(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ガスタービン燃料システム
(51)【国際特許分類】
F02C 7/26 20060101AFI20240924BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
F02C7/26 A
F02C7/22 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020140870
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-08-14
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】バハ・マホムウド・スレイマン
(72)【発明者】
【氏名】ハテム・モハメド モヒルディン イブラヒム・セリム
(72)【発明者】
【氏名】ジーバンクマール・クリシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・バーチェル・グラサー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-029029(JP,A)
【文献】特開昭55-156217(JP,A)
【文献】特開昭60-192837(JP,A)
【文献】特開2002-322919(JP,A)
【文献】米国特許第06385960(US,B1)
【文献】特開昭63-159628(JP,A)
【文献】特開2015-048759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/22
F02C 7/224
F02C 7/236
F02C 7/26
F02C 9/28
F02C 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンシステム(8)であって、
当該システム(8)が、
留出燃料を燃焼器(20)に供給するように構成された第1のポンプ(34)と、
燃料油を前記燃焼器(20)に供給するように構成された第2のポンプ(38)と、
前記燃焼器(20)への留出燃料の第1の流れ
及び燃料油の第2の流れを制御するように構成された燃料選択ユニット(36)と、
センサ(48、50、52)からのフィードバックを受信し、前記センサ(48、50、52)からの前記フィードバックに応じて、前記第1のポンプ(34)、前記第2のポンプ(38)
及び前記燃料選択ユニット(36)を制御して前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動するように構成されたコントローラ(42)と
を備え
ており、
前記留出燃料が、C
20
以下の炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されており、前記燃料油が、C
20
よりも大きい炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されている、システム(8)。
【請求項2】
前記燃焼器(20)内での燃焼の前に前記燃料油を加熱するように構成されたヒータ(40)を備える、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項3】
前記センサ(48、50、52)
が、燃料ライン(14)内の前記留出燃料の圧力を検出するように構成された圧力センサ(50)である、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項4】
前記センサ(48、50、52)
が、前記燃料油の温度を検出するように構成された温度センサ(48)である、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項5】
前記センサ(48、50、52)
が、噴霧空気圧力を検出するように構成された噴霧空気圧力センサ(52)である、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項6】
燃料油でガスタービン(22)を始動するための方法(70)であって、
当該方法が、
ガスタービンシステム(8)を始動するための信号を受信すること(72)と、
前記ガスタービンシステム(8)の前回の停止で使用された燃料を検出することであって、前記前回の停止で使用された留出燃料の検出に応じて、前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動
することと
を含んでおり、前記燃料油
が、C
20よりも大きい炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されて
