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特許7558640高信頼性のメンテナンスフリーな無線周波数ハードウェアアーキテクチャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】高信頼性のメンテナンスフリーな無線周波数ハードウェアアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   H04B 14/00 20060101AFI20240924BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240924BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H04B14/00 Z
H04B1/04 D
H04B1/16 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019001070
(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公開番号】P2019134414
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】15/877,322
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ステファン エー.マカンリス
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー シー.アロンギ
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-167930(JP,A)
【文献】特開昭61-078213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0192212(US,A1)
【文献】EGAMI, S. et al.,An Adaptive Multiple Beam System Concept,IEEE Journal on Selected Areas in Communications,米国,IEEE,1987年,VOL. SAC-5, NO. 4,pages 630-636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 14/00-14/08
H04B 1/02-1/04
H04B 1/06
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムのための冗長アーキテクチャであって、
並列配置され、かつ各々が低ノイズ増幅器を備えた複数のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、
複数のRF入力信号を前記複数のアクティブRFハードウェアユニットに結合するように構成された1つ以上のRF信号スプリッタと、
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理されたRF信号を、複数のRF出力経路に結合するように構成された1つ以上のRF信号結合器と、を含み、
前記1つ以上のRF信号スプリッタは、
前記複数のRF入力信号の各々を、各RF入力信号と同位相の第1電力低下RF信号と、各RF入力信号に対して90度位相シフトされた第2電力低下RF信号とに分割し、
前記第1電力低下RF信号前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの第1アクティブRFハードウェアユニットに供給、前記第2電力低下RF信号前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの第2アクティブRFハードウェアユニットに供給るように構成されており、
前記1つ以上のRF信号結合器は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理された前記複数のRF入力信号の各々について、
前記第1電力低下RF信号を、前記第1電力低下RF信号と同位相の第1コピーと、前記第1電力低下RF信号に対して90度位相シフトされた第2コピーとに分割し、前記第2電力低下RF信号を、前記第2電力低下RF信号と同位相の第3コピーと、前記第2電力低下RF信号に対して90度位相シフトされた第4コピーとに分割し、
前記第1コピーには前記第4コピー、前記第2コピーには前記第3コピーをそれぞれ組み合わせてRF出力信号を形成し、
前記RF出力信号を、前記各RF入力信号に対応する前記複数のRF出力経路のうちの1つのRF出力経路に供給するように構成されている、冗長アーキテクチャ。
【請求項2】
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの何れかが故障すると、分散された信号の劣化は生じながらも、信号の中断は生じないように構成されている、請求項1に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項3】
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの1つ又は複数に故障が生じた場合であっても、アクティブRFハードウェアユニットのうちの少なくとも1つが故障していない場合には、前記冗長アーキテクチャは、予備のRFハードウェアユニットに切り替えることなく、前記複数のRF出力経路に対して前記複数のRF出力信号の全てを供給するように構成されている、請求項1に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項4】
