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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】永久電流スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/355 20230101AFI20240924BHJP
   H10N 60/20 20230101ALI20240924BHJP
【FI】
H10N60/355
H10N60/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020085691
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180280
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 叶
(72)【発明者】
【氏名】小柳 圭
(72)【発明者】
【氏名】中村 英之
(72)【発明者】
【氏名】高見 正平
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/140398(WO,A1)
【文献】特開2007-221013(JP,A)
【文献】特開平03-074886(JP,A)
【文献】特開平05-327041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/355
H10N 60/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を発生させる主コイルと閉回路を形成する無誘導巻コイルと、
前記無誘導巻コイルの超電導状態/常電導状態を切り替えるヒータ部と、
前記無誘導巻コイルからの口出し線の長手方向に沿って電気的に導通し両端が電気的に開放されている添接ワイヤと、を備える永久電流スイッチにおいて、
前記添接ワイヤは、超電導線であり、
前記添接ワイヤの安定化体は、前記口出し線の安定化体よりも高い電気伝導率を持つ、永久電流スイッチ。
【請求項2】
磁場を発生させる主コイルと閉回路を形成する無誘導巻コイルと、
前記無誘導巻コイルの超電導状態/常電導状態を切り替えるヒータ部と、
前記無誘導巻コイルからの口出し線の長手方向に沿って電気的に導通し両端が電気的に開放されている添接ワイヤと、を備える永久電流スイッチにおいて、
前記口出し線と前記添接ワイヤは、ハンダでロウ付け接合されている永久電流スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記添接ワイヤは、超電導線である永久電流スイッチ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記添接ワイヤの超電導体は、前記口出し線の超電導体よりも同等または高い臨界電流値を持つ、永久電流スイッチ。
【請求項5】
請求項2に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記添接ワイヤの安定化体は、前記口出し線の安定化体よりも高い電気伝導率を持つ、永久電流スイッチ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の永久電流スイッチにおいて、
ボビンに巻回される前記無誘導巻コイルの超電導線は、電気絶縁被膜で表面コーティングされており、
前記口出し線は、前記超電導線から前記表面コーティングが除去されている、永久電流スイッチ。
【請求項7】
請求項1に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記口出し線と前記添接ワイヤは、ハンダでロウ付け接合されている永久電流スイッチ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記無誘導巻コイルが巻回するボビンのフランジ側に、前記口出し線と前記添接ワイヤを案内する案内溝が設けられ、樹脂で固定している、永久電流スイッチ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の永久電流スイッチにおいて、
前記口出し線と前記添接ワイヤは、撚り線構造を持つ永久電流スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超電導磁石の永久電流スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
永久電流スイッチ(PCS:Persistent Current Switch)は、一般的に、超電導線を無誘導方式で巻回したコイルとヒータとから構成されている。そしてPCSは、ヒータで無誘導巻コイルの温度を制御しその超電導/常電導の相転移を切り替えて、主コイルと成す閉回路のON/OFF動作をする。
【0003】
またPCSの無誘導巻コイルの材質は、超電導磁石の主コイルの材質とは異なるものが用いられている。超電導磁石の主コイルの材質には、NbTi等の超伝導体と無酸素銅(Cu)の安定化体が一般的に使用されている。これに対しPCSではスイッチ機能を維持するため、安定化体として、Cuに対し低温でも高い電気抵抗を持つ銅ニッケル合金(CuNi)が一般的に使用されている。
【0004】
PCSの無誘導巻コイルは、CuNiを安定化体としたことで、安定化体としてCuを用いている一般の超電導磁石の主コイルより、熱拡散が遅いという性質を持っている。このため、巻き線同士の摩擦熱などの擾乱の発生により、NbTi超電導体を流れる電流の一部がCuNi安定化体に移り、ジュール発熱に対する熱拡散の遅さにより、超電導から常電導に不可逆的な相転移する場合がある。よって、PCSは、僅かな擾乱に対し、クエンチが発生しやすいという性質を持つ。
【0005】
CuNi/NbTi超伝導線を安定化させる第1の公知技術として、MgO等の絶縁体で超伝導線をコーティングするものがある。この公知技術によれば、CuNi/NbTi超伝導線は、線断面の等価熱伝導率が向上するために、クエンチ安定性の指標である最小クエンチエネルギー(MQE:Minimum Quench Energy)が、約1000倍増加する。
【0006】
また第2の公知技術として、CuNi/NbTi超電導線よりも細くかつ絶縁された複数本の熱良導体の線を、この超電導線の周囲に螺旋状に巻き付けるものがある。いずれの公知技術も、CuNi/NbTi超電導線の全長に亘って高熱伝導率の材料を沿わせることで、擾乱による発生熱を、超電導線の長手方向に熱拡散させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】S. Yokohama, S. Yamamoto, S. Nakamura, T. Yamada, “Stabilization of CuNi/NbTi superconductors by MgO powder”, Cryogenics, 31(7), 1991, 521-523.
