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特許7558815フローセルおよびシークエンシングキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】フローセルおよびシークエンシングキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240924BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240924BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240924BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020572658
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019064197
(87)【国際公開番号】W WO2020131354
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】62/780,602
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデン・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディ・メイザー
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-534226(JP,A)
【文献】特表2017-503483(JP,A)
【文献】特表2005-512022(JP,A)
【文献】特表2016-525466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0203924(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318016(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0317917(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0019803(US,A1)
【文献】国際公開第1998/028320(WO,A1)
【文献】GUO J. et al.,An integrated system for DNA sequencing bysynthesis using novel nucleotide analogues,American Chemical Society,2010年,vol. 43,p. 551-563
【文献】Sequencing By Synthesis (SBS) ケミストリーとは何か?[online],イルミナ,p.1-35,2015年,[検索日:2023.10.11],<https://jp.illumina.com/content/dam/illumina-marketing/apac/japan/documents/pdf/2015_techsupport_session9.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板;
基板に結合される蓋;
基板と蓋の間に画定されるフローチャネル;
フローチャネルにおいておよび基板上に直接に配置されたパターニングされた電極であって、パターニングされた電極は、介在領域によって分離された凹部であって、パターニングされた電極の壁によって画定される凹部を含み、介在領域がフローチャネルに露出されたパターニングされた電極の表面によって画定される、パターニングされた電極;
各々の凹部において露出された基板の官能化表面;および
各々の凹部の官能化表面にグラフトされたプライマー
を含む、フローセルであって、
基板の官能化表面が、基板に付着したシラン基またはヒドロキシル基に付着したポリマー層を含む、フローセル
【請求項2】
基板が透明であり;および
フローセルが:
基板と接触している検出デバイス、検出デバイスは:
各々の凹部で作動的に関連したそれぞれのフォトダイオード;および
それぞれのフォトダイオードに電気的に接続されたデバイス回路を含む、
をさらに含む請求項1記載のフローセル。
【請求項3】
ポリマーが、構造:
[式中:
RAは、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群から選択され;
RBは、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
RC、RDおよびREは、それぞれ独立して、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群から選択され;
各々の-(CH2)p-は、任意に置換されていてもよく;
pは1~50の範囲の整数であり;
nは1~50,000の範囲の整数であり;および
mは1~100,000の範囲内の整数である。]
によって表される、請求項1または2に記載のフローセル。
【請求項4】
プライマーは、それぞれの凹部において官能化表面にグラフトされた2種類の増幅プライマーを含み、2種類の増幅プライマーは、ブリッジ増幅を介して凹部のそれぞれにおいてそれぞれのライブラリテンプレートを増幅する、請求項1~のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のフローセル;および
フローセルに導入する標識ヌクレオチドを含み、各々の標識ヌクレオチドが:
3'OH遮断基を有するヌクレオチド;
ヌクレオチドの塩基または糖に付着した連結分子;および
連結分子に付着したエレクトロケミルミネセンス標識
を含む、シークエンシングキット。
【請求項6】
標識ヌクレオチドが少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識が異なる発光スペクトルを有する、請求項に記載のシークエンシングキット。
【請求項7】
