(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6592 20060101AFI20240924BHJP
C08F 4/02 20060101ALI20240924BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F4/02
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2020010632
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019011114
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭行
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽一
(72)【発明者】
【氏名】恵比澤 郁子
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 浩志
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-508204(JP,A)
【文献】特開2007-063409(JP,A)
【文献】特開2012-007171(JP,A)
【文献】特表2001-516776(JP,A)
【文献】特開平11-071420(JP,A)
【文献】特表2002-521500(JP,A)
【文献】特開2014-224188(JP,A)
【文献】特表2015-520276(JP,A)
【文献】米国特許第10000595(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/6592
C08F 4/02
C08F 10/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)および下記固体状担体(S)を含んでなるオレフィン重合用触媒。
成分(A):下記一般式[1]または[2]で表される遷移金属化合物。
【化1】
【化2】
(一般式[1]および[2]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系二価誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Cpは、置換基を有していてもよい、シクロペンタジエニル型配位子であり、相互に隣接した置換基は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
Lは、周期表第15族および16族元素から選ばれる原子であり、
Pは、リン原子であり、
実線は共有結合または配位結合であり、点線はLが15族元素の原子である場合に存在する共有結合であり、
yは、Lが15族元素の原子である場合は2であり、Lが16族元素の原子である場合は3であり、
zは、Lが15族元素の原子である場合は3であり、Lが16族元素の原子である場合4であり、
Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、相互に隣接したRは、互いに結合して置換基を有していてもよい環またはビシクロ環を形成してもよい。)
固体状担体(S):固体状アルミノキサン化合物。
【請求項2】
前記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径が0.01~50000μmであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
前記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径が1~1000μmであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
前記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径が1~200μmであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
前記Lが、周期表15族元素の原子であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
前記Mがチタン原子であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のオレフィン重合触媒の存在下にオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合用触媒に関し、詳しくは、重合時のファウリング等を起こすことなくオレフィン(共)重合体を製造することができるオレフィン重合用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン(共)重合体の製造に用いられる触媒として、ジルコノセンなどの遷移金属化合物と、アルミノキサン(有機アルミニウムオキシ化合物)などの助触媒成分とからなるオレフィン重合用触媒が知られている。
【0003】
特に、スラリー重合又は気相重合を行う場合には、生成する重合体のパウダー性状を良化させることや重合時のファウリング(重合器壁への付着)を防止することを目的として、遷移金属化合物やアルミノキサンをシリカゲルなどの固体状担体に担持させた固体触媒成分を用いることが一般的に知られている。(非特許文献1)
【0004】
固体状担体は、使用する遷移金属化合物や製造プロセスなどに応じて適切に選択する必要があり、またコスト低減や重合体中の金属残渣低減のためには、より高い重合活性が求められることから、数多くの固体状担体および固体触媒成分の製造方法が提案されている。(特許文献1~5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-179721号公報
【文献】特開2003-327611号公報
【文献】特開2004-091498号公報
【文献】特開2009-001829号公報
【文献】国際公開第2014/123212号
【文献】国際公開第2009/063084号
【文献】特表2016/534165号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Chem.Rev.2005,105,p.4073-4147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
中でも、シクロペンタジエニル配位子および15族元素を含む配位子を有する遷移金属化合物(ハーフメタロセン)が、例えば135℃デカリン中での極限粘度([η])が5dl/gを超えるような超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の製造に適していることが開示されているが(特許文献6,7)、本発明者らが検討したところ、シクロペンタジエニル配位子および15族および16族元素から選ばれる原子を含む配位子を有する遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル配位子のみからなる遷移金属化合物よりもスラリー重合時のファウリングが発生しやすいという知見に至った。
【0008】
また前記の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、他の一般的なポリエチレンとは異なり重合パウダーのまま使用される用途が多く、より粒径が小さく、凝集のないパウダーであることが望ましいが、ファウリングやパウダー凝集の観点においては、粒径が小さいほど左記の現象が起こり易い傾向がある。
【0009】
本発明は、重合時のファウリング等を起こすことなくオレフィン(共)重合体を製造することができるオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、シクロペンタジエニル配位子および15族または16族元素を含む配位子を有する遷移金属化合物と固体状担体として固体状アルミノキサン化合物とを有する固体触媒成分が、ファウリング防止に非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 下記成分(A)および下記固体状担体(S)を含んでなるオレフィン重合用触媒。
成分(A):下記一般式[1]または[2]で表される遷移金属化合物。
【0011】
【0012】
【化2】
(一般式[1]および[2]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系二価誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Cpは、置換基を有していてもよい、シクロペンタジエニル型配位子であり、相互に隣接した置換基は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
Lは、周期表第15族および16族元素から選ばれる原子であり、
Pは、リン原子であり、
実線は共有結合または配位結合であり、点線はLが15族元素の原子である場合に存在する共有結合であり
yは、Lが15族元素の原子である場合は2であり、Lが16族元素の原子である場合は3であり
zは、Lが15族元素の原子である場合は3であり、Lが16族元素の原子である場合4であり、
Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、相互に隣接したRは、互いに結合して置換基を有していてもよい環またはビシクロ環を形成してもよい。)
固体状担体(S):固体状アルミノキサン化合物。
[2] 前記Lが、周期表15族元素の原子であることを特徴とする[1]に記載のオレフィン重合用触媒。
[3] 前記Mがチタン原子であることを特徴とする[1]に記載のオレフィン重合用触媒。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン重合触媒の存在下にオレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のオレフィン重合用触媒は、重合時のファウリング等を起こすことなくオレフィン(共)重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記成分(A)および固体状担体(S)を含んでなる。
<成分(A)>
成分(A)は、下記一般式[1]または[2]で表される遷移金属化合物(以下、遷移金属化合物(A)ともいう)である。
【0015】
【0016】
【化4】
前記式[1]および[2]において、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはチタン原子である。
【0017】
nは、Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、該アニオン配位子が、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系二価誘導体基である。nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0018】
Cpは、置換基を有していてもよい、シクロペンタジエニル型配位子である。前記置換基のうち、相互に隣接した置換基は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよい。
【0019】
Lは、周期表第15族および16族元素から選ばれる原子である。
Pは、リン原子である。
実線は共有結合または配位結合であり、点線はLが15族元素の場合に存在する共有結合である。
【0020】
yは、Lが15族元素の原子である場合は2であり、Lが16族元素の原子である場合は3である。
zは、Lが15族元素の原子である場合は3であり、Lが16族元素の原子である場合4である。
【0021】
Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。相互に隣接したRは、互いに結合して置換基を有していてもよい環またはビシクロ環を形成してもよい。
【0022】
前記の通りLは、15族および16族元素から選ばれる原子である。好ましくは、Lは15族元素の原子である。この場合、y=2、z=3である。
以下、特にLが15族元素の原子である場合の成分(A)の例を紹介する。このような成分(A)として下記式[3]または[4]で表される化合物を挙げることができる。
【0023】
【0024】
【化6】
前記式[3]および[4]において、Mは周期表第4族遷移金属原子であり、具体的にはチタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子であり、好ましくはチタン原子である。
【0025】
前記式[3]および[4]において、nは、前記遷移金属Mの価数を満たす1~4の整数であり、好ましくは1または2である。
前記式[3]および[4]において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。
【0026】
Xは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基または共役ジエン系誘導体基である。
nが2以上の場合は、複数存在するXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、前記環が複数存在する場合には、前記環は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる、好ましくは塩素または臭素である。
前記炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基; ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)などの芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの芳香族置換基
が挙げられる。
【0028】
前記炭化水素基の中でも、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が好ましい。
