(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エアシャワー装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240924BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
F24F7/06 C
B08B5/00 A
(21)【出願番号】P 2020166140
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 尚大
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207584939(CN,U)
【文献】特開2016-044879(JP,A)
【文献】特開平09-229441(JP,A)
【文献】特開2018-105576(JP,A)
【文献】特開2013-226472(JP,A)
【文献】特開2004-176597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080465(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0040630(KR,A)
【文献】特開2018-115827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアシャワー室内の被処理体に空気を吹き付けるエアシャワー装置であって、
前記エアシャワー装置の外枠をなし、前記エアシャワー室を囲むよう互いに接続する複数の壁部材であって、前記壁部材のうち少なくとも第1壁部材が、前記外枠をなす外壁と、前記外壁との間に除塵室を形成しつつ前記除塵室と前記エアシャワー室とを間仕切りするよう前記外壁と間隔をあけて配置された内壁と、を有する、複数の壁部材と、
前記除塵室内に配置され、空気中の微粒子を捕集するエアフィルタと、
前記除塵室内に配置され、前記内壁に設けられた吸気口から前記エアシャワー室内の空気を取り込んで前記エアフィルタを通過させ、前記内壁に設けられた吹出口から前記エアシャワー室内に送り込むファンと、
前記除塵室に面する前記
外壁の壁面に取り付けられるフィルタ固定部材であって、前記壁面との間に空気を導入するための導入空間を形成する導入壁部を有する空気導入部と、前記導入空間内の空気を前記エアフィルタに誘導し、空気が流れる方向の下流側において開口した誘導空間を形成する誘導壁部を有し、前記開口に前記エアフィルタが取り付けられる空気誘導部と、を有するフィルタ固定部材と、を備え、
前記フィルタ固定部材は、前記空気導入部及び前記空気誘導部が一体に形成された部材であ
り、
前記フィルタ固定部材は発泡樹脂成形体である、ことを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項2】
前記誘導壁部の前記下流側の開口端部と前記エアフィルタとの間に挟まれるよう、前記開口端部の端面を被覆する周状の補強部材をさらに備える、請求項
1に記載のエアシャワー装置。
【請求項3】
前記導入壁部は、空気が前記導入空間内を前記
外壁の前記壁面に沿って流れるよう形成され、
前記誘導壁部は、空気が前記誘導空間内を前記外壁の前記壁面の法線方向に流れるよう形成されている、請求項1
又は2に記載のエアシャワー装置。
【請求項4】
前記ファンは、前記導入空間に向けて空気を吹き込むよう配置され、
前記導入壁部は、前記導入空間内を空気が流れる方向に進むにつれ前記壁面に接近するよう前記壁面に対して傾斜して延びる傾斜壁部を有している、請求項
3に記載のエアシャワー装置。
【請求項5】
前記フィルタ固定部材は、前記エアフィルタが前記吹出口と対向して配置されるよう、前記外壁の前記壁面に取り付けられ、
当該壁面の法線方向の長さに関して、当該壁面の側の前記フィルタ固定部材の端と前記エアフィルタと
の距離は、前記ファンが配置された側の前記導入壁部の端部の長さ以下である、請求項
