(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】自己位置推定装置および移動体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/242 20240101AFI20240924BHJP
G05D 1/245 20240101ALI20240924BHJP
G05D 1/246 20240101ALI20240924BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240924BHJP
【FI】
G05D1/242
G05D1/245
G05D1/246
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020185043
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 元紀
(72)【発明者】
【氏名】重兼 聡夫
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206004(JP,A)
【文献】特開2017-097482(JP,A)
【文献】国際公開第2019/144222(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/242
G05D 1/245
G05D 1/246
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置であって、
前記移動体の移動状況に関する互いに異なる内容の情報を検出するN(Nは2以上の自然数)種類のセンサと、
前記移動体の周囲の環境を判定する環境判定部と、
前記環境判定部の判定結果に基づいて、前記N種類のセンサのうち、1種類以上N種類未満のセンサで検出された情報を選択する選択部と、
前記選択部で選択された情報に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する推定部と、を備
え、
前記N種類のセンサは、無線を介して送信される前記移動体の位置に関する情報を検出する無線位置情報検出部と、前記移動体の周囲を走査する走査部と、を含み、
前記環境判定部は、前記移動体が、前記走査部で検出された情報に基づく前記自己位置の推定精度が閾値未満の第1のエリアに位置するか、前記自己位置の推定精度が前記閾値以上の第2のエリアに位置するかを判定し、
前記選択部は、
前記第1のエリアに前記移動体が位置する場合、前記無線位置情報検出部で検出された情報を選択し、
前記第2のエリアに前記移動体が位置する場合、前記走査部で検出された情報を選択する、自己位置推定装置。
【請求項2】
前記環境判定部は、前記移動体が屋内に位置するか屋外に位置するかを判定し、
前記選択部は、前記移動体が前記屋内に位置する場合と、前記屋外に位置する場合とで、異なる種類のセンサで検出された情報を選択する、請求項1に記載の自己位置推定装置。
【請求項3】
前記N種類のセンサは、無線を介して送信される前記移動体の位置に関する情報を検出する無線位置情報検出部と、前記移動体の周囲を走査する走査部と、を含み、
前記選択部は、
前記移動体が前記屋内に位置する場合、前記走査部で検出された情報を選択し、
前記移動体が前記屋外に位置する場合、前記無線位置情報検出部で検出された情報を選択する、請求項2に記載の自己位置推定装置。
【請求項4】
前記第2のエリアは、前記第1のエリアよりも人工物が占める割合が大きいエリアである、請求項
1に記載の自己位置推定装置。
【請求項5】
前記第1のエリアは、前記移動体の周囲に本来存在しない物体が閾時間以上存在するエリアであり、
前記第2のエリアは、前記移動体の周囲に本来存在しない物体が前記閾時間以上存在しないエリアである、
請求項
1に記載の自己位置推定装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の自己位置推定装置を備える、移動体。
【請求項7】
前記選択部が選択した情報に基づいて、前記移動体の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知部をさらに備える、請求項
6に記載の移動体。
【請求項8】
前記N種類のセンサは、前記移動体の移動路を走査する第1の走査部と、前記移動体の移動路よりも上方を走査する第2の走査部と、を含み、
前記環境判定部は、前記第1の走査部の走査範囲に前記移動体が落ちない大きさの穴が存在するか否かを判定し、
前記選択部は、
前記移動路に前記穴が存在する場合、前記第2の走査部で検出された情報を選択し、
前記移動路に前記穴が存在しない場合、前記第1の走査部および前記第2の走査部のうち少なくとも一方で検出された情報を選択する、請求項
7に記載の移動体。
【請求項9】
前記自己位置推定装置における前記自己位置の推定結果に基づいて、前記移動体を自律移動させる自律移動制御部をさらに備える、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己位置推定装置および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に搭載したセンサおよび移動環境の地図などを用いて、自律移動する移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の移動体は、角速度算出部と、ジャイロと、移動制御部と、を備える。角速度算出部は、移動体の駆動輪を回転駆動する回転モータの回転量に基づいて、移動体の角速度を算出する。ジャイロは、移動体の角速度を直接取得する。移動制御部は、角速度算出部により算出された角速度とジャイロから得られた角速度との差が、所定値よりも大きいときには、ジャイロから得られた角速度を用いて回転角度の推定を行う。一方、移動制御部は、前記差が前記所定値よりも小さいときには、角速度算出部により算出された角速度を用いて回転角度を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、移動体の周囲の環境に関係なく適切に移動体の自己位置を推定することができる自己位置推定装置および移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の自己位置推定装置は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置であって、前記移動体の移動状況に関する互いに異なる内容の情報を検出するN(Nは2以上の自然数)種類のセンサと、前記移動体の周囲の環境を判定する環境判定部と、前記環境判定部の判定結果に基づいて、前記N種類のセンサのうち、1種類以上N種類未満のセンサで検出された情報を選択する選択部と、前記選択部で選択された情報に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する推定部と、を備え、前記N種類のセンサは、無線を介して送信される前記移動体の位置に関する情報を検出する無線位置情報検出部と、前記移動体の周囲を走査する走査部と、を含み、前記環境判定部は、前記移動体が、前記走査部で検出された情報に基づく前記自己位置の推定精度が閾値未満の第1のエリアに位置するか、前記自己位置の推定精度が前記閾値以上の第2のエリアに位置するかを判定し、前記選択部は、前記第1のエリアに前記移動体が位置する場合、前記無線位置情報検出部で検出された情報を選択し、前記第2のエリアに前記移動体が位置する場合、前記走査部で検出された情報を選択する。
