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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】無菌液体窒素供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/02 20060101AFI20240924BHJP
   F17C 5/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
F17C7/02
F17C5/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020202788
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090399
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】木山 洋実
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04620962(US,A)
【文献】特開2017-122481(JP,A)
【文献】米国特許第04510760(US,A)
【文献】特開昭57-204833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 7/02
F17C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体窒素を供給する液体窒素供給源と、
前記液体窒素供給源から供給された前記液体窒素と該液体窒素が気化した窒素ガスとを貯えるタンクと、
前記タンク内の前記窒素ガスを圧送するポンプと、
前記ポンプによって圧送された前記窒素ガスが通流する除菌フィルタと、
前記除菌フィルタを通流した前記窒素ガスと前記ポンプによって前記タンクから送出された前記窒素ガスとを熱交換させる第1熱交換器と、
前記タンク内において前記液体窒素に浸漬されており、前記第1熱交換器を通過した前記窒素ガスを前記タンク内の前記液体窒素と熱交換させて液化させる第2熱交換器とを備える、無菌液体窒素供給装置。
【請求項2】
前記タンクと前記ポンプとの間を通流している前記窒素ガスの圧力は、大気圧より低い、請求項1に記載の無菌液体窒素供給装置。
【請求項3】
前記除菌フィルタと前記第1熱交換器との間を通流している前記窒素ガスの一部を外部に供給する窒素ガス供給部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の無菌液体窒素供給装置。
【請求項4】
前記ポンプと前記除菌フィルタとの間を通流している前記窒素ガスの一部を外部に供給する窒素ガス供給部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の無菌液体窒素供給装置。
【請求項5】
前記液体窒素供給源から供給された前記液体窒素を、前記タンクと前記ポンプとの間を通流している前記窒素ガスと熱交換させて冷却する、第3熱交換器をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無菌液体窒素供給装置。
【請求項6】
前記ポンプと前記除菌フィルタとの間に、前記ポンプと前記除菌フィルタとの間を通流している前記窒素ガスを冷却水と熱交換させて冷却する第4熱交換器をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無菌液体窒素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌液体窒素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌された極低温の液体の供給装置の構成を開示した先行文献として、米国特許第4620962号明細書(特許文献1)がある。特許文献1に記載された、殺菌された極低温の液体の供給装置は、液体窒素貯蔵タンクと、熱交換器と、殺菌手段と、圧力容器と、断熱タンクとを備える。液体窒素貯蔵タンクから供給される液体窒素は、熱交換器において気化される。気化した窒素ガスは、殺菌手段を通過して殺菌される。殺菌された窒素ガスは、熱交換器において、液体窒素貯蔵タンクから供給される液体窒素と熱交換された後、圧力容器内に供給される。圧力容器は、液体窒素貯蔵タンクから断熱タンク内へ供給される液体窒素に浸漬されている。圧力容器内に供給された窒素ガスは、断熱タンク内かつ圧力容器の外側に貯えられている液体窒素により冷却されて液化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4620962号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された液体供給装置においては、殺菌される液体窒素とは別の液体窒素を冷媒として殺菌された窒素ガスを液化しているため、使用した液体窒素に対して得られる殺菌された液体窒素の収率が低い。