(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光学用粘着剤組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20240924BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240924BHJP
C09J 139/04 20060101ALI20240924BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240924BHJP
C09J 133/26 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/06
C09J139/04
C09J7/38
C09J133/26
(21)【出願番号】P 2019138604
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018143420
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌之
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚史
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲士
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 量子
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169383(JP,A)
【文献】特開2010-159346(JP,A)
【文献】特開2007-297446(JP,A)
【文献】特開2015-199891(JP,A)
【文献】特開2017-052887(JP,A)
【文献】特開2013-216738(JP,A)
【文献】特開2015-227394(JP,A)
【文献】特開平10-168407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0215182(US,A1)
【文献】特開2012-38827(JP,A)
【文献】特開2011-132322(JP,A)
【文献】特開2017-101136(JP,A)
【文献】特開2015-52060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系重合物を含む光学用粘着剤組成物であって、
前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満であり、
前記モノマー成分は、水酸基含有モノマーを5重量%以上含み、
前記粘着剤組成物は、さらに、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含み、
前記化合物AのHLBは10以上であり、
前記アクリル系重合物のSP値は18.0~21.0(MJ/m
3)
1/2である、光学用粘着剤組成物。
【請求項2】
アクリル系重合物を含む光学用粘着剤組成物であって、
前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、水酸基含有モノマーを5重量%以上含み、
前記粘着剤組成物は、さらに、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含み、
前記化合物AのHLBは10以上であり、
前記化合物Aの含有量は、前記アクリル系重合物100重量部に対して1重量部未満であり、
前記アクリル系重合物のSP値は18.0~21.0(MJ/m
3)
1/2である、粘着剤組成物。
【請求項3】
溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記化合物Aは非イオン性界面活性剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、
炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
窒素原子を有するモノマーと、
を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記窒素原子を有するモノマーは、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R
1は2価の有機基である。);
で表わされるN-ビニル環状アミド、および(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーである、請求項
5に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
さらに剥離力上昇剤を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記剥離力上昇剤は、アルコキシシリル基を有する化合物である、請求項
7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、光学用粘着シート。
【請求項10】
粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層はアクリル系重合物を含み、
前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、水酸基含有モノマーを5重量%以上含み、
前記アクリル系重合物のSP値は18.0~21.0(MJ/m
3)
1/2であり、
前記粘着シートの粘着面を、被着体としてのアルカリガラス板に貼り付けて23℃で30分放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN1が2N/cm以上であり、
水剥離粘着力低下率Aが50%以上である、ここで水剥離粘着力低下率Aは、23℃、50%RHの測定環境下において、被着体としてのアルカリガラス板に前記粘着シートの粘着面を貼り付けて30分後、前記被着体に10μL~40μLの蒸留水を滴下し、該蒸留水を上記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237に基づいて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW1[N/cm]と、前記通常剥離力FN1[N/cm]とから、次式:(1-(FW1/FN1))×100;により算出される、粘着シート。
【請求項11】
前記粘着剤層の厚さは10μm以上200μm以下である、請求項
9または
10に記載の粘着シート。
【請求項12】
請求項
9~11のいずれか一項に記載の粘着シートと、前記粘着シートの一方の表面に接合された光学部材と、を含む、粘着シート付き光学部材。
【請求項13】
被着体に貼り付けられた、請求項
9~11のいずれか一項に記載の粘着シートの剥離方法であって、
前記被着体からの前記粘着シートの剥離前線において前記被着体と前記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、前記剥離前線の移動に追随して前記水性液体の前記界面への進入を進行させつつ前記被着体から前記粘着シートを剥離する水剥離工程を含む、剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着剤組成物、粘着シート、粘着シート付き光学部材および粘着シート剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、支持体上に粘着剤層を有する支持体付き粘着シートの形態で、あるいは支持体を有しない支持体レス粘着シートの形態で、様々な分野において広く利用されている。例えば、タッチパネル等の光学入力装置や、液晶表示装置等の表示装置等の各種光学用途において、偏光板等の光学部材の接合を目的として粘着剤が用いられている。この種の粘着剤に関する技術文献として、特許文献1~3が挙げられる。特許文献1はタッチパネルに用いられる粘着剤を開示している。特許文献2および3は、偏光板用粘着剤に関する従来技術を開示する文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-047295号公報
【文献】特開2009-516048号公報
【文献】特開2009-519372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤には用途に応じて様々な特性が求められる。それらの特性のなかには、一方の特性を改善しようとすると他方の特性が低下する傾向にあるなど高レベルで両立させることが困難なものがある。このように両立が難しい関係にある特性の一例として、被着体に対する接着力とリワーク性とが挙げられる。上記リワークとは、例えば粘着シートを被着体に貼り付ける際に貼り損ね(位置ズレ、シワや気泡の発生、異物の噛み込み等)が生じた場合や、粘着シートの貼付け後に被着体に不具合が見つかった場合に、被着体から粘着シートを剥がして貼り直すことをいう。殊に、被着体が脆い場合や薄い場合には、リワークによる被着体の損傷や変形を防ぐため被着体からの粘着シートの剥離力(すなわち、被着体に対する接着力)を低く抑えることが求められることから、良好なリワーク性と高い接着力とを兼ね備えた粘着シートを実現することは容易ではない。
【0005】
また例えば、光学用途においては、上記リワーク性と接着力との両立に加えて、透明性など被着対象物の光学特性を損なわない性質が求められることから、粘着剤設計に対する制限はさらに厳しいものとなる。例えば特許文献1では、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートやアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを所定以上の割合で共重合されたアクリル系ポリマーを用いる組成で、耐熱白化性や耐熱発泡性等の光学特性の改善に取り組んでいる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、水等の水性液体を利用して容易に剥離することができ、かつ十分な接着強度を有する光学用粘着剤組成物を提供することを目的とする。本発明の関連する他の目的は、粘着シート、粘着シート付き光学部材および粘着シートの剥離方法の提供を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書によると、アクリル系重合物を含む光学用粘着剤組成物が提供される。その一態様に係る粘着剤組成物は、前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満である。前記粘着剤組成物は、さらに界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含む。
【0008】
上記粘着剤組成物は、アクリル系重合物を用いることで良好な接着力を発揮し得る。上記アクリル系重合物としては、重合物製造時のゲル化を抑制する観点から、そのモノマー成分としてのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートやアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの使用量を制限したものを用いる。また、上記アクリル系重合物に加えて、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含むことにより、水等の水性液体を利用して剥離力を効果的に低下させることができる。すなわち、光学用途に適した組成のなかで、十分な接着力と、リワーク性に通じる水剥離性とを両立することができる。
【0009】
この明細書によると、他の一態様に係る光学用粘着剤組成物が提供される。この粘着剤組成物は、アクリル系重合物と、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aと、を含む。また、前記化合物Aの含有量は、前記アクリル系重合物100重量部に対して1重量部未満である。
【0010】
上記粘着剤組成物は、アクリル系重合物を用いることで良好な接着力を発揮し得る。また、上記アクリル系重合物に加えて化合物Aを含むことにより、水等の水性液体を利用して剥離力を低下させることができる。すなわち、十分な接着力と、リワーク性に通じる水剥離性とを両立することができる。そして、化合物Aの使用量が制限されているので、光学用途に求められる透明性が得られやすく、また接着力の低下も抑制することができる。
【0011】
ここに開示される技術(光学用粘着剤組成物、粘着シート、粘着シート付き光学部材および粘着シート剥離方法を包含する。以下同じ。)の好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である。溶剤型または無溶剤型の粘着剤組成物を用いる態様において、ここに開示される技術による効果が好ましく発揮される。
【0012】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記化合物Aは非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤をアクリル系重合物含有粘着剤層に含ませることで、水剥離性を好ましく発現させることができる。また、化合物Aとして非イオン性界面活性剤を用いることにより、低ヘイズを保持しやすい。
【0013】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記化合物AのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は10以上である。化合物Aとして、HLBが10以上である化合物(典型的には界面活性剤)を用いることにより、水剥離性が好ましく発現する。
【0014】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、窒素原子を有するモノマーと、を含む。上記モノマー組成を有するアクリル系重合物を用いることで、光学特性と良好な接着力とを好ましく発揮させ得る。また、上記アクリル系重合物を用いる構成において、化合物Aによる水剥離性を発現させやすい。上記窒素原子を有するモノマーは、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R
1は2価の有機基である。);で表わされるN-ビニル環状アミド、および(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーであることが好ましい。
【0015】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記アクリル系重合物のSP値(Solubility Parameter)は18.0~23.0(MJ/m3)1/2である。上記SP値を有するアクリル系重合物を含む粘着剤に化合物Aを含ませることにより、ここに開示される技術による効果が好ましく発揮される。
【0016】
ここに開示される技術の好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、さらに剥離力上昇剤を含む。剥離力上昇剤を含ませることにより、剥離力(接着力)を向上させることができる。より好ましい一態様では、前記剥離力上昇剤は、アルコキシシリル基を有する化合物である。剥離力上昇剤として、アルコキシシリル基を有する化合物を用いることにより、被着体からの剥離力を効果的に向上させることができる。
【0017】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、光学用粘着シートが提供される。この粘着シートによると、良好な接着力と、リワーク性に通じる水剥離性とを両立することができる。
【0018】
また、この明細書によると、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。この粘着シートは、前記粘着シートの粘着面を、被着体としてのアルカリガラス板に貼り付けて23℃で30分放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN1が2N/cm以上である。また、水剥離粘着力低下率Aが50%以上である。ここで、水剥離粘着力低下率Aは、23℃、50%RHの測定環境下において、被着体としてのアルカリガラス板に前記粘着シートの粘着面を貼り付けて30分後、上記被着体に10μL~40μLの蒸留水を滴下し、該蒸留水を上記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237に基づいて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW1[N/cm]と、前記通常剥離力FN1[N/cm]とから、次式:
(1-(FW1/FN1))×100;
により算出される。この粘着シートによると、良好な接着力と、リワーク性に通じる水剥離性とを両立することができる。通常剥離力FN1および水剥離力FW1は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
また、この明細書によると、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。この粘着シートは、被着体としてのフロート法で作製されたアルカリガラス板の、蒸留水に対する接触角が5度~10度である面に粘着面を貼り付けて室温1日後の粘着力(常態粘着力)N0が2.0N/10mm以上である。また、上記粘着シートは、水剥離粘着力低下率Bが40%以上である。ここで、水剥離粘着力低下率Bは、被着体としてのフロート法で作製されたアルカリガラス板の蒸留水に対する接触角が5度~10度である面に粘着面を貼り付けて室温1日後、上記被着体に20μLの蒸留水を滴下し、該蒸留水を上記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力N2[N/10mm]と、粘着力(常態粘着力)N0[N/10mm]とから、次式:(1-(N2/N0))×100;により算出される。この粘着シートによると、良好な接着力と、リワーク性に通じる水剥離性とを両立することができる。常態粘着力N0および水剥離力N2は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
上記粘着剤層の厚さは、例えば10μm以上200μm以下であり得る。このような厚さの粘着剤層によると、光学用途において好ましい接着力を発揮し得る。
【0021】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、前記粘着シートの一方の表面に接合された光学部材と、を含む、粘着シート付き光学部材が提供される。このような粘着シート付き光学部材は、例えば上記光学部材に上記粘着シートを貼り合わせる際におけるリワーク性の良いものとなり得る。例えば、上記貼り合わせの際に異物の噛み込み等の不具合が生じた場合に、水等の水性液体を用いて上記光学部材から上記粘着シートを容易に剥離して貼り直すことができる。また、上記粘着シート付き光学部材は、粘着シートによる接着後には十分な接着信頼性を有するものとなり得る。