4に記載のエアシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシャワー室内の被処理体に空気を吹き付けるエアシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造、医療、食品製造加工等を行う施設で、塵埃等の粒子や微生物の侵入又は漏出の防止が要求されるクリーンルームでは、着衣に付着した微粒子を除去するため、出入口にエアシャワー装置が設けられている。
【0003】
従来、エアシャワー室を挟む側壁部の内部の室内に、ファンから送り出された空気を取り込んでエアフィルタに導くプレナムボックスを配置したエアシャワー装置が知られている(特許文献1)。プレナムボックスは、複数の構成部材として、側壁部、天井板、底板、フィルタ設置壁部、及びファン支持体を有し、これらが互いにリベット又はビス等により連結され、組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレナムボックスの構成部材の互いに連結される部分には、リベットやビスを打つための折り曲げられた端部を形成する必要がある。そして、ボックス内を流れる空気が漏れないよう、端部の間の隙間等をシール材で封止する必要がある。しかし、このようなシール材を設ける作業によって、エアシャワー装置の組み立てに要する工数が多くなる。また、シール材による封止が不十分(シール不良)だった箇所において、使用中に空気が漏れるという問題がある。特に、構成部材の形状が複雑で、多数あると、より多くの作業工数が必要となり、空気が漏れる問題も顕著となる。
【0006】
そこで、本発明は、エアシャワー室を囲む壁部材の内部にエアフィルタを配置したエアシャワー装置において、エアフィルタを壁部材に固定するための作業工数を低減できるエアシャワー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、エアシャワー室内の被処理体に空気を吹き付けるエアシャワー装置であって、
前記エアシャワー装置の外枠をなし、前記エアシャワー室を囲むよう互いに接続する複数の壁部材であって、前記壁部材のうち少なくとも第1壁部材が、前記外枠をなす外壁と、前記外壁との間に除塵室を形成しつつ前記除塵室と前記エアシャワー室とを間仕切りするよう前記外壁と間隔をあけて配置された内壁と、を有する、複数の壁部材と、
前記除塵室内に配置され、空気中の微粒子を捕集するエアフィルタと、
前記除塵室内に配置され、前記内壁に設けられた吸気口から前記エアシャワー室内の空気を取り込んで前記エアフィルタを通過させ、前記内壁に設けられた吹出口から前記エアシャワー室内に送り込むファンと、
前記除塵室に面する前記壁の壁面に取り付けられるフィルタ固定部材であって、前記壁面との間に空気を導入するための導入空間を形成する導入壁部を有する空気導入部と、前記導入空間内の空気を前記エアフィルタに誘導し、空気が流れる方向の下流側において開口した誘導空間を形成する誘導壁部を有し、前記開口に前記エアフィルタが取り付けられる空気誘導部と、を有するフィルタ固定部材と、を備え、
前記フィルタ固定部材は、前記空気導入部及び前記空気誘導部が一体に形成された部材である、ことを特徴とする。
【0008】
前記フィルタ固定部材は発泡樹脂成形体であることが好ましい。
【0009】
前記誘導壁部の前記下流側の開口端部と前記エアフィルタとの間に挟まれるよう、前記開口端部の端面を被覆する周状の補強部材をさらに備えることが好ましい。
【0010】
前記導入壁部は、空気が前記導入空間内を前記壁面に沿って流れるよう形成され、
前記誘導壁部は、空気が前記誘導空間内を前記壁面の法線方向に流れるよう形成されている場合に好適である。
【0011】
前記ファンは、前記導入空間に向けて空気を吹き込むよう配置され、
前記導入壁部は、前記導入空間内を空気が流れる方向に進むにつれ前記壁面に接近するよう前記壁面に対して傾斜して延びる傾斜壁部を有していることが好ましい。
【0012】
前記フィルタ固定部材は、前記エアフィルタが前記吹出口と対向して配置されるよう、前記外壁の前記壁面に取り付けられ、