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、使用した液体窒素に対して得られる無菌液体窒素の収率を向上することができる、無菌液体窒素供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく無菌液体窒素供給装置は、液体窒素供給源と、タンクと、ポンプと、除菌フィルタと、第1熱交換器と、第2熱交換器とを備える。液体窒素供給源は、液体窒素を供給する。タンクは、液体窒素供給源から供給された液体窒素と液体窒素が気化した窒素ガスとを貯える。ポンプは、タンク内の窒素ガスを圧送する。除菌フィルタにおいては、ポンプによって圧送された窒素ガスが通流する。第1熱交換器においては、除菌フィルタを通流した窒素ガスとポンプを通過する前の窒素ガスとを熱交換させる。第2熱交換器は、タンク内において液体窒素に浸漬されており、第1熱交換器を通過した窒素ガスをタンク内の液体窒素と熱交換させて液化させる。
【0007】
本発明の一形態においては、タンクとポンプとの間を通流している窒素ガスの圧力は、大気圧より低い。
【0008】
本発明の一形態における無菌液体窒素供給装置は、除菌フィルタと第1熱交換器との間を通流している窒素ガスの一部を外部に供給する窒素ガス供給部をさらに備える。
【0009】
本発明の一形態における無菌液体窒素供給装置は、ポンプと除菌フィルタとの間を通流している窒素ガスの一部を外部に供給する窒素ガス供給部をさらに備える。
【0010】
本発明の一形態における無菌液体窒素供給装置は、第3熱交換器をさらに備える。第3熱交換器は、液体窒素供給源から供給された液体窒素を、タンクとポンプとの間を通流している窒素ガスと熱交換させて冷却する。
【0011】
本発明の一形態における無菌液体窒素供給装置は、第4熱交換器をさらに備える。第4熱交換器は、ポンプと除菌フィルタとの間に、ポンプと除菌フィルタとの間を通流している窒素ガスを冷却水と熱交換させて冷却する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用した液体窒素に対して得られる無菌液体窒素の収率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。
図2】比較例に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。
図3】本発明の一実施の形態の変形例に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
なお、本発明の一実施の形態の無菌液体窒素供給装置における液体窒素および窒素ガスの温度、圧力または流量は、シミュレーションによる解析値である。温度の単位として、℃(セ氏温度)を用いている。圧力の単位として、PaG(ゲージ圧力)を用いている。流量の単位として、Nm3/h(単位時間あたりのノルマル立方メートル)を用いている。また、本発明の一実施の形態の無菌液体窒素における無菌とは、無菌化された窒素雰囲気において飲料容器に飲料物を充填する、いわゆる、アセプティック充填において飲料物および当該飲料物を飲む人の体に影響を及ぼさない程度の菌の数量以下である。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。図1に示すように、無菌液体窒素供給装置1は、液体窒素供給源100と、タンク120と、ポンプ140と、除菌フィルタ160と、第1熱交換器130と、第2熱交換器180とを備える。本発明の一実施の形態にかかる無菌液体窒素供給装置1においては、第3熱交換器110と、第4熱交換器150と、第5熱交換器135と、ヒータ145と、窒素ガス供給部170と、貯留タンク190と、滴下器192とをさらに備える。
【0017】
液体窒素供給源100は、液体窒素10Lを供給する。液体窒素供給源100は、たとえば、コールドエバポレータである。液体窒素供給源100の内部は、陽圧に保たれている。
【0018】
液体窒素供給源100は、第1流路部11によってタンク120と接続されている。液体窒素供給源100から供給された液体窒素10Lは、第1流路部11を通流する。第1流路部11は、第3熱交換器110を通過している。第1流路部11における液体窒素供給源100と第3熱交換器110との間の位置に、バルブ101が設けられている。第1流路部11における第3熱交換器110とタンク120との間の位置に、バルブ111が設けられている。
【0019】
タンク120は、液体窒素供給源100から供給された液体窒素10Lと液体窒素10Lが気化した窒素ガス10Gとを貯える。本実施の形態においては、タンク120の内部には、液体窒素10Lの液面高さを検知するレベルセンサが設けられている。レベルセンサは、たとえば、差圧式センサである。タンク120は、窒素ガス10Gが通流する第2流路部12によってポンプ140と接続されている。第2流路部12は、第3熱交換器110、第1熱交換器130および第5熱交換器135をこの順で通過している。タンク120内において第2熱交換器180が液体窒素10Lに浸漬されている。