【0022】
さらに、この明細書によると、被着体に貼り付けられた粘着シートを該被着体から剥離する方法が提供される。その方法は、前記被着体からの前記粘着シートの剥離前線において前記被着体と前記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、前記剥離前線の移動に追随して前記水性液体の前記界面への進入を進行させつつ前記被着体から前記粘着シートを剥離する水剥離工程を含み得る。ここで剥離前線とは、被着体からの粘着シートの剥離を進行させる際に、上記被着体から上記粘着シートが離れ始める箇所を指す。上記水剥離工程によると、上記水性液体を有効に利用して被着体から粘着シートを剥離することができる。ここに開示される剥離方法を適用して剥離される粘着シートは、典型的には粘着剤層を含む。上記粘着シートは、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着シートであり得る。
【0023】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る粘着シートが光学部材に貼り付けられた粘着シート付き光学部材を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0026】
この明細書において「アクリル系重合物」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く含むモノマー成分に由来する重合物をいい、アクリル系ポリマーともいう。上記アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマーのことをいう。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0027】
<粘着剤組成物>
ここに開示される粘着剤組成物はアクリル系重合物を含む。典型的には、上記粘着剤組成物は、アクリル系重合物を主成分とするアクリル系粘着剤組成物であり得る。アクリル系粘着剤組成物は、透明性に優れ、光学用途に好ましく利用される。
【0028】
ここに開示される粘着剤組成物としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1以上20以下の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40重量%以上の割合で含むモノマー成分から構成されたアクリル系重合物をベースポリマーとして含有するものが好ましい。以下、炭素原子数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを「(メタ)アクリル酸CX-Yアルキルエステル」と表記することがある。特性のバランスをとりやすいことから、一態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、50重量%よりも多いことが適当であり、例えば55重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば99.9重量%以下であってよく、99.5重量%以下でもよく、99重量%以下でもよい。他の一態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分全体に占めるC1-20(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば98重量%以下であってよく、粘着剤層の凝集性向上の観点から95重量%以下であってもよく、85重量%以下(例えば80重量%未満)でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0030】
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを用いることがより好ましい。例えば、上記モノマー成分としてアクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むことが好ましく、少なくとも2EHAを含むアクリル系粘着剤が特に好ましい。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルの他の例としては、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。
【0031】
いくつかの態様において、上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを40重量%以上の割合で含み得る。モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、例えば50重量%以上であってよく、60重量%以上でもよく、65重量%以上でもよい。上述したいずれかの下限値以上の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
また、粘着剤層の凝集性を高める観点から、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、通常、99.5重量%以下とすることが適当であり、95重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。上述したいずれかの上限値以下の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
【0032】
上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーや、ホモポリマーのガラス転移温度が比較的高い(例えば10℃以上の)モノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系重合物に架橋点を導入したり、粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸。
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)。
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル。
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール(例えばアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)類。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物等。
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル。
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
【0034】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全体の0.01重量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全体の0.1重量%以上としてもよく、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の50重量%以下とすることが適当であり、40重量%以下とすることが好ましい。
【0035】
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、窒素原子を有するモノマーを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を好ましく向上させることができる。窒素原子を有するモノマーの一好適例としては、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、一般式(1):
【化2】
で表わされるN-ビニル環状アミドが挙げられる。ここで、一般式(1)中、R
1は2価の有機基であり、具体的には-(CH
2)
n-である。nは2~7(好ましくは2,3または4)の整数である。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンを好ましく採用し得る。窒素原子を有するモノマーの他の好適例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0036】
窒素原子を有するモノマー(好ましくは窒素原子含有環を有するモノマー)の使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上であってもよく、3重量%以上であってもよく、さらには5重量%以上または7重量%以上とすることができる。一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、接着力向上の観点から、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、35重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよい。他の一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20重量%以下としてもよく、15重量%以下としてもよい。
【0037】
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力や架橋(例えば、イソシアネート架橋剤による架橋)の程度を好適に調節し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の0.01重量%以上であってよく、0.1重量%以上でもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上または10重量%以上でもよい。また、粘着剤層の吸水性を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下としてもよく、25重量%以下としてもよく、20重量%以下としてもよい。他の一態様では、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば15重量%以下としてもよく、10重量%以下としてもよく、5重量%以下としてもよい。
【0038】
ここに開示される粘着剤組成物において、アクリル系重合物のモノマー成分は、上記で例示したアルコキシアルキル(メタ)アクリレートやアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含んでよく、含まなくてもよい。ここに開示される技術の一態様では、アクリル系重合物のモノマー成分のうちアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は20重量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は20重量%未満である。これにより、粘着剤層は、ゲル化等の問題なくシート形成しやすい。上記モノマー組成を採用することにより、モノマー混合物の固形分濃度を所定範囲に保持して所望の高分子量体(例えば、重量平均分子量(Mw)30×104超、典型的にはMw40×104以上)を好ましく重合することができる。上記モノマー成分に占めるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。同様に、上記モノマー成分に占めるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
【0039】
また、好ましい一態様に係るアクリル系重合物のモノマー成分は、ゲル化抑制の観点から、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合が20重量%未満に制限されている。上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合は、より好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満であり、一態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
同様に、ここに開示されるアクリル系重合物のモノマー成分は、アルコキシ基含有モノマーを20重量%未満の割合で含むか、含まないものであり得る。上記モノマー成分に占めるアルコキシ基含有モノマーの量は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシ基含有モノマーを実質的に含まない(含有量0~0.3重量%)。
【0040】
いくつかの態様において、アクリル系重合物のモノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2重量%以下であってよく、1重量%以下でもよく、0.5重量%以下(例えば0.1重量%未満)でもよい。アクリル系重合物のモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーを使用しないことをいう。このような組成のアクリル系重合物は、耐水信頼性の高いものとなりやすく、また金属を含む被着体に対しては金属腐食防止性を有するものとなり得る。
【0041】
また、好ましい一態様において、アクリル系重合物のモノマー成分は、親水性モノマーの割合が制限されている。これにより、化合物Aによる水剥離性が好ましく発揮される。ここで、本明細書における「親水性モノマー」は、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマー(典型的には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー)およびアルコキシ基含有モノマー(典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)をいうものとする。この態様において、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は40重量%以下(例えば35重量%以下)が適当であり、32重量%以下であることが好ましく、例えば30重量%以下であってもよく、28重量%以下であってもよい。特に限定されるものではないが、アクリル系重合物のモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は1重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよく、20重量%以上であってもよい。
【0042】
いくつかの態様において、アクリル系重合物を構成するモノマー成分は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1重量%以上、3重量%以上または5重量%以上とすることができる。一態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー成分全体の10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、例えば30重量%以下であってもよく、25重量%以下(例えば15重量%以下、さらには10重量%以下)であってもよい。
【0043】
上記アクリル系重合物を構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度Tgが-75℃以上10℃以下となるように設定され得る。いくつかの態様において、上記Tgは、凝集性や耐衝撃性等の観点から、0℃以下であることが適当であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下または-30℃以下であってもよい。また上記Tgは、例えば-60℃以上であってよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上または-40℃以上でもよい。
【0044】
ここで、上記Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0045】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
イソステアリルアクリレート -18℃
メチルメタクリレート 105℃
メチルアクリレート 8℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
N-ビニル-2-ピロリドン 54℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
イソボルニルアクリレート 94℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0046】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。
【0047】
上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007-51271号公報参照)。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0048】
ここに開示されるアクリル系重合物は、特に限定されるものではないが、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下であることが好ましい。そのようなSP値を有するアクリル系重合物を含む粘着剤に、後述の化合物Aを含ませることによって、十分な接着強度を有しつつ、優れた水剥離性を有する粘着剤を好ましく実現することができる。上記SP値は、より好ましくは21.0(MJ/m3)1/2以下(例えば20.0(MJ/m3)1/2以下)である。上記SP値の下限は特に限定されず、例えば凡そ10.0(MJ/m3)1/2以上であり、また凡そ15.0(MJ/m3)1/2以上であることが適当であり、好ましくは18.0(MJ/m3)1/2以上である。
【0049】
なお、アクリル系重合物のSP値は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(POLYMER ENG. & SCI.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]すなわち、式:
SP値δ=(Σ△e/Σ△v)1/2
(上式中、Δeは、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギー△eであり、Δvは、同温度における各原子または原子団のモル容積である。);
にしたがって計算することができる。上記SP値を有するアクリル系重合物は、当業者の技術常識に基づき、適切にモノマー組成を決定することにより得ることができる。
【0050】