【0029】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ヘキサクロロアンチモン酸アニオンが挙げられる。
前記ハロゲン含有基の中でも、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0030】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられる。
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
【0031】
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンが挙げられる。
前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基が好ましい。
【0032】
前記硫黄含有基としては、例えば、メシル基(メタンスルフォニル基)、フェニルスルホニル基、トシル基(p-トルエンスルホニル基)、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホニル基)、ノナフリル基(ノナフルオロブタンスルホニル基)、メシラート基(メタンスルホナート基)、トシラート基(p-トルエンスルホナート基)、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)、ノナフラート基(ノナフルオロブタンスルホナート基)が挙げられる。
前記硫黄含有基の中でも、トリフラート(トリフルオロメタンスルホナート)が好ましい。
【0033】
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基などが挙げられる。
前記窒素含有基の中でも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基が好ましい。
【0034】
前記リン含有基としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸アニオンが挙げられる。
前記ホウ素含有基としては、例えば、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、(メチル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、(ベンジル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、テトラキス((3,5-ビストリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸アニオン、BR4(Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す。)で表される基が挙げられる。
【0035】
前記アルミニウム含有基としては、例えば、
【0036】
【0037】
【化8】
で表される四員環
(Mは、前記一般式[3]または[4]中のMを表す。)
を形成可能な、AlR
4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)で表される基が挙げられる。
【0038】
前記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基など、メタロシクロペンテン基が挙げられる。
【0039】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのアミン類、ピリジン、ピコリン、ルチジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、チオフェンなどの複素環式化合物、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィンなどの有機リン化合物が挙げられる。
【0040】
前記式[3]および[4]において、Cpは、置換基を有していてもよい、シクロペンタジエニル型配位子であり、前記置換基は、隣接した他の置換基と、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよい。前記シクロペンタジエニル型配位子は、π型結合によって金属に結合している5員環炭素環を有する置換配位子であり、置換シクロペンタジエニル配位子、置換テトラヒドロインデニル配位子、置換オクタヒドロフルオレニル配位子、置換ヒドロアズレニル配位子、置換ペンタヒドロアズレニル配位子、置換ジヒドロシクロペンテノアニュレン配位子、置換シクロペンテノピロール配位子、置換シクロペンテノチオフェン配位子および置換シクロペンテノジチオフェン配位子等の置換シクロペンタジエニル型配位子、置換インデニル配位子、置換テトラヒドロインデニル配位子、置換ベンゾインデニル配位子、置換ジヒドロインダセニル配位子、置換インデノピロール配位子、置換インデノインドール配位子および置換インデノチオフェン等の置換インデニル型配位子、ならびに置換フルオレニル配位子等を含む。シクロペンタジエニル型配位子としては、置換シクロペンタジエニル型配位子および置換インデニル型配位子が好ましく、より好ましくは、置換シクロペンタジエニル配位子、置換ジヒドロシクロペンテノアニュレン配位子、置換シクロペンテノチオフェン配位子、置換シクロペンテノジチオフェン配位子、置換インデニル配位子である。
【0041】
前記式[3]および[4]において、Nは窒素原子であり、前記式[4]においてPはリン原子である。
前記式[3]におけるR1およびR2、式[4]におけるR1~R3、ならびにシクロペンタジエニル型配位子の置換基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基である。R1~R3は、好ましくは、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有基または炭素数1~20の窒素含有基であり、より好ましくは、炭素数1~20の炭化水素基または炭素数1~20の窒素含有基である。R1~R3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0042】
前記炭素数1~40の炭化水素基としては、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられ、より具体的な例としては、上述したXの例として挙げられた炭化水素基の具体例が挙げられる。
【0043】
前記炭素数1~40の炭化水素基は、好ましくは、炭素数1~20の炭化水素基(但し、芳香族炭化水素基を除く)または炭素数6~40の芳香族炭化水素基である。前記の炭素数1~20の炭化水素基は、好ましくは炭素数1~20の脂肪族または脂環族の炭化水素基である。炭素数1~20の炭化水素基には、アリールアルキル基の様な芳香族構造を有する置換基も含まれる。
【0044】
前記炭素数1~40の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デカニル基、1-ウンデカニル基、1-ドデカニル基、1-エイコサニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、シアミル基、ペンタン-3-イル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基(2-メチルペンタン-2-イル基)、3-メチルペンタン-2-イル基、4-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、3,3-ジメチルブタ-2-イル基、ヘキサン-3-イル基、2-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,3,3-トリメチルブタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基などの炭素原子数1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基、iso-プロペニル基、アレニル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基、2-メチル-ブタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-エン-2-イル基、ペンタ-1-エン-3-イル基、ペンタ-2,4-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、iso-プレニル基(2-メチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基)、ペンタ-2,4-ジエン-2-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、4-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-2-イル基、4-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-2-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、3-エチルペンタ-1-エン-3-イル基、ヘキサ-3,5-ジエン-1-イル基、ヘキサ-2,4-ジエン-1-イル基、4-メチルペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基、ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基などの炭素原子数2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-2-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-2-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-3-イン-2-イル基、2,2-ジメチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基などの炭素原子数2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基、クミル基(2-フェニルプロパン-2-イル基)、2-(4-メチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、3-フェニルペンタン-3-イル基、4-フェニルヘプタ-1,6-ジエン-4-イル基、1,2,3-トリフェニルプロパン-2-イル基、1,1-ジフェニルエチル基、1,1-ジフェニルプロピル基、1,1-ジフェニル-ブタ-3-エン-1-イル基、1,1,2-トリフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、トリ-(4-メチルフェニル)メチル基、2-フェニルエチル基、スチリル基(2-フェニルビニル基)、2-(2-メチルフェニル)エチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基(3-フェニルアリル基)、ネオフィル基(2-メチル-2-フェニルプロピル基)、3-メチル-3-フェニルブチル基、2-メチル-4-フェニルブタン-2-イル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)プロパン-2-イル基、(テトラヒドロ-1-インダセニル)ジフェニルメチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)エチル基、2-(1-ベンゾインデニル)プロパン-2-イル基、(1-ベンゾインデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-ベンゾインデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基、2-(1-アズレニル)プロパン-2-イル基、(1-アズレニル)ジフェニルメチル基、2-(1-アズレニル)エチル基などの炭素原子数7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、n-ブチル-メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロオクタトリエニル基、1-メチルシクロオクチル基、シクロドデシル基、1-アリルシクロオクチル基、1-ベンジルシクロオクチル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、7-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、1-(2-メチルアダマンチル)、1-(3-メチルアダマンチル)、1-(4-メチルアダマンチル)、1-(2-フェニルアダマンチル)、1-(3-フェニルアダマンチル)、1-(4-フェニルアダマンチル)、1-(3,5-ジメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリフェニルアダマンチル)、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基、インダセニル基、テトラヒドロインダセニル基、ベンゾインデニル基、アズレニル基などの炭素原子数3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、(ブタ-3-エン-1-イル)フェニル基、(ブタ-2-エン-1-イル)フェニル基、メタリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、3,5-ジ-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基などの炭素原子数が6~40の芳香族置換基
などが挙げられる。
【0045】
前記炭素原子数1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ペンタン-3-イル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基などが好ましく、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基がより好ましい。
