(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】易開封性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240924BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240924BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240924BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D65/40 D
B65D77/20 H
(21)【出願番号】P 2020192143
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 和臣
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/005279(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/123286(WO,A1)
【文献】特開2020-139143(JP,A)
【文献】特開2005-028679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
B65D 77/00 - 77/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなり、熱融着層(A)が41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有
し、
中間層(B)が、プロピレンランダムコポリマー、及び/又は密度942kg/m
3
以上の高密度ポリエチレン、を含有し、
中間層(B)が含有するプロピレンランダムコポリマー、及び/又は密度942kg/m
3
以上の高密度ポリエチレンが、合計で10質量%以下である、易開封性フィルム。
【請求項2】
熱融着層(A)が、更に密度942kg/m
3以上、960kg/m
3以下の高密度ポリエチレンおよび密度940kg/m
3以下のエチレン(共)重合体、のうち少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の易開封性フィルム。
【請求項3】
熱融着層(A)が、密度940kg/m
3以下のエチレン(共)重合体を含有し、該密度940kg/m
3以下のエチレン(共)重合体が、密
度910kg/m
3以上
、930kg/m
3未満の低密度ポリエチレンである、請求項2に記載の易開封性フィルム。
【請求項4】
熱融着層(A)が、密度942kg/m
3以上、960kg/m
3以下の高密度ポリエチレンを、0質量%以上、50質量%以下含有する、請求項2または3に記載の易開封性フィルム。
【請求項5】
中間層(B)が、密
度910kg/m
3以上
、942kg/m
3未満の低密度ポリエチレンを含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
【請求項6】
中間層(B)が、密
度910kg/m
3以上
、942kg/m
3未満の低密度ポリエチレンを90質量%以上含有する請求項5に記載の易開封性フィルム。
【請求項7】
ラミネート層(C)が、密
度910kg/m
3以上
、942kg/m
3未満の低密度ポリエチレンを含有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
【請求項8】
ラミネート層(C)が
、プロピレン
ランダムコポリマーを含有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
【請求項9】
(C)ラミネート層の側に、更に(D)基材層を有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の易開封性フィルムを含んでなる蓋材と、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む本体部からなる包装容器 。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性フィルムに関し、より具体的には易開封性と封緘強度とを高いレベルで両立させることができる易開封性フィルム及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
無菌米飯等の各種食品用の包装として、ボトル、カップ、ないしトレー状のプラスチック容器をプラスチック積層フィルムからなる蓋材でシールした包装が広く採用されている。このような包装には、開封時における易開封性や良好な外観、安定したヒートシール性能などが求められている。この様な要求を満足するために易開封性フィルムとして、それぞれ特定の樹脂組成を有する積層構造からなる易開封性シーラントフィルムが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
易開封性フィルムやこれを用いた包装容器の用途によっては、高い密封性(封緘強度)が求められる。易開封性と封緘強度とを両立させることは必ずしも容易ではなく、両者が高いレベルで両立した易開封性フィルムが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-251766号公報
【文献】特開2019-34549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術背景に鑑み、本発明の目的は、熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が積層されてなる易開封性フィルムであって、易開封性と封緘強度とのバランスに優れた易開封性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、熱融着層(A)、中間層層(B)、およびラミネート層(C)が積層されてなる易開封性フィルムにおいて、熱融着層(A)の組成を特定範囲内のものとすることで、易開封性と封緘強度とのバランスが顕著に向上し、これにより上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなり、熱融着層(A)が41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有する、易開封性フィルム。、
に関する。
【0006】
以下、[2]から[12]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
熱融着層(A)が、更に密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンおよび密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体、のうち少なくとも1種を含有する、[1]に記載の易開封性フィルム。
