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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】床掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20240924BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240924BHJP
【FI】
A47L9/28 E
G05D1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020141700
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037517
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】川邉 恵一
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-021145(JP,A)
【文献】特開2007-213180(JP,A)
【文献】特表2016-527977(JP,A)
【文献】特開2017-131556(JP,A)
【文献】特表2019-525342(JP,A)
【文献】特開2019-148864(JP,A)
【文献】特開2017-143983(JP,A)
【文献】特開2019-121364(JP,A)
【文献】特開2014-194729(JP,A)
【文献】特表2017-501473(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/28
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の清掃箇所について特徴情報を含む複数の清掃箇所データを記憶する記憶装置を有する制御装置と、
周辺の空間情報を計測する周辺計測装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の清掃箇所データのうち、移動しながら収集した前記空間情報との相関性が高い清掃箇所データを選択する、床掃除機。
【請求項2】
前記制御装置は、掃除タスクを実行するため最初に選択されている清掃箇所データを、移動後に収集した前記空間情報に基づいて別の清掃箇所データに変更する、請求項1に記載の床掃除機。
【請求項3】
前記最初に選択されている清掃箇所データは、前記掃除タスクの始点において前記周辺計測装置によって得た前記空間情報に基づいて決定される、請求項2に記載の床掃除機。
【請求項4】
前記記憶装置は、前記複数の清掃箇所データとして、前記特徴情報を含む複数の地図データを記憶する、請求項1~3のいずれか一項に記載の床掃除機。
【請求項5】
前記周辺計測装置は、3次元空間計測装置である、請求項1~4のいずれか一項に記載の床掃除機。
【請求項6】
外部に設置された位置情報提供装置から自己の位置判定を可能にする情報を受け取る情報取得装置をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の床掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走型の床掃除機に関し、特に空間情報の検出結果に基づいて床掃除を行う床掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃されるべき部屋の地図と、使用者により事前設定可能な清掃タスクを有する清掃計画とを記憶ユニット内に記憶する床掃除装置が公知になっている(特許文献1)。この床掃除装置は、床掃除装置が設置される部屋が清掃タスクに関連付けられた特定の部屋であるか否かを地図内に記憶した特徴から判断し、判断の結果が否である場合、清掃タスクを実行せず、或いは中断し又は終了する。
【0003】
特許文献1の床掃除装置では、清掃タスクに関連付けられた特定の部屋であるか否かを地図内に記憶した特徴から判断するので、地図的な特徴が類似する部屋が複数ある場合、床清掃装置が設置されている部屋を特定することができず、清掃タスクを実行することができないという問題がある。また、床清掃装置が設置される部屋が清掃タスクに関連付けられた特定の部屋でないと判断した場合に清掃タスクの実施が実行されず、床清掃装置が与えられた掃除タスクを完了する割合である完走率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-527977号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、清掃されるべき部屋が様々なものであっても、清掃タスクの実行の可能性を高めた床掃除機を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る床掃除機は、複数の清掃箇所について特徴情報を含む複数の清掃箇所データを記憶する記憶装置を有する制御装置と、周辺の空間情報を計測する周辺計測装置とを備え、制御装置は、複数の清掃箇所データのうち、移動しながら収集した空間情報との相関性が高い清掃箇所データを選択する。