上記粘着剤組成物は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)またはこれらの混合物の形態で含み、さらに化合物Aを含む粘着剤組成物である。上記粘着剤組成物は、粘着剤(粘着成分)が水に分散した形態の水分散型粘着剤組成物、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の溶剤型粘着剤組成物、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の種々の形態であり得る。好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である。無溶剤型粘着剤組成物には、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物およびホットメルト型粘着剤組成物が包含される。
【0051】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の熱重合開始剤や光重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0052】
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0053】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0054】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100重量部に対して重合開始剤凡そ0.001~5重量部(典型的には凡そ0.01~2重量部、例えば凡そ0.01~1重量部)を用いることができる。
【0055】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、α-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることができる。ここに開示される技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0056】
上記の各種重合法を適宜採用して得られるアクリル系重合物の分子量は特に制限されず、要求性能に合わせて適当な範囲に設定され得る。アクリル系重合物の重量平均分子量(Mw)は、通常は凡そ10×104以上(例えば20×104以上)であり、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、30×104超とすることが適当である。一態様に係るアクリル系重合物は、高温環境下においても良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは40×104以上(典型的には凡そ50×104以上、例えば凡そ55×104以上)のMwを有する。ここに開示される技術の好ましい一態様によると、モノマー組成の設計によってゲル化が抑制され得るので、適切な固形分濃度を設定して上記範囲の高分子量体を生産性よく得ることができる。アクリル系重合物のMwの上限は、通常は凡そ500×104以下(例えば凡そ150×104以下)であり得る。上記Mwは凡そ75×104以下であってもよい。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。上記Mwは、粘着剤組成物中、粘着剤層中いずれかにおけるアクリル系重合物のMwであり得る。
【0057】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、化合物Aを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であり得る。本明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の一好適例として、光硬化型粘着剤組成物が挙げられる。光硬化型の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。なかでも紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましい。
【0058】
光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
【0059】
好ましい一態様に係る光硬化型粘着剤組成物は、モノマー成分の部分重合物を含む。このような部分重合物は、典型的にはモノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、好ましくはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマー成分を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、モノマー成分の重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
【0060】
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、通常は凡そ5重量%以上とすることが適当である。
【0061】
モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物と、残りのモノマー成分またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
【0062】
上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、剥離力上昇剤の他、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤や、後述のような架橋剤、多官能モノマー、アクリル系オリゴマー、粘着付与樹脂等)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
【0063】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、化合物Aを含む溶剤型粘着剤組成物であり得る。溶剤型粘着剤組成物は、典型的には、モノマー成分の溶液重合物と、化合物Aと、必要に応じて用いられる添加剤(例えば剥離力上昇剤)とを含有する。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。溶液重合によると、モノマー成分の重合物が重合溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される溶剤型粘着剤組成物は、上記重合反応液を用いて好ましく製造され得る。
【0064】
なお、上記溶剤型粘着剤組成物には、化合物Aの他、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤や、後述のような架橋剤、多官能モノマー、アクリル系オリゴマー等)が配合され得る。上記溶剤型粘着剤組成物は、例えば上記重合反応液に多官能モノマーおよび光重合開始剤を添加することによって、光硬化性(光架橋性)が付与されたものであってもよい。
【0065】
(化合物A)
ここに開示される粘着剤組成物は、典型的には、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含むことを特徴とするものであり得る。これにより、水等の水性液体を利用して剥離力を効果的に低下させることができる。その理由は、特に限定解釈されるものではないが、界面活性剤やポリオキシアルキレン骨格を有する化合物は、いずれも親水性領域を有し、それによって粘着剤層表面に偏在して、水と接触したときに剥離力を効果的に低下させるものと考えられる。界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、公知の界面活性剤、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物の1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。化合物Aは、典型的には、遊離の形態で粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)に含まれていることが好ましい。化合物Aとしては、粘着剤組成物調製性の点から、常温(約25℃)において液状であるものが好ましく用いられる。なお、上記界面活性剤のなかには、ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物が存在し、逆もまた然りであることは言うまでもない。
【0066】
化合物A(典型的には界面活性剤)のHLBは特に限定されず、例えば3以上であり、凡そ6以上が適当であり、8以上(例えば9以上)であり得る。好ましい一態様では、化合物AのHLBは10以上である。これによって、水剥離性が好ましく発現する傾向がある。上記HLBは、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは13以上(例えば14以上または15以上、さらには16以上)である。上記範囲のHLBを有する化合物Aを、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下(例えば18.0~23.0(MJ/m3))であるアクリル系重合物を含む粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)に含ませることで、水剥離性をより効果的に発現させ得る。上記HLBの上限は20以下であり、例えば18以下であってもよく、16以下(例えば15以下)であってもよい。
【0067】
なお、本明細書におけるHLBは、GriffinによるHydrophile-Lipophile Balanceであり、界面活性剤の水や油への親和性の程度を表す値であり、親水性と親油性の比を0~20の間の数値で表したものである。HLBの定義は、W.C.Griffin:J.Soc.Cosmetic Chemists,1,311(1949)や、高橋越民、難波義郎、小池基生、小林正雄共著、「界面活性剤ハンドブック」、第3版、工学図書社出版、昭和47年11月25日、p179~182等に記載されるとおりである。上記HLBを有する化合物Aは、上記参考文献を必要に応じて参酌するなどして当業者の技術常識に基づき、選定することができる。
【0068】
化合物Aとして用いられ得る界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル;ポリオキシエレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
アニオン性界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸塩、オクタデシル硫酸塩等のアルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ノニルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ドデシルナフタレンスルホン酸塩等のナフタレンスルホン酸塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸塩等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸塩等のスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;等が挙げられる。アニオン性界面活性剤が塩を形成している場合、該塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩(好ましくは一価金属の塩)、アンモニウム塩、アミン塩等であり得る。これらのアニオン性界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
化合物Aとして用いられ得るポリオキシアルキレン骨格を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等のポリアルキレングリコール;ポリオキシエチレン単位を含むポリエーテル、ポリオキシプロピレン単位を含むポリエーテル、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを含む化合物(これら単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロック状であってもよい。);これらの誘導体;等を用いることができる。また、上述の界面活性剤のうちポリオキシアルキレン骨格を有する化合物を用いることもできる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ポリオキシエチレン骨格(ポリオキシエチレンセグメントともいう。)を含む化合物を用いることが好ましく、PEGがより好ましい。
【0072】
ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量(化学式量)は特に限定されず、例えば1000未満であることが適当であり、粘着剤組成物調製性の点から、凡そ600以下(例えば500以下)であることが好ましい。ポリオキシアルキレン骨格を有する化合物(例えばポリエチレングリコール)の分子量の下限は特に限定されず、分子量が凡そ100以上(例えば凡そ200以上、さらには凡そ300以上)のものが好ましく用いられる。
【0073】
一態様に係る粘着剤組成物において、化合物Aの使用量は、アクリル系重合物(アクリル系重合物を形成するモノマー成分の総量でもあり得る。特に断りがないかぎり以下同じ。)100重量部に対して凡そ3重量部以下とすることができ、凡そ2重量部以下とすることが適当であり、透明性等の光学特性の観点から、好ましくは1重量部未満、より好ましくは0.7重量部未満、さらに好ましくは0.3重量部未満(例えば0.2重量部未満)である。化合物Aの使用量を制限することにより、接着力も維持しやすい傾向がある。また、HLBが10以上である化合物Aは、少量添加でも良好な水剥離性を発揮しやすい傾向がある。また、化合物Aの添加効果を発揮させる観点から、アクリル系重合物100重量部に対する化合物Aの量は0.001重量部以上とすることができ、例えば0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは0.03重量部以上(例えば0.1重量部以上)である。水剥離性を重視する組成では、アクリル系重合物100重量部に対する化合物Aの量は0.3重量部以上(例えば0.5重量部以上)であってもよい。
【0074】
(剥離力上昇剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、剥離力上昇剤を含むものであり得る。上記剥離力上昇剤としては、上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層の表面(粘着面)を被着体に貼り付けた後に、粘着シートの被着体からの剥離力を上昇させる機能を発揮し得る材料を、適宜選択して用いることができる。上記剥離力上昇剤としては、例えば公知のシランカップリング剤を用いることができる。剥離力上昇剤は、遊離の形態で粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)に含まれていることが好ましい。上記剥離力上昇剤は、典型的には、上記粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)に含まれ得る他の構成成分と化学結合していないことが好ましい。このような形態で粘着剤組成物に含まれている剥離力上昇剤は、剥離力の向上に効果的に寄与することができる。
【0075】
シランカップリング剤は、典型的には、官能基Xおよび官能基Yを一分子内に含み、上記官能基Xがアルコキシシリル基である化合物である。上記アルコキシシリル基は、ケイ素原子上に少なくとも一つのアルコキシ基を有する官能基である。被着体への貼付け後に粘着剤層の表面にシランカップリング剤が供給されることにより、上記アルコキシ基が加水分解して生成するシラノール基と被着体表面の水酸基とを反応させ、これにより粘着シートの被着体からの剥離力を上昇させることができる。上記アルコキシシリル基は、加水分解することによって、被着体表面の水酸基と反応するシラノール基を生成する。したがって、上記アルコキシシリル基は、上記水酸基と反応する基の前駆体である。
【0076】
上記アルコキシシリル基を構成するアルコキシ基は、典型的にはメトキシ基またはエトキシ基である。通常は、より加水分解性の高いメトキシ基が好ましい。上記アルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基であってもよく、ジアルコキシシリル基であってもよい。剥離力上昇効果を高める観点から、いくつかの態様において、トリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を好ましく採用し得る。
【0077】
官能基Yは、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基(イソシアヌレート体を構成していてもよい。)、アセトアセチル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、ビニル基、ハロゲン化アルキル基等であり得る。このような官能基Yを有するシランカップリング剤の例として、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;例えば3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;例えばアセトアセチル基含有トリメトキシシラン等のアセトアセチル基含有シランカップリング剤;例えば3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン化アルキル基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン(例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)等のエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0078】
上記シランカップリング剤としては、粘着剤層に含まれる官能基yと反応する官能基Yを有するものを用いることができる。常温下での反応性の観点から、官能基yとしてカルボキシ基と、官能基Yとしてエポキシ基を有するシランカップリング剤との組合せが挙げられる。他の組合せの例としては、アミノ基とエポキシ基との組合せ、水酸基とエポキシ基との組合せ、カルボキシ基とアミノ基との組合せ、イソシアネート基とアミノ基との組合せ、スルホ基とアミノ基との組合せ等が挙げられる。一方、いくつかの態様において、粘着剤組成物は、該粘着剤組成物内において剥離力上昇剤を遊離の状態に維持することで該剥離力上昇剤を表面に移行させやすくする観点から、シランカップリング剤の官能基Y(例えばエポキシ基)と反応する官能基y(例えばカルボキシ基)を有しないものであり得る。
【0079】
シランカップリング剤の分子量(化学式量)は特に限定されず、例えば120~100程度であり得る。通常は、リワーク可能な期間の調節しやすさや、粘着面への移動性の観点から、通常は、分子量が180以上、200以上または220以上であるシランカップリング剤が好ましい。同様の理由から、分子量が800以下、600以下、400以下または300以下であるシランカップリング剤が好ましい。いくつかの態様において、分子量が200以上300以下のシランカップリング剤を好ましく使用し得る。シランカップリング剤の分子量の値としては、該シランカップリング剤の構造式に基づいて算出される値が用いられる。あるいは、メーカー公称値を用いてもよい。