前記1つ以上のRF信号スプリッタは、m個の入力とn個の出力とを有する入力ネットワークを含み、前記入力ネットワークの各出力は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの異なるアクティブRFハードウェアユニットに結合されている、請求項1に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項5】
前記1つ以上のRF信号結合器は、n個の入力とm個の出力とを有する出力ネットワークを含み、前記出力ネットワークの各入力は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちのそれぞれ異なる1つのアクティブRFハードウェアユニットに結合されている、請求項4に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項6】
前記複数のRF入力信号は、それぞれ、同じ周波数帯域で動作する、請求項1に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項7】
前記通信システムは、衛星の通信ペイロードである、請求項1に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項8】
通信システムのための冗長アーキテクチャであって、
一連の入力ポートと、
一連の出力ポートと、
並列配置され、かつ各々が低ノイズ増幅器を備えた複数のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、
前記一連の入力ポートを前記複数のアクティブRFハードウェアユニットに接続する少なくとも1つのRF信号スプリッタと、
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットを前記一連の出力ポートに接続する少なくとも1つのRF信号結合器と、を含み、
前記冗長アーキテクチャは、前記一連の入力ポートのうちの任意の入力ポートに供給されたRF入力信号が、前記RF入力信号と同じ位相を有する第1電力低下RF信号と、前記RF入力信号に対して90度位相シフトされた第2電力低下RF信号とに分割され、前記第1電力低下RF信号は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの第1アクティブRFハードウェアユニットに供給され、前記第2電力低下RF信号は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの第2アクティブRFハードウェアユニットに供給され、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによる処理の後、前記第1電力低下RF信号は、前記第1電力低下RF信号と同位相の第1コピーと、前記第1電力低下RF信号に対して90度位相シフトされた第2コピーとに分割され、前記第2電力低下RF信号は、前記第2電力低下RF信号と同位相の第3コピーと、前記第2電力低下RF信号に対して90度位相シフトされ第4コピーとに分割され、前記一連の出力ポートのうちの所与の出力ポートにおいて前記第1コピーには前記第4コピー、前記第2コピーには前記第3コピーがそれぞれ組み合わされて、RF出力信号が形成されるように構成されている、冗長アーキテクチャ。
【請求項9】
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの何れかが故障すると、前記RF出力信号の品質の劣化は生じながらも、前記RF出力信号の中断は生じないように構成されている、請求項8に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項10】
前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの1つ又は複数に故障が生じた場合であっても、前記冗長アーキテクチャは、予備のRFハードウェアユニットに切り替えることなく、前記所与の出力ポートに対して前記RF出力信号を供給するように構成されている、請求項8に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのRF信号スプリッタは、m個の入力とn個の出力とを有する入力ネットワークを含み、前記入力ネットワークの各出力は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの異なるアクティブRFハードウェアユニットに結合されている、請求項8に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項12】
前記少なくとも1つのRF信号結合器は、n個の入力とm個の出力とを有する出力ネットワークを含み、前記出力ネットワークの各入力は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちの異なるアクティブRFハードウェアユニットに結合されている、請求項11に記載の冗長アーキテクチャ。
【請求項13】
通信システムのための冗長アーキテクチャであって、
m個の入力ポートと、
m個の出力ポートと、
並列配置され、かつ各々が低ノイズ増幅器を備えたn個のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、
前記m個の入力ポートを前記n個のアクティブRFハードウェアユニットに接続するm×n入力マトリクスと、
