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特許7558667廃水中のセレン汚染を低減するシステムおよび方法
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  • 特許-廃水中のセレン汚染を低減するシステムおよび方法 図1
  • 特許-廃水中のセレン汚染を低減するシステムおよび方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】廃水中のセレン汚染を低減するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20240924BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20240924BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240924BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240924BHJP
   C02F 1/74 20230101ALI20240924BHJP
【FI】
B01D53/50 245
B01D53/46 ZAB
B01D53/78
C02F1/58 H
C02F1/74 C
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020037446
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2020151705
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】16/361,325
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・ラルフス・ガンスレイ
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-202050(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207905(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130013(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273428(US,A1)
【文献】特開平09-047790(JP,A)
【文献】特開2007-319851(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0270657(US,A1)
【文献】国際公開第2017/222741(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/151877(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/00 - 53/96
C02F 1/58
C02F 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガス脱硫システム(104)であって、当該煙道ガス脱硫システム(104)が、
煙道ガス流(126)と接触した後の水性アルカリベースのスラリー(120)を収集するように構成されたリザーバ(116)を備える吸収器(114)であって、前記水性アルカリベースのスラリー(120)水相中に溶解した亜セレン酸を含み、前記亜セレン酸が、前記煙道ガス流(126)に含まれるセレン副産物に由来する吸収器(114)と、
前記リザーバ(116)内の前記水性アルカリベースのスラリー(120)の亜硫酸塩濃度を監視するように構成された亜硫酸塩センサ(130)と、
前記亜硫酸塩センサ(130)と動作可能に結合される空気注入システム(132)であって、前記空気注入システム(132)、前記亜硫酸塩濃度の関数として決定された流量で空気(134)の流れを前記リザーバ(116)に注入するように構成される空気注入システム(132)と、
前記リザーバ(116)と流れ連通して結合される添加剤注入システム(136)であって、前記添加剤注入システム(136)、沈殿剤(138)を前記水性アルカリベースのスラリー(120)に供給するように構成され、前記沈殿剤(138)亜セレン酸反応して水相から前記亜セレン酸硫化セレン、元素状セレン又は他のセレン固体化合物として沈殿させるように構成される添加剤注入システム(136)と
を備える、煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項2】
