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特許7558732アスファルテンを溶媒和及び分散する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】アスファルテンを溶媒和及び分散する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 29/02 20060101AFI20240924BHJP
   C10G 75/04 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C10G29/02
C10G75/04
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020156031
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2021046546
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】19197723.0
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】コリン モートン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー カービー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー シー ストコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】クシシュトフ イェジィ マランスキー
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-531591(JP,A)
【文献】特表2014-527569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0218468(US,A1)
【文献】特開2021-46547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 29/02
C10G 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる前記原油の能力を促進する方法であって、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する工程から成る方法であって:
(i)添加剤Aが存在する場合、添加剤Aは前記原油の総質量に対して1~10000質量ppmの有効微量で存在し、添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;
(ii)添加剤Bが存在する場合、添加剤Bは前記原油の総質量に対して1~10000質量ppmの有効微量で存在し、添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる前記原油の能力を促進するための、前記原油における、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤として有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせ、又は添加剤AとBとの組み合わせの使用であって:添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する
ことを特徴とする使用。
【請求項3】
原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を促進するための、前記原油における、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤として有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせ、又は添加剤AとBとの組み合わせの使用であって:添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する
ことを特徴とする使用。
【請求項4】
前記原油はアスファルテン分を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項5】
前記原油は単一種類の原油又は2種以上の異なる種類の原油を含む原油混合物から成る、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項6】
前記原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に前記原油に添加する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項7】
好ましくは、前記原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に、1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で前記原油に添加し、当該段階は:(i)地下の原油貯留層に存在する前記原油に添加する段階;(ii)前記原油の貯蔵中に前記原油に添加する段階;(iii)前記原油の輸送中に前記原油に添加する段階;(iv)前記原油の混合処理前又は混合処理中に前記原油に添加する段階から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項8】
添加剤Aは前記原油に添加する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項9】
添加剤Aと添加剤Bとは組み合わせて使用する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
添加剤Aと添加剤Bとの質量:質量比は10:1~1:10の範囲、好ましくは3:1~1:3、より好ましくは3:1~1:1である、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
添加剤Aと添加剤Bとを合わせた処理率は前記原油の総質量に対して2~10000質量ppm、好ましくは2~1000質量ppmである、請求項9又は10に記載の方法又は使用。
【請求項12】
添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の30質量%未満のポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に60個以上の総炭素原子数を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項13】
添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の前記ポリ(ブチレニル)置換基は、ブタ‐1‐エンの重合から得られ、分岐鎖構造を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項14】
添加剤Aの数平均分子量(Mn)は550~800ダルトンであり、好ましくは、数平均分子量(Mn)は550~800ダルトンで、かつ多分散性指数は1.1~1.5である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項15】
添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の25質量%以下のポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に30個を超える総炭素原子数を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項16】
添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の前記ポリ(プロピレニル)置換基の数平均分子量(Mn)は400~600ダルトンである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項17】
添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の前記ポリ(プロピレニル)置換基は、プロパ‐1‐エンの重合から得られ、分岐鎖構造を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項18】
前記原油は周囲温度にある、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項19】
添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bの組み合わせは、(解乳用の)油濁処理剤、腐食抑制剤、水化物抑制剤、スケール抑制剤、流れ改良剤、ワックス沈着抑制剤(又はパラフィン抑制剤)、流動点降下剤、粘度改良剤、及び/又は他の添加剤と共に、又はそれらとして使用する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させるための原油の能力を高めることに関する。特に、本発明は、限定するものではないが、原油、特にアスファルテン分を有する原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高めることに関する。
より具体的には、本発明は、原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させるための原油能力を高める方法、及び/又は、原油に1種以上の4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸誘導体(単数又は複数)を添加剤(単数又は複数)として添加することにより、原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を促進する方法に関する。更に、本発明は、原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を高め、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を促進するために、原油、特にアスファルテン分を有する原油に1種以上の4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸誘導体(単数又は複数)を添加剤(単数又は複数)として使用することに関するものであり、特に、地下の原油貯留層からの原油の抽出中、及び/又は石油精製所への原油の輸送中、及び/又は原油の貯蔵中、及び/又は原油と他の種類の原油との混合作業中の前記使用に関する。
【背景技術】
【0002】
原油は通常、アスファルテン類を含む。アスファルテン類は、多数の異なる複合構造を有する分子を含む。通常、アスファルテン類は、主に炭素及び水素の不飽和巨大分子などの高分子量芳香族分子から成るが、硫黄、酸素、窒素及び/又は種々の金属、特に重金属などの微量成分も含有する。アスファルテン類は芳香族系溶剤への溶解性が特徴的であり、より一般的には、キシレンやトルエンには溶解するが、ヘプタンやペンタンなどのパラフィン系溶剤には不溶である原油部分であると定義される。アスファルテン類は通常、原油中に存在する樹脂との相互作用を経て(例えば、アスファルテン類は原油中の樹脂との相互作用により溶媒和される)、可溶性種として、及び/又はコロイド分散体の形態で、原油中に存在する。好適には、原油中のアスファルテン類の溶媒和及び/又は分散は精巧にバランスが取れており、このバランス、及び原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力は、原油の圧力変化、組成変化(例えば、2種以上の異なる原油を一緒に混合するか、又は原油を炭化水素流体と混合することによる)、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業時に乱れる場合がある。
【0003】
