(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置、および、窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240924BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240924BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20240924BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20240924BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20240924BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240924BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L29/44 P
H01L29/58 Z
H01L29/48 D
H01L21/90 N
H01L21/28 A
H01L29/58 G
H01L29/78 301G
H01L29/78 301V
(21)【出願番号】P 2023533676
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022025969
(87)【国際公開番号】W WO2024004079
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2023-06-01
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】滝口 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吹田 宗義
(72)【発明者】
【氏名】山田 高寛
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534632(JP,A)
【文献】特開2015-156454(JP,A)
【文献】特開2019-110344(JP,A)
【文献】特開2004-327766(JP,A)
【文献】特開2011-176195(JP,A)
【文献】特表2020-526921(JP,A)
【文献】特開2012-169470(JP,A)
【文献】特開2008-108844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/41
H01L 29/423
H01L 29/47
H01L 21/768
H01L 21/28
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面に設けられる第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上面に設けられる第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上面に設けられるソース電極と、
前記第2の窒化物半導体層の上面に、前記ソース電極と離間して設けられるドレイン電極と、
平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、かつ、前記第2の窒化物半導体層の上面から前記第1の窒化物半導体層の内部まで達する複数の止まり穴と、
それぞれの前記止まり穴内に設けられる埋め込みゲート電極と、
前記埋め込みゲート電極の上面および前記第2の窒化物半導体層の上面に跨って設けられるゲートフィンガー電極を備え、
それぞれの前記止まり穴の側面が、前記第1の窒化物半導体層の{1 -1 0 0}面に沿い、
複数の前記止まり穴が、前記第1の窒化物半導体層の主面であるc面に沿って並んで設けられ、
前記止まり穴
が、平面視で六角形状である、
窒化物半導体装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の窒化物半導体装置であり、
前記第1の窒化物半導体層が、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する、
窒化物半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化物半導体装置であり、
前記第2の窒化物半導体層の少なくとも一部を覆って設けられる絶縁膜をさらに備え、
前記絶縁膜が、前記第2の窒化物半導体層と前記埋め込みゲート電極との間と、前記第1の窒化物半導体層と前記埋め込みゲート電極との間、および、前記第2の窒化物半導体層と前記ゲートフィンガー電極との間に設けられる、
窒化物半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の窒化物半導体装置であり、
それぞれの前記止まり穴の全側面が、前記第1の窒化物半導体層の{1 -1 0 0}面に沿う、
窒化物半導体装置。
【請求項5】
基板の上面に第1の窒化物半導体層を設け、
前記第1の窒化物半導体層の上面に、第2の窒化物半導体層を設け、
前記第2の窒化物半導体層の上面から前記第1の窒化物半導体層の内部まで達する複数の止まり穴を形成し、
前記第2の窒化物半導体層の上面にソース電極を設け、
前記第2の窒化物半導体層の上面に、前記ソース電極と離間してドレイン電極を設け、
それぞれの前記止まり穴内に埋め込みゲート電極を設け、
前記埋め込みゲート電極の上面および前記第2の窒化物半導体層の上面に跨ってゲートフィンガー電極を設け、
それぞれの前記止まり穴が、平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、
それぞれの前記止まり穴の側面が、前記第1の窒化物半導体層の{1 -1 0 0}面に沿い、
複数の前記止まり穴が、前記第1の窒化物半導体層の主面であるc面に沿って並んで設けられ、