[3]
熱融着層(A)が、密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体を含有し、該密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体が、密度910kg/m3以上、930kg/m3未満の低密度ポリエチレンである、[2]に記載の易開封性フィルム。
[4]
熱融着層(A)が、密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンを、0質量%以上、50質量%以下含有する、[2]または[3]に記載の易開封性フィルム。
[5]
中間層(B)が、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
[6]
中間層(B)が、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを90質量%以上含有する[5]に記載の易開封性フィルム。
[7]
中間層(B)が、更にプロピレンランダムコポリマー、密度942kg/m3以上の高密度ポリエチレン、及び/又は密度940kg/m3以下のエチレン共重合体を含有する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
[8]
中間層(B)が、含有するプロピレンランダムコポリマー、密度942kg/m3以上の高密度ポリエチレン、及び/又は密度940kg/m3以下のエチレン共重合体が、合計で10質量%以下である、[7]に記載の易開封性フィルム。
[9]
ラミネート層(C)が、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有する、[1]から[8]のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
[10]
ラミネート層(C)が、ランダムプロピレンコポリマーを含有する、[1]から[9]のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
[11]
(C)ラミネート層の側に、更に(D)基材層を有する、[1]から[10]のいずれか一項に記載の易開封性フィルム。
[12]
[1]から[11]のいずれか一項に記載の易開封性フィルムを含んでなる蓋材と、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む本体部からなる包装容器 。
【発明の効果】
【0007】
本発明の易開封性フィルムは、実用上重要である易開封性と封緘強度とのバランスに優れ、食品用プラスチック容器の蓋材をはじめとする各種用途において、好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなり、熱融着層(A)が41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有する、易開封性フィルム、である。
すなわち、本発明の易開封性フィルムは、熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)を有する。
【0009】
熱融着層(A)
本発明の易開封性フィルムを構成する熱融着層(A)は、41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有する。
熱融着層(A)に41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有することで、本発明の易開封性フィルムは、従来技術の限界を超えた高いレベルで、易開封性と封緘強度とを両立させることができる。
熱融着層(A)は、50.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有することが好ましく、60.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーを含有することが特に好ましい。
【0010】
熱融着層(A)におけるプロピレンランダムコポリマーの含有量には特に上限は存在しないが、易開封性と封緘強度とのバランス等の観点から、95.0質量%以下であることが好ましく、90.0質量%以下であることが特に好ましい。
熱融着層(A)におけるプロピレンランダムコポリマーの含有量は、熱融着層の製造の際に供給する材料の処方を調整することで、適宜調整することができる。
【0011】
プロピレンランダムコポリマー
本発明において熱融着層(A)に使用するプロピレンランダムコポリマーは、一般にランダムポリプロピレンの名称でも、製造・販売されている樹脂であり、主構成成分である、プロピレンから導かれる構成単位と、エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィン等から選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる構成単位とを有する共重合体である。
なお、プロピレンランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)において、「ランダム」とは、統計的にランダムであるということを必ずしも意味しない。例えば、ポリマー主鎖中のコモノマーから導かれる構成単位の分布(ランダムネス)は、共重合反応をさせる際に用いる触媒の種類によって異なる。
また、必ずしも全ての分子量分画において、コモノマーから導かれる構成単位の分率が等しいという訳ではなく、低分子量鎖と高分子量鎖では、コモノマーから導かれる構成単位の含有率が異なっている。すなわち、コモノマー含有量に分布(共重合組成分布)が存在する。一般に、メタロセン触媒を用いて得られるコポリマーは、チーグラー触媒等を用いた場合より共重合組成分布が狭く、均一なコポリマーである。
【0012】
プロピレンランダムコポリマーの密度には特に限定はないが、通常、890~930kg/m3程度であり、好ましくは895~925kg/m3であり、特に好ましくは900~920kg/m3である。
プロピレンランダムコポリマーにおけるコモノマーとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。これらコモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上のコモノマーを組み合わせて共重合させてもよい。また、α-オレフィン以外のコモノマーの存在を排除するものではない。
【0013】
プロピレンランダムコポリマーにおける、プロピレンから導かれる構成単位と、エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィン等から選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーから導かれる構成単位との割合には特に制限はないが、通常、主構成成分であるプロピレンから導かれる構成単位を50モル%以上有する。プロピレン由来の構成単位の割合は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。