標識ヌクレオチドが少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのエレクトロケミルミネセンス標識が異なる酸化または還元電位を有する、請求項またはに記載のシークエンシングキット。
【請求項8】
標識ヌクレオチドが少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識がエレクトロケミルミネセンス発光について異なる寿命を有する、請求項のいずれか一項に記載のシークエンシングキット。
【請求項9】
標識ヌクレオチドが少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識が異なるエレクトロケミルミネセンス発光強度を有する、請求項のいずれか一項に記載のシークエンシングキット。
【請求項10】
エレクトロケミルミネセンス標識が、クロルプロマジン、トリス(2,2'-バイピリジン)ルテニウム(II)、2-チアントレンカルボン酸、9,10-ジフェニル-2-スルホン酸ナトリウム(DPAS)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物およびメソ-テトラ(4-スルホナトフェニル)ポルフィリンからなる群から選択される、請求項のいずれか一項に記載のシークエンシングキット。
【請求項11】
請求1~のいずれか一項に記載のフローセルを準備し、
ポリメラーゼおよびヌクレオチドを含む流体を、凹部において付着したテンプレートポリヌクレオチド鎖を含む凹部を部分的に画定する電極を含むフローセルに導入し、少なくともいくつかのヌクレオチドは標識ヌクレオチドであり、各々の少なくともいくつかの標識ヌクレオチドは:
3'OH遮断基を有するヌクレオチド;
ヌクレオチドの塩基または糖に付着した連結分子;および
連結分子に付着したエレクトロケミルミネセンス標識を含み、
それによって、ヌクレオチドの1つはテンプレートポリヌクレオチド鎖に相補的な新生鎖に取り込まれ;
電極に電位を印加し;および
印加した電位に応答した発光を検出する
ことを含む方法。
【請求項12】
ヌクレオチドの取り込まれた1つが標識ヌクレオチドの1つであり、電位の印加が標識ヌクレオチドの取り込まれた1つのエレクトロケミルミネセンス標識を含む酸化還元経路を開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
流体が少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み;
各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識が異なる発光スペクトルを有し;および
さらに、方法がその発光から標識ヌクレオチドの1つを同定することをさらに含む、請求項1または1に記載の方法。
【請求項14】
流体が少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み;
各々の少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識が異なる酸化または還元電位を有し;および
さらに、印加電位から標識ヌクレオチドの取り込まれた1つを同定することを含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
電位を印加する前に、フローセルに共反応体を導入することをさらに含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
標識ヌクレオチドの取り込まれた1つの連結分子およびエレクトロケミルミネセンス標識が、取り込み、電位印加および光学検出の間に付着し、光学検出の後に、さらに:
脱-ブロッキング剤を導入して標識ヌクレオチドの取り込まれた1つから連結分子およびエレクトロケミルミネセンス標識を切断し、標識ヌクレオチドの取り込まれた1つから3’ OHブロッキング基を除去し、それによって他のヌクレオチドまたは他の標識ヌクレオチドの新生鎖への取り込みを可能にする、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
他の流体を導入し;
他の電位を電極に印加し;および
他の発光を検出することをさらに含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
フォトダイオードが発光を検出し;および
発光に対応する電気信号を検出することをさらに含む、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ヌクレオチドの取り込まれた1つが:
第1の標識ヌクレオチド、この場合、連結分子は切断可能であり;
第2の標識ヌクレオチド、この場合、連結分子は非-切断可能であり;
3'OH遮断基を有し、エレクトロケミルミネセンス標識に付着するための連結分子を含む第3の非-標識ヌクレオチド;または
3'OH遮断基を有する第4の非-標識ヌクレオチド
のうちの1つであり;および
方法が:
第1の標識ヌクレオチドからエレクトロケミルミネセンス標識を切断することができ、エレクトロケミルミネセンス標識を第3の非-標識ヌクレオチドに付加することができる試薬を導入し;
他の電位を電極に印加し;
印加した電位に応答した他の発光を検出し;および
検出した発光および検出した他の発光を用いてヌクレオチドの1つの取り込みを同定すること
をさらに含む、請求項118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フローセルが複数の凹部を含み、その各々が凹部に付着した複数のテンプレートポリヌクレオチド鎖を含み;
ヌクレオチドのそれぞれの1つがそれぞれのテンプレートポリヌクレオチド鎖に相補的なそれぞれの新生鎖に取り込まれ;および
