(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】高視認性織編物
(51)【国際特許分類】
D06B 11/00 20060101AFI20240924BHJP
D03D 15/54 20210101ALI20240924BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20240924BHJP
A41D 13/01 20060101ALI20240924BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240924BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240924BHJP
【FI】
D06B11/00 E
D03D15/54
D04B1/14
A41D13/01
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/00 502W
A41D31/00 503G
A41D31/04 G
(21)【出願番号】P 2019126205
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月6日に、ユニチカトレーディング株式会社がユニチカトレーディング株式会社のウェブサイトにて公開されたニュースリリース(2019-2020年ユニフォーム素材の販売展開について)において公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北阪 大輔
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020145(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064079(WO,A1)
【文献】特開2004-257240(JP,A)
【文献】特開2014-185413(JP,A)
【文献】特表2013-522494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00ー23/30
D03D 1/00-27/18
D04B 1/00- 1/28
A41D 13/00-13/12
D06P 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維を含む織編物であって、
前記織編物中のポリエステル繊維の混用率は90質量%以上であり、
前記織編物が、蛍光黄色、蛍光橙色の2色の色に
のみ着色されてなるものであり、
150cm×150cmの大きさの前記織編物全体の面積100%に対する、蛍光黄色に着色された部分の面積比率が95%以下、蛍光橙色に着色された部分の面積比率が95%以下、蛍光黄色に着色された部分と蛍光橙色に着色された部分の面積比率が、5/95~95/5であり、かつ蛍光黄色、蛍光橙色に着色されていない部分の面積が
0%である、高視認性織編物。
【請求項2】
前記織編物の着色された部分を測定する色度が、蛍光黄色、蛍光橙色において、表1に示すXY色度座標の各4点にて区画される範囲内にあり、輝度係数が表1に示す最小輝度係数の数値以上である、請求項1に記載の高視認性織編物。
【表1】
【請求項3】
蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分の短径が30mm以上である、1または2に記載の高視認性織編物。ここで、短径とは、一の端部から他の端部へ垂直に降ろした交点までの長さのうち、最も短い長さをいう。
【請求項4】
蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分が、捺染により着色されたもので
ある、請求項1~3の何れか1項に記載の高視認性織編物。
【請求項5】
前記ポリエステル繊維における二酸化チタンの含有量が1質量%以下であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の高視認性織編物。
【請求項6】
前記織編物において、蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分の形状が、線状パターンである、請求項1~5の何れか1項に記載の高視認性織編物。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか1項に記載の高視認性織編物を、少なくとも一部に用いてなる、衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕著に優れた視認性を有する、高視認性織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高視認性を有する織編物が知られている(例えば、特許文献1に記載の高視認性重ね織物)。こうした織編物を用いて衣服とし、工事現場、道路、港湾または空港等で作業者が着用する作業服として適用したときに、作業者の存在を明確に示すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の高視認性重ね織物は、単色(蛍光黄色、蛍光橙色または蛍光赤色のいずれかの一色)に着色されたものであり、曇天または雨天での作業、夜間作業、あるいは視認者から大きく距離が離れた作業等において、さらなる視認性改良の余地がある。
