒンジ側に流下し、容器内に回収することができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の実施例であるヒンジキャップを装着した容器の閉蓋状態を示す側面断面図である。

【図2】本発明の実施例であるヒンジキャップの開蓋状態を示す図であり、（ａ）は上面図で、（ｂ）は側面断面図である。

【図3】本発明の実施例の図２（ａ）で示す要部の拡大図であり、（ａ）はＯ－Ｘ１線（ヒンジの中央から０°地点）、（ｂ）はＯ－Ｘ２線（ヒンジの中央から４５°地点）（ｃ）はＯ－Ｘ３線（ヒンジの中央から６０°地点）（ｄ）はＯ－Ｘ４線（ヒンジの中央から９０°地点）の側面断面図である。

【図4】本発明の実施例であるヒンジキャップを装着した容器からヒンジキャップを分別する途中過程を示す上面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

次に、本発明のヒンジキャップについて、実施例を示した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、図１でみて、左方向を「注出側」とし、右方向を「背面側」とし、上方向を「上」とし、下方向を「下」とする。

【実施例】

【0013】

図１において、Ａは容器、Ｂは容器Ａに装着されるキャップ本体、Ｄはキャップ本体ＢにヒンジＣを介して開閉可能に取り付けられる蓋体である。
容器Ａは、上部に口部１を有し、口部１の外周面上部には、嵌合突条２が設けられ、嵌合突条２の外周上部は傾斜面２ａとなっている。

【0014】

キャップ本体Ｂは、図１および図２に示すように、容器Ａの口部１に嵌着される装着部３と、装着部３の内縁から内方に延設され、口部１の開口を封鎖する隔壁４と、隔壁４を貫通する注出口４ａと、注出口４ａの周囲から立設される注出筒５とを備えている。
注出筒５は、内容液を注ぎ易くするために、本実施例では、隔壁４の中央よりも注出側に立設されるとともに、注出側は、背面側（ヒンジＣ側）よりも高く形成され、リップ部５ａは、ラッパ状に広がっている。

【0015】

装着部３は、蓋体Ｄと係合する環状の蓋係合部６と、蓋係合部６の内周側から垂設される内筒７と、蓋係合部６の外周側から垂設される外周壁部８とから構成されており、外周壁部８には、背面側上端にヒンジＣが連設され、内周下部に容器Ａの口部１の嵌合突条２と係合する係合突部９が設けられている。
なお、本実施例では、装着部３は、容器Ａの口部１を挟んで垂設される内筒７および外周壁部８と、内筒７と外周壁部８とに連設される蓋係合部６とから構成されているが、内筒７と外周壁部８とを連設するのは、蓋係合部６に限らず、リング状の基壁部であればよく、この場合には、蓋係合部６は、隔壁４の周縁部に設ければよい。

【0016】

蓋係合部６は、背面側の中央から両側に所定の範囲で隔壁４上面と面一の高さに切り込まれた切り欠き部１０を残して円弧状に蓋係合突部１１が立設され、切り欠き部１０内には、蓋係合突部１１の両端部から等間隔の隙間を空けて複数配設される蓋係合突部１１と同等の高さで背面側突部１２が立設されている。
蓋係合突部１１の外周には係止突条１３が設けられている。

【0017】

外周壁部８の上部には、注出側に、ほぼ１８０°の円弧範囲で円弧状に上から距離αの深さで外周から凹設された段凹部１５が設けられ、残りの背面側は、上面８ａが隔壁４上面および切り欠き部１０底面と面一の高さとなり、外周上端にヒンジＣが連設される。
段凹部１５は、上面８ａから距離α下がった平坦面１５ａと、平坦面１５ａの内周縁から内側上方に傾斜する傾斜面１５ｂと、平坦面１５ａの端部の両側から上面８ａのそれぞれの両側に向って傾斜する傾斜側面１５ｃとが形成されている。

【0018】

図２（ａ）に示すように、外周壁部８のヒンジＣの左近傍には、外周面に平面視で略Ｖ字状の外周切り込み部１６が下端部に薄肉底壁を残して上面８ａから切り込まれている。
外周壁部８内周の係合突部９の外周切り込み部１６に対応する位置には、図示しないが内周切り込み部が縦方向に刻設され、該部分の外周壁部８は内外から切り込まれ、薄肉となる縦方向引き裂きラインを構成する縦弱化部１７が形成される。