【0080】
ここに開示される粘着剤組成物に含まれる剥離力上昇剤(例えばシランカップリング剤)の量は、所望の使用効果が得られるように設定することができ、特に限定されない。上記剥離力上昇剤の量は、粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合物100重量部あたり、例えば0.005重量部以上とすることができる。アクリル系重合物100重量部あたりの剥離力上昇剤の含有量は、通常、0.05重量部以上とすることが適当であり、0.10重量部以上、0.20重量部以上または0.30重量部以上でもよい。剥離力上昇剤の含有量の増大により、剥離力の上昇効果を発揮させることができる。また、使用態様によっては、室温において経時により剥離力が上昇するまでの期間が短すぎると、リワーク可能な期間が短くなりすぎて工程管理が煩雑となる等の不都合が生じることがあり得る。かかる観点から、いくつかの態様において、粘着剤組成物におけるアクリル系重合物100重量部あたりの剥離力上昇剤の含有量は、例えば5重量部以下であってよく、3重量部以下でもよく、1重量部以下でもよく、0.7重量部以下(例えば0.5重量部以下)でもよい。ここに開示される技術は、剥離力上昇剤(例えばシランカップリング剤)を実質的に含まない粘着剤組成物を用いる態様で実施することができる。剥離力上昇剤の使用を制限したり、剥離力上昇剤を使用しないことにより、経時的な粘着力上昇を抑制することができ、また、加熱保存後も良好な水剥離性を好ましく発揮し得る。
【0081】
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、主に粘着剤層内での架橋または粘着剤層とその隣接面との架橋を目的として、必要に応じて架橋剤を含有させることができる。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤のなかから、例えば粘着剤組成物の組成に応じて、該架橋剤が粘着剤層内で適切な架橋機能を発揮するように選択することができる。用いられ得る架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤等を例示することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、トリス(p-イソシアナトフェニル)チオホスフェート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;等が挙げられる。市販品としては、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物等を例示することができる。
【0083】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものを特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-X」、「TETRAD-C」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
【0084】
オキサゾリン系架橋剤としては、1分子内に1個以上のオキサゾリン基を有するものを特に制限なく使用することができる。
アジリジン系架橋剤の例としては、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオネート)]等が挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、カルボジイミド基を2個以上有する低分子化合物または高分子化合物を用いることができる。
【0085】
いくつかの態様において、架橋剤として過酸化物を用いてもよい。過酸化物としては、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソブチレート、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。これらのなかでも、特に架橋反応効率に優れる過酸化物として、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。なお、上記重合開始剤として過酸化物を使用した場合には、重合反応に使用されずに残存した過酸化物を架橋反応に使用することも可能である。その場合は過酸化物の残存量を定量して、過酸化物の割合が所定量に満たない場合には、必要に応じて、所定量になるように過酸化物を添加するとよい。過酸化物の定量は、特許4971517号公報に記載の方法により行うことができる。
【0086】
架橋剤の含有量(2種以上の架橋剤を含む場合にはそれらの合計量)は特に限定されない。接着力や凝集力等の粘着特性をバランスよく発揮する粘着剤を実現する観点から、架橋剤の含有量は、粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合物100重量部に対して、通常は凡そ5重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.001~5重量部とすることが好ましく、凡そ0.001~4重量部とすることがより好ましく、凡そ0.001~3重量部とすることがさらに好ましい。あるいは、上述のような架橋剤を含まない粘着剤組成物であってもよい。ここに開示される粘着剤組成物として光硬化型粘着剤組成物を用いる場合には、当該粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤等の架橋剤を実質的に含まないものであり得る。ここで粘着剤組成物が架橋剤(典型的にはイソシアネート系架橋剤)を実質的に含まないとは、上記アクリル系重合物100重量部に対する架橋剤の量が0.05重量部未満(例えば0.01重量部未満)であることをいう。
【0087】
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が例示される。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。粘着剤組成物中のアクリル系重合物100重量部に対する架橋触媒の使用量は、例えば凡そ0.0001重量部以上1重量部以下であってよく、0.001重量部以上0.1重量部以下でもよく、0.005重量以上0.5重量部以下でもよい。
【0088】
粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)には、必要に応じて多官能性モノマーが用いられ得る。多官能性モノマーは、上述のような架橋剤に代えて、あるいは該架橋剤と組み合わせて用いられることで、凝集力の調整等の目的のために役立ち得る。例えば、光硬化型の粘着剤組成物から形成される粘着剤層において、多官能性モノマーが好ましく用いられ得る。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、通常は、アクリル系重合物100重量部に対して0.01重量部~3.0重量部程度の範囲とすることが適当である。いくつかの態様において、アクリル系重合物100重量部に対する多官能性モノマーの使用量は、例えば0.02重量部以上であってもよく、0.1重量部以上であもよく、0.5重量部以上、1.0重量部以上または2.0重量部以上でもよい。多官能性モノマーの使用量の増大により、より高い凝集力が得られる傾向にある。一方、過度な凝集力向上により粘着剤層と隣接する層との接着性が低下することを避ける観点から、アクリル系重合物100重量部に対する多官能性モノマーの使用量は、例えば10重量部以下であってよく、5.0重量部以下でもよく、3.0重量部以下でもよい。
【0090】
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物(ひいては粘着剤層)には、凝集力の向上や、粘着剤層に隣接する面(例えば、支持体の表面等であり得る。)との接着性向上等の観点から、アクリル系オリゴマーを含有させることができる。アクリル系オリゴマーとしては、上記アクリル系重合物のTgよりもTgが高い重合体を用いることが好ましい。
【0091】
上記アクリル系オリゴマーのTgは特に限定されず、例えば約20℃以上300℃以下であり得る。上記Tgは、例えば約30℃以上であってよく、約40℃以上でもよく、約60℃以上でもよく、約80℃以上または約100℃以上でもよい。アクリル系オリゴマーのTgが高くなると、凝集力を向上させる効果は概して高くなる傾向にある。また、支持体への投錨性や衝撃吸収性等の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは、例えば約250℃以下であってよく、約200℃以下でもよく、約180℃以下または約150℃以下でもよい。なお、アクリル系オリゴマーのTgは、上記モノマー成分の組成に対応するアクリル系重合物のTgと同じく、Foxの式に基づいて計算される値である。
【0092】
アクリル系オリゴマーのMwは、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約10000未満、さらに好ましくは約2000以上約5000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあると、凝集性や隣接する面との接着性を向上させる効果が好適に発揮されやすい。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定される。
【0093】
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上述した各種の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0095】
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的に1種または2種以上の(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。モノマー成分が脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルとを含む場合、それらの重量比は特に限定されず、例えば10/90~90/10の範囲、20/80~80/20の範囲、70/30~30/70の範囲等とすることができる。
【0096】
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることができる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1重量%以上、2重量%以上または3重量%以上とすることができ、また、例えば15重量%以下、10重量%以下または7重量%以下とすることができる。
【0097】
好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、DCPMAとMMAの共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体等を挙げることができる。
【0098】
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系重合物の合成に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
【0099】
粘着剤組成物にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、上記アクリル系重合物100重量部に対して、例えば0.01重量部以上とすることができ、より高い効果を得る観点から0.05重量部以上としてもよく、0.1重量部以上または0.2重量部以上としてもよい。また、アクリル系重合物との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、通常、50重量部未満とすることが適当であり、好ましくは30重量部未満、より好ましくは25重量部以下であり、例えば10重量部以下であってもよく、5重量部以下または1重量部以下としてもよい。
【0100】
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系、石油系、テルペン系、フェノール系、ケトン系等の粘着付与樹脂)、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤をその他の任意成分として含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
なお、ここに開示される技術は、上述の粘着付与樹脂を用いることなく、良好な接着力を発揮することができるので、粘着剤組成物における上記粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合物100重量部に対して例えば10重量部未満、さらには5重量部未満とすることができる。上記粘着付与樹脂の含有量は1重量部未満(例えば0.5重量部未満)であってもよく、0.1重量部未満(0重量部以上0.1重量部未満)であってもよく、上記粘着剤組成物は粘着付与樹脂を含まないものであり得る。
【0101】
ここに開示される粘着剤組成物は、光学用途に用いられ得ることから、粘着剤層形成後も所定の光学特性(例えば透明性)を有するものであり得る。そのような光学特性の観点から、粘着剤組成物に占めるアクリル系重合物以外の成分の量は制限されていることが好ましい。ここに開示される技術において、粘着剤組成物におけるアクリル系重合物以外の成分の量は、通常、凡そ30重量%以下であり、凡そ15重量%以下であることが適当であり、好ましくは凡そ12重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)である。一態様に係る粘着剤組成物におけるアクリル系重合物以外の成分の量は、凡そ5重量%以下であってもよく、凡そ3重量%以下であってもよく、凡そ1.5重量%以下(例えば凡そ1重量%以下)であってもよい。このようにアクリル系重合物以外の成分量が制限された組成は、光硬化型粘着剤組成物に対して好ましく採用され得る。
【0102】
<粘着シートの構成例>
次に、ここに開示される粘着シートについて説明する。ここに開示される技術における粘着シートは、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える。ここに開示される粘着シートの一構成例を
図1に示す。この粘着シート1は、一方の表面10Aが被着体への貼付面となっている粘着剤層10と、粘着剤層10の他方の表面10Bに積層された支持体20と、を含む片面接着性の粘着シートとして構成されている。粘着剤層10は支持体20の一方の表面20Aに固定的に接合している。支持体20としては、例えばポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムが用いられ得る。
図1に示す例では、粘着剤層10は単層構造である。使用前(被着体への貼付け前)の粘着シート1は、例えば
図1に示すように、粘着面10Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー30で保護された、剥離ライナー付き粘着シート50の形態であり得る。あるいは、支持体20の第二面20B(第一面20Aとは反対側の表面であり、背面ともいう。)が剥離面となっており、支持体20の第二面20Bに粘着面10Aが当接するように巻回または積層されることで粘着面10Aが保護された形態であってもよい。
【0103】
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面が剥離処理された剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理には、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤が用いられ得る。いくつかの態様において、剥離処理された樹脂フィルムを剥離ライナーとして好ましく採用し得る。
【0104】
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、上記構成例のように単層構造に限定されず、上記粘着剤層(典型的には化合物A含有粘着剤層)に加えて、同一または異なる組成の1または2以上の粘着剤層(追加粘着剤層)をさらに備えるものであってもよい。そのような、追加的に配置される1または2以上の粘着剤層の各層は、上述の化合物Aを含んでもよく、含まなくてもよい。追加粘着剤層が上記粘着剤層よりも支持体側に配置される場合には、当該追加粘着剤層は、良好なリワーク性と高い剥離力との両立の観点から、剥離力上昇剤を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0105】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層からなる支持体レス両面粘着シートの態様であってもよい。
図2に示すように、支持体レス両面粘着シート2は、使用前においては、粘着剤層10の各面10A,10Bが少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー31の背面(粘着剤側とは反対側の表面)が剥離面となっており、剥離ライナー31の背面に粘着面10Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面10A,10Bが保護された形態であってもよい。このような支持体レス両面粘着シートは、例えば、粘着剤層のいずれか一方の表面に支持体を接合して使用され得る。
【0106】
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の一方の表面に光学部材が接合された粘着シート付き光学部材の構成要素であり得る。例えば、
図1に示す粘着シート1は、
図3に示すように、粘着剤層10の一方の表面10Aに光学部材70が接合された粘着シート付き光学部材100の構成要素であり得る。上記光学部材としては、粘着シートが貼り付けられる面が非吸水性の平滑面であるものが好ましい。このような構成の粘着シート付き光学部材は、粘着シートを光学部材に貼り付ける際に、必要に応じて後述する水剥離法を適用して容易にリワークを行うことができる。上記光学部材は、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、金属板等であり得る。また、上記部材は、粘着シートと貼り合わされる面が親水化処理されていてもよい。親水化処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理や、親水コーティング層を設ける親水コーティング処理等の親水性の向上に寄与する処理が挙げられる。