【0046】
前記炭素原子数2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基の中でも、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、メタリル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基などが好ましく、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基がより好ましい。
【0047】
前記炭素原子数2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基の中でも、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基などが好ましく、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基がより好ましい。
【0048】
前記炭素原子数7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基の中でも、ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、スチリル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、ネオフィル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基などが好ましく、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基がより好ましい。
【0049】
前記炭素原子数3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基の中でも、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロドデシル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基などが好ましく、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、1-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1-アダマンチル基がより好ましい。
【0050】
前記炭素原子数6~40の芳香族置換基の中でも、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基などが好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基がより好ましい。
【0051】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ドデカフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビストリフルオロメトキシフェニル基、トリフルオロメチルチオフェニル基、ビストリフルオロメチルチオフェニル基、フルオロビフェニル基、ジフルオロビフェニル基、トリフルオロビフェニル基、テトラフルオロビフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、ジ-tert-ブチル-フルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシビフェニル基、ビストリフルオロメトキシビフェニル基、トリフルオロメチルジメチルシリル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、フルオロフェノキシ基、ジフルオロフェノキシ基、トリフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェノキシ基、トリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、トリフルオロメトキシフェノキシ基、ビストリフルオロメトキシフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニルイミノメチル基、トリフルオロメチルチオ基、などが挙げられる。
【0052】
前記ハロゲン含有基の中でも、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、トリフルオロメチルチオ基が好ましく、トリフルオロメチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基がより好ましい。
【0053】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(シクロペンタジエニル)シリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(インデニル)シリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(フルオレニル)シリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-tert-ブチルジフェニルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、4-トリス(トリメチルシリル)シリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが挙げられる。
【0054】
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基などが好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基がより好ましい。
【0055】
前記酸素含有基としては、炭素数1~20の酸素含有基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、iso-プロポキシフェノキシ基、アリルオキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、メトキシメチル基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、アリルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、アリルオキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェノキシプロピル基、メトキシビニル基、アリルオキシビニル基、ベンジルオキシビニル基、フェノキシビニル基、メトキシアリル基、アリルオキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジ-iso-プロポキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基などが挙げられる。
【0056】
前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等などが好ましく、メトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基がより好ましい。
【0057】
前記窒素含有基としては、炭素数1~20の窒素含有基が好ましく、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-iso-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-iso-ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジデシルミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、アゼピニル基、アダマンチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、ジベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジルアミノメチル基、ベンジルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノビニル基、ベンジルアミノビニル基、ピロリジニルビニル基、ジメチルアミノプロピル基、ベンジルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ベンジルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピペリジニルフェニル基、モルフォリルフェニル基、ピロリルフェニル基、ピリジルフェニル基、キノリルフェニル基、イソキノリルフェニル基、インドリニルフェニル基、インドリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、メチルピロリル基、フェニルピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられる。
【0058】
前記窒素含有基の中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-iso-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-iso-ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、アリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、アダマンチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、ベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピペリジニルフェニル基、モルフォリルフェニル基、ピロリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基などが好ましく、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-iso-プロピルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピペリジニルフェニル基、モルフォリルフェニル基、ピロリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基がより好ましい。
【0059】
前記硫黄含有基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、メチルチオメチル基、ベンジルチオメチル基、フェニルチオメチル基、ナフチルチオメチル基、メチルチオエチル基、ベンジルチオエチル基、フェニルチオエチル基、ナフチルチオエチル基、メチルチオビニル基、ベンジルチオビニル基、フェニルチオビニル基、ナフチルチオビニル基、メチルチオプロピル基、ベンジルチオプロピル基、フェニルチオプロピル基、ナフチルチオプロピル基、メチルチオアリル基、ベンジルチオアリル基、フェニルチオアリル基、ナフチルチオアリル基、メルカプトフェニル基、メチルチオフェニル基、チエニルフェニル基、メチルチエニルフェニル基、ベンゾチエニルフェニル基、ジベンゾチエニルフェニル基、ベンゾジチエニルフェニル基、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、ジチオラニル基、ジチアニル基、オキサチオラニル基、オキサチアニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリジニル基などが挙げられる。
【0060】
前記硫黄含有基の中でも、チエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0061】
前記式[3]におけるR1およびR2同士は、互いに結合して置換基を有していてもよい単環またはビシクロ環を形成してもよい。この場合に形成される環は、イミン炭素原子を含む置換基を有していてもよい4~8員環の飽和または不飽和炭化水素環あるいはヘテロ環として環を形成することが好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは5又は6員環であり、この場合、イミン炭素原子と併せた構造として、例えば、置換シクロペンタン環、置換シクロヘキサン環、置換シクロヘプタン環、置換ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、置換ビシクロ[2.2.2]オクタン環、置換ピロリジン環、置換イソインドリン環、置換イミダゾリジン環、置換ジヒドロイミダゾール環、置換テトラヒドロピリミジン環などが挙げられ、置換シクロペンタン環、置換シクロヘキサン環、置換ピロリジン環、置換イソインドリン環、置換イミダゾリジン環、置換ジヒドロイミダゾール環であることが好ましい。
【0062】
前記式[4]におけるR1~R3の隣接した置換基は、互いに結合して置換基を有していてもよい単環またはビシクロ環を形成してもよい。この場合に形成される環は、リン原子を含む置換基を有していてもよい4~8員環の飽和または不飽和ヘテロ環として環を形成することが好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは5又は7員環であり、この場合、リン原子と併せた構造として、例えば、置換ホスフォール環、置換ホスフォラン環、置換ジヒドロホスフェピン環、置換ジオキサホスフェピン環、置換ジアザホスフェピン環、置換ホスファアダマンタン環、置換トリオキサホスファアダマンタン環などが挙げられ、置換ジヒドロホスフェピン環、置換ジオキサホスフェピン環、置換ジアザホスフェピン環、置換トリオキサホスファアダマンタン環であることが好ましい。
【0063】