おり、前記留出燃料が、C
20
以下の炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されている、方法(70)。
【請求項7】
圧力センサ(50)から前記信号を受信すること(72)を含み、前記圧力センサ(50)
が、燃料ライン(14)内の前記留出燃料の圧力を検出するように構成され、閾値圧力を超える前記圧力に応じて、
当該方法(70)
が、前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動し、前記圧力が前記閾値圧力よりも低いことに応じて、
当該方法(70)
が、前記留出燃料で前記ガスタービンシステム(8)を始動する(76)、請求項
6に記載の方法(70)。
【請求項8】
温度センサ(48)から前記信号を受信すること(72)を含み、前記温度センサ(48)
が、前記燃料油の温度を検出するように構成され、閾値温度を超える前記温度に応じて、
当該方法(70)
が、前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動し、前記温度が前記閾値温度よりも低いことに応じて、
当該方法(70)
が、前記留出燃料で前記ガスタービンシステム(8)を始動する(76)、請求項
6に記載の方法(70)。
【請求項9】
噴霧空気圧力センサ(52)から前記信号を受信すること(72)を含み、前記噴霧空気圧力センサ(52)
が、噴霧空気圧力を検出するように構成され、前記噴霧空気圧力が閾値噴霧空気圧力を超えることに応じて、
当該方法(70)
が、前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動し、前記噴霧空気圧力が前記閾値噴霧空気圧力よりも低いことに応じて、
当該方法(70)
が、前記ガスタービンシステム(8)の動作を停止するか、
又は前記留出燃料に切り替える(88)、請求項
6に記載の方法(70)。
【請求項10】
前記燃料油で前記ガスタービンシステム(8)を始動すること
が、前記ガスタービンシステム(8)の速度を第1の回転速度から第2の回転速度に増加させることを含み、前記ガスタービンシステム(8)
が、前記第1の回転速度では負荷を投入することはできないが、前記第2の回転速度では負荷を投入することができる、請求項
6に記載の方法(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気と燃料の混合物を燃焼させることによって発電する。空気と燃料の混合物の燃焼により排気ガスが生成され、排気ガスは、ロータを含むタービンを通って流れる。排気ガスがタービンを通って流れるとき、排気ガスは、ロータ上のタービンブレードに接触する。ロータは、タービンブレードにかかる排気ガスの力に応じて回転する。次に、ロータを回転させると、ロータに結合されたシャフトが回転する。シャフトは、シャフトの機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機に結合されている。
【0003】
ガスタービンは、ディーゼル、燃料油、および合成ガスを含む種々の燃料を燃焼させることができる。一部の燃料は、他の燃料よりも高価な場合がある。これらの安価な燃料は、ガスタービンの定常状態の動作中に使用され得る。しかし、燃料油などのこれらの安価な燃料は、停止後に燃料ラインにコークス化および/またはワックスの蓄積を引き起こすため、ガスタービンの起動または停止中に使用することができない。したがって、起動燃料がディーゼルなどのガスタービンを始動するために使用される。起動燃料は、部分負荷でガスタービンを全速にするために使用される。ガスタービンに負荷を投入した後、燃料源は、定常状態の動作中に使用される定常状態の燃料に変わる。停止中、定常状態の燃料は、燃料ラインにおけるコークス化およびワックスの蓄積を防ぐためにパージされ得る。残念ながら、起動燃料は、典型的には、定常状態の燃料よりも高価である。時間の経過と共に、ガスタービンが始動するたびに発電所の運用コストが増加してしまう。
【発明の概要】
【0004】
出願時に特許請求される発明と同等の範囲の特定の実施形態が、以下で要約される。これらの実施形態は、特許請求される発明の範囲を限定することを意図しておらず、むしろ、これらの実施形態は、本発明の可能性がある形態の概要を提供することのみを意図している。実際、本発明は、以下に記載される実施形態と類似してもよく、または異なってもよい種々の形態を包含することができる。
【0005】
一実施形態では、留出燃料を燃焼器に供給する第1のポンプを含むガスタービンシステムが提供される。ガスタービンシステムは、燃料油を燃焼器に供給する第2のポンプを含む。ガスタービンシステムはまた、燃焼器への留出燃料の第1の流れおよび燃料油の第2の流れを制御する燃料選択ユニットを含む。さらに、ガスタービンシステムは、センサからのフィードバックを受信し、センサからのフィードバックに応じて、燃料選択ユニットを制御して燃料油でガスタービンシステムを始動するコントローラを含む。