【0007】
本開示の移動体は、上述の自己位置推定装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の自己位置推定装置および移動体によれば、移動体の周囲の環境に関係なく適切に移動体の自己位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本開示の実施の形態における移動体の左側面図
【
図3】本開示の実施の形態における移動体の右側面図
【
図5】本開示の実施の形態における移動体の制御系を示すブロック図
【
図6】本開示の実施の形態における移動体の走査範囲を示す左側面図
【
図7】本開示の実施の形態における移動体の走査範囲を示す平面図
【
図8】本開示の実施の形態における移動体の走査範囲を示す正面図
【
図9】本開示の実施の形態における移動体の動作を示すフローチャート
【
図10】本開示の実施の形態における自己位置推定用情報の選択処理を示すフローチャート
【
図11】本開示の実施の形態における障害物検知用情報の選択処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本開示の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<移動体の構成>
移動体の構成について説明する。なお、本実施の形態では、移動体の一例として、屋外、屋内、施設、私有地などにおいて物品を搬送する搬送ロボットについて説明するが、移動体は、掃除機、各種センシングのための移動体、人とのコミュニケーションをするコミュニケーションロボット、屋外、屋内、施設、私有地などにおいて人を搬送する自動車や鉄道、人が押すことにより移動するカートなどであってもよい。
図1は、移動体の正面図である。
図2は、移動体の左側面図である。
図3は、移動体の右側面図である。
図4は、移動体の背面図である。
図5は、移動体の制御系を示すブロック図である。
図6は、移動体の走査範囲を示す左側面図である。
図7は、移動体の走査範囲を示す平面図である。
図8は、移動体の走査範囲を示す正面図である。
【0012】
まず、移動体1の構造について説明する。なお、
図1~
図4に示すように、移動体1を後方から見た場合を基準にして、前後、上下、左右の方向を規定する。移動体1は、基体部2と、本体部3と、を備える。基体部2および本体部3は、車体10を構成する。
【0013】
基体部2は、4個の車輪21を備える。車輪21は、基体部2の内部に配置された図示しない駆動モータの駆動に伴い、それぞれ独立的に回転する。基体部2の前部および後部には、それぞれバンパー22が配置されている。前後のバンパー22には、それぞれバンパーセンサ23が配置されている。バンパーセンサ23は、当該バンパーセンサ23に物体が接触すると、当該接触した旨の検知信号を出力する。
【0014】
後ろのバンパー22の上方には、左右一対の反射板24が配置されている。基体部2には、図示しないバッテリーが配置されている。
【0015】
本体部3は、長方形の箱状に形成されている。本体部3の内部空間は、物品を収納する収納部30を構成している。本体部3は、基体部2の上面に配置されている。
【0016】
本体部3の前面部31は、
図1に示すように、正面視で縦長の略長方形状に形成されている。
【0017】
前面部31には、左ヘッドライト311と、右ヘッドライト312と、が配置されている。ヘッドライト311,312は、目を連想させる丸や楕円であることが好ましいが、これらの形状に限られない。
【0018】
前面部31には、左線状発光部313と、右線状発光部314と、が配置されている。左右の線状発光部313,314(以下、「線状発光部313,314」という場合がある)は、それぞれ線状に発光する発光領域を有する。線状発光部313,314は、眉毛を連想させるために、それぞれヘッドライト311,312のほぼ真上に配置されることが好ましい。
【0019】
左線状発光部313は、第1の左分割線状発光部313Aと、第2の左分割線状発光部313Bと、第3の左分割線状発光部313Cと、を備える。右線状発光部314は、それぞれ第1の左分割線状発光部313A、第2の左分割線状発光部313B、および、第3の左分割線状発光部313Cに対して、前面部31の左右方向の中心線を境に線対称な形状の第1の右分割線状発光部314A、第2の右分割線状発光部314B、および、第3の右分割線状発光部314Cを備える。
【0020】
第1の左分割線状発光部313Aおよび第1の右分割線状発光部314Aは、それぞれ正面視で略V字状の発光領域を有する。第2の左分割線状発光部313Bおよび第3の右分割線状発光部314Cは、それぞれ第1の左分割線状発光部313Aおよび第1の右分割線状発光部314Aの上方において、右斜め上方に直線状に延びる発光領域を有する。第3の左分割線状発光部313Cおよび第2の右分割線状発光部314Bは、それぞれ第2の左分割線状発光部313Bおよび第2の右分割線状発光部314Bの右方において、左斜め上方に直線状に延びる発光領域を有する。
【0021】
後述する制御装置57の制御に基づいて、ヘッドライト311,312を点灯しつつ、左線状発光部313を構成する第1~第3の左分割線状発光部313A~313Cのうちいずれか1つと、右線状発光部314を構成する第1~第3の右分割線状発光部314A~314Cのうちいずれか1つと、をそれぞれ選択的に発光させることにより、移動体1の周囲の人に、移動体1が表情を変化させているように認識させることができる。
【0022】
前面部31には、線状発光部313,314を被覆する被覆部材315が配置されている。被覆部材315は、前面部31と同じ色に着色されており、線状発光部313,314が発光しないときに、線状発光部313,314を外部から見えなくする機能を有する。
【0023】
前面部31には、左右一対の前ウインカー316が配置されている。左右の前ウインカー316は、それぞれ線状発光部313,314の上方に設けられている。前面部31における前ウインカー316よりも上方の領域(以下、「前面傾斜領域」という)31Aは、後方に傾いている。
【0024】
本体部3の左面部32には、