【0007】
上記床掃除機によれば、制御装置が、複数の清掃箇所データのうち、移動しながら収集した空間情報との相関性が高い清掃箇所データを選択するので、類似する清掃箇所が複数ある場合であっても、床掃除機が設置されている箇所を特定する確度を高めることができ、清掃タスクを最後まで実行する完走率を高めることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面によれば、上記床掃除機において、制御装置は、掃除タスクを実行するため最初に選択されている清掃箇所データを、移動後に収集した空間情報に基づいて別の清掃箇所データに変更する。当初の掃箇所データを周辺の空間情報に適合するものに切り替えることで、当初の選択の誤りを修正することができる。
【0009】
本発明の具体的な側面によれば、最初に選択されている清掃箇所データは、掃除タスクの始点において周辺計測装置によって得た空間情報に基づいて決定される。周辺計測装置によって床掃除機が設置された環境を判断して清掃箇所データを決定することにより、初期動作を自動化することができる。
【0010】
本発明の別の側面によれば、記憶装置は、複数の清掃箇所データとして、特徴情報を含む複数の地図データを記憶する。地図データは、空間的な配置関係を簡潔に与えるものであり、移動しながら収集する空間情報との相関を求めやすい。
【0011】
本発明のさらに別の側面によれば、周辺計測装置は、3次元空間計測装置である。空間情報の計測は、3次元空間の計測によって正確で確度が高いものとなる。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、外部に設置された位置情報提供装置から自己の位置判定を可能にする情報を受け取る情報取得装置をさらに備える。これにより、外部情報を活用して床掃除機の配置を客観的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の床掃除機の全体構成を示す図である。
図2】床掃除機の構成要素を説明する概念的なブロック図である。
図3】清掃箇所を具体的に説明する模式的な平面図である。
図4】床掃除機の動作を示すフローチャートである。
図5】床掃除機の動作を示すフローチャートである。
図6】(A)及び(B)は、類似する2つの地図データを例示する図である。
図7】変形例の動作を示すフローチャートである。
図8】変形例の動作を示すフローチャートである。
図9】変形例の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1、2等を参照して、本発明に係る床掃除機の一実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1及び2に示す実施形態の床掃除機100は、自走型の掃除機であり、操作部20と、駆動走行部30と、清掃ユニット40と、制御装置50と、第1~第3センサ61~63と、通信部70とを備える。
【0016】
床掃除機100において、操作部20は、作業者が床掃除機100の掃除予定を管理し状態を把握するために操作する部分であり、操作パネル21のほかに、詳細は省略するが操作ハンドル22等を含む。
【0017】
駆動走行部30は、床掃除機100について前進、後退、及び回転姿勢の変更を可能にする部分であり、走行モータ32、駆動軸33、走行輪34、補助輪35等を備える。走行モータ32は、左右一対の走行輪34を独立して回転動作させることにより、床掃除機100を前進又は後退させるだけでなく、床掃除機100を自転させ或いは左右の所望の角度方向に移動させることができる。
【0018】
清掃ユニット40は、床面SFを清掃する装置であり、洗浄パッド41と、パッド駆動部42と、散水部43と、スクイージ45と、昇降部46と、吸引部47とを有する。洗浄パッド41は、パッド駆動部42に駆動されて床面SFに当接した状態に維持されて所定の回転速度で回転する。パッド駆動部42は、洗浄パッド41を回転させるモータを含むパッド回転部と、洗浄パッド41を上下させるとともに洗浄パッド41の接地圧を調整するモータを含むパッド昇降部とを有する。散水部43は、洗浄水を洗浄パッド41やその周辺に散布するための部分であり、詳細は省略するが給水ポンプや洗浄水タンクを有する。スクイージ45は、昇降部46に駆動されて所定のタイミングで昇降する。昇降部46は、スクイージ45を上下させるモータを有する。吸引部47は、スクイージ45の内側に溜まった洗浄済液を吸引によって回収する部分であり、吸引ポンプや回収タンクを有する。