以下に前記一般式[3]または[4]で表される遷移金属化合物である成分(A)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
便宜上、前記遷移金属化合物である成分(A)のMXn(金属部分)で表される部分を除いたリガンド構造を、シクロペンタジエニル型配位子部分、イミド型配位子部分の構造の2つに分ける。シクロペンタジエニル型配位子部分の略称をα、イミド型配位子部分R1、R2およびR3置換基の略称をβ、イミド型配位子部分環状構造の略称をγとし、各置換基の略称を[表1]~[表3]に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【表3】
なお、前記[表3]中のR
aおよびR
bは、前記[表2]の略称βで示される置換基である。また、[表3]中の波線は窒素原子との結合部位を示す。
【0067】
金属部分MXnの具体的な例示としては、TiF2、TiCl2、TiBr2、TiI2、Ti(Me)2、Ti(Bn)2、Ti(Allyl)2、Ti(CH2-tBu)2、Ti(1,3-ブタジエニル)、Ti(1,3-ペンタジエニル)、Ti(2,4-ヘキサジエニル)、Ti(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Ti(CH2-Si(Me)3)2、Ti(ОMe)2、Ti(ОiPr)2、Ti(NMe2)2、Ti(ОMs)2、Ti(ОTs)2、Ti(ОTf)2、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2-tBu)2、Zr(1,3-ブタジエニル)、Zr(1,3-ペンタジエニル)、Zr(2,4-ヘキサジエニル)、Zr(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Zr(CH2-Si(Me)3)2、Zr(ОMe)2、Zr(ОiPr)2、Zr(NMe2)2、Zr(ОMs)2、Zr(ОTs)2、Zr(ОTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、Hfh2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2-tBu)2、Hf(1,3-ブタジエニル)、Hf(1,3-ペンタジエニル)、Hf(2,4-ヘキサジエニル)、Hf(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Hf(CH2-Si(Me)3)2、Hf(ОMe)2、Hf(ОiPr)2、Hf(NMe2)2、Hf(ОMs)2、Hf(ОTs)2、Hf(ОTf)2などが挙げられる。Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert-ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、ОMeはメトキシ基、ОiPrはiso-プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、ОMsはメタンスルホナート基、ОTsはp-トルエンスルホナート基、ОTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
【0068】
成分(A)が前記一般式[3]で表される遷移金属化合物である場合、上記の表記に従えば、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-7、イミド型配位子部分R1置換基が[表2]中のβ-51、イミド型配位子部分R2置換基が[表2]中のβ-32の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiCl2の場合は、下記式[7]で表される化合物を例示している。
【0069】
【0070】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-7、イミド型配位子部分環状構造が[表3]中のγ-9、イミド型配位子部分環状構造Ra置換基が[表2]中のβ-13の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiMe2の場合は、下記式[8]で表される化合物を例示している。
【0071】
【0072】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-1、イミド型配位子部分環状構造が[表3]中のγ-10、イミド型配位子部分環状構造RaおよびRb置換基がいずれも[表2]中のβ-9の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiBn2の場合は、下記式[9]で表される化合物を例示している。
【0073】
【0074】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-41、イミド型配位子部分R1およびR2置換基がいずれも[表2]中のβ-9の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTi(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[10]で表される化合物を例示している。
【0075】
【0076】
同様に、成分(A)が前記一般式[4]で表される遷移金属化合物である場合、上記の表記に従えば、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-25、イミド型配位子部分R1、R2およびR3置換基がいずれも[表2]中のβ-9の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiCl2の場合は、下記式[11]で表される化合物を例示している。
【0077】
【0078】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-7、イミド型配位子部分R1、R2およびR3置換基がいずれも[表2]中のβ-9の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiMe2の場合は、下記式[12]で表される化合物を例示している。
【0079】
【0080】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-18、イミド型配位子部分R1、R2およびR3置換基がいずれも[表2]中のβ-11の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTiBn2の場合は、下記式[13]で表される化合物を例示している。
【0081】
【0082】
また、シクロペンタジエニル型配位子部分が[表1]中のα-1、イミド型配位子部分R1およびR2置換基がいずれも[表2]中のβ-9、イミド型配位子部分R3置換基が[表2]中のβ-60の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTi(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[14]で表される化合物を例示している。
【0083】
【0084】
前記式[1]または[2]で表される化合物は、従来公知の方法を利用して製造することができ、特に製造法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば、「Оrganometallics 1999,18,1116.」、特表2001-516776号公報、「Оrganometallics 2001,20,4424.」、「Chem. Commun. 2002,608.」、「Оrganometallics 2003,22,1937.」、「J.Organomet.Chem. 2004,689,203.」、「Оrganometallics 2004,23,1562.」、「Оrganometallics 2004,23,3309.」、WО2005/090418号公報、US6239061号公報、「Оrganometallics 2005,24,2548.」、特表2007-529584号公報、「J.Organomet.Chem. 2011,696,2451.」、「Dalton Trans. 2011,40,7842.」、特開2012-007171号公報、特開2012-046764号公報、特開2013-155371号公報、特表2013-510214号公報、特表2013-515120号公報、US9045504号公報、特表2014-509670号公報、US9035081号公報、特表2015-520276号公報、特表2016-532730号公報、特表2017-509595号公報などが挙げられる。
【0085】
前記一般式[2]で表される化合物は、前記一般式[1]で表される化合物に比べ、重合体を高い重合活性で製造できることから、より好ましい。
本発明においては、前記一般式[1]または[2]で表される遷移金属化合物のうち、一種を単独で用いてもよく、化学構造の異なる遷移金属化合物を二種類以上用いてもよい。また、化学構造が同一である光学異性体の一種を単独で用いてもよいし、光学異性体の混合物(例えば、メソ体混合物またはラセミ体混合物)で用いてもよい。
Lが16族元素の場合、y=3、z=4となる以外は上記と同様の化合物を例示することが出来る。
【0086】
<固体状担体(S)>
固体状担体(S)は、固体状アルミノキサン化合物であり、下記一般式(S-a)で表される構造のアルミノキサンおよび(S-b)で表される構造のアルミノキサン、ならびに下記一般式(S-c)で表される繰り返し単位と下記一般式(S-d)で表される繰り返し単位とを構造として有するアルミノキサンの少なくとも1種から選ばれるアルミノキサンが挙げられる。
【0087】
【0088】
前記一般式(S-a)~(S-d)において、Reは、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、好ましくは1~4の炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基などの炭化水素基を例示することができ、メチル基、エチル基、イソブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、Reの一部が塩素、臭素などのハロゲン原子で置換され、かつハロゲン含有率がReを基準として40重量%以下であってもよい。(S-c)および(S-d)中の、一端が原子と繋がっていない線分は、図示していない別の原子との結合を示す。
【0089】
前記一般式(S-a)および(S-b)中、rは2~500の整数を示し、好ましくは6~300、特に好ましくは10~100の範囲にある。前記一般式(S-c)および(S-d)中、s、tはそれぞれ1以上の整数を示す。r、sおよびtは、前記アルミノキサンが、用いられる反応環境下において実質的に固体状態を維持できるように選択される。
【0090】
前記固体状アルミノキサン化合物は、従来公知のオレフィン重合触媒用担体と異なり、シリカやアルミナなどの無機固体成分やポリエチレン、ポリスチレンなどの有機系ポリマー成分を含まず、アルキルアルミニウム化合物を主たる成分として固体化したものである。
【0091】
「固体状」とは、アルミノキサン成分が、用いられる反応環境下において、実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、後述のように前記遷移金属化合物(A)とアルミノキサン成分とを接触させてオレフィン重合用触媒を調製する際、および調製されたオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合(たとえばスラリー重合)を行う場合に、アルミノキサン成分が実質的に固体状態を維持することである。
【0092】
前記アルミノキサン成分が固体状態であるかどうかは、目視による確認が最も簡便な方法であるが、例えば重合時などは目視による確認が困難である場合が多い。その場合は、例えば重合後に得られた重合体パウダーの性状や反応器への付着状態などから判断することが可能である。逆に、重合体パウダーの性状が良好で、反応器への付着が少なければ、重合環境下において前記アルミノキサン成分の一部が多少溶出したとしても本発明の趣旨を逸脱することはない。重合体パウダーの性状を判断する指標としては、嵩密度、粒子形状、表面形状、不定形ポリマーの存在度合いなどが挙げられるが、定量性の観点からポリマー嵩密度が好ましい。前記嵩密度は通常0.01~0.9であり、好ましくは0.05~0.6、より好ましくは0.1~0.5の範囲内である。
【0093】
前記固体状アルミノキサン化合物の、25℃の温度に保持されたn-ヘキサンに対する溶解割合は、通常0~40モル%、好ましくは0~20モル%、特に好ましくは0~10モル%の範囲にある。
【0094】
前記溶解割合は、25℃に保持された50mlのn-ヘキサンに固体状アルミノキサン化合物担体2gを加えた後2時間の撹拌を行ない、次いでG-4グラス製フイルターを用いて溶液部を分離して、この濾液中のアルミニウム濃度を測定することにより求められる。従って、溶解割合は用いたアルミノキサン2gに相当するアルミニウム原子の量に対する前記濾液中に存在するアルミニウム原子の割合として決定される。
【0095】
前記固体状アルミノキサン化合物としては、公知の固体状アルミノキサンを際限なく用いることができ、たとえば国際公開第2014/123212号に記載された固体状ポリアルミノキサン組成物を用いることもできる。公知の製造方法として例えば、特公平7-42301号公報、特開平6-220126号公報、特開平6-220128号公報、特開平11-140113号公報、特開平11-310607号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開第2010/55652号などに記載された製造方法が挙げられる。
【0096】