図2に示すように、収納扉部321が配置されている。収納扉部321が開かれると、収納部30に物品を出し入れすることができる。収納扉部321は、回動式であってもよいし、スライド式であってもよい。左面部32における収納扉部321の前方には、マイク322が配置されている。
【0025】
左面部32の上端における前後方向の中央位置には、左突出部323が設けられている。左突出部323は、左方に延びる基部と、基部の先端から斜め下方に延びる先端部と、を備える。
【0026】
本体部3の右面部33には、
図3に示すように、左突出部323と同じ形状の右突出部331が設けられている。
【0027】
本体部3の後面部34には、
図4に示すように、ナンバープレート341が配置されている。ナンバープレート341の上方には、左右一対のブレーキランプ342が配置されている。後面部34には、左右一対の後ウインカー343が配置されている。後面部34における後ウインカー343よりも上方の領域(以下、「後面傾斜領域」という)34Aは、前方に傾いている。
【0028】
後面傾斜領域34Aにおける右側には、非常停止ボタン344が配置されている。非常停止ボタン344が押されると、移動体1は非常停止する。
【0029】
本体部3の上面部35における後方側には、
図2および
図3に示すように、スピーカー351が配置されている。
【0030】
また、車体10には、
図5に示すように、送受信部50と、オドメトリ51と、GPS(Global Positioning System)52と、走査部53と、撮像部54と、補助発光部55と、記憶部56と、制御装置57と、が配置されている。
【0031】
オドメトリ51は、車輪21の回転状態に基づいて、移動体1の移動量と姿勢(向き)を検出し、検出結果を出力する。
【0032】
送受信部50およびGPS52は、
図3および
図4に示すように、本体部3内部の上方に配置されている。GPS52は、無線を介して送信される移動体1の位置に関するGPS情報を検出する無線位置情報検出部として機能する。
【0033】
走査部53は、移動体1の周囲を走査して、走査結果を出力する。走査部53は、
図1~
図4に示すように、第1の走査部531と、第2の走査部532と、第3の走査部533と、第4の走査部534と、を備える。
【0034】
第1の走査部531は、移動体1の移動路を走査する。第1の走査部531は、左下走査部531Aと、右下走査部531Bと、を備える。左下走査部531Aは、左突出部323の先端部における左面部32に対向する面に配置されている。右下走査部531Bは、右突出部331の先端部における右面部33に対向する面に配置されている。左下走査部531Aおよび右下走査部531Bは、例えば、走査光を用いて走査する2次元LiDAR(Light Detection And Ranging)によって構成されており、走査結果を出力する。左下走査部531Aは、移動体1の左方における鉛直面に対して傾斜する2次元の走査範囲を走査する。右下走査部531Bは、移動体1の右方における鉛直面に対して傾斜する2次元の走査範囲を走査する。具体的には、左下走査部531Aは、
図6に示すように、側面視における半円の一部(
図6における下端部)が欠けた形状、かつ、
図7および
図8に示すように、鉛直面に対して下方に向かうにしたがって左面部32から離れるように傾斜した線状の2次元の走査範囲(以下、「左下方2次元走査範囲」という)A1を走査する。右下走査部531Bは、左下方2次元走査範囲A1と同様に、側面視における半円の一部が欠けた形状、かつ、
図7および
図8に示すように、鉛直面に対して下方に向かうにしたがって右面部33から離れるように傾斜した線状の2次元の走査範囲(以下、「右下方2次元走査範囲」という)A2を走査する。なお、
図6および
図8の符号Gは、地面を示す。なお、側面視での左下方2次元走査範囲A1および右下方2次元走査範囲A2の形状は、上述のように半円形でないが、実際は、左下走査部531Aおよび右下走査部531Bは、半円形の範囲を走査している。
【0035】
第2の走査部532は、移動体1の移動路よりも上方を走査する。第2の走査部532は、左前走査部532Aと、右前走査部532Bと、を備える。左前走査部532Aおよび右前走査部532B(以下、「前走査部532A,532B」という場合がある)は、基体部2の前面における左右の両端部に配置されている。前走査部532A,532Bは、例えば、2次元LiDARによって構成されている。前走査部532A,532Bは、移動体1の前方および側方における、水平面に平行な2次元の走査範囲を走査し、走査結果を出力する。前走査部532A,532Bは、
図6~
図8に示すように、移動体1の前方および側方における、水平面に平行な2次元の走査範囲(以下、「前方2次元走査範囲」という)A3を走査する。
【0036】
第3の走査部533は、移動体1の前方を走査する。第3の走査部533は、前面傾斜領域31Aにおける本体部3の内部側に配置されている。前面傾斜領域31Aにおける第3の走査部533に対向する位置には、第3の走査部533を外部に露出させる第1の開口部317が形成されている。前面傾斜領域31Aには、第1の開口部317の上方および左右の側方から前方に突出する庇部318が設けられている。庇部318は、第3の走査部533が雨や雪で濡れることを抑制する。第3の走査部533は、例えば、走査光を用いて走査する3次元LiDARによって構成されている。第3の走査部533は、移動体1前方の3次元の走査範囲を走査し、走査結果を出力する。具体的には、第3の走査部533は、
図6に示すように、側面視における扇状、かつ、
図7に示すように、平面視における半円状の3次元の走査範囲(以下、「前方3次元走査範囲」という)A4を走査する。
【0037】
第4の走査部534は、移動体1の後方を走査する。第4の走査部534は、後面傾斜領域34Aに配置されている。第4の走査部534は、例えば、2次元LiDARによって構成されており、移動体1上方および後方の水平面に対して傾斜する2次元の走査範囲を走査し、走査結果を出力する。具体的には、第4の走査部534は、
図6に示すように、側面視における水平面に対して傾斜した線状、かつ、
図7に示すように、平面視における一部が欠けた楕円状の2次元の走査範囲(以下、「上方後方走査範囲」という)A5を走査する。第4の走査部534は、上方を走査する走査部と後方を走査する走査部とで構成されていてもよいし、1台の走査部で構成されていてもよい。なお、平面視での上方後方走査範囲A5の形状は、上述のように円形でないが、実際は、第4の走査部534は、円形の範囲を走査している。第4の走査部534の上面には、第4の走査部534が雨や雪で濡れることを抑制するカバー345が配置されている。
【0038】
ここで、オドメトリ51、GPS52、第1の走査部531、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534は、移動体1の移動状況に関する互いに異なる内容の情報を検出する複数種類のセンサ58を構成している。第1の走査部531、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534は、それぞれ走査範囲が異なるため、本実施の形態では、互いに異なる内容の情報を検出する複数種類のセンサ58と見なす。