地理的に異なる場所から得られた原油は通常、独自の物理的特性(例えば粘度や揮発性)及び化学的組成(例えばアスファルテン分や硫黄分)を有する。原油は比較的希薄で軽質の流動性のある油から、非常に濃密で半固形状の重質な油まで、密度及び粘稠度に幅がある。低品質の原油は通常、高品質の原油と比較して、アスファルテン類及び/又は硫黄の量が多い。従って、原油の輸送及び/又は貯蔵を容易にするために望ましい粘度、揮発性、及び化学組成の特徴を有する原油混合物を提供するために、2種以上の異なる種類の原油を一緒に混合することが必要な場合もある。例えば、坑井貯留場と石油精製所との間で低品質の重質原油の取り扱い、輸送(例えば、パイプライン、タンカー、又は船舶による)、及び/又は貯蔵を容易にするために、高粘度で高アスファルテン含有量の低品質重質原油と、低粘度で低アスファルテン含有量の高品質軽質原油及び/又は炭化水素油とを混合することが望ましい場合もある。しかし、認識されているように、2種類の異なる種類の原油を一緒に混合すると、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる能力が著しく低い原油混合物が形成される可能性がある。混合物を構成する異なる種類の原油のいずれか一方のみでアスファルテン不溶因子が存在しない場合でさえ、アスファルテン類のこの溶媒和及び/又は分散能力はこのような原油混合物で低下することが分かっている。
【0004】
原油は油井を形成することにより地下の原油貯留層から抽出する。貯留層からの原油の抽出は、自然な方法(例えば、地中の圧力によって原油を地表に強制的に押し出す)により、及び/又は二次回収方法を使用して、及び/又は強化回収方法を使用して促進し得る。二次回収方法には、流体(例えば水、天然ガス、空気)を貯留層に注入して貯留層圧力を上昇させる工程が含まれ:強化回収方法には、例えば、蒸気、界面活性剤及び二酸化炭素を貯留層に注入することにより、貯留層内の油の粘度を低下させる工程が含まれる。好適には、抽出作業(単数又は複数)中の原油は通常、多数の異なる物理化学的方法に供するが、当該方法は原油に含有されるアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させるための原油の能力を低下させ、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を低下させる場合もある。
【0005】
アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力の低下、並びに/或いは原油の圧力変化、組成変化、又はその他の機械的もしくは物理化学的処理作業時の原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性の低下は、原油製造業者(一般的にオイル及びガス産業では上流部門と呼ばれている)にとっての多数の以下の問題を示す:坑井場から石油精製所への原油輸送(例えばパイプライン、鉄道、船舶、オイルタンカー)の問題;石油精製所での石油精製前の原油貯蔵(例えば坑井場での貯蔵、坑井場と石油精製所との中間部門での貯蔵、及び石油精製所での貯蔵)の問題;及び石油精製所で精製する前の原油の処理(例えば、原油と、異なる種類の原油を混合して原油混合物を形成する)の問題。例えば、アスファルテン類を溶媒和もしくは分散させるための原油の能力の低下、並びに/又は原油中のアスファルテン類の溶解性及び/もしくは分散性の低下はアスファルテン沈殿物の形成を促進する可能性があり、これはダウンホール管、坑井、閉止管、安全遮断弁、分離器、フローライン(例えばパイプライン)、混合装置、貯蔵容器、及び関連する処理輸送機構内の油流を閉塞及び/又は制限する可能性がある。これらの欠点を克服するために、通常、機器をオフラインにして機械的又は化学的に洗浄しているが、結果として生産時間の損失と作業コストの増加をまねいている。
従って、原油及び/又は原油混合物中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させるための、原油、及び2種以上の異なる種類の原油から成る原油混合物の能力を高める必要がある。このような能力は、特にアスファルテン分を有する原油又は原油混合物に関して;原油及び原油混合物の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業時に低下する可能性がある。更に、原油、及び2種以上の異なる種類の原油から成る原油混合物中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高める必要性がある。前記原油及び原油混合物中のアスファルテン類の溶解性及び分散性は、特にアスファルテン分を有する原油又は原油混合物に関して;原油及び原油混合物の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業時に低下する可能性がある。このことは通常、石油精製所での石油精製作業において精製する前に原油を抽出、輸送、貯蔵、及び/又は処理するために全体的な効率を改善し、作業コストを削減する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、前記原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を高めるための改良点を提供する。更に本発明は、原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高めるための改良点を提供する。更に、本発明は、2種以上の異なる種類の原油から成る原油混合物に関するそのような改良点を提供する。好適には、原油又は原油混合物はアスファルテン分を有する。また更に、本発明は、原油又は原油混合物を含む精製可能な石油原料に関するそのような改良点を提供する。
【0007】
従って、第1の態様では、本発明は、原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油能力を促進する方法を提供する。当該方法は、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する工程を含む方法であって;以下の特徴を有する:
(i) 添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;
(ii) 添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。
【0008】
従って、第2の態様では、本発明は、原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高める方法を提供する。当該方法は、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する工程を含む方法であって;以下の特徴を有する:
(i) 添加剤Aが存在する場合、添加剤Aは原油の総質量に対して1~1000質量ppmの有効微量で存在し、添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;
(ii) 添加剤Bが存在する場合、添加剤Bは原油の総質量に対して1~1000質量ppmの有効微量で存在し、添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。
【0009】
第3の態様では、本発明は、前記原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を促進するために、原油における、有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤として有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせ、又は添加剤AとBとの組み合わせの使用を提供するものであり:添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。
【0010】
第4の態様では、本発明は、原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を促進するために、原油における有効微量の添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤として有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせ、又は添加剤AとBとの組み合わせの使用を提供するものであり:添加剤Aは1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)から成り、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し;添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成り、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の50質量%を超えるポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。
【0011】
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、原油は、アスファルテン分を有する原油から成る。
好適には、第1態様の方法、並びに/又は第3態様の使用において、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力は、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業時に促進される。
好適には、第2態様の方法及び/又は第4態様の使用において、原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性は、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的処理作業時に促進される。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、添加剤Aが存在する場合、添加剤Aは原油の総質量に対して1~10000質量ppm、好ましくは1~5000質量ppm、より好ましくは1~1000質量ppm、更に好ましくは1~500質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm未満の量で存在する。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、添加剤Bが存在する場合、添加剤Bは原油の総質量に対して1~10000質量ppm、好ましくは1~5000質量ppm、より好ましくは1~1000質量ppm、更に好ましくは1~500質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm未満の量で存在する。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを使用する場合、添加剤Aと添加剤Bとを組み合わせた処理率は原油の総質量に対して2~10000質量ppm、好ましくは2~5000質量ppm、より好ましくは2~1000質量ppm、より好ましくは2~200質量ppm、更に好ましくは2~100質量ppm未満である。
【0012】
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、原油は、単一種類の原油又は2種以上の異なる種類の原油を含む原油混合物から成る。単一種類の原油又は原油混合物は更に炭化水素油(即ち原油ではない)を含んでもよい。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、原油はアスファルテン分を有する単一種類の原油、又は2種以上の異なる種類の原油を含む原油混合物から成り、原油の少なくとも1種、好ましくは前記異なる種類のそれぞれがアスファルテン分を有する。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用において、原油は、石油精製所における石油精製作業において精製し得る精製可能な石油原料を表すか、又はその一部を形成する。
好適には、原油は中間(軽質)原油、中質原油、重質原油、及びシェールオイル、並びにこれらの組み合わせから成る。
【0013】