当該壁面の法線方向の長さに関して、当該壁面と前記エアフィルタと距離は、前記ファンが配置された側の前記導入壁部の端部の長さの半分以下である場合に好適である。
【0013】
本発明の別の一態様は、エアシャワー室内の被処理体に空気を吹き付けるエアシャワー装置の製造方法であって、
エアシャワー装置本体を組み立てるステップと、
前記フィルタ固定部材を、前記エアシャワー装置本体の前記第1壁部材の前記壁の前記壁面に取り付けるステップと、
前記エアフィルタを前記フィルタ固定部材に取り付けるステップと、を有していることを特徴とする。
エアシャワー装置本体は、前記一態様の、前記複数の壁部材と、前記ファンと、好ましくは前記補強部材と、を備え、前記一態様の、前記エアフィルタと、前記フィルタ固定部材と、を備えない。
【発明の効果】
【0014】
上述のエアシャワー装置によれば、エアフィルタを壁部材に固定するための作業工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】エアシャワー装置の構成を説明する図である。
【
図3】フィルタ固定部材を、気流方向の下流側から見て示す正面図である。
【
図4】フィルタ固定部材を、気流方向の上流側から見て示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエアシャワー装置について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のエアシャワー装置の分解斜視図である。
図2は、本実施形態のエアシャワー装置の構成を説明する図である。
本実施形態のエアシャワー装置10は、エアシャワー室24内に入った被処理体である利用者に空気を吹き付けて、利用者の衣服や頭髪に付着した粒子やそれよりも小さな微粒子を除去する装置である。エアシャワー装置1は、例えば、半導体製造、医療、食品製造加工等を行う施設のクリーンルームの出入口に設けられる。エアシャワー装置10は、設置面に立設される。
【0017】
エアシャワー装置10は、3つの壁部材と、エアフィルタ30と、循環ファン23と、フィルタ固定部材28と、扉部20,21と、を備える。
【0018】
3つの壁部材は、エアシャワー装置10の外枠をなし、エアシャワー室24を側方及び上方から囲むよう互いに接続する部材であり、第1側壁部11(第1壁部材)と、第2側壁部16と、天井壁部18と、を有している。エアシャワー室24は、第1側壁部11(第1壁部材)、第2側壁部16、天井壁部18、設置面、及び扉部20,21に囲まれている。
【0019】
第1側壁部11は、エアシャワー装置10の外枠をなす外壁11aと、外壁11aとの間に除塵室11cを形成しつつ除塵室11cとエアシャワー室24とを間仕切りするよう外壁11aと間隔をあけて配置された内壁11bと、外壁11aと内壁11bとを接続する一対の側壁11d,11eと、を有する、内部が空洞の部材である。外壁11aと内壁11bとの間には、除塵室11cのほか、上部空間11hが形成され、除塵室11cと上部空間11h間を間仕切りする仕切板11fが配置されている。また、外壁11aと内壁11bとの間には、除塵室11cを上流側除塵室11c1及び下流側除塵室11c2の上下2つに間仕切りする仕切板11gが配置されている。
扉部20は、第1側壁部14、第2側壁部16、及び天井壁部18により形成される2つの開口の一方(
図1の手前側)に配置され、扉部21は、2つの開口の他方(
図1の奥側)に配置されている。
【0020】
第1側壁部11の内壁11bには、吹出口を構成するパンカールーバ34を通してエアシャワー室24内に噴射した空気を吸気する吸気口26が設けられ、上流側除塵室11c1には、吸気口26から吸気した空気中の微粒子の一部を除去するプレフィルタ27が配置されている。
【0021】
第1側壁部14の下流側除塵室11c2には、さらに、フィルタ固定部材28と、循環ファン23と、循環ファン23を用いてフィルタ固定部材28と外壁11aとの間に導入された空気を清浄するエアフィルタ30と、が配置されている。