【0006】
別の実施形態では、1つまたは複数のセンサからのフィードバックを受信するコントローラを含むシステムが提供される。1つまたは複数のセンサからのフィードバックに応じて、コントローラは、ガスタービンシステムへの留出燃料の第1の流れおよび燃料油の第2の流れを制御する燃料選択ユニットを制御し、燃料油でガスタービンシステムを始動する。燃料油は、C20よりも大きい炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されている。
【0007】
別の実施形態では、燃料油でガスタービンを始動するための方法が提供される。方法は、ガスタービンシステムを始動するための信号を受信することを含む。方法はまた、ガスタービンの前回の停止で使用された燃料を検出する。方法は、前回の停止で使用された留出燃料の検出に応じて、燃料油でガスタービンシステムを始動する。燃料油は、C20よりも大きい炭素鎖を有する炭化水素分子で本質的に構成されている。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読解すればより良好に理解され、添付の図面においては、図面全体を通して同一の符号は同一の部分を表している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による、タービンシステムの概略図である。
【
図2】一実施形態による、ガスタービンシステムを始動するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の1つまたは複数の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供しようと努力しても、実際の実施態様のすべての特徴を本明細書に記載することができるというわけではない。エンジニアリングまたは設計プロジェクトなどの実際の実施態様の開発においては、開発者の特定の目的を達成するために、例えばシステム関連および事業関連の制約条件への対応など実施態様に特有の決定を数多くしなければならないし、また、これらの制約条件は実施態様ごとに異なる可能性があることを理解されたい。さらに、このような開発努力は、複雑で時間がかかるが、それでもなお本開示の利益を有する当業者にとっては、設計、製作、および製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0011】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するとき、「1つの(a、an)」、「この(the)」、および「前記(said)」という冠詞は、1つまたは複数の要素が存在することを意味するように意図されている。「備える(「comprising」)」、「含む(「including」)」、および「有する(「having」)」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味している。
【0012】
上で説明したように、ガスタービンは、ディーゼル、燃料油、および合成ガスを含む種々の燃料を燃焼させることができる。例えば、ガスタービンは、液体および/または気体燃料を収容するように設計され得る。ガスタービンを経済的に動作させるために、最も安価な燃料が使用される場合がある。残念ながら、安価な燃料は、ガスタービンに望ましくない影響を与える可能性がある。例えば、燃料油が燃料ライン内でコークス化したり、ワックスが蓄積したりすることがある。燃料油の不完全な燃焼はまた、ガスタービン内に過剰な煤を生成する可能性がある。したがって、異なる燃料が異なる動作期間中に使用される場合がある。例えば、起動中、第1の燃料(例えば、起動燃料)を使用して、ガスタービンを始動することができる。第1の燃料は、ディーゼルまたは一部の他の留出燃料であり得、これは、ガスタービンが定常状態の動作に立ち上がるときに燃料ライン内でコークス化したり、過剰な煤を発生することはない。ガスタービンが全速に、または部分負荷(例えば、30%負荷)で全速になったら、第2の燃料(例えば、定常状態の燃料)を使用することができる。第2の燃料でガスタービンを運転した後、第1の燃料は、第2の燃料のガスタービンをパージするために停止する前に再び導入され得る。したがって、停止前に第2の燃料のガスタービンをパージすると、燃料ラインにおけるコークス化および/またはワックスの蓄積を遮断することができる。
【0013】