【0019】
制御装置50は、コンピュータであり、演算処理装置51のほかに、記憶装置52を有する。制御装置50は、床掃除機100を構成する各部の動作状態を管理し、周辺環境から情報を収集し、コンピュータ・プログラムに従って予定され或いは現場で指定された掃除動作を行う。この際、制御装置50は操作部20を介して作業者の指令を受け付ける。
【0020】
図2を参照して、制御装置50の記憶装置52には、床掃除機100を動作させるコンピュータ・プログラムが格納され、コンピュータ・プログラムの実行に必要な情報が記録されている。具体的には、記憶装置52は、PCプログラム領域52aのほかに、複数の掃除タスク53aや複数の清掃箇所データ53bを記憶するスケージュール情報領域53を有する。清掃箇所データ53bは、具体的には地図データであり、清掃が予定される部屋、通路等の清掃箇所又は清掃対象空間ごとに予め準備されていて、清掃箇所について特徴情報を含む。ここで、地図データは、清掃箇所の設計情報から得た3次元空間情報又は2次元空間情報とすることができるが、床掃除機100その他の3次元計測器を実際の清掃箇所に設置し、かかる3次元計測器を清掃箇所内で移動させつつ取得した距離画像を加工したものであってもよい。地図データの取得には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術を利用することができる。地図データにおいて、特徴情報とは、壁、家具、事務機器等の存在によって特徴づけられる情報であり、具体的には清掃箇所に存在する物体の3次元又は2次元の形状配置を意味する。
【0021】
図3は、清掃箇所を具体的に説明する模式図である。この場合、清掃箇所LCは、部屋RMであり、壁WAの内側に机その他の事務用家具OFが複数配置されている。床掃除機100は、入口ENから部屋RMに入って清掃を開始し、障害物のない領域を移動しながら床面SFを清掃する。その際、床掃除機100は、掃除タスクに記録された予定ルートRTに沿って移動し、床面SFの効率的な清掃を実行する。図3は、床掃除機100の記憶装置52に清掃箇所データ53bとして保管される地図データMAを説明するものでもある。地図データMAは、清掃箇所LCにおける壁WA、事務用家具OF等の空間的な配置に関する情報を含む3次元空間情報又は2次元空間情報である。地図データMAは、事務用家具OF等に対応する複数の特徴情報CFを含み、全体の地図データMAや部分である特徴情報CFは、面、線分、点群等の座標情報を含む一群のデータで構成されている。特徴情報CFは、個々の事務用家具OF等の単位で仕分けられるものに限らず、様々な基準でグループ化したものとすることができる。
【0022】
図2に戻って、記憶装置52は、駆動走行部30を適切に動作させることによって床掃除機100を所定の方向に向けて所望の速度で移動させる姿勢制御及び走行制御を実行するための情報を保管する運動制御情報領域54を有する。記憶装置52は、清掃ユニット40を適切に動作させるための情報を保管する清掃ユニット駆動情報領域55を有する。清掃ユニット駆動情報領域55には、散水部43によって洗浄パッド41に洗浄水を供給しつつ洗浄パッド41を床面SFに接触させて回転させる洗浄処理を実行するための情報が保管され、スクイージ45を床面SFに押し当てることで洗浄済液やゴミを集めつつ吸引部47によって洗浄済液やゴミを吸引する回収処理をするための情報が保管されている。記憶装置52は、第1~第3センサ61~63を適切に動作させて計測や情報収集を行うための情報を保管する計測処理情報領域56を有する。記憶装置52は、通信部70を適切に動作させて外部機器と通信を行うための情報を保管する通信関連情報領域57を有する。
【0023】
第1センサ61は、LiDARと呼ばれるレーザレーダ装置又は3次元画像センサであり、制御装置50の管理下で動作する。第1センサ61は、周辺の空間情報を計測する周辺計測装置68として機能し、制御装置50が床掃除機100を移動させながら空間情報を収集することを可能にする。第1センサ61は、周辺の空間情報を計測する3次元空間計測装置であり、周辺の空間情報として、床掃除機100の前方計測エリア内における距離画像を取得する。第1センサ61によって取得された拒理画像は、制御装置50で解析され制御装置50に保管される。第1センサ61により、前方計測エリア内の検出物の大きさ、位置の判別が可能になる。第1センサ61は、例えば赤外光その他のレーザ光を用い、ポリゴンミラー、MEMSミラー等により前方の走査を行う。第1センサ61は、物体で反射されて戻って来た反射光の方位及び検出タイミングから物体の奥行き方向を含めた位置を計測する。