【0039】
撮像部54は、前方撮像部541と、左方撮像部542と、右方撮像部543と、後方撮像部544と、を備える。
【0040】
前方撮像部541は、前面傾斜領域31Aにおける本体部3の内部側、かつ、第3の走査部533の下方に配置されている。前面傾斜領域31Aには、前方撮像部541のレンズを外部に露出させる第2の開口部319が形成されている。
【0041】
左方撮像部542は、左突出部323の先端部における左下走査部531Aよりも上方に配置されている。左突出部323には、左方撮像部542のレンズを外部に露出させる第3の開口部324が形成されている。
【0042】
右方撮像部543は、右突出部331の先端部における右下走査部531Bよりも上方に配置されている。右突出部331の先端部には、右方撮像部543のレンズを外部に露出させる第4の開口部332が形成されている。
【0043】
後方撮像部544は、後面傾斜領域34Aにおける本体部3の内部側、かつ、第4の走査部534の下方に配置されている。後面傾斜領域34Aには、後方撮像部544のレンズを外部に露出させる第5の開口部346が形成されている。
【0044】
補助発光部55は、左側面発光部551と、右側面発光部552と、後面発光部553と、を備える。左側面発光部551は、本体部3の左面部32の上縁部に配置されている。右側面発光部552は、本体部3の右面部33の上縁部に配置されている。後面発光部553は、本体部3の後面部34の上縁部の中央部分に配置されている。左側面発光部551、右側面発光部552および後面発光部553は、水平方向に線状に延びるように形成されている。
【0045】
記憶部56は、移動体1の移動に必要な各種情報を記憶する。記憶部56が記憶する情報としては、地図情報、移動経路情報、制御装置57を機能させるためのプログラム、線状発光部313,314、補助発光部55の発光パターンに関する情報、スピーカー351の発音パターン、後述する自己位置推定部573および障害物検知部574における情報の選択条件に関する情報が例示できる。なお、移動経路情報には、移動経路の複数地点を特定する座標、移動経路の周囲に存在する障害物情報、環境判定部576によって判定された環境情報(例えば、移動経路の周囲に存在する人工物や自然物に関する情報、グレーチングに関する情報など)が含まれている。移動経路情報は、移動体1の目的地と現在地に基づき生成されることが望ましい。移動経路情報は、記憶部56に記憶された地図情報に基づき生成されてもよく、通信機器などを介してサーバーに保存された地図情報を取得することに基づき生成されてもよい。
【0046】
制御装置57は、プロセッサを有するマイクロコンピュータが記憶部56に記憶されたプログラムを実行することによって各種処理を実施する。制御装置57は、バンパーセンサ23と、左ヘッドライト311と、右ヘッドライト312と、左線状発光部313と、右線状発光部314と、マイク322と、非常停止ボタン344と、スピーカー351と、オドメトリ51と、送受信部50と、GPS52と、走査部53と、撮像部54と、補助発光部55と、記憶部56と、に電気的に接続されている。制御装置57は、自律移動制御部571と、遠隔移動制御部572と、自己位置推定部573と、障害物検知部574と、を備える。
【0047】
自律移動制御部571は、自己位置推定部573で定期的に推定される自己位置、および、記憶部56に記憶された地図情報および移動経路情報などに基づいて、移動体1を目的地まで自律移動させる。自律移動制御部571は、障害物検知部574で移動体1の周囲に障害物が存在すると判定された場合、移動体1を停止させる。障害物としては、段差、電信柱、歩行者などが例示できるが、これらに限られない。
【0048】
遠隔移動制御部572は、遠隔管制オペレータによる遠隔操作装置の操作に基づいて、移動体1を制御する。遠隔移動制御部572は、撮像部54で撮像された映像と、マイク322に入力された移動体1外部の音の情報とを、送受信部50を介して、遠隔操作装置に送信する。遠隔移動制御部572は、遠隔操作装置からの遠隔操作信号を送受信部50が受信すると、遠隔操作信号に基づいて、移動体1の発車、移動、右左折、停止を制御する。
【0049】
自律移動制御部571および遠隔移動制御部572は、移動体1の移動中に、非常停止ボタン344が押された場合、または、バンパーセンサ23で接触が検知された場合、移動体1を停止させる。また、移動体1の移動中あるいは電源が入れられている状態において、ヘッドライト311,312を点灯させる。
【0050】
自己位置推定部573および複数種類のセンサ58は、自己位置推定装置59を構成する。自己位置推定部573は、環境判定部576と、取得部575と、選択部577と、推定部578と、を備える。
【0051】
取得部575は、移動体1の移動中あるいは電源が入れられている状態において、N(Nは2以上の自然数)種類のセンサ58で検出された情報を、定期的に取得する。
【0052】
環境判定部576は、移動体1の周囲の環境を判定する。環境判定部576が判定する移動体1の周囲の環境としては、屋内、屋外、人や物の往来、第1のエリア、第2のエリア、移動路に存在する移動体1が落ちない大きさの穴などが例示できるが、これらに限られない。
【0053】
第1のエリアは、推定部578における第2~第4の走査部532~534で検出された情報に基づく自己位置の推定精度が、閾値未満のエリアである。第2のエリアは、第2~第4の走査部532~534で検出された情報に基づく自己位置の推定精度が閾値以上のエリアである。なお、上述の閾値としては、70%が例示できるが、これに限られない。第1のエリアとしては、移動体1の周囲の領域における自然物が占める割合が、人工物が占める割合よりも大きいエリアや、駐車場に駐車している自動車や駐輪場に駐車している自転車やオートバイのように、移動体1の周囲に本来存在しない物体が、閾時間以上存在するエリアが例示できるが、これらに限られない。第2のエリアとしては、移動体1の周囲の領域における人工物が占める割合が、自然物が占める割合よりも大きいエリアや、歩行者や走行中の自転車、オートバイ、自動車のように、移動体1の周囲に本来存在しない物体が、閾時間以上存在しないエリアが例示できるが、これらに限られない。上述の閾時間としては、5秒が例示できるが、これに限られない。人工物としては、家や店舗やビルなどの建築物、橋、電信柱、標識などが例示できる。自然物としては、木、山、人、動物などが例示できる。移動体1が落ちない大きさの穴としては、グレーチングが例示できる。
【0054】