前記亜硫酸塩センサ(130)及び前記空気注入システム(132)に通信可能に結合されたコントローラ(128)をさらに備え、前記コントローラ(128)、前記亜硫酸塩センサ(130)によって得られた測定された亜硫酸塩濃度を所定の亜硫酸塩濃度と比較するように構成され、かつ前記比較に基づいて前記リザーバ(116)に注入される前記空気(134)の流れの流量を調整するように構成される、請求項1に記載の煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項3】
前記コントローラ(128)、前記空気(134)の流れの前記流量を調整し、前記亜セレン酸又は沈殿亜セレン酸の濃度を前記水性アルカリベースのスラリー(120)中の全セレンの0重量%超に維持するようにさらに構成される、請求項2に記載の煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項4】
前記吸収器(114)、前記リザーバ(116)内に位置決めされた攪拌器(140)であって、前記沈殿剤(138)を前記水性アルカリベースのスラリー(120)に分散させるように構成された攪拌器(140)を備える、請求項1に記載の煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項5】
前記吸収器(114)から排出される廃水流(144)中のセレン濃度を監視するように構成されたセンサ(148)をさらに備える、請求項1に記載の煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項6】
前記沈殿剤が、有機硫化物、硫化ナトリウム、硫化水素又はゼロ価の鉄を含む、請求項1に記載の煙道ガス脱硫システム(104)。
【請求項7】
煙道ガス流(126)を生成するように構成されたボイラ(102)であって、前記煙道ガス流(126)セレン副産物を含むボイラ(102)と、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の煙道ガス脱硫システム(104)と
を備える、発電装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電力生産に関し、より具体的には、亜硫酸塩制御および湿式煙道ガス脱硫を介してセレン汚染を制御するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともいくつかの既知の発電装置は、石炭、石油、泥炭、廃棄物、バイオ燃料、天然ガスなどの炭素および水素含有燃料の燃焼に由来するエネルギーを生成する。炭素と水素に加えて、これらの燃料は、酸素、水分、および汚染物質を含有する場合がある。そのため、このような燃料の燃焼により、灰、二酸化炭素(CO)、硫黄化合物(多くの場合「SOx」と呼ばれる硫黄酸化物の形の)、窒素化合物(多くの場合「NOx」と呼ばれる窒素酸化物の形の)、塩素化合物(多くの場合「HCl」と呼ばれる)、水銀、および/または他の微量元素の形の汚染物質を含有し得るガス流が発生する。
【0003】
少なくともいくつかの既知の発電装置は、大気中に放出する前にガス流から汚染物質の除去を促進する煙道ガス捕捉システムを使用している。例えば、いくつかの既知の発電装置は、煙道ガス脱硫(FGD)システムを使用して、硫黄化合物およびガス流からのセレンなどの微量元素の吸収を促進するスラリーとガス流を接触させることによって汚染物質を除去する。吸収された汚染物質を含むスラリーは、FGDシステムに収集され、吸収された汚染物質の一部を含む廃水流は、さらなる処理を受ける前にFGDシステムから排出される。しかし、廃水流から特定の汚染物質を除去することは困難であり、かつ/または費用がかかることがある。そのため、FGDシステムは、限られた結果しか提供しない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、廃水流中の汚染を低減する方法が提供される。方法は、吸収器を通して煙道ガス流を送ることと、煙道ガス流を水性アルカリベースのスラリーと接触させ、それにより煙道ガス流中のセレン副産物がセレン化合物を水性アルカリベースのスラリー内で形成するようにすることと、水性アルカリベースのスラリー中のセレン化合物の酸化を制御することと、沈殿剤を水性アルカリベースのスラリーに添加し、水性アルカリベースのスラリー内のセレン化合物を沈殿させることとを含む。
【0005】
別の態様では、煙道ガス脱硫システムが提供される。システムは、煙道ガス流との接触後に水性アルカリベースのスラリーを収集するように構成されたリザーバを含む吸収器を含み、水性アルカリベースのスラリーは、内部に溶解したセレン化合物を含む。セレン化合物は、煙道ガス流内に含まれるセレン副産物に由来する。亜硫酸塩センサは、リザーバ内の水性アルカリベースのスラリーの亜硫酸塩濃度を監視するように構成され、空気注入システムは、亜硫酸塩センサと動作可能に結合され、空気注入システムは、亜硫酸塩濃度の関数として決定された流量で空気の流れをリザーバに注入するように構成される。添加剤注入システムは、リザーバと流れ連通して結合され、添加剤注入システムは、沈殿剤を水性アルカリベースのスラリーに供給するように構成され、沈殿剤は、水性アルカリベースのスラリー内のセレン化合物を沈殿させるように構成される。