【0024】
第2センサ62は、近接センサであり、制御装置50の管理下で動作する。第2センサ62は、周辺の空間情報を計測する周辺計測装置68として機能し、制御装置50が床掃除機100を移動させながら空間情報を収集することを可能にする。第2センサ62は、周辺の空間情報として、床掃除機100の前方に近接する物体の存在や物体までの距離を計測する。第2センサ62は、例えば超音波センサであり、前方の比較的近距離に存在する物体を超音波の反射波の応答時間に基づいて検知する。第2センサ62により、床掃除機100が室内や通路に配置された、壁、家具、事務機器等と近接していることを把握することができ、壁、家具、事務機器等と衝突することを回避することができる。第2センサ62は、振動や圧力を検出する接触センサを含むものであってもよい。
【0025】
第3センサ63は、動画又は静止画の撮影用のカメラであり、床掃除機100の前方画像を撮影する。第3センサ63は、周辺の空間情報を計測する周辺計測装置68として機能し、制御装置50が床掃除機100を移動させながら空間情報を収集することを可能にする。第3センサ63は、周辺の空間情報として、床掃除機100の前方景色の画像を撮影する。第3センサ63によって取得された画像は、制御装置50で解析され制御装置50に保管される。床掃除機100によって取得された画像により、床掃除機100による掃除の進行状態をチェックすることができ、或いは床掃除機100が室内に配置された家具や事務機器と衝突することを回避することができる。
【0026】
通信部70は、無線通信機を有し、通信ネットワークを経由して管理サーバ(不図示)とのデータ通信を可能にする。通信部70により、床掃除機100の状態を遠隔的に監視することができる。通信部70は、外部に設置された位置情報提供装置から自己の位置判定を可能にする情報を受け取る情報取得装置78として機能させることができる。この場合、通信部70は、例えばビーコンのような、周辺に存在する無線局から発射される電波又は電磁波を受信する受信回路を備えるもの、或いは周辺に存在する音源から出力される超音波を受信するマイクを備えるものになる。周辺の無線局又は音源は、位置情報提供装置として位置情報を含む電磁波や音波を発信しており、床掃除機100が存在する大体の位置を床掃除機100側で把握できるようにしている。ビーコンの無線局等の利用により、外部情報を活用して床掃除機100の配置を客観的に決定することができる。
【0027】
以下、制御装置50の主要な機能について説明する。制御装置50は、スケージュール情報領域53に記録された複数の掃除タスク53aのうち特定の掃除タスク53aに従って動作する。その際、掃除タスク53aに関連付けられた清掃箇所データ53bが地図データとして参照される。掃除タスク53aは、清掃箇所データ53b上における移動経路及び移動速度を要素として含む。掃除タスク53aは、移動経路に沿って清掃ユニット40を動作させるための清掃パラメータを含む。清掃パラメータは、例えば洗浄パッド41の回転数や下方への押圧力、散水部43による洗浄液の給水スピード、スクイージ45の昇降に関するポジション、吸引部47による洗浄済液等の回収スピード等で構成される。なお、運動制御情報領域54に記録された情報は、床掃除機100の姿勢制御及び走行制御を行うためのものであるが、床掃除機100の移動に際して走行輪34の回転数を検出して、走行モータ32の駆動量にフィードバックをかけるといった動作を可能にする情報を含めることができる。また、洗浄パッド41の回転数を検出して、走行モータ32の駆動量にフィードバックをかけるといった動作も可能である。さらに、床掃除機100を予め実際に動作させて目標通り動作するか否かを確認し、目標からのずれを清掃環境に関連付けて記憶し、目標からのずれを補償するように、走行モータ32の駆動量にフィードバックをかけるといった動作も可能である。このようなフィードバックは、床掃除機100を実際の清掃箇所に設置して清掃動作を行わせて清掃状況をチェックする学習過程によって獲得したものであってもよい。
【0028】
制御装置50は、計測処理情報領域56に記録されている計測処理情報に基づいて第1~第3センサ61~63を動作させ、床掃除機100が選択されている掃除タスク53aに対応する移動経路に沿って適切に移動しているか否かをチェックする。
【0029】