添加剤Aの多量のポリ(ブチレニル)置換基、又は添加剤Bの多量のポリ(プロピレニル)置換基が明確な狭い総炭素鎖長分布を有する場合、特定の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤A)又は特定の4‐ポリ(プロピニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤B)を原油中の添加剤として採用することにより原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が大幅に高まることが意外にも判明した。そうでなければ、原油のこのような能力は、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業(例えば、原油混合物の形成)時に低下する可能性がある。更に、添加剤Aの多量のポリ(ブチレニル)置換基、又は添加剤Bの多量のポリ(プロピレニル)置換基が明確な狭い総炭素鎖長分布を有する場合、特定の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤A)又は特定の4‐ポリ(プロピニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤B)を原油中の添加剤として採用することにより原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性が大幅に高まることも判明した。そうでなければ、アスファルテン類の溶解性及び/又は分散性は、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業(例えば、原油混合物の形成)時に原油中で低下する可能性がある。また更に、この技術的効果は比較的少量(例えば1~1000質量ppm、好ましくは1~100質量ppm未満)の添加剤A又は添加剤Bを原油に添加することにより達成される。好適には、原油に、比較的少量(例えば1~1000質量ppm、好ましくは1~100質量ppm未満)の特定の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤A)又は特定の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤B)を使用すると通常、添加剤A及び添加剤Bのいずれも含まない原油と比較して、原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が大幅に高まり、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性が大幅に高まる。
【0014】
原油中のアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が高まると、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性が高まると、(i)原油中に溶媒和及び/又は分散させるアスファルテン類の量が増加し;また/或いは(ii)アスファルテン含有量が明確な原油又は原油混合物が形成される。ここではアスファルテン類は、より安定的に原油中に溶媒和及び/又は分散される(即ち、原油からのアスファルテンの沈殿及び/又は原油中のアスファルテンの凝集が低減する)。
また更に、添加剤Aの使用は添加剤Bの使用よりはるかに効果的であることが意外にも判明した。好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、有効微量の添加剤Aを原油に添加する。
添加剤Aは添加剤Bより更に効果的であることが判明したが、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせは通常、少なくとも添加剤A単独の使用に匹敵する効果をもたらす。好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、有効微量の添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、原油が石油精製所に入る前に、又は原油が石油精製所にあるときに、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に原油に添加する。好ましくは、原油が石油精製所に入る前に、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に原油に添加する。
【0015】
疑問を避けるために、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に原油に添加する場合、本出願人らは、各添加剤又は添加剤の組み合わせを別々に本明細書で定義した原油(単数又は複数)に直接添加してもよいこと、各添加剤又は添加剤の組み合わせを別々に本明細書で定義した原油混合物に添加してもよいこと、また/或いは、各添加剤又は添加剤の組み合わせを別々に本明細書で定義した原油又は原油混合物から成る精製可能な石油原料に添加してもよいことを意図している。
【0016】
好適には、原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に、1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加する。好適には、原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に、1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で、原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)例えば、坑井を介して原油貯留層に添加剤(単数又は複数)を注入する抽出工程中に、地下の原油貯留層に存在する原油に添加する;(ii)原油の貯蔵中に、例えば、坑井場、又は坑井場と石油精製所との間の中間地点に位置する貯蔵タンクに貯蔵してある原油に添加する;(iii)原油の輸送中に、例えば、パイプライン、船舶、鉄道、オイルタンカーで輸送している原油、特に、坑井場から石油精製所に輸送している原油に添加する;(iv)原油が石油精製所に到着する前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合して原油混合物を形成するための原油に添加する。好ましくは、添加剤Aもしくは添加剤B、又は添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせをそれぞれ別々に、1つ以上の原油製造処理段階で、原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)原油の貯蔵中に原油に添加する;(ii)原油の輸送中に、特に坑井場から石油精製所に輸送している原油に添加する;(iii)原油が石油精製所に到着する前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合して原油混合物を形成するための原油に添加する。
【0017】
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する場合、添加剤Aは添加剤Bと同一の1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加してもよく、或いは添加剤Aは添加剤Bとは異なる1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加してもよい。好ましくは、添加剤A及び添加剤Bは同じ1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加する。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを原油に添加する場合、添加剤A及び添加剤Bは基本的に同時に原油に添加してもよく、或いは添加剤A及び添加剤Bは順次、原油に添加してもよい。好ましくは、添加剤Aは添加剤Bと基本的に同時に原油に添加する。より好ましくは、添加剤A及び添加剤Bは単一の添加剤パッケージの形態である。
添加剤A及び/又は添加剤Bは当業者に公知の技術により原油に添加してもよい。例えば、添加剤(単数又は複数)を原油に混合してもよく、添加剤(単数又は複数)を、原油を輸送するフローラインに導入してもよく、添加剤(単数又は複数)を原油に、例えば坑井を介して原油貯留層に注入してもよい。
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、原油は周囲温度(即ち、原油の直接的周囲の温度であり、付加的な外部熱源からの熱の付与の無い温度)にある。原油貯留層内の原油は最大150℃の温度であってよい。原油を石油精製所で精製する前の原油の輸送、貯蔵、及び処理は、地理的な場所に依存する。
【0018】
好適には、第1及び第2態様の方法、並びに/又は第3及び第4態様の使用では、原油は40℃未満、好ましくは35℃以下の温度にある。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上のポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有する。
【0019】
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下のポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に60個以上の総炭素原子数を有する。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の40~70質量%、好ましくは40~65質量%のポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に32~56個の総炭素原子数を有する。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Aの前記1種以上の4-ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)のポリ(ブチレニル)置換基は、GCでの決定によれば、32個、36個、40個、44個、及び/又は48個、好ましくは32個、36個及び/又は40個の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基を含む。
【0020】
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Aの数平均分子量(Mn)は、本明細書に記載した液液抽出及び電位差滴定法での決定によれば550~800ダルトンであり、好ましくは、数平均分子量(Mn)は550~800ダルトンで、かつ多分散性指数は1.1~1.5である。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(ブチレニル)置換基はブタ‐1‐エンの重合から得られる。
好適には、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)のポリ(ブチレニル)置換基は分岐鎖構造を有する。「分岐鎖構造」に関しては、当該ポリ(ブチレニル)置換基が分岐鎖ブタンジイル繰り返しラジカルから構成されることを意味する。ポリ(ブチレニル)置換基は、基本的にベンゼン環に結合した比較的長鎖かつ直鎖状の非環状アルキル鎖から構成されていると見なす場合もあり、前記アルキル鎖は、鎖長に沿って(即ち、分岐はペンダント型メチル及び/又はエチル置換基のおかげで比較的長鎖のアルキル鎖に沿っている)2種以上のメチル及び/又はエチル基で更に置換される。添加剤Aがそのような分岐鎖ポリ(ブチレニル)置換基を含む場合、このことは典型的には、ポリ(アルキレン)置換基が基本的に直線状炭素鎖であるポリ(アルキレン)ベンゼンスルホン酸添加剤(単数又は複数)の使用と比較して、原料を高温で加熱するときに原料によるファウリング、原料中の、及び/又は原料からのアスファルテン凝集(又は凝結)及び/又はアスファルテン沈殿を更に抑制する。
【0021】
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、かなり好ましい添加剤Aは、1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸から成る。ここではポリ(ブチレニル)置換基はブタ‐1‐エンを重合することにより得られ、ポリ(ブチレニル)置換基は分岐鎖構造を有し、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の55質量%以上のポリ(ブチレニル)置換基はその置換基中に32個以上の総炭素原子数を有し、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の40~65質量%のポリ(ブチレニル)置換基はその置換基中に32~56個の総炭素原子数を有し、ポリ(ブチレニル)置換基は32個、36個、及び/又は40個の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基を含む。好ましくは、このようなかなり好ましい添加剤Aでは、数平均分子量(Mn)は550~800ダルトンであり、多分散性指数は1.1~1.5である。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上のポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。