各々の複数の凹部からのそれぞれの発光を同時に検出することをさらに含む、請求項119のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年12月17日に出願された米国仮特許出願番号62/780,602の利益を主張する。その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的または化学的研究におけるさまざまなプロトコールは、局所的な支持面上または所定の反応チャンバー内で多数の制御された反応を実行することを含む。次に、指定された反応を観察または検出でき、その後の分析は、反応に関与する化学物質の特性を特定または明らかにするのに役立つ可能性がある。例えば、いくつかのマルチプレックスアッセイでは、識別可能な標識(例えば、蛍光標識)を有する未知の分析物を、制御された条件下で数千の既知のプローブに曝露し得る。既知の各プローブは、マイクロプレートの対応するウェルに堆積させることができる。ウェル内の既知のプローブと未知の分析物の間で発生する化学反応を観察すると、分析物の特性を特定または明らかにするのに役立ち得る。このようなプロトコール他の例には、合成によるシークエンシング(SBS)やサイクリックアレイシークエンシングなどの既知のDNA配列決定プロセスが含まれる。ポリヌクレオチドシークエンシング技術では、分析は、反応に関与するポリヌクレオチドの特性を特定または明らかにするのに役立ち得る。
【発明の概要】
【0003】
イントロダクション
本明細書に開示する第1の態様は、基板;基板上に配置された電極;電極上に配置されたパターン化された材料、該パターン化された材料は格子間領域によって分離された凹部を含み;各凹部に露出した電極の機能化された表面;および各凹部の機能化された表面にグラフトされたプライマー、を含む第1のフローセルである。
【0004】
第1の態様の例では、電極は金を含み、官能化された表面はチオールリンカーまたはアミンリンカーを含み;または、電極には酸化インジウムスズが含まれ、官能化された表面にはシランリンカーが含まれる。第1の態様の例では、電極は透明であり、基板は透明であり、フローセルはさらに基板と接触した検出デバイスを含み、検出デバイスは各凹部の各々と協働的に関連するそれぞれのフォトダイオードを含み、デバイスの回路はそれぞれのフォトダイオードに電気的に接続している。
【0005】
本明細書に開示する第1のフローセルの特徴は、任意の望ましい方法および/または構成で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。
【0006】
本明細書に開示する第2の態様は、第1の態様で規定したフローセルおよびフローセルに導入する標識ヌクレオチドを含むシークエンシングキットであり、各標識ヌクレオチドは3'OH遮断基を有するヌクレオチド、ヌクレオチドの塩基または糖に結合した連結分子、および連結分子に結合したエレクトロケミルミネセンス標識を含む。
【0007】
第2の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個の発光スペクトルを有する。
【0008】
第2の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個の酸化または還元電位を有する。
【0009】
第2の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、エレクトロケミルミネッセンス発光について別個の寿命を有する。
【0010】
第2の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個のエレクトロケミルミネッセンス発光強度を有する。
【0011】
このシークエンシングキットのいずれの特徴も、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、このシークエンシングキットおよび/またはフローセルの特徴のいずれの組み合わせも一緒に使用でき、および/または本明細書に開示する実施例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0012】
本明細書に開示する第3の態様は、基板、基板上に配置されたパターン化電極、格子間領域によって分離された凹部を含むパターン化電極、各凹部で露出された基板の官能化表面、およびそれぞれの凹部の官能化表面にグラフトされたプライマーを含む別のフローセルである。
【0013】
第3の態様の例では、基板の機能化された表面は、基板に取り付けられたシラン基に取り付けられたポリマー層を含む。
【0014】
第3の態様の例では、基板の官能化された表面は、基板に結合したヒドロキシル基を含む。
【0015】
第3の態様の例では、基板は透明であり;フローセルは基板と接触した検出デバイスをさらに含み、検出デバイスは各凹部と作動的に関連したそれぞれのフォトダイオードを含み;および各フォトダイオードに電気的に接続したデバイス回路を含む。
【0016】
このフローセルの特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、このフローセルおよび/またはシークエンシングキットおよび/または他のフローセルの特徴の任意の組み合わせを一緒に使用でき、および/または本明細書に開示される実施例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0017】
本明細書に開示する第4の態様は、第3の態様で規定したフローセル、およびフローセルに導入される標識ヌクレオチドを含み、各標識ヌクレオチドは、3'OH遮断基を有するヌクレオチドを含み、連結分子はヌクレオチドの塩基または糖、および連結分子に付着したエレクトロケミルミネッセンス標識を含む。
【0018】
第4の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個の発光スペクトルを有する。
【0019】
第4の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個の酸化または還元電位を有する。
【0020】
第4の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、エレクトロケミルミネッセンス発光について別個の寿命を有する。
【0021】