環境判定部576は、地図情報と、従前に推定部578で推定された自己位置と基づいて、環境を判定してもよい。環境判定部576は、移動体1の過去の走行履歴と、走査部53の走査結果と、撮像部54で撮像された映像と、のうち少なくともいずれか1つに基づいて、環境を判定してもよい。人工物や自然物の存在を知らせる信号を発する装置が建物や道路の近くに設置されている場合、環境判定部576は、この信号に基づいて、環境を判定してもよい。
【0055】
環境判定部576において、移動体1の存在位置が第1のエリアまたは第2のエリアであることを判定する方法として、以下の方法を適用してもよい。例えば、移動経路情報に基づく人工物または自然物の存在状態、または、撮像部54における撮像結果に基づいて、移動体1の周囲の範囲(移動体1から見える範囲)における人工物が占める割合と、自然物が占める割合とを算出し、当該算出結果に基づいて、移動体1の存在位置が第1のエリアまたは第2のエリアであることを判定してもよい。また、移動経路情報に、移動経路上の所定の位置が第1のエリアまたは第2のエリアであることを示す情報を含めておき、当該情報と自己位置推定結果とに基づいて、移動体1の存在位置が第1のエリアまたは第2のエリアであることを判定してもよい。また、撮像部54における撮像結果に基づいて、移動体1の周囲における歩行者、自転車、オートバイ、自動車の存在時間を算出し、当該算出結果と、移動経路情報における移動経路の周囲に存在する人工物に関する情報とに基づいて、移動体1の存在位置が第1のエリアまたは第2のエリアであることを判定してもよい。
【0056】
選択部577は、環境判定部576の判定結果に基づいて、取得部575で取得されたN種類のセンサ58からの情報のうち、1種類以上N種類未満のセンサ58で検出された情報を選択する。例えば、選択部577は、オドメトリ51、GPS52、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534で検出された情報のうち、つまり5種類の情報のうち、1種類以上、5種類未満(4種類以下)の情報を、自己位置推定に用いる情報として選択する。選択部577は、オドメトリ51、GPS52、第1の走査部531、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534で検出された情報のうち、つまり6種類の情報のうち、1種類以上、6種類未満(5種類以下)の情報を、障害物の検知に用いる情報として選択する。なお、選択部577の詳細な処理については後述する。
【0057】
推定部578は、選択部577で自己位置推定用情報として選択された情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定する。
【0058】
推定部578は、オドメトリ51の情報が選択された場合、移動体1の移動開始時の位置および姿勢と、オドメトリ51から出力される検出結果と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0059】
推定部578は、GPS52の情報が選択された場合、移動経路情報と、GPS52から出力されるGPS情報と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0060】
推定部578は、第2の走査部532の情報が選択された場合、第2の走査部532から出力される走査結果に基づいて、移動体1から前方2次元走査範囲A3に存在する物体(人工物、自然物)までの距離と、移動体1に対して物体が存在する方向と、を算出する。推定部578は、上記の算出結果と、移動経路情報と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0061】
推定部578は、第3の走査部533の情報が選択された場合、第3の走査部533から出力される走査結果に基づいて、前方3次元走査範囲A4に対応する3次元地図を生成する。推定部578は、生成した3次元地図と、移動経路情報と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0062】
推定部578は、第4の走査部534の情報が選択された場合、第4の走査部534から出力される走査結果に基づいて、上方後方走査範囲A5のうち、少なくとも第4の走査部534よりも上方の範囲に対応する3次元地図を生成する。推定部578は、生成した3次元地図と、移動経路情報と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0063】
障害物検知部574は、選択部577で障害物検知用情報として選択された情報に基づいて、移動体1の周囲に存在する障害物を検知する。
【0064】
障害物検知部574は、オドメトリ51の情報が選択された場合、移動体1の移動開始時の位置および姿勢と、オドメトリ51から出力される検出結果と、移動経路情報と、に基づいて、障害物を検知する。
【0065】
障害物検知部574は、GPS52の情報が選択された場合、移動経路情報と、GPS52から出力されるGPS情報と、に基づいて、障害物を検知する。
【0066】
障害物検知部574は、第1の走査部531の情報が選択された場合、第1の走査部531から出力される走査結果に基づいて、移動体1から左下方2次元走査範囲A1または右下方2次元走査範囲A2に存在する物体までの距離と、移動体1に対して物体が存在する方向と、を算出する。障害物検知部574は、上記の算出結果と、移動経路情報と、に基づいて、移動体1の側方の近い位置に存在する障害物を検知する。
【0067】
障害物検知部574は、第2の走査部532の情報が選択された場合、推定部578と同様に、移動体1から前方2次元走査範囲A3に存在する物体までの距離と、移動体1に対して物体が存在する方向と、を算出する。障害物検知部574は、上記の算出結果と、移動経路情報と、に基づいて、障害物を検知する。
【0068】
障害物検知部574は、第3の走査部533の情報が選択された場合、推定部578と同様に、前方3次元走査範囲A4に対応する3次元地図を生成する。障害物検知部574は、生成した3次元地図と、移動経路情報と、に基づいて、障害物を検知する。
【0069】
障害物検知部574は、第4の走査部534の情報が選択された場合、推定部578と同様の処理によって、上方後方走査範囲A5に対応する3次元地図を生成する。このとき、障害物検知部574は、第4の走査部534よりも上方の範囲および下方の範囲のうち、少なくとも一方の範囲に対応する3次元地図を生成する。障害物検知部574は、生成した3次元地図と、移動経路情報と、に基づいて、障害物を検知する。
【0070】
<移動体の動作>
次に、移動体1の動作について説明する。
図9は、移動体の動作を示すフローチャートである。
図10は、自己位置推定用情報の選択処理を示すフローチャートである。
図11は、障害物検知用情報の選択処理を示すフローチャートである。
【0071】
制御装置57は、自律移動制御部571または遠隔移動制御部572の制御に基づき、移動体1を移動させる。