【0022】
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下のポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に30個以上の総炭素原子数を有する。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全体の総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の60~95質量%、好ましくは65~95質量%、より好ましくは67~90質量%のポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、その置換基中に21~27個の総炭素原子数を有する。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)のポリ(プロピレニル)置換基は、GCでの決定によれば、21個、24個、及び/又は27個の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基を含む。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Bは、本明細書に記載した液液抽出及び電位差滴定法での決定によれば400~600ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)のポリ(プロピレニル)置換基はプロパ‐1‐エンの重合から得られる。
【0023】
好適には、添加剤Bの前記1種以上のポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(プロピレニル)置換基は分岐鎖構造を有し、即ち、ポリ(プロピレニル)置換基は分岐プロパンジイル繰り返しラジカルから構成される。ポリ(プロピレニル)置換基は、基本的にベンゼン環に結合した比較的長鎖で直鎖状の非環状アルキル鎖から構成されていると見なすこともあり、前記アルキル鎖は、鎖長に沿って(即ち、分岐はペンダント型メチル置換基のおかげで比較的長鎖のアルキル鎖に沿っている)2種以上のメチル基で更に置換される。
好適には、本発明の第1~第4態様のいずれか1態様では、かなり好ましい添加剤Bは、1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成る。ここではポリ(プロピレニル)置換基はプロパ‐1‐エンを重合することにより得られ、ポリ(プロピレニル)置換基は分岐鎖構造を有し、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の60質量%以上のポリ(プロピレニル)置換基はその置換基中に21個以上の総炭素原子数を有し、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の65~95質量%のポリ(プロピレニル)置換基はその置換基中に21~27個の総炭素原子数を有し、ポリ(プロピレニル)置換基は21個、24個、及び/又は27個の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基を含む。好ましくは、このようなかなり好ましい添加剤Bでは、添加剤Bの数平均分子量(Mn)は400~600ダルトンである。
【0024】
好適には、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを本発明の第1~第4態様のいずれか1態様で使用する場合、添加剤Aと添加剤Bとの質量:質量比は20:1~1:20、例えば10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3の範囲である。最も好ましくは、添加剤Aは添加剤Bを超える量で使用し、添加剤Aと添加剤Bとの質量:質量比は20:1~1:1、例えば10:1~1:1、好ましくは3:1~1:1の範囲である。
好適には、添加剤A、添加剤B、及び添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせはそれぞれ別々に原油中に可溶性又は分散性である。
【0025】
定義
本明細書において、以下の語句及び表現を使用する場合、以下の語句及び表現は以下に記載の意味を有する。
【0026】
「有効成分」又は「(a.i.)」とは希釈剤や溶剤ではない添加材料を指す。
「から成る」又はその任意の同義語は、記述した特徴、工程、又は整数又は成分の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、工程、整数、成分、又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではない。表現「から構成される」又は「基本的に構成される」又は同義語は、「から成る」又はその任意の同義語の中に包含されてもよい。表現「基本的に構成される」は、それを適用する組成物の特徴に実質的に影響を与えない物質の包含を許容する。表現「から構成される」又は同義語は、その表現が言及する記述した特徴、工程、整数、成分、又はこれらの群のみが存在することを意味する。
添加剤に関連する「無灰」とは、添加剤が金属を含まないことを意味する。
添加剤に関連する「灰含有」とは、添加剤が金属を含むことを意味する。
「原油」とは、石油精製所での石油精製作業で抽出及び精製した地下に存在する炭化水素化石燃料油を意味する。用語「原油」は、単一種の原油、又は2種以上の異なる種類の原油から成る原油混合物を包含する。原油は中間(軽質)原油、中質原油、重質原油、及びシェールオイルを包含する。
「アスファルテン分を有する原油」とは、本明細書で定義しているように、アスファルテン類を含む原油を意味する。
「アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力」とは、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させるための原油の能力を意味する。アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力及び促進した能力は、本明細書に記載した原油アスファルテン安定性試験により評価する。
【0027】
「アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を促進する」とは、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業(例えば、2種類以上の異なる種類の原油から原油混合物を形成する)時にそのような能力が低下したときにアスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力を高めることを意味する。その促進した能力により、原油中に溶媒和及び/又は分散させるアスファルテン類の量が増加する可能性がある。代替的に、又は追加的に、その促進した能力により、アスファルテン類がより安定して溶媒和及び/又は分散している(即ち、原油からのアスファルテン沈殿及び/又は原油中のアスファルテン凝集を抑制している)明確なアスファルテン分を有する原油の形成、又は原油混合物の形成が可能になる可能性がある。
「原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高める」とは、原油の圧力変化や、組成変化、又は他の機械的もしくは物理的な処理作業(例えば、2種以上の異なる種類の原油から原油混合物を形成する)時にそのような溶解性及び/又は分散性が低下したときに原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性を高めることを意味する。高まった溶解性及び/又は分散性は、本明細書に記載した原油アスファルテン安定性試験により評価する。
「炭化水素流体」とは、原油以外の炭化水素液又は炭化水素油を意味する。
【0028】
「石油精製作業」とは、石油原料(例えば原油)を精製する際に採用する、又は採用できる任意の方法、例えば油精製作業で採用する任意の方法を意味する。石油精製作業には、原油、及び2種類以上の異なる種類の原油から成る原油混合物を精製し、更に原油及び原油混合物を精製して得られた画分を更に生成する際に採用する、又は採用できる任意の方法が包含される。石油精製作業には通常、以下の処理装置、成分及び/又は機器を使用するが、以下に限定されるものではない:原料(即ち原油)から無機塩類を除去するための脱塩装置;石油原料を加熱するための熱交換器、炉、粗予熱器、コーカー予熱器などの熱伝達部品;原料(即ち原油)を種々の画分へと蒸留するための大気圧蒸留装置;大気圧蒸留装置からの重質ボトム画分を更に蒸留するための真空蒸留装置;より大きい分子をより小さく、より軽い炭化水素画分へと分解するための接触分解装置(例えば、流体接触分解装置);より重い芳香族不飽和画分を蒸留単位からガソリン、ジェット燃料及び軽油へとグレードアップするための接触水素化分解装置;より軽い炭化水素画分へと熱分解することにより、真空蒸留装置から重質ボトム画分をグレードアップするためのビスブレイカー装置;蒸留装置、特に真空蒸留装置からの非常に重い残油画分を、石油コークス、ナフサ、及びディーゼル油副産物などの最終産物へと熱分解するためのコーキング装置(例えばディレードコーキング、流動コーキング、フレキシコーキング装置);蒸留装置からの画分を脱硫するための水素化処理装置;脱硫した画分を、より高いオクタン価の分子に変換するための接触改質装置;直鎖状分子画分を、より高いオクタン価の分岐分子画分へと変換するための異性化装置。
【0029】
「精製可能な石油原料」とは、石油精製所の石油精製作業の際に精製する石油原料を意味し、本発明の文脈では、原油を含む。用語「精製可能な石油原料」には、ガソリン及びディーゼル燃料、軽質及び重質ナフサ、灯油、重質燃料油、並びに潤滑油などの、更に精製することのない石油精製所の作業で最終的に精製した商業的最終製品は含まれない。
「アスファルテン分を有する精製可能な石油原料」とは、アスファルテン類を含む本明細書で定義した精製可能な石油原料を意味する。
「ヒドロカルビル基」とは、水素原子及び炭素原子のみを含有する一価のラジカルを意味し、単一の炭素原子を直接介して化合物の残部に結合する。用語「ヒドロカルビル基」には、「アルキル」、「アルキレニル」、「アルケニル」、「アリル」及び「アリール」基が含まれる。好ましくは、ヒドロカルビル基は脂肪族ヒドロカルビル基、より好ましくは飽和脂肪族ヒドロカルビル基、更に好ましくは分岐鎖飽和脂肪族ヒドロカルビル基、更に好ましくは分岐鎖アルキル基、更に好ましくは、分岐鎖非環状アルキル基である。
「アルキル基」とは、単一の炭素原子を直接介して化合物の残部に結合している一価のアルキルラジカル(即ち、二重結合又は三重結合を含有しない一価の炭化水素基)を意味する。好ましくは、アルキル基は分岐鎖非環状アルキル基である。
【0030】
「アルキレン」は、「アルカンジイル」と同義であり、2つの異なる炭素原子から水素原子を除去することによりアルカンから得られる二価の飽和炭化水素ラジカル(即ち、二重結合又は三重結合を含有しない二価の炭化水素ラジカル)を意味し;直鎖状であっても分岐状であってもよい。
「ポリ(アルキレン)」は、「ポリ(アルケン)」と同義であり、適当なアルカンジイル繰り返しラジカルを含有するポリマーを意味する。このようなポリマーは適当なアルケンの重合により形成してもよい(例えば、ポリ(ブチレン)はブタ‐1‐エン、ブタ‐2‐エン及び/又は2‐メチルプロペンの重合により形成してもよく;ポリ(プロピレン)はプロペンの重合により形成してもよい)。
「ポリ(アルキレニル)」置換基とは、単一の炭素原子を介して化合物の残りの部分に結合した適当なアルカンジイル繰り返しラジカルを含む一価のポリマー置換基を意味する。好適には、ポリ(アルキレニル)基は対応するポリ(アルキレン)から形成してもよい(例えば、ポリ(ブチレニル)基はポリ(ブチレン)から形成してもよく、ポリ(プロピレニル)基はポリ(プロピレン)から形成してもよい)。