前記n個のアクティブRFハードウェアユニットを前記m個の出力ポートに接続するn×m出力マトリクスと、を含み、
前記冗長アーキテクチャは、前記m個の入力ポートのうちの任意の入力ポートに供給されたRF入力信号が、電力低下RF入力信号の同一の位相または90度位相シフトされたn個のコピーに分割され、分割された前記n個のコピーが、前記n個のアクティブRFハードウェアユニットによってそれぞれ処理され、当該処理の後、分割された前記n個のコピーが、前記RF入力信号と位相が同じ第1コピーと、前記RF入力信号に対して90度位相シフトされた第2コピーと、に分割され、前記m個の出力ポートのうちの所与の出力ポートにおいて同じ位相を有するコピーが互いに組み合わされ、その他の出力ポートにおいては前記n個コピーのうち位相が180度異なるコピーが互いに組み合わされて、RF出力信号が形成されるように構成されている、冗長アーキテクチャ。
【請求項14】
前記冗長アーキテクチャは、切り替え可能に構成された予備ハードウェアユニットを前記冗長アーキテクチャに含まない、請求項13に記載の冗長アーキテクチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して通信システムに関し、より具体的には、通信システムの冗長アーキテクチャ(redundancy architectures)に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの衛星通信システムは、長年動作するように設計されている。衛星ペイロード(satellite payload)の信頼性を維持するとともにその寿命を延ばすために、当該ペイロードは、アクティブユニットが故障した場合に信号経路に切替可能なように設計された予備ユニット又は冗長ユニットを備えうる。一例として、ペイロードは、10個のアクティブな低ノイズ増幅器と、2つの予備の低ノイズ増幅器を含みうる。アクティブな低ノイズ増幅器のうちの1つが故障すると、2つの予備低ノイズ増幅器のうちの一方が、故障した低ノイズ増幅器の信号経路に切り替えられる。
【0003】
予備ユニットを故障したアクティブユニットの信号経路に切り替える際、電気機械スイッチに無線周波数(RF)コマンドが送信されうる。例えば、電気機械スイッチには2つの位置があり、第1位置においては、電気機械スイッチは、アクティブユニットを信号経路に接続し、第2位置においては、電気機械スイッチは、予備ユニットを信号経路に接続する。アクティブユニットが故障した場合、RFコマンドを電気機械スイッチに送信することにより、スイッチを第2位置に遷移させることができる。RFコマンドの送信には、作業者の介入を要する場合がある。
【0004】
また、故障したアクティブなハードウェアユニットを予備のハードウェアユニットと交換する際には、サービスの中断が生じる。サービスの中断期間は、アクティブなハードウェアユニットが故障してから、予備のハードウェアユニットに切り替えて当該ユニットを起動させ、サービスを再初期化するまでの期間である。したがって、諸々の改善が求められている。
【発明の概要】
【0005】
一例として、通信システムのための冗長アーキテクチャが開示される。冗長アーキテクチャは、並列配置された複数のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、複数のRF入力信号を前記複数のアクティブRFハードウェアユニットに結合するように構成された1つ以上のRF信号スプリッタと、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理されたRF信号を、複数のRF出力経路に結合するように構成された1つ以上のRF信号結合器と、を含む。前記1つ以上のRF信号スプリッタは、前記複数のRF入力信号の各々を、前記各RF入力信号の複数のコピーに分割し、前記各RF入力信号の前記複数のコピーの各々を、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちのそれぞれ異なる1つのアクティブRFハードウェアユニットに供給するように構成されている。前記1つ以上のRF信号結合器は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理された前記複数のRF入力信号の各々について、前記各RF入力信号の前記複数のコピーを組み合わせてRF出力信号を形成し、前記RF出力信号を、前記各RF入力信号に対応する前記複数のRF出力経路のうちの1つのRF出力経路に供給するように構成されている。
【0006】
他の例として、通信システムのための冗長アーキテクチャが開示される。前記冗長アーキテクチャは、一連の入力ポートと、一連の出力ポートと、並列配置された複数のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、前記一連の入力ポートを前記複数のアクティブRFハードウェアユニットに接続する少なくとも1つのRF信号スプリッタと、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットを前記一連の出力ポートに接続する少なくとも1つのRF信号結合器と、を含む。前記冗長アーキテクチャは、前記一連の入力ポートのうちの任意の入力ポートに供給されたRF入力信号が、前記RF入力信号の複数のコピーに分割され、分割された前記複数のコピーが、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによってそれぞれ処理され、当該処理の後、前記一連の出力ポートのうちの所与の出力ポートにおいて組み合わされて、RF出力信号が形成されるように構成されている。