前記固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、一般に0.01~50000μm、好ましくは1~1000μm、特に好ましくは1~200μmの範囲にある。固体状アルミノキサン化合物の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により粒子を観察し、100個以上の粒子の粒径を測定し、重量平均化することにより求められる。まず、各粒子の粒径は、粒子像を水平方向、垂直方向それぞれに2本の平行線ではさんで長さを測り、下式により求められる。
粒径=((水平方向長さ)2+(垂直方向長さ)2)0.5
【0097】
次に、固体状アルミノキサン化合物の重量平均粒子径は、上記で求めた粒径を用いて下式により求められる。
平均粒子径=Σnd4/Σnd3
(n;粒子個数、d;粒径)
【0098】
前記固体状アルミノキサン化合物は、比表面積が50~1000m2/g、好ましくは100~800m2/gであり、細孔容積が0.1~2.5cm3/gであることが望ましい。
【0099】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行って得られる重合体粒子の粒径に特に制限はないが、好ましくは3~50,000μmである。より好ましい下限値は、5μmであり、更に好ましい下限値は10μmであり、特に好ましい下限値は20μmである。一方、より好ましい上限値は、30,000μmであり、更に好ましい上限値は20,000μmであり、特に好ましい上限値は10,000μmである。本発明のオレフィン重合用触媒を用いれば、極限粘度([η])が5dl/gを超えるような超高分子量重合体を製造しても、ファウリングや得られるオレフィン重合体粒子の凝集が起こり難い傾向があり、効率的、安定的に前記の重合体粒子を製造するのに有利である。
【0100】
前記の様なファウリングや粒子凝集に関する優位性を発現する要因は、現時点では定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
重合時のファウリングや凝集の原因は、大きく2つの要因が挙げられる。1つは重合環境下において重合活性種となる成分(A)が固体状担体(S)から遊離(リーチング)することにより不定形ポリマーが生成することで発生する物理的要因である。もう1つは後述する固体触媒成分(X)と生成ポリマーおよび重合反応器との摩擦帯電が起きることで発生する静電気的要因である。
【0101】
従来技術の多くは、成分(A)のリーチングを抑制するもの、または固体状担体(S)の形状や微粉量を精密制御するものであり、これらは前記物理的要因に対する効果と言える。
【0102】
本発明のオレフィン重合用触媒は、シクロペンタジエニル配位子および15族または16族元素から選ばれる原子を含む配位子を有する成分(A)に起因すると見られる静電気的要因で発生するファウリングに対して、固体状アルミノキサン化合物を固体状担体(S)として用いることが非常に有効な効果を発現していると本発明者らは考えている。このような効果が発現されるのは、固体状アルミノキサンが、比較的フレキシブルな構造を持ち、高い極性を有しているため、担体、助触媒の性能だけではなく、帯電防止剤の様な性能も発現していることによる可能性があるのではないかと本発明者らは考えている。
【0103】
このような固体状アルミノキサンによる効果は、配位子がシクロペンタジエニル配位子のみからなる遷移金属化合物や、フェノキシイミン配位子のような15族元素と16族元素を含み、シクロペンタジエニル配位子を有さない遷移金属化合物では見られない効果であり、従来技術からの類推は困難と言える。
【0104】
<オレフィン重合用触媒の調製方法>
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、成分(A)および固体状担体(S)を不活性炭化水素中または不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製される固体触媒成分(X)が好ましい態様の一つである。
【0105】
各成分の接触方法は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、例えば、固体または液体の成分(A)を、固体状担体(S)と有機溶媒からなる懸濁液に一括添加または分割添加して接触させる方法、成分(A)を有機溶媒で溶解または懸濁させたものを、固体状担体(S)と有機溶媒からなる懸濁液に一括添加または分割添加して接触させる方法、および、反対に、固体または有機溶媒で懸濁させた固体状担体(S)を、成分(A)に添加して接触させる方法が挙げられる。反応を均一にする観点からは、成分(A)を固体状担体(S)に添加することが好ましい。成分(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、成分(A)を1種ずつ添加しても、2種以上を混合して添加してもよい。
【0106】
前記接触方法におけるいずれの工程においても、成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングをさらに高度に抑制したり、生成重合体の粒子性状をさらに改善したりすることができる。成分(G)としては、極性官能基を有する化合物を用いることができ、非イオン性(ノニオン)界面活性剤が好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロック、高級脂肪族アミド、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、N-アシルアミノ酸がより好ましい。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
本発明に係るエチレン重合用触媒の調製に用いる溶媒としては、不活性炭化水素溶媒が挙げられ、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0108】
オレフィンの重合には、前記のような固体触媒成分(X)をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分(X)にオレフィンを予備重合させ予備重合触媒成分(XP)を形成してから用いることにより、重合反応中のファウリングをさらに高度に抑制したり、生成重合体の粒子性状をさらに改善したりすることができる。
【0109】
予備重合触媒成分(XP)は、固体触媒成分(X)存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入させることにより調製することができる。反応方式としては、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法でも使用することができる。また反応は、減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。この予備重合によって、固体状触媒成sdは0.2~500gの重合体を生成させる。
【0110】
不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分(XP)は、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
【0111】
予備重合温度は、通常-20~80℃、好ましくは0~60℃である。また、予備重合時間は、通常0.5~100時間、好ましくは1~50時間である。
予備重合に使用する固体触媒成分(X)の形態としては、すでに述べたものを制限無く用することができる。
【0112】
また、必要に応じて下記成分(B)を用いることができる。
成分(B):(b-1)下記一般式[b-1-1]、[b-1-2]または[b-1-3]で表される有機金属化合物、(b-2)有機アルミニウムオキシ化合物、ならびに(b-3)成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物。
RamAl(ORb)n Hp Xq ・・・[b-1-1]
(一般式[b-1-1]中、Ra およびRb は、炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
Ma AlRa4 ・・・[b-1-2]
(一般式[b-1-2]中、Ma はLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1~15の炭化水素基を示す。)
RarMbRbs Xt ・・・[b-1-3]
(一般式[b-1-3]中、Ra およびRb は、炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Mb は、Mg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。)
【0113】
特に、化合物(b-1)中の前記式[b-1-1]に示される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。成分(B)として式[b-1-1]の有機アルミニウム化合物が用いられる場合、成分(B)中のアルミニウム原子(Al)と成分(A)である遷移金属合物とのモル比(成分(B)/遷移金属化合物)で、通常0.1~10000、好まし
くは0.5~5000の量で用いられる。
【0114】
予備重合系における固体触媒成分(X)の濃度は、固体触媒成分(X)/重合容積1リットル比で、通常1~1000グラム/リットル、好ましくは10~500グラム/リットルであることが望ましい。予備重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目として、前記成分(G)を共存させることができる。
【0115】
また予備重合触媒成分(XP)の流動性改善や重合時のヒートスポット・シーティングやポリマー塊の発生抑制を目的に、予備重合によって一旦生成させた予備重合触媒成分(XP)に成分(G)を接触させてもよい。
【0116】
成分(G)を混合接触させる際の温度は、通常-50~50℃、好ましくは-20~50℃であり、接触時間は1~1000分間、好ましくは5~600分間である。
固体触媒成分(X)と成分(G)とを混合接触するに際して、成分(G)は、固体触媒成分(X)100重量部に対して、通常0.1~20重量部、好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.4~5重量部の量で用いられる。
【0117】
固体触媒成分(X)と成分(G)との混合接触は、不活性炭化水素溶媒中で行うことができ、不活性炭化水素溶媒としては、固体触媒成分(X)の調製に用いる溶媒と同様のものが挙げられる。
【0118】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、予備重合触媒成分(XP)を乾燥して乾燥予備重合触媒として用いることができる。このような態様は、特に気相重合法を採用する場合に好ましい。勿論、液相重合法の場合に用いることも出来る。
【0119】
予備重合触媒成分(XP)の乾燥は、通常得られた予備重合触媒の懸濁液から濾過などにより分散媒である炭化水素を除去した後に行われる。
予備重合触媒成分(XP)の乾燥は、予備重合触媒成分(XP)を不活性ガスの流通下、70℃以下、好ましくは20~50℃の範囲の温度に保持することにより行われる。得られた乾燥予備重合触媒の揮発成分量は2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下であることが望ましい。乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、少ないほどよく、特に下限はないが、実用的には0.001重量%である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが通常3~8時間である。乾燥予備重合触媒の揮発成分量が2.0重量%を超えると、乾燥予備重合触媒の流動性が低下し、安定的に重合反応器に供給できなくなることがある。
【0120】
ここで、乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、たとえば、減量法、ガスクロマトグラフィーを用いる方法などにより測定される。
減量法では、乾燥予備重合触媒を不活性ガス雰囲気下において110℃で1時間加熱した際の減量を求め、加熱前の乾燥予備重合触媒に対する百分率として表す。
【0121】
ガスクロマトグラフィーを用いる方法では、乾燥予備重合触媒から炭化水素などの揮発成分を抽出し、内部標準法に従って検量線を作成した上でGC面積から重量%として算出する。
【0122】
乾燥予備重合触媒の揮発成分量の測定方法は、乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1重量%以上である場合には、減量法が採用され、乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1重量%以下である場合には、ガスクロマトグラフィーを用いる方法が採用される。
【0123】
予備重合触媒成分(XP)の乾燥に用いられる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガスなどが挙げられる。このような不活性ガスは、酸素濃度が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下(体積基準)であり、水分含量が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下(重量基準)であることが望ましい。不活性ガス中の酸素濃度および水分含量が上記の範囲を超えると、乾燥予備重合触媒のオレフィン重合活性が大きく低下することがある。
【0124】
上記乾燥予備重合触媒は、流動性に優れているので、重合反応器への供給を安定的に行うことができる。また、気相重合系内に懸濁に用いた溶媒を同伴させずに済むため安定的に重合を行うことができる。
【0125】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明によれば、前記成分(A)と固体状担体(S)とからなるオレフィン重合用触媒の存在下で、一種または二種以上の炭素数2~30のα-オレフィンを重合することにより、好ましくは、エチレンを単独重合、またはエチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合することにより、重合時のファウリングを防止し、オレフィン重合体を効率よく製造することができる。