前記止まり穴
が、平面視で六角形状である、
窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の窒化物半導体装置の製造方法であり、
前記止まり穴内の少なくとも側面に、絶縁膜をさらに設け、
前記埋め込みゲート電極が、前記絶縁膜を介して、前記止まり穴内に設けられる、
窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載の窒化物半導体装置の製造方法であり、
それぞれの前記止まり穴の全側面が、前記第1の窒化物半導体層の{1 -1 0 0}面に沿う、
窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、窒化物半導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波領域で動作可能なトランジスタとして、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する窒化物半導体のヘテロ接合界面に生じる2次元電子ガス(2-dimensional electron gas、すなわち、2DEG)を用いる、高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor、すなわち、HEMT)がある。
【0003】
このような窒化物半導体HEMTは、高い2DEG密度と、2DEGの高い移動度とによって、高速かつ、高出力動作が可能なトランジスタである。
【0004】
窒化物半導体を用いるHEMTの高出力化または高速動作のためには、ゲート電極を縮小し、チャネル長を短くすることが有効である。一方で、チャネル長を短くすることで、ゲート電圧でのドレイン電流の制御性が悪化する短チャネル効果が顕著になる。
【0005】
この短チャネル効果を抑制する構造として、ゲート電極を埋め込み構造とし、チャネルを2方向または3方向から制御することでドレイン電流を制御する半導体装置が、たとえば、特許文献1または非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Q.Dai et al、“Deep Sub-60mV/decade Subthreshold Swing in AlGaN/GaN FinMISHFETs with M-Plane Sidewall Channel”、2019、P1699
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
窒化物半導体HEMTは、主面をc面((0 0 0 1)面)として形成され、チャネルはc面に沿って形成される。したがって、埋め込みゲート電極を形成する際は、主面に垂直にゲート電極が埋め込まれる。
【0009】
ウルツ鉱構造の結晶構造を有する窒化物半導体においては、主面と垂直な結晶面であるa面({1 1 -2 0}面)またはm面({1 -1 0 0}面)は60°の回転対称を有する。また、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する窒化物半導体では、m面と比較して、a面は化学耐性に低い。よってa面は、溶液によるエッチング速度が速く、化学気相成長時に表面平坦性の悪化が生じる。
【0010】
特許文献1または非特許文献1に開示されている半導体装置では、埋め込みゲート電極が平面視で円形または矩形となっている。このような構造である場合、埋め込みゲート電極を形成するために窒化物半導体に設けられた穴の側面の結晶面が一致していない。すなわち、埋め込みゲート電極を矩形とする場合、1つの側面をm面とすると、その面と対向する面はm面であるが、対向しない2面はa面となる。
【0011】
窒化物半導体に設ける穴の側面の結晶面が一致していない場合、ゲート電極埋め込み用の穴加工時に、加工ばらつきまたは表面平坦性の悪化が生じる可能性がある。また、穴加工後の工程において表面平坦性の悪化が生じる可能性がある。これらの加工ばらつきは、チャネル制御にとって重要な埋め込みゲート電極の寸法ばらつきを引き起こす。
【0012】
ゲート電極の寸法のばらつきは、それぞれの埋め込みゲート電極間のしきい値ばらつきにつながり、結果として、トランジスタ特性のばらつきを引き起こす。また、表面平坦性の低下は、埋め込みゲート電極と窒化物半導体との間の界面特性の低下を引き起こし、実効移動度を低下させる。加えて、埋め込みゲート電極と窒化物半導体との間の密着性の低下によって、半導体素子の信頼性の低下につながる。
【0013】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、埋め込みゲート電極に起因する装置の特性ばらつきを抑制するための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である窒化物半導体装置は、基板と、前記基板の上面に設けられる第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上面に設けられる第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層の上面に設けられるソース電極と、前記第2の窒化物半導体層の上面に、前記ソース電極と離間して設けられるドレイン電極と、平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、かつ、前記第2の窒化物半導体層の上面から前記第1の窒化物半導体層の内部まで達する複数の止まり穴と、それぞれの前記止まり穴内に設けられる埋め込みゲート電極と、前記埋め込みゲート電極の上面および前記第2の窒化物半導体層の上面に跨って設けられるゲートフィンガー電極を備え、それぞれの前記止まり穴の側面が、前記第1の窒化物半導体層の{1 -1 0 0}面に沿い、複数の前記止まり穴が、前記第1の窒化物半導体層の主面であるc面に沿って並んで設けられ、前記止まり穴が、平面視で六角形状である。
【発明の効果】