【0007】
他の例として、通信システムのための冗長アーキテクチャが開示される。前記冗長アーキテクチャは、m個の入力ポートと、m個の出力ポートと、並列配置されたn個のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、前記m個の入力ポートを前記n個のアクティブRFハードウェアユニットに接続するm×n入力マトリクスと、前記n個のアクティブRFハードウェアユニットを前記m個の出力ポートに接続するn×m出力マトリクスと、を含む。前記冗長アーキテクチャは、前記m個の入力ポートのうちの任意の入力ポートに供給されたRF入力信号が、前記RF入力信号のn個のコピーに分割され、分割された前記複数のコピーが、前記n個のアクティブRFハードウェアユニットによってそれぞれ処理され、当該処理の後、前記m個の出力ポートのうちの所与の出力ポートにおいて組み合わされて、RF出力信号が形成されるように構成されている。
【0008】
上述した特徴、機能、及び、利点は、様々な実施例によって個別に達成することができ、或いは、さらに他の実施例と組み合わせることもできる。そのさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
例示的な実施例に特有のものと考えられる新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な実施形態、及び、好ましい使用形態、さらに、その目的及び内容は、以下に示す添付の図面と併せて本開示の例示的な実施形態の詳細な説明を参照することにより最もよく理解されるであろう。
【0010】
図1-2】従来の通信衛星ペイロードの一部を示す図である。
図3-4】例示的な実施形態による、通信システムのための例示的な冗長アーキテクチャを示す図である。
図5】例示的な実施形態による、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャを示す図である。
図6A-6B】例示的な実施形態による、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャを示す図である。
図7】例示的な実施形態による、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャを示す図である。
図8】例示的な実施形態による、例示的な衛星通信システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のいくつかの実施例を、添付図面を参照して以下でより詳しく説明する。なお、図面には、本開示の実施例のうちのいくつかが示されているが、全てが示されているわけではない。実際、いくつかの異なる実施例が提示されるが、本明細書に記載した実施例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施例は、本開示が完全なものとなり、本開示の範囲を当業者に十分に伝えることができるように提示したものである。
【0012】
図1は、従来の通信衛星ペイロード(communications satellite payload)の一部についての例示的な構成を示す概念図である。図1に示すように、通信衛星ペイロードは、複数の入力経路104を複数のアクティブハードウェアユニット106に接続する入力冗長リングスイッチ(input redundancy ring switch)102を含みうる。入力冗長リングスイッチ102は、各々が、通常位置(nominal position)、上側位置、又は、下側位置に変位可能な6つのスイッチを含みうる。初期状態においては、入力冗長リングスイッチ102の6つのスイッチは、各々が、通常位置にあり、例えば、第1スイッチS1は「入力1」を「アクティブハードウェア1」に接続し、第2スイッチS2は、「入力経路2」を「アクティブハードウェア2」に接続し、以降のスイッチも同様にそれぞれの入力をそれぞれのアクティブハードウェアに接続する。図1にさらに示すように、通信衛星ペイロードはまた、複数のアクティブハードウェアユニット106を複数の出力経路112に接続する出力冗長リングスイッチ110を含みうる。
【0013】
動作においては、複数のアクティブハードウェアユニットのうちの1つが故障すると、入力冗長リングスイッチ102及び出力冗長リングスイッチ110の個々のスイッチが上下に切り替えられて、故障したアクティブハードウェアユニットが予備のハードウェアユニットに交換される。例えば、図2に示すように、入力冗長リングスイッチ102の第3スイッチS3及び第4スイッチS4が下側位置に切り替えられることにより、第3スイッチS3は、「入力3」を「アクティブハードウェア4」に接続し、第4スイッチS4は、「入力4」を「予備ハードウェア1」に接続する。また、出力冗長リングスイッチ110の第3スイッチS3及び第4スイッチS4が下側位置に切り替えられることにより、第3スイッチS3は、「アクティブハードウェア4」を「出力3」に接続し、第4スイッチS4は、「予備ハードウェア1」を「出力経路4」に接続する。
【0014】
図1及び2に示す入力冗長リングスイッチ102や出力冗長リングスイッチ110などの冗長リングスイッチを用いる場合、冗長リングスイッチの個々のスイッチは、特別コマンドを用いて制御される。具体的には、各スイッチは、当該スイッチに高電圧パルスを送信することにより個々に制御され、この高電圧パルスにより、当該スイッチが異なる位置に遷移する。したがって、アクティブハードウェアユニットが故障した場合、作業者の介入が必要な場合がある。
【0015】