残念ながら、典型的な起動燃料(例えば、留出燃料)は、ガスタービンの定常状態の動作中に使用される燃料よりも高価であり得る。それゆえ、ガスタービンの始動および停止のコストは、ガスタービンを動作させるコストを増加させる可能性がある。したがって、発電所が複数のガスタービンを動作させるコストは、これらのガスタービンが発電の必要性に応じてオンおよびオフにされるにつれて増加し得る。以下に説明する実施形態は、燃料油または他のより安い燃料を用いたガスタービンの起動を可能にするガスタービン起動システムおよび方法を含む。燃料油でガスタービンを始動することによって、ガスタービンのオペレータは、全体的な運用コストを削減することができる。
【0014】
図1は、燃料油(すなわち、C
20以上の炭素鎖を有する炭化水素分子)を用いたタービンシステムの起動を可能にするガスタービン燃料システム10を備えたタービンシステム8の一実施形態の概略図である。タービンシステム8(例えば、デュアル燃料タービンシステム)は、タービンシステム8を駆動するために異なるタイプの液体燃料を使用することができる。例えば、タービンシステム8は、留出燃料(すなわち、ディーゼル、C
20よりも小さい炭素鎖を有する炭化水素分子)ならびに燃料油(すなわち、C
20以上の炭素鎖を有する炭化水素分子)を使用してもよい。図示のように、燃料ノズル12(例えば、マルチチューブ燃料ノズル)は、燃料ライン14を通して燃料を取り込む。燃料ライン14は、留出燃料タンクまたは供給源16および燃料油タンクまたは供給源18から燃料を受け取ることができる。燃焼器では、液体燃料は、空気、酸素、酸素富化空気、酸素還元空気、またはそれらの任意の組み合わせなどの酸化剤と混合される。以下の説明では、酸化剤を空気として指しているが、任意の適切な酸化剤が開示された実施形態で使用されてもよい。本出願における燃料油という用語は、C
20以上の炭素鎖を有する炭化水素分子を指し、留出燃料という用語は、ディーゼルなど、C
20よりも小さい炭素鎖を有する炭化水素分子を指すことを理解されたい。
【0015】
タービンシステム8は、複数の燃焼器20の内部に位置する1つまたは複数の燃料ノズル12を含むことができる。燃料空気混合物は、複数の燃焼器20の各々の内部のチャンバ内で燃焼し、それによって高温の加圧排気ガスを生成する。複数の燃焼器20は、タービン22を通して排気ガスを排気出口24に向ける。排気ガスがタービン22を通過すると、ガスはタービンブレードに力を作用させ、タービンシステム8の軸に沿ってシャフト26を回転させる。図示するように、シャフト26は、圧縮機28を含むタービンシステム8の様々な構成要素に接続されてもよい。圧縮機28はまた、シャフト26に結合されたブレードを含む。シャフト26が回転すると、圧縮機28内のブレードも回転し、それによって空気取入口30から圧縮機28を通る空気を圧縮し、燃料ノズル12および/または複数の燃焼器20に送る。シャフト26はまた、発電所における発電機などの負荷32に接続され得る。負荷32は、タービンシステム8の回転出力によって動力が供給され得る任意の適切なデバイスを含んでもよい。
【0016】
燃料を燃料ノズル12に供給するために、ガスタービン燃料システム10は、留出燃料(すなわち、C20よりも小さい炭素鎖を有する炭化水素分子)を留出燃料タンク16から燃料選択ユニット36に圧送する1つまたは複数のポンプ34を含む。燃料システム10はまた、燃料油を燃料選択ユニット36に圧送する1つまたは複数のポンプ38を含む。燃料油は粘度が高く、燃料ライン内でコークス化するかワックスを形成する可能性があるため、燃料システム10は、燃料油を加熱して燃料ラインにおけるワックスの形成および/またはコークス化を遮断および/または低減する1つまたは複数のヒータ40を含む。換言すれば、燃料油を加熱することは、1つまたは複数の燃料ライン(例えば、燃料ライン14)を通る燃料油の移動を容易にし得る。
【0017】
例えば、燃料選択ユニット36は、燃料ノズル12への留出燃料および燃料油の流れを制御する1つまたは複数の弁(例えば、三方弁)を含み得る。燃料選択ユニット36の動作は、コントローラ42からの信号で制御される。コントローラ42は、図示のマイクロプロセッサなどの1つまたは複数のプロセッサ44と、1つまたは複数のメモリデバイス46とを含む。コントローラ42はまた、1つまたは複数の記憶デバイスおよび/または他の適切な構成要素を含み得る。プロセッサ44を使用して、燃料選択ユニット36内の1つまたは複数の弁の開閉を制御するソフトウェアなど、ソフトウェアを実行することができる。
【0018】
プロセッサ44は、複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数の「汎用」マイクロプロセッサ、1つまたは複数の専用マイクロプロセッサ、および/または1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASICS)、またはそれらのいくつかの組み合わせを含んでもよい。例えば、プロセッサ44は、1つまたは複数の縮小命令セット(RISC)プロセッサを含むことができる。