【0015】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1の態様によれば、止まり穴の側面が{1 -1 0 0}面に沿うことで、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。よって、埋め込みゲート電極と窒化物半導体層の側面との間の界面特性を均一にすることができ、穴加工の精度ばらつきに起因する装置の特性ばらつきを抑制することができる。
【0016】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に関する窒化物半導体装置の構成の例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された窒化物半導体装置のA-A’断面に対応する断面図である。
【
図3】
図1に示された窒化物半導体装置のB-B’断面に対応する断面図である。
【
図4】
図1に示された窒化物半導体装置のC-C’断面に対応する断面図である。
【
図5】
図1に示された窒化物半導体装置のC-C’断面に対応する変形例を示す断面図である。
【
図6】
図1に示された窒化物半導体装置のC-C’断面に対応する変形例を示す断面図である。
【
図7】実施の形態に関する窒化物半導体装置の製造方法の例を示すフローチャートである。
【
図8】基板の主面上に、窒化物半導体層と窒化物半導体層とを形成する工程の例を示す斜視図である。
【
図9】窒化物半導体層の上面にマスクを形成する工程の例を示す斜視図である。
【
図10】埋め込みゲート電極の形成領域を形成する工程の例を示す斜視図である。
【
図11】ソース電極とドレイン電極とを形成する工程の例を示す斜視図である。
【
図12】埋め込みゲート電極およびゲートフィンガー電極を形成する工程の例を示す斜視図である。
【
図13】実施の形態に関する窒化物半導体装置の構成の例を示す斜視図である。
【
図14】
図13に示された窒化物半導体装置のA-A’断面に対応する断面図である。
【
図15】
図13に示された窒化物半導体装置のB-B’断面に対応する断面図である。
【
図16】
図13に示された窒化物半導体装置のC-C’断面に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0019】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさ(水平方向、垂直方向の寸法など)および位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0020】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0021】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0023】
また、本願明細書に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、たとえば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合と、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合とを含むものとする。
【0024】
また、本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0025】
また、本願明細書に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「Aの上面に設けられるB」と記載される場合、AとBとの間に別の構成要素「C」が介在することを妨げるものではない。
【0026】
本願明細書において、「窒化物系半導体」とは、GaN、AlN、InNおよびそれらの中間組成を備える半導体の総称である。
【0027】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する窒化物半導体装置、および、窒化物半導体装置の製造方法について説明する。
【0028】
<窒化物半導体装置の構成について>
図1は、本実施の形態に関する窒化物半導体装置100の構成の例を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示された窒化物半導体装置100のA-A’断面に対応する断面図である。また、
図3は、
図1に示された窒化物半導体装置100のB-B’断面に対応する断面図である。また、
図4は、
図1に示された窒化物半導体装置100のC-C’断面に対応する断面図である。
【0029】
図1、
図2、
図3および
図4に例が示されるように、本実施の形態に関する窒化物半導体装置100は、基板10と、基板10の上面に設けられた窒化物半導体層20と、窒化物半導体層20の上面に設けられた窒化物半導体層30と、窒化物半導体層30の上面に設けられたソース電極40と、窒化物半導体層30の上面にソース電極40と離間するように設けられたドレイン電極50と、ソース電極40およびドレイン電極50の間で、窒化物半導体層30を貫通し、窒化物半導体層20に底面が接触するように形成された複数の埋め込みゲート電極60と、複数の埋め込みゲート電極60の上面および窒化物半導体層30の上面に跨って設けられたゲートフィンガー電極70とを備える。
【0030】
埋め込みゲート電極60を形成するために、窒化物半導体層30の上面から窒化物半導体層20の内部に達して、少なくとも1つの止まり穴110が設けられている。本実施の形態においては、複数の止まり穴110が設けられている。埋め込みゲート電極60は、止まり穴110を充填して形成される。
【0031】
この窒化物半導体層20に設けられた止まり穴110の側面(すなわち、
図2に示される面21a、