さらに、冗長リングスイッチの複数のスイッチを切り替えて、故障したアクティブなハードウェアユニットを予備のハードウェアユニットと交換する場合、サービスの中断が生じる。例えば、「アクティブハードウェア3」を「予備ハードウェア1」と交換する場合、「入力3」と「出力3」との間、及び、「入力4」と「出力4」との間でサービスの中断が生じる。サービスの中断期間は、アクティブなハードウェアユニットが故障してから、予備のハードウェアユニットに切り替えて当該ユニットを起動させ、サービスを再初期化するまでの期間である。
【0016】
本明細書で説明するシステムは、上述した課題に対処するために冗長性を付与するものである。本明細書で説明するように、上記システムは、冗長スイッチを用いたり、これに関連してスイッチにコマンドを入力するために作業者が介入したりすることなく、1つ又は複数のRF経路において一組のハードウェアユニットを共有させることができる。したがって、上記システムは、故障が生じた場合にサービスを中断することなく冗長性を付与することができる。
【0017】
一例として、通信システムのための冗長アーキテクチャが提供される。前記冗長アーキテクチャは、並列配置された複数のアクティブ無線周波数(RF)ハードウェアユニットと、複数のRF入力信号を前記複数のアクティブRFハードウェアユニットに結合するように構成された1つ以上のRF信号スプリッタと、1つ以上のRF信号結合器と、を含む。
【0018】
前記1つ以上のRF信号スプリッタは、前記複数のRF入力信号の各々を、前記各RF入力信号の複数のコピーに分割し、前記各RF入力信号の前記複数のコピーの各々を、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットのうちのそれぞれ異なる1つのアクティブRFハードウェアユニットに供給するように構成されている。さらに、前記1つ以上のRF信号結合器は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理されたRF信号を、複数のRF出力経路に結合するように構成されている。前記1つ以上のRF信号結合器は、前記複数のアクティブRFハードウェアユニットによって処理された前記複数のRF入力信号の各々について、前記各RF入力信号の前記複数のコピーを組み合わせてRF出力信号を形成し、前記RF出力信号を、前記各RF入力信号に対応する前記複数のRF出力経路のうちの1つのRF出力経路に供給するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態においては、冗長アーキテクチャにより冗長性が付与される通信システムは、衛星などの宇宙船の通信システムであってもよい。他の実施形態においては、通信システムは、航空機の通信システムであってもよい。本明細書で説明する冗長アーキテクチャは、通信ゲートウェイ又は通信ハブなどの、高い信頼性、及び/又は、サービスの中断が懸念事項である任意のタイプのRFハードウェアに冗長性を付与するために用いられてもよい。
【0020】
本開示の冗長アーキテクチャは、図1及び2に示す通信衛星ペイロードなどの従来の通信システムと比較して、必要なハードウェアが少なく、且つ、複雑性が低いため、有利である。例えば、冗長アーキテクチャにより、予備のハードウェアユニットにおいて切り替えを行うためのスイッチの使用を低減、又は、排除することができ、さらに、これらのスイッチを制御するための関連する命令ハードウェア及び命令ソフトウェアの量を削減、又は、排除することができる。さらに、冗長アーキテクチャにより、予備のハードウェアユニットなどの冗長なハードウェアが不要になる。一例として、冗長アーキテクチャは、4つのアクティブハードウェアユニットを有し、予備のハードウェアユニットを有さない。これと同等の冗長性を従来の通信システムにより付与する場合、当該システムは、例えば、4つのアクティブハードウェアユニットと、2つの予備のハードウェアユニットとを有する。したがって、本開示の冗長アーキテクチャは、ハードウェアユニットの総数を6個から4個に減らすことができる。
【0021】
さらに、本開示の冗長アーキテクチャは、故障の際、若干だけ劣化するように設計されている。本開示の態様で構成された冗長アーキテクチャを含む通信システムにおいてアクティブハードウェアユニットが故障した場合、当該通信システムは、若干劣化した状態で動作を継続することができる。以下により詳しく説明するように、アクティブハードウェアユニットが故障すると、信号は分散劣化するが、信号は中断されない。
【0022】
以下では、上記システム及び方法の他の様々な特徴についても、添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
ここで図3を参照すると、同図には通信システムのための例示的な冗長アーキテクチャ300が示されている。図3に示すように、冗長アーキテクチャ300は、m×n入力ネットワーク302と、n個のアクティブRFハードウェアユニット304と、n×m出力ネットワーク306とを含む。
【0024】
m×n入力ネットワーク302は、m個の入力と、n個の出力とを含む入力ネットワークであって、mは整数であり、nは整数であり、mは、nよりも大きいか、或いは等しい。例えば、nは2であってもよいし、nは2又は2よりも大きい整数であってもよい。これに代えて、nは、4、8、又は、16であってもよい。また、他の例も考えられる。m個の入力の各々は、RF入力経路308によってRF入力信号に結合される。一例においては、RF入力信号の数がm個であって、これらのRF入力信号の各々は、互いに直交シフトしてm×n入力ネットワーク302を通過することができる。さらに、これらのRF入力信号は、同じ周波数帯域で動作することができる。説明を簡単にするために、図3には、1つのRF入力信号と、1つのRF入力経路のみが示されている。