【0005】
本発明の課題は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、曇天または雨天での作業、夜間作業、あるいは視認者から大きく距離が離れた作業等においても、顕著に優れた高視認性を有する織編物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリエステル繊維を含む織編物が、蛍光黄色、蛍光橙色および蛍光赤色からなる群から選択される2色以上の色に着色されてなり、かつ着色された部分の面積比率が特定範囲である織編物は、視認性に顕著に優れるものであることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の(1)~(
7)を要旨とする。
(1)
ポリエステル繊維を含む織編物であって、
前記織編物中のポリエステル繊維の混用率は90質量%以上であり、
前記織編物が、蛍光黄色、蛍光橙色の2色の色に
のみ着色されてなるものであり、
150cm×150cmの大きさの前記織編物全体の面積100%に対する、蛍光黄色に着色された部分の面積比率が95%以下、蛍光橙色に着色された部分の面積比率が95%以下、蛍光黄色に着色された部分と蛍光橙色に着色された部分の面積比率が、5/95~95/5であり、かつ蛍光黄色、蛍光橙色に着色されていない部分の面積が
0%である、高視認性織編物。
(2)
前記織編物の着色された部分を測定する色度が、蛍光黄色、蛍光橙色において、表1に示すXY色度座標の各4点にて区画される範囲内にあり、輝度係数が表1に示す最小輝度係数の数値以上である、(1)に記載の高視認性織編物。
【表1】
(3)
蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分の短径が30mm以上である、(1)または(2)に記載の高視認性織編物。ここで、短径とは、一の端部から他の端部へ垂直に降ろした交点までの長さのうち、最も短い長さをいう。
(4)
蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分が、捺染により着色されたもので
ある、(1)~(3)の何れか1項に記載の高視認性織編物。
(5)
前記ポリエステル繊維における二酸化チタンの含有量が1質量%以下であることを特徴とする、(1)~(4)の何れか1項に記載の高視認性織編物。
(6)
前記織編物において、蛍光黄色、蛍光橙色に着色された部分の形状が、線状パターンである、(1)~(5)の何れか1項に記載の高視認性織編物。
(7)
(1)~(
6)の何れか1項に記載の高視認性織編物を、少なくとも一部に用いてなる、衣服。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高視認性織編物は、高視認性に顕著に優れるものであるために、例えば、曇天または雨天での作業、夜間作業、あるいは視認者から大きく距離が離れた作業等における作業服またはユニフォームとしてのシャツ地、工事現場の資材用途などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例2で得られた高視認性編物の編組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の高視認性織編物は、ポリエステル繊維を含む織編物である。そして前記織編物は、蛍光黄色、蛍光橙色および蛍光赤色からなる群から選択される2色以上の色に着色されてなるものである。
【0011】
詳しくは、150cm×150cmの大きさの織編物全体の面積100%に対する、蛍光黄色に着色された部分の面積比率が0~95%、蛍光橙色に着色された部分の面積比率が0~95%、蛍光赤色に着色された部分の面積比率が0~95%である。
【0012】
本発明において、ポリエステル繊維は、蛍光黄色、蛍光橙色、および蛍光赤色から選択される2色以上に着色させることにより、例えば、工事現場や道路・港湾・空港等で作業者が着用する作業服として適用したときに、単色での着色と比較すると、作業者の存在をより明確に示すことができる。また、各種ユニフォームの生地として衣服の少なくとも一部に使用した場合に、その存在をより識別しやすい。蛍光色である黄色、橙色、赤色は、いずれも注意・危険を喚起するのに優れた色であるため、好ましく用いることができる。