プロピレン由来の構成単位の割合が通常50モル%以上であるため、コモノマー由来の構成単位の割合は通常50モル%未満となる。一般に入手可能なプロピレンコポリマーにおいては、コモノマー由来の構成単位の割合は25モル%以下となる場合が多く。特にランダムコポリマーの場合には、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。なお、ブロックコポリマーの場合には、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。
【0014】
本発明において熱融着層(A)に用いるプロピレンランダムコポリマーの融点には特に制限はないが、得られる易開封性積層フィルムの熱融着性と耐熱性のバランスから、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が100~160℃であることが好ましく、110~150℃の範囲にあることが特に好ましい。
【0015】
本発明において熱融着層(A)に用いるプロピレンランダムコポリマーのMFRには特に制限はないが、押出加工性等の点から、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)が、0.01~100g/10分であることが好ましく、0.1~70g/10分の範囲にあることが特に好ましい。
【0016】
プロピレンランダムコポリマーは、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0017】
熱融着層(A)においては、プロピレンランダムコポリマーは、1種のみを使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ランダムコポリマー以外のプロピレン系重合体、例えばプロピレンブロックコポリマーや、プロピレンホモポリマーポリマーと組み合わせて使用してもよい。更に、プロピレン系重合体以外のポリマー(樹脂、エラストマー)と組み合わせて使用してもよい、
【0018】
エチレン系重合体
プロピレンランダムコポリマーと組み合わせて使用することができる、プロピレン系重合体以外のポリマーには特に制限はないが、コストやフィルム形成能等の観点から、エチレン系重合体であることが好ましく、密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンおよび密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体からなる群より選ばれる、少なくとも1種であることが特に好ましい。
すなわち、この特に好ましい態様においては、41.0質量%以上のプロピレンランダムコポリマーと組み合わせて、エチレン系重合体として、密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンのみを使用してもよく、密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体のみを使用してもよく、また両者を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本実施形態における、エチレン系重合体の使用量には特に制限はないが、易開封性と封緘強度とのバランス等の観点から、熱融着層(A)の全重量に基づいて、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることが特に好ましい。密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンおよび密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体からなる群より選ばれる、少なくとも1種の含有量が、合計で上記範囲内にあることが特に好ましい。
【0020】
密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンとして通常に市販されている、エチレン単独共重合体、又はエチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体等を好ましく使用することができる。
上記高密度ポリエチレンの使用量は、熱融着層(A)の全重量に基づいて、0~50質量%であることが好ましく、0~30質量%であることが特に好ましい。
密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンは、1種類のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、前記プロピレンランダムコポリマーと混合した際に、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
上記高密度ポリエチレンのメルトフローレートは、従来当該技術分野において慣用される方法で調整することができ、例えば分子量を小さくすることや、分子量分布を大きくすることで、メルトフローレートを大きくすることができる。
【0022】
上記高密度ポリエチレンのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5~4.0、好ましくは1.8~3.5の範囲にある。上記高密度ポリエチレンはまた、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10°C/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭い吸熱ピークが1個ないし複数個あることが好ましく、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常120~140℃好ましくは125~135℃の範囲にある。
【0023】
密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む。以下同じ。)、又はエチレン系エラストマーとして通常に市販されているエチレン単独重合体、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体等を好ましく使用することができる。特に、低密度ポリエチレンであることが好ましく、密度910kg/m
3
以上、930kg/m
3
未満の低密度ポリエチレンであることが特に好ましい。
【0024】
密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体の使用量は、熱融着層(A)の全重量に基づいて、0~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることが特に好ましい。
