(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】2つのケーブルループ間にリレー構造体を備えるテルハ運搬装置
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20240924BHJP
B61B 12/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B61B12/02 H
B61B12/02 A
B61B12/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020121025
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-06
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515238552
【氏名又は名称】ポマ
【氏名又は名称原語表記】POMA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】プランタール・オーレリアン
(72)【発明者】
【氏名】マルナス・リュック
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-023413(JP,A)
【文献】特開平04-287757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 7/00
B61B 11/00
B61B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬装置であって、
第1のエンドプーリ(101)と、
第2のエンドプーリ(102)と、
第1の従動プーリ(110)と第2の従動プーリ(120)とを備えるリレー構造体(2)と、
前記第1のエンドプーリ(101)および前記第1の従動プーリ(110)に係合した第1のケーブルループ(11)と、
前記第2のエンドプーリ(102)および前記第2の従動プーリ(120)に係合した第2のケーブルループ(12)と、
係合解除可能な連結手段によって前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとに交互に連結可能である少なくとも1台の乗り物と、
を備える運搬装置であって、
前記リレー構造体(2)は、前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとから連結解除された前記乗り物を前記第1のケーブルループ(11)から前記第2のケーブルループ(12)へ移送する乗り物移送手段(20)を備え、
前記リレー構造体(2)は固定ガイド軌道(22)を備え、前記固定ガイド軌道は前記固定ガイド軌道に対して並進的に移動可能である構造体(21)を支持し、前記移動可能構造体(21)は前記第1の従動プーリ(110)と前記第2の従動プーリ(120)と前記乗り物移送手段(20)とを支えることを特徴とする
運搬装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬装置において、前記乗り物移送手段(20)は前記2つのケーブルループ(11、12)間の前記乗り物の通過を確保する少なくとも1本の接続レールを備えることを特徴とする運搬装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運搬装置において、前記乗り物移送手段(20)は、前記乗り物を前記第1のケーブルループ(11)から連結解除可能で
ある少なくとも1つの係合解除装置(14)と、前記乗り物を前記第2のケーブルループ(12)に連結可能で
ある係合装置(14)と、を備えることを特徴とする運搬装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は
、前記固定ガイド軌道(22)の下に位置する力均衡化部材(3)に係合することを特徴とする運搬装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運搬装置において、前記力均衡化部材(3)は前記移動可能構造体(21)に接続されたジャッキを備えることを特徴とする運搬装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の運搬装置において、前記力均衡化部材(3)は垂下均衡化体(32)を備えることを特徴とする運搬装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は、前記固定ガイド軌道(22)上を転動可能な少なくとも1組の車輪(25)を備える少なくとも1つの運搬車を備えることを特徴とする運搬装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は自身の2つの長手方向端(211、212)において開口しており、運搬中の前記乗