図3に示される面21)が、窒化物半導体層20のm面({1 -1 0 0}面)沿う面となっている。m面({1 -1 0 0}面)とは、(1 -1 0 0)と等価な面の総称である。すなわち、m面({1 -1 0 0}面)とは、(1 -1 0 0)面、(-1 1 0 0)面、(1 0 -1 0)面、(-1 0 1 0)面、(0 1 -1 0)面および(0 -1 1 0)面の6つの面を含む。
【0032】
基板10には、Si、SiC、GaAs、GaN、AlN、InP、α-Ga2O3などの半導体材料、または、Al2O3、MgO、ダイヤモンドなどの絶縁材料を用いることができる。
【0033】
窒化物半導体層20は、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する窒化物半導体材料であり、たとえば、GaNである。窒化物半導体層20の膜厚は、たとえば、1μmである。
【0034】
窒化物半導体層30は、たとえば、AlxGa1-xNである。窒化物半導体層20の膜厚は、たとえば、20nmである。窒化物半導体層30として、窒化物半導体層20よりも禁制帯幅の大きな材料を用いてヘテロ接合を形成することができる。たとえば、窒化物半導体層20をGaNとし、窒化物半導体層30をAlxGa1-xNとすることで、窒化物半導体層20と窒化物半導体層30との間の界面に高密度の2次元電子ガスを生じさせることができ、2次元電子ガスをチャネルとする窒化物半導体装置を形成することができる。
【0035】
窒化物半導体層30の上面から窒化物半導体層20の内部にかけて、埋め込みゲート電極60を形成するための止まり穴110が設けられている。
【0036】
図4では、上記の止まり穴110の平面視の断面形状の一例として六角形の断面形状が示されているが、面21および面21aが窒化物半導体層20のm面であれば、断面形状は必ずしも六角形でなくてもよい。
【0037】
図5および
図6は、
図1に示された窒化物半導体装置100のC-C’断面に対応する変形例を示す断面図である。
【0038】
図4では、面21同士が角面(すなわち、平面視で角形状)を形成しているが、
図5に示される止まり穴310、または
図6に示される止まり穴410のような形状であってもよい。具体的には、
図5に例が示されるように、止まり穴310における複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれた面が面31aのように平面形状であり、複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれていない面が面31のように角部を有する平面形状である場合に、面31aと面31とが交差する部分(すなわち、角部)、および、面31内の角部が、それぞれ平面視で丸みを帯びる曲形状であってもよい。また、
図6に例が示されるように、止まり穴410における複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれた面が面41aのように角部を有する平面形状であり、複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれていない面が面41のように平面形状である場合に、面41aと面41とが交差する部分(すなわち、角部)、および、面41a内の角部が、それぞれ平面視で丸みを帯びる曲形状であってもよい。
【0039】
埋め込みゲート電極60は、窒化物半導体層20の止まり穴110を充填するように、窒化物半導体層30を貫通し、窒化物半導体層20の途中まで存在する。埋め込みゲート電極60の底面は、窒化物半導体層20と窒化物半導体層30との間の界面よりも、たとえば、50nmだけ基板10側に存在する。
【0040】
図4では、一例として、埋め込みゲート電極60が面21および面21aのすべての面に接触している場合が示されているが、複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれた面に埋め込みゲート電極60が接触していればよく、複数の埋め込みゲート電極60同士に挟まれていない面(たとえば、
図4に示される面21)とは接触していなくてもよい。
【0041】
また、
図4では、一例として複数の埋め込みゲート電極60が等間隔に配置されているが、複数の埋め込みゲート電極60同士の間隔は一定でなくてもよい。なお、
図4に示される埋め込みゲート電極60同士の間隔は、たとえば、200nmである。
【0042】
埋め込みゲート電極60は、窒化物半導体層20および窒化物半導体層30と、それぞれショットキー接合を形成している。埋め込みゲート電極60は、金属、合金、金属および半導体を含む化合物、または、不純物がドーピングされた半導体材料などで形成される。埋め込みゲート電極60に使われる金属は、たとえば、Ti、W、Ni、Ptなどである。
【0043】
ゲートフィンガー電極70は、
図2に示されるように複数の埋め込みゲート電極60を接続するように設けられる。また、
図3に示されるように、ゲートフィンガー電極70は、窒化物半導体層30の上面に接触するように設けられている。この場合、窒化物半導体装置100のチャネルは窒化物半導体層20と窒化物半導体層30との間の界面に形成される。そして、当該チャネルは、埋め込みゲート電極60からのY軸方向に沿う電界と、ゲートフィンガー電極70からのZ軸方向に沿う電界とによって制御される。
【0044】
なお、ゲートフィンガー電極70と窒化物半導体層30との間に空隙が設けられていてもよい。この場合、窒化物半導体装置100のチャネルは、埋め込みゲート電極60からのY軸方向に沿う電界のみによって制御される。ゲートフィンガー電極70は、埋め込みゲート電極60とオーミック接触を形成する金属、合金、金属および半導体を含む化合物、または、不純物がドーピングされた半導体材料などで形成される。金属は、たとえば、Ti、W、Ni、Ptなどである。
【0045】
ソース電極40とドレイン電極50は、ゲートフィンガー電極70と離間するように、窒化物半導体層30上に設けられる。ソース電極40およびドレイン電極50は、金属、合金、金属および半導体を含む化合物、不純物がドーピングされた半導体材料などで形成される。ソース電極40およびドレイン電極50に使われる金属は、たとえば、Al、Nb、Pdなどである。