上記エチレン(共)重合体は、1種類のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、前記プロピレンランダムコポリマーと混合した際に、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
上記エチレン(共)重合体のメルトフローレートは、従来当該技術分野において慣用される方法で調整することができ、例えば分子量を小さくすることや、分子量分布を大きくすることで、メルトフローレートを大きくすることができる。
【0026】
密度940kg/m3以下のエチレン(共)重合体のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5~4.0、好ましくは1.8~3.5の範囲にある。上記エチレン(共)重合体はまた、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10°C/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭い吸熱ピークが1個ないし複数個あることが好ましく、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常70~140℃好ましくは80~130℃の範囲にある。
【0027】
上記のようなエチレン系重合体は、チーグラー型触媒を代表例とするマルチサイト触媒、メタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒を用いた従来公知の製造法により調製することができる。たとえば、エチレン系重合体(b)として好ましく用いられる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、遷移金属のメタ口セン化合物を含む触媒を用いて調製することができる。このメタ口セン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタ口セン化合物と、(b)有機アルミニウムォキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物およびノまたは有機ホウ素化合物とから形成されていてもよい。なお、このようなメタ口セン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の調製方法は、たとえば特開平8-269270号公報に記載されている。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態においては、熱融着層(A)が、プロピレン系重合体、密度が900kg/m3以上960kg/m3以下のエチレン系重合体、並びに密度が900kg/m3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体及び/又は粘着性付与樹脂を含有していてもよい。
熱融着層(A)が上記各成分を含有することにより、本実施形態の易開封性フィルムは、プロピレン系重合体との易剥離性、開封時の外観、耐ブロッキング性等を向上させることができる。
【0029】
本実施形態において、プロピレン系重合体としては、プロピレンランダムコポリマーが好ましく、その詳細は上記にて説明したとおりである。
【0030】
上記実施形態において、密度が900kg/m3以上960kg/m3以下のエチレン系重合体としては、高分子量ポリエチレンが好ましく、上記にて説明した密度942kg/m3以上、960kg/m3以下の高密度ポリエチレンが特に好ましい。
【0031】
上記実施形態における、密度が900kg/m3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位の割合が50モル%以上であり、したがってプロピレン由来の構成単位の割合が50モル%未満であるので、この点においてプロピレン系重合体から区別される。また、密度が900kg/m3未満であることにおいて、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体から区別される。
密度が900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0032】
密度が900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィン共重合体は、1種類の共重合体のみを使用してもよく、2種類の共重合体の組み合わせであってもよい。
後者の好適な例として、密度が860~895kg/m3の範囲にあり、α―オレフィンが炭素数4~10である少なくとも1種類であるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(c-1)及び密度が865~875kg/m3の範囲にあるエチレン・プロピレンランダム共重合体(c-2)から構成される樹脂組成物を挙げることができる。
さらに、好ましくは、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(c-1)10~90質量部、特に好ましくは30~90質量部、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体(c-2)90~10質量部、特に好ましくは70~10質量部(但し、(c-1)+(c-2)=100質量部とする。)から構成される樹脂組成物を用いることができる。
【0033】
なお、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(c-1)としては、下記の[c-1a]から[c-1c]の物性のうち少なくとも1個以上有するポリマーであることが望ましい。
[c-1a]エチレン含有量が85~93モル%である
[c-1b]X線による結晶化度が7~30%である
[c-1c]示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60~90℃の範囲にある
【0034】
すなわち、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(c-1)として、[c-1a]、[c-1b]、または[c-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体が好ましく、さらに[c-1a]と[c-1b]の物性、[c-1a]と[c-1c]の物性、または[c-1b]と[c-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体がより好ましく、さらに[c-1a]、[c-1b]、と[c-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体が特に好ましい。
【0035】
また、エチレン・プロピレンランダム共重合体(c-2)としては、同様に下記の[c-2a]、[c-2b]の物性の少なくともいずれかを有するポリマーが望ましい。