【0107】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、ここに開示される粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える。上記粘着シートを構成する粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。2種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。
モノマー成分の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合(例えば、モノマー成分の部分重合物が有機溶剤に溶解した形態の光硬化性粘着剤組成物の場合)は、該組成物を乾燥させた後に光硬化を行うとよい。
完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。多官能性モノマーの添加により光硬化性(光架橋性)が付与された溶剤型粘着剤組成物の場合は、該組成物を乾燥させた後に光硬化を行うとよい。ここで、上記組成物を乾燥させた後とは、上記乾燥を経て得られた粘着シートを被着体に貼り合わせた後であってもよい。ここに開示される粘着シートは、被着体に貼り合わせた後に光硬化させることを含む手法により上記被着体への貼付けを行う態様で用いられ得る。
二層以上の多層構造の粘着剤層は、あらかじめ形成した粘着剤層を貼り合わせることによって作製することができる。あるいは、あらかじめ形成した第一の粘着剤層の上に粘着剤組成物を塗布し、該粘着剤組成物を硬化させて第二の粘着剤層を形成してもよい。被着体への貼り合わせ後に光硬化させる貼付け態様で用いられる粘着シートの有する粘着剤層が多層構造である場合、上記光硬化させる粘着剤層は、上記多層構造に含まれる一部の層(例えば一つの層)であってもよく全部の層であってもよい。
【0108】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。支持体を有する形態の粘着シートでは、支持体上に粘着剤層を設ける方法として、該支持体に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成する直接法を用いてもよく、剥離面上に形成した粘着剤層を支持体に転写する転写法を用いてもよい。
【0109】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm~2000μm程度であり得る。段差追従性など被着体との密着性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上が適当であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。粘着剤層の厚さは、50μm以上でもよく、50μm超でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよく、120μm以上でもよい。また、粘着剤層の凝集破壊による糊残りの発生を防止する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、700μm以下でもよく、500μm以下でもよく、300μm以下でもよく、さらには200μm以下または170μm以下でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層の厚さが130μm以下でもよく、90μm以下でもよく、60μm以下(例えば40μm以下)である粘着シートの形態でも好適に実施することができる。なお、二層以上の多層構造を有する粘着剤層を有する粘着シートでは、上記粘着剤層の厚さとは、被着体に貼り付けられる粘着面から該粘着面とは反対側の表面までの厚さをいう。
【0110】
<支持体>
いくつかの態様に係る粘着シートは、粘着剤層の他方の背面に接合した支持体を含む支持体付き粘着シートの形態であり得る。支持体の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る支持体の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の支持体であってもよい。このような複合構造の支持体の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の支持体、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチックシート等が挙げられる。
【0111】
ここに開示される粘着シートの支持体としては、各種のフィルム(以下、支持フィルムともいう。)を好ましく用いることができる。上記支持フィルムは、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質のフィルムであってもよく、非多孔質のフィルムであってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造のフィルムであってもよい。いくつかの態様において、上記支持フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。
【0112】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等の樹脂を用いることができる。上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
【0113】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂およびポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
【0114】
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0115】
ポリオレフィン樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
【0116】
支持体として好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPPフィルムおよびOPPフィルムが挙げられる。強度の点から好ましい例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルムおよびPEEKフィルムが挙げられる。入手容易性、寸法安定性、光学特性等の観点から好ましい例としてPETフィルムが挙げられる。
【0117】
樹脂フィルムには、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0118】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0119】
上記支持体は、このような樹脂フィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記支持体は、上記樹脂フィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、支持体または粘着シートに所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。また、上記支持材は、後述する光学部材であってもよい。
【0120】
支持体の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。支持体の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、500μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。支持体の厚さが小さくなると、粘着シートの柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、支持体の厚さは、例えば2μm以上であってよく、5μm超または10μm超でもよい。いくつかの態様において、支持体の厚さは、例えば20μm以上であってよく、35μm以上でもよく、55μm以上でもよい。
【0121】
支持体のうち粘着剤層に接合される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、支持体と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の支持体への投錨性を向上させるための処理であり得る。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。
【0122】
支持体のうち粘着剤層に接合される側とは反対側の面(以下、背面ともいう。)には、必要に応じて、剥離処理、接着性または粘着性向上処理、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、支持体の背面を剥離処理剤で表面処理することにより、ロール状に巻回された形態の粘着シートの巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。
【0123】
<追加の粘着剤層>
ここに開示される粘着シートにおいて、上述した粘着剤層(化合物A含有粘着剤層)とは別に追加的に配置され得る粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。透明性や耐候性等の観点から、いくつかの態様において、追加の粘着剤層の構成材料としてアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。追加の粘着剤層のその他の事項については、上述した粘着剤層(化合物A含有粘着剤層)と同様の構成を採用することができ、あるいは公知ないし慣用技術および技術常識に基づき、用途や目的に応じて適当な構成を採用し得るので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0124】
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で測定される23℃30分後における通常剥離力が凡そ1.5N/cm以上であり得る。上記23℃30分後通常剥離力は、凡そ2N/cm以上であることが適当であり、良好な接着強度を発揮する観点から、好ましくは凡そ3N/cm以上、より好ましくは凡そ3.5N/cm以上(例えば凡そ4N/cm以上)である。例えば、一態様に係る粘着シートは、凡そ5N/cm以上の23℃30分後通常剥離力を示すものであり得る。この態様では、上記23℃30分後通常剥離力は、好ましくは凡そ9N/cm以上、より好ましくは凡そ10N/cm以上、さらに好ましくは凡そ11N/cm以上、特に好ましくは凡そ12N/cm以上(例えば凡そ13N/cm以上)である。このような強接着力は、溶剤型または光硬化型粘着剤組成物を用いることによって好ましく実現され得る。23℃30分後通常剥離力の上限は特に制限されず、例えば25N/cm以下であってよく、20N/cm以下であってもよく、15N/cm以下または10N/cm以下でもよい。
【0125】
ここに開示される粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で測定される23℃30分後における水剥離力が凡そ1.3N/cm未満であり得る。上記23℃30分後水剥離力は、凡そ1N/cm以下であることが適当であり、水剥離を利用したリワーク性の観点から、好ましくは1N/cm未満であり、例えば0.7N/cm未満であってもよく、0.3N/cm未満(凡そ0.1N/cm以下)であってもよい。
【0126】
ここに開示される粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で測定される60℃18時間後における通常剥離力が凡そ3N/cm以上(例えば凡そ4N/cm以上)であり得る。上記60℃18時間後通常剥離力は、凡そ5N/cm以上であることが適当であり、十分な接着強度を発揮する観点から、好ましくは凡そ7N/cm以上(例えば凡そ8N/cm以上)である。例えば、一態様に係る粘着シートは、凡そ10N/cm以上の60℃18時間後通常剥離力を示すものであり得る。この態様では、上記60℃18時間後通常剥離力は、好ましくは凡そ12N/cm以上、より好ましくは凡そ14N/cm以上(例えば凡そ15N/cm以上)である。60℃18時間後通常剥離力の上限は特に制限されず、例えば25N/cm以下であってよく、20N/cm以下、18N/cm以下または12N/cm以下でもよい。
【0127】
ここに開示される粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で測定される60℃18時間後における水剥離力が凡そ1.3N/cm未満であり得る。上記60℃18時間後水剥離力は、凡そ1N/cm以下であることが適当であり、水剥離を利用したリワーク性の観点から、好ましくは1N/cm未満であり、例えば0.7N/cm未満であってもよく、0.3N/cm未満(凡そ0.1N/cm以下)であってもよい。他の一態様では、60℃18時間後における水剥離力は凡そ4N/cm以上であり得る。この態様では、上記60℃18時間後水剥離力は、凡そ5N/cm以上であってもよく、凡そ6N/cm以上(例えば凡そ7N/cm以上)であってもよい。上記60℃18時間後水剥離力を示す粘着シートによると、所定の養生処理(典型的には加熱処理)を実施することで、水剥離性が消失するので、水等に曝される環境下においても良好な接合信頼性(耐水信頼性)を発揮することができる。60℃18時間後水剥離力の上限は特に制限されず、例えば25N/cm以下であってよく、20N/cm以下であってもよく、12N/cm以下でもよい。
【0128】
好ましい一態様に係る粘着シートは、上記23℃30分後通常剥離力FN1に対する上記23℃30分後水剥離力FW1の比(FW1/FN1)から求められる水剥離粘着力低下率Aが凡そ40%以上(例えば凡そ50%以上)であり得る。水剥離粘着力低下率Aが高い粘着シートは、水等の水性液体を用いて剥離することで、剥離時に被着体に加わる負荷を顕著に軽減することができる。例えば、粘着シートが貼り付けられた被着体に少量の水性液体を供給し、該水性液体を粘着シートの一端から該粘着シートと上記被着体との界面に進入させることで剥離のきっかけをつくったうえで上記粘着シートを剥離することにより、上記粘着シートの上記被着体からの剥離強度を大幅に低下させることができる。この性質を利用して、被着体に貼り付けられた粘着シートの位置ズレや浮きを抑制する性能と、良好なリワーク性とを両立することができる。いくつかの態様において、水剥離粘着力低下率Aは60%以上であることが適当であり、好ましくは65%以上であり、例えば70%以上であってよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、85%以上でもよい。一態様に係る粘着シートにおいては、水剥離粘着力低下率Aは90%以上であり、例えば95%以上であってもよく、さらには98%以上(典型的には99%以上)であり得る。水剥離粘着力低下率Aは、原理上100%以下であり、典型的には100%未満である。
水剥離粘着力低下率Aは、式:
水剥離粘着力低下率A[%]=(1-(FW1/FN1))×100;
から求めることができる。
【0129】
一態様に係る粘着シートは、上記23℃30分後通常剥離力FN1に対する上記60℃18時間後通常剥離力FN2との関係から求められる剥離力上昇率が凡そ20%以上であり得る。上記剥離力上昇率は、例えば30%以上であってもよく、40%以上であってもよい。いくつかの態様において、剥離力上昇率は、例えば100%以上であってよく、150%以上でもよく、200%以上でもよい。このような剥離力上昇率は、初期剥離強度が比較的低い構成に対して好ましく採用される。剥離力上昇率の上限は特に制限されず、例えば1000%以下であり得る。他のいくつかの態様において、上記剥離力上昇率は凡そ100%以下とすることができ、凡そ50%以下が適当である。上記剥離力上昇率が抑制された粘着シートは、被着体への貼り付け期間を通して安定した接着力を発揮しやすく、粘着シートが曝され得る使用環境において過度の接着力上昇が生じにくいなど接着安定性に優れたものであり得る。上記剥離力上昇率は凡そ40%以下であってもよく、凡そ30%以下でもよい。この態様において、上記剥離力上昇率の下限値は特に限定されず、凡そ0%以上とすることができ、凡そ10%以上(例えば凡そ15%以上)でもよい。
剥離力上昇率は、式:
剥離力上昇率[%]=((FN2-FN1)/FN1)×100;
から求めることができる。
【0130】
一態様に係る粘着シートは、上記60℃18時間後通常剥離力FN2に対する上記60℃18時間後水剥離力FW2の比(FW2/FN2)から求められる加熱後水剥離粘着力低下率が凡そ70%以上であり得る。加熱後水剥離粘着力低下率が高い粘着シートは、加熱後には十分な接着強度を有しつつ、水等の水性液体を用いた水剥離性に優れるので、加熱処理後においても良好なリワーク性を発揮することができる。加熱後水剥離粘着力低下率は80%以上であることが適当であり、例えば90%以上であってもよく、95%以上であってもよく、さらには98%以上(典型的には99%以上)であり得る。他の一態様では、加熱後水剥離粘着力低下率が40%以下であり得る。加熱後水剥離粘着力低下率が低い粘着シートによると、上記加熱処理後には粘着シートを水剥離することが困難となり、耐水信頼性のよい接合を実現することができる。この態様において、加熱後水剥離粘着力低下率は、例えば30%以下であってよく、20%以下でもよい。加熱後水剥離粘着力低下率は、原理上100%以下であり、典型的には100%未満である。
加熱後水剥離粘着力低下率は、式:
水剥離粘着力低下率[%]=(1-(FW2/FN2))×100;
から求めることができる。
【0131】
ここに開示される技術において、粘着シートのヘイズ値は凡そ10%以下であることが適当であり、凡そ5%以下(例えば凡そ3%以下)であり得る。上記ヘイズ値は1.0%以下であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる光学用途に好適である。粘着シートのヘイズ値は、1.0%未満であってよく、0.7%未満であってもよく、0.5%以下(例えば0~0.5%)であってもよい。粘着シートに関するこれらのヘイズ値は、ここに開示される技術における粘着剤層のヘイズ値にも好ましく適用され得る。
【0132】
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表すことができる。
Th[%]=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値[%]であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。ヘイズ値の測定は、後述する実施例に記載の方法にしたがって行うことができる。ヘイズ値は、例えば、粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0133】
ここに開示される粘着シートは、接合の信頼性の観点から、常態粘着力N0が2.0N/10mm以上であることが好ましい。いくつかの態様において、常態粘着力N0は、例えば2.5N/10mm以上であってよく、3.0N/10mm以上でもよく、3.5N/10mm以上でもよく、4.0N/10mm以上でもよい。常態粘着力N0の上限は特に限定されず、例えば30N/10mm以下であり得る。いくつかの態様において、常態粘着力N0は、20N/10mm以下でもよく、15N/10mm以下でもよい。上記常態粘着力N0は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0134】