第4の態様の例では、標識ヌクレオチドは、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個のエレクトロケミルミネッセンス発光強度を有する。
【0022】
このシークエンシングキットの任意の機能は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、このシークエンシングキットおよび/またはフローセルおよび/または他のシークエンシングキットのいずれかの特徴の任意の組み合わせを一緒に使用でき、および/または本明細書に開示される例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0023】
本明細書に開示される第5の態様は、ポリメラーゼおよびヌクレオチドを含む流体を、凹部に結合したテンプレートポリヌクレオチド鎖を含む凹部を部分的に画定する電極を含むフローセルに導入することを含み、ここで、ヌクレオチドの少なくともいくつかは、標識ヌクレオチドであり、少なくともいくつかの標識ヌクレオチドは3'OH遮断基を有するヌクレオチド、ヌクレオチドの塩基または糖に結合した連結分子、および連結分子に結合したエレクトロルミネセンス標識を含み、それによって、ヌクレオチドの1つがテンプレートポリヌクレオチド鎖に相補的な新生鎖に組み込まれ;電極に電位を印加し;ついで、印加された電位に応答する発光を検出する、ことを含む方法である。
【0024】
第5の態様の例では、組み込まれたヌクレオチドの1つは標識ヌクレオチドの1つであり、電位の印加は、組み込まれた標識ヌクレオチドの1つのエレクトロケミルミネッセンス標識を含む酸化還元反応経路を開始する。一つ例では、流体は、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネッセンス標識は、別個の発光スペクトルを有し、この方法は、その発光から、組み込まれた標識ヌクレオチドの1つを識別することをさらに含む。別の例では、流体は、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドを含み、少なくとも3つの異なる標識ヌクレオチドのそれぞれのそれぞれのエレクトロケミルミネセンス標識は、別個の酸化または還元電位を有し、方法は、印加電位から標識ヌクレオチドの組み込まれた1つを同定することをさらに含む。さらに別の例では、電位を適用する前に、この方法は、共反応物をフローセル導入することをさらに含む。さらに別の例では、標識ヌクレオチドの組み込まれた1つの結合分子およびエレクトロケミルミネセンス標識は、組み込み、電位印加、および光学的検出の間に結合し、光学的検出の後に、この方法は、脱-ブロッキング(de-blocking)剤を導入して標識ヌクレオチドの組み込まれた1つから連結分子およびエレクトロケミルミネセンス標識を切断し、標識ヌクレオチドの組み込まれた1つから3'OH遮断基を除去し、それによって別のヌクレオチドまたは別の標識ヌクレオチドを新生鎖に組み込むことを可能にする。この特定の例では、この方法は、別の流体を導入し、電極に別の電位を印加し、別の発光を検出することをさらに含み得る。
【0025】
第5の態様の例では、フォトダイオードが発光を検出し、この方法は、発光に対応する電気信号を検出することをさらに含む。
【0026】
第5の態様の例では、組み込まれたヌクレオチドの1つは、以下のうちの1つである:第1の標識ヌクレオチドであって、連結分子は切断可能である;第2の標識ヌクレオチドであって、連結分子は切断不可能である;3'OH遮断基を有する第3の非-標識ヌクレオチドであって、エレクトロケミルミネセンス標識に結合するための連結分子を含む;または、3'OH遮断基を有する第4の非-標識ヌクレオチド。この方法はさらに、第1の標識ヌクレオチドからエレクトロケミルミネセンス標識を切断し、第3の非-標識ヌクレオチドにエレクトロケミルミネセンス標識を付加し得る試薬を導入し、電極に別の電位を印加し、印加電位に応答して別の発光を検出し、ついで、検出された発光および検出された他の発光を使用して、組み込まれたヌクレオチドの1つを同定することをさらに含む。
【0027】
第5の態様の例では、フローセルは複数の凹部を含み、そのそれぞれは、凹部に結合した複数のテンプレートポリヌクレオチド鎖を含み、ヌクレオチドのそれぞれの1つは、それぞれのテンプレートポリヌクレオチド鎖に相補的なそれぞれの新生鎖に組み込まれ、方法は、複数の凹部のそれぞれからそれぞれの発光を同時に検出することをさらに含む。
【0028】
この方法の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、方法および/または第1のシークエンシングキットおよび/または第2のシークエンシングキットの特徴の任意の組み合わせを一緒に使用でき、および/または本明細書に開示する実施例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【0029】
さらに、方法のいずれかおよび/またはシークエンシングキットのいずれかの特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができ、および/または本明細書に開示する実施例のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになり、同様の参照番号は、おそらく同一ではないが、類似の構成要素に対応する。簡潔にするために、前記の機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して説明されてもされなくてもよい。
【0031】
図1A図1Aは、フローセルの例の上面図である。
【0032】
図1B図1Bは、図1Aのフローセルレーンのうちの1つの一部の例の拡大斜視図であり、電極表面に画定された凹部および凹部の電極表面に結合したプライマーを示している。
【0033】
図1Cは、図1Aのフローセルレーンのうちの1つの一部の別の例の拡大斜視図であり、基板表面上のパターン化された電極によって画定された凹部および凹部の基板表面に結合したプライマーを示す。