【0046】
<窒化物半導体装置の製造方法について>
図7は、本実施の形態に関する窒化物半導体装置100の製造方法の例を示すフローチャートである。
【0047】
図7に例が示されるように、まず、ステップST1において、基板10を準備する。たとえば、基板10はウルツ鉱構造を有する4H-SiC基板であり、主面は(0 0 0 1)面である。
【0048】
次に、ステップST2において、基板10の主面上に窒化物半導体層20および窒化物半導体層30を、有機金属気相成長法(MOCVD法)などによって形成する。
【0049】
図8は、基板10の主面上に、窒化物半導体層20と窒化物半導体層30とを形成する工程の例を示す斜視図である。ウルツ鉱構造を有する窒化物半導体層20は、同じくウルツ鉱構造を有する基板10の主面上にエピタキシャル成長するため、窒化物半導体層20の主面も(0 0 0 1)面となる。
【0050】
次に、ステップST3において、窒化物半導体層30の上面にマスク80を形成する。
【0051】
図9は、窒化物半導体層30の上面にマスク80を形成する工程の例を示す斜視図である。マスク80は、たとえば、以下の工程で形成される。
【0052】
まず、窒化物半導体層30の上面にマスク材料が形成される。マスク材料として、たとえば、感光性樹脂などのレジストが窒化物半導体層30の上面に塗布される。塗布方法は、たとえば、スピンコート法である。
【0053】
次に、光学露光または電子線露光などのリソグラフィー技術によって、埋め込みゲート電極60を形成する領域に対応する部分のレジストを開口することで、マスク80が形成される。
【0054】
マスク80には、たとえば、SiO、SiNなどの絶縁物、または、Ti、Niなどの金属が使用されてもよい。この場合、絶縁物または金属などのマスク材料上を、レジストを用いてパターニングを行うことによってマスク80を形成する。
【0055】
絶縁物または金属マスク材料の形成方法は、プラズマ支援化学気相成長法(PECVD法)、または、蒸着、スパッタリングなどの物理気相成長法などである。次に、マスク材料上に、感光性樹脂などのレジストが塗布される。レジストの塗布方法は、たとえば、スピンコート法である。そして、光学露光または電子線露光などのリソグラフィー技術によって、埋め込みゲート電極60を形成する領域上のレジストを開口する。次に、反応性イオンエッチング(RIE)などによって、埋め込みゲート電極60の形成領域上のハードマスク材料を開口する。次に、酸素プラズマによるアッシング、有機溶剤などによる溶液処理によってレジストを除去することによって、マスク80を形成する。
【0056】
次に、ステップST4において、窒化物半導体層30および窒化物半導体層20をエッチングし、埋め込みゲート電極60を形成する領域(埋め込みゲート電極60の形成領域)を形成する。
【0057】
図10は、埋め込みゲート電極60の形成領域を形成する工程の例を示す斜視図である。
図10に例が示されるように、マスク80を介して窒化物半導体層がエッチングされる。エッチング方法は、たとえば、塩素ガスを含む反応性イオンエッチング(reactive ion etching、すなわち、RIE)、または、ペルオキソ二硫酸イオンを含む溶液と紫外光とを用いる光電気化学(PEC)エッチングである。
【0058】
マスク80の開口形状としては、たとえば、六角形などである。窒化物半導体層20のエッチング後に、止まり穴110内の側面に窒化物半導体層20のm面が露出するようにする。
【0059】
一方、マスク80の開口形状として矩形または円形とした場合、開口内の側面には、m面ではない面が露出する。この場合、エッチング後に80℃に加熱した水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などを用いるウェットエッチングによって、窒化物半導体層20のm面を露出させることができる。これは、ウルツ鉱構造を有する窒化物半導体においては、強アルカリの水溶液に対して化学耐性の異方性が存在し、m面が最もエッチング速度が遅くなるからである。
【0060】
次に、ステップST5において、ソース電極40とドレイン電極50とを形成する。
図11は、ソース電極40とドレイン電極50とを形成する工程の例を示す斜視図である。
図11に例が示されるように、ソース電極40およびドレイン電極50が形成される領域に対応する開口を有するマスク81が、窒化物半導体層30の上面に形成される。そして、マスク81を介して、ソース電極40およびドレイン電極50となる金属膜が形成される。金属膜は、たとえば、蒸着法によって形成される。
【0061】
次に、ステップST6において、埋め込みゲート電極60およびゲートフィンガー電極70を形成する。
図12は、埋め込みゲート電極60およびゲートフィンガー電極70を形成する工程の例を示す斜視図である。
図12に例が示されるように、埋め込みゲート電極60およびゲートフィンガー電極70が形成される領域に応じた開口を有するマスク82が、窒化物半導体層30の上面に形成される。そして、マスク82を介して、埋め込みゲート電極60およびゲートフィンガー電極70となる金属膜が形成される。金属膜は、たとえば、蒸着法によって形成される。
【0062】
このような埋め込みゲート電極60を有する窒化物半導体装置100においては、チャネルとなる窒化物半導体層30が、ゲートフィンガー電極70と上面で接触するだけでなく、埋め込みゲート電極60と側面でも接触している。また、チャネルとなる窒化物半導体層20が、埋め込みゲート電極60と側面で接触している。
【0063】
すなわち、窒化物半導体装置100では、窒化物半導体層20と窒化物半導体層30との間の界面に形成されるチャネルが、チャネルの上面に位置するゲートフィンガー電極70からの電界だけでなく、チャネルの側面に位置する埋め込みゲート電極60からの電界によっても制御されている。
【0064】