【0072】
自律移動制御部571または遠隔移動制御部572による制御中、制御装置57の取得部575は、
図9に示すように、複数種類のセンサ58で検出された情報を取得する(ステップS1)。具体的には、取得部575は、オドメトリ51、GPS52、第1の走査部531、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534で検出された情報を取得する。
【0073】
次に、環境判定部576は、移動体1の周囲の環境を判定する(ステップS2)。本実施の形態では、環境判定部576は、移動体1が屋内または屋外に位置すること、移動体1が第1のエリアまたは第2のエリアに位置すること、グレーチングの有無を判定する。
【0074】
次に、制御装置57の自己位置推定部573は、自己位置推定処理を行う(ステップS3)。制御装置57の障害物検知部574は、障害物検知処理を行う(ステップS4)。
【0075】
自律移動制御部571または遠隔移動制御部572は、ステップS3の処理で得られた自己位置の推定結果と、ステップS4の処理で得られた障害物の検知結果と、に基づいて、移動体1の移動を制御する。なお、ステップS2の処理の次に、ステップS1の処理を行ってもよいし、ステップS4の処理の次に、ステップS3の処理を行ってもよい。
【0076】
(自己位置推定処理:ステップS3)
次に、ステップS3における自己位置推定処理について、詳細に説明する。自己位置推定部573の選択部577は、自己位置推定用情報の選択処理を行う(ステップS31)。選択部577は、ステップS31の処理において、
図10に示すように、ステップS1で取得されたオドメトリ51、GPS52、第2の走査部532、第3の走査部533、および、第4の走査部534で検出された情報の中から、所定の情報を自己位置推定用情報として選択する。
【0077】
具体的には、選択部577は、ステップS2における判定結果に基づいて、移動体1が屋内に位置しているか否かを判定する(ステップS311)。選択部577は、移動体1が屋内に位置していると判定した場合(ステップS311:YES)、第1の選択処理を行い(ステップS312)、自己位置推定用情報の選択処理を終了する。
【0078】
本実施の形態では、選択部577は、ステップS312において、GPS52以外のセンサ58で検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。つまり、選択部577は、オドメトリ51、第2~第4の走査部532~534のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。移動体1が屋内に位置する場合、GPS52でGPS情報を検出できないおそれがある。このため、推定部578は、GPS52で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定することができなかったり、実際の位置とは異なる位置を自己位置として推定してしまうおそれがある。これに対して、移動体1が屋内に位置することは、オドメトリ51、第2~第4の走査部532~534における情報の検出状態に、悪影響をほとんど及ぼさない。このため、推定部578は、GPS52以外のセンサ58で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を適切に推定することができる。
【0079】
選択部577は、移動体1が屋内に位置していないと判定した場合(ステップS311:NO)、ステップS2における判定結果に基づいて、移動体1が第1のエリアに位置しているか否かを判定する(ステップS313)。選択部577は、移動体1が第1のエリアに位置すると判定した場合(ステップS313:YES)、第2の選択処理を行い(ステップS314)、自己位置推定用情報の選択処理を終了する。
【0080】
本実施の形態では、選択部577は、ステップS314において、第2~第4の走査部532~534以外のセンサ58で検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。つまり、選択部577は、オドメトリ51、および、GPS52のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。
【0081】
例えば、第1のエリアが自然物が占める割合が大きいエリアの場合、木などの自然物は風などで揺れて形状が安定しないおそれがある。このため、第2~第4の走査部532~534で自然物までの距離を適切に検出することができないおそれがある。また、例えば、第1のエリアが移動体1の周囲に本来存在しない物体が閾時間以上存在する(自動車が駐車している駐車場が存在する)エリアの場合、第2~第4の走査部532~534で、その場所には本来存在しない物体までの距離を検出してしまうおそれがある。したがって、移動体1が第1のエリアに位置する場合、推定部578は、第2~第4の走査部532~534で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定することができなかったり、実際の位置とは異なる位置を自己位置として推定してしまうおそれがある。
【0082】
これに対して、移動体1の周囲に自然物が多く位置することや、移動体1の周囲に本来存在しない物体が閾時間以上存在することは、オドメトリ51、および、GPS52における情報の検出状態に、悪影響をほとんど及ぼさない。したがって、移動体1が第1のエリアに位置する場合でも、推定部578は、第2~第4の走査部532~534以外のセンサ58で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を適切に推定することができる。
【0083】
選択部577は、第1のエリアに移動体1が位置しないと判定した場合(ステップS313:NO)、移動体1が第2のエリアに位置していると判定する(ステップS315)。次に、選択部577は、第3の選択処理を行い(ステップS316)、自己位置推定用情報の選択処理を終了する。
【0084】
本実施の形態では、選択部577は、ステップS316において、GPS52以外のセンサ58で検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。つまり、選択部577は、オドメトリ51、第2~第4の走査部532~534のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、自己位置推定用情報として選択する。
【0085】
例えば、第2のエリアが人工物が占める割合が大きいエリアの場合、例えば高層ビルの間、トンネルの中、高架の下、地下駐車場に位置する場合、GPS52でGPS情報を検出できないおそれがある。このため、推定部578は、GPS52で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定することができなかったり、実際の位置とは異なる位置を自己位置として推定してしまうおそれがある。