【0126】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、懸濁重合法および気相重合法においては前記固体触媒成分(X)を用いることが好ましい。
【0127】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体の具体例としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素およびこれらの混合物等が挙げられる。また、液相重合法においては、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0128】
上記オレフィン重合用触媒を用いて重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12~10-1モル、好ましくは10-8~10-2モルになるような
量で用いられる。
【0129】
また、上述の固体触媒成分(X)を用いた重合温度は、通常-50~200℃、好ましくは0~170℃、特に好ましくは60~170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧~100kg/cm2、好ましくは常圧~50kg/cm2の条件下であり、重合反応は回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0130】
得られる重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。一般的に低分子量成分が多くなるほど、重合反応器壁や撹拌翼への付着も多くなり、清掃工程への負荷がかかることにより生産性の低下を招くことがある。重合時には、ファウリング抑制または粒子性状改善を目的として、成分(G)を共存させることができる。
【0131】
本発明において重合反応に供給されるオレフィンは、例えば、炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる1種以上のモノマーである。炭素数が2以上20以下のオレフィンの具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのα-オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン等が挙げられる。
【0132】
また、重合反応に供給されるモノマーとして、例えば、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンやアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸等;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸等の極性モノマー等も挙げられる。
【0133】
<オレフィン重合体>
本発明のオレフィン用触媒を用いた重合反応により得られるオレフィン重合体の一態様としては、エチレン由来の構成単位を好ましくは90~100モル%、より好ましくは95~100モル%、さらに好ましくは98~100モル%の範囲で含むエチレン系重合体が挙げられる。前記エチレン系重合体は、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位を好ましくは合計0~10モル%、より好ましくは0~5モル%、さらに好ましくは02モル%の範囲で含む。ただし、エチレン由来の構成単位の含量と炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位の含量との合計を100モル%とする。
【0134】
これらの重合体の中でも、エチレン単独重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-オクテン重合体、エチレン/1-ヘキセン重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン重合体、エチレン/プロピレン/1-オクテン重合体、エチレン/プロピレン/1-ヘキセン重合体、エチレン/プロピレン/4-メチル-1-ペンテン重合体が好ましい。また、これらの重合体から選択される二種以上を混合または連続的に製造することによって得られる、いわゆるブロック共重合体(インパクトコポリマー)でもよい。
【0135】
本発明のオレフィン重合用触媒で製造されるオレフィン重合体の分子量に特に制約は無いが、本願発明の効果は、高い分子量の重合体の製造において好ましい結果を提供することが多い。このようなオレフィン重合体の極限粘度([η])は、5.0dl/g以上であることが好ましい。より好ましい下限は6.0d/g、更には8.0d/g、特には(10.0)d/gである。一方、好ましい上限値は(40)d/g、より好ましい上限は(35d/g、更には(30)d/g、特には(25)d/gである。また本発明のオレフィン重合用触媒で製造される高分子量の重合体の分子量は、例えば、ASTM-D4020規格で求めることが出来、好ましくは50万以上、より好ましくは100万以上である。
【0136】
また本発明のオレフィン重合用触媒を用いたエチレンの単独重合により得られるエチレン単独重合体は、比較的分子量が低い領域においては、分子量(MFR)見合いの密度が高いという特徴を示す場合がある。これはメチル、エチル分岐が少ないためであり、さらにビニル、ビニリデンなどの二重結合構造も少ない。具体的には、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られる極限粘度([η])が3.0dl/g以下、より好ましくは2.0dl/g以下のエチレン単独重合体は、下記要件(I)~(III)で表される特性を有している。
【0137】
要件(I):GPC測定により得られる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2.0~5.0である。
前記重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)において、好ましい下限は2.2、特に好ましい下限は2.5であり、一方、好ましい上限は4.8、特に好ましい上限は4.5である。
要件(II):メルトフローレート(MFR)と密度が、(密度)≧10.0×lоg(MFR)+958 の関係を満たす。
要件(III):1H-NMR測定における二重結合量(ビニル、ビニリデン、ビニレン)の総量が1000炭素当たり0.02個未満である。
前記二重結合量の総量は、好ましくは1000炭素当たり0.01個未満である。
重合体の物性・性状を測定する方法を以下に記す。
【0138】
極限粘度[η]
ASTM-D4020規格に準拠し、測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-1)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求める。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) -------- (Eq-1)
【0139】
メルトフローレート(MFR)
ASTM-D1238規格に準拠し、190℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定する。
【0140】
密度(kg/m
3
)
密度は、MFR測定時に得られるストランドを120℃で30分間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定する。
【0141】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)
オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求める。Waters社製「Alliance GPC 2000」ゲル浸透クロマトグラフ(高温サイズ排除クロマトグラフ)により得られる分子量分布曲線から計算するものであり、操作条件は、下記の通りである:
〔使用装置および条件〕
測定装置:ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(Waters社)
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステム Empower(商標、Waters社)
カラム:TSKgel GMH6-HT×2 + TSKgel GMH6-HT×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o-ジクロロベンゼン〔ODCB〕(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/min
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495から分子量2060万
分子量分布および各種平均分子量は、J.Polym.Sci. 1967,B5,753.に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として計算する。
【0142】
二重結合量、分岐数(個/1000炭素)
オレフィン重合体の二重結合数および分岐数は、核磁気共鳴装置(NMR)により求める。二重結合数は、1H-NMRにより下記の方法またはこれと同等の方法で決定される。
〔使用装置および条件〕
測定装置:ブルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500 型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン-d4
試料濃度 :ca. 20mg/0.6mL
測定温度:120℃
積算回数:64~256回
化学シフト基準:主鎖メチレンピーク(1.2ppm)
1000炭素当たりの二重結合量は、ビニル基は4.8~4.9および5.6~5.7ppm、ビニリデン基は4.6~4.7ppm、ビニレン(内部オレフィン)は5.1~5.2(三置換)および5.3~5.4(二置換)ppmの積分強度の、重合体の水素積分総和に対する積分強度比より算出する。
分岐量は、13C-NMRにより下記の方法またはこれと同等の方法で決定される。
〔使用装置および条件〕
測定装置:ブルカー・バイオスピン製AVANCEIIIcryo-500 型核磁気共鳴装置(13C:125MHz)
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6 (4/1 v/v)
試料濃度: ca. 60mg/0.6mL
測定温度:120℃
積算回数:128回以上
化学シフト基準:主鎖メチレンピーク(29.7ppm)
1000炭素当たりの分岐数は、メチル分岐数は19.9ppm、エチル分岐数は10.8ppmの積分強度の、重合体の炭素(5~45ppm)積分総和に対する積分強度比より算出する。
【0143】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合反応により得られるオレフィン重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0144】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合反応により得られるオレフィン重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物は、超高分子量オレフィン重合体に好適に用いられる成形方法を制限なく使用することが出来る。例えば、圧縮成形法、ゲルシート成形法、ゲル紡糸成形法、固相延伸成形法などを挙げることが出来る。また、射出成形法、異形押出成形法、パイプ成形法、チューブ成形法、異種成形体の被覆成形法、インジェクションブロー成形法、ダイレクトブロー成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーション成形法、プレス成形法などの成形方法により、容器状、トレー状、シート状、棒状、フィルム状または各種成形体の被覆などに成形することができる。
【0145】
また、超高分子量エチレン重合体は、耐摩耗性、自己潤滑性、衝撃強度、薄肉成形などの特性のバランスに優れているので、これらが要求される用途として、例えば、鋼管、電線、自動車スライドドアレールなどの金属の被覆(積層)、耐圧ゴムホース、自動車ドア用ガスケット、クリーンルームドア用ガスケット、自動車グラスランチャンネル、自動車ウエザストリップなどの各種ゴムの被覆(積層)、ホッパー、シュートなどのライニング用、ギアー、軸受、ローラー、テープリール、各種ガイドレールやエレベーターレールガイド、各種保護ライナー材などの摺動材などに使用される。
【0146】
比較的分子量が低い領域のオレフィン重合体であれば、一般のフィルム成形やブロー成形、インジェクション成形および押出成形による加工も好適である。フィルム成形では押出ラミネート成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などにより得られる。さらに延伸成形することも出来る。該エチレン系重合体を用いて得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。その場合には、前記各成形法における共押出法が挙げられる。一方押出ラミネート成形やドライラミネート法のような貼合ラミネート成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コーティングフィルムなど)との積層が挙げられる。ブロー成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化での高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