【0013】
より注意・危険を喚起する効果を奏するためには、着色された部分を測定する色度が、蛍光黄色、蛍光橙色または蛍光赤色において、表1に示すXY色度座標の各4点にて区画される範囲内にあり、輝度係数が表1に示す最小輝度係数の数値以上であることがより好ましい。
【表1】
【0014】
ポリエステル繊維は、耐光堅牢度に優れ、さらに蛍光色に着色可能である。ポリエステル繊維としては、特に限定されるものではないが、一般に汎用性が高く機械的強度にも優れるポリエチレンテレフタレート繊維を好ましく用いることができる。
【0015】
ポリエステル繊維における二酸化チタンの含有量は、多くとも1質量%以下であることが好ましい。二酸化チタンの含有量が1質量%を超えると、光沢感が減少して輝度係数が好ましい範囲よりも低い値となってしまい、発色性および視認性が低下する場合がある。加えて二酸化チタンが太陽光によって励起してポリエステル繊維中の蛍光染料に作用し、耐光堅牢度等の低下を起こす場合がある。なお、二酸化チタンの含有量は、視認性、耐光堅牢度を低下させないことを考慮すれば、ゼロに近くなるほど好ましいが、繊維を製造する際の製糸性や表面光沢感の抑制を考慮して0.5質量%以下の範囲で少量含まれていることが特に好ましい。
【0016】
ポリエステル繊維の形態は紡績糸であってもよいし、長繊維であってもよいが、特に長繊維からなる仮撚加工糸が好ましい。仮撚加工糸であると、嵩高性、伸縮性または風合いに優れるためである。
【0017】
ポリエステル繊維が紡績糸である場合、その番手は特に限定されるものではなく、例えば10~60番手である。ポリエステル繊維が長繊維である場合、その総繊度は特に限定されるものではないが、例えば、50~400dtexである。
【0018】
本発明の高視認性織編物においては、本発明の目的を達成する範囲において、ポリエステル繊維以外の繊維が混用されて含まれていてもよい。ポリエステル繊維の混用率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより特に好ましい。
【0019】
本発明の高視認性織編物は、蛍光黄色、蛍光橙色および蛍光赤色からなる群から選択される2色以上の色に、特定の面積比率で着色されてなるものである。こうした構成を有するために視認性に顕著に優れる織編物とすることができる。また本発明の高視認性織編物は、着色されていない部分の面積が、150cm×150cmの大きさの織編物全体の50%以下であり、20%以下であることが好ましい。着色されていない部分の面積が50%を超えて過大であると、視認性に劣るものとなってしまう。
【0020】
前記織編物において、蛍光黄色、蛍光橙色または蛍光赤色に着色された部分の短径は、30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましい。本発明における短径とは、各々の形状における、一の端部から他の端部へ垂直に降ろした交点までの長さのうち、最も短い長さをいう。短径が30mm未満であると、捺染により着色された部分の形状が小さいものとなってしまい、視認性に劣るものとなる場合がある。こうした短径の上限値は、例えば1000mmである。
【0021】
本発明において、着色される蛍光黄色、蛍光橙色、および蛍光赤色の組み合わせとしては、(蛍光黄色、蛍光橙色)、(蛍光黄色、蛍光赤色)、(蛍光橙色、蛍光赤色)、(蛍光黄色、蛍光橙色、蛍光赤色)が挙げられる。中でも、蛍光黄色および蛍光橙色の2色のみに着色されることが最も好ましい。こうした組み合わせとすることにより、色相の輝度係数がより高くなり、反射性が向上するために、視認性にいっそう優れるものとなる。特に、蛍光黄色に着色された部分と蛍光橙色に着色された部分の面積比率が、5/95~95/5であることが好ましく、15/85~85/15であることがより好ましい。こうした範囲であると、視認性にいっそう優れるものとなる。
【0022】
前記織編物において、蛍光黄色、蛍光橙色または蛍光赤色に着色された部分の形状としては、特に限定されるものではなく、線状パターン(例えば、ストライプ柄、ボーダー柄、市松柄など)、ドット状パターン、星状パターン、またはそれらの組合せなどが挙げられる。なかでも、色同士の境界線がより長くなることで、視認性にいっそう優れる観点から、線状パターンであることがより好ましい。
【0023】
着色の方法としては、捺染の手法が好ましい。捺染の手法を採用すると、通常の染色手法(例えば、分散染料を含む染液を用い、連続染色機で染色する手法)とは異なり、プリントで着色させることにより、単色ではなく複数色の着色を、特定の面積比率とすることができ、さらに着色部分の形状を容易に所望のものにできるためである。