【0022】
循環ファン23は、上流側除塵室11c1内に、フィルタ固定部材28との間にガスケット又はゴムフランジを挟んでフィルタ固定部材28と接続される。すなわち、仕切板11gの高さ位置は、フィルタ固定部材28と循環ファン23の間に位置している。循環ファン23は、吸気口26からエアシャワー室24内の空気を取り込んでエアフィルタ30を通過させ、吹出口からエアシャワー室24内に送り込む。第1側壁部14の内壁11bには、複数の吹出口を構成するパンカールーバ34が設けられている。循環ファン23は、上流側除塵室11c1内の空気を引き込んでフィルタ固定部材28に空気を導入する。吹出口の断面は絞られているので、第1側壁部14の下流側除塵室11c2内の圧力は高くなっている。したがって、パンカールーバ34から空気が勢い良く噴出される。
【0023】
エアフィルタ30は、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等の高性能エアフィルタが用いられる。高性能エアフィルタは、粒径1μm以下の対象粒子において、計数法(JIS B 9927, JIS Z 8901 13種 0.3μmDOP)で95%~99.99%の捕集効率を有し、かつ、粒径2.5μmの対象粒径において下記計測法で99%以上の捕集効率を有するものである。すなわち、2.5μmの粒径の大気塵粒子をエアフィルタ30に流し、透過した粒子の個数を計測し、その個数に大気塵粒子の密度3g/cm3を乗算して透過粒子の質量を求める。さらに、透過前の粒子濃度からエアフィルタ30に流した粒子の質量を求める。この2つの質量の比率から捕集効率(%)を計算する。エアフィルタ30としては、例えば、微細ガラス繊維で抄紙したガラス繊維紙、微細合成繊維にエレクトロレル加工して構成された帯電不織布、あるいはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂膜を延伸加工したPTFE膜を濾材として用い、これらの濾材を、セパレータ、リボン(ホットメルト樹脂)あるいはエンボス加工を用いてプリーツ化して、樹脂あるいは金属製のフィルタ枠にウレタン樹脂等のシール剤で固定したものである。
【0024】
第2側壁部16は、エアシャワー室24を挟んで第1側壁部14に対向するように設けられている。
天井壁部18は、第1側壁部14及び第2側壁部16の上端部同士を接続する。
天井壁部18は、エアシャワー室24の天井面を形成する。天井壁部18のエアシャワー室24の天井面には照明灯19が設けられている。
第2側壁部16及び天井壁部18は、第1側壁部11と同様に内部が空洞の部材である。
第1側壁部11、第2側壁部16、及び天井壁部18は、例えば、ボンデ鋼板からなる部材である。第1側壁部14、第2側壁部16、天井壁部18、及び、扉部20,21には組み立て可能に連結部が設けられている。
扉部20,21は、利用者が出入りすることができる部分で、開閉式となっている。
【0025】
このようなエアシャワー装置10では、扉部20を開けてエアシャワー室24内に入った利用者が扉部20を閉めると。図示されないスイッチが作動し、循環ファン23が作動する。これにより、パンカールーバ34から空気が噴射する。利用者の衣服や頭髪から離脱し落下した微粒子は、吸気口26から空気とともに吸引される。空気中に含まれる微粒子の一部は、プレフィルタ27によって除去され、循環ファン23を介してフィルタ固定部材28と外壁11aとの間の空間に導入される。導入された空気中の微粒子は、エアフィルタ30により濾過され、清浄な空気がパンカールーバ34から噴射される。利用者は、空気の噴射中、必要に応じてエアシャワー室24内で向きを変えながら、噴射した空気を浴びる。こうして、利用者の衣服あるいは頭髪に付着した微粒子を除去する。空気の噴射は1回当たり、風速25m/秒以上で、数10秒、例えば20秒間継続する。エアシャワー装置10の動作については、公知のエアシャワー装置と同様に行われる。例えば、利用者は、扉部20をあけて入室後、扉部20,21は施錠され、エアシャワーを浴びなければ、扉部21をあけて退室することができない。