【0006】
さらに別の態様では、発電装置が提供される。発電装置は、煙道ガス流を生成するように構成されたボイラであって、煙道ガス流は、セレン副産物を含むボイラと、煙道ガス脱硫システムとを含む。システムは、煙道ガス流との接触後に水性アルカリベースのスラリーを収集するように構成されたリザーバを含む吸収器を含み、水性アルカリベースのスラリーは、内部に溶解したセレン化合物を含む。セレン化合物は、煙道ガス流内に含まれるセレン副産物に由来する。亜硫酸塩センサは、リザーバ内の水性アルカリベースのスラリーの亜硫酸塩濃度を監視するように構成され、空気注入システムは、亜硫酸塩センサと動作可能に結合され、空気注入システムは、亜硫酸塩濃度の関数として決定された流量で空気の流れをリザーバに注入するように構成される。添加剤注入システムは、リザーバと流れ連通して結合され、添加剤注入システムは、沈殿剤を水性アルカリベースのスラリーに供給するように構成され、沈殿剤は、水性アルカリベースのスラリー内のセレン化合物を沈殿させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的な発電装置の概略図である。
図2】廃水中のセレン汚染を低減する例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載の実施形態は、発電装置における亜硫酸塩制御および湿式煙道ガス脱硫(FGD)によりセレン汚染を制御するシステムおよび方法に関する。例示的な実施形態では、煙道ガス流は、水性スラリーと接触して煙道ガス流から汚染物質を除去する前に、吸収器を通して送られる。例えば、少なくともいくつかの発電装置では、煙道ガスは、二酸化セレンの形のセレンなどの微量元素を含有する場合がある。二酸化セレンはスラリー中で可溶性であり、水溶液に吸収されると亜セレン酸になる。本明細書に記載のFGDシステムは、酸素を吸収器の底部に収集されたスラリーに導入し、FGD石膏として知られる市場性のある副産物、硫酸カルシウム(CaSO・2HO)を発生する。そのような石膏は有用であるが、FGD石膏製造の有害な結果の1つは、スラリー中の亜セレン酸と酸素との反応により生成されるセレン酸の発生である。セレン酸は、FGDシステムから排出される廃水流から除去することが困難であり、かつ費用がかかることがある。従来の廃水処理プロセスによる処理に加えて、廃水流中の必要なセレン排出レベルに対するセレン酸の適切な処理は、バイオリアクタまたはゼロ価鉄処理ステップもしくは他の特別な処理ステップの追加によって強化される場合がある。
【0009】
本明細書に記載のシステムおよび方法において、スラリーの酸化は、スラリー中のセレン酸の発生の減少を促進するために制御される。例えば、スラリー中の亜セレン酸が酸素と接触し得る時間の量を減らすと、スラリー中のセレン酸の発生の減少が促進される。加えて、本明細書に記載のFGDシステムは、沈殿剤をスラリーに添加する添加剤注入システムを含む。沈殿剤は、酸化されてセレン酸になり得る前に、スラリー中の亜セレン酸と反応して亜セレン酸を硫化セレン、元素状セレン、または他のセレン固体化合物として沈殿させる。そのため、セレンを沈殿させると、FGD液相中の溶存セレンが大幅に減少し、したがって廃水処理システムへのFGD水性排出物中の溶存セレンが減少される。FGDスラリー中の固体セレン沈殿物もまた、プロセスからの石膏固体と共に部分的に除去される。そのため、FGD水性排出物中の残留セレン沈殿固体または溶解した亜セレン酸は、従来の廃水処理プロセスを用いてより簡単に除去され、処理された廃水流中のセレンレベルを閾値レベル未満に確実に下げることが可能である。
【0010】
別途指定のない限り、本明細書で使用される「一般に」、「実質的に」、および「およそ」などの近似を表す文言は、そのように修飾された用語が、絶対的または完全な程度ではなく、当業者によって認識されるようなおおよその程度にのみ適用され得ることを示している。したがって、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似を表す文言は、値を測定するための機器の精度に対応することができる。加えて、別途指定のない限り、「第1の」、「第2の」、などの用語は、本明細書において単に標識として使用されているにすぎず、これらの用語が言及する項目について順序、位置、または階層上の要件を加えることを意図するものではない。さらに、例えば、「第2の」項目への言及は、例えば、「第1の」またはより小さい番号の項目、あるいは「第3の」またはより大きい番号の項目の存在を要求するものではなく、また排除するものでもない。本明細書で使用する場合、「上流」という用語は、回転機械の前方または入口端部を指し、「下流」という用語は、回転機械の下流または排気端部を指す。