チャネルが上面に位置するゲート電極の電界によってのみ制御される場合、チャネルが上面に位置するゲート電極が縮小する際にチャネルの制御性が低下し、ソース電極とドレイン電極との間のリーク電流の増加、サブスレッショルド特性の低下、または、ドレイン電圧によるしきい値電圧の変化などの、短チャネル効果の影響が顕著になる。
【0065】
一方で、本実施の形態に関する窒化物半導体装置100のように、チャネルの側面に位置する埋め込みゲート電極60の電界によるチャネル制御が加わることによって、チャネルに対する3方向からの電界によって制御することが可能となる。よって、チャネルの制御性が向上し、短チャネル効果の影響を低減することができる。
【0066】
半導体装置においては、半導体層とゲート電極との間の界面の特性は、しきい値電圧またはサブスレッショルド特性などの半導体装置の特性に影響を与える。
【0067】
埋め込みゲート電極60を備える窒化物半導体装置では、ゲートフィンガー電極70が窒化物半導体層30の上面に接触し、かつ、埋め込みゲート電極60が窒化物半導体層20の側面および窒化物半導体層30の側面に接触する。すなわち、窒化物半導体層30の上面とゲートフィンガー電極70との間の界面特性だけでなく、窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面と埋め込みゲート電極60との間の界面特性を制御することも、埋め込みゲート電極60を備える窒化物半導体装置では重要である。
【0068】
半導体材料のエッチングプロセスは、半導体材料表面の化学的および物理的性質に依存する。半導体材料の化学的および物理的性質は、表面の原子配列によって変化し、その表面の原子配列は結晶面によって異なる。
【0069】
埋め込みゲート電極60を有する窒化物半導体装置では、埋め込みゲート電極60の構造を形成するために、上記のステップST4で示されたように、窒化物半導体層20および窒化物半導体層30の主面であるc面に対して垂直に穴加工する。この際、窒化物半導体の結晶面の化学的な性質の差によって、窒化物半導体層20のm面が露出するように穴加工することで、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。加えて、上記のステップST4で示されたように、穴加工後にウェットエッチングを行う際も、窒化物半導体層20のm面が露出するようにウェットエッチングすることで、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。
【0070】
窒化物半導体層の側面を平坦で均質なものとすることで、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層の側面との間の界面特性を均一にすることができる。
【0071】
また、窒化物半導体装置100では、複数の埋め込みゲート電極60を備えるため、窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面と埋め込みゲート電極60との間の界面を複数有している。よって、窒化物半導体層の側面と個々の埋め込みゲート電極60との間の界面特性を均一にすることで窒化物半導体装置の特性を均一化し、特性ばらつきを抑制することができる。
【0072】
ここで、窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面に凹凸が存在すると、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面との間に微小な空隙が発生しやすくなる。このような空隙は、半導体装置の製造時または使用時における埋め込みゲート電極60の剥離を生じさせる可能性がある。
【0073】
窒化物半導体装置100では、平坦な窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面を得ることが可能であるため、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層30(窒化物半導体層20)の側面との間の密着性を向上させ、微小な空隙の発生を抑制することができる。よって、窒化物半導体装置の製造ばらつきも抑制することができる。
【0074】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に関する窒化物半導体装置、および、窒化物半導体装置の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0075】
<窒化物半導体装置の構成について>
図13は、本実施の形態に関する窒化物半導体装置200の構成の例を示す斜視図である。また、
図14は、
図13に示された窒化物半導体装置200のA-A’断面に対応する断面図である。また、
図15は、
図13に示された窒化物半導体装置200のB-B’断面に対応する断面図である。また、
図16は、
図13に示された窒化物半導体装置200のC-C’断面に対応する断面図である。
【0076】
図13、
図14、
図15および
図16に例が示されるように、本実施の形態に関する窒化物半導体装置200は、基板10と、基板10の上面に設けられた窒化物半導体層20と、窒化物半導体層20の上面に設けられた窒化物半導体層30と、窒化物半導体層30の上面に設けられたソース電極40と、窒化物半導体層30の上面にソース電極40と離間するように設けられたドレイン電極50と、ソース電極40およびドレイン電極50の間で、窒化物半導体層30を貫通し、窒化物半導体層20に底面が接触するように形成された複数の埋め込みゲート電極60と、複数の埋め込みゲート電極60の上面に跨って設けられたゲートフィンガー電極70とを備える。
【0077】