【0020】
バルブ101は、たとえば、圧力調整バルブである。バルブ101により液体窒素供給源100から供給される液体窒素10Lの圧力および流量が調整される。バルブ111は、レベルセンサが検知したタンク120内の液体窒素10Lの液面高さに応じて開閉される。バルブ111によってタンク120内の液面高さが一定範囲にあるように調整されることにより、第2熱交換器180が液体窒素10Lに浸漬された状態が維持される。
【0021】
第3熱交換器110は、液体窒素供給源100から供給された液体窒素10Lを、タンク120とポンプ140との間を通流している窒素ガス10Gと熱交換させて冷却する。具体的には、第3熱交換器110において、第1流路部11を通流している液体窒素10Lは、第2流路部12を通流している窒素ガス10Gと熱交換して冷却される。
【0022】
第1流路部11における液体窒素供給源100と第3熱交換器110との間を通流している液体窒素10Lは、たとえば、温度が-179.1℃、圧力が400kPaG、流量が38Nm3/hである。
【0023】
第3熱交換器110において冷却されることにより、第1流路部11における第3熱交換器110とタンク120との間を通流している液体窒素10Lは、たとえば、温度が-182.0℃、圧力が395kPaGである。
【0024】
第3熱交換器110を通流して冷却された液体窒素10Lは、タンク120内に流入する。第3熱交換器110が設けられていることにより、第3熱交換器110が設けられていない場合と比較して、タンク120内に貯液される液体窒素10Lの温度を低くすることができる。
【0025】
ポンプ140は、タンク120内の窒素ガス10Gを圧送する。ポンプ140の圧送により、タンク120とポンプ140との間を通流している窒素ガス10Gの圧力は、大気圧より低くなっている。タンク120と第3熱交換器110との間を通流している窒素ガス10Gは、たとえば、温度が-201.3℃、圧力が-51kPaGである。
【0026】
タンク120内の窒素ガス10Gおよび液体窒素10Lは、圧力が大気圧より低くなることにより、温度が大気圧における窒素の沸点である-195.8℃より低くなる。これにより、第2熱交換器180によってタンク120内の液体窒素10Lと熱交換される後述する無菌液体窒素10LSを、-195.8℃より低い温度にすることができる。
【0027】
第3熱交換器110において加温されることにより、第2流路部12における第3熱交換器110と第1熱交換器130との間を通流している窒素ガス10Gは、たとえば、温度が-181.1℃、圧力が-56kPaGである。第2流路部12内における窒素ガス10Gの圧力は、ポンプ140に近づくほど低くなる。
【0028】
第1熱交換器130は、後述する除菌フィルタ160を通流した窒素ガス10GSとポンプ140を通過する前の窒素ガス10Gとを熱交換させる。具体的には、第2流路部12を通流する窒素ガス10Gは、第1熱交換器130において、後述する第3流路部13を通流する窒素ガス10Gと熱交換して加温される。第2流路部12における第1熱交換器130と第5熱交換器135との間を通流している窒素ガス10Gは、たとえば、温度が-46.5℃、圧力が-61kPaGである。
【0029】
第5熱交換器135は、第2流路部12における第1熱交換器130を通流した窒素ガス10Gを、外気と熱交換させて加温する。第5熱交換器135においては、外気との接触面積を確保するために第2流路部12の外周にフィンが設けられている。第2流路部12における第5熱交換器135とポンプ140との間を通流している窒素ガス10Gは、たとえば、温度が32.0℃、圧力が-61kPaGである。
【0030】
ポンプ140は、たとえば、真空ポンプである。ポンプ140は、真空ポンプに限られず、タンク120内を大気圧以下に減圧するとともにタンク120内の窒素ガス10Gを圧送可能であればよく、圧縮機であってもよい。ポンプ140は、吸入圧に応じてインバータ制御され、吸入圧が一定に保たれている。
【0031】
ポンプ140は、第3流路部13によって貯留タンク190と接続されている。第3流路部13は、第4熱交換器150、第1熱交換器130および第2熱交換器180をこの順で通過している。
【0032】
第3流路部13におけるポンプ140とヒータ145との間を通流している窒素ガス10Gは、たとえば、温度が252.6℃、圧力が223kPaG、流量が38Nm3/hである。
【0033】
第3流路部13におけるポンプ140と第4熱交換器150との間の位置に、ヒータ145が設けられている。ヒータ145は、たとえば、ニクロム線を内部に有するシースヒータである。ヒータ145は、第3流路部13内にシースを配置して、窒素ガス10Gとシースとを接触させることにより窒素ガス10Gを加熱する。なお、ヒータ145は、シースヒータに限られず、第3流路部13の外側に配置され、第3流路部13を通じて窒素ガス10Gを加熱する構成であってもよい。