【0086】
これに対して、移動体1の周囲に人工物が多く位置することは、オドメトリ51、第2~第4の走査部532~534における情報の検出状態に、悪影響をほとんど及ぼさない。また、例えば、第2のエリアが移動体1の周囲に本来存在しない物体が閾時間以上存在しない(歩行者や走行中の自転車、オートバイ、自動車が存在する)エリアの場合、第2~第4の走査部532~534で、その場所には本来存在しない物体までの距離を何回も検出してしまう可能性は低くなる。このため、推定部578は、GPS52以外のセンサ58で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置を適切に推定することができる。さらに、人工物は形状が安定しているため、第2~第4の走査部532~534は、人工物までの距離を適切に検出することができる。その結果、推定部578は、第2~第4の走査部532~534で検出された情報に基づいて、移動体1の自己位置をより適切に推定することができる。
【0087】
図9に示すように、ステップS31における自己位置推定用情報の選択処理が終了すると、推定部578は、ステップS31で選択された自己位置推定用情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定する(ステップS32)。ステップS32の処理において、推定部578は、複数の自己位置推定用情報が選択されている場合、全ての自己位置推定用情報をそれぞれ用いて別々に自己位置を推定し、推定結果の平均位置や最も多く推定された位置を、自己位置として推定してもよい。また、推定部578は、複数の自己位置推定用情報のうち、予め設定された優先度や、移動体1周囲の環境に応じて設定された優先度に基づいて、1つの自己位置推定用情報を選択し、選択した自己位置推定用情報に基づいて、自己位置を推定してもよい。なお、前記優先度に基づいて、複数の自己位置推定用情報の中から1つの自己位置推定用情報を選択する処理は、選択部577で行われてもよい。
【0088】
(障害物検知処理:ステップS4)
次に、ステップS4における障害物検知処理について、詳細に説明する。障害物検知部574は、選択部577の処理結果に基づいて、障害物検知用情報の選択処理を行う(ステップS41)。まず、選択部577は、ステップS41の処理において、
図11に示すように、ステップS2における判定結果に基づいて、移動体1の周囲にグレーチングが存在するか否かを判定する(ステップS411)。選択部577は、グレーチングが存在すると判定した場合(ステップS411:YES)、第4の選択処理を行い(ステップS412)、障害物検知用情報の選択処理を終了する。
【0089】
本実施の形態では、選択部577は、ステップS412において、第1の走査部531以外のセンサ58で検出された情報を、障害物検知用情報として選択する。つまり、選択部577は、オドメトリ51、GPS52、第2~第4の走査部532~534のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、障害物検知用情報として選択する。グレーチングが存在する場合、第1の走査部531から移動路に向けて発光された走査光が、グレーチングの中に入ってしまい、移動路の路面までの距離を適切に検出できないおそれがある。この場合、障害物検知部574は、グレーチングが設置されている位置に、実際には存在しない段差が存在すると誤検知してしまい、自律移動制御部571の制御によって、移動体1が停止してしまうおそれがある。これに対して、グレーチングが存在することは、オドメトリ51、GPS52、第2~第4の走査部532~534における情報の検出状態に、悪影響をほとんど及ぼさない。このため、障害物検知部574は、第1の走査部531以外のセンサ58で検出された情報に基づいて、障害物を適切に検知することができる。
【0090】
選択部577は、グレーチングが存在しないと判定した場合(ステップS411:NO)、第5の選択処理を行い(ステップS413)、障害物検知用情報の選択処理を終了する。
【0091】
本実施の形態では、選択部577は、ステップS413において、第1の走査部531を含む全てのセンサ58のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、障害物検知用情報として選択する。グレーチングが存在しない場合、第1の走査部531における情報の検出状態に上述のような悪影響がほとんど及ばず、全てのセンサ58の検出状態は、ほぼ同じだからである。
【0092】
図9に示すように、ステップS41における障害物検知用情報の選択処理が終了すると、障害物検知部574は、選択した障害物検知用情報に基づいて、障害物を検知する(ステップS42)。ステップS42の処理において、障害物検知部574は、複数の障害物検知用情報が選択されている場合、全ての障害物検知用情報をそれぞれ用いて別々に障害物を検知してもよい。この場合、障害物検知部574は、各障害物検知用情報を用いて検知した障害物までの距離の平均値を、障害物までの距離として推定してもよい。また、障害物検知部574は、複数の障害物検知用情報のうち、予め設定された優先度や、移動体1周囲の環境に応じて設定された優先度に基づいて、1つの障害物検知用情報を選択し、選択した障害物検知用情報に基づいて、障害物を検知してもよい。
【0093】
なお、本実施の形態では、グレーチングの有無に基づいて、障害物検知用情報の選択処理を行ったが、例えば、第1~第4の走査部531~534のうち少なくともいずれか1つの走査部の走査範囲に、走査部で物体を検出できない環境(以下、「検出不可能環境」と言う場合がある)のみが存在するか否かに基づいて、障害物検知用情報の選択処理を行ってもよい。検出不可能環境としては、路面や壁あるいは天井がほとんど黒色の環境や、蛍光灯などの照明の光が強すぎる環境が例示できるが、これらに限られない。障害物検知用情報の選択処理としては、走査範囲に検出不可能環境のみが存在する走査部以外のセンサ58で検出された情報、または、情報の検出精度が検出不可能環境に依存しないオドメトリ51やGPS52で検出された情報、または、撮像部54で撮像された映像を、障害物検知用情報として選択してもよい。また、第1~第4の走査部531~534のうち少なくともいずれか1つの走査部の走査範囲に、検出不可能環境のみが存在する場合、移動体1を停止させてもよいし、移動体1の速度を遅くしてもよい。
【0094】
[実施の形態の作用効果]
移動体1の自己位置推定装置59は、移動体1の周囲の環境を判定し、環境の判定結果に基づいて、自己位置推定用の5種類のセンサ58(オドメトリ51、GPS52、第2~第4の走査部532~534)のうち、1種類以上5種類未満のセンサ58で検出された情報を選択する。自己位置推定装置59は、選択した情報に基づいて、移動体1の自己位置を推定する。このため、自己位置推定装置59は、複数種類のセンサ58の中に、環境によっては適切に情報を検出できないセンサ58が含まれる場合でも、当該適切に情報を検出できないセンサ58以外のセンサ58の情報に基づいて、移動体1の自己位置を適切に推定することができる。