【0024】
本発明の高視認性織編物を作業服として使用したとき、作業内容によっては引火性ガスや粉塵等の存在する場所で着用する可能性がある。この様な場所での作業においては、静電気の帯電による火花が引火・爆発を引き起こす懸念があることから、織編物の帯電電荷量を7μC/m2以下にすることが好ましく、4μC/m2以下にすることがより好ましい。織編物の帯電電荷量を前記数値以下とすることにより、着用時の静電気の帯電を十分に抑えることができる。なお、この数値を達成するためには、例えば、導電糸を織編物に2本/2.54cm程度の間隔で挿入するとよい。
【0025】
また、本発明の高視認性織編物において、輝度、色相や耐光堅牢度に悪影響を及ぼさない範囲で、シルケット加工や、その他常法の起毛加工、吸水加工、制電加工、抗菌、消臭、防縮加工が施されたものであってもよい。
【0026】
本発明の高視認性織編物が織物である場合は、特に限定されるものではないが、織物のカバーファクター(CF)が2200~2500であることが好ましい。
カバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、織物の場合、以下の式により算出される。ここで、式中、Dは経糸の総繊度を示す。Eは緯糸の総繊度を示す。
CF=D1/2×経糸密度(本/2.54cm)+E1/2×緯糸密度(本/2.54cm)
【0027】
本発明の高視認性織編物が編物である場合、特に限定されるものではないが、表面密度が30~80コース/2.54cmかつ30~80ウェール/2.54cmであることが好ましい。
【0028】
本発明の織編物の目付けは、特に限定されるものではないが、120~500g/m2であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の高視認性織編物の組織としては特に限定されず、適宜の組織(例えば、織物であれば平織、綾織、朱子織、必要に応じて多重組織、編物であれば丸編の天竺、スムース、経編のトリコット、必要に応じて多重組織)が挙げられる。
【0030】
本発明の高視認性織編物の製造方法の一例について、以下に述べる。すなわち、公知の手法により精練、プレセットを行った後の織編物に対して、例えば、捺染加工を行うものである。捺染は常法によって行えばよく、例えば捺染方法としては、機械捺染法、手工捺染法が挙げられる。機械捺染法としては,ローラー捺染、スクリーン捺染等が挙げられる。手工捺染法としては、スクリーン捺染、型紙捺染等が挙げられる。
【0031】
捺染に使用される染料としては、繊維に合わせて適宜選択して用いればよく、一般的に用いられている染料、例えば酸性染料、金属錯塩染料、反応性染料、分散染料などを用いればよい。特に、本発明においては、ポリエステル繊維を含む織編物を染色することから、分散染料を用いることが好ましい。本発明の高視認性織編物に、その他の繊維としてセルロース系繊維などの天然繊維、ナイロンまたはアクリル等の合成繊維が、混紡,混繊,交織の形で混用されている場合、その繊維に適した染料を併用して行うことができる。
【0032】
捺染工程は、通常、印捺工程、乾燥工程、固着工程、ソーピング、乾燥の順に、各々の工程を経て行われる。
【0033】
固着工程とは、印捺された染料や顔料を被捺染物に染着または固着する工程であり、染料や顔料の種類によって異なるものであるが、一般に蒸熱、乾熱または薬液等の処理によって行われる。例えば分散染料を用いた場合、95~140℃で、5~20分程度の蒸熱で固着を行うことができる。
【0034】
またソーピングは、湯洗を行う場合、界面活性剤入りの湯水を用いて洗浄を行ってもよい。
【0035】
本発明の高視認性織編物は、高視認性に顕著に優れるものであるために、例えば、各種の衣服(作業者の安全作業服、ユニフォームなど)として好適に用いられるほか、工事現場等の資材用途として好適に用いられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
なお、それぞれの物性の測定方法又は評価方法は以下の通りである。
【0037】
(1) XY色度座標、輝度係数
得られた織編物において、着色された各蛍光色部分をランダムに選択し、EN-ISO20471規格に基づき、分光光度計(Macbeth製 MS-2020PL)を用い、D65光源にて織編物表面の色度座標および輝度係数を測定した。
【0038】
(2) 視認性
得られた織編物を150cm×150cmのサイズに裁断し、試料とした。この試料を50m離れたところから、晴天、曇天および雨天の何れもの気象において、目視による視認性を確認し、3段階にて評価(3:視認性が極めて良好である、2:視認性が普通である、1:視認性が不良である)を行った。そして、視認者10人による評価の平均値を、視認性の指標として採用した。