り物の通過を可能にすることを特徴とする運搬装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記第1の従動プーリ(110)は第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリ(120)は第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の回転軸心は、前記第1の回転軸心から離れて位置
することを特徴とする運搬装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記第1の従動プーリ(110)は第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリ(120)は前記第1の回転軸心と一致する第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされることを特徴とする運搬装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記固定ガイド軌道(22)は支持体(24)によって地面よりも高い高度を有するように支持されることを特徴とする運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は物資を運搬するための、ケーブルループによって支えられて駆動される1つ以上の乗り物(例えば、ゴンドラ又はチェア)を備えるケーブル運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、運搬装置、より具体的には、終端駅(それぞれ、出発駅と到着駅)間の空中の運搬を確実にすることを目的とした運搬装置、に関する。
【0003】
より具体的には、本発明は、連続的に作動する運搬牽引ケーブルによって2つの終端駅を接続するゴンドラリフト又はチェアリフト装置と、列をなして連結されて駅への入口においてケーブルから係合解除されるゴンドラ又はチェアと、に関する。
【0004】
駅のそれぞれは、ケーブルが通るエンドプーリと、当該駅の出口においてケーブルに再連結される前にゴンドラが周回する移送レールと、乗客を乗せる且つ/又は降ろすためのプラットホームと、を備える。
【0005】
係合解除可能なゴンドラ又はチェアを有するタイプの運搬装置は、軽微な基本的施設で高い運搬処理能力を可能にする。
【0006】
重要な高低差を有するルートの延長に加え、とりわけゴンドラの大きさ及び数の増加による運搬される荷重の増加は、運搬牽引ケーブルの重要な区画を意味する。これら重要な区画は、とりわけ、プーリ上でのケーブルの信頼性のある安全な通過を確保するという技術的な課題を提起し、当該ケーブルが非常に硬いことが示される。
【0007】
中間駅の各々の側に2つの連続した区画を備えるゴンドラリフト装置が既知である。中間駅において、当該2つの区画で両方向に周回するゴンドラが通過できる。各区画は運搬牽引ケーブルと駆動モータとを有する独立した装置を構成する。駅(とりわけ中間駅)の入口では、ゴンドラは、乗客を乗せる且つ/又は降ろすために、ケーブルから連結解除されて減速する。
【0008】
この装置の中間駅は、再加速後に当該駅の出口で同一区画のケーブルの戻りストランドにゴンドラを再連結するハーフループアイドラレールと、2つの区画間の接続レールであって、ケーブルに連結される前にゴンドラが再加速される後続区画へのゴンドラの移送を可能にする接続レールと、を備える。よって、乗客は、ゴンドラを降りることなく2つの区画を連続して通過するであろう。
【0009】
しかし、2つの区画の間に中間駅が存在することで、全体の装置が複雑になり、そのコストが増加する。さらに、中間駅でゴンドラを減速させると、移動時間が長くなり、心地の悪いブレーキ及び再加速のフェーズを乗客に対して強いる。
【0010】
EP0491632(特許文献1)にはゴンドラリフト装置が記載されている。当該ゴンドラリフト装置は、一方が他方に続くように延在する第1及び第2のループと、2つのループの接合部に配置され第1のループの従動プーリと第2のループの従動プーリとを備えるテクニカルリレーと、これらの従動プーリを避けながら2つのループ間でのゴンドラの移送を確実にする2本の接続レールと、を備える。
【0011】
張力付与システムは、テクニカルリレーにおいて一方のループから他方のループへ張力を伝達し他方のループにより張力を吸収することで、2つのループに共有される。この目的のために、従動プーリは、ゴンドラの支持運搬車によって支えられる。支持運搬車は接続レール上でケーブルの方向に変位させられる。張力を吸収するためのジャッキが当該運搬車に荷重をかける。
【0012】
よって、ゴンドラはループから係合解除されて、運搬車を介して他方のループに移送される。他方のループ上でゴンドラは再び係合される。
【0013】