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-116722公報
【文献】特許第3020140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超電導磁石の冷却方式として、GM冷凍機等を用いる伝導冷却方式や液体ヘリウムを用いる浸漬冷却式がある。このうち伝導冷却方式における主コイルとPCSの冷却は、冷凍機で低温保持した伝熱板に、両者を支持することにより達成される。このため、伝導冷却方式は、浸漬冷却式に比べて冷却安定性が低いといわれている。
【0010】
ところで、伝導冷却方式の超電導磁石に対し発生したクエンチの位置を調査した結果、多くのケースにおいて、永久電流スイッチの無誘導巻コイルの口出し線がクエンチの起点になっていることが見出された。これは、永久電流スイッチの無誘導巻コイルの口出し線は、伝熱板からの冷熱供給が不十分で、擾乱によるCuNi/NbTi超電導線のクエンチ耐性が低下しているためと考えられる。
【0011】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、クエンチ耐性の高い永久電流スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
永久電流スイッチにおいて、磁場を発生させる主コイルと閉回路を形成する無誘導巻コイルと、前記無誘導巻コイルの超電導状態/常電導状態を切り替えるヒータ部と、前記無誘導巻コイルからの口出し線の長手方向に沿って電気的に導通し両端が電気的に開放されている添接ワイヤと、を備え、前記添接ワイヤは、超電導線であり、前記添接ワイヤの安定化体は、前記口出し線の安定化体よりも高い電気伝導率を持つか、もしくは、前記口出し線と前記添接ワイヤは、ハンダでロウ付け接合されていることを特徴とする
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態により、クエンチ耐性の高い永久電流スイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る永久電流スイッチの回路図。
図2】実施形態に係る永久電流スイッチの口出し線及び添接ワイヤの断面図。
図3】実施形態に係る永久電流スイッチの斜視図。
図4】実施形態に係る永久電流スイッチの断面図。
図5】実施形態に係る永久電流スイッチにおける口出し線及び添接ワイヤの配線図。
図6】永久電流スイッチの他の形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る永久電流スイッチ10の回路図である。このように、永久電流スイッチ10は、磁場Bを発生させる主コイル21と閉回路を形成する無誘導巻コイル11と、この無誘導巻コイル11の超電導状態/常電導状態を切り替えるヒータ部12と、無誘導巻コイル11からの口出し線17(17a,17b)の長手方向に沿って電気的に導通し両端が電気的に開放されている添接ワイヤ18(18a,18b)と、を備えている。
【0016】
そして、主コイル21、永久電流スイッチ10及びこれらに接触する構造部材は、外界温度から遮断されて超電導転移の分流温度Tcs以下に保たれる必要があるため、断熱容器22に収容されている。
【0017】
超電導電磁石20は、主コイル21と無誘導巻コイル11とで構成される閉回路を冷却して超電導状態にしたうえで永久電流Iを循環させ、主コイル21から磁場Bを発生させるものである。この閉回路を超電導状態にするための冷却方式は、液体ヘリウムによる浸漬方式や、極低温冷凍機からの冷熱供給による熱伝導方式がある。
【0018】
なお、冷却方式が熱伝導方式である場合、主コイル21及び無誘導巻コイル11は、熱伝導性の高い支持部材(図示略)により支持されており、極低温冷凍機からの冷熱の供給を受ける。上述した二つの冷却方式のいずれであっても、超電導電磁石20に永久電流Iを循環させる起動時に、永久電流スイッチ10(PCS)を用いたOFF/ON動作がなされる。なお、永久電流スイッチ10のOFF/ON動作を伴う永久電流Iの起動方法については、一般的な方法が採用されるので、説明を省略する。
【0019】
主コイル21は、超電導線が一方向に巻回して構成され、永久電流Iが流れることで磁場Bを生成する。永久電流スイッチ10の無誘導巻コイル11は、超電導線がそれぞれ逆方向に巻回された二つのコイルが直列に接続され、永久電流Iが流れても誘導磁場を生成しない。
【0020】
主コイル21の一対の引出し線27(27a,27b)の終端は、接続部材16(16a,16b)に接続されている。また無誘導巻コイル11の一対の口出し線17(17a,17b)の終端も、接続部材16に接続されている。このように主コイル21と永久電流スイッチ10は、双方の終端が接続部材16(16a,16b)において相互に接続し、閉回路を形成している。