例えば、制御装置50は、第1センサ61を動作させることによって、床掃除機100の正面方向における距離画像を取得することができる。これにより、清掃箇所データ53bの地図データ中で床掃除機100がどこに存在するかを把握している位置情報が正確であるか否かを確認することができ、或いは清掃箇所データ53bの地図データ中で床掃除機100が現実にどこに存在するかを決定することができる。制御装置50は、距離画像によって把握される前方に存在する立体的な測定形状と、清掃箇所データ53bの地図データ中に存在する物体の形状とを比較し、それらの相関性の高さからそれらの一致度やずれを判定することができる。具体的には、清掃箇所データ53bの地図データが3次元である場合、第1センサ61によって得た測定形状としての3次元距離画像と、地図データ中の想定位置に存在する床掃除機100の視点で観測されるべき周囲物体の3次元形状配置とを比較し、形状の一致度又は相関性が高い場合、床掃除機100の地図データ中における想定位置が適切であることになる。この際、地図データ中の想定位置を周囲領域内で変化させつつ3次元距離画像と周囲物体の3次元形状配置との一致度が増加する変化の有無を判定することにより、床掃除機100の想定位置のずれを判断し修正することもできる。なお、清掃箇所データ53bの地図データが2次元である場合、第1センサ61によって得た測定形状としての距離画像を床面に投影した2次元距離と、地図データ中の想定位置に存在する床掃除機100の視点で観測されるべき周囲物体の2次元形状配置とを比較し、形状の一致度が高い場合、床掃除機100の地図データ中における想定位置が適切であることになる。
【0030】
第1センサ61によって得た3次元距離画像と清掃箇所データ53bの地図データから得た3次元形状配置との一致度又は相関性が極端に低い場合、掃除タスク53aに関連付けられた清掃箇所データ53bが不適切である可能性があり、制御装置50は、別の清掃箇所データ53bを読み出して、その地図データから得た3次元形状配置との一致度又は相関性をチェックすることができる。このように別の清掃箇所データ53bの読み出しを繰り返すことにより、より適合性の高い清掃箇所データ53bを探索することになり、正しい清掃箇所データ53bに切り替えることができる。特に掃除タスクの始点に床掃除機100があるとき、第1センサ61によって得た3次元距離画像は、清掃箇所の入口を視点とするものである場合が多く、正しい清掃箇所データ53bを探索する情報として確度が高いものとなっている。以上のような制御装置50の動作は、清掃箇所の入口だけでなく床掃除機100を移動させながら行われる。つまり、制御装置50は、複数の清掃箇所データ53bのうち、移動しながら収集した3次元距離画像その他の空間情報との相関性が高い清掃箇所データ53bを適正なものとして選択する。
【0031】
制御装置50は、第2センサ62を動作させることによって、床掃除機100の前方に近接する物体が存在するか否かを判断することができ、清掃箇所データ53bの地図データ中で床掃除機100がどこに存在するかを把握している位置情報が正確であるか否かを確認することができ、位置情報を修正することができる。具体的には、制御装置50は、床掃除機100の地図データ中における想定位置をリアルタイムで位置情報として把握しており、この想定位置の周辺に存在する周辺物体までの想定距離を第2センサ62によって取得した測定距離と比較し、それらの距離差が所定の閾値以下であれば、床掃除機100の地図データ中における想定位置が略正確であると判定し、或いはそれらの距離差が所定の閾値を超えると、床掃除機100の地図データ中における想定位置が不正確であると判定する。以上のような位置情報の正確性に関する判定は、制御装置50が複数の清掃箇所データ53bから適正な清掃箇所データ53bを選択する際に考慮される。つまり、制御装置50が複数の清掃箇所データ53bのうち移動しながら第1センサ61を利用して収集した3次元距離画像その他の空間情報との相関性が高い清掃箇所データ53bを適正なものとして選択する処理には、第2センサ62によって得た近接物体の存否や近接物体までの距離に関する情報も補助的に利用される。
【0032】