特定のポリマー(例えばポリ(プロピレニル)基、ポリ(ブチレニル)基、ポリ(ブチレン)、ポリ(プロピレン))である基又は化合物については、好ましくはそれぞれのアルカンジイル繰り返しラジカルから構成されるポリマーが包含されるが、ポリマー鎖に沿ったごく微量の他の置換及び/又は中断を伴うそれぞれのアルカンジイル繰り返しラジカルを主として含有するものが包含されることはあまり好ましくない。言い換えれば、その最も広い態様でのポリ(ブチレニル)基又はポリ(プロピレニル)である基については、その基が、それぞれ100%ブタンジイル又は100%プロパンジイルの繰り返しラジカルから構成され、例えば連結基、置換基又は不純物を含まない基であることは要求されない。このような不純物又は他の置換基は、純度100%でそれぞれのアルカンジイル繰り返しラジカルを含む同じ添加剤と比較して添加剤の性能に実質的に影響を及ぼさないという条件で比較的微量で存在してもよい。
【0031】
「アルケン」は「アルキレン」と同義であり、プロピレン又はプロペン、プロパ‐1‐エン、ブチレン又はブテン、及びブタ‐1‐エンなどの、1個以上の炭素‐炭素二重結合を含む炭化水素化合物を意味する。
「アルケニル基」とは、1個以上の炭素‐炭素二重結合を含み、単一の炭素原子を直接介して化合物の残部に結合した一価の炭化水素ラジカルを意味する。
「ハロ」又は「ハロゲン」にはフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
本明細書で使用する「油溶性」もしくは「油分散性」、又はこれらの同義語は必ずしも、化合物又は添加剤が可溶性、融解性、混和性、又はあらゆる割合で原油中に懸濁可能であることを示すものではない。しかし、これらは正に添加剤A、添加剤B、及び添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせが、例えば意図した効果を発揮するのに十分な程度に原油中に可溶性又は安定的に分散可能であることを意味している。更に、他の添加剤を追加的に組み込むと、特定の添加剤(単数又は複数)が必要である場合、当該特定の添加剤は高いレベルで組み込まれる可能性もある。
「多量」とは、組成物の50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を意味する。
「微量」とは、組成物の50質量%未満、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下を意味する。
添加剤又は添加剤の組み合わせに関する「有効量」とは、所望の技術的効果を提供するために有効で、かつその効果を提供する組成物中のこのような添加剤(単数又は複数)の量を意味する。
「ppm」とは、組成物の総質量に対する質量百万分率を意味する。
【0032】
添加剤成分又は組成物に関する「TBN」とは、ASTM D2896による測定によれば総塩基数(mg KOH/g)を意味する。
「KV100」とは、ASTM D445による測定によれば100℃での動粘度を意味する。
nは数平均分子量を意味する。添加剤A及び添加剤BのMnは本明細書に記載した液液抽出及び二相電位差滴定法により決定してもよい。添加剤Aの合成に使用したポリ(ブチレン)のMnはゲル浸透クロマトグラフィーにより決定してもよく;添加剤Bの合成に使用したポリ(プロピレン)のMnは本明細書に記載したように、水素炎イオン化検出器(FID)を用いたガスクロマトグラフィー(GC)及びASTM D2887に準拠した模擬蒸留により決定してもよい。
wは質量平均分子量を意味する。添加剤A及び添加剤BのMwは、本明細書に記載したように、水素炎イオン化検出器(FID)を用いたガスクロマトグラフィー(GC)及びASTM D2887に準拠した模擬蒸留により決定してもよい。添加剤A及び添加剤Bを合成するために使用するポリ(ブチレン)及びポリ(プロピレン)それぞれのMwは同一の方法を用いてGCにより決定してもよい。
重合体自体の「多分散性指数」は、その重合体自体のMw/Mnを意味し、分子量分布の幅の指標を表す。
【0033】
添加剤A中の特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基の質量%は、添加剤Aの1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸の総質量に基づいて、本明細書に記載したように、水素炎イオン化検出器(FID)を用いてASTM D2887に準拠したガスクロマトグラフィー(GC)及び模擬蒸留により添加剤Aの1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸の質量分布を測定することにより決定する。
添加剤B中の特定の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基の質量%は、添加剤Bの1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の総質量に基づいて、本明細書に記載したように、水素炎イオン化検出器(FID)を用いてASTM D2887に準拠したガスクロマトグラフィー(GC)及び模擬蒸留により添加剤Bの1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の質量分布を測定することにより決定する。
報告した全ての百分率は、特段に記載がない限り、有効成分に対する、即ち担体又は希釈油を考慮していない質量%である。
【0034】
また、必須であるだけでなく最適かつ慣例的な種々の使用成分が配合、貯蔵、又は使用の条件下で反応する可能性があること、また、任意のそのような反応の結果として得ることが可能であるか、又は得られる生成物も本発明により提供されるということは理解されているものとする。
更に、本明細書に記載した任意の上限量及び下限量、範囲、並びに比率の限度は個々に組み合わせてもよいことが理解されている。従って、本発明の特定の技術的特徴について本明細書に記載した任意の上限量及び下限量、範囲、並びに比率の限度は、本発明の1つ以上の他の特定の技術的特徴(単数又は複数)について本明細書に記載した任意の上限量及び下限量、範囲、並びに比率の限度と個々に組み合わせてもよい。更に、本発明の任意の特定の技術的特徴、及びその好ましい変形例全ては、そのような特徴が好ましいと提示されているか否かに関わらず、任意の他の特定の技術的特徴(単数又は複数)、及びその全ての好ましい変形例と個々に組み合わせてもよい。
また、本発明の各態様の好ましい特徴は、本発明の他の各態様及び全ての態様の好ましい特徴と見なすことは理解されているものとする。
【発明を実施するための形態】
【0035】
添加剤A
添加剤Aは、1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)である。1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)は単一のスルホン酸基、及びスルホン酸基に対してベンゼン環のパラ位に結合した(即ち、ベンゼン環の残部は置換されず、水素原子を含む)ポリ(ブチレニル)置換基である単一の置換基を有する。このような一置換した1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)を使用すると典型的に、ポリ(アルキレニル)置換基に対してオルト及び/又はメタ位の1種以上の更なるアルキル置換基も含む1種以上の4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸添加剤(単数又は複数)の使用と比較して、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が高まり、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性が高まることが分かった(即ち、一置換4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)は典型的に、より効果的である)。
1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)(添加剤A)は遊離酸としてスルホン酸基を含む。添加剤Aは無灰であり、スルホン酸の塩(例えば金属塩)を含まない。
好適には、添加剤Aはブテン、好ましくはブタ‐1‐エンの重合から得られる。
【0036】
典型的には、添加剤Aは、当業者に公知の標準的な実験技術により合成してもよく、例えば、特定の総炭素原子数を有する所望質量%のポリ(ブチレニル)置換基を有する中間体である1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)は、Friedal‐Crafts反応(例えば、3~10℃といった低温でAlCl3/HClのスラリーなどのFriedal‐Crafts触媒を使用する)によりブテン、特にブタ‐1‐エンをベンゼンと反応させることにより合成してもよい。次いで、標準的な技術を用いて、中間体である1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)をスルホン化剤(例えば、発煙硫酸、SO2、SO3)でスルホン化し、所望の特性、特に特定の総炭素原子数を持ち所望の質量%のポリ(ブチレニル)置換基を有する添加剤Aの1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)を形成してもよい。好適には、中間体のスルホン化反応時、中間体である1種以上のポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)のポリ(ブチレニル)置換基の完全性(例えば、特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基の質量%)が基本的に維持される。従って、中間体である1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)中の特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基の質量%は、添加剤Aの1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)中の特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基の質量%と基本的に同一である。
【0037】
中間体である1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)を形成するために使用する適切なポリ(ブチレン)反応物は、適当な触媒系、例えばEtAlCl3及びHClを使用して、ブテン、特にブタ‐1‐エンを重合することにより生成してもよい。ブテン、特にブタ‐1‐エンの好適な供給源は、例えば米国特許第4,952,739号に開示しているように、ポリ(イソブチレン)の合成から副産物として得られるラフィネートIIストリームである。好適には、ポリ(ブチレン)反応物の特徴(例えば、特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレン)のMn、Mw、質量%)は、添加剤Aの中間体である1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン(単数又は複数)及び1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)中のポリ(ブチレニル)置換基の対応する所望の特徴と実質的に同じである必要がある。好適には、好ましいポリ(ブチレン)はブタ‐1‐エンを重合することにより得られ、ここではポリ(ブチレン)は以下の特徴を有する:(i)ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定によれば、Mnは450~650ダルトン、好ましくは500~600ダルトンである(W.W.Yau、J.J.Kirkland、及びD.D.Bly、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」、John Wiley及びSons、New York、1979年を参照);(ii)多分散度は1.1~1.5、好ましくは1.2~1.4である;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(ブチレン)の総質量に対して55質量%超、好ましくは60質量%超のポリ(ブチレン)は32個以上の総炭素原子数を有する;(iv)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(ブチレン)の総質量に対して35質量%未満のポリ(ブチレン)は60個以上の総炭素原子数を有する。
【0038】