【0011】
図1は、例示的な発電装置100の概略図である。例示的な実施形態では、発電装置100は、直列流れ関係で、ボイラ102と、湿式煙道ガス脱硫(WFGD)システム104と、廃水処理システム(WWTS)106とを含む。動作中、石炭、天然ガス、または他の化石燃料などの燃料108は、空気110の供給に加えてボイラ102に供給される。ボイラ102は、燃料108と空気110を燃焼させ、二酸化炭素(CO)、硫黄化合物(SOx)、窒素化合物(NOx)、塩素化合物(HCl)、フッ化水素酸(HF)、フライアッシュ粒子、水銀、および/またはセレンなどの他の微量元素を含み得る煙道ガス流112を発生する。煙道ガス流112は、WFGDシステム104に向けて送られ、煙道ガス流112からの汚染物質の除去を促進する。
【0012】
例示的な実施形態では、WFGDシステム104は、吸収器114を含む。吸収器114は、リザーバ116と、リザーバ116から垂直に延びる洗浄塔118とを含む。リザーバ116は、WFGDシステム104を通して送られて煙道ガス流112と接触する水性アルカリベースのスラリー120を含有する。より具体的には、WFGDシステム104は、1つまたは複数のポンプ122と、洗浄塔118に位置決めされた複数のノズル124とを含む。ポンプ122は、スラリー120をリザーバ116からノズル124を通して送り、ノズル124は、スラリーを煙道ガス流112に向けて排出する。ノズル124に送られるスラリー120の量は、限定はしないが、洗浄塔118に存在する煙道ガスの量、煙道ガス流112中の汚染物質の量、および/またはWFGDシステム104の全体的な設計などのいくつかの要因に依存し得る。
【0013】
煙道ガス流112は吸収器114に送られ、それにより煙道ガス流112が洗浄塔118を通って上昇し、スラリー120と接触する。例示的な実施形態では、ノズル124は、洗浄塔118内のスラリー120を排出し、煙道ガス流112からの硫黄酸化物およびセレン酸化物などの汚染物質の除去を促進する。いくつかの実施形態では、汚染物質は、スラリー120内で可溶性であり、浄化された煙道ガス流126が形成されるように煙道ガス流112からの汚染物質の除去を促進し得る。そのような実施形態では、浄化された煙道ガス流126は吸収器114から排出され、内部に混入した汚染物質を含有するスラリー120はリザーバ116内に収集される。次いで、スラリー120は、ポンプ122を介してノズル124に再循環され得る。
【0014】
例示的な実施形態では、WFGDシステム104はまた、コントローラ128と、亜硫酸塩センサ130と、空気注入システム132とを含む。コントローラ128は、亜硫酸塩センサ130および空気注入システム132と結合され、それにより亜硫酸塩センサ130および空気注入システム132も互いに結合される。コントローラ128は、例えば、様々な供給源からの電気信号を送受信し、信号に関連するデータを少なくとも一時的に記憶し、数値および/または論理演算をデータに対して実行することが可能なコンピュータ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路、回路構成、または任意の他のデバイスを含み得る。コントローラ128は、モニタ、キーボード、または他のタイプのユーザインターフェース、および関連するメモリデバイスを含むことができ、またはそれらに接続することができる。
【0015】
亜硫酸塩センサ130は、リザーバ116内のスラリー120を感知し、リザーバ116内のスラリー120の亜硫酸塩濃度を監視する。例えば、亜硫酸塩センサ130は、継続的にまたは所定の間隔でスラリー120中の亜硫酸塩濃度レベルを測定し得る。所定の間隔は、コントローラ128によって自動的に決定されてもよいし、またはユーザによって手動で設定されてもよい。亜硫酸塩センサ130の使用が本明細書に記載されているが、亜硫酸塩濃度レベルは、例えば、オンラインもしくは定期的な化学分析または他の既知の方法などの他の手段によって決定されてもよい。
【0016】
例示的な実施形態では、空気注入システム132は、測定された亜硫酸塩濃度に基づいて決定された流量で酸化空気134の流れをリザーバ116に注入する。例えば、コントローラ128は、測定された亜硫酸塩濃度を設定点として1つまたは複数の所定の亜硫酸塩濃度レベルと比較し得る。所定の亜硫酸塩濃度レベルは、単一の値または値の範囲を含み得ると考えられる。所定のレベルは、ユーザ入力パラメータとすることができる。例えば、所定の亜硫酸塩濃度値は、約5mg/L~約125mg/L、または約20mg/L~約50mg/Lの範囲であり得る。動作中、コントローラ128は、測定された亜硫酸塩濃度と所定の亜硫酸塩濃度レベルとの比較に基づいて、制御信号を空気注入システム132に提供する。制御信号により、空気注入システム132は、リザーバ116内のスラリー120に導入される酸化空気134の流れの流量を調整する。より具体的には、リザーバ116への酸化空気134の流れの流量は、スラリー120内の所望の亜硫酸塩レベルの維持を促進するように調整される。そのため、スラリー120内のセレン酸などの望ましくない汚染物質化合物の形成が減少される。