制御装置50は、第3センサ63を動作させることによって、床掃除機100の正面方向における周辺状況画像を取得することができる。これにより、清掃箇所データ53bの地図データ中で床掃除機100がどこに存在するかを把握している位置情報が正確であるか否かを確認することができ、或いは清掃箇所データ53bの地図データ中で床掃除機100が現実にどこに存在するかを判定することができる。制御装置50は、床掃除機100の地図データ中における想定位置をリアルタイムで位置情報として把握しており、この想定位置で以前撮影してある対応画像又は地図データにおいて想定位置を与えて生成される対応画像と、第3センサ63によって撮影した現在の周辺状況画像とを比較してそれらの近似度が高ければ、床掃除機100の地図データ中における想定位置が略正確であると判定し、或いはそれらの近似度が低ければ、床掃除機100の地図データ中における想定位置が不正確であると判定する。この際、地図データ中の想定位置を周囲領域内で変化させつつ周辺状況画像と対応画像との近似度が増加する変化の有無を判定することにより、床掃除機100の想定位置のずれを判断し修正することもできる。詳細な説明は省略するが、第3センサ63によって得た周辺状況画像と地図データ中の想定位置で以前撮影してある対応画像等との近似度が極端に低い場合、制御装置50は、別の清掃箇所データ53bを読み出して、現在の周辺状況画像と別の清掃箇所データ53bについて以前撮影してある対応画像等との近似度をチェックすることができ、これを繰り返すことによって、正しい清掃箇所データ53bに切り替えることができる。以上のような制御装置50の動作は、床掃除機100を移動させながら行われる。つまり、制御装置50は、複数の清掃箇所データ53bのうち、移動しながら収集した周辺状況画像その他の空間情報との相関性が高い清掃箇所データ53bを適正なものとして選択する。
【0033】
なお、周辺の空間情報に基づいて適切な清掃箇所データ53bに切り替える動作は、以上のように第1センサ61によって得た3次元距離画像を参照して行うことができるだけでなく、第3センサ63によって得た周辺状況画像を参照して行うことができるが、第1センサ61からの3次元距離画像の方が距離情報を含みより確度が高いと考えられる。つまり、第1センサ61を利用した清掃箇所の判断の方が第3センサ63を利用した清掃箇所の判断よりも一般的には信頼性が高いと考えらえれるが、センサの計測距離等に関する精度特性や床掃除機100の設置環境も考慮して、第1センサ61を利用した清掃箇所の判断結果と、第3センサ63を利用した清掃箇所の判断結果のいずれを優先するかを切り換えることができる。
【0034】
以下、図4及び5を参照して、床掃除機100の動作について説明する。当初、床掃除機100が図3に示す清掃箇所LCの起点(つまり部屋RMの入口EN)に設置された状態にある。制御装置50は、作業者が操作する操作パネル21を介して、掃除タスクに関する初期設定を受け付ける(ステップS11)。初期設定の受付は、地図選択の受付や掃除条件の受付を含む。つまり、作業者によって、掃除タスクとして、掃除対象である部屋RMに相当する清掃箇所データ又は地図データが最初に選択される。この際、付随的な要素として、部屋RMごとに設定された標準的な予定ルートRTについて再設定や変更等を行うことができ、部屋RMごとに設定された標準的な掃除条件についても再設定や変更等を行うことができる。ここで、掃除条件は、清掃ユニット40の動作を規定する清掃パラメータを含み、具体的には、洗浄パッド41の回転数、散水部43による洗浄液の給水スピード、吸引部47による洗浄済液の回収スピードといった情報を含む。掃除条件は、床掃除機100の移動速度や移動方向に関する情報も含む。
【0035】
次に、制御装置50は、第1センサ61を動作させることによって、掃除タスクの始点にある床掃除機100の正面方向における距離画像を空間情報として取得する(ステップS12)。この際、床掃除機100を回転させて周囲を広い角度範囲に亘って観察することもできる。
【0036】
次に、制御装置50は、ステップS11で選択した掃除タスクに付随する地図データに基づいて、掃除タスクの始点において周囲に観察される空間中に存在する物体の形状を算出し、ステップS12で得た距離画像によって把握される前方に存在する立体的な測定形状との相関を算出する。制御装置50は、掃除タスクの始点において地図データ中に存在する物体の形状と、距離画像によって把握される立体的な測定形状との相関が高いか否か、つまり地図データと距離画像との類似度が規定レベル以上か否かを判断する(ステップS13)。
【0037】
制御装置50は、地図データと距離画像との類似度が規定レベルに達しない場合(ステップS13でNo)、別の清掃箇所データ53bを読み出して、その地図データ中に存在する物体の形状と、距離画像によって把握される立体的な測定形状との相関が高いか否かを判断する。つまり、制御装置50は、スケージュール情報領域53に保管されているがステップS11で選択されていない複数の清掃箇所データ(複数の地図データ)53bの中に、第1センサ61によって得た現在の距離画像との類似度が高いものが存在するか否かを判断する(ステップS14)。
【0038】