テクニカルリレーをラインと一体化して運搬ケーブルを2つの独立した閉ループに分割すると、装置の改良を必要とせずケーブルの区画を著しく縮めることが可能になる。2つの独立した閉ループは、それぞれ、下流駅とテクニカルリレーとの間、並びにテクニカルリレーと上流駅との間に延在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、この装置においては、一方のループから他方のループへの張力の移送及び吸収が理由で、2つのループ上でケーブルの張力を共同で調整することはやりにくい。
【0016】
そのうえ、テクニカルリレーの高さにおけるケーブルの張力を調整するための十分な容量を利用可能にするためには、従動プーリをこのリレーの内部で変位させることが必要であるが、これにより、テクニカルリレーの長さが重要になる。
【0017】
さらに、接続レールは、従動プーリ支持運搬車とは独立した構造体によって支持されているが、これにより、乗り物の係合解除フェーズと係合フェーズとの間の連携という課題が提起される。
【0018】
別の欠点がテクニカルリレーの構成において存在する。実際に、従動プーリ支持運搬車のみが移動可能であるのに対し、その他の構造要素は固定されている。これにより、コンパクト性、機械的接続、並びに固定された要素と移動可能な要素との間の結合という課題が提起される。
【0019】
最後に、このテクニカルリレーが乗車及び/又降車プラットホームから除外されているという事実により、テクニカルリレーを、中間駅に役立つように使用することも、故障又は事故の際に乗客を退避させるように使用することさえも、不可能である。
【0020】
本発明は、テクニカルリレーの長さを減少させつつ、一方のケーブルループから他方のケーブルループへの移送のためのテクニカルリレーの構造を単純化することでこれらの技術的な課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は以下によって達成される。係合解除可能な乗り物及び運搬ケーブルによって人を運搬するための装置であって、
第1のエンドプーリと、
第2のエンドプーリと、
第1の従動プーリと第2の従動プーリとを備えるリレー構造体と、
前記第1のエンドプーリと前記第1の従動プーリとに係合した第1のケーブルループと、
前記第2のエンドプーリと前記第2の従動プーリとに係合した第2のケーブルループと、
係合解除可能な連結手段によって前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとに交互に連結可能である少なくとも1台の乗り物と、
を備える装置。
【0022】
前記リレー構造体は、前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとから連結解除された前記乗り物を前記第1のケーブルループから前記第2のケーブルループへ移送する手段を備える。注目すべきことに、前記リレー構造体は固定ガイド軌道を備え、前記固定ガイド軌道は前記固定ガイド軌道に対して並進的に移動可能である構造体を支持し、前記移動可能構造体は前記第1の従動プーリと前記第2の従動プーリと前記乗り物移送手段とを支える。
【0023】
よって、本発明によれば、テクニカルリレーは完全に移動可能になり、全ての必須の機械的構成要素(とりわけ、従動プーリ、乗り物移送手段、及びケーブルを係合/係合解除するための手段)を乗せる。移動可能構造体のおかげで、テクニカルリレーは、2つの独立したループを形成するケーブルに荷重をかける機能により変位する。
【0024】
装置のエンドプーリは終端駅に又は他のリレー構造体に位置してもよい。
【0025】
有利な特徴によれば、前記移送手段は前記2つのケーブルループの間における前記乗り物の通過を確保する少なくとも1本の接続レールを備える。
【0026】
実施形態によれば、前記移送手段は、前記乗り物を前記第1のケーブルループから連結解除可能であり好ましくは前記第1のエンドプーリと前記第1の従動プーリとの間に位置する少なくとも1つの係合解除装置と、前記乗り物を前記第2のケーブルループに連結可能であり好ましくは前記第2の従動プーリと前記第2のエンドプーリとの間に位置する係合装置と、を備える。
【0027】
他の特徴によれば、前記移動可能構造体は、例えば前記固定ガイド軌道上又はその下に配置された力均衡化部材に係合する。この力吸収部材は使用条件におけるケーブルループの公称張力を保証することを目的とする。前記力均衡化部材は、とりわけ、前記移動可能構造体に接続されたジャッキを備えてもよい。このジャッキは、例えば、油圧ジャッキ、気圧ジャッキ、又は電気機械的ジャッキであり得る。代替的又は補完的には、前記力均衡化部材は垂下均衡化体を備えてもよい。
【0028】
本発明の具体的な代替的形態によれば、前記移動可能構造体は、前記固定ガイド軌道上を転動可能な少なくとも1組の車輪を備える運搬車を備える。
【0029】
好ましくは、前記移動可能構造体は自身の2つの長手方向端において開口しており、運搬中の前記乗り物の通過を可能にする。
【0030】