【0021】
そして永久電流スイッチ10のヒータ部12は、無誘導巻コイル11に近接配置される電気抵抗体25と、この電気抵抗体25に電力を供給して発熱させ超電導状態の無誘導巻コイル11を常電導状態に切り替える電力制御器26と、を有している。
【0022】
添接ワイヤ18(18a,18b)は、無誘導巻コイル11からの口出し線17(17a,17b)の長手方向に沿って電気的に導通し両端が電気的に開放されている。このように添接ワイヤ18が配置されることで、何らかの原因で口出し線17に擾乱が発生しても、添接ワイヤ18を介して分流・放熱されるために、口出し線17が超電導状態から常電導状態へ転移(クエンチ)することを抑制できる。
【0023】
図2は実施形態に係る永久電流スイッチ10の口出し線17(17a,17b)及び添接ワイヤ18(18a,18b)の断面図である。なおボビン19(図3)に巻回される無誘導巻コイル11の超電導線は、電気絶縁被膜(図示略)で表面コーティングされているが、口出し線17はこの表面コーティングが除去されている。そして、口出し線17は、温度によって超電導状態と常電導状態とが切り替わる第1超電導体31と、温度によらず常電導状態を示す第1安定化体41とから構成されている。
【0024】
この第1超電導体31は、広く実用化されているNbTi合金が例示されるが、これに限定されることは無い。なお、第1超電導体31と第1安定化体41とは、断面視において層状に形成されているが、このような構造に限定されることはなく例えば海島状に形成される場合もある。
【0025】
ところで、図示を省略するが、主コイル21の引出し線27(図1)も、断面視において、永久電流スイッチ10の口出し線17(図2)と同様の形態を有している。そして、無誘導巻コイル11の第1超電導体31と同様に、主コイル21の超電導体もNbTi合金が適用されている。
【0026】
一方において、主コイル21の安定化体は電気抵抗値の小さい無酸素銅で構成されるのに対し、無誘導巻コイル11の第1安定化体41は無酸素銅よりも電気抵抗値の大きい銅合金で構成されている。このように第1安定化体41の電気抵抗値を大きくする理由は、永久電流Iの循環起動時に永久電流スイッチ10がOFF動作する際、無誘導巻コイル11の電気抵抗が十分大きな値を示す必要があるためである。
【0027】
このように主コイル21では安定化体に無酸素銅が用いられているのに対し、無誘導巻コイル11では第1安定化体41に高抵抗の銅ニッケル合金(CuNi)が用いられている。このCuNiを安定化体とする超電導線は、無酸素銅を安定化体とする超電導線と比べて安定性が低く、磁気的不安定性によってクエンチが生じ易い。このため超電導電磁石20では、永久電流スイッチ10及びその周辺にクエンチ発生のリスクを抱えているといえる。
【0028】
添接ワイヤ18(図2)の直径は、口出し線17の直径と同じかもしくはそれよりも小さく設定される。また添接ワイヤ18は、超電導線で構成することもできる。この場合、添接ワイヤ18は、温度によって超電導状態と常電導状態とが切り替わる第2超電導体32と、温度によらず常電導状態を示す第2安定化体42とから構成されている。第1超電導体31及び第2超電導体32、並びに第1安定化体41及び第2安定化体42は、それぞれ同じ材質を用いることができる。また添接ワイヤ18(図2)は、第2安定化体42を用いずに第2超電導体32のみの素線で構成することもできる。
【0029】
一方において、添接ワイヤ18の第2安定化体42は、口出し線17の第1安定化体41よりも高い電気伝導率を持つ材質を選択してもよい。具体的には、第1安定化体41が銅合金(CuNi)で構成される口出し線17に対し、添接ワイヤ18として、第2安定化体42が純銅で構成される主コイル21の超電導線を用いてもよい。
【0030】
ところで、高い電気伝導率を持つ金属は高い熱伝導率を持つことは周知である。このため、添接ワイヤ18の第2安定化体42が上述した特徴を有することで、何らかの原因で口出し線17に擾乱が発生しても、添接ワイヤ18を介して分流・放熱されるために、口出し線17の超電導状態から常電導状態への転移(クエンチ)を効果的に抑制できる。
【0031】
また添接ワイヤ18の第2超電導体32は、口出し線17の第1超電導体31よりも高い臨界電流値を持つ材質を選択してもよい。具体的には、第1超電導体31がNbTiであった場合、第2超電導体32としてMgB2やNb3Snを採用することが考えられる。
【0032】
このため、添接ワイヤ18の第2超電導体32が上述した特徴を有することで、何らかの原因で口出し線17に擾乱が発生しても、電流が隣の添接ワイヤ18の第2超電導体32へ迂回する。これにより、口出し線17の第1安定化体41で発生するジュール発熱を低減させ、口出し線17の超電導状態から常電導状態への転移(クエンチ)を効果的に抑制できる。
【0033】