【0025】
さらに、n個の出力の各々は、n個のアクティブRFハードウェアユニット304の各々に接続することができる。例えば、第1出力は、第1アクティブRFハードウェアユニットに接続可能であり、第2出力は、第2アクティブRFハードウェアユニットに接続可能であり、以降の出力も同様にそれぞれのアクティブRFハードウェアユニットに接続可能である。
【0026】
一例においては、m×n入力ネットワーク302は、各RF入力信号を当該RF入力信号の複数のコピーに分割し、当該RF入力信号の複数のコピーの各々を、n個のアクティブなRFハードウェアユニットのうちのそれぞれ異なる1つに供給する。m×n入力ネットワーク302は、少なくとも1つのRFスプリッタ(不図示)を用いて実施することができる。例えば、通信システムに2個のRF入力信号及び2個のアクティブRFハードウェアユニットが存在している場合、m×n入力ネットワーク302は、2×2入力ネットワークということになろう。2×2入力ネットワークは、第1RF入力信号を、第1RF入力信号と同じ位相を有する第1電力低下RF信号、及び、第1RF入力信号とは異なる位相を有する第2の電力低下RF信号に分割することができる。さらに、2×2入力ネットワークは、第2RF入力信号を、第2RF入力信号と同じ位相を有する第3電力低下RF信号、及び、第2RF入力信号とは異なる位相を有する第4の電力低下RF信号に分割することができる。その後、2×2入力ネットワークは、第1及び第3の電力低下RF信号を第1アクティブRFハードウェアユニットに供給し、第2及び第4の電力低下RF信号を第2アクティブRFハードウェアユニットに供給することができる。
【0027】
一例においては、n個のアクティブRFハードウェアユニット304は、n個の低ノイズ増幅器である。より一般的には、n個のアクティブRFハードウェアユニット304は、通信システムに設けられた任意のタイプのアクティブハードウェアユニットであってもよい。
【0028】
n×m出力ネットワーク306は、n個の入力と、m個の出力とを含む出力ネットワークである。n個の入力の各々は、n個のアクティブRFハードウェアユニットの各々に接続することができる。例えば、第1入力は、第1アクティブRFハードウェアユニットに接続可能であり、第2入力は、第2アクティブRFハードウェアユニットに接続可能であり、以降の入力も同様にそれぞれのアクティブRFハードウェアユニットに接続可能である。さらに、m個の出力の各々は、それぞれ異なる1つのRF出力経路に接続することができる。説明を簡単にするために、図3には、1つのRF出力経路のみが示されている。
【0029】
一例においては、n×m出力ネットワーク306は、RF入力信号の複数のコピーを組み合わせてRF出力信号を形成し、このRF出力信号を、当該RF入力信号に対応するRF出力経路に供給するように構成することができる。例えば、2つのRF入力信号を有する通信システムにおいては、n×m出力ネットワーク306は、第1RF入力信号の複数のコピーを組み合わせて第1RF出力信号を形成し、この第1RF出力信号を第1RF出力経路に供給するように構成することができる。さらに、n×m出力ネットワーク306は、第2RF入力信号の複数のコピーを組み合わせて第2RF出力信号を形成し、この第2RF出力信号を第2RF出力経路に供給するように構成することができる。n×m出力ネットワーク306により供給される複数のRF出力信号は、互いに直交シフトしていてもよい。
【0030】
上述したように、冗長アーキテクチャ300は、n個のアクティブRFハードウェアユニットのうちの何れかが故障すると、分散された信号の劣化は生じながらも、信号の中断は生じないように構成することができる。一例としては、図4に示すように、n個のアクティブRFハードウェアユニット304のうちの第2アクティブRFハードウェアユニットが故障した場合、第2アクティブRFハードウェアユニットで処理されたRF信号が破損していたり、第2アクティブRFハードウェアユニットが信号を出力しなくなったりするおそれがある。しかしながら、RF入力経路308に入力されるRF入力信号が、当該RF入力信号の複数のコピーに分割されるので、第2アクティブRFハードウェアユニットに供給されるRF入力信号のコピーのみが故障による悪影響を受け、RF入力信号の他のコピーについては、他のアクティブRFハードウェアユニットによってそれぞれ処理することができる。この結果、RF出力経路310に対して、劣化した状態ではあるが、RF出力信号を供給することができる。同様に、他のRF入力信号の各々に対応するRF出力信号もまた、劣化した状態ではあるが、対応するRF出力経路に供給される。すなわち、冗長アーキテクチャ300は、上述したような場合においても、予備RFハードウェアユニットなどの任意の予備ハードウェアに切り替えることなく、RF出力経路に対して全てのRF出力信号を供給することができる。場合によっては、複数箇所の故障にも耐えることができる。例えば、冗長アーキテクチャ300において、n個のアクティブRFハードウェアユニットのうちの1つ又は複数に故障が生じた場合であっても、冗長アーキテクチャ300は、予備のRFハードウェアユニットに切り替えることなく、RF出力経路に対して全てのRF出力信号を供給するように構成することができる。
【0031】