【0017】
例えば、上述のように、酸化空気134は、スラリー120中に溶解した汚染物質と反応し、特定の望ましくない汚染物質化合物(例えば、セレン酸)を生成する。例示的な実施形態では、煙道ガス流112中の二酸化硫黄は、スラリー120と反応して亜硫酸塩を水相中に生成し、煙道ガス流112中の二酸化セレン(「セレン副産物」)は、スラリー120と反応して亜セレン酸(「セレン化合物」)を水相中に生成する。亜硫酸塩および亜セレン酸は、洗浄塔118を通して下方向に引き込まれたスラリー120中で可溶性であり、次にリザーバ116に収集される。酸化空気134のリザーバ116への注入は、亜硫酸塩を硫酸塩に変換するのを促進し、次に硫酸塩はカルシウムと反応してFGD石膏を形成し、亜セレン酸からセレン酸への変換を促進する。より高い流量で酸化空気134の流れを注入すると、亜硫酸塩濃度レベルが低下して亜セレン酸の生成が増加され、より低い流量で酸化空気134の流れを注入すると、亜硫酸塩濃度レベルが増加して亜セレン酸の生成が減少される。そのため、スラリー120の亜硫酸塩濃度を監視し、亜硫酸塩濃度に基づいて空気注入を制御することにより、スラリー120中のセレン酸濃度レベルを低レベルに維持することが可能になる。例えば、亜硫酸塩を制御しないシステムでは、典型的には、スラリー中のセレンの90%超が酸化されてセレン酸になる。一実施形態では、コントローラ128は、酸化空気134の流れの流量を調整して亜セレン酸および沈殿亜セレン酸の濃度をスラリー120中の全セレンの約90重量パーセント超に維持し、セレン酸の濃度をスラリー120中のセレンの約10重量パーセント未満に維持する。本明細書で使用する場合、「沈殿亜セレン酸」は、硫化セレン、元素状セレン、または他の固体セレン化合物を含む、沈殿することができる固体セレン化合物のいずれかである。
【0018】
いくつかの実施形態では、スラリー120のpHレベルは、スラリー120中の亜セレン酸の沈殿を促進する所定の範囲内に維持される。例えば、pHを継続的に監視し、pH設定点またはpH範囲を維持するためにアルカリ試薬を添加することができる。例えば、pH設定点を設定値として選択する場合、システムは、pHレベルを約+/-0.1pH単位内に維持する。一実施形態では、pHレベルは、約4.4~約6.8の所定の範囲内、または約5.0~約6.0の所定の範囲内で定義することができる。
【0019】
例示的な実施形態では、WFGDシステム104は、リザーバ116と流れ連通して結合された添加剤注入システム136を含む。添加剤注入システム136は、沈殿剤138の流れをスラリー120に供給する。沈殿剤138は、WFGDシステム104が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の物質であり得る。例示的な沈殿剤は、限定はしないが、有機硫化物、硫化ナトリウム、硫化水素、またはゼロ価鉄を含む。沈殿剤138は、酸化してセレン酸になり得る前に、スラリー120内の亜セレン酸の沈殿を促進する。
【0020】
吸収器114は、リザーバ116内に位置決めされた攪拌器140を含む。攪拌器140は、リザーバ116内で回転可能であり、スラリー120内での沈殿剤138の分散を促進する。一実施形態では、酸化空気134は、1つまたは複数の空気注入場所142でリザーバ116に導入される。上述のように、酸化空気134のリザーバ116への注入は、亜セレン酸からセレン酸への変換を促進する。そのため、攪拌器140は、沈殿剤138が空気注入場所142に存在するように、また亜セレン酸が空気注入場所142に到達し得る前に沈殿するようにスラリー120をリザーバ116内で混合する。したがって、セレン酸の生成は、リザーバ116内で抑制されるように促進される。
【0021】
例示的な実施形態では、スラリー120から形成される廃水流144は、吸収器114から排出される。廃水流144は、とりわけ、沈殿剤138をスラリー120に導入した結果として生成された沈殿亜セレン酸を含む。WWTS106は、吸収器114の下流にあり、内部に廃水流144を受け入れる。WWTS106は、発電装置100が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の機構を使用して、廃水流144からの沈殿亜セレン酸の除去を促進する。例えば、一実施形態では、WWTS106は、沈降を介して廃水流144の固体成分と液体成分を分離する浄化器(図示せず)を含む。そのため、沈殿亜セレン酸を実質的に含まない浄化された廃水流146は、WWTS106から排出される。代替の実施形態では、WWTS106はまた、廃水流144の水相に残っている亜セレン酸をさらに沈殿させて除去するのに使用するために、追加の沈殿剤を廃水流144に添加するための手段を含む。