【0026】
(フィルタ固定部材)
次に、フィルタ固定部材28について説明する。
図3は、フィルタ固定部材28を、気流方向Y(
図5参照)の下流側から見て示す正面図である。
図4は、フィルタ固定部材28を、気流方向Yの上流側から見て示す背面図である。
図5は、
図3のA-A線断面図である。
【0027】
フィルタ固定部材28は、下流側除塵室11c2に面する外壁11aの壁面に取り付けられる。フィルタ固定部材28は、空気導入部51と、空気誘導部55と、を有している。
【0028】
空気導入部51は、外壁11aとの間に空気を導入するための導入空間52(
図4及び
図5参照)を形成する導入壁部53を有する。図示される例において、導入空間52は、
図5の奥行き方向を高さ方向とする略三角柱形状の空間であり、導入壁部53は、三角柱の上面、底面、及び1つの側面と接する形状を有している。
【0029】
空気誘導部55は、導入空間52内の空気をエアフィルタ30に誘導し、空気が流れる方向の下流側において開口した誘導空間56を形成する誘導壁部57を有している。図示される例において、誘導空間56は、
図5のY方向を高さ方向とする略四角柱形状の空間であり、誘導壁部57は、Y方向の上流側において、四角柱の4つの側面のうちの3つの側面と接し、Y方向と直交する断面がコの字形状を有し、Y方向の下流側において、四角柱の4つの側面と接する矩形状を有している。開口した誘導壁部57の開口端部58には、エアフィルタ30が取り付けられる。開口端部58は、開口を囲むY方向に見て矩形状の部分である。開口端部58は、矩形状の開口端部58の四辺のうちの一辺に位置する端部において、導入壁部53の傾斜壁部54(後述)と接続している。
【0030】
開口端部58と気流方向Yの反対側の誘導壁部57の端部60(
図4及び
図5参照)は、誘導空間56が導入空間52と連通するよう、導入空間52の側に開いた上述のコの字形状を有し、フィルタ固定部材28がコの字の両端が延長された形状をなすよう、導入壁部53の側面部54a,54b(後述)と接続してなる接続壁部70を形成している。すなわち、フィルタ固定部材28は、外壁11aの壁面の側において、誘導空間56及び導入空間52を囲むよう誘導壁部57と導入壁部53が接続してなるコの字形状の接続壁部70を有している。この接続壁部70の外壁11a側の端には、外壁11aにボルト及びナットで留められる複数の金具61が取り付けられる。金具61が外壁11aにボルト及びナットで留められることで、フィルタ固定部材28は外壁11aに取り付けられる。
【0031】
フィルタ固定部材28は、空気導入部51及び空気誘導部55が一体に形成された部材である。このため、上記プレナムボックスのように、互いに連結される構成部材の部分に、リベットやビスを打つための折り曲げられた端部を形成する必要がなく、また、リベットやビスを打つ作業が省ける。そして、フィルタ固定部材28によれば、上記プレナムボックスの如く、構成部品同士の間に隙間があくこともないため、シール材で封止する必要がなく、シール材を設ける作業が省ける。このため、エアフィルタ30を外壁11aに固定するための作業工数を大幅に減らせる。さらに、フィルタ固定部材28には、シール材で封止される隙間がないため、上記プレナムボックスの如く、シール不良に起因して使用中に空気が漏れることがない。
【0032】
フィルタ固定部材28は、樹脂成形体であることが好ましく、発泡樹脂成形体であることが特に好ましい。このようなフィルタ固定部材28は軽量であるため、エアシャワー装置10を組み立てる際に、フィルタ固定部材28を、壁部材11の空洞内に搬入し、さらに、ずれ落ちないように支えつつ外壁11aに取り付ける作業が容易になる。また、フィルタ固定部材28を一体成型品として容易に製造でき、コストを低減できる。好ましい発泡樹脂としては、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、が挙げられる。
【0033】
エアシャワー装置10は、補強部材63(