実際には、アクティブRFハードウェアユニットのうちの1つが損失することによる影響は、nが増加するにつれて低減する。nが2である通信システムにおいては、故障したアクティブRFハードウェアユニットがRF出力経路に供給される信号の品質に悪影響を及ぼす程度は、nが8である場合にRF出力経路に供給される信号の品質に悪影響を及ぼす程度よりも大きい。この理由は、nが2である場合、各RF入力信号は、当該RF入力信号の2つのコピーに分割されるため、アクティブRFハードウェアユニットのうちの一方の損失が、各RF入力信号のコピーの半数に影響を及ぼすからである。一方で、nが8である場合、各RF入力信号は、8つのコピーに分割されるため、アクティブRFハードウェアユニットのうちの1つの損失は、各RF入力信号のコピーの1/8に影響を及ぼす。
【0032】
上述したように、いくつかの例においては、m×n入力ネットワーク302は、少なくとも1つのRFスプリッタを用いて実施することができ、n×m出力マトリクスは、少なくとも1つのRF結合器を用いて実施することができる。図5は、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャ500を示す図である。具体的には、図5に示す例示的な冗長アーキテクチャ500は、RF信号スプリッタ502と、2つのアクティブRFハードウェアユニット504と、RF信号結合器506とを含む。
【0033】
RF信号スプリッタ502は、2つの入力ポート508に供給される2つのRF入力信号を2つのアクティブRFハードウェアユニット504に結合する。具体的には、RF信号スプリッタ502は、図5において「RF信号1」で示される第1RF入力信号を、第1電力低下RF信号と、当該第1電力低下RF信号に対して90度位相シフトされた第2電力低下RF信号とに分割する。その後、第1電力低下RF信号は、図5において「RFハードウェア1」で示される第1アクティブRFハードウェアユニットに供給され、第2電力低下RF信号は、図5において「RFハードウェア2」で示される第2アクティブRFハードウェアユニットに供給される。同様に、RF信号スプリッタ502は、図5において「RF信号2」で示される第2RF入力信号を、第3電力低下RF信号と、当該第3電力低下RF信号に対して90度位相シフトされた第4電力低下RF信号とに分割する。その後、第3電力低下RF信号は、第1アクティブRFハードウェアユニットに供給され、第4電力低下RF信号は、第2アクティブRFハードウェアユニットに供給される。
【0034】
その後、RF信号結合器506は、2つのアクティブRFハードウェアユニット504によって処理された信号を2つの出力ポート510に結合する。具体的には、第1アクティブRFハードウェアユニットが、第1電力低下RF信号と第3電力低下RF信号とを処理した後、RF信号結合器506が、第1電力低下RF信号を、第1コピーと、当該第1コピーに対して90度位相シフトされた第2コピーとに分割する。同様に、RF信号結合器506は、第3電力低下RF信号を、第1コピーと、当該第1コピーに対して90度位相シフトされた第2コピーとに分割する。さらに、第2アクティブRFハードウェアユニットが、第2電力低下RF信号と第4電力低下RF信号とを処理した後、RF信号結合器506が、第2電力低下RF信号を、2つのコピーに分割し、さらに、第4電力低下RF信号を2つのコピーに分割する。
【0035】
RF信号スプリッタ502及びRF信号結合器506によって実施される位相シフトにより、2つの出力ポート510のうちの第1出力ポートに供給される「RF信号1」の複数のコピーは、互いに180度位相がずれているため、効果的に打ち消し合うことができる。一方、2つの出力ポート510のうちの第2出力ポートに供給される「RF信号1」の複数のコピーは、同じ位相を有しているため、互いに協調的に組み合わされる。さらに、第1出力ポートに供給される「RF信号2」の複数のコピーは、同じ位相を有しているため、互いに協調的に組み合わされる。一方で、第2出力ポートに供給される「RF信号2」の複数のコピーは、互いに180度位相がずれているため、効果的に打ち消し合うことができる。
【0036】
図5の出力ポート510で示される信号の振幅は、2つのアクティブRFハードウェアユニット504によって実行される処理の種類によって異なりうる。例えば、アクティブRFハードウェアユニット504は、RF信号スプリッタ502によって出力されたRF信号を増幅する増幅器を含むことにより、出力ポート510に供給される信号の振幅を増幅することができる。
【0037】
いくつかの例においては、図3及び4に示すm×n入力ネットワーク302は、入力マトリクスを用いて実施することができ、これに加えて、或いは、これに代えて、図3及び4に示すn×m出力ネットワーク306は、出力マトリクスを用いて実施することができる。図6A及び6Bは、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャ600を示す図である。具体的には、図6A及び6Bに示す例示的な冗長アーキテクチャ600は、入力マトリクス602と、4つのアクティブRFハードウェアユニット604と、出力マトリクス606とを含む。
【0038】
入力マトリクス602は、4つの入力ポート608に供給される4つのRF入力信号を、4つのアクティブRFハードウェアユニットに結合する4×4バトラーマトリクス(Butler matrix)である。説明を簡単にするために、図6A及び6Bには、「RF信号1」で示される1つのRF入力信号のみが示されている。図6Aに示すように、入力マトリクス602は、4つのRF信号スプリッタを含む。これにより、入力マトリクス602は、「RF信号1」を、4つのアクティブRFハードウェアユニットに供給される4つの電力低下RF信号に分割することができる。
【0039】