さらに、本実施の形態では、窒化物半導体装置200は、窒化物半導体層30の上面のうち、ソース電極40およびドレイン電極50が設けられていない面に、絶縁膜90が設けられる。絶縁膜90は、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層30の側面との間の界面(止まり穴110内の側面)、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層20の上面および側面との間の界面(止まり穴110内の側面)、ゲートフィンガー電極70と窒化物半導体層30の上面との間の界面に、それぞれ設けられる。埋め込みゲート電極60は、絶縁膜90を介して、それぞれの止まり穴110内に充填される。
【0078】
絶縁膜90は、窒化物半導体層30と埋め込みゲート電極60との間(すなわち、止まり穴110内の側面)、窒化物半導体層20と埋め込みゲート電極60との間(すなわち、止まり穴110内の底面)、および、窒化物半導体層30とゲートフィンガー電極70との間に存在していればよく、必ずしも窒化物半導体層30の表面全体を覆わなくてもよい。絶縁膜90の厚みは、たとえば、5nmである。絶縁膜90には、SiO2、Al2O3、HfO2、Gd2O3、Ta2O3、ZrO2などの金属酸化物材料、SiN、AlNなどの金属窒化物材料、または、金属酸化物と金属窒化物との混晶材料などを用いることができる。
【0079】
絶縁膜90は、たとえば、以下の方法で形成される。まず、
図7に示された窒化物半導体装置の製造方法のフローチャートのうち、ステップST5の後に、埋め込みゲート電極60の形成領域に露出している窒化物半導体層20の上面および側面、埋め込みゲート電極60の形成領域に露出している窒化物半導体層30の側面、窒化物半導体層30の上面、ソース電極40の上面、および、ドレイン電極50の上面に、原子層堆積(atomic layer deposition、すなわち、ALD)法などの化学気相堆積(chemical vapor deposition、すなわち、CVD)法によって絶縁材料の膜を形成する。
【0080】
その後、マスクパターンの形成および当該マスクを用いるエッチングによって、ソース電極40の上面およびドレイン電極50の上面における絶縁材料の膜が選択的に除去する。
【0081】
窒化物半導体装置200では、チャネルとなる窒化物半導体層30および窒化物半導体層20と、埋め込みゲート電極60との間に、絶縁膜90が設けられている。
【0082】
絶縁膜90が設けられていない場合、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60とはショットキー接触を形成し、チャネルの遮断時にはショットキー障壁を通過する逆方向リーク電流が、チャネルの開通時には順方向電流がそれぞれ流れる。
【0083】
ここで、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間に高抵抗の絶縁膜90を設けることで、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間の抵抗が増加し、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることができる。
【0084】
窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることで、半導体装置の損失を低減し、電力効率を向上させることができる。
【0085】
<以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された複数の実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0086】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0087】
以上に記載された実施の形態によれば、窒化物半導体装置は、基板10と、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、ソース電極40と、ドレイン電極50と、少なくとも1つの止まり穴110(または、止まり穴310、止まり穴410)と、埋め込みゲート電極60と、ゲートフィンガー電極70を備える。ここで、第1の窒化物半導体層は、たとえば、窒化物半導体層20などに対応するものである。また、第2の窒化物半導体層は、たとえば、窒化物半導体層30などに対応するものである。窒化物半導体層20は、基板10の上面に設けられる。窒化物半導体層30は、窒化物半導体層20の上面に設けられる。ソース電極40は、窒化物半導体層30の上面に設けられる。ドレイン電極50は、窒化物半導体層30の上面に、ソース電極40と離間して設けられる。止まり穴110は、平面視でソース電極40とドレイン電極50との間に位置する。また、止まり穴110は、窒化物半導体層30の上面から窒化物半導体層20の内部まで達する。埋め込みゲート電極60は、止まり穴110内に設けられる。ゲートフィンガー電極70は、埋め込みゲート電極60の上面および窒化物半導体層30の上面に跨って設けられる。そして、止まり穴110の側面が、窒化物半導体層20の{1 -1 0 0}面に沿う。
【0088】
このような構成によれば、止まり穴110の側面が{1 -1 0 0}面に沿うことで、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。よって、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層の側面との間の界面特性を均一にすることができ、穴加工の精度ばらつきに起因する装置の特性ばらつきを抑制することができる。
【0089】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0090】
また、以上に記載された実施の形態によれば、窒化物半導体層20が、ウルツ鉱構造の結晶構造を有する。このような構成によれば、ウルツ鉱構造を有する窒化物半導体においては、強アルカリの水溶液に対して化学耐性の異方性が存在し、m面が最もエッチング速度が遅くなるため、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液などを用いるウェットエッチングによって、窒化物半導体層20のm面を露出させることができる。