【0034】
第3流路部13を通流している窒素ガス10Gは、ヒータ145によって加熱されることにより殺菌される。この加熱殺菌により、窒素ガス10G中の病原性および有害性を有する細菌などの微生物を死滅させることができる。ヒータ145の加熱温度は、たとえば、100℃以上300℃以下である。なお、ポンプ140によって加圧された際の窒素ガス10Gの昇温によって窒素ガス10Gが十分に殺菌される場合には、ヒータ145は設けられていなくてもよい。
【0035】
第4熱交換器150は、第3流路部13におけるヒータ145を通流した窒素ガス10Gを、冷却水と熱交換させて冷却する。具体的には、図1に示すように、第4熱交換器150は、第3流路部13を通流している窒素ガス10Gを、冷却水供給源20から供給されて冷却水流路21を通流している冷却水と熱交換させて冷却する。冷却水は、排水部22から外部へ排水される。
【0036】
第3流路部13における第4熱交換器150と第1熱交換器130との間の位置に、除菌フィルタ160が設けられている。除菌フィルタ160には、ポンプ140によって圧送された窒素ガス10Gが通流する。具体的には、第4熱交換器150を通流している窒素ガス10Gは、除菌フィルタ160を通過する。除菌フィルタ160を通過する際、窒素ガス10G中の細菌などの微生物が除去される。
【0037】
除菌フィルタ160は、たとえば、ステンレス若しくはアルミなどの金属フィルタ、または、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどの樹脂フィルタである。
【0038】
除菌フィルタ160のメッシュの大きさは、たとえば、0.01μm以上0.2μm以下である。なお、除菌フィルタ160のメッシュの大きさおよび除菌フィルタ160自体の大きさは、窒素ガス10GSの必要流量を確保しつつ、窒素ガス10Gに含まれる細菌などの微生物を捕捉可能な大きさで設定される。
【0039】
除菌フィルタ160は、ヒータ145などの他の無菌化する手段と併用される場合、これらの無菌化手段の中で第3流路部13の最も下流の位置に設けられていることが好ましい。他の無菌化する手段として、紫外線照射により窒素ガス10Gを無菌化する手段が含まれていてもよい。
【0040】
第3流路部13における除菌フィルタ160と第1熱交換器130との間の位置に、窒素ガス10GSが通流する第5流路部15が接続されている。第5流路部15を通流した窒素ガス10GSは、窒素ガス供給部170から排出される。すなわち、窒素ガス供給部170は、除菌フィルタ160と第1熱交換器130との間を通流している窒素ガス10GSの一部を外部に供給する。窒素ガス供給部170から供給される無菌化された窒素ガス10GSは、たとえば、アセプティック充填する際のパージガスとして使用される。
【0041】
第5流路部15を通流する窒素ガス10GSは、たとえば、温度が34℃、圧力が206kPaG、流量が15Nm3/hである。なお、本実施の形態においては、窒素ガス供給部170から供給される窒素ガス10GSの流量は、液体窒素供給源100から供給される液体窒素10Lの流量の約39%であるが、その割合は、約39%に限られず、後述するように無菌化された窒素ガス10GSを第2熱交換器180において無菌液体窒素10LSに液化するために必要なタンク120内の液体窒素10Lの量に応じて設定される。
【0042】
第3流路部13における第5流路部15との接続位置と第1熱交換器130との間を通流している窒素ガス10GSは、たとえば、温度が34℃、圧力が205kPaG、流量が23Nm3/hである。
【0043】
第1熱交換器130において、第3流路部13を通流している窒素ガス10GSは、第2流路部12を通流する窒素ガス10Gと熱交換して、冷却される。第3流路部13において第1熱交換器130と第2熱交換器180との間を通流している窒素ガス10GSは、たとえば、温度が-169.3℃、圧力が200kPaGである。
【0044】
第3流路部13は、タンク120を貫通してタンク120の内部に設けられた第2熱交換器180を通過している。第2熱交換器180は、第1熱交換器130を通過した窒素ガス10GSをタンク120内の液体窒素10Lと熱交換させて液化させる。
【0045】
第2熱交換器180において、第3流路部13を通流している窒素ガス10GSは、タンク120内かつ第2熱交換器180の外側に存在している液体窒素10Lと熱交換して、冷却されて液化し、無菌液体窒素10LSとなる。第2熱交換器180は、たとえば、フィンチューブ式熱交換器である。
【0046】
第3流路部13において、第2熱交換器180と貯留タンク190との間を通流している無菌液体窒素10LSは、たとえば、温度が-197.1℃、圧力が200kPaG、流量が23Nm3/hである。無菌液体窒素10LSの温度は、大気圧における窒素の沸点である-195.8℃より低くなる。