本発明の他の代替的実施形態によれば、前記第1の従動プーリは第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリは第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体に対して回転式にガイドされ、前記第2の回転軸心は、前記第1の回転軸心から離れて位置し、好ましくは前記第1の回転軸心と平行である。
【0031】
代替的形態によれば、前記第1の従動プーリは第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリは前記第1の回転軸心と一致する第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体に対して回転式にガイドされる。
【0032】
任意に、移動可能構造体は、乗客又は荷物を乗せる又は降ろすことを可能にする少なくとも1つのプラットホームを備える。移動可能構造体が中間駅を構成することを目的としていないと仮定したとしても、損傷又は悪天候の際に乗客の退避又は降車を可能にするためにこのプラットホームを備えることができる。
【0033】
好ましくは、このプラットホームは移送手段と一体化している。
【0034】
本発明によれば、前記固定ガイド軌道は支持体によって高度を有するように支持される、とも規定される。
【0035】
本発明の装置と一体化させることを目的としたリレー構造体は特にコンパクトであり、自動的な移動可能構造体を備える。この移動可能構造体は、連続した区画の2つのループ間での乗り物の安全で迅速な移送に加え、2つのループ間でのケーブルの張力の信頼性のある正確な調整を可能にする。
【0036】
さらに、このリレー構造体の内部では、機械的構成要素、乗り物、ひいては乗客が、移動可能構造体を通過しながら外部環境から十分に保護される。これにより、本発明の装置は、気象条件が厳しいものとなり得る高い山々での適用に対して、特によく適する。
【0037】
本発明の装置は、利点(とりわけ、装置の簡潔性、処理能力、及び既存レイアウト)を維持しつつ、縮められた区画の運搬牽引ケーブルを用いてもよい。
【0038】
よって、移動可能構造体の簡易な変位と係合解除とによって高い開拓柔軟性及び保守容易性が提供される。これにより、最適な可用率が保証される。
【0039】
本発明の装置は、揺れもブレーキもなく移動の両方向に対称的に動作する。これにより、故障及び交通の予期しない中断が避けられ、ひいては乗客の運搬を流動的、快適、且つ安全にする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下に詳細に記載される添付の図面を参照しながら、後に続く説明を読むとより明確になるであろう。
【
図1】本発明の装置の実施形態の全体を示す模式図である。
【
図2】本発明の装置と一体化したリレー構造体の第1の実施形態を示す模式図である。
【
図3】本発明の装置と一体化したリレー構造体の第2の実施形態を示す模式図である。
【
図4】本発明の装置と一体化したリレー構造体の第3の実施形態を示す模式図である。 さらなる明確性のため、同一又は類似の要素には、すべての図面において同一の参照記号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
【0042】
一般的には、欧州特許出願公開第0491632号明細書に記載されるように、この装置は乗り物(不図示)用の運搬牽引ケーブルを備える。これらの乗り物はとりわけ1つ以上のゴンドラリフト又は一連のチェアリフトからなるが、それらに限定されない。1つ以上のゴンドラリフト又は一連のチェアリフトは、例えば下流の第1の終端駅1aと例えば第1の終端駅の上流に位置する第2の終端駅1bとの間で閉回路において延在するライン1上で、これらの駅に配置されたエンドプーリ101、102を通過しながら変位させられることを目的としている。
【0043】
慣例では、ライン1のケーブルは支持体(ここでは不図示)によって支えられる支持及び圧縮ローラ13によって支持される。乗り物は、係合解除可能なクランプ(不図示)を有する運搬車によってケーブルに連結される。当該クランプは、終端駅1a、1bの入口で開いて乗り物をケーブルから連結解除する。
【0044】
終端駅1a、1bにおいては、乗り物は、乗客を乗せたり降ろしたりするために移送レール(不図示)上を低速で周回してから、当該駅の出口においてケーブルの戻りストランド上で再加速されてライン1に再連結される。
【0045】
ケーブルの区画は異なる要因の機能により決定する。異なる要因は、本質的には、2つの終端駅1a、1b間の高低差と、ライン1上で当該ケーブルのループによって支持される乗り物の荷重(とりわけ、重量)及び数と、である。
【0046】
慣例では、
図1に示されるように、ケーブルライン1は2つのループ11、12に細分される。2つのループ11、12のうち、一方のループ11は、第1の終端駅1aとリレー構造体2からなるテクニカルリレーとの間に閉回路内で延在してライン1の第1の区画の境界を定めるのに対し、他方のループ12は、この同一のリレー構造体2と第2の終端駅1bとの間に延在してライン1の第2の区画の境界を定める。