また口出し線17及び添接ワイヤ18は、ハンダ35でロウ付け接合されている。この接合は、口出し線17及び添接ワイヤ18の双方において表面の絶縁コーティングを剥がし、全面ハンダメッキする。その後、口出し線17に添接ワイヤ18を添わせて、両者の隙間を全部埋めるようハンダ35で接合する。ハンダ35はSn含量が多く、熱伝導率が高いものが適している。
【0034】
ハンダ35でロウ付け接合された後、口出し線17及び添接ワイヤ18は、絶縁テープ36で電気的に絶縁される。この絶縁テープ36は、超耐寒性を持つポリイミドフィルム等を使用する他にプレプレグテープなど電気絶縁性を有するものが好適に採用される。ここで、口出し線17の第1安定化体41を構成するCuNiの熱伝導率は、4Kにおいて約1W/m/Kである。
【0035】
これに対し、ハンダ35(Sn64%-Pb)の熱伝導率は1200W/m/Kであり、CuNi第1安定化体41の約1000倍である。このようにハンダ35で口出し線17及び添接ワイヤ18を全面メッキすることで、何らかの原因で口出し線17に擾乱が発生しても、ハンダ35を介して放熱されるために、口出し線17の超電導状態から常電導状態への転移(クエンチ)を効果的に抑制できる。
【0036】
図3は実施形態に係る永久電流スイッチ10の斜視図であり、図4はその断面図である。このように永久電流スイッチ10は、無誘導巻コイル11が巻回するボビン19と、無誘導巻コイル11及びボビン19の界面における電気絶縁性を確保する絶縁層37と、ボビン19の両端にあるフランジの一方の内側に配置される絶縁板39と、無誘導巻コイル11の外周面に接し冷凍機又は冷媒からの冷熱や電気抵抗体25(図1)からの発熱を伝達する伝熱板38と、を具備している。
【0037】
図5は実施形態に係る永久電流スイッチ10における口出し線17及び添接ワイヤ18の配線図である。このように永久電流スイッチ10には、無誘導巻コイル11が巻回するボビン19(図4)のフランジ側に配置された絶縁板39に、口出し線17と添接ワイヤ18を案内する案内溝46が設けられている。また、この絶縁板39には、無誘導巻コイル11の超電導線の巻回方向を反転させる反転部材45が設けられている。
【0038】
案内溝46は、口出し線17と添接ワイヤ18が全部埋没する程度の十分な深さを有し、案内された口出し線17と添接ワイヤ18を樹脂で固定する。一般的なコイルの口出し線は、冷熱が供給されにくい位置に配置されていることが多く、擾乱でクエンチの起点となりやすい。
【0039】
しかし、ボビン19のフランジ側に設けられた案内溝46に口出し線17と添接ワイヤ18が樹脂で固定配置されることで、口出し線の動きによる機械的な擾乱を封じる効果がある。また線の周囲にある樹脂が熱容量を持ち、口出し線の熱安定性を向上させることが期待できる。擾乱が発生しても口出し線17の超電導状態から常電導状態への転移(クエンチ)を効果的に抑制できる。
【0040】
図6は永久電流スイッチ10の他の形態を示す斜視図である。この形態においては、口出し線17と添接ワイヤ18は、撚り線構造を持つところに特徴がある。一般に、電流と垂直する横磁界は、フィラメント内の電流密度の不均一度を緩和する。このため、フィラメント径を小さくすれば、超電導線は横磁界に対し、安定となる。しかし、電流と平行する縦磁界をかけると、縦磁界の大きさと向きによって、フィラメント内の電流分布の飽和領域が変化しやすくなり、自発的な磁束跳躍、磁気的不安定性が起こってしまう。
【0041】
そこで、口出し線17と添接ワイヤ18が撚り線構造を持つことで、電流と磁界の向きをずらすことができ、縦磁界に対する超電導線の磁気的不安定性を緩和させることができる。撚り線構造をとることで、口出し線17の電気接続の容易性を損なうことなく、磁気擾乱を効果的に抑制することができる。また口出し線17との熱接触面積が増え、熱的に安定化させる効果がある。
【0042】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の永久電流スイッチによれば、口出し線の長手方向に沿って添接ワイヤが設けられることにより、クエンチ耐性を高くすることが可能となる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…永久電流スイッチ、11…無誘導巻コイル、12…ヒータ部、16…接続部材、17(17a,17b)…口出し線、18(18a,18b)…添接ワイヤ、19…ボビン、20…超電導電磁石、21…主コイル、22…断熱容器、25…電気抵抗体、26…電力制御器、27(27a,27b)…引出し線、31…第1超電導体、32…第2超電導体、35…ハンダ、36…絶縁テープ、37…絶縁層、38…伝熱板、39…絶縁板、41…第1安定化体、42…第2安定化体、42…安定化体、45…反転部材、46…案内溝、B…磁場、I…循環電流。
図1
図2
図3
図4
図5
図6