【0039】
(実施例1)
経糸として、二酸化チタン0.5質量%を含有したポリエチレンテレフタレートからなる仮撚加工糸(167dtex/48f)を準備した。また、上記の仮撚加工糸とポリエチレンテレフタレートからなる導電糸(商品名:「メガーナE」、ユニチカトレーディング社製、28dtex/2f)とを撚り合わせた合撚糸を準備した。そして、仮撚加工糸と合撚糸との配列が30:1となる様に配列して整経を行い、ビームを準備した。
【0040】
一方、緯糸として、上記と同様の仮撚加工糸の2本合撚糸を準備した。準備したビームをウォータージェット織機に仕掛け、緯糸打ち込みを行い、経糸密度100本/2.54cm、緯糸密度60本/2.54cmの密度で綾組織の生機を得た。
【0041】
この生機を精練・リラックス処理後、テンターを用いて190℃で熱セットを行い、続いてスクリーン捺染機を用いて蛍光黄色、蛍光橙色にプリント加工を行ったあと、帯電防止加工を行い、テンターを用いて160℃で熱セットを行い、実施例1の高視認性織物(経糸密度113本/2.54cm、緯糸密度65本/2.54cm)を得た。
【0042】
なお、捺染に際しては、蛍光黄色および蛍光橙色の何れにおいても、分散染料、糊剤ペースト、分散剤および水を含有する捺染糊を用いた。
【0043】
なお、実施例1で得られた高視認性織物の捺染部分は、蛍光黄色と蛍光橙色とが、短径60mmで交互に配されたボーダー柄であり、捺染されていない部分は設けられていなかった。蛍光黄色と蛍光橙色との面積比率は、(蛍光黄色)/(蛍光橙色)=50/50であった。
【0044】
(実施例2)
釜径33インチ28ゲージの編機を用い、使用糸AおよびBに配する糸として、二酸化チタン0.5質量%を含有したポリエチレンテレフタレートからなる仮撚加工糸(84dtex36f)を用い、
図1に示す組織で編立を行い、ダブル組織編物生機を得た。
【0045】
以下の工程は、実施例1と同様に行った。上記生機を精練・リラックス処理後、テンターを用いて190℃で熱セットを行い、続いてスクリーン捺染機を用いて蛍光黄色、蛍光橙色にプリント加工を行ったあと、帯電防止加工を行い、テンターを用いて160℃で熱セットを行い、実施例2の高視認性編物を得た。
【0046】
(実施例3)
実施例1において使用された仮撚加工糸(二酸化チタン含有量が0.5質量%)に代えて、二酸化チタン含有量が2.0質量%である仮撚加工糸を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3の高視認性織物を得た。
【0047】
(比較例4)
実施例1において、スクリーン捺染機によりプリントする色を蛍光黄色と蛍光赤色との組み合わせとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4の高視認性織物を得た。なお、捺染に際しては、分散染料、糊剤ペースト、分散剤および水を含有する捺染糊を用いた。
【0048】
(比較例1)
実施例1において、スクリーン捺染機によりプリントする色を蛍光黄色のみとした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1の織物を得た。
【0049】
(比較例2)
実施例1において、スクリーン捺染機によりプリントする蛍光黄色および蛍光橙色の分、およびそれ以外の部分(すなわち、捺染により着色されていない非着色部分)の面積割合を、(蛍光黄色)/(蛍光橙色)/(非着色部分)=20/20/60とし、蛍光黄色および蛍光橙色が短径60mmで交互に配されたボーダー柄とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2の織物を得た。
【0050】
実施例および比較例の評価結果を表2にまとめて示す。
【表2】
【0051】
実施例1~3で得られた本発明の高視認性織編物は、視認性に顕著に優れるものであり、雨天においても高い視認性を具備していた。
【0052】
特に、実施例1および2においては、用いられるポリエステル繊維に含まれる二酸化チタン含有量が少なかったために、二酸化チタン含有量が2質量%と多いポリエステル繊維を用いた実施例3と比較すると、輝度係数が好ましい範囲となり、視認性にいっそう優れるものであった。
【0053】
また、実施例1および2においては、捺染機によりプリントされた色の組み合わせとして蛍光黄色と蛍光橙色とを選択したために、蛍光黄色と蛍光橙色との組み合わせが選択された比較例4と比較すると、視認性にいっそう優れるものであった。
【0054】
比較例1においては、捺染機によりプリントされた色が蛍光黄色のみの単色であったために、視認性に劣るものであった。
【0055】
比較例2においては、捺染により着色されていない部分の面積割合が過大であったために、視認性に劣るものであった。