図3及び
図5参照)をさらに備えることが好ましい。補強部材63は、開口端部58とエアフィルタ30との間に挟まれるよう、開口端部38の端面(
図5においてY方向下流側を向く面)を被覆する矩形状の部材である。補強部材63は、
図5に示されるようにY方向と直交する平面に沿って延びる平坦な形状の部材であることが好ましいが、例えば、矩形状の補強部材63の四辺のうち傾斜壁部54の側の一辺を除いた三辺に位置する部分において、当該平坦な形状の外周側の端から誘導壁部57に沿ってY方向の上流側にさらに延びることで補強部材63の周方向と直交する断面がL字形状を有する部材であることも好ましい。このような補強部材63がエアフィルタ30とフィルタ固定部材28との間に介在することで、エアフィルタ30をフィルタ固定部材28に取り付ける際にエアフィルタ30の押付力をフィルタ固定部材28の当該端面の全体で受けることができ、特に発泡樹脂成形体である場合のフィルタ固定部材28の強度を確保できる。このため、フィルタ固定部材28の開口端部58には、エアフィルタ30をフィルタ固定部材28に押し付けるために、エアフィルタ30の下流側に配置した押さえ部材を、エアフィルタ30が上流側に移動するようボルト及びナット(図示略)を用いて締め付けた際に、誘導壁部57にY方向に延びるように設けたボルトが固定されるボルト固定孔58a(
図3参照)を起点とした誘導壁部57における亀裂の発生等、フィルタ固定部材28の損傷を抑えられる。この点から、補強部材63は、例えばステンレス等の金属製部材であることが好ましい。なお、押さえ部材81は、互いに平行に配置される断面L字形状で直線状に延びる2本の部材であり、それぞれ、両端部にボルトが貫通する貫通孔81a(
図3参照)を有している。エアフィルタ30は、ボルト固定孔58aに固定されたボルトに対するナットの締め付け量を調節することで、エアフィルタ30に対する押付力が調整される。ナットは、ボルトが貫通する押さえ部材81の部分に対しY方向の下流側に配置される。なお、
図5に示した押さえ部材81の上下方向位置は、ボルト固定孔58aの上下方向位置に対してずれている。
【0034】
導入壁部53は、空気が導入空間52内を外壁11aの壁面に沿って(
図5のX方向)流れるよう形成され、誘導壁部57は、空気が誘導空間56内を外壁11aの壁面の法線方向(
図5のY方向)に流れるよう形成されている場合に、好適に用いられる。このような空気の流れが形成されるよう、導入壁部53及び誘導壁部57は複雑な形状を有しているが、上述のように、空気導入部51及び空気誘導部55が一体に形成されているので、壁部53,57の間等に隙間はなく、シール材を設ける必要がない。
【0035】
循環ファン23は、上述したように、導入空間52に向けて空気を吹き込むよう配置されている。そして、導入壁部53は、導入空間52内を空気が流れる方向に進むにつれ外壁11aの壁面に接近するよう外壁11aの壁面に対して傾斜して延びる傾斜壁部54を有している。このように空気の流路が滑らかに絞られていることにより、循環ファン23から送り込まれる空気の抵抗が少なく、パンカールーバ34,35から吹き出す空気の流速を高められる。また、循環ファン23の側の導入空間52の開口の大きさを確保できるため、風量の大きい比較的大きな循環ファン23を用いることができ、パンカールーバ34,35から吹き出す空気の流速を高めることに寄与する。一方で、導入壁部53は、傾斜壁部54の
図5の奥行き方向の両側に略三角形状の側面部54a,54bを有しており、複雑な形状を有しているが、フィルタ固定部材28は、空気導入部51及び空気誘導部55が一体に形成された部材であるので、シール材を設ける必要がない。
【0036】
フィルタ固定部材28は、上述したように、エアフィルタ30がパンカールーバ34と対向して配置されるよう、外壁11aの壁面に取り付けられる。当該壁面の法線方向の長さに関して、当該壁面の側のフィルタ固定部材28の端とエアフィルタ30と距離d(
図5参照)は、循環ファン23が配置された側の導入壁部53の端部の長さD(