【0047】
貯留タンク190は、第3流路部13を通流した無菌液体窒素10LSを貯留する。貯留タンク190内は、大気圧よりも高い圧力で保持されている。貯留タンク190には、無菌液体窒素10LSが通流する第4流路部14が接続されている。第4流路部14を通流した無菌液体窒素10LSは、滴下器192から供給される。第4流路部14には、バルブ191が設けられている。
【0048】
滴下器192から供給される無菌液体窒素10LSは、たとえば、飲料容器に飲料が充填された後の飲料容器内の上部空間に滴下される。飲料容器内に不活性な窒素が充填されることにより飲料の酸化を防止することができ、また、無菌液体窒素10LSの気化による飲料容器内の内圧の上昇を利用して飲料容器の強度を増加することができる。
【0049】
無菌液体窒素供給装置1においては、無菌化される液体窒素10Lを、無菌化された窒素ガス10GSを冷却して液化するための冷媒として使用している。その結果、無菌液体窒素供給装置1における、使用した液体窒素10Lに対して得られる無菌液体窒素10LSの収率は、約61%である。
【0050】
ここで、殺菌される液体窒素とは別の液体窒素を冷媒として殺菌された窒素ガスを液化している比較例に係る無菌液体窒素供給装置における、使用した液体窒素に対して得られる無菌液体窒素10の収率のシミュレーション解析結果について説明する。
【0051】
図2は、比較例に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。図2に示すように、比較例に係る無菌液体窒素供給装置9は、液体窒素貯蔵タンク900と、熱交換器910と、殺菌手段920と、圧力容器930と、断熱タンク940とを備える。
【0052】
液体窒素貯蔵タンク900から、たとえば、温度が-179.1℃、圧力が400kPaGである液体窒素90Lが供給される。液体窒素貯蔵タンク900から供給される液体窒素90Lの一部は、第1流路部91を通流して熱交換器910において、後述する殺菌された窒素ガス90GSと熱交換して、加温されて気化する。
【0053】
熱交換器910において気化した窒素ガス90Gは、第2流路部92を通流して殺菌手段920において殺菌される。第2流路部92を通流している窒素ガス90Gの温度は、たとえば、-150.0℃である。殺菌手段920において殺菌された窒素ガス90GSは、第3流路部93を通流して、熱交換器910において上記液体窒素90Lの一部と熱交換する。
【0054】
熱交換器910において冷却された殺菌された窒素ガス90GSは、第4流路部94を通流して、圧力容器930内に送られる。第4流路部94を通流している殺菌された窒素ガス90GSの温度は、たとえば、-177.1℃である。
【0055】
圧力容器930は、断熱タンク940の内部に配置されている。断熱タンク940には、液体窒素貯蔵タンク900から第5流路部95を通じて供給される液体窒素90Lの一部が貯えられている。断熱タンク940内の液体窒素90Lは、フロート960を有するフロートバルブ950によって、液面高さが一定範囲にあるように調整されている。圧力容器930は、断熱タンク940内の液体窒素90Lに浸漬されている。
【0056】
圧力容器930内に送られた殺菌された窒素ガス90GSは、断熱タンク940内かつ圧力容器930の外側の液体窒素90Lにより冷却されて液化し、無菌液体窒素90LSとなる。無菌液体窒素90LSは、圧力容器930から第6流路部96を通流して排出される。第6流路部96を通流している無菌液体窒素90LSは、たとえば、温度が-193.8℃、圧力が200kPaG、流量が23.0Nm3/hである。
【0057】
断熱タンク940内かつ圧力容器930の外側の液体窒素90Lの一部は、気化して第7流路部97から外部に放出される。第7流路部97を通流している窒素ガス90Gは、たとえば、温度が-195.8℃、圧力が0kPaG、流量が29.7Nm3/hである。
【0058】
無菌液体窒素供給装置9においては、殺菌される液体窒素とは別の液体窒素を冷媒として殺菌された窒素ガスを液化しており、冷媒として用いられた液体窒素が気化した窒素ガス90Gは、外部に放出されている。その結果、比較例に係る無菌液体窒素供給装置9における、使用した液体窒素90Lに対して得られる無菌液体窒素90LSの収率は、約44%であり、本実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1の収率約61%より低くなっていた。上記のシミュレーション結果から、本実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1においては、無菌化される液体窒素10Lを、無菌化された窒素ガス10GSを冷却して液化するための冷媒として使用していることにより、使用した液体窒素10Lに対して得られる無菌液体窒素10LSの収率が向上することを確認できた。