【0019】

外周壁部８の背面側の外周切り込み部１６よりヒンジＣ側では、図２に示すように、端面１６ａの内周側の上部の薄肉部を隔てた位置を起点として円周方向（ヒンジＣ側に沿って）に延びて上面８ａ右端側の段凹部１５の傾斜側面１５ｃまで、スリット溝１８が上面８ａから凹設され、また、外周壁部８の外周切り込み部１６のヒンジＣと反対側の上面８ａは、外周壁部８上部と蓋係合部６下部とが一体に連結した肉厚部１９となっている。

【0020】

図３（ａ）に示すように、スリット溝１８の底面２０は、端面１６ａ側からヒンジＣ（背面側）の中央部（図２のＯ－Ｘ１線）までが底面２０ａとして、上面８ａから距離βと一番深く凹設され、図３（ｂ）に示すように、ヒンジＣの中央部から右側に向かって４５°付近（図２のＯ－Ｘ２線）が底面２０ｂとなり、さらに、図３（ｃ）に示すように、ヒンジＣの中央部から右側に向かって６０°付近（図２のＯ－Ｘ３線）が底面２０ｃとなり、上面８ａからの高さが距離βから徐々に浅くなるように形成され、最後は、図３（ｄ）に示すように、ヒンジＣの中央部から右側に向かって９０°付近（図２のＯ－Ｘ４線）の段凹部１５の傾斜側面１５ｃを切り欠いて距離αの平坦面１５ａ端部まで連なるよう形成されている。

【0021】

底面２０の内周側は、図２および図３に示すように、端面１６ａ側からヒンジＣの中央部までの外周壁部８と蓋係合部６の下方の壁部分を連結する薄肉の下横弱化部２１となり、ヒンジＣの中央部から９０°付近まで、上方に傾斜する底面２０の内周縁から内側上方に向かって傾斜する円弧状の連結部２２が設けられている。
また、外周壁部８の背面側のスリット溝１８より外側部は、スリット溝１８の底面２０から上面８ａまで立設する背面外壁部２３となり、背面外壁部２３の外周上端の所定の位置にヒンジＣが連設される。

【0022】

外周壁部８の内周上部には、左側から背面側中央まで、図２および図３（ａ）に示すように、下横弱化部２１より上部から内側上方に傾斜して、容器Ａに装着時に嵌合突条２の傾斜面２ａに当接する当接面部２４が形成され、背面側中央から右側に、図２（ａ）、図３（ｂ）および図３（ｃ）に示すように、傾斜する底面２０の高さから上に、外側の連結部２２の外側面と平行に内側上方に傾斜するとともに容器Ａに装着時に嵌合突条２の傾斜面２ａから離れるように形成される平行面２５が設けられ、平行面２５と連結部２２外面との間は薄肉となって傾斜連結弱化部２６が形成され、注出側には、段凹部１５の範囲で図１、図２および図３（ｄ）に示すように、蓋係合部６の下面外周縁に下から上向き凹部２７が凹設され、上向き凹部２７と段凹部１５の傾斜面１５ｂとの間は薄肉となって上横弱化部２８が形成される。
また、下横弱化部２１、傾斜連結弱化部２６および上横弱化部２８は、順に連続するように形成され、周方向引き裂きラインを構成している。

【0023】

図２に示すように、隔壁４は、注出口４ａおよび注出筒５が設けられる平坦面部３０と、平坦面部３０の注出筒５背面側からヒンジＣ側に向けて下方に傾斜する液戻し凹面部３１とを備えている。
平坦面部３０は、注出口４ａおよび注出筒５が設けられ、注出側に半円状に形成される半円面３０ａと、ヒンジＣ側にリング状に形成される環状面３０ｂとを備えている。
さらに、液戻し凹面部３１は、平坦面部３０の注出筒５の背面側下端から少なくとも１ｍｍ（本実施例では４．４ｍｍ）の距離γだけ隔てて形成され、特に１ｍｍ～７ｍｍの範囲に設けることが好ましい。

【0024】

液戻し凹面部３１は、注出側端部から下方に傾斜して伸びる注出側傾斜部３２と、背面側端部から下方に傾斜して伸びる背面側傾斜部３３と、注出側傾斜部３２と背面側傾斜部３３を繋ぐ屈曲部３４と、それぞれの両側を繋いで上端まで塞ぐ一対の側壁部３５とを備え、一番下の屈曲部３４の下端は、内筒７の下端の深さまで形成され、内筒７の下端を超えない長さにすることが好ましい。