図5参照)の半分以下であることがより好ましく、D/10≦d≦Dを満たすことが好ましい。このように、距離dが短いことで、誘導壁部57の強度を確保しやすく、特にフィルタ固定部材28が発泡樹脂成形体である場合に有効である。また、省スペース化のために、外壁11aと内壁11bの間隔(壁部材11の幅)を短くした場合に、エアフィルタ30がパンカールーバ34と接触することを回避できる。上記間隔は、好ましくは150~350mmであり、例えば200mmである。
【0037】
(エアシャワー装置の製造方法)
次に、エアシャワー装置の製造方法を説明する。
エアシャワー装置の製造方法は、エアシャワー装置本体を組み立てるステップと、フィルタ固定部材をエアシャワー装置本体の第1壁部材の壁の壁面に取り付けるステップと、エアフィルタをフィルタ固定部材に取り付けるステップと、を有している。
【0038】
エアシャワー装置本体は、複数の壁部材と、ファンと、を備える。言い換えると、エアシャワー装置本体は、フィルタ固定部材及びエアフィルタを除いたエアシャワー装置の部分を意味する。エアシャワー装置は、エアシャワー室内の被処理体に空気を吹き付ける装置である。
複数の壁部材は、エアシャワー装置の外枠をなし、エアシャワー室を囲むよう互いに接続する部材である。壁部材のうち第1壁部材は、外枠をなす外壁と、外壁との間に除塵室を形成しつつ除塵室とエアシャワー室とを間仕切りするよう外壁と間隔をあけて配置された内壁と、を有する。複数の壁部材は、例えば、上述の、第1側壁部11(第1壁部材)と、第2側壁部16と、天井壁部18と、を有している。
ファンは、除塵室内に配置され、内壁に設けられた吸気口からエアシャワー室内の空気を取り込んでエアフィルタを通過させ、内壁に設けられた吹出口からエアシャワー室内に送り込む。ファンは、例えば上述の循環ファン23である。
【0039】
エアシャワー装置本体を組み立てるステップでは、複数の壁部材を、エアシャワー室を囲むよう互いに接続する。
【0040】
フィルタ固定部材は、除塵室に面する壁の壁面に取り付けられる部材である。フィルタ固定部材は、壁面との間に空気を導入するための導入空間を形成する導入壁部を有する空気導入部と、導入空間内の空気をエアフィルタに誘導し、空気が流れる方向の下流側において開口した誘導空間を形成する誘導壁部を有し、開口にエアフィルタが取り付けられる空気誘導部と、を有する。フィルタ固定部材は、空気導入部及び空気誘導部が一体に形成された部材である。フィルタ固定部材は、例えば上述のフィルタ固定部材28である。フィルタ固定部材の上述の接続壁部70には、上述の複数の金具61が取り付けられている。
フィルタ固定部材をエアシャワー装置本体の第1壁部材の壁(例えば外壁11a)の壁面に取り付けるステップでは、具体的に、金具61を外壁11aにボルト及びナットで留めることにより行われる。フィルタ固定部材28、金具61、及びボルト及びナット(図示略)は、フィルタ固定部材取付セットを構成する。
フィルタ固定部材のY方向の下流側に、上述した補強部材63を設けることが好ましい。
【0041】
エアフィルタは、除塵室11c内に配置され、空気中の微粒子を捕集する。エアフィルタは、例えば上述のエアフィルタ30である。
エアフィルタをフィルタ固定部材に取り付けるステップでは、例えば、上述の、押さえ部材81、ボルト及びナットを用いて、エアフィルタ30をフィルタ固定部材28の開口端部58に取り付ける。一実施形態によれば、
図5に示すように、フィルタ固定部材28の傾斜壁部54は、X方向に進むにつれY方向長さが長くなるよう肉厚に形成された肉厚部54cを有していることが好ましい。押さえ部材81及びエアフィルタ30を、フィルタ固定部材28に対し所定の位置に配置した状態を維持しながらボルト及びナットを用いてフィルタ固定部材28に押し付ける作業は、例えば、エアフィルタ30を、自重により下方にずれないように外壁11a側に押し付けながら行う必要がある。このような押し付けをしながら、押さえ部材81を所定の位置に配置した状態を維持し、さらに、押さえ部材81にボルト及びナットを取り付ける作業は困難を伴う。