【0034】
図2図2は、標識ヌクレオチドの異なる例を概略的に示す。
【0035】
図3図3は、シークエンシングキット用のフローセルの凹部の配列の一例の半概略斜視図である。
【0036】
図4図4A図4Cは、図3のアレイがシークエンシングサイクルにさらされたときのアレイの1つの凹部の断面図を示す。
【0037】
図5図5は、シークエンシングキット用のフローセルの凹部のアレイの別の例の半概略斜視図である。
【0038】
図6図6A図6Cは、図5のアレイの1つの凹部がシークエンシングサイクルにさらされたときのアレイの1つの凹部の断面図を示す。
【0039】
図7図7は、シークエンシングキット用のフローセルの例の断面図であり、ここでフローセルは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出デバイス組み込む;および
【0040】
図8図8は、シークエンシングキット用のフローセルの別の例の断面図であり、ここでフローセルはCMOS検出デバイス組み込まれている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書に開示される実施例では、シークエンシング間のヌクレオチド塩基の呼び出しは、電気化学的に生成される蛍光シグナルの検出を介して実行される。蛍光シグナルの電気化学的生成には、レーザー、発光ダイオード、または他の照明源による照明による色素標識塩基の励起は含まれない。励起源を必要とせずに、本明細書に開示する実施例の光学システムは単純化されている。
【0042】
エレクトロケミルミネッセンス(ECL)のプロセスは、電極表面での分子の酸化または還元から始まり、ラジカルカチオンまたはアニオンを形成する。いくつかの例では、ラジカルカチオンまたはアニオンは、次に、共反応物との電子移動を受けて、発光励起状態を形成する。他の例では、電極の電位が正から負にスイープされ、発光励起状態を直接生成できる。いずれの例においても、本明細書に開示されるプロセスは、励起源からのバックグラウンドノイズのない光を生成する。したがって、本明細書に開示される例は、励起源によるノイズを排除し、したがって、信号対ノイズ比を増加させる。信号対ノイズ比が高いと、シークエンシング精度が向上し、データ密度が高くなるため、より小さなピッチを使用できるようになる。
【0043】
さらに、本明細書に開示される実施例では、励起状態は、電極表面または電極壁によって画定された凹部内にのみ形成され、これにより、空間的に分解されたECL活性領域が促進される。
【0044】
さらに、放出される光子の数は、ECL反応の効率と印加された電位の時間に依存する。理論的には、ECL活性分子は、多数の酸化還元/反応/放出サイクルを経ることができ、印加電位の時間中に光子を放出できる。これにより、信号生成の時間枠を調整できるようになり、より正確な検出結果につながり得る。
【0045】
本明細書に開示される例では、信号は、シークエンシングキットを使用して電気化学的に生成される。本明細書に記載のシークエンシングキットの例は、エレクトロケミルミネッセンス・シークエンシングキットである。エレクトロケミルミネセンス・シークエンシングキットがシークエンシングキットの代表的な例として本明細書では使用するが、本明細書のシークエンシングキットは必ずしもエレクトロケミルミネセンスキットである必要はない。それぞれのエレクトロケミルミネセンス・シークエンシングキットは、ECLプロセスで使用される電極を組み込む特定のフローセルを含む。いくつかの例では、フローセルは、光学的検出デバイスと共に使用し得る。他の例では、フローセルは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出デバイスと統合され、したがってオプトエレクトロニクス検出に使用される。
【0046】
フローセル10の例を、図1Aに示す。この例では、フローセル10はフローチャネル12を含む。いくつかのフローチャネル12が示されているが、任意の数のチャネル12がフローセル10に含まれてもよいこと(例えば、単一のチャネル12、4のチャネル12など)は理解される。各フローチャネル12は、2つの結合した構成要素(例えば、、基板および蓋、または2つの基板)の間に画定される領域であり、液体をそこに導入し、そこから除去できる。それぞれのフローチャネル12は、いずれかの特定のフローチャネル12に導入された液体が近隣のフローチャネルに流れないように他のフローチャネル12から互いに分離している。本明細書でさらに説明するように、フローチャネル12に導入した液体は反応成分(例えば、標識および/または非標識ヌクレオチド)、洗浄溶液、分解剤ほかを導入できる。
【0047】
フローセル10のフローチャネル12内の構造の異なる例を、図1B及び図1Cに示す。
【0048】
図1Bに示す例では、フローセル10は、基板14、基板14上に配置された電極16、および電極16上に配置されたパターン化された材料18を含む。パターン化された材料18は、介在領域22によって分離された凹部18を画定する。この例では、電極の官能化表面S16は、凹部18のそれぞれで露出され、プライマー24は表面S16 グラフトされる。
【0049】
図1Bの基板14はフローセル10の他の構成要素のための支持を提供する。基板14は一般に剛性であり、水性液体に不溶性である。適切な基板14の例には、エポキシシロキサン、ガラス、変性ガラス、プラスチック、ナイロン、セラミック/セラミック酸化物、シリカ(二酸化ケイ素(SiO2))、溶融シリカ、シリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン、変性シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化ケイ素(Si3N4)、五酸化タンタル(TaO5)または他の酸化タンタル(TaOx)、二酸化ハフニウム(HaO2)、無機ガラスなどが含まれる。基材14に適したプラスチックのいくつかの例には、アクリル、ポリスチレン、スチレンおよび他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(Chemours社のTEFLON(登録商標)など)、環状オレフィン/シクロ-オレフィンポリマー(COP)(Zeon社のZEONOR(登録商標など)、ポリイミド)などが含まれる。支持体はまた、表面に酸化タンタルまたは別のセラミック酸化物のコーティング層を有するガラスまたはシリコンであり得る。