【0047】
第1のケーブルループ11は、一方側で第1のエンドプーリ101に係合し、他方側で第1の従動プーリ110に係合する。これに対し、第2のケーブルループ12は、一方側で第2のエンドプーリ102に係合し、他方側で第2の従動プーリ120に係合する。
【0048】
よって、各ループ11、12はリレー構造体2に取り付けられた従動プーリ(それぞれ、第1の従動プーリ110及び第2の従動プーリ120)上を通過する。よって、ケーブルの区画は著しく縮められると考えられる。
【0049】
既知の手法では、リレー構造体2は、一方のループから他方のループへの乗り物の通過を確保する移送手段を備える。当該移送手段は、2つの従動プーリ110、120を避けながら2つのループ11、12を接続する少なくとも1本の接続レール20と、それぞれ接続レール20の入口端及び出口端において、終端駅1a、1bが備える移送レールでの手法と同様の手法でケーブル上の乗り物を係合解除及び係合することを確実にする装置14と、を備える。
【0050】
図2、
図3、及び
図4は、概略的且つ部分的に、本発明に係る運搬装置のリレー構造体2の異なる実施形態を示す。
【0051】
本発明によれば、リレー構造体2は固定ガイド軌道22を備える。固定ガイド軌道22は、固定ガイド軌道22に対して並進的に移動可能である構造体21を支持する。
【0052】
移動可能構造体21は第1の従動プーリ110及び第2の従動プーリ120を支え、乗り物移送手段20を乗せる。このように、これらは当該構造体と一体であり、当該構造体と一緒に変位可能である。
【0053】
示された実施形態では、移動可能構造体21は運搬車からなる。運搬車は少なくとも2組の車輪25を備える。当該少なくとも2組の車輪25は、上面がほぼ平坦であるガイド線路22上を確実に転がる。ここでは、固定された線路22は、乗り物の到着及び出発軌道の平面にできるだけ近く位置するように、支持体24又は直立材によって高度を有するように支持される。
【0054】
この運搬車は、トンネルのように、自身の2つの長手方向端において開口211、212を有して、ケーブルライン1の2つの区画を形成するループ11、12間で運搬中の乗り物を保護しながら通過させることができる。
【0055】
不図示の代替的形態によれば、2つの従動プーリ110、120及び接続レール(複数可)20用の支持フレームをとりわけ支えるドリー又はプラットホームの形状を有する移動可能構造体21を製造することができる。
【0056】
このプラットホームは屋根部を備えてもよい。屋根部により、外部環境と安全及び保守要員の介入を可能にする全てのアクセス手段とから機械的構成要素を保護することができる。
【0057】
図3に示される実施形態では、従動プーリ110、120の軸心はライン1の方向にずれている。
【0058】
よって、第1の従動プーリ110は第1の回転軸心X1を中心に、移動可能構造体21に対して回転式にガイドされる。第2の従動プーリ120は第2の回転軸心X2を中心に、移動可能構造体21に対して回転式にガイドされる。第2の回転軸心X2は、第1の回転軸心から離れて位置し、好ましくは第1の回転軸心と平行である。
【0059】
よって、2つのループ11、12は、エンドプーリのうちの一方(例えば、下流駅のプーリ)に連結されたモータ(不図示)によって駆動されながら同一の速度で動く。各ループ11、12は駆動モータを備えてもよく、適切な手段(とりわけ、2つの従動プーリ110、120間のリンク)によって同期性が保証される。
【0060】
好ましくは、従動プーリ110、120は従動であり、そのケーブルは、
図2、
図3、及び
図4に示される構成のように、終端駅1a、1bによって確実に駆動される。
【0061】
しかし、不図示の代替的形態によれば、2つの従動プーリは、同様に同期して回転するように、介在軸によって機械的に連結され得る。
【0062】
図2及び
図4に示される実施形態では、第1の従動プーリ110は第1の回転軸心X1を中心に、移動可能構造体21に対して回転式にガイドされる。第2の従動プーリ120は、第2の回転軸心X2を中心に、移動可能構造体21に対して回転式にガイドされる。第2の回転軸心X2は、ここでは、第1の回転軸心X1と一致している。
【0063】
不図示の他の実施形態では、これら従動プーリは、2つの重畳された溝又は二重の溝を有する1つのプーリからなってもよく、各溝はループのうち一方に関連付けられる。
【0064】
2つの従動プーリ110、120はループ11、12の平面内にあってもよい。この場合、接続レール20は上方にずれている。又は、ずれが分担され、プーリが下方にわずかにずれ、レールが上方にわずかにずれる。リレー構造体2のテクニカルリレーの動作はこれらの配置によっては変更されない。
【0065】
本発明の当該2つの実施形態では、移送手段は、乗り物の均一の軌道を維持するためにループ11、12の延長線において直線的に延在する接続レール20を備える。本質的によく知られ且つとりわけEP 0 491 632に記載された手法において、乗り物の軌道の邪魔にならないように、軸心は傾斜しており、ローラは従動プーリ110、120の平面においてケーブル1を逸れる。