【0025】

注出側傾斜部３２の水平面に対する角度θは、１０°～６０°の範囲（本実施例では３０°）で形成されており、注出側傾斜部３２の角度θが大きくなると、背面側傾斜部３３の角度は、小さくなり、反対に角度θが小さくなると、背面側傾斜部３３の角度は、大きくなる。
また、注出側傾斜部３２の角度θが大きくなると、屈曲部３４の位置は、注出側に寄り、反対に角度θが小さくなると、ヒンジＣ側に寄る。なお、注出側傾斜部３２と背面側傾斜部３３の角度については、同等としてもよい。
屈曲部３４の上面は、平坦な下平坦面３６となっており、成形時に樹脂を射出するゲートが位置するようになっている。

【0026】

蓋体Ｄは、図１および図２に示すように、キャップ本体Ｂの外周壁部８の外周上端に、ヒンジＣを介して回動自在に取着されており、頂壁４０と、頂壁４０の周縁から垂設される側周壁４１と、頂壁４０の内面から垂設され、注出筒５を密封する密封筒４２とが設けられている。
頂壁４０には、密封筒４２の外周側に変形可能な薄肉部４３が周設されている。

【0027】

側周壁４１の下端部内周には、蓋係合部６の蓋係合突部１１と係合して閉蓋状態を維持する係合凹部４５が周設されている。
係合凹部４５は、内向き面に、蓋係合突部１１の係止突条１３と係合する係止部４６が設けられ、下向き面４５ａは、蓋係合突部１１の上面および背面側突部１２の上面と当接するようになっている。
また、側周壁４１の係合凹部４５より内側に、背面側突部１２に相対する付近を除いて、閉蓋時に蓋係合突部１１の内周上部と当接して側周壁４１の外側への広がりを抑制する係止凸片４７が周方向に間隔をおいて複数配設されている。

【0028】

側周壁４１の外周には、注出側の下部に、周方向に円弧状の摘み部４８が形成され、背面側の下端部にヒンジＣが連設されている。
側周壁４１下面の注出側外周縁には、閉蓋時にキャップ本体Ｂの外周壁部８の段凹部１５を覆うように、段凹部１５の平坦面１５ａに、下端が近接あるいは当接するように形成された円弧状の被覆壁４９が垂設されている。

【0029】

密封筒４２は、閉蓋時に注出筒５の内周面に挿入されて密封状態とする通常のシール部ａが形成されるとともに、密封筒４２の下部外周側が縮径された下部シール筒４２ａが設けられ、下部シール筒４２ａは、閉蓋時において、隔壁４の注出口４ａの内周面に近接あるいは当接するように形成されており、下部シール筒４２ａと注出口４ａの内周面とで、シール部ａの下にもう一つの仮シール部ｂが形成される。

【0030】

本実施例のヒンジキャップに、使用前の不正開封を防止するために、図示していないが、キャップ本体Ｂと蓋体Ｄとの間にシュリンクラベルや封緘部材等が設けられていてもよい。

【0031】

次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、最初に、図２に示す状態で一体成形され、蓋体ＤをヒンジＣを介して回動し、キャップ本体Ｂに被せ、図１に示すように、閉蓋する。
その際、蓋体Ｄの密封筒４２の下部外周面が、キャップ本体Ｂの注出筒５の下部内周面に密着してシール部ａとなる。
また、蓋体Ｄの側周壁４１の係合凹部４５とキャップ本体Ｂの蓋係合部６の蓋係合突部１１が係合し、閉蓋が維持される。

【0032】

次に、図１に示すように、閉蓋したヒンジキャップは、内容液が充填された容器Ａの口部１に打栓して装着される。
打栓工程は、キャップ本体Ｂの装着部３の内筒７と外周壁部８との間に形成された環状溝に容器Ａの口部１を当てがい、蓋体Ｄの上から押圧力が加えられ、外周壁部８の係合突部９が口部１の嵌合突条２を乗り越えて嵌合し、容器Ａの口部１が内筒７の外周と外周壁部８の内周、および蓋係合部６とによって挟持されることで装着される。

【0033】

また、本実施例のキャップ本体Ｂは、隔壁４の平坦面部３０の注出筒５の背面側下端から液戻し凹面部３１の注出側傾斜部３２の上端部までの間に少なくとも１ｍｍ以上の距離γの平坦面部３０があるので、該部分の保形性がよくなり、打栓の際、注出筒５が蓋体Ｄの密封筒４２により押し込まれても、注出筒５下端の背面側部が液戻し凹面部３１の傾斜によって液戻し凹面部３１の内方に引っ張られても、平坦面部３０の背面側が変形せず、注出筒５が背面側に傾いてしまうことを防止できる。