【0050】
基板14の形態は、ウェーハ、パネル、長方形シート、ダイ、または他の任意の適切な構成であり得る。一例では、基板14は、約2mmから約300mmの範囲の直径を有する円形ウェーハまたはパネルであり得る。より具体的な例として、基板14は、約200mmから約300mmの範囲の直径を有するウェーハである。別の例では、基板14は、最大約10フィート(~3メートル)までの最大寸法を有する長方形のシートまたはパネルであり得る。特定の例として、支持体14は、約0.1mmから約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法を記載してきたが、任意の適切な寸法を有する基板14を使用できることを理解されたい。
【0051】
図1Bでは、電極16は、基板12上に配置されている。電極16は、金(Au)、銀(Ag)、塩化銀(AgCl)、白金(Pt)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウムスズ(zin)(IZO)、炭素(例えば、グラフェン、カーボンナノチューブシート)、導電性ポリマーなどの適切な電極材料を含み得る。一例では、電極16は金である。電極16は、電極16を機械的および化学的に安定にする任意の適切な厚さを有し得る。一例として、厚さは200nm以上であり得る。
【0052】
電極16は、基板14に結合した予め形成されたシートとできる。例えば、接着剤を用いて、または適切な堆積技術を用いて基板12上に堆積させることができる。
【0053】
図1Bに示される例では、パターン化された材料18は、電極16上に配置されている。凹部18および介在領域22を形成するために、選択的に堆積、または堆積およびパターン化し得る任意の材料を、パターン化された材料18に使用し得ることは理解される。パターン化された材料18は、導電性または非導電性であり得、それはプライマー24をグラフトしないように選択される。
【0054】
1つの例として、無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、またはインクジェット印刷を介して電極16に選択的に適用し得る。適切な無機酸化物の例には、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ハフニウムなどが含まれる。
【0055】
別の例として、樹脂を電極16に塗布し、次にパターン化し得る。適切な蒸着技術には、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンシング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などが含まれる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(POSS)という用語は、シリカ(SiO2)とシリコーン(R2SiO)とのハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成をいう。POSSの例は、その全体が参照により組み込まれる、Kehagaisら、Microechnology Engineering 86(2009)、pp.776~778に記載されているものであり得る。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2]nを有する有機ケイ素化合物であり、ここで、R基は、同じであっても異なっていてもよい。POSSの例示的なR基には、エポキシ、アジド/アジド、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、および/またはメタクリレート、あるいはさらに、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、および/またはハロアルキル基が含まれる。本明細書に開示する樹脂組成物は、モノマー単位として1つまたは複数の異なるかごまたはコア構造を含み得る。多面体構造は、
【化1】
のようで、
【化2】

によって表わされるようなT8構造となり得る。このモノマー単位は、典型的には、官能基の8本のアームR1からR8を有する。
【0057】
モノマー単位は、10個のケイ素原子および10個のR基を有する、T10という、
【化3】

のようなかご構造を有し得、あるいは12個のケイ素原子および12個のR基を有する、T12という、
【化4】

のようなかご構造を有し得る。あるいは、POSSベースの材料は、T6、T14、またはT16かご構造を含み得る。平均的なかごの含有物は、合成の間に調整でき、および/または精製方法によって制御でき、モノマー単位のかごのサイズの分布を本明細書に開示する実施例で使用し得る。
【0058】
図1Bに示すように、パターン化された材料18は、そこに画定された凹部20と、隣接する凹部20を分離する介在領域22とを含む。凹部20の多くの異なるレイアウトを想定でき、規則的であり、繰り返し、非規則的なパターンなどが含まれる。一例では、凹部20は、密なパッキングおよび改善された密度のために六角形のグリッドに配置されている。他のレイアウトは、例えば、直線(すなわち、長方形)レイアウト、三角形レイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウトまたはパターンは行と列である凹部20ののX-Y形式とし得る。いくつかの他の実施例では、レイアウトまたはパターンは、凹部20および/または介在領域22の繰り返し配置とし得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパターンは凹部20および/または介在領域22のランダムな配置とし得る。パターンには、スポット、パッド、ウェル、ポスト、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、および/またはクロスハッチをが含まれ得る。