【0091】
また、以上に記載された実施の形態によれば、止まり穴110が、平面視で六角形状である。このような構成によれば、止まり穴110の側面をm面として、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。よって、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層の側面との間の界面特性を均一にすることができる。
【0092】
また、以上に記載された実施の形態によれば、止まり穴310(または、止まり穴410)が、平面視で曲形状である。このような構成によれば、止まり穴の形状の自由度を高めることができる。
【0093】
また、以上に記載された実施の形態によれば、窒化物半導体装置は、窒化物半導体層30の少なくとも一部を覆って設けられる絶縁膜90を備える。そして、絶縁膜90が、窒化物半導体層30と埋め込みゲート電極60との間に設けられる。また、絶縁膜90が、窒化物半導体層20と埋め込みゲート電極60との間に設けられる。また、絶縁膜90が、窒化物半導体層30とゲートフィンガー電極70との間に設けられる。このような構成によれば、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間の抵抗が増加し、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることができる。そして、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることで、半導体装置の損失を低減し、電力効率を向上させることができる。
【0094】
以上に記載された実施の形態によれば、窒化物半導体装置の製造方法において、基板10の上面に窒化物半導体層20を設ける。そして、窒化物半導体層20の上面に、窒化物半導体層30を設ける。そして、窒化物半導体層30の上面から窒化物半導体層20の内部まで達する少なくとも1つの止まり穴110を形成する。そして、窒化物半導体層30の上面にソース電極40を設ける。そして、窒化物半導体層30の上面に、ソース電極40と離間してドレイン電極50を設ける。そして、止まり穴110内に埋め込みゲート電極60を設ける。そして、埋め込みゲート電極60の上面および窒化物半導体層30の上面に跨ってゲートフィンガー電極70を設ける。ここで、止まり穴110が、平面視でソース電極40とドレイン電極50との間に位置する。また、止まり穴110の側面が、窒化物半導体層20の{1 -1 0 0}面に沿う。
【0095】
このような構成によれば、止まり穴110の側面が{1 -1 0 0}面に沿うことで、平坦で均質な窒化物半導体層の側面を得ることができる。よって、埋め込みゲート電極60と窒化物半導体層の側面との間の界面特性を均一にすることができ、穴加工の精度ばらつきに起因する装置の特性ばらつきを抑制することができる。
【0096】
なお、特段の制限がない場合には、それぞれの処理が行われる順序は変更することができる。
【0097】
また、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0098】
また、以上に記載された実施の形態によれば、窒化物半導体装置の製造方法において、止まり穴110内の少なくとも側面に、絶縁膜90を設ける。そして、埋め込みゲート電極60は、絶縁膜90を介して、止まり穴110内に設けられる。このような構成によれば、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間の抵抗が増加し、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることができる。そして、窒化物半導体層と埋め込みゲート電極60との間を流れる電流を低減させることで、半導体装置の損失を低減し、電力効率を向上させることができる。
【0099】
<以上に記載された複数の実施の形態の変形例について>
以上に記載された複数の実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではないものとする。
【0100】
したがって、例が示されていない無数の変形例と均等物とが、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0101】
また、以上に記載された少なくとも1つの実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【0102】
また、矛盾が生じない限り、以上に記載された実施の形態において「1つ」の構成要素が備えられる、と記載された場合に、当該構成要素が「1つ以上」備えられていてもよいものとする。
【0103】
さらに、以上に記載された実施の形態におけるそれぞれの構成要素は概念的な単位であって、本願明細書に開示される技術の範囲内には、1つの構成要素が複数の構造物から成る場合と、1つの構成要素がある構造物の一部に対応する場合と、さらには、複数の構成要素が1つの構造物に備えられる場合とを含むものとする。
【0104】
また、以上に記載された実施の形態におけるそれぞれの構成要素には、同一の機能を発揮する限り、他の構造または形状を有する構造物が含まれるものとする。
【0105】
また、本願明細書における説明は、本技術に関連するすべての目的のために参照され、いずれも、従来技術であると認めるものではない。
【符号の説明】
【0106】
10 基板、20 窒化物半導体層、21 面、21a 面、30 窒化物半導体層、31 面、31a 面、40 ソース電極、41 面、41a 面、50 ドレイン電極、60 埋め込みゲート電極、70 ゲートフィンガー電極、90 絶縁膜、100 窒化物半導体装置、110 止まり穴、200 窒化物半導体装置、310 止まり穴、410 止まり穴、HEMT 窒化物半導体。