出力マトリクス606は、入力マトリクス602の逆の4×4バトラーマトリクスである。出力マトリクス606は、4つのアクティブRFハードウェアユニット604で処理されたRF信号を、4つの出力ポート610に結合する。図6Bに示すように、出力マトリクス606は、4つのRF信号結合器を含む。これらにより、出力マトリクス606は、(i)第1アクティブRFハードウェアユニットにより処理された信号を、4つの出力ポート610のうちの第1出力ポートに供給される4つの電力低下RF信号に分割し、(ii)第2アクティブRFハードウェアユニットにより処理された信号を、4つの出力ポート610のうちの第2出力ポートに供給される4つの電力低下RF信号に分割し、(iii)第3アクティブRFハードウェアユニットにより処理された信号を、4つの出力ポート610のうちの第3出力ポートに供給される4つの電力低下RF信号に分割し、(iv)第4アクティブRFハードウェアユニットにより処理された信号を、4つの出力ポート610のうちの第4出力ポートに供給される4つの電力低下RF信号に分割する、ことができる。
【0040】
入力マトリクス602及び出力マトリクス606によって実行される位相シフトにより、4つの出力ポート610のうちの第1、第2、及び、第3の出力ポートに供給される「RF信号1」のコピーは、互いに打ち消し合う一方で、4つの出力ポート610のうちの第4の出力ポートに供給される「RF信号1」のコピーは同じ位相を有するため、互いに協調的に組み合わされる。
【0041】
図6A及び図6Bに示す冗長アーキテクチャ600から明らかなように、例えば、アクティブRFハードウェアユニットのうちの1つが故障してRF信号を出力しなくなった場合、RFハードウェアの1/4の損失により第4の出力ポートに供給される信号の振幅が劣化し、結果として、振幅の低減、及び、位相のアライメント誤差が生じうる。
【0042】
また、アクティブなRFハードウェアユニットのうちの1つが故障した場合、例えば、第4出力ポートに供給される「RF信号2」(不図示)などの他のRF入力信号のコピーは、完全には打ち消されない可能性がある。しかしながら、「RF信号2」のコピーの合計の振幅は低いであろう。A1がA2に等しいと仮定すると、「RF信号2」のコピーの合計の振幅は、「RF信号1」のコピーの合計の振幅より比較的小さいであろう。したがって、信号処理を用いれば、「RF信号2」のコピーの合計は、第4出力ポートに供給されるRF信号から取り除くことができる。
【0043】
図6の出力ポート610で示される信号の振幅は、4つのアクティブRFハードウェアユニット604によって実行される処理の種類によって異なりうる。例えば、4つのアクティブRFハードウェアユニット604は、入力マトリクス602によって出力されたRF信号を増幅する増幅器を含むことにより、出力ポート610に供給される信号の振幅を増幅することができる。
【0044】
図7は、通信システムのための他の例示的な冗長アーキテクチャ700を示す図である。図7に示すように、例示的な冗長アーキテクチャ700は、m×n入力マトリクス702と、n個のアクティブRFハードウェアユニット704と、n×m出力マトリクス706とを含む。
【0045】
m×n入力マトリクス702は、m個の入力ポート708に供給されるm個のRF入力信号を、n個のアクティブRFハードウェアユニット704に結合する。説明を簡単にするために、図7には、「RF信号1」で示される1つのRF入力信号のみが示されている。図7に示すように、m×n入力マトリクス702は、複数のRF信号スプリッタを含む。これにより、m×n入力マトリクス702は、「RF信号1」を、n個のRFハードウェアユニット704に供給されるn個の電力低下RF信号に分割することができる。
【0046】
n×m出力マトリクス706は、m×n入力マトリクス702の逆のマトリクスである。n×m出力マトリクス706は、n個のアクティブRFハードウェアユニット704で処理されたRF信号を、m個の出力ポート710に結合する。図7に示すように、n×m出力マトリクス706は、複数のRF信号結合器を含み、これらにより、n個のアクティブRFハードウェアユニット704によって処理されたRF入力信号は、複数のコピーに分割され、m個の出力ポート710に供給され、当該出力ポートにおいて組み合わされる。
【0047】
図8は、例示的な衛星通信システム800を示す図である。図8に示すように、衛星通信システム800は、通信ペイロード820を含む。通信ペイロード820は、冗長アーキテクチャ830を含む。冗長アーキテクチャは、m×n入力ネットワーク832と、n個のアクティブ低ノイズ増幅器834と、n×m出力ネットワーク836とを含む。m×n入力ネットワーク832は、図3及び4に示すm×n入力ネットワーク302、又は、図6Aに示す入力マトリクス602などの、本明細書で説明する入力ネットワークのうちの何れかに従って構成することができる。n×m出力ネットワーク836は、図3及び4に示すn×m出力ネットワーク306、又は、図6Bに示す出力マトリクス606などの、本明細書で説明する出力ネットワークのうちの何れかに従って構成することができる。
【0048】
様々な有利な構成の説明は、例示及び説明を目的として提示したものであり、全てを網羅したり、開示した態様の実施形態に限定したりすることを意図するものではない。上記開示を読んで理解すれば、多くの改変及び変形が当業者には明らかであろう。さらに、異なる実施例は、他の実施例とは異なる効果をもたらす場合がある。選択した1つ又は複数の実施例は、当該実施例の原理及び実際の用途を最も的確に説明するために、且つ、想定した特定の用途に合わせて種々の改変を加えた様々な実施例の開示を当業者が理解できるようにするために、選択且つ記載したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8