【0066】
本発明によれば、接続レール20は、移動可能構造体21(例えば、構造体21の床)によって直接的に支えられ、任意にタイヤを備えるローラなどの駆動手段を備える。駆動手段は、ケーブルから連結解除されながら接続レール20上で変位されている乗り物の運搬車と摩擦により係合する。
【0067】
これらのローラは、任意の適切な手段で、ケーブル上の力(不図示)の吸収により駆動されてケーブルの速度で回転し、その際、乗り物が減速したり方向転換したりすることなくリレー構造体2の移動可能構造体21を通過するようにする。
【0068】
各ループ11、12は、それぞれのエンドプーリ101、102と共働する、当該ループ自身のケーブル張力付与システムを備えてもよいが、優先的な実施形態では、つり合い重り又はジャッキを有する共通の張力付与システムがエンドプーリのうちの一方(例えば、上流駅のエンドプーリ)と共働する。
【0069】
本発明によれば、力均衡化部材3は、ループ11、12の両方向に並進運動可能になるために、移動可能構造体21を引っ張る又は押すように当該移動可能構造体21に対して荷重をかける。これにより、ライン1のケーブルの張力の吸収と2つのループ間での力の共有とを確実にする。
【0070】
このようにして、移動可能構造体21は力均衡化部材3に係合する。力均衡化部材3は、好ましくは固定ガイド軌道22上又はその下に取り付けられ、ここでは移動可能構造体21を形成する運搬車に固定される。
【0071】
図2及び
図3に示される実施形態では、力均衡化部材3は油圧ジャッキからなる。油圧ジャッキのロッド30は、移動可能構造体21のシャシー23に固定される。
【0072】
図4の実施形態では、力均衡化部材3は、バラストを形成する少なくとも1つの均衡化体32を備える。均衡化体32は、一方側で、移動可能構造体21に固定されたケーブル31であって角度プーリ33を通るケーブル31の端から垂下し、他方側で、ここでは支持体24のうち一方の内部に収容された垂直井に導かれる。
【0073】
必要に応じて、戻り部材(不図示)が、均衡化部材3とは反対側で、移動可能構造体21に接続されて、均衡化体32の作用を伸縮自在に補償する。
【0074】
本発明の不図示の代替的形態によれば、移動可能構造体21は少なくとも1つのプラットホーム(不図示)を備える。当該少なくとも1つのプラットホームは、乗り物が停車したとき又はプログラムされた減速フェーズ中又は故障の際のうちいずれかにおいて、リレー構造体2内で乗客を乗せる又は降ろすことを可能にする。このプラットホームは、好ましくは、移動可能構造体21に収容された移送手段20と一体である。
【0075】
リレー構造体2と一体化したテクニカルリレーの動作は以下のように行われる。
【0076】
第1のループ11上で運搬されてリレー構造体2に到着する乗り物は、移動可能構造体21内にその長手方向入口開口211を介して突き進む。この段階では、乗り物の運搬車は接続レール20に係合しているのに対し、連結クランプは開いて乗り物を第1のループ11のケーブルから解放する。
【0077】
乗り物は、接続レール20上の自身のローラによって第2のループ12の方向に駆動されながら、移動可能構造体21の内部で移動し続ける。移動可能構造体21の接続レール20上の移動端に到着すると、乗り物は、移動可能構造体21の長手方向出口開口212の段階を越える前に又はその時点で、クランプを閉じることで第2のループ12のケーブル上に連結される。
【0078】
同様に、反対に周回している乗り物は、移動可能構造体21において対称的に収容されている他方の接続レール20上で転がりながらリレー構造体2を通過する。よって、駅2における通過は、減速したり大きなルート変更をしたりすることなく、保護された状態で起こる。これにより、乗り物の振動及び揺れが避けられる。
【0079】
移動可能構造体21をリレー構造体2と一体化させても何ら困難は生じない。なぜなら、移動可能構造体21は、長手方向並進運動の自由を有して、固定された線路22上で配置されて導かれ、故障の際に簡単に変位させてもよく、重整備作業用にクレーンによって係合解除されてもよいためである。
【0080】
リレー構造体2は、必ずしも2つの区画間のライン1上の中間点に位置するわけではなく、アンカリングを補強しつつライン1の2つの区画間の駅の高さにおいて方向転換が可能である。
【0081】
本発明は、より具体的に記載及び図示された実施形態に限定されず、同等性の範囲において残っている任意の代替的形態にまで拡大する。本発明は、とりわけ、固定された線路上で並進的に移動可能である数個のモジュールにおいて配置されたテクニカルリレーの代替的形態、又は、テクニカルリレーが接続レール20上で乗り物を駆動するための手段を備えておらず、これら乗り物が主に重力によって変位する代替的形態、にまで拡大する。
【0082】
必要に応じて、当該装置の終端駅として記載された駅1a、1bのうち一方及び/又は他方自身が、当該装置の他の区画への運搬を確実にする、駅2と同様の構造を有したリレー構造体である。