制御装置50は、現在選択されていない複数の地図データの中に現在の距離画像との類似度が高いものが存在すると判断した場合(ステップS14でYes)、操作パネル21のディスプレイを介して作業者に対して地図の再確認を促すとともに類似度が高い適正な候補を示す(ステップS15)。
【0039】
制御装置50は、操作パネル21を介して作業者による掃除タスクに関する設定変更を受け付ける。制御装置50は、掃除タスクについて地図データに関する設定変更があったか否かを判断し(ステップS16)、地図データの設定変更があった場合(ステップS16でYes)、ステップS13に戻って地図データと距離画像との類似度が規定レベル以上か否かを判断する。ステップS14で現在選択されていない複数の地図データの中に現在の距離画像との類似度が高いものが存在しないと判断された場合や、ステップS16で地図データに関する設定変更がないと判断された場合、制御装置50は、操作パネル21のディスプレイを介して作業者に対して地図と現状との乖離を警告する(ステップS17)。
【0040】
制御装置50は、ステップS13で地図データと距離画像との類似度が規定レベル以上であると判断された場合、選択されている掃除タスク53aに従って清掃開始処理を行う(ステップS18)。
【0041】
制御装置50は、まず地図データを参照して現在位置を取得する(ステップS19)。現在位置の取得に際しては、駆動走行部30を利用して蓄積した床掃除機100の移動方向や移動速度に関する情報から、部屋RMの入口ENを起点とする現在位置を計算することができる。
【0042】
次に、制御装置50は、第1センサ61を動作させることによって、床掃除機100の正面方向における距離画像を空間情報として取得するとともに、現在選択されている掃除タスク53aに対応する地図データを現在位置の視点で観測した場合の周囲の物体の形状と、現在取得されている距離画像よって把握される立体的な測定形状との相関が高いか否か、つまり地図データと距離画像との類似度が規定レベル以上か否かを判断する(ステップS20)。
【0043】
制御装置50は、地図データと距離画像との類似度が規定レベルに達しない場合(ステップS20でNo)、別の清掃箇所データ53bつまり地図データを読み出して、その別の地図データを参照して現在位置を確認する(ステップS21)。この際、複数の地図データを確認することになるが、床掃除機100の現在位置が壁WAの外にあったり事務用家具OFの上にあることを示す場合、その地図データは不適切として除外される。
【0044】
制御装置50は、別の地図データ中に現在の地図データよりも現在の距離画像との類似度が高いものが存在するか否かを判断する(ステップS22)。この際、現在の距離画像と比較するため、地図データを現在位置の視点で観測した場合の周囲の物体の形状が計算される。
【0045】
現在選択されていない複数の地図データの中に現在の距離画像との類似度が高いものが存在すると判断した場合(ステップS22でYes)、制御装置50は、最も類似度が高い地図データに切り替えて、この類似度が高い地図データにおいて床掃除機100の現在位置を取得する(ステップS23)。つまり、制御装置50は、移動しながら収集した空間情報との相関性が高い清掃箇所データ53bを選択し、選択した清掃箇所データ53bにおける現在位置を再計算する。このことは、掃除タスクを実行するため最初に選択されている清掃箇所データ53bを、移動後に収集した空間情報に基づいて別の清掃箇所データ53bに変更することを意味する。このような変更により、当初の清掃箇所データ53bの選択の誤りを修正することができる。一方、別の地図データ中に現在の地図データよりも現在の距離画像との類似度が高いものがないと判断した場合(ステップS22でNo)、制御装置50は、操作パネル21のディスプレイを介して作業者に対して清掃処理の中断を予告する(ステップS24)。
【0046】
ステップS20で地図データと距離画像との類似度が規定レベル以上であると判断された場合や、ステップS23で地図データを切り替えて現在位置を取得した後において、制御装置50は、床掃除機100について運転制御を行う(ステップS25)。具体的には、新たな地図データに対応する新たな掃除タスク53aに従って予定ルートRTに沿った移動を継続する走行制御や清掃ユニット40を予定の清掃パラメータに従って動作させる清掃制御を行う。
【0047】
図6は、異なるが類似する2つの地図データMA1,MA2を例示するものである。図6(A)に示す一方の地図データMA1と、図6(B)に示す他方の地図データMA2とは、入口ENの周辺において類似するが、部屋RMの奥では大きく異なる。当初、図6(A)に示す地図データMA1に対応する掃除タスクを選択していたとして、予定ルートRTを進行して部屋RMの奥まで移動したとする場合、そこで得られる距離画像は、図6(A)に示す地図データMA1に対応しなくなっている。この場合、制御装置50は、図6(B)に示す地図データMA2に対応する掃除タスクに切り替えて、現状との乖離が少ない掃除タスクを継続することになる。これにより、清掃タスクを最後まで実行する完走率を高めることができる。