[c-2a]エチレン含有量が75~85モル%である
[c-2b]X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有する
すなわち、エチレン・プロピレンランダム共重合体(c-2)として、[c-2a]、または[c-2b]の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体が好ましく、さらに[c-2a]と[c-2b]の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体が特に好ましい。。
【0036】
これらの共重合体の中から、密度が900kg/m3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体として、得られる易開封性積層フィルムの熱融着特性等を考慮すると、エチレン含有量が85~93モル%、X線による結晶化度が7~30%及び示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60~90℃の範囲にある低結晶性のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(c-1)及び、エチレン含有量が75~85モル%、X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体(c-2)からなる組成物(混合物)を、特に好適に使用することができる。
【0037】
本実施形態中の熱融着層(A)に用いることができる密度が900kg/m3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体としては、前記プロピレン系重合体、前記密度が900kg/m3以上960kg/m3以下のエチレン系重合体及び後述の粘着付与樹脂と混合してオレフィン系重合体組成物にした際に、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)は、特に限定はされないが、当該オレフィン系重合体組成物の加工性、耐油性等を考慮すると、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)が、好ましくは0.01~20g/10分、更に好ましくは0.1~10g/10分の範囲のものが好適である。
本実施形態中の熱融着層(A)に用いることができる密度が900kg/m3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば遷移金属化合物触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα-オレフィン等とを共重合することによって得ることができる。
【0038】
粘着性付与樹脂
本実施形態の易開封性フィルム中の熱融着層(A)において用いることができる粘着性付与樹脂は、粘着性付与剤として製造・販売されている公知の樹脂であり、具体的には、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。
【0039】
脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、1-ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレンなど炭素数4~5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4~C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレンなどのC8~C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
【0040】
ポリテルペン系樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α-ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。
スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の1種又は2種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0041】
本実施形態の易開封性フィルムを飲食品包装用の易開封性材料として使用する場合には、無臭性、食品衛生性、他成分との混和性などを考慮すると、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂あるいはポリテルペン系樹脂を、粘着性付与樹脂として使用することが好ましい。
【0042】
本発明の易開封性フィルムを構成する熱融着層(A)は、本発明の易開封性フィルムを用いて包装容器、包装袋等を形成する際に、通常、最内層とされ、他のフィルムと融着される。
熱融着層(A)の厚みには特に制限はないが、シールの安定性等の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることが特に好ましい。
一方、剥離外観等の観点からは、20μm以下であることが好ましく、17μm以下であることが特に好ましい。
【0043】
中間層(B)
本発明の易開封性フィルムを構成する中間層(B)の成分には特に制限はなく、易開封性フィルムに求められる機械的性質や熱融着層(A)、ラミネート層(C)との接着性などを考慮して、適宜使用成分を選択すればよいが、低密度ポリエチレンを含有することが好ましく、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有することが特に好ましい。
本実施形態においては、中間層が密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有することで、本発明の効果を一層高いレベルで実現することができる。
低密度ポリエチレンの密度は、914kg/m3以上、939kg/m3未満であることが更に好ましく、919kg/m3以上、936kg/m3未満であることが一層好ましい。
【0044】
中間層(B)における密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンの含有量には特に制限はないが、中間層(B)の全質量に基づき90質量%以上含有することが好ましい。
本実施形態においては、中間層が密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを90質量%以上含有することで、本発明の効果を一層高いレベルで実現することができる。
本実施形態において好ましく用いられる密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンの詳細は、熱融着層(A)に好ましく用いられる密度910以上、930未満の低密度ポリエチレンに関連して上記で説明したものと同様である。
【0045】