水剥離力N2は、常態粘着力N0の60%以下(より好ましくは50%以下)であることが好ましい。特に限定するものではないが、水剥離力N2は、例えば10N/10mm以下であってよく、3.5N/10mm以下でもよく、3.0N/10mm以下でもよく、2.5N/10mm以下でもよく、1.6N/10mm以下でもよく、1.2N/10mm以下でもよく、1.0N/10mm以下でもよい。水剥離力N2が低い粘着シートによると、該粘着シートを剥離する際に被着体に与える負荷を軽減することができる。このことは、例えば、薄い被着体、脆い被着体、変形(伸び、撓み、縒れ等)しやすい被着体、表面に損傷しやすい薄膜を有する被着体、等に貼り付けられる粘着シートにおいて特に有意義である。ここに開示される粘着シートは、例えば、水剥離力N2が0.75N/10mm以下、または0.50N/10mm以下、または0.25N/10mm以下、または0.15N/10mm以下である態様でも好適に実施され得る。水剥離力N2の下限は特に制限されず、実質的に0N/10mmでもよく、0N/10mm超でもよい。
なお、リワーク性向上の観点から、水剥離力N2の測定において、被着体上に粘着剤を残留させることなく該被着体から剥離する粘着シートが好ましい。すなわち、非糊残り性に優れた粘着シートが好ましい。被着体上への粘着剤の残留の有無は、例えば、粘着シート剥離後の被着体を目視で観察することにより把握することができる。
上記水剥離力N2は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0135】
常態粘着力N0[N/10mm]に対する水剥離力N2[N/10mm]の比(N2/N0)は、例えば1/2.5以下であってよく、1/5以下でもよく、1/10以下でもよい。上記比(N2/N0)がより小さいことは、常態粘着力N0に対して水剥離力N2がより顕著に低下することを意味する。ここに開示される粘着シートは、比(N2/N0)が1/15以下、1/25以下または1/35以下である態様で好ましく実施され得る。比(N2/N0)の上限は特に制限されず、例えば1/200以上であってよく、1/150以上でもよく、1/100以上でもよい。
【0136】
ここに開示される粘着シートは、水剥離粘着力低下率Bが40%以上であることが好ましい。水剥離粘着力低下率Bの値が大きい粘着シートは、水等の水性液体を用いて容易に剥離することができる。例えば、粘着シートが貼り付けられた被着体に少量の水性液体を供給し、該水性液体を粘着シートの一端から該粘着シートと上記被着体との界面に進入させることで剥離のきっかけをつくったうえで上記粘着シートを剥離することにより、上記粘着シートの上記被着体からの剥離強度を大幅に低下させることができる。この性質を利用して、通常使用時における高い粘着力と、良好なリワーク性とを両立することができる。いくつかの態様において、水剥離粘着力低下率Bは、例えば50%以上であってよく、65%以上でもよく、75%以上でもよく、85%以上でもよく、90%以上でもよく、95%以上でもよく、97%以上でもよい。水剥離粘着力低下率Bは、原理上100%以下であり、典型的には100%未満である。
水剥離粘着力低下率Bは、式:
水剥離粘着力低下率B[%]=(1-(N2/N0))×100;
から求めることができる。式中、N0は常態粘着力N0[N/10mm]であり、N2は水剥離力N2[N/10mm]である。
【0137】
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、各種の用途に用いることができる。例えば、被着体の光学特性を損なうことなく水剥離による良好なリワーク性と十分な接着強度とを兼ね備えるという特長を活かして、例えば各種の携帯機器(ポータブル機器)、自動車、家電製品等を構成する光学部材に貼り付けられる態様で、該光学部材の固定、接合、成形、装飾、保護、支持等の用途に用いられ得る。上記光学部材の少なくとも表面を構成する材質は、例えば、アルカリガラス板や無アルカリガラス等のガラス;ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;アルミナ、シリカ等のセラミック材料;アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、透明ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。ここに開示される粘着シートは、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面や、亜鉛メッキ鋼板等のメッキ面に貼り付けられてもよい。被着体の好適例として、上述のようなガラス、上記セラミック材料、上記金属材料等の無機材料が挙げられる。ここに開示される粘着シートは、例えば、表面の少なくとも一部がこのような材料により構成されている光学部材と上記粘着シートとを含み、上記光学部材の表面に上記粘着シートの粘着面が接合された粘着シート付き光学部材の構成要素であり得る。
【0138】
ここに開示される技術における光学用途には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等が挙げられる。そのような用途に用いられる光学用粘着シートとして、ここに開示される粘着シートを好ましく用いることができる。
【0139】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば「偏光フィルム」は「偏光板」、「偏光シート」等を含むものとする。
【0140】
上記表示装置としては、例えば液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等が挙げられ、特に、フォルダブル表示装置や車載用の表示装置のように高価な部材を含む場合に、ここに開示される技術は好ましく適用される。また上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。
【0141】
上記光学部材としては、特に限定されず、例えばガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜等からなる部材(例えばシート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0142】
ここに開示される粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されず、例えば、(1)ここに開示される粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、支持体が光学部材(例えば光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように支持体として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される粘着シートが支持体を有するタイプの粘着シートであって、上記支持体として上記機能性フィルムを用いた場合には、粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
【0143】
<剥離方法>
また、この明細書によると、被着体に貼り付けられた粘着シートを該被着体から剥離する方法が提供される。その方法は、上記被着体からの上記粘着シートの剥離前線において上記被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、上記剥離前線の移動に追随して上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離する水剥離工程を含み得る。ここで剥離前線とは、被着体からの粘着シートの剥離を進行させる際に、上記被着体から上記粘着シートが離れ始める箇所を指す。上記水剥離工程によると、上記水性液体を有効に利用して被着体から粘着シートを剥離することができる。上記剥離方法は、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着シートを被着体から剥離する態様で好ましく実施され得る。
【0144】
上記剥離方法に使用する水性液体としては、水または水を主成分とする混合溶媒に、必要に応じて少量の添加剤を含有させたものを用いることができる。上記混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る低級アルコール(例えばエチルアルコール)や低級ケトン(例えばアセトン)等を使用し得る。上記添加剤としては、公知の界面活性剤等を用いることができる。被着体の汚染を避ける観点から、いくつかの態様において、添加剤を実質的に含有しない水性液体を好ましく使用し得る。環境衛生の観点から、水性液体として水を用いることが特に好ましい。水としては、特に制限されず、用途に応じて求められる純度や入手容易性等を考慮して、例えば蒸留水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
【0145】
いくつかの態様において、上記剥離方法は、例えば後述する水剥離力の測定と同様に、被着体に貼り付けられた粘着シートの外縁付近の被着体上に水性液体を供給し、その水性液体を上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく(すなわち、剥離開始前に被着体上に供給した水性液体のみを利用して)粘着シートの剥離を進行させる態様で好ましく行うことができる。なお、水剥離工程の途中で、剥離前線の移動に追随して粘着シートと被着体との界面に進入させる水が途中で枯渇するようであれば、該水剥離工程の開始後に断続的または連続的に水を追加供給してもよい。例えば被着体が吸水性を有する場合や、剥離後の被着体表面または粘着面に水性液体が残留しやすい場合において、水剥離工程の開始後に水を追加供給する態様を好ましく採用し得る。
【0146】
剥離開始前に供給する水性液体の量は、粘着シートの貼付け範囲外から該粘着シートと被着体との界面に上記水性液体を導入し得る量であればよく、特に限定されない。上記水性液体の量は、例えば5μL以上であってよく、通常は10μL以上が適当であり、20μL以上でもよい。また、上記水性液体の量の上限について特に制限はない。いくつかの態様において、作業性向上等の観点から、上記水性液体の量は、例えば10mL以下であってよく、5mL以下でもよく、1mL以下でもよく、0.5mL以下でもよく、0.1mL以下でもよく、0.05mL以下でもよい。上記水性液体の量を少なくすることにより、粘着シートの剥離後に上記水性液体を乾燥や拭き取り等により除去する操作を省略または簡略化し得る。
【0147】
剥離開始時に上記粘着シートの外縁から該粘着シートと上記被着体との界面に水性液体を進入させる操作は、例えば、粘着シートの外縁において上記界面にカッターナイフや針等の治具の先端を差し込む、粘着シートの外縁を鉤や爪等で引掻いて持ち上げる、強粘着性の粘着テープや吸盤等を粘着シートの外縁付近の背面に付着させて該粘着シートの端を持ち上げるなどの態様で行うことができる。このように粘着シートの外縁から上記界面に水性液体を強制的に進入させることにより、被着体と上記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態を効率よく形成することができる。また、水性液体を界面に強制的に進入させる操作を行って剥離のきっかけをつくった後における良好な水剥離性と、かかる操作を行わない場合における高い耐水信頼性とを、好適に両立することができる。
【0148】
上記剥離方法により剥離される粘着シートは、粘着剤層を含み、上記粘着剤層は化合物Aを含む粘着剤により構成されている。上記粘着シートは、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着シートであることが好ましい。したがって、上記剥離方法は、ここに開示されるいずれかの粘着シートの剥離方法として好適である。
【0149】
いくつかの態様に係る水剥離工程は、上記剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させる態様で好ましく実施され得る。剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させることは、例えば剥離角度180度の条件においては、粘着シートを20mm/分以上の引張速度で剥離することに相当する。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば25mm/分以上でもよく、50mm/分以上でもよく、150mm/分以上でもよく、300mm/分以上でもよく、500mm/分以上でもよい。ここに開示される剥離方法によると、上記水性液体の上記界面への進入を進行させつつ上記被着体から上記粘着シートを剥離することにより、このように比較的早い剥離速度であっても良好な水剥離性を発揮することができる。剥離前線を移動させる速度の上限は特に制限されない。上記剥離前線を移動させる速度は、例えば1000mm/分以下であり得る。
【0150】
ここに開示される剥離方法は、例えば、該方法に使用する水性液体(例えば水)の体積10μL当たりの粘着シートの剥離面積が、例えば50cm2以上、好ましくは100cm2以上となる態様で実施することができる。
【0151】
ここに開示される剥離方法は、例えば、ガラス板、金属板、樹脂板等のような非吸水性の平滑面に貼り付けられた粘着シートの剥離に好ましく適用され得る。また、ここに開示される剥離方法は、上述したいずれかの光学部材から粘着シートを剥離する方法として好ましく利用され得る。なかでも、アルカリガラスや無アルカリガラス等のガラス板に貼り付けられた粘着シートを剥離する方法として好適である。
【0152】
なお、この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1) アクリル系重合物を含む粘着剤組成物であって、
さらに、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含む、光学用粘着剤組成物。
(2) 前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合が20重量%未満である、上記(1)に記載の粘着剤組成物。
(3) 前記化合物Aの含有量は、前記アクリル系重合物100重量部に対して1重量部未満である、上記(1)または(2)に記載の粘着剤組成物。
(4) 前記アクリル系重合物の重量平均分子量が40×10
4以上である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(5) 光学用粘着剤組成物である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(6) 溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(7) 前記化合物Aは非イオン性界面活性剤である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(8) 前記化合物AのHLBは10以上である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(9) 前記アクリル系重合物を形成するモノマー成分は、
炭素原子数1~20のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
窒素原子を有するモノマーと、
を含む、上記(1)~(8)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(10) 前記窒素原子を有するモノマーは、一般式(1):
【化3】
(一般式(1)中、R
1は2価の有機基である。);
で表わされるN-ビニル環状アミド、および(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種または2種以上のモノマーである、上記(9)に記載の粘着剤組成物。
(11) 前記アクリル系重合物のSP値は18.0~23.0(MJ/m
3)
1/2である、上記(1)~(10)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(12) さらに剥離力上昇剤を含む、上記(1)~(11)のいずれかに記載の粘着剤組成物。
(13) 前記剥離力上昇剤は、アルコキシシリル基を有する化合物である、上記(12)に記載の粘着剤組成物。
【0153】
(14) 上記(1)~(13)のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する、光学用粘着シート。
(15) 前記粘着剤層の厚さは10μm以上200μm以下である、上記(14)に記載の粘着シート。
(16) 前記粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて23℃で30分放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN1が3N/cm以上である、上記(14)または(15)に記載の粘着シート。
(17) 前記粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて23℃で30分放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW1が1N/cm未満である、上記(14)~(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 前記粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN2が7N/cm以上である、上記(14)~(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) 前記粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW2が1N/cm未満である、上記(14)~(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 前記粘着シートの粘着面を被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW2が6N/cm以上である、上記(14)~(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(21) 水剥離粘着力低下率Aが60%以上である、上記(14)~(20)のいずれかに記載の粘着シート。
(22) 剥離力上昇率が20%以上である、上記(14)~(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(23) 加熱後水剥離粘着力低下率が80%以上である、上記(14)~(22)のいずれかに記載の粘着シート。