【0034】

本実施例のヒンジキャップは、内容液が高温充填された容器Ａに打栓された場合、容器Ａ内の圧力が上昇するが、頂壁４０には密封筒４２の外側に変形可能な薄肉部４３が形成されているので、頂壁４０は、薄肉部４３の内周側のみが上昇して圧力を注出筒５より外側に逃がすので、蓋体Ｄの側周壁４１の係合凹部４５とキャップ本体Ｂの蓋係合部６との係合に支障がなく、閉蓋が維持されるので、内容液が高温だったときの内圧上昇により蓋体Ｄが開蓋してしまうことを防止できる。

【0035】

また、閉蓋した状態で、倒立落下した際に、蓋体Ｄの頂壁４０に衝撃力が加えられた場合でも、蓋体Ｄが受ける衝撃を薄肉部４３が吸収し、密封筒４２を注出筒５に対して押し込んだり、引き離したりしないので、密封筒４２とキャップ本体Ｂの注出筒５との密着に影響を及ぼさず、密封筒４２と注出筒５との密着が外れたり、密封筒４２と注出筒５が互いに傷付け合ったりすることを防止できる。

【0036】

容器Ａ内の内容液を使用する際には、蓋体Ｄの摘み部４８に手指を掛けて持ち上げると、蓋体Ｄの密封筒４２とキャップ本体Ｂの注出筒５とのシールが外れるとともに蓋体Ｄの側周壁４１とキャップ本体Ｂの蓋係合部６との係合が外され、蓋体Ｄが開蓋され、容器Ａを注出側に傾けると、容器Ａ内の内容液をキャップ本体Ｂの注出口４ａを通じて注出筒５から注出することができる。

【0037】

本実施例のヒンジキャップは、蓋体Ｄの側周壁４１下面の注出側外周縁に被覆壁４９が設けられているので、閉蓋中にキャップ本体Ｂの外周壁部８の段凹部１５を隠し、また、開蓋の際には摘み部４８の下に掛けた手指がぶつかり、蓋体Ｄの内方に接触することを防止しているので、キャップ内が清潔に保たれる。

【0038】

注出後、容器Ａの傾きを戻し、蓋体Ｄをキャップ本体Ｂに再び閉蓋することで、蓋体Ｄの密封筒４２は、外周がキャップ本体Ｂの注出筒５の内周に密着してシールが形成され、容器Ａ内を密封することができ、ヒンジキャップは、繰り返し蓋体Ｄを開閉して使用することができる。

【0039】

本実施例のキャップ本体Ｂの隔壁４は、注出後、注出筒５内に付着した内容液は、自重により下方に集められ、注出口４ａを介して平坦面部３０下面に流れ、内筒７の内面を伝って下に流れるとともに、平坦面部３０下面の背面側に流れた内容液は、液戻し凹面部３１の注出側傾斜部３２の傾斜により、屈曲部３４下面に集められて流下し、容器Ａ内に戻される。
特に、注出筒５から平坦面部３０下面の背面側に流れた内容液は、液戻し凹面部３１の注出側傾斜部３２と注出筒５との距離γが近く、注出側傾斜部３２の傾斜の流れに引っ張られてスムーズに流れるので、特に隔壁４の中央部下面に内容液が残らない。
注出筒５内および平坦面部３０下面に内容液が残りづらくなるので、注出筒５内周下部および平坦面部３０下面の注出口４ａ縁部に内容液が残って堆積し、注出口４ａを塞いでしまうことがない。

【0040】

本実施例では、キャップ本体Ｂの隔壁４の液戻し凹面部３１における注出側傾斜部３２が水平面に対する角度θの設定による効果を確認するために、角度θを変えてみたところ、角度θが１０°未満では、注出側傾斜部３２下面の傾斜が緩やかすぎて流下が遅くなり、粘度の高い内容液が隔壁４の中央部下面に残ったり、注出側傾斜部３２下面自体にも付着して残ることがあった。
角度θが６０°よりも急角度になると、背面側傾斜部３３の角度が緩やかになりすぎて、内容液が背面側傾斜部３３下面に付着して堆積し易くなるので、好ましくない。
また、角度θが急角度になると、注出側傾斜部３２の長さが短くなるため、堆積した内容液が流下しない場合がある。
以上のことから、注出側傾斜部３２の水平面に対する角度θは、１０°～６０°の範囲が注出筒５の下方に内容液を堆積させないキャップ本体Ｂとして好ましい。

【0041】

本実施例のヒンジキャップは、キャップ本体Ｂの隔壁４の平坦面部３０の上面が平面であり、さらに、液戻し凹面部３１の上面に垂れた内容液が液戻し凹面部３１のそれぞれの上面の傾斜により底の下平坦面３６に集められるとともに、下平坦面３６が平面であるためティッシュ等で簡単に汚れを拭き取ることができる。