【0048】
図4及び5に戻って、制御装置50は、運転制御に際して予定ルートRTの終点に到達したか否かを判断してしており(ステップS26)、予定ルートRTの終点に到達していないと判断した場合(ステップS26でNo)、ステップS19に戻って現在位置を取得する。予定ルートRTの終点に到達したと判断した場合(ステップS26でYes)、制御装置50は、選択されている掃除タスク53aに関して清掃終了処理を行う(ステップS27)。なお、ステップS24で清掃処理の中断を予告した後においても、清掃終了処理が行われる。つまり、別の地図データ中に現在の地図データよりも現在の距離画像との類似度が高いものが存在しない場合、清掃対象である部屋の特定ができていないとの判断がなされ、床掃除機100による清掃タスクが中断される。
【0049】
以上の動作例では、第1センサ61によって得た空間情報を用いて現在選択している地図データが適切であるか否かを判断しているが、第2センサ62によって得た空間情報を用いて現在選択している地図データが適切であるか否かを判断してもよい。
【0050】
以下、図7~9を参照して、床掃除機100の動作の変形例について説明する。この場合、通信部70によって取得される位置情報に基づいて地図データを切り替える。より詳細に説明すると、床掃除機100について運転制御を行っている状態で(ステップS25)、制御装置50は、通信部70を情報取得装置78として動作させ、外部に設置された位置情報提供装置88である無線局又は音源80(図3参照)から自己の位置判定を可能にする情報を受け取ることができるか否かを判断する(ステップS31)。制御装置50は、自己の位置判定を可能にする情報を受け取ることができた場合(ステップS31でYes)、現在選択されている地図データが床掃除機100の現実の配置に対応して適切であるか否かを判断する。制御装置50は、現在選択されている地図データが適切であれば、地図データやこれに対応する掃除タスクの選択をそのまま維持し、現在選択されている地図データが適切でなければ、地図データやこれに対応する掃除タスクを位置情報提供装置88からの情報に適合するものに修正する(ステップS32)。
【0051】
ステップS31の処理で用いる位置情報提供装置88は、ビーコンのような無線局又は音源80に限らず、RFID技術を応用した無線タグであってもよく、2次元コードを印刷した位置表示カードのようなものであってもよい。これらの無線タグや位置表示カードによっても床掃除機100の位置を客観的に判定することができる。
【0052】
以上で説明した実施形態の床掃除機100によれば、制御装置50が、複数の清掃箇所データ53bのうち、移動しながら収集した空間情報との相関性が高い清掃箇所データ53bを選択するので、類似する清掃箇所LCが複数ある場合であっても、床掃除機100が設置されている箇所を特定する確度を高めることができ、清掃タスクを最後まで実行する完走率を高めることができる。
【0053】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0054】
例えば、床掃除機100に組み込む清掃ユニット40は、洗浄水を用いないタイプのものであってもよい。
【0055】
第1センサ61は、レーザを走査するものに限らず、TOFカメラのような非走査ものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0056】
20…操作部、30…駆動走行部、32…走行モータ、40…清掃ユニット、41…洗浄パッド、50…制御装置、51…演算処理装置、52…記憶装置、52a…PCプログラム領域、53…スケージュール情報領域、53a…掃除タスク、53b…清掃箇所データ、54…運動制御情報領域、55…清掃ユニット駆動情報領域、56…計測処理情報領域、57…通信関連情報領域、68…周辺計測装置、70…通信部、78…情報取得装置、88…位置情報提供装置、100…床掃除機、CF…特徴情報、EN…入口、LC…清掃箇所、MA,MA1,MA2…地図データ、RM…部屋、RT…予定ルート、SF…床面、WA…壁
図1
図2
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図5
図6
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図9