好適には、添加剤Aの高割合のポリ(ブチレニル)置換基は比較的狭い総炭素鎖長分布を有し、ここでは、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸全ての総質量に基づいて、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸の50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有する。好適には、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸全ての総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸の35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に60個以上の総炭素原子数を有する。
【0039】
好適には、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全ての総質量に基づいて、添加剤Aの前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の40~70質量%、好ましくは40~65質量%のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32~56個の総炭素原子数を有する。
好適には、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(ブチレニル)置換基は、32個、36個、40個、44個、及び/又は48個、好ましくは32個、36個、及び/又は40個の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基を含む。
好適には、本明細書に記載した液液抽出及び二相電位差滴定法での決定によれば、添加剤Aの数平均分子量(Mn)は550ダルトン以上、好ましくは600ダルトン以上、より好ましくは650ダルトン以上である。
好適には、本明細書に記載した液液抽出及び二相電位差滴定法での決定によれば、添加剤Aの数平均分子量(Mn)は800ダルトン以下、好ましくは750ダルトン以下、より好ましくは700ダルトン以下である。
好適には、添加剤Aの多分散性指数は1.1~1.5、好ましくは1.2~1.4である。
【0040】
好適には、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(ブチレニル)置換基は分岐鎖構造を有する。換言すれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(ブチレニル)置換基は1種以上の分岐鎖ブタンジイル繰り返しラジカルから成る。
好適には、1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(ブチレニル)置換基は、ポリ(ブチレニル)基のC‐2位又はC‐1位によりベンゼン環のパラ位に結合したポリ(ブチレニル)置換基から成る。
添加剤Aは、原油の全質量に対して1~10000質量ppm、好ましくは1~5000質量ppm、より好ましくは1~1000質量ppm、更に好ましくは1~500質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm未満の量で原油中に存在してもよい。
【0041】
好適には、本明細書で定義しているように、添加剤Aは式Iの1種以上の化合物で表してもよい。
【化1】
式I
式中、各R1は独立して、本明細書で定義するポリ(ブチレニル)置換基を表す。
【0042】
添加剤Aは、石油精製所での石油精製作業において原油を精製する前に原油に添加する。添加剤Aは、原油が石油精製所にあるとき、及び/又は原油が石油精製所に到着する前に、原油に添加してもよい。好ましくは、添加剤Aは、原油が石油精製所に到着する前に原油に添加する。
好適には、原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Aを1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)例えば、坑井を介して原油貯留層に添加剤(単数又は複数)を注入することによる貯留層からの原油抽出工程中に、地下の原油貯留層に存在する原油に添加する;(ii)原油の貯蔵中に、例えば、坑井場又は坑井場と石油精製所との間の中間地点に位置する貯蔵タンクに貯蔵してある原油に添加する;(iii)原油の輸送中に、例えばパイプライン、船舶、鉄道、オイルタンカーで輸送している原油、特に、坑井場から石油精製所に輸送している原油に添加する;(iv)原油が石油精製所に入る前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合して原油混合物を形成するための原油に添加する。好ましくは、原油が石油精製所に入る前の1つ以上の原油製造処理段階で添加剤Aを原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)坑井場及び坑井場と石油精製所との間の地点において原油の貯蔵中に、原油に添加する;(ii)坑井場から石油精製所への原油の輸送中に原油に添加する;(iii)原油が石油精製所に入る前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合されて原油混合物を形成するための原油に添加する。
添加剤Aは当業者に公知の方法により原油に添加してもよい。例えば、添加剤Aは原油中に混合するか、また/或いは、原油を輸送するフローラインに注入してもよい。
本発明において使用するための好適な添加剤AはInfineum UK社から入手可能である。
【0043】
添加剤B
添加剤Bは1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)である。1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)は単一スルホン酸基、及びスルホン酸基に対してベンゼン環のパラ位に結合した(即ち、ベンゼン環の残部は置換されず、水素原子を含む)ポリ(プロピレニル)置換基である単一置換基を有する。このような一置換した1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)を使用すると典型的に、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる原油の能力が高まり、また/或いは原油中のアスファルテン類の溶解性及び/又は分散性が高まることが分かっている。
1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)は遊離酸としてスルホン酸基を含む。添加剤Bは無灰であり、スルホン酸の塩(例えば金属塩)を含まない。
好適には、添加剤Bはプロパ‐1‐エンの重合から得られる。
【0044】
典型的には、添加剤Bは、当業者に公知の標準的な実験技術により合成してもよい。例えば、添加剤Bは、ポリ(ブチレン)反応物を適当なポリ(プロピレン)反応物で置換することにより、添加剤Aについて本明細書に記載したような類似の技術により合成してもよい。好適には、中間体である1種以上のポリ(プロピレニル)ベンゼン(単数又は複数)のポリ(プロピレニル)置換基の完全性(例えば、特定の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基の質量%)は基本的に、中間体のスルホン化反応中に維持される。従って、中間体である1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン(単数又は複数)中の特定の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基の質量%は、添加剤Bの1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)中の特定の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基の質量%と基本的に同一である。
【0045】
中間体である1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン(単数又は複数)を形成するために使用する適当なポリ(プロピレン)反応物は、適切な触媒系、例えば三フッ化ホウ素及び水を使用してプロペンを重合することにより生成してもよい。好適には、ポリ(プロピレン)反応物の特徴(例えば、特定の総炭素原子数を有するポリ(プロピレン)のMn、Mw、質量%)は、添加剤Bの中間体である1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン(単数又は複数)及び1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)中のポリ(プロピレニル)置換基の対応する所望の特徴と実質的に同じである必要がある。好適には、好ましいポリ(プロピレン)反応物は、プロパ‐1‐エンを重合することにより得られ、ここではポリ(プロピレン)は以下の特徴を有する:(i)ASTM D2887に準拠してGCでの測定によればMnは250~400ダルトン、好ましくは300~375ダルトンである;(ii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(プロピレン)の総質量に対して55質量%超、好ましくは60質量%超のポリ(プロピレン)は21個以上の総炭素原子数を有する;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(プロピレン)の総質量に対して25質量%未満のポリ(プロピレン)は、30個以上の総炭素原子数を有する。
【0046】
好適には、高割合の添加剤Bのポリ(プロピレニル)置換基は狭い総炭素鎖長分布を有し、ここでは、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸全ての総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上のポリ(プロピレニル)置換基が、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する。好適には、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸全ての総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下のポリ(プロピレニル)置換基が、その置換基中に30個以上の総炭素原子数を有する。
好適には、ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)全ての総質量に基づいて、添加剤Bの前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の60~95質量%、好ましくは65~95質量%、より好ましくは70~90質量%のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に21~27個の炭素原子数を有する。
好適には、添加剤Bの前記1種以上のポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(プロピレニル)置換基は、21個、24個、及び/又は27個の総炭素原子数を有するポリ(プロピレニル)置換基を含む。
【0047】
好適には、本明細書に記載した液液抽出及び二相電位差滴定法での決定によれば、添加剤Bの数平均分子量(Mn)は400ダルトン以上、好ましくは450ダルトン以上、より好ましくは475ダルトン以上である。
好適には、本明細書に記載した液液抽出法及び二相電位差滴定法での決定によれば、添加剤Bの数平均分子量(Mn)は600ダルトン以下、好ましくは550ダルトン以下、より好ましくは525ダルトン以下である。
好適には、添加剤Bの多分散性指数は1.1~1.5である。
好適には、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(プロピレニル)置換基は分岐鎖構造を有する。換言すれば、前記ポリ(プロピレニル)置換基は1種以上の分岐鎖プロペンジイル繰り返しラジカルから成る。
好適には、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸のポリ(プロピレニル)置換基は、ポリ(プロピレニル)基のC‐2位又はC‐1位によりベンゼン環のパラ位に結合したポリ(プロピレニル)置換基から成る。
【0048】
好適には、本明細書で定義しているように、添加剤Bは式IIの1種以上の化合物で表してもよい。