【0022】
センサ148は、浄化された廃水流146と流れ連通して結合される。センサ148は、浄化された廃水流146中のセレン濃度を監視し、センサ148によって得られたセレン濃度データを使用して、浄化された廃水流146中のセレンレベルを閾値レベル未満に確実に下げることが可能である。あるいは、セレン濃度は、浄化された廃水流146の定期的なサンプルを採取し、サンプルを実験室で分析することによって監視される。
【0023】
図2は、廃水流144中のセレン汚染を低減する例示的な方法200を示すフロー図である。最初に、煙道ガス流112は、吸収器114を通して送られる202。煙道ガス流112は、二酸化セレンなどのセレン副産物を含む。煙道ガス流112は、水性アルカリベースのスラリー120と接触され204、セレン副産物は、水性アルカリベースのスラリー120内で可溶性であり、亜セレン酸などのセレン化合物を形成する。方法200はまた、水性アルカリベースのスラリー120中のセレン化合物の酸化を制御すること206と、沈殿剤を水性アルカリベースのスラリー120に添加すること208とを含み、沈殿剤は、水性アルカリベースのスラリー120内のセレン化合物を沈殿させるように構成される。
【0024】
本明細書に記載の実施形態は、発電装置における亜硫酸塩制御および湿式煙道ガス脱硫(FGD)によりセレン汚染を制御するシステムおよび方法に関する。本明細書に記載のシステムおよび方法は、セレン酸に変換され得る前にスラリー中の亜セレン酸を沈殿させ、スラリー中の亜セレン酸が酸素と接触し得る時間の量を減らすことによって、前述の目的を達成する。そのため、石膏固体で部分的に除去され得る亜セレン酸沈殿物は、従来の廃水処理プロセスを用いてより簡単に除去され、廃水流中のセレンレベルを閾値レベル未満に確実に下げることが可能である。
【0025】
上記の説明は例示のみを意図したものであり、当業者は、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に変更を加えることができることを認識するであろう。例えば、WFGDシステムは、煙道ガス流からの他の汚染物質の除去を促進するために修正されてもよい。本発明の範囲内にあるさらに他の修正は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0026】
煙道ガス脱硫システムの例示的な実施形態を、上記で詳細に説明した。システムは、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、システムの構成要素は、本明細書に記載した他の構成要素から独立に、かつ別個に利用することができる。例えば、廃水流中のセレン汚染を低減するシステムおよび方法は、本明細書に記載の煙道ガス脱硫システムのみでの実施に限定されない。むしろ、例示的な実施形態は、多くの他の発電装置用途に関連して実装および利用することができる。
【0027】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴は、一部の図面に示され、他の図面には示されていないかもしれないが、これは単に便宜上にすぎない。さらに、上記の説明における「一実施形態」への言及は、記載した特徴も組み込んだ付加的な実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図しない。本発明の原理によれば、図面の任意の特徴は、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または特許請求することができる。
【0028】
本発明を様々な特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、本発明が特許請求の範囲の精神および範囲内の修正を加えて実施することができることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0029】
100 発電装置
102 ボイラ
104 湿式煙道ガス脱硫(WFGD)システム
106 廃水処理システム(WWTS)
108 燃料
110 空気
112 煙道ガス流
114 吸収器
116 リザーバ
118 洗浄塔
120 スラリー
122 ポンプ
124 ノズル
126 浄化された煙道ガス流
128 コントローラ
130 亜硫酸塩センサ
132 空気注入システム
134 酸化空気
136 添加剤注入システム
138 沈殿剤
140 攪拌器
142 空気注入場所
144 廃水流
146 浄化された廃水流
148 センサ
200 方法
図1
図2