中間層(B)は、更にプロピレンランダムコポリマー、密度942kg/m3以上の高密度ポリエチレン、及び/又は密度940kg/m3以下のエチレン共重合体を含有することが好ましい。中間層(B)が、更にこれらの成分を含有することで、本実施形態の易開封性フィルムは、一層優れたヒートシール特性を実現することができる。
【0046】
本実施形態においては、中間層(B)が含有する、プロピレンランダムコポリマー、密度942kg/m3以上の高密度ポリエチレン、及び/又は密度940kg/m3以下のエチレン共重合体の量は、合計で10質量%以下であることが好ましい。
本実施形態においては、中間層(B)が含有する、プロピレンランダムコポリマー、密度942kg/m3以上の高密度ポリエチレン、及び/又は密度940kg/m3以下のエチレン共重合体は、本発明の易開封性フィルム又は、それと類似のフィルムからのリサイクルペレットに由来するものであってもよい。
リサイクルペレットを使用することにより、本実施形態の易開封性フィルムは、本発明の効果を一層顕著に実現するとともに、環境負荷を低減することができる。
【0047】
熱融着層(A)が相当量のプロピレン系重合体(a)を含有するためそれとの接着性や、易開封性フィルムの強度、耐熱性、軽量性等を考慮すると、中間層(B)はプロピレン系重合体、特にプロピレンランダムコポリマーを含有することが好ましい。
中間層(B)に使用することができるプロピレンランダムコポリマーの好ましい形態及び詳細は、熱融着層(A)に使用するプロピレンランダムコポリマーに関連して上記にて説明したものと同様である。
【0048】
本発明の易開封性フィルムを構成する各層のうち、熱融着層(A)は適切な封緘強度や易剥離性が得られるよう設計することが好ましく、ラミネート層(C)は基材層等との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましいのに対して、中間層(B)はその様な制約が比較的少ないので、機械的性質等、本発明の易開封性フィルム全体に所望の物性、性能を付与することを優先して設計することができる。この場合、中間層(B)の厚みを、熱融着層(A)の厚み及びラミネート層(C)の厚みよりも大きなものとすることが好ましく、熱融着層(A)の厚み及びラミネート層(C)の厚みの和よりも大きなものとすることが特に好ましい。
より具体的には、中間層(B)の厚みは、10μm以上であることが好ましく、13μm以上であることが特に好ましい。
一方、原料コスト等の観点からは、中間層(B)の厚みは、60μm以下であることが好ましく、57μm以下であることが特に好ましい。
【0049】
ラミネート層(C)
本発明の易開封性フィルムを構成するラミネート層(C)は、必要又は所望に応じて、後述の基材層(D)をはじめとする他の層と積層することができる。
従って、ラミネート層(C)は、基材層(D)をはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。
例えば、基材層(D)をはじめとする他の層と同種の材料を使用することが好ましく、したがって基材層(D)に好ましく用いられる、ポリプロピレン系の材料やポリエステル系、ポリアミド系の材料を使用することが好ましい。
また、基材層(D)をはじめとする他の層との間のラミネート強度を更に向上するため、ラミネート層(C)の表面(中間層(B)と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
【0050】
一方、中間層(B)がエチレン系重合体を含有する場合には、中間層(B)との積層強度の観点からラミネート層(C)もエチレン系重合体を含有することが好ましい。上述の様に中間層(B)に用いるエチレン系重合体としては、低密度ポリエチレンを含有することが好ましく、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有することが特に好ましいので、このときラミネート層(C)に用いるエチレン系重合体としても、低密度ポリエチレンを含有することが好ましく、密度910kg/m3以上、942kg/m3未満の低密度ポリエチレンを含有することが特に好ましい。
【0051】
また上述の様に、中間層(B)が、更にプロピレンランダムコポリマーを含有することが好ましいので、ラミネート層(C)も、ランダムプロピレンコポリマーを含有することが好ましい。
【0052】
これらの実施形態における低密度ポリエチレン、及びプロピレンランダムコポリマーの好ましい形態等の詳細は、中間層(B)に関連して上記で説明したものと同様である。
【0053】
また、耐衝撃性を一層向上させ、他の層との接着性を向上させる観点からも、ラミネート層(C)に低密度ポリエチレン等のエチレン系の重合体を添加することが好ましい。
【0054】
本発明の易開封性フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、ラミネート層(C)は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカをラミネート層(C)中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、ラミネート層(C)を構成する樹脂との混和性に優れた樹脂中に分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをラミネート層(C)に添加してもよい。
【0055】
ラミネート層(C)の厚みには特に制限はないが、フィルムカールを抑制する等の観点から、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることが特に好ましい。
一方、原料コスト等の観点からは、23μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
【0056】
熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)のいずれも、本発明の目的に反しない限りにおいて、上記以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の(上記にて説明した以外の)熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
各種添加剤は、マスターバッチ形式で添加してもよい。
【0057】
易開封性フィルム(積層フィルム)
本発明の易開封性フィルムは、熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)を有する。本発明の易開封性フィルムにおいては、好ましくは中間層(B)を介して、ラミネート層(C)と熱融着層(A)とが直接積層されるが、接着層、ガスバリア層等のそれ以外の層が間に存在していてもよい。
【0058】