【化2】
式II
式中、各R2は独立して、本明細書で定義するポリ(プロピレニル)置換基を表す。
【0049】
添加剤Bは、原油の全質量に対して1~10000質量ppm、好ましくは1~5000質量ppm、より好ましくは1~1000質量ppm、更に好ましくは1~500質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm、更に好ましくは1~100質量ppm未満の量で原油中に存在してもよい。
添加剤Bは、石油精製所での石油精製作業において原油を精製する前に原油に添加する。添加剤Bは、原油が石油精製所にあるとき、及び/又は原油が石油精製所に到着する前に、原油に添加してもよい。好ましくは、添加剤Bは、原油が石油精製所に到着する前に原油に添加する。
好適には、原油が石油精製所に到着する前に、添加剤Bを1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)例えば、坑井を介して原油貯留層に添加剤(単数又は複数)を注入することによる貯留層からの原油抽出工程中に、地下の原油貯留層に存在する原油に添加する;(ii)原油の貯蔵中に、例えば、坑井場又は坑井場と石油精製所との間の中間地点に位置する貯蔵タンクに貯蔵してある原油に添加する;(iii)原油の輸送中に、例えばパイプライン、船舶、鉄道、オイルタンカーで輸送している原油、特に、坑井場から石油精製所に輸送している原油に添加する;(iv)原油が石油精製所に入る前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合して原油混合物を形成するための原油に添加する。好ましくは、原油が石油精製所に入る前に添加剤Bを1つ以上の原油製造処理段階で原油に添加する。当該段階は以下から選択される:(i)坑井場及び坑井場と石油精製所との間の地点において原油の貯蔵中に原油に添加する;(ii)坑井場から石油精製所への原油の輸送中に原油に添加する;(iii)原油が石油精製所に入る前の原油の処理前又は処理中に、例えば、異なる種類の原油及び/又は炭化水素流体と混合されて原油混合物を形成するための原油に添加する。
添加剤Bは当業者に公知の方法により原油に添加してもよい。例えば、添加剤Bは原油中に混合するか、また/或いは、原油を輸送するフローラインに注入してもよい。
本発明において使用するための好適な添加剤BはInfineum UK社から入手可能である。
【0050】
添加剤Aと組み合わせて使用する場合、添加剤Bは添加剤Aと同時に又は連続的に原油に添加してもよい。例えば、添加剤Aと添加剤Bの両方を含む混合物を原油に添加してもよい;先に添加剤Aを、その次に添加剤Bを原油に添加してもよい;先に添加剤Bを、その次に添加剤Aを原油に添加してもよい。好ましい実施形態では、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせも原油に添加する場合、添加剤Aと添加剤Bとの両方は基本的に同時に原油に添加する。
添加剤Aと組み合わせて使用する場合、添加剤Bは、原油が石油精製所に到着する前の添加剤Aの場合と同じ1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加してもよい。或いは、添加剤Bは、原油が石油精製所に到着する前の添加剤Aの場合と異なる1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加してもよい。好ましくは、添加剤Bは、添加剤Aの場合と同じ1つ以上の原油製造及び/又は処理段階で原油に添加する。より好ましくは、添加剤A及び添加剤Bは同じ精製作業の段階で原油に基本的に同時に添加する。
【0051】
好適には、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを使用する場合、添加剤Aと添加剤Bとを合わせた処理率は、原油の総質量に対して2~10000質量ppm、好ましくは2~5000質量ppm、より好ましくは2~1000質量ppm、より好ましくは2~200質量ppm、更に好ましくは2~100質量ppm未満である。
好適には、添加剤Aと添加剤Bとの組み合わせを使用する場合、添加剤Aと添加剤Bとの質量:質量比は20:1~1:20の範囲、例えば10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3である。より好ましくは、添加剤Aは添加剤Bを超える量で使用し、添加剤Aと添加剤Bとの質量:質量比は20:1~1:1の範囲、例えば10:1~1:1、好ましくは3:1~1:1である。
【0052】
組成物
添加剤A及び/又は添加剤Bを組成物中で使用してもよく;当該組成物は更に、添加剤(単数又は複数)の疎水性油可溶化剤及び/又は分散剤を含有してもよい。このような可溶化剤は、例えば界面活性剤及び/又はカルボン酸可溶化剤を含んでもよい。
当該組成物は更に、例えば粘度指数向上剤、消泡剤、耐摩耗剤、解乳化剤、酸化防止剤、及び他の腐食抑制剤を含んでもよい。
【実施例
【0053】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に一切限定されない。
【0054】
液液抽出及び電位差滴定によるM n の決定
本明細書で定義する添加剤A及び添加剤Bなどの4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸のMnは以下の方法により決定する。
4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸(通常3g)を秤量し、グラム単位で試料質量を記録し(試料質量はP1として記録)、試料をプロパン‐2‐オール(15mL)に溶解する。フェノールフタレイン指示薬のアルコール溶液を4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸/プロパン‐2‐オール溶液に添加し、当該溶液を、指示薬がピンク色になるまで水酸化ナトリウム水溶液(1N)で滴定する(水酸化ナトリウムの添加量はV1として記録)。次いで、指示薬のピンク色が消えるまで、この溶液に塩酸水溶液(1N)を滴下添加する。元の4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸/プロパン‐2‐オール溶液に添加した水酸化ナトリウム水溶液と塩酸水溶液との合計体積を考慮して、得られた水溶液は、水とプロパン‐2‐オールとの体積‐体積比が1:1である溶液を形成するように調合する。この調合は、添加した水酸化ナトリウム水溶液と塩酸水溶液との合計体積が15mL未満の場合は、最小体積の水を添加することにより行い、又は、添加した水酸化ナトリウム水溶液と塩酸水溶液との合計体積が15mLを超える場合は、最小体積のプロパン‐2‐オールを添加することにより行う。得られた溶液をペンタン(1×40mL、その後2×20mL)で抽出し、化合したペンタン抽出物を水/プロパン‐2‐オール溶液(体積比1:1、3×15mL)で洗浄する。化合した水/プロパン‐2‐オール抽出物を60℃で温め、微量のペンタンを除去し、室温まで冷却し、水/プロパン‐2‐オール溶液(体積比1:1)で100mLになるように調合し、最終ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸‐水/プロパン‐2‐オール溶液を形成する。
40mLの最終ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸‐水/プロパン‐2‐オール溶液を空の秤量前ビーカー(空のビーカー質量をグラム単位でP2として記録)に移し、溶液を70℃の窒素気流下で蒸発乾固させ、生成物を130~150℃のオーブンで少なくとも1時間乾燥させ、その後、デシケーター中、1時間、室温まで冷却する。ビーカー及び試料のグラム単位の質量をP3として記録する。更に40mLの最終ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸‐水/プロパン‐2‐オール溶液を分離漏斗に移し、水(75mL)及びp‐トルイジン塩酸塩(2g)を分液漏斗に添加し、得られた溶液をジクロロメタン(1×40mL及び2×20mL)で抽出する。化合したジクロロメタン抽出物を水/プロパン‐2‐オール溶液(100mL、体積比3:7)に添加し、二相溶液を形成する。この二相溶液を撹拌し、20マイクロリットルで滴定するために設定したMetrohm滴定装置を使用して水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)に対して電位差滴定する;終点に到達するまで添加した水酸化ナトリウム水溶液の体積をV2として記録する。
【0055】
電位差二相滴定法を較正するために、試料を含まない40mLの水/プロパン‐2‐オール(体積比1:1)溶液を分離漏斗に移し、水(75mL)及びp‐トルイジン塩酸塩(2g)を分離漏斗に添加し、得られた溶液をジクロロメタン(1×40mL及び2×20mL)で抽出する。ジクロロメタン抽出物を水/プロパン‐2‐オール溶液(100mL、体積比3:7)に添加し、二相溶液を形成する。二相溶液を撹拌し、Metrohm滴定装置を使用して水酸化ナトリウム水溶液(0.1N)に対して電位差滴定する;終点に到達するまで添加した水酸化ナトリウム水溶液の体積をV3として記録する。
4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸の数平均分子量(Mn)は次式により算出する:
【数1】
式中、
3=ビーカーと試料の質量(g);
2=空のビーカーの質量(g);
A=ASTM D4711から決定した硫酸の質量%として表される4‐ポリ(アルキレニル)ベンゼンスルホン酸の鉱酸度;
1=試料の質量(g);
2=電位差滴定時に試料に添加するNaOH(0.1N)の体積(mL);
3=電位差滴定の較正時に二相溶液に添加するNaOH(0.1N)の体積(mL);
N=電位差滴定で使用する水酸化ナトリウム溶液の正規性であり、0.1。
【0056】
ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリ(ブチレン)のM n の決定
ポリブチレンのMnは、Agilient Technologies社のMIXED‐D PLgel HPLCカラム、屈折率検出器(30℃)、及び1mL/分のテトラヒドロフラン移動相を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィーにより決定し(W.W.Yau、J.J.Kirkland及びD.D.Bly、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」、John Wiley及びSons、New York、1979年を参照)、Agilient Technologies社製のEasiCal PS‐2ポリスチレン標準物質で較正した。
【0057】
ASTM D2887に準拠したガスクロマトグラフィー及びFID
添加剤AのMw、添加剤BのMw、添加剤Aを合成するために使用するポリ(ブチレン)のMw、ならびに添加剤Bを合成するために使用するポリ(プロピレン)のMw及びMnは、ASTM D2887に準拠して、水素炎イオン化検出器(FID)を用いたガスクロマトグラフィー(GC)及び模擬蒸留により決定する。好適には、この分析方法では、特定の総炭素原子数を有する添加剤A及び添加剤Bのそれぞれのポリ(アルキレニル)置換基の質量%分布が得られる。好適には、この分析方法では、特定の総炭素原子数を有するポリ(ブチレン)及びポリ(プロピレン)中のポリ(アルキレン)鎖の質量%分布が得られる。
ASTM D2887の装置及び操作条件は以下の通りである:開始温度が35℃であることからクロマトグラフは低温技術を備えていない;試料は二硫化炭素の代わりにペンタンで希釈する;機器は二硫化炭素に溶解したAgilent Technologies社、部品番号5080‐8716の参照試料である「沸点較正試料1」(すなわち、既知の組成のn‐パラフィン試料)を使用して較正する;ガスクロマトグラフは、Restek MXT-1HT SimDistカラムを備え、長さ5m、直径0.53mm、膜厚10μmのHewlett Packard 5890シリーズの2 Plus Chromatographである;キャリアガスはヘリウムであり、出力流量は6mL/分である;検出器は水素炎イオン化検出器である;オーブン温度は35℃で2分間に設定し、その後、410℃に達するまで8℃/分の速度で加熱し、その後この温度で15分間保持する;インジェクターのタイプ:オンカラム;インジェクターの初期温度は38℃であり、最終温度は413℃である(インジェクター温度=オーブン温度+3℃);FID検出器温度は400℃である。