【0095】
[実施の形態の変形例]
本開示は、これまでに説明した実施の形態に示されたものに限られないことは言うまでもなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形を加えることができる。
【0096】
例えば、選択部577は、移動体1が屋内に位置していない、つまり屋外に位置していると判定した場合(ステップS311:NO)、ステップS313~S316の処理を行わずに、GPS52を含む全てのセンサ58のうち、少なくともいずれか1つで検出された情報を、自己位置推定用情報として選択してもよい。
【0097】
選択部577は、移動体1が屋内に位置していると判定した場合(ステップS311:YES)、第1のエリアに位置していると判定した場合(ステップS313:YES)、および、第2のエリアに位置していると判定した場合(ステップS315)のうち少なくともいずれか1つの場合において、さらに他の条件に基づいて、自己位置推定用情報として選択する情報を絞り込んでもよい。例えば、移動体1が屋内または第2のエリア(人工物が占める割合が大きいエリア)に位置し、かつ、移動体1の周囲に人や観葉植物が多い場合、人や観葉植物が動いたり、成長または剪定などによって観葉植物の形状が変化したりすると、第2~第4の走査部532~534で人または観葉植物までの距離を適切に検出することができないおそれがある。この場合、選択部577は、オドメトリ51と第2~第4の走査部532~534とのうち、オドメトリ51で検出された情報を、自己位置推定用情報として選択してもよい。
【0098】
選択部577は、
図9~
図10に示す判定基準とは異なる判定基準で、5種類のセンサ58のうち、1種類以上5種類未満のセンサ58で検出された情報を選択してもよい。例えば、選択部577は、移動体1の周囲に人が多い場合、上述のように、第2~第4の走査部532~534で人までの距離を適切に検出することができないおそれがあるため、オドメトリ51およびGPS52のうち少なくともいずれか1つで検出された情報を、自己位置推定用情報として選択してもよい。
【0099】
センサ58のうち、いずれかのセンサで情報を検出できなかった場合、選択部577は、当該情報を検出できなかったセンサ以外のセンサからの情報を選択してもよく、この場合、予め設定した優先順位に基づいて、センサを選択してもよい。例えば、第1の選択処理において、オドメトリ51および第2~第4の走査部532~534のうち、第3の走査部533で情報を検出できなかった場合、オドメトリ51および第2,第4の走査部532,534で検出された情報を、予め設定した優先順位に基づいて、自己位置推定用情報として選択してもよい。また、第2の選択処理において、移動体1が屋外に位置するにもかかわらず、GPS52で情報を検知できなかった場合、選択部577は、オドメトリ51で検出された情報を、自己位置推定用情報として選択してもよい。
【0100】
センサ58に、上述した自己位置推定用の5種類のセンサのうち、1種類以上3種類以下のセンサが含まれなくてもよい。また、センサ58は、上述した自己位置推定用の5種類のセンサに限られず、当該5種類のセンサの他に、あるいは、当該5種類のセンサに加えて、例えば,以下に示すような方法で自己位置を検出するための他の種類のセンサを含んでもよい。なお、以下に示す「歩行者自立航法測位」を除く自己位置検出方法に用いるセンサは、本開示の無線位置情報検出部に相当する。
・WiFi(登録商標)測位(アクセスポイントからの電波の三点測位)
・RFID(Radio Frequency IDentifier)測位(RFIDタグを用いる測位)
・ビーコン測位(Bluetooth(登録商標)による測位)
・地磁気測位(磁力データや磁気パターンをデータベース化し、磁気センサで読み取る)
・音波測位(スピーカー+マイクによる測位)
・UWB(Ultra Wide Band)測位(無線とセンサを用い、入射角と到達時間差で測定)
・歩行者自立航法測位(ジャイロセンサ、加速度センサ、磁気センサによる測位)
【0101】
移動体1に、自律走行する機能および遠隔操作により走行する機能のうち、一方を設けなくてもよい。移動体1に自律走行する機能を設けるか否かに関係なく、自己位置推定装置59で推定した自己位置を、遠隔操作装置に表示させるようにしてもよい。本開示の自己位置推定装置を、人が運転する自動車などの移動体に設け、推定した自己位置を当該自動車のナビゲーション装置に表示させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示は、自己位置推定装置および移動体に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 移動体
2 基体部
3 本体部
10 車体
21 車輪
22 バンパー
23 バンパーセンサ
24 反射板
30 収納部
31 前面部
31A 前面傾斜領域
32 左面部
33 右面部
34 後面部
34A 後面傾斜領域
35 上面部
50 送受信部
51 オドメトリ
52 GPS
53 走査部
54 撮像部
55 補助発光部
56 記憶部
57 制御装置
58 センサ
59 自己位置推定装置
311 左ヘッドライト
312 右ヘッドライト
313 左線状発光部
313A 第1の左分割線状発光部
313B 第2の左分割線状発光部
313C 第3の左分割線状発光部
314 右線状発光部
314A 第1の右分割線状発光部
314B 第2の右分割線状発光部
314C 第3の右分割線状発光部
315 被覆部材
316 前ウインカー
317 第1の開口部
318 庇部
319 第2の開口部
321 収納扉部
322 マイク
323 左突出部
324 第3の開口部
331 右突出部
332 第4の開口部
341 ナンバープレート
342 ブレーキランプ
343 後ウインカー
344 非常停止ボタン
345 カバー
346 第5の開口部
351 スピーカー
531 第1の走査部
531A 左下走査部
531B 右下走査部
532 第2の走査部
532A 左前走査部
532B 右前走査部
533 第3の走査部
534 第4の走査部
541 前方撮像部
542 左方撮像部
543 右方撮像部
544 後方撮像部
551 左側面発光部
552 右側面発光部
553 後面発光部
571 自律移動制御部
572 遠隔移動制御部
573 自己位置推定部
574 障害物検知部
575 取得部
576 環境判定部
577 選択部
578 推定部
A1 左下方2次元走査範囲
A2 右下方2次元走査範囲
A3 前方2次元走査範囲
A4 前方3次元走査範囲
A5 上方後方走査範囲
G 地面