本発明の易開封性フィルムは、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予め、ラミネート層(C)、中間層(B)、及び熱融着層(A)となるフィルムをそれぞれ成形した後、当該フィルムを貼り合せて易開封性フィルムとする方法、多層ダイを用いて中間層(B)及び熱融着層(A)からなる複層フィルムを得た後、当該中間層(B)の表面上に、ラミネート層(C)を押出して易開封性フィルムとする方法、多層ダイを用いてラミネート層(C)及び中間層(B)からなる複層フィルムを得た後、当該中間層(B)の表面上に、熱融着層(A)を押出して易開封性フィルムとする方法、あるいは、多層ダイを用いてラミネート層(C)、中間層(B)及び熱融着層(A)からなる易開封性フィルムを得る方法などを採用することができる。
【0059】
また、フィルム成形方法は、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法等を採用し得る。
【0060】
本発明の易開封性フィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。一方、例えば基材層(D)と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0061】
本発明の易開封性フィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0062】
本発明の易開封性フィルムは、熱融着層(A)が所定の樹脂組成を有すること等により、高い易開封性(適切な開封強度)を実現することができる。
ここで、易開封性とは、開封時に容易に開封(剥離)ができる性能のことであり、消費者の利便性に繋がるものである。また、開封時の剥離外観が美麗である方が衛生面で好まれることが多く、特に剥離後の容器等または蓋材等に糸状の樹脂が残存する現象(糸引き)や、膜状に汚く剥がれる現象(デラミネーション)の発生は、剥離外観を損ねるものの1つである。
易開封性は、従来から当該分野で慣用される評価手法により評価することができるが、例えば所定の条件でのヒートシール後の開封強度によって評価することが可能であり、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により評価することができる。
本願実施例に記載の方法により評価した場合の開封強度は、30N/カップ以下であることが好ましく、28N/カップ以下であることがより好ましく、25N/カップ以下であることが特に好ましい。
易開封性の観点からは、開封強度は小さい程好ましいが、封緘強度との両立を図り、また意図しない開封を防止する等の観点から、通常7N/カップ以上となり、10N/カップ以上であることがより適切である。
本発明においては、熱融着層(A)の樹脂組成を更に最適化する等して易開封性をさらに向上することが可能であり、例えばプロピレンランダムコポリマーの含有量を本発明の範囲内で比較的低く設定することで、易開封性を向上することができる。
【0063】
本発明の易開封性フィルムは、熱融着層(A)が所定の樹脂組成を有すること等により、高い封緘強度を実現することができる。
ここで、封緘強度とは、比較的小さな歪速度で内圧を加えていき、蓋材が破裂した時の強度のことであり、密封性の指標とすることが多い。例えば、気温や気圧等の外部環境変化によって内圧が上昇した際に、蓋材等がシール部から破損すると、カビの発生に繋がる恐れがある。
封緘強度は、従来から当該分野で慣用される評価手法により評価することができるが、例えば所定の条件でのヒートシール後に内圧をかけて開封に至る内圧を測定することで評価することが可能であり、より具体的には例えば本願実施例に記載の方法により評価することができる。
本願実施例に記載の方法により評価した場合の封緘強度は、14N以上であることが好ましく、16N以上であることがより好ましく、18N以上であることが特に好ましい。
封緘強度は通常高い程好ましく特に上限は存在しないが、易開封性とのバランスを実現する等の観点から、通常70N以下となり、67N以下であることがより適切である。
本発明においては、熱融着層(A)の樹脂組成を更に最適化する等して封緘強度をさらに向上することが可能であり、例えばプロピレンランダムコポリマーの含有量を高く設定することで、封緘強度を向上することができる。
【0064】
基材層(D)
所望に応じて、本発明の易開封性フィルムを、そのラミネート層(C)において、基材層(D)と積層することができる。
【0065】
基材層(D)には特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい基材層(D)の材質としては、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
【0066】
基材層(D)として、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、2種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、2種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい基材層(D)として、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフイルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0067】
基材層(D)をラミネート層(C)に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等によりラミネート層(C)に基材層(D)を直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤層を介してラミネート層(C)に基材層(D)を積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
基材層(D)の厚さは任意に設定することができるが、通常は、5~1000μm、好ましくは9~100μmの範囲から選択される。
【0068】
本発明の易開封性フィルム、及び本発明の易開封性フィルムのラミネート層(C)に基材層(D)を積層した積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に包材として使用するのに適している。
【0069】
その様な包材の好ましい例として、蓋材を挙げることができる。すなわち、本発明の易開封性フィルム、及び本発明の易開封性フィルムのラミネート層(C)に基材層(D)を積層した積層フィルムは、熱融着層(A)を容器側の最内層として用いる容器用の蓋材として用いることができる。
容器蓋材として用いる場合は、本発明の易開封性フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、印刷して用いても良い。更に印刷されたあるいはされていない基材層(D)と貼り合せて蓋材にしても良い。又、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしても良い。容器蓋材とする場合には、基材層(D)と貼り合せて使用するのが好ましい。