(24) ヘイズ値が0.7%未満である、上記(14)~(23)のいずれかに記載の粘着シート。
【0154】
(25) 粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着シートの粘着面を、被着体としてのアルカリガラス板に貼り付けて23℃で30分放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN1が2N/cm以上であり、
水剥離粘着力低下率Aが50%以上である、ここで水剥離粘着力低下率Aは、23℃、50%RHの測定環境下において、被着体としてのアルカリガラス板に前記粘着シートの粘着面を貼り付けて30分後、上記被着体に10μL~40μLの蒸留水を滴下し、該蒸留水を上記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237に基づいて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW1[N/cm]と、前記通常剥離力FN1[N/cm]とから、次式:(1-(FW1/FN1))×100;により算出される、粘着シート。
(26) 粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着シートは、被着体としてのフロート法で作製されたアルカリガラス板の、蒸留水に対する接触角が5度~10度である面に粘着面を貼り付けて室温1日後の粘着力(常態粘着力)N0が2.0N/10mm以上であり、かつ水剥離粘着力低下率Bが40%以上である、ここで水剥離粘着力低下率Bは、被着体としてのフロート法で作製されたアルカリガラス板の蒸留水に対する接触角が5度~10度である面に粘着面を貼り付けて室温1日後、上記被着体に20μLの蒸留水を滴下し、該蒸留水を上記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、JIS Z0237:2009の10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力N2[N/10mm]と、粘着力(常態粘着力)N0[N/10mm]とから、次式:(1-(N2/N0))×100;により算出される、粘着シート。
(27) 前記粘着シートの粘着面を前記被着体に貼り付けて23℃で30分放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN1が3N/cm以上である、上記(25)または(26)に記載の粘着シート。
(28) 前記粘着シートの粘着面を前記被着体に貼り付けて23℃で30分放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW1が1N/cm未満である、上記(25)~(27)のいずれかに記載の粘着シート。
(29) 前記粘着シートの粘着面を前記被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される通常剥離力FN2が7N/cm以上である、上記(25)~(28)のいずれかに記載の粘着シート。
(30) 前記粘着シートの粘着面を前記被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW2が1N/cm未満である、上記(25)~(29)のいずれかに記載の粘着シート。
(31) 前記粘着シートの粘着面を前記被着体に貼り付けて60℃で18時間放置した後に、前記被着体に1滴の水を滴下し、該水を前記粘着剤層と前記被着体との界面の一端に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で測定される水剥離力FW2が6N/cm以上である、上記(25)~(29)のいずれかに記載の粘着シート。
(32) 水剥離粘着力低下率Aが60%以上である、上記(25)~(31)のいずれかに記載の粘着シート。
(33) 剥離力上昇率が20%以上である、上記(25)~(32)のいずれかに記載の粘着シート。
(34) 加熱後水剥離粘着力低下率が80%以上である、上記(25)~(33)のいずれかに記載の粘着シート。
(35) ヘイズ値が0.7%未満である、上記(25)~(34)のいずれかに記載の粘着シート。
(36) 前記粘着剤層の厚さは10μm以上200μm以下である、上記(25)~(35)のいずれかに記載の粘着シート。
【0155】
(37) 上記(14)~(35)のいずれかに記載の粘着シートと、前記粘着シートの一方の表面に接合された光学部材と、を含む、粘着シート付き光学部材。
(38) 被着体に貼り付けられた粘着シートの剥離方法であって、
前記被着体からの前記粘着シートの剥離前線において前記被着体と前記粘着シートとの界面に水性液体が存在する状態で、前記剥離前線の移動に追随して前記水性液体の前記界面への進入を進行させつつ前記被着体から前記粘着シートを剥離する水剥離工程を含む、剥離方法。
(39) 上記粘着シートは、上記(14)~(36)のいずれかに記載の粘着シートである、上記(38)に記載の剥離方法。
(40) 上記水剥離工程では上記剥離前線を10mm/分以上の速度で移動させる、上記(38)または(39)に記載の剥離方法。
【実施例】
【0156】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0157】
<評価方法>
[23℃30分後通常剥離力の測定]
23℃、50%RHの測定環境下において、測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmのサイズにカットして試験片を作製する。同環境下にて、上記試験片の粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着する。被着体への試験片の貼付けは、該試験片の外周端から被着体の外周端までの距離が少なくとも1mm以上、好ましくは3mm以上となるように行う。これを同環境下に30分間放置した後、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで該試験片の長手方向の一端を被着体から剥離させ、JIS Z0237に準じて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。測定は3回行い、それらの平均値を23℃30分後通常剥離力[N/cm]とする。被着体としては、アルカリガラス板(松波硝子工業社製、厚さ1.35mm、青板縁磨品)を用いる。あるいは、松波硝子工業社製のアルカリガラス板の相当品を用いることができる。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」ミネベア社製)またはその相当品を用いることができる。剥離強度の測定は、被着体に貼り付けられた試験片の剥離が下から上に進行するように行う。また、被着体への貼り合わせ後に一部または全部の粘着剤層を光硬化させる貼付け態様が適用される粘着シートでは、被着体に貼り付けた後の試験片に対し、23℃、50%RHの環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行う。なお、測定対象が両面粘着シートの場合は、後述のように該両面粘着シートの一方の粘着面にPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、測定を実施することができる。
【0158】
[23℃30分後水剥離力の測定]
23℃、50%RHの測定環境下において、測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmのサイズにカットして試験片を作製する。同環境下にて、上記試験片の粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、試験片の長手方向の一端付近において該一端から露出する被着体表面に1滴(約10μL~約40μL)の蒸留水を滴下する。そして、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで上記水を上記界面に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく、JIS Z0237に準じて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。測定は3回行い、それらの平均値を23℃30分後水剥離力[N/cm]とする。被着体、引張試験機、その他の事項については、基本的に23℃30分後通常剥離力の測定と同様である。
【0159】
[60℃18時間後通常剥離力の測定]
23℃、50%RHの測定環境下において、測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmのサイズにカットして試験片を作製する。同環境下にて、上記試験片の粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着する。これを60℃の環境下に18時間放置した後、23℃、50%RHの環境下に30分放置し、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで該試験片の長手方向の一端を被着体から剥離させ、JIS Z0237に準じて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。測定は3回行い、それらの平均値を60℃18時間後通常剥離力[N/cm]とする。被着体、引張試験機、その他の事項については、基本的に23℃30分後通常剥離力の測定と同様である。
【0160】
[60℃18時間後水剥離力の測定]
23℃、50%RHの測定環境下において、測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmのサイズにカットして試験片を作製する。同環境下にて、上記試験片の粘着面を被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着する。これを60℃の環境下に18時間放置した後、23℃、50%RHの環境下に30分放置し、試験片の長手方向の一端付近において該一端から露出する被着体表面に1滴(約10μL~約40μL)の蒸留水を滴下する。そして、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで上記水を上記界面に進入させた後、新たな水の供給を行うことなく、JIS Z0237に準じて、引張試験機を用いて引張速度60mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。測定は3回行い、それらの平均値を60℃18時間後水剥離力[N/cm]とする。被着体、引張試験機、その他の事項については、基本的に23℃30分後通常剥離力の測定と同様である。
【0161】
[ヘイズ値]
粘着剤層(後述の実施例では厚さ50μmの粘着剤層)の粘着面をヘイズ値0.1%のアルカリガラスの片面に貼り付け、粘着剤層とアルカリガラスの積層体とした後、ヘイズメーター(「MR-100」、村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズ値を測定する。測定にあたっては、粘着剤層の貼り付けられたアルカリガラスを、該粘着剤層が光源側になるように配置する。アルカリガラスのヘイズ値が0.1%であるため、測定値から0.1%を引いた値を粘着剤層のヘイズ値[%]とする。
【0162】
[常態粘着力N0]
測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmの長方形状にカットして試験片を調製する。上記試験片の粘着面を被着体にハンドローラーで貼り合わせた評価用サンプルを、オートクレーブに投入し、圧力5atm、温度50℃の条件で15分間処理する。
オートクレーブから取り出した評価用サンプルを23℃、50%RHの環境に1日保持した後、同環境下において、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで該試験片の長手方向の一端を被着体から剥離させ、JIS Z0237:2009の「10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力」に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。
【0163】
[水剥離力N2]
測定対象の粘着シートを幅10mm、長さ120mmの長方形状にカットして試験片を調製する。上記試験片の粘着面を被着体にハンドローラーで貼り合わせた評価用サンプルを、オートクレーブに投入し、圧力5atm、温度50℃の条件で15分間処理する。
オートクレーブから取り出した評価用サンプルを23℃、50%RHの環境に1日保持した後、同環境下において、試験片の長手方向の一端付近において該一端から露出する被着体表面に20μLの蒸留水を滴下する。そして、試験片と被着体との界面にカッターナイフを差し込んで上記水を上記界面に進入させた後、JIS Z0237:2009の「10.4.1 方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力」に従い、具体的には、試験温度23℃にて引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で剥離強度を測定する。なお、水剥離力N2の測定において使用する水は、剥離開始前に被着体に滴下する20μLの蒸留水のみである。
【0164】
上述した常態粘着力N0および水剥離力N2の測定において、被着体としては、フロート法で作製したアルカリガラス板であって、試験片を貼り合わせる面の蒸留水に対する接触角が5度~10度であるものを使用する。例えば、松波硝子工業社製のアルカリガラス板(厚さ1.35mm、青板縁磨品)またはその相当品を被着体として用いることができる。被着体への試験片の貼付けは、該試験片の外周端から被着体の外周端までの距離が少なくとも10mm以上、好ましくは15mm以上となるように行う。光架橋性の粘着剤層を含む粘着シートでは、上記オートクレーブから取り出したサンプルに対し、23℃、50%RHの環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行い、その後に剥離強度を測定する。光照射の条件(波長、照射強度、照射時間等)は、粘着剤層の組成や厚み等に応じて適宜設定される(例えば後述の条件)。また、引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」ミネベア社製)またはその相当品を用いることができる。剥離強度の測定は、被着体に貼り付けられた試験片の剥離が下から上に進行するように行う。測定にあたっては、必要に応じて粘着シートの背面(測定対象の粘着面とは反対側の表面)に適当な裏打ち材を貼り付けて試験片を補強することができる。裏打ち材としては、例えば、厚さ25μm程度のPETフィルムを用いることができる。
【0165】
なお、上記アルカリガラス板の接触角は、次のとおり測定する。すなわち、測定雰囲気23℃、50%RHの環境下において、接触角計(協和界面科学株式会社製、商品名「DMo-501型」、コントロールボックス「DMC-2」、制御・解析ソフト「FAMAS(バージョン5.0.30)」)を用いて液滴法により測定を行う。蒸留水の滴下量は2μLとし、滴下5秒後の画像からΘ/2法により接触角を算出する(N5で実施)。
【0166】
常態粘着力N0および水剥離力N2の測定に関するその他の事項については、基本的に23℃30分後通常剥離力の測定に準じることとする。同様に、23℃30分後通常剥離力の測定に関して記載のない事項については、常態粘着力N0および水剥離力N2の測定方法の記載内容が適宜参照される。
【0167】
<例1>
(粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)64.5部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)6部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)9.6部、イソステアリルアクリレート(iSTA)5部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)14.9部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.07部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが60万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。
【0168】
上記で得られた溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業社製)0.33部、化合物Aとして非イオン性界面活性剤A(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB13.3、商品名:レオドールTW-L106、花王社製)0.1部、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、タケネートD-110N、固形分濃度75質量%)を固形分基準で0.09部、アクリル系オリゴマー0.4部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.02部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3部、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)2.7部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.22部を加え、均一に混合して溶剤型粘着剤組成物を調製した。
【0169】
上記アクリル系オリゴマーとしては、以下の方法で合成したものを使用した。
[アクリル系オリゴマーの合成]
トルエン100部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)(商品名:FA-513M、日立化成工業社製)60部、メチルメタクリレート(MMA)40部、および連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5部を4つ口フラスコに投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間攪拌した後、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入し、70℃で2時間反応させ、続いて80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去することにより、固形状のアクリル系オリゴマーを得た。このアクリル系オリゴマーのTgは144℃であり、Mwは4300であった。
【0170】
(粘着シートの作製)