【0059】
凹部20のレイアウトやパターンは定義された領域における凹部20の密度(すなわち、凹部20の数)に対して特徴付けし得る。例えば、凹部20は、1mm2あたり約200万の密度で存在し得る。密度は、例えば、約100/mm2、約1,000/mm2、約0.1百万/mm2、約100万/mm2、約200万/mm2、約500万/mm2、約1000万/mm2、約5000万2、またはそれ以上の密度を含む異なる密度に調整し得る。さらに、パターン化された材料18内の凹部20の密度は、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得ることは理解される。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離された凹部20を有するとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nmから約1μmまで隔てられた凹部20を有するとして特徴付けられ得、低密度アレイは、1μm程度以上で隔てられた凹部20を有すると特徴付けられ得る。密度の例を記載しているが、任意の適切な密度を使用できることは理解される。
【0060】
凹部20のレイアウトまたはパターンはまた、または代替的に、平均ピッチ、すなわち、凹部20の中心から隣接する凹部20の中心までの間隔(中心から中心までの間隔)、または一方の凹部の端部から隣接する凹部20の端部までの間隔(端部から端部までの間隔)とし得る。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さいように規則的である場合もあれば、変動係数が比較的大きくなり得る不規則である場合もあり得る。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm、またはそれを超えるもしくは未満とし得る。凹部20の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択される下限のいずれか1つの値と上限のいずれか1つの値との間とし得る。一例では、凹部20は、約1.5μmのピッチ(中心-中心の間隔)を有する。平均ピッチ値の例を記載しているが、他の平均ピッチ値を使用し得ることは理解される。
【0061】
各凹部のサイズは、その体積、開口面積、深さ、および/または直径によって特徴付け得る。
【0062】
それぞれ凹部20は、液体を閉じ込めることができる任意の容積を有し得る。最小または最大の容積は、例えば、スループット(例えば、多重度)、解像度、分析物組成、またはフローセル10の下流での使用に予想される分析物反応性に対応するように選択し得る。例えば、容積は、少なくとも約1×10-3μm3、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、またはそれ以上とし得る。代替的または付加的に、容積は最大で約1×104μm3、約1×103μm3、約100μm3、約10μm3、約1μm3、約0.1μm3またはそれ未満とし得る。
各凹部の開口部が占める面積は、上記の容積と同様の基準に基づいて選択し得る。例えば、各凹部の開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm2、約1×10-2μm2、約0.1μm2、約1μm2、約10μm2、約100μm2、またはそれを超えるものとし得る。代替的または付加的に、面積は最大で約1×103μm2、約100μm2、約10μm2、約1μm2、約0.1μm2、約1×10-2μm2、またはそれ未満とし得る。各凹部の開口部が占める面積は、上記で指定された値よりも大きい、小さい、またはその間に存在し得る。
【0063】
各凹部20の深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、またはそれを超えるものとし得る。代替的にまたは付加的に、深さは最大で約1×103μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.1μm、またはそれ未満とし得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。それぞれの凹部20の深さは、上記で指定された値より大きくても小さくてもよい。
【0064】
いくつかの例では、それぞれの凹部20の直径または長さおよび幅は、少なくとも約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれを超えるものとし得る。代替的にまたは付加的に、直径または長さおよび幅は最大で約1×103μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μmまたはそれ未満のもの(例えば、約50nm)とし得る。直径または長さおよび幅も、深さに沿って変化し得る(例えば、図4A図4Cおよび図6A図6Cに示すように)。それぞれの凹部20の直径または長さおよび幅は、上記で指定された値とも大きい、小さい、またはそれらの間とし得る。
【0065】
図1Bに示す例では、凹部20に露出した電極16の表面S16は、プライマー24が表面S16に結合し得るが介在領域22に結合し得ないように官能化される。電極表面の官能S16の官能化は、電極の材料とそれに結合するプライマー24の材料に依存する。
【0066】
いくつかの例では、プライマー24は、未修飾の電極材料に直接結合できる末端官能基を含むため、電極材料は固有に官能化し得る。例えば、チオール末端付加プライマーは、金電極表面S16に化学的に結合し得る。
【0067】
他の例では、電極表面S16は、プライマー24に結合し得る官能基(すなわち、連結分子)を取り込むように修飾し得る。官能基は、化学的に、一端で、電極表面S16に結合し得、他端でプライマー24に結合し得る。例として、チオールリンカーもしくはチオレートリンカーまたはアミンリンカーは、金電極に結合し得、シランリンカー(例えば、、アジドシラン)はITO電極に結合し得る。いくつかの例を提供したが、他の化学官能基を使用し得ることは理解される。