【0070】
本発明の易開封性フィルムは、熱融着層(A)において各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としてプロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。この中では特にプロピレン系重合体を被着体とすると、熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性などに優れており好ましい。
かかるプロピレン系重合体は、本発明の積層体において好ましく用いられる上記のプロピレン系重合体と同一の範疇のものであるが、個々の物性は同一であっても異なっていてもよい。例えばプロピレン系重合体からなる被着体においては、被包装材料に合わせてプロピレン系重合体を公知の方法でフィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等の種々の形状に成形したものを使用することができる。フィルム若しくはシートの場合は、本発明の易開封性フィルムと同様な方法で製造し得る。トレー若しくはカップの場合は、一旦上記方法でシートを製造した後、真空成形、圧空成形等の熱成形によりトレー、カップ等の容器とすることにより製造し得る。また、カップあるいはボトルの場合は射出成形、射出中空成形(インジェクションブロー)、中空成形等により容器として成形し得る。
【0071】
本発明の易開封性フィルムを包装材料として使用する場合、易開封性フィルムそのものを、例えば、折りたたんで三方シールしたり、2枚の易開封性フィルムを四方シールしたりして包装体としてもよいし、易開封性フィルム又はそれを基材層(D)と貼り合せた蓋材を上記各種被着体と熱シール層を形成して包装体を形成してもよい。
その様な包装体の好適な一例として、上記蓋材とポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのうち少なくとも1種を含む容器本体部からなる包装容器を挙げることができる。
包装容器への収納物には特に制限はないが、食品、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装に好ましく用いることができる。本発明の易開封性フィルムの高い耐衝撃性を活かし、流通過程で衝撃を受けることも多い無菌米飯用の包装容器として、特に好適に用いられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0073】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(1)易開封性(開封強度)
基材(厚み12μmのPETフィルムと、厚み15μmのナイロンフィルムとの積層体)に実施例/比較例の易開封性フィルムのラミネート層(C)を張り合わせたフィルムを作製し、無菌米飯用PP系バリア容器(PP/接着層/EVOH/接着層/PP)を使用して、易開封性を評価した。ラミ品を蓋材としてカップシーラーを用いて温度182℃、0.9秒、250Nでヒートシールした後放冷し、100℃、30分でレトルト処理をした後放冷した。クロスヘッド速度500mm/分で蓋材シール部を剥離し、その強度を開封強度(N/カップ)とした。この測定は株式会社イマダ社製の開封強度測定器を用いて評価した。
試料5個についての開封強度(N/カップ)の平均値を、評価値とした。
【0074】
(2)封緘性
易開封性を評価するために作成したラミ品を蓋材とし、無菌米飯用PP系バリア容器(PP/接着層/EVOH/接着層/PP)を使用して、封緘性を評価した。ラミ品を蓋材としてカップシーラーを用いて温度182℃、1.2秒、1500Nでヒートシールした後放冷し、蓋材の上面に粘着テープ付きのゴムシート片を貼り付け、このシート面から針を差し込み常温下で内圧をかけて、蓋材シール部分から剥離もしくはエッジ切れし開封した時の強度を封緘強度(kPa)とした。この測定は株式会社サン科学社製の封緘強度測定器(JIS-Z0238準拠)を用いて評価した。
試料5個についての封緘強度(kPa)の平均値を、評価値とした。
【0075】
実施例/比較例で用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。
・高密度ポリエチレン(HDPE)
密度;954kg/m3
MFR(2.16kg、190℃);1.1g/10分
融点;132℃
・プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(r-PP)
エチレン含有量;3.6モル%(2.4重量%)
1-ブテン含有量;1.9モル%(2.5重量%)
密度;910kg/m3
メルトフローレート(MFR)(2.16kg、230℃);7.2g/10分
融点;143℃
・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(EBR)
エチレン含有量;89.1モル%
結晶化度;10%
密度;886kg/m3、
MFR(2.16kg、190℃);4.0g/10分
・エチレン・プロピレン共重合体(EPR)
エチレン含有量;82.6モル%
密度;870kg/m3
MFR(2.16kg、190℃);2.9g/10分
・粘着付与樹脂
水素添加芳香族炭化水素樹脂
環球法軟化点:115℃
・線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
密度:0.931g/cm3
MFR:2.3g/10分
・低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:0.917g/cm3
MFR:7.2g/10分
【0076】
(参考例1)
各種原料を夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によって厚み比率13:74:13で、熱融着層(A)、中間層(B)、およびラミネート層(C)の三層共押出フィルムからなる総厚み40μm積層フィルムを成形し、ラミネート層にコロナ処理を施して易開封性フィルムを製造した。
各層の配合を、表1に示す。
得られた易開封性フィルムについて、上記の方法にしたがい易開封性(開封強度)、及び封緘性を評価した。
結果を表1に示す。
【0077】
(参考例2から7、実施例8から10、及び比較例1)
各層の配合、及び厚みを表1に示すとおりとしたことを除くほか、参考例1と同様にして易開封性フィルムを作製して、評価した。
結果を表1に示す。
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の易開封性フィルムは、実用上重要である易開封性と封緘強度とのバランスに優れ、食品用プラスチック容器の蓋材をはじめとする各種用途において好適に使用することが可能であり、農業、食品加工業、流通、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。