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR1(三菱樹脂社製、MRF#38)に、上記で得た粘着剤組成物を塗布し、135℃で2分間乾燥させて、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、50μmのPETフィルムを貼り合わせることにより、PETフィルム(裏打ちフィルム)と粘着剤層(支持体レス両面粘着シート)と剥離フィルムR1とがこの順に積層した積層シートを得た。本例の粘着シートの被着体への貼付面は剥離フィルムR1より保護されている。
【0171】
<例2>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Aに替えて非イオン性界面活性剤B(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、HLB10.0、商品名:レオドールTW-O106V、花王社製)を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0172】
<例3>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Aに替えて非イオン性界面活性剤C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB9.7、商品名:エマルゲン105、花王社製)を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0173】
<例4>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Aに替えて非イオン性界面活性剤D(ソルビタンモノラウレート、HLB8.6、商品名:レオドールSP-L10、花王社製)を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0174】
<例5>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Aに替えて非イオン性界面活性剤E(ソルビタンモノオレエート、HLB4.3、商品名:レオドールSP-O10V、花王社製)を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0175】
<例6>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Aに替えてアニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、商品名:エマール10G、花王社製)を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0176】
<例7>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤A0.1部に替えて非イオン性界面活性剤F(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB12.1、商品名:エマルゲン108、花王社製)0.05部を用いた他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0177】
<例8>
非イオン性界面活性剤Aの使用量を、モノマー成分100部あたり2部に変更した他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0178】
<例9>
非イオン性界面活性剤Dの使用量を、モノマー成分100部あたり2部に変更した他は例4と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0179】
<例10>
化合物Aを使用しなかった他は例1と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0180】
<例11>
(粘着剤組成物の調製)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、NVP、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)およびイソボルニルアクリレート(IBXA)を80/35/5/30の重量比で含むモノマー混合物100部を、光重合開始剤としての商品名:イルガキュア651(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.05部および商品名:イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.05部ととともに4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して光重合させることにより、上記モノマー混合物の部分重合物を含むモノマーシロップを調製した。
このモノマーシロップ100部に、化合物Aとして非イオン性界面活性剤G(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB16.7、商品名:レオドールTW-L120、花王社製)0.15部を添加し、さらに1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.13部および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、チバスペシャルティケミカルズ社製)0.33部を添加し、均一に混合して、紫外線硬化型粘着剤組成物を調製した。
【0181】
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR1(三菱樹脂社製、MRF#38)に、上記で得た粘着剤組成物を塗布し、ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR2(三菱樹脂社製、MRE#38)を被せて空気を遮断し、紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層を覆う剥離フィルムR2を剥がし、厚さ50μmのPETフィルムを貼り合わせることにより、PETフィルム(裏打ちフィルム)と粘着剤層(支持体レス両面粘着シート)と剥離フィルムR1とがこの順に積層した積層シートを得た。本例の粘着シートの被着体への貼付面は剥離フィルムR1より保護されている。
【0182】
<例12~例14>
非イオン性界面活性剤Gの使用量を、モノマーシロップ100部あたり0.25部(例12)、0.5部(例13)または1.0部(例14)に変更した他は例11と同様にして各例に係る粘着剤組成物を調製し、各例に係る粘着シートを得た。
【0183】
<例15>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Gに替えてPEG400(ポリエチレングリコール、平均分子量360~440)を用いた他は例12と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0184】
<例16および例17>
PEG400の使用量を、モノマーシロップ100部あたり0.5部(例16)または1.0部(例17)に変更した他は例15と同様にして各例に係る粘着剤組成物を調製し、各例に係る粘着シートを得た。
【0185】
<例18>
化合物Aを使用しなかった他は例11と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0186】
<例19>
例1と同様の方法で調製したアクリル系ポリマー含有溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、化合物Aとして非イオン性界面活性剤G(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB16.7、商品名:レオドールTW-L120、花王社製)0.1部、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、タケネートD-110N、固形分濃度75質量%)を固形分基準で0.09部、アクリル系オリゴマー(例1で使用したアクリル系オリゴマーと同じもの)0.4部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.02部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3部、多官能モノマーとしてDPHA2.7部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.22部を加え、均一に混合して溶剤型粘着剤組成物を調製した。
上記溶剤型粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、PETフィルム(裏打ちフィルム)と、厚さ50μmの粘着剤層(支持体レス両面粘着シート)と、剥離フィルムR1とがこの順に積層した積層シートを得た。
【0187】
<例20>
非イオン性界面活性剤Gの使用量を、モノマー成分100部あたり0.3部に変更した他は例19と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0188】
<例21>
化合物Aとして、非イオン性界面活性剤Gに替えて非イオン性界面活性剤H(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB15.3、商品名:エマルゲン120、花王社製)を用いた他は例20と同様にして粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0189】
<例22>
(粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてBA64.5部、CHA6部、NVP18部、iSTA5部および4HBA14.9部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール0.07部、重合溶媒として酢酸エチル122部を仕込み、熱重合開始剤としてAIBN0.2部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが60万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。
上記で得られた溶液に、該溶液の調製に使用したモノマー成分100部あたり、化合物Aとして非イオン性界面活性剤G(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB16.7、商品名:レオドールTW-L120、花王社製)0.1部、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、タケネートD-110N、固形分濃度75質量%)を固形分基準で0.09部、アクリル系オリゴマー(例1で使用したアクリル系オリゴマーと同じもの)0.4部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1)0.02部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン3部、多官能モノマーとしてDPHA2.7部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.22部を加え、均一に混合して溶剤型粘着剤組成物を調製した。
上記溶剤型粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、PETフィルム(裏打ちフィルム)と、厚さ50μmの粘着剤層(支持体レス両面粘着シート)と、剥離フィルムR1とがこの順に積層した積層シートを得た。
【0190】
<例23>
非イオン性界面活性剤Gの使用量を、モノマー成分100部あたり0.3部に変更した他は例22と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、本例に係る粘着シートを得た。
【0191】
<例24>
BA、CHA、4HBAを70/13/18の重量比で含むモノマー混合物100部を、光重合開始剤としての商品名:イルガキュア651(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.05部および商品名:イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.05部ととともに4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して光重合させることにより、上記モノマー混合物の部分重合物を含むモノマーシロップを調製した。このモノマーシロップ100部に、HEA9部および4HBA8部、多官能モノマーとしてDPHA0.1部、非イオン性界面活性剤G(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、HLB16.7、商品名:レオドールTW-L120、花王社製)0.1部を添加し、均一に混合して紫外線硬化型粘着剤組成物を調製した。
上記紫外線硬化型粘着剤組成物を用いた他は例11と同様にして、PETフィルム(裏打ちフィルム)と、厚さ50μmの粘着剤層(支持体レス両面粘着シート)と、剥離フィルムR1とがこの順に積層した積層シートを得た。
【0192】
<例25~例26>
非イオン性界面活性剤Gの使用量を、モノマーシロップ100部あたり0.3部(例25)または0.5部(例26)に変更した他は例24と同様にして各例に係る粘着剤組成物を調製し、各例に係る粘着シートを得た。
【0193】
<性能評価>
得られた粘着シートについて、23℃30分後における通常剥離力[N/cm]および水剥離力[N/cm]、ならびに60℃18時間後における通常剥離力[N/cm]および水剥離力[N/cm]を測定した。結果を表1~表4に示した。表3,4中、例1~10に係る溶剤型粘着剤との基本組成の違いを特定する目的で、例19~21に係る溶剤型粘着剤を「溶剤型B」と記載し、例22~23に係る溶剤型粘着剤を「溶剤型C」と記載する(その関係から、例1~10に係る溶剤型粘着剤は「溶剤型A」ともいう。)。同様に、例11~18に係る光硬化型粘着剤との基本組成の違いを特定する目的で、例24~26に係る光硬化型粘着剤を「光硬化型B」と記載する(その関係から、例11~18に係る光硬化型粘着剤は「光硬化型A」ともいう。)。
また、得られた粘着シートについて、常態粘着力N0[N/10mm]および水剥離力N2[N/10mm]を測定した。
なお、例1~23については、すべての剥離力測定は、被着体であるアルカリガラス板に粘着シートを上記の方法で貼り付け、23℃、50%RHの環境下で上記アルカリガラス板を介して光照射を行った後、上記の方法で実施した。より詳しくは、粘着シートの被着体への貼付け後、高圧水銀ランプ(300mW/cm2)を用いて積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射することにより、例1~23に係る粘着シートに含まれる粘着剤層を光硬化させ、その後、剥離力測定を実施した。例24~26については、粘着シートの被着体への貼付け後、上記貼り合わせ後の光照射は行わず、剥離力測定を実施した。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
表1に示されるように、界面活性剤およびポリオキシアルキレン骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種の化合物Aを含まない溶剤型粘着剤を用いた例10では、23℃30分後の水剥離力が1.4N/cmであったのに対し、化合物Aを含む溶剤型粘着剤を用いた例1~9では、23℃30分後の水剥離力が1.3N/cm未満を示した。化合物Aの含有により、水剥離力の改善が認められた。なかでも、化合物Aとして非イオン性界面活性剤A,BまたはFを用いた例1,例2および例7では、23℃30分後の水剥離力が1.0N/cm未満という優れた結果が得られた。これらの非イオン性界面活性剤は、比較的高いHLB(具体的にはHLB10以上)を有していたためと考えられる。また、例1~7では、23℃30分後の通常剥離力が凡そ4N/cm以上であり、良好な接着力を有していた一方、化合物Aを2部に増量した例8,9では、水剥離力は低下傾向であったが、上記通常剥離力の低下が認められた。例8,9では、ヘイズ値が上昇する傾向も認められた。なお、例1~10では、剥離力上昇剤を含み、60℃18時間後の通常剥離力は23℃30分後に対して有意に(凡そ2倍以上に)上昇した。
【0199】
より優れた水剥離性が、表2に示される光硬化型粘着剤において認められた。具体的には、化合物Aを用いた光硬化型粘着剤を用いた例11~17では、23℃30分後の水剥離力が1.0N/cm未満であり、化合物Aを用いなかった例18(水剥離力3.7N/cm)と比べて優れた水剥離性を示した。また、化合物Aの使用量が1部未満であった例11~13、例15~16では、23℃30分後の通常剥離力が凡そ4N/cm以上であり、高い接着力を有していた一方、化合物Aを1部に増量した例14,17では、上記通常剥離力の低下が認められた(4N/cm未満)。また、これら光硬化型では、60℃18時間後の通常剥離力は23℃30分後よりも上昇した一方で、水剥離力については60℃18時間後においても23℃30分後と比べて遜色ない易剥離性を示した。
【0200】
表3に示されるように、高いHLBを有する化合物Aを含む溶剤型粘着剤を用いた例19~23において、より優れた水剥離性が確認された。これらの例では、23℃30分後の通常剥離力も例1~9よりも高い傾向を示した。また、これらの例では、剥離力上昇剤は用いられておらず、60℃18時間後の通常剥離力の上昇は抑制されており、また60℃18時間後も優れた水剥離性を維持した。なかでも、例22~23では、23℃30分後、60℃18時間後ともに高い通常剥離力を示した一方で、水剥離性は維持されていた。光硬化型粘着剤を用いた例24~26についても、表4に示すように、良好な通常剥離力を有するとともに、優れた水剥離性が得られた。これらの例でも、剥離力上昇剤は用いられておらず、60℃18時間後の通常剥離力の上昇は抑制されており、また60℃18時間後も良好な水剥離性を示した。
【0201】
なお、表中には示さなかったが、例1~9、例11~17、例19~26に係る粘着シートは、常態粘着力N0が2.0N/10mm以上であり、かつ、水剥離粘着力低下率Bが40%以上であることを満足した。上記水剥離粘着力低下率Bは、水剥離力N2[N/10mm]と、常態粘着力N0[N/10mm]とから、次式:(1-(N2/N0))×100;により算出した値である。上記実施例においては、通常の剥離力および水剥離力ともに、引張速度300mm/分の測定値(常態粘着力N0および水剥離力N2)の方が、引張速度60mm/分の測定値(23℃30分後の通常剥離力および水剥離力)よりも高い値となる。この傾向は、粘着剤の一般的傾向である。
【0202】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0203】
1,2 粘着シート
10 粘着剤層
10A 一方の表面(粘着面)
10B 他方の表面
20 支持体
20A 第一面
20B 第二面(背面)
30,31,32 剥離ライナー
50 剥離ライナー付き粘着シート
70 光学部材
100 粘着シート付き部材