【0147】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合反応により得られるオレフィン重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物を加工することにより得られる成形体としては、フィルム、ブロー輸液バック、ブローボトル、ガソリンタンク、押出成形によるチューブ、パイプ、引きちぎりキャップ、日用雑貨品等射出成形物、繊維、回転成形による大型成形品などが挙げられる。
【0148】
さらに、本発明のオレフィン重合用触媒を用いた重合反応により得られるオレフィン重合体、および必要に応じて熱可塑性樹脂や添加剤を含む樹脂組成物を加工することにより得られるフィルムは、水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチ等)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用等の各種包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、農業用資材等に好適である。また、ナイロン、ポリエステル等の基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。
【実施例】
【0149】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、遷移金属化合物(A)は270MHz、1H-NMR(日本電子;GSH-270)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)(島津製作所;GCMS-QP5050Aおよび島津製作所;GCMS-QP2010Ultra)、FD-質量分析(日本電子 SX-102AおよびJMS-T100G)を用いて同定し、固体状担体(S)のAl濃度および固体触媒成分(X)調製時の上澄み液中の金属(Ti、Zr)濃度はICP発光分光分析法(ICP-AES)(島津製作所製ICPS-8100)により分析した。
【0150】
<遷移金属化合物(A)の合成>
[合成例1] 遷移金属化合物(A-1)の合成
下記式で表される(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-1)」ともいう)は、Organometallics 2003,22,1937.記載の方法によって合成した。
【0151】
【0152】
[合成例2] 遷移金属化合物(A-2)の合成
下記式で表される(シクロペンタジエニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-2)」ともいう)は、Organometallics 1999,18,1116.記載の方法によって合成した。
【0153】
【0154】
[合成例3] 遷移金属化合物(A-3)の合成
下記式で表される(インデニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-3)」ともいう)は、J.Organomet.Chem.2004,689,203.記載の方法によって合成した。
【0155】
【0156】
[合成例4] 遷移金属化合物(A-4)の合成
下記式で表される(1-(ペンタフルオロフェニルメチル)インデニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-4)」ともいう)は、特開2015-520276号公報記載の方法によって合成した。
【0157】
【0158】
[合成例5] 遷移金属化合物(A-5)の合成
下記式で表される(シクロペンタジエニル)Ti(N=C(t-Bu)2)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-5)」ともいう)は、J.Am.Chem.Soc.2000,122,5499.記載の方法によって合成した。
【0159】
【0160】
[合成例6] 遷移金属化合物(A-6)の合成
下記式で表される(ペンタメチルシクロペンタジエニル)Ti(N=C(N(iPr)2)(2,6-F2-C6H3))Cl2(以下「遷移金属化合物(A-6)」ともいう)は、Chem.Commun. 2010,46,3339.記載の方法によって合成した。
【0161】
【0162】
[合成例7] 遷移金属化合物(A-7)の合成
下記式で表されるビス(1-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ZrCl2(以下「遷移金属化合物(A-7)」ともいう)は、特開2015-113282号公報記載の方法によって合成した。
【0163】
【0164】
[合成例8] 遷移金属化合物(A-8)の合成
下記式で表されるビス[6-クミル-3-メチル-2-[{(2-メチルシクロヘキシル)イミノ}メチル]フェノレート]ZrCl2(以下「遷移金属化合物(A-8)」ともいう)は、特開2006-206768号公報記載の方法によって合成した。
【0165】
【0166】
[合成例9] 遷移金属化合物(A-9)の合成
下記式で表されるビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ZrCl2(以下「遷移金属化合物(A-9)」ともいう)は、富士フイルム和光純薬株式会社より購入したものをそのまま使用した。
【0167】
【0168】
[合成例10] 遷移金属化合物(A-10)の合成
下記式で表されるジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ZrCl2(以下「遷移金属化合物(A-10)」ともいう)は、特開2004-182715号公報記載の方法によって合成した。
【0169】
【0170】
[合成例11] 遷移金属化合物(A-11)の合成
下記式で表される(ジメチルシクロペンタジエニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-11)」ともいう)は、下記の方法により合成した。
【0171】
【0172】
窒素雰囲気下シュレンクフラスコに1,3-ジメチルシクロペンタジエン2957mg(31.40mmol)、ヘキサン40mLを添加した。氷浴で冷却しながらnBuLi(31.40mmol)のヘキサン溶液(1.57M)20.0mLを徐々に添加し、室温に戻しながら2時間攪拌した。反応液を、ガラスフィルターを用いてろ過した。得られた白色固体をヘキサンで洗浄し、減圧乾燥して白色固体を2.6334g得た。
【0173】
窒素雰囲気下、シュレンクフラスコに先の反応で得られた白色固体205mg、THF15mLを添加した。窒素雰囲気下、別のシュレンクフラスコにTi(N=P(t-Bu)3)Cl3 741mg、トルエン50mLを添加した。この溶液を氷浴で冷却し、先に得られた反応溶液をTHF5mLで洗浄しながら加えた。反応液を、室温に戻しながら19時間攪拌した。反応溶媒を減圧留去し、セライトを用いてジクロロメタンで抽出した。ろ液を濃縮した後、ジクロロメタンに溶解させてヘキサン中に滴下した。得られた黄色固体をろ過により回収し、ヘキサンで洗浄して減圧乾燥した。699.4mgの目的物が得られた。収率は82%であった。1H-NMR(CDCl3)とFD-MSの測定結果により、目的物の遷移金属化合物(A-7)を同定した。
1H-NMR(270MHz,CDCl3)δ 6.10-6.02(3H,m),2.27(6H,s),1.55(27H,d, J=13.5Hz)ppm
FD-MS:m/z=427.1(M+)
【0174】
[合成例12] 遷移金属化合物(A-12)の合成
下記式で表される(n-ブチルシクロペンタジエニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-12)」ともいう)は、Organometallics 2003,22,1937.記載の方法によって合成した。
【0175】
【0176】
[合成例13] 遷移金属化合物(A-13)の合成
下記式で表される(ペンタフルオロフェニルメチルシクロペンタジエニル)Ti(N=P(t-Bu)3)Cl2(以下「遷移金属化合物(A-13)」ともいう)は、特表2006-169521号公報記載の方法によって合成した。
【0177】
【0178】
<固体状担体(S)の調製>
[調製例1] 固体状担体(S-1)の調製
内容積270Lの攪拌機付き反応器を用い、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製、平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g
、250℃で10時間乾燥)10kgを77Lのトルエンに懸濁させ、その後0~5℃に冷却した。系内温度を0~5℃に保持しつつ、この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)19.4Lを30分間かけて滴下した。そして各添加成分を30分間接触させた後、系内温度を1.5時間かけて95℃まで昇温し、引き続き93~97℃で4時間接触させた。その後、常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄し、全量115Lの固体状担体(S-1)のトルエンスラリーを得た。このスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は123g/L、Al濃度は0.62mol/Lであった。
【0179】
[調製例2] 固体状担体(S-2)の調製
国際公開2010/055652パンフレットに記載の方法(予備実験1および実施例5)に準じて固体状アルミノキサン化合物を合成し、これを固体状担体(S)として用いた(以下、固体状担体(S-2)と示す)。ただし、トリメチルアルミニウムの発火等の安全性に配慮して、当該文献に開示されている条件の約1/6倍の濃度で実施した。
【0180】
具体的には、攪拌装置を有するガラス製反応器に0.5mol/Lに調整したトリメチルアルミニウムのトルエン溶液100mLを装入した。この溶液を15℃になるまで冷却し、これに安息香酸2.18gを溶液の温度が25℃以下に保たれるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、トリメチルアルミニウムと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.40であった。反応液を70℃で4時間加熱し、その後60℃で6時間加熱した後、一度室温まで冷却した。次いで100℃で8時間加熱し、固体成分を析出させた。溶液を30℃以下まで冷却した後、洗浄のためにヘキサン100mLを攪拌下に添加した。30分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにヘキサン150mLを攪拌下に添加した。15分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにヘキサン150mLを攪拌下に添加した。最後に15分間静置した後、上澄み液180mLを除去し、ヘキサンを総量が14.6mLになるように添加し、固体状担体(S-2)のヘキサンスラリーを得た。得られたスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は41g/L、Al濃度は0.58mol/Lであった。また、得られた固体状担体(S-2)を走査型電子顕微鏡により粒子を観察したところ平均粒子径は6.8μmであった。
【0181】
[調製例3] 固体状担体(S-3)の調製
国際公開2014/123212パンフレットに記載の方法(試験例A8)に準じて固体状アルミノキサン化合物のスラリーを合成し、これを固体状担体(S)として用いた(以下、固体状担体(S-3)と示す)。得られたスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は68g/L、Al濃度は0.98mol/Lであった。また、得られた固体状担体(S-3)を走査型電子顕微鏡により粒子を観察したところ平均粒子径は32μmであった。
【0182】
<固体触媒成分(X)の調製>
[調製例4] 固体触媒成分(X-1)の調製
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン5.12mL、並びに調製例2で得られた固体状担体(S-2)のスラリー4.88mL(固体分重量0.20g)を装入した。次いで、合成例1で得られた遷移金属化合物(A-1)のトルエン溶液5.00mL(Tiとして10.0μmol)加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。この上澄み液10mLをICP発光分光分析法(ICP-AES)で分析した結果、上澄み液中のTi濃度は定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量20mLの固体触媒成分(X-1)のスラリーを調製した。
【0183】
[調製例5~9] 固体触媒成分(X-2)~(X-6)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりにそれぞれ合成例2~6で得られた遷移金属化合物(A-2)~(A-6)を用いたこと以外は調製例4と同様の方法にて固体触媒成分(X-2)~(X-6)のスラリーを調製した。上澄み液中のTi濃度はいずれも定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。
【0184】
[調製例10] 固体触媒成分(X-7)の調製
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン7.06mL、並びに調製例3で得られた固体状担体(S-3)のスラリー2.94mL(固体分重量0.20g)を装入した。次いで、合成例1で得られた遷移金属化合物(A-1)のトルエン溶液5.00mL(Tiとして10.0μmol)加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。この上澄み液10mLをICP-AESで分析した結果、上澄み液中のTi濃度は定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量20mLの固体触媒成分(X-7)のスラリーを調製した。
【0185】