【0059】
本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1においては、ポンプ140によってタンク120の内部が大気圧より低い圧力に減圧されることにより、第2熱交換器180においてタンク120内の液体窒素10Lと熱交換される無菌化された窒素ガス10GSを効率的に冷却することができるため、使用した液体窒素10Lに対して得られる無菌液体窒素10LSの収率を向上することができる。
【0060】
本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1においては、除菌フィルタ160と第1熱交換器130との間を通流している窒素ガス10GSの一部を外部に供給する窒素ガス供給部170をさらに備えることにより、無菌化された窒素ガス10GSを有効利用することができ、液体窒素供給源100から供給された液体窒素10Lの使用効率を向上することができる。
【0061】
本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1においては、第3熱交換器110において、第1流路部11を通流している液体窒素10Lと第2流路部12を通流している窒素ガス10Gとを熱交換させてタンク120内に流入する液体窒素10Lを冷却することができる。その結果、第2熱交換器180においてタンク120内の液体窒素10Lと熱交換される無菌化された窒素ガス10GSを効率的に冷却することができるため、使用した液体窒素10Lに対して得られる無菌液体窒素10LSの収率を向上することができる。
【0062】
本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1においては、第4熱交換器150において、第3流路部13を通流する窒素ガス10Gを冷却水と熱交換させて冷却することができるため、除菌フィルタ160を通過する窒素ガス10Gの温度を低くすることができる。これにより、除菌フィルタ160が耐熱性を有する必要がなくなるため、除菌フィルタ160を構成する材料の自由度を高めることができる。
【0063】
以下、本発明の一実施の形態の変形例に係る無菌液体窒素供給装置について説明する。本発明の一実施の形態の変形例に係る無菌液体窒素供給装置は、第3流路部と第5流路部との接続位置が、一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1と異なるため、本発明の一実施の形態に係る無菌液体窒素供給装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0064】
図3は、本発明の一実施の形態の変形例に係る無菌液体窒素供給装置の構成を示す系統図である。図3に示すように、本発明の一実施の形態の変形例における無菌液体窒素供給装置1Aにおいては、第3流路部13におけるポンプ140と除菌フィルタ160との間の位置に、窒素ガス10Gが通流する第5流路部15Aが接続されている。第5流路部15Aを通流した窒素ガス10Gは、窒素ガス供給部170から排出される。すなわち、窒素ガス供給部170は、ポンプ140と除菌フィルタ160との間を通流している窒素ガス10Gの一部を外部に供給する。窒素ガス供給部170から供給される窒素ガス10Gは、たとえば、無菌化される必要のない不活性ガスとして使用される。
【0065】
本発明の一実施の形態の変形例に係る無菌液体窒素供給装置1Aにおいては、ポンプ140と除菌フィルタ160との間を通流している窒素ガス10Gの一部を外部に供給する窒素ガス供給部170をさらに備えることにより、窒素ガス10Gを有効利用するとともに、除菌フィルタ160の寿命を延ばすことができる。
【0066】
上記の無菌液体窒素供給装置は、液体窒素について例示しているが、液体窒素に限られず、液体ヘリウムまたは液体アルゴンなど、他の不活性の低温液体についても適用することができる。
【0067】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1A,9 無菌液体窒素供給装置、10G,10GS,90G,90GS 窒素ガス、10L,90L 液体窒素、10LS,90LS 無菌液体窒素、11,91 第1流路部、12,92 第2流路部、13,93 第3流路部、14,94 第4流路部、15,15A,95 第5流路部、96 第6流路部、97 第7流路部、20 冷却水供給源、21 冷却水流路、22 排水部、100 液体窒素供給源、101,111,191,950 バルブ、110 第3熱交換器、120 タンク、130 第1熱交換器、135 第5熱交換器、140 ポンプ、145 ヒータ、150 第4熱交換器、160 除菌フィルタ、170 窒素ガス供給部、180 第2熱交換器、190 貯留タンク、192 滴下器、900 液体窒素貯蔵タンク、910 熱交換器、920 殺菌手段、930 圧力容器、940 断熱タンク、960 フロート。
図1
図2
図3