【0019】
メモリデバイス46は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリ、および/または読み取り専用メモリ(ROM)などの不揮発性メモリを含み得る。メモリデバイス46は、種々の情報を記憶することができ、様々な目的のために使用され得る。例えば、メモリデバイス46は、プロセッサ44が実行するためのプロセッサ実行可能命令(例えば、ファームウェアまたはソフトウェア)を記憶することができる。記憶デバイス(例えば、不揮発性メモリ)は、ROM、フラッシュメモリ、ハードドライブ、または任意の他の適切な光学、磁気、もしくはソリッドステートの記憶媒体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。記憶デバイスは、データ、命令、および任意の他の適切なデータを記憶してもよい。
【0020】
上で説明したように、燃料は、コストが異なる。したがって、燃料油(すなわち、C20よりも大きい炭素鎖を有する炭化水素分子)などの最も安価な燃料が使用され得る。燃料システム10は、タービンシステム8が燃料油で動作を始動することを可能にし、これは、タービンシステム8の動作に関連するコストを削減することができる。タービンシステム8の典型的な停止中、コントローラ42は、燃料選択ユニット36に開くように指示し、留出燃料を燃料選択ユニット36を通して、かつ燃料ライン14を通して燃料ノズル12に向けるようにする。次に、留出燃料は、タービンシステム8が停止すると燃焼器20に入り、そこで燃焼する。燃料選択ユニット36、燃料ライン14、燃料ノズル12などにおける燃料から燃料油をパージすることによって、燃料油は、停止中、およびタービンシステム8の停止から次の再始動までの期間中にコークス化、ワックスの形成、および/または過剰な煤の形成ができなくなる。それゆえ、留出燃料は、燃料選択ユニット36および燃料ライン14内に留まり、したがってタービンシステム8の次の再始動まで燃料ノズル12に対して流路を開いたままに維持する。
【0021】
次に、この未使用の留出燃料を使用して、次の再始動中にタービンシステム8を点火することができる。しかし、再始動および最初の負荷投入全体を通して留出燃料を使用し続ける代わりに、燃料システム10は、燃料油への迅速な移行を可能にする。例えば、典型的な再始動は、留出燃料を使用してガスタービンの回転速度を約100%に増加させ、次にタービンシステム8を部分負荷状態(例えば、約30%の負荷投入)にする。対照的に、燃料システム10は、燃料ライン14内の留出燃料、すなわち前回の停止から残った留出燃料を使用してタービンシステム8を点火し、次に燃料油を使用してガスタービンシステム8を約100%の回転速度にし、最終的に負荷を投入する。したがって、タービンシステム8の再始動中に使用される留出燃料が少なくなり、運用コストを削減することができる。
【0022】
しかし、燃料油を使用してタービンシステム8を再始動するために、燃料油は、閾値圧力を超えて加圧され、かつ/または閾値温度を超えて加熱され得る。加圧および加熱されていない場合、燃料油は、タービンシステム8の再始動能力を遮断する可能性がある。したがって、燃料システム10は、燃料油の特性および/またはタービンシステム8の他の特性に関するフィードバックを提供する1つまたは複数のセンサを含むことができる。例えば、燃料システム10は、燃料油の温度をそれぞれ測定し、燃料油の温度がそれぞれの閾値および燃料ライン14の圧力を超えているかどうかを決定する1つまたは複数の温度センサ48および1つまたは複数の圧力センサ50を含んでもよく、それにより留出燃料圧力が燃料油を用いたタービンシステム8の再始動を可能にするそれぞれの閾値を超えることを確実にする。温度センサ48は、非留出物タンク18と燃焼器20との間の流路上の様々な場所に載置することができる。例えば、温度センサ48は、燃料油の温度を検出するために、ヒータ40、燃料選択ユニット36、燃料ライン14、および/または燃料ノズル12に結合してもよい。同様に、圧力センサ50は、燃料選択ユニット36と燃焼器20との間の流路に沿った様々な場所に載置することができる。例えば、圧力センサ50は、燃料油の圧力を検出するために、燃料選択ユニット36、燃料ライン14、および/または燃料ノズル12に結合してもよい。いくつかの実施形態では、燃料システム10はまた、燃料油が燃焼のために十分に噴霧されているかどうかを検出する噴霧空気圧力センサ52を含み得る。これらのセンサ48、50、および52は、コントローラ42に結合し、コントローラ42がポンプ38、ヒータ40、および燃料選択ユニット36の制御を通じて燃料油でタービンシステム8を再始動することを可能にする。
【0023】