【0058】
成分
以下の添加剤成分及び原油を使用した。
成分(A)
成分Aは、本明細書で定義しているように添加剤Aを表す。
(i)ポリ(ブチレン)の合成
連続法において、Isopar‐L溶媒中、濃塩酸及び二塩化エチルアルミニウム触媒系(HClとEtAlCl2の質量‐質量比は3:1)を用いて25~45℃の温度で30分間、ラフィネートIIストリームを重合する。反応生成物を水及び水酸化ナトリウムで洗浄し、生成物から未反応のC4ブチレン/ブタンを除去し(温度200~230℃、圧力0.5bar未満)、ポリ(ブチレン)を生成する。このポリ(ブチレン)は以下の特徴を有する:ゲル浸透クロマトグラフィーでの測定によればMnは540ダルトンである;多分散性指数は1.3である;ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(ブチレン)全質量に対して55質量%超のポリ(ブチレン)は32個以上の総炭素原子数を有する。
【0059】
(ii)1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンの合成
連続方法で、三塩化アルミニウム/塩酸触媒スラリーの存在下、3~8℃の温度で45分間、工程(i)のポリ(ブチレン)(1モル)及びベンゼン(14.5モル)を反応させる。スラッジを反応器から除去し、反応器内の残余液相を水酸化ナトリウム水溶液(7質量%)で90~100℃の温度で複数回洗浄し、次いで、水で洗浄した後、有機液相を160~170℃(大気圧)で蒸留し、過剰ベンゼンを除去し、ポリ(ブチレニル)置換基の総炭素原子数が16個未満である低沸点1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類を除去する。減圧下(20~40mmHg)、320℃で蒸留することにより、所望の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン生成物を得て、1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類を生成する。1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類は以下の特徴を有する:(i)多分散度は1.3である;(ii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類の55質量%以上のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有する;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類の40~70質量%のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32~56個の総炭素原子数を有する;(iv)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン類の25質量%以下のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に60個以上の総炭素原子数を有する;(v)ポリ(ブチレニル)置換基は、32個、36個、及び/又は40個の総炭素原子を有するポリ(ブチレニル)置換基から成る;(vi)ポリ(ブチレニル)置換基は、分岐鎖構造を有するポリ(ブチレニル)置換基から成る。
【0060】
(iii)4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸の合成
工程(ii)の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン生成物を反応器に充填し、そこに過剰の二酸化硫黄を、反応温度を0~-5℃に維持しつつ撹拌しながら導入し(二酸化硫黄と4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンとの体積比は4:1)、その後、過剰の三酸化硫黄(三酸化硫黄と4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンとのモル比は120:1)を、反応温度を0~-5℃に維持しながら導入する。次いで反応混合物を-2~5℃の温度で1時間静置する。過剰の二酸化硫黄/三酸化硫黄を120℃、0.1barで除去し、反応混合物を60℃まで冷却し、表題の化合物を得る。表題の化合物はSN80(Repsol社から市販されている)などの希釈油で希釈してもよい。
単離した4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸は以下の特徴を有する:(i)Mnは600~700ダルトンである;(ii)多分散度は1.3である;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の55質量%以上のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32個以上の総炭素原子数を有する;(iv)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の40~70質量%のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に32~56個の総炭素原子数を有する;(v)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の25質量%以下のポリ(ブチレニル)置換基は、その置換基中に60個以上の総炭素原子数を有する;(vi)ポリ(ブチレニル)置換基は、32個、36個、及び/又は40個の総炭素原子数を有するポリ(ブチレニル)置換基から成る;(vii)ポリ(ブチレニル)置換基は、分岐鎖構造を有するポリ(ブチレニル)置換基から成る。
好適な添加剤Aは、Infineum UK社から入手可能であり、例えば、83質量%a.i.の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸から成る。
【0061】
成分(B)
成分Bは、本明細書で定義しているように添加剤Bを表す。
(i)ポリ(プロピレン)の合成
密閉した反応器にプロペン、三フッ化ホウ素触媒及び助触媒として水(三フッ化ホウ素と水とのモル比は1:2)を24~28℃、圧力16barで充填し、得られた反応混合物を1時間撹拌する。次いで、反応混合物を最初に50℃(大気圧)に加熱し、その後、真空(60mbar)下で90~120℃に加熱し、残留プロパン、三フッ化ホウ素、及び三フッ化ホウ素/水複合体を留去する。反応器内に残った残留精製ポリ(プロピレン)を冷却し、60℃で貯蔵する。当該ポリ(プロピレン)は以下の特徴を有する:(i)ASTM D2887に準拠してGCでの測定によれば、Mnは340ダルトンである;(ii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(プロピレン)の総質量に対して65質量%を超えるポリ(プロピレン)は21個以上の総炭素原子数を有する;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、ポリ(プロピレン)の総質量に対して25質量%未満のポリ(プロピレン)は30個以上の総炭素原子数を有する。
【0062】
(ii)1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンの合成
成分Aの工程(ii)に記載の1‐ポリ(ブチレニル)ベンゼン形成手順と同一の手順を用い、ベンゼンとポリ(プロピレン)とのモル‐モル比を7.5:1として、工程(i)で得たポリ(プロピレン)から表題の化合物を合成する。
減圧下(20~40mmHg)、295℃で蒸留することにより、1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン生成物を得て、1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン類を生成する。1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン類は以下の特徴を有する:(i)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン類の60質量%以上のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する;(ii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン類の65~90質量%のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に21~27個の総炭素原子数を有する;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン類の25質量%以下のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に30個以上の総炭素原子数を有する;(iv)ポリ(プロピレニル)置換基は、21個、24個、及び/又は27個の総炭素原子を有するポリ(プロピレニル)置換基から成る;(v)ポリ(プロピレニル)置換基は、分岐鎖構造を有するポリ(プロピレニル)置換基から成る。
【0063】
(iii)4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸の合成
成分Aの工程(iii)に記載の4‐ポリ(ブチレニル)ベンゼンスルホン酸形成手順と同一の手順を用い、工程(ii)の1‐ポリ(プロピレニル)ベンゼン生成物から表題の化合物を合成する。
単離した4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸は以下の特徴を有する:(i)Mnは450~550ダルトンである;(ii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の60質量%以上のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に21個以上の総炭素原子数を有する;(iii)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の65~90質量%のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に21~27個の総炭素原子数を有する;(iv)ASTM D2887に準拠してGCでの決定によれば、前記1種以上の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸(単数又は複数)の25質量%以下のポリ(プロピレニル)置換基は、その置換基中に30個以上の総炭素原子数を有する;(v)ポリ(プロピレニル)置換基は、21個、24個、及び/又は27個の総炭素原子を有するポリ(プロピレニル)置換基から成る;(vi)ポリ(プロピレニル)置換基は、分岐鎖構造を有するポリ(プロピレニル)置換基から成る。
好適な添加剤Bは、Infineum UK社から入手可能であり、例えば、85質量%a.i.の4‐ポリ(プロピレニル)ベンゼンスルホン酸から成る。
【0064】
原油混合物
コロンビア産重質原油(アスファルテン分:10質量%)とシェールオイルとの質量‐質量比1:1混合物
原油アスファルテン安定性試験
ASTM D7157に準拠し、Rofa France社のAutomated Stability Analyserを使用して試験を実施する。この試験は、ヘプタン添加時の不安定化に抵抗する原油の能力を示すものである。結果は、油からのアスファルテン類の析出に対する油の本来備わっている安定性を「S」値として記録する。「S」値が高いほど、アスファルテン類を溶媒和及び/又は分散させる油の能力が高く、アスファルテンの凝結及び/又は沈殿に対して油がより安定していることを示している。本明細書の結果は、添加剤A及び/又は添加剤Bを含まない原油混合物に対する『相対的な「S」値』として報告する。
【0065】
結果
【表1】
結果から、単一の添加剤を使用する場合、添加剤Aは最良の結果をもたらしたことが分かる(830質量ppm a.i.の処理率で、対照に対して14%の改善)。添加剤A程ではないが、添加剤Bも対照に対して改善を示した(850質量ppm a.i.の処理率で5%の改善)。添加剤Aの処理率を830質量ppm a.i.から2075質量ppm a.i.まで増加させると、更に性能がわずかに改善された。