【0083】
当然ながら、上記に示された図に示された実施形態は非限定的な例としてのみ提供される。これらの異なる実施形態及び代替的形態を組み合わせて他の形態を提案することができる、ということが明白に規定される。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
運搬装置であって、
第1のエンドプーリ(101)と、
第2のエンドプーリ(102)と、
第1の従動プーリ(110)と第2の従動プーリ(120)とを備えるリレー構造体(2)と、
前記第1のエンドプーリ(101)および前記第1の従動プーリ(110)に係合した第1のケーブルループ(11)と、
前記第2のエンドプーリ(102)および前記第2の従動プーリ(120)に係合した第2のケーブルループ(12)と、
係合解除可能な連結手段によって前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとに交互に連結可能である少なくとも1台の乗り物と、
を備える運搬装置であって、
前記リレー構造体(2)は、前記第1のケーブルループと前記第2のケーブルループとから連結解除された前記乗り物を前記第1のケーブルループ(11)から前記第2のケーブルループ(12)へ移送する乗り物移送手段(20)を備え、
前記リレー構造体(2)は固定ガイド軌道(22)を備え、前記固定ガイド軌道は前記固定ガイド軌道に対して並進的に移動可能である構造体(21)を支持し、前記移動可能構造体(21)は前記第1の従動プーリ(110)と前記第2の従動プーリ(120)と前記乗り物移送手段(20)とを支えることを特徴とする
運搬装置。
[態様2]
態様1に記載の運搬装置において、前記乗り物移送手段(20)は前記2つのケーブルループ(11、12)間の前記乗り物の通過を確保する少なくとも1本の接続レールを備えることを特徴とする運搬装置。
[態様3]
態様1又は2に記載の運搬装置において、前記乗り物移送手段(20)は、前記乗り物を前記第1のケーブルループ(11)から連結解除可能であり好ましくは前記第1のエンドプーリ(101)と前記第1の従動プーリ(110)との間に位置する少なくとも1つの係合解除装置(14)と、前記乗り物を前記第2のケーブルループ(12)に連結可能であり好ましくは前記第2の従動プーリ(120)と前記第2のエンドプーリ(102)との間に位置する係合装置(14)と、を備えることを特徴とする運搬装置。
[態様4]
態様1又は2に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は、好ましくは前記固定ガイド軌道(22)の下に位置する力均衡化部材(3)に係合することを特徴とする運搬装置。
[態様5]
態様4に記載の運搬装置において、前記力均衡化部材(3)は前記移動可能構造体(21)に接続されたジャッキを備えることを特徴とする運搬装置。
[態様6]
態様4又は5に記載の運搬装置において、前記力均衡化部材(3)は垂下均衡化体(32)を備えることを特徴とする運搬装置。
[態様7]
態様1から6のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は、前記固定ガイド軌道(22)上を転動可能な少なくとも1組の車輪(25)を備える少なくとも1つの運搬車を備えることを特徴とする運搬装置。
[態様8]
態様1から7のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記移動可能構造体(21)は自身の2つの長手方向端(211、212)において開口しており、運搬中の前記乗
り物の通過を可能にすることを特徴とする運搬装置。
[態様9]
態様1から8のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記第1の従動プーリ(110)は第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリ(120)は第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の回転軸心は、前記第1の回転軸心から離れて位置し、好ましくは前記第1の回転軸心と平行であることを特徴とする運搬装置。
[態様10]
態様1から8のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記第1の従動プーリ(110)は第1の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされ、前記第2の従動プーリ(120)は前記第1の回転軸心と一致する第2の回転軸心を中心に前記移動可能構造体(21)に対して回転式にガイドされることを特徴とする運搬装置。
[態様11]
態様1から10のいずれか一項に記載の運搬装置において、前記固定ガイド軌道(22)は支持体(24)によって地面よりも高い高度を有するように支持されることを特徴とする運搬装置。