図2は、タービンシステムを始動するための方法70の一実施形態である。方法70は、タービンシステムを始動するための信号を受信することから始まる(ステップ72)。次に、方法70は、タービンシステムが留出燃料で前回停止されたかどうかを決定する(ステップ74)。上で説明したように、上述のタービンシステムは、燃料ライン14に残った留出燃料を使用してタービンシステムを点火する。タービンシステムが留出燃料で停止されていなかった場合、次に方法70は、留出燃料でタービンシステムを始動する(ステップ76)。タービンシステムが留出燃料で前回停止されていた場合、方法70は、燃料圧力が閾値圧力よりも大きいかどうかを決定する(ステップ78)。例えば、コントローラ42は、燃料ライン14内の圧力がタービンシステム内の燃焼を維持するには不十分である(例えば、25PSIG未満)ことを示す、圧力センサ50からのフィードバックを受信し得る。燃料油の圧力が閾値よりも低い場合、方法70は、留出燃料でタービンシステムを始動する(ステップ76)。燃料油の圧力が閾値よりも大きい場合、方法70は、燃料油が閾値温度よりも大きい温度を有するかどうかを決定する(ステップ80)。例えば、コントローラ42は、燃料油の温度がタービンシステム内の燃焼を維持するには不十分である(例えば、100F未満)ことを示す、温度センサ48からのフィードバックを受信し得る。燃料油の温度が閾値よりも低い場合、方法70は、留出燃料でタービンシステムを始動する(ステップ76)。
【0024】
タービンシステムが留出燃料で前回停止されており、燃料ライン14の圧力が閾値圧力を超えており、燃料油の温度が閾値温度を超えている場合、次に方法70は、燃料油を放出することによって継続する(ステップ82)。すなわち、コントローラ42は、燃料選択ユニット36に信号を送り、燃料油を燃料ノズル12に放出する。次に、方法70は、タービンシステムを始動する(ステップ84)。タービンシステムが始動すると、残りの留出燃料が点火され、燃焼器20内での燃焼が開始される。留出燃料が燃焼すると、排気ガスがタービン22を通って流れ、タービン22の速度が増加し、したがってシャフト26が回転する。タービンシステムは、燃料油が燃料ノズル12に到達するまで残りの留出燃料を燃焼し続ける。次に、タービンシステムは、燃料油を燃焼させてタービンシステムの回転速度を増加させ、次にタービンシステムに負荷が投入される(例えば、電気出力を増加させる)。いくつかの実施形態では、方法70は、噴霧空気圧力が閾値レベルよりも大きいかどうかを決定することができる(ステップ86)。噴霧空気圧力を監視することによって、方法70は、燃料油が燃焼のために十分に噴霧されているかどうかを決定することができる。より具体的には、十分な割合の燃料油が燃焼器20内で燃焼するかどうかが決定される。噴霧圧力が閾値よりも低い場合、方法70は、タービンシステムを停止するか、または留出燃料の使用に切り替えることができる(ステップ88)。例えば、コントローラ42は、燃焼のために留出燃料を放出しながら燃料油の流れを遮断するように燃料選択ユニット36に信号を送る。噴霧圧力が閾値よりも大きい場合、方法70は、燃料油を用いたタービンシステムの起動を継続する(ステップ90)。すなわち、タービン22の速度を増加させ、次にタービンが定常状態の速度に到達したら負荷を増加させる。
【0025】
本発明の技術的効果は、タービンシステムが燃料油(すなわち、C20以上の炭素鎖を有する炭化水素分子)で動作を始動することを可能にするガスタービン燃料システムを含む。すなわち、ガスタービン燃料システムは、燃料油を使用することによって、負荷投入の前にタービンシステムが動作速度に到達することを可能にする。
【0026】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、およびどのような当業者も、任意のデバイスまたはシステムの作製および使用ならびに任意の組み込まれた方法の実施を含む本発明の実践を可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【符号の説明】
【0027】
8 タービンシステム
10 ガスタービン燃料システム
12 燃料ノズル
14 燃料ライン
16 留出燃料タンク/供給源
18 燃料油タンク/供給源/非留出物タンク
20 燃焼器
22 タービン
24 排気出口
26 シャフト
28 圧縮機
30 空気取入口
32 負荷
34 ポンプ
36 燃料選択ユニット
38 ポンプ
40 ヒータ
42 コントローラ
44 プロセッサ
46 メモリデバイス
48 温度センサ
50 圧力センサ
52 噴霧空気圧力センサ
70 方法
72 ステップ
74 ステップ
76 ステップ
78 ステップ
80 ステップ
82 ステップ
84 ステップ
86 ステップ
88 ステップ
90 ステップ