【0068】
直接的または間接的(例えば、リンカーを介して)に関わらず、電極表面S16へのプライマー24の結合は、プライマー24、使用するいずれかのリンカー、および電極材料に依存して、共有結合、配位結合、または他の化学的または物理的結合(例えば、π-πスタッキングのような)を介し得る。
【0069】
表面S16は、官能基で修飾されても、または固有に官能化されていてもよく、介在領域22はプライマー反応性官能基を含まないため、プライマー24は表面S16に結合し、介在領域22には結合しない。
【0070】
電極の官能化は、パターン化された材料18がそれに適用される前または後に行い得ることは理解される。
【0071】
他の例では、電極表面S16は、図1Cに示して本明細書で記載するようにポリマー層で官能化し得る。
【0072】
図1Bに示すように、プライマー(複数可)24は、官能電極表面S16に結合する。プライマー24は、電極材料に直接的またはそれに結合した官能基に結合し得るまたはそれに結合したポリマー層に結合し得る官能基を含むフォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーとし得る。適切な官能基末端プライマーの例には、アルキン末端プライマー、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、およびトリアゾリンジオン末端プライマーが含まれる。プライマーの混合物も使用し得る。適切なプライマーの具体例としては、HISEQ(商標)、HISEQX(商標)、MISEQ(商標)、MISEQDX(商標)、MINISEQ(商標)、NEXTSEQ(商標)、NEXTSEQDX(商標)、HISEQ(商標)、NOVASEQ(商標)、GENOMEANALYZER(商標)、およびその他の機器プラットフォームが含まれる。
【0073】
例において、プライマー24は、フロースルー蒸着(例えば、フローセル10がそれに結合した蓋を有する場合)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドル分注、またはプライマー(複数を含む)24を結合する他の適切な方法のようなグラフト化プロセスを使用して結合し得る。これらの例示的な技術のそれぞれは、プライマー、水、バッファー(例えば、塩類溶液)、および触媒を含み得るプライマー溶液または混合物を利用し得る。
【0074】
ここで図1Cを参照すると、フローセル10は、基板14と、基板14上に配置されたパターン化された電極26とを含む。この例では、パターニングされた電極26は介在領域22によって分離された凹部18を画定している。この例では、基板の官能化表面S14はそれぞれの凹部18に露出しており、プライマー24は官能化表面S14にグラフトされている。
【0075】
図1C中の基板14は、フローセル10の他の要素の支持を提供する。基板14は、本明細書に記載の実施例のいずれであってもよい。
【0076】
図1Cでは、パターニングされた電極26が基板12上に配置されている。パターニングされた電極26は、電極16について述べた電極材料のいずれでもよい。この例では、パターニングされた電極26は、例えば、接着剤を使用して基板14に付着された予め形成されたグリッドであってもよく、あるいは、適切な堆積技術を用いて所望のパターンで基板14に堆積されてもよい。
【0077】
図1Cに示す例では、パターニングされた電極26は、内部に画定された凹部20、および隣接する凹部20を分離する介在領域22を含む。凹部20について本明細書に記載するパターン、レイアウト、および寸法のいずれも図1Cに示す凹部20に使用し得る。
【0078】
また、図1Cに示す例では、凹部20において露出した基板14の表面S14は、プライマー24が表面S14に付着し得るがパターニングされた電極26の介在領域には付着し得ないように官能化される。
【0079】
いくつかの例では、基板表面S14を官能化することは、凹部20において曝露した表面S14をシラン化すること、およびシラン化した表面にポリマー層を形成することを含む。シラン化は、任意のシランまたはシラン誘導体を用いて達成し得る。例示的なシランまたはシラン誘導体は、ノルボルネンシラン、ノルボルネン誘導体(例えば、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシラン)、シクロオクチン、シクロオクチン誘導体、または他の適切なシランを含む。シランまたはシラン誘導体を付着するために使用する方法は、使用するシランまたはシラン誘導体に依存して変化し得る。適当なシラン化方法の例には、蒸着(例えば、YES法)、スピンコーティング、または他の堆積方法が含まれる。
【0080】
ついで、ポリマー(図示せず)をシラン化表面に適用できる。ポリマーは、液体および気体に対して透過性である半硬質ポリマー材料であってもよい。ポリマーの例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAMのようなアクリルアミド共重合体を含む。PAZAMおよびアクリルアミド共重合体のいくつかの他の形態は、以下の構造(I)によって表される:
【化5】
式中:
RAは、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群から選択され;
RBは、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
RC、RDおよびREは、それぞれ独立して、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群から選択され;
各々の-(CH2)pは、任意に置換されていてもよく;
pは1~50の範囲の整数であり;
nは1~50,000の範囲の整数であり;および
mは1~100,000の範囲内の整数である。
当業者であれば、構造(I)中の循環する「n」および「