【0042】

次に、容器Ａ内の内容液を全部使用した後、ヒンジキャップを分別廃棄する態様について説明する。
その際には、ヒンジキャップを開蓋し、蓋体Ｄを指で把持して外方に引っ張ると、ヒンジＣを介して外周壁部８のヒンジＣとの連設部となる背面外壁部２３が引っ張られ、連なる外周壁部８の背面側を引っ張り、変形させていく。
外周壁部８の背面側の引っ張りにより、外周切り込み部１６で形成される縦弱化部１７が破断されていく。
さらに蓋体Ｄを引っ張ると、縦弱化部１７に連設する端面１６ａ側から下横弱化部２１が周方向に切断されていき、次いで連続する傾斜連結弱化部２６が破断し始める。
下横弱化部２１が切断され、傾斜連結弱化部２６の破断が進行すると、図４に示すように、蓋体Ｄおよびそれに連なるキャップ本体Ｂの下横弱化部２１および傾斜連結弱化部２６で区画され、破断された外周壁部８の下側がキャップ本体Ｂから離されていく。

【0043】

次に、傾斜連結弱化部２６が完全に破断すると、連続する上横弱化部２８が右側端より破断されていき、最後は、肉厚部１９で止められる。
さらに、破断された外周壁部８を引っ張ると、連結している外周壁部８の肉厚部１９が外側に引っ張られ、キャップ本体Ｂの外周壁部８の係合突部９と容器Ａの口部１の嵌合突条２との嵌合が外され、そのまま上方に上げると、肉厚部１９で連設されている外周壁部８の上側およびその内方が持ち上げられキャップ本体Ｂが容器Ａの口部１から外されるので、ヒンジキャップと容器Ａとを分別廃棄することができる。

【0044】

本実施例のヒンジキャップは、傾斜連結弱化部２６を切断する際に、底面２０の傾斜に合わせて下から上への傾斜がついているので、外周壁部８の下部を引っ張る力が上向きとなって力が掛かり易く、また、傾斜連結弱化部２６を形成する内周の平行面２５が容器Ａの嵌合突条２の傾斜面２ａより離れていくので、切断する抵抗が少なくなり、破断し易くなっている。
また、注出側の上横弱化部２８を切断する際に、該部分の内周面の上向き凹部２７が容器Ａの嵌合突条２の傾斜面２ａより完全に離れるので、さらに、切断する抵抗が少なくなり、破断し易くなっている。

【産業上の利用可能性】

【0045】

本発明のヒンジキャップは、高粘度の内容液の注出時に、キャップ本体の注出筒の下方に付着する内容液をヒンジ側に流下し、容器内に回収することができるので、食品等を収納する容器のヒンジキャップとして好適である。

【符号の説明】

【0046】

Ａ 容器
Ｂ キャップ本体
Ｃ ヒンジ
Ｄ 蓋体
ａ シール部
ｂ 仮シール部
α、β、γ 距離
θ 角度
１ 口部
２ 嵌合突条
２ａ 傾斜面
３ 装着部
４ 隔壁
４ａ 注出口
５ 注出筒
５ａ リップ部
６ 蓋係合部（基壁部）
７ 内筒
８ 外周壁部
８ａ 上面
９ 係合突部
１０ 切り欠き部
１１ 蓋係合突部
１２ 背面側突部
１３ 係止突条
１５ 段凹部
１５ａ 平坦面
１５ｂ 傾斜面
１５ｃ 傾斜側面
１６ 外周切り込み部
１６ａ 端面
１７ 縦弱化部（縦方向引き裂きライン）
１８ スリット溝
１９ 肉厚部
２０、２０ａ、２０ｂ、２０ｃ 底面
２１ 下横弱化部（周方向引き裂きライン）
２２ 連結部
２３ 背面外壁部
２４ 当接面部
２５ 平行面
２６ 傾斜連結弱化部（周方向引き裂きライン）
２７ 上向き凹部
２８ 上横弱化部（周方向引き裂きライン）
３０ 平坦面部
３０ａ 半円面
３０ｂ 環状面
３１ 液戻し凹面部
３２ 注出側傾斜部
３３ 背面側傾斜部
３４ 屈曲部
３５ 側壁部
３６ 下平坦面
４０ 頂壁
４１ 側周壁
４２ 密封筒
４２ａ 下部シール筒
４３ 薄肉部
４５ 係合凹部
４５ａ 下向き面
４６ 係止部
４７ 係止凸片
４８ 摘み部
４９ 被覆壁

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】