[調製例11] 固体触媒成分(X-8)の調製
充分に窒素置換した内容積200mLの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン10.87mL、並びに調製例1で得られた固体状担体(S-1)のスラリー1.63mL(固体分重量0.20g)を装入した。次いで、合成例1で得られた遷移金属化合物(A-1)のトルエン溶液2.50mL(Tiとして5.0μmol)加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。この上澄み液10mLをICP-AESで分析した結果、上澄み液中のTi濃度は定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。さらにヘキサンを用いて2回洗浄した。これにより、全量20mLの固体触媒成分(X-8)のスラリーを調製した。
【0186】
[調製例12] 固体触媒成分(X-9)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりに合成例4で得られた遷移金属化合物(A-4)を用いたこと以外は調製例11と同様の方法にて固体触媒成分(X-9)のスラリーを調製した。上澄み液中のTi濃度は定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。
【0187】
[調製例13] 固体触媒成分(X-10)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりに合成例6で得られた遷移金属化合物(A-6)を用いたこと以外は調製例11と同様の方法にて固体触媒成分(X-10)のスラリーを調製した。上澄み液中のTi濃度は定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。
【0188】
[調製例14~15] 固体触媒成分(X-11)~(X-12)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりに合成例7~8で得られた遷移金属化合物(A-7)~(A-8)を用いたこと以外は調製例11と同様の方法にて固体触媒成分(X-11)~(X-12)のスラリーを調製した。上澄み液中のZr濃度はいずれも定量下限以下(0.011mmol/L未満)であった。
【0189】
[調製例16~17] 固体触媒成分(X-13)~(X-14)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりに合成例9~10で得られた遷移金属化合物(A-9)~(A-10)を用いたこと以外は調製例4と同様の方法にて固体触媒成分(X-13)~(X-14)のスラリーを調製した。上澄み液中のZr濃度はいずれも定量下限以下(0.011mmol/L未満)であった。
【0190】
[調製例18~20] 固体触媒成分(X-15)~(X-17)の調製
遷移金属化合物(A-1)の代わりにそれぞれ合成例11~13で得られた遷移金属化合物(A-11)~(A-13)を用いたこと以外は調製例4と同様の方法にて固体触媒成分(X-15)~(X-17)のスラリーを調製した。上澄み液中のTi濃度はいずれも定量下限以下(0.021mmol/L未満)であった。
【0191】
<エチレン重合反応におけるファウリング評価>
以下の実施例、比較例および参考例の重合反応評価は、内容積1リットルの撹拌翼付きのSUS製オートクレーブを用いて行った。
なお、本実施例で使用される溶媒は、全て脱水溶媒である。
【0192】
重合反応終了後に、冷却、脱圧したオートクレーブの内部を目視にて確認し、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのパウダーの付着(ファウリング)の有無およびパウダーの凝集の有無も判定した。パウダーの付着は、ヘプタンやヘキサンなどの炭化水素溶媒を流してもパウダーが剥がれない状態を指し、パウダーの凝集は多数のパウダー同士が物理的もしくは化学的に結合している状態を指し、重合反応後に強い力を掛けた際に解れるものも解れないものもある。
【0193】
また特にファウリングや凝集が激しく起こる重合反応の場合は、重合時間の経過に伴い、回転計で測定する撹拌翼の回転数が低下する挙動が認められる。
得られたポリエチレンパウダーの物性値は上述した方法により測定した。
【0194】
[参考例1]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例14で得られた固体触媒成分(X-11)のスラリーを固体分として30mg投入した後、エチレンにて80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、回転数350rpmで重合反応を開始した。
【0195】
重合開始後90分経過しても回転数の低下は確認されず、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集は認められなかった。
【0196】
[参考例2]
固体触媒成分(X-11)の代わりに調製例15で得られた固体触媒成分(X-12)のスラリーを固体分として20mg投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0197】
重合開始後90分経過した時点で回転数の低下は確認されず、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集は認められなかった。
【0198】
[比較例1]
固体触媒成分(X-11)の代わりに調製例11で得られた固体触媒成分(X-8)のスラリーを固体分として20mg投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0199】
重合開始15分後から回転数の低下が確認されたため、正常な撹拌状態が維持されていないと判断し、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集が認められた。
【0200】
[比較例2]
固体触媒成分(X-11)の代わりに調製例12で得られた固体触媒成分(X-9)のスラリーを固体分として10mg投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0201】
重合開始10分後から回転数の低下が確認されたため、正常な撹拌状態が維持されていないと判断し、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集が認められた。
【0202】
[比較例3]
固体触媒成分(X-11)の代わりに調製例13で得られた固体触媒成分(X-10)のスラリーを固体分として50mg投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0203】
重合開始30分後から回転数の低下が確認されたため、正常な撹拌状態が維持されていないと判断し、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集が認められた。
【0204】
参考例1~2および比較例1~3の結果より、シクロペンタジエニル配位子および15族元素(窒素)を含む配位子を有する遷移金属化合物(A)は、シクロペンタジエニル配位子のみを含む遷移金属化合物よりも重合時にファウリングを起こしやすいことが分かる。
【0205】
[実施例1~7]
固体触媒成分(X-11)の代わりにそれぞれ調製例4~10で得られた固体触媒成分(X-1)~(X-7)のスラリーを固体分として表4に記載の重量で投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0206】
いずれの例においても、重合開始後90分経過した時点で回転数の低下は確認されず、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集は認められなかった。
【0207】
実施例1~7、比較例1~3および参考例1~2におけるファウリングの有無および実施例1~7および比較例1~3で得られたエチレン系重合体の極限粘度[η]を表4に示す。実施例1~7で得られたエチレン系重合体は、いずれも[η]が10以上の超高分子量ポリエチレンであった。
【0208】
【0209】
実施例1~7および比較例1~3の結果より、固体状アルミノキサンを固体状担体(S)として用いた本発明のオレフィン重合用触媒である固体触媒成分(X-1)~(X-7)を用いた場合には、アルミノキサンをシリカゲルと接触させて調製した固体状担体(X-8)~(X-10)を用いた場合と比べ、担体粒径が小さく、遷移金属化合物(A)との接触量が多いというファウリングにおいて一般的に不利と見なされる条件下においても、重合時のファウリングやパウダー凝集が起こりにくいことが分かる。
【0210】
<エチレン重合反応により得られる重合体>
[実施例8]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例4で得られた固体触媒成分(X-1)のスラリーを固体分として5.0mg投入した後、水素濃度0.10vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃、0.65MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体50.1gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表5に示す。
【0211】
[実施例9]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例5で得られた固体触媒成分(X-2)のスラリーを固体分として10mg投入した後、水素濃度0.10vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃、0.65MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体34.9gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表5に示す。
【0212】
[実施例10]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例6で得られた固体触媒成分(X-3)のスラリーを固体分として6.0mg投入した後、水素濃度0.10vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃、0.65MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体37.8gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表5に示す。
【0213】
[比較例4]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例16で得られた固体触媒成分(X-13)のスラリーを固体分として6.0mg投入した後、水素濃度0.10vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃、0.65MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体122.5gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表5に示す。
【0214】
[比較例5]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500ミリリットルを添加した後、エチレンを流通させ反応器内をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.375mmol、および調製例17で得られた固体触媒成分(X-14)のスラリーを固体分として15mg投入した後、水素濃度0.75vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて、75℃、0.65MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体62.5gを得た。得られたエチレン系重合体の分析結果を表5に示す。
【0215】
【0216】
実施例8~10および比較例4~5の結果より、本発明のオレフィン重合用触媒を用いたエチレンの単独重合により得られるエチレン単独重合体は、周期表15族または16族元素を含む配位子を有さない遷移金属化合物(A)を用いた場合に比べて、分子量(MFR、[η])、見合いの密度が高いという特徴がある。これはメチル、エチル分岐が少ないためである。さらにビニル、ビニリデンなどの二重結合量も少ないという特徴がある。
【0217】
[実施例11~13]
固体触媒成分(X-11)の代わりにそれぞれ調製例18~20で得られた固体触媒成分(X-15)~(X-17)のスラリーを固体分として表6に記載の重量で投入したこと以外は参考例1と同様の方法にて重合反応を開始した。
【0218】
いずれの例においても、重合開始後90分経過した時点で回転数の低下は確認されず、冷却、脱圧により反応を停止した。オートクレーブの内部を確認したところ、オートクレーブ壁面部や撹拌翼部へのファウリングやポリエチレンパウダーの凝集は認められなかった。
【0219】
実施例11~13におけるファウリングの有無および得られたエチレン系重合体の極限粘度[η]を、実施例1および比較例1~3の結果とともに、表6に示す。実施例11~13で得られたエチレン系重合体は、いずれも[η]が10以上の超高分子量ポリエチレンであった。
【0220】
【0221】
実施例11~13および比較例1~3の結果より、固体状アルミノキサンを固体状担体(S)として用いた本発明のオレフィン重合用触媒である固体触媒成分(X-15)~(X-17)を用いた場合には、アルミノキサンをシリカゲルと接触させて調製した固体状担体(X-8)~(X-10)を用いた場合と比べ、担体粒径が小さく、遷移金属化合物(A)との接触量が多いというファウリングにおいて一般的に不利と見なされる条件下においても、重合時のファウリングやパウダー凝集が起こりにくいことが分かる。