このような作業では、注意を払っても、エアフィルタ30が自重により下方に位置ずれしてしまうことがある。エアフィルタ30が下方に位置ずれすると、エアフィルタ30の枠の角がフィルタ固定部材28の傾斜壁部と接触し、特にフィルタ固定部材28が発泡樹脂成形体である場合に、傾斜壁部が凹むあるいは孔があく等、損傷する場合がある。傾斜壁部54が肉厚部54cを有していることで、例えば、肉厚部54cの上端をエアフィルタ30の台座として用い、エアフィルタ30を下方から肉厚部54cによって支持することができる。このため、エアフィルタ30を押し付ける作業を行う際に、エアフィルタ30を下方に位置ずれしないように外壁11a側に押し付ける必要がなく、エアフィルタ30をフィルタ固定部材28に押し付ける作業を容易に行える。また、フィルタ固定部材28が発泡樹脂成形体である場合に、エアフィルタ30との接触により傾斜壁部54が容易に損傷してしまうことを抑えられる。このような観点から、肉厚部54cの上端の位置は、エアフィルタ30の取付位置(
図3及び
図5に示すエアフィルタ30の位置)におけるエアフィルタ30の下端の位置と一致していることが好ましく、水平方向に平坦な面を有していることがより好ましい。肉厚部54cは、傾斜壁部54の
図5の奥行方向の少なくとも一部の領域に設けられていればよいが、フィルタ固定部材28の損傷を抑制する観点から、傾斜壁部54の
図5の奥行方向の好ましくは半分以上の領域、より好ましくは全領域に設けられる。ここで、例えば上記プレナムボックスにエアフィルタ30を取り付ける場合は、フィルタ固定部材28への取り付けが完了するまでの間、エアフィルタ30を下方から支持するために、エアフィルタ30を乗せる台座(図示略)を外壁11aに溶接で設ける作業等が必要となり、作業負担が大きい。なお、フィルタ固定部材28、押さえ部材81、ボルト及びナットは、フィルタ固定セットを構成する。また、フィルタ固定部材28、金具61、及び、金具61を留めるためのボルト及びナット、並びに、押さえ部材81、及び、押さえ部材81を留めるためのボルト及びナットは、フィルタ固定部材セットを構成する。
【0042】
上述したようにフィルタ固定部材を第1壁部材に取り付け、さらに、エアフィルタをフィルタ固定部材に取り付けた後、第1壁部材内に上述の仕切板11f、11gを設け、第1壁部材の側壁11dを閉じることで、エアシャワー装置本体が組み立てられ、エアシャワー装置が製造される。
【0043】
フィルタ固定部材28は、被処理体として人に空気を吹き付けるよう構成されたエアシャワー装置だけでなく、被処理体として物品に空気を吹き付けるよう構成されたエアシャワー装置にも使用可能である。このタイプのエアシャワー装置は、比較的小さいエアシャワー室を有し、パスボックスとも呼ばれる。
【0044】
除塵室11cは、上述した態様に制限されず、例えば、天井壁部18の内部の空洞と連通させた空間により構成されていてもよい。この場合、天井壁部18には、内部の清浄した空気をエアシャワー室24に噴射するための複数の吹出口を備えるパンカールーバ(図示略)を備えることが好ましい。
【0045】
以上、本発明のエアシャワー装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0046】
10 エアシャワー装置
11 壁部材
11a 外壁
11b 内壁
11c 除塵室
11c1 上流側除塵室
11c2 下流側除塵室
11d,11e 側壁
11f,11g 仕切板
11h 上部空間
14 第1側壁部(第1壁部材)
16 第2側壁部
18 天井壁部
20,21 扉部
23 循環ファン
24 エアシャワー室
26 吸気口
27 プレフィルタ
28 フィルタ固定部材
30 エアフィルタ
34 パンカールーバ
40 連結部
51 空気導入部
52 導入空間
53 導入壁部
54 傾斜壁部
54a,54b 側面部
54c 肉厚部
55 空気誘導部
56 誘導空間
57 誘導壁部
58 開口端部
58a ボルト固定孔
60 端部
61 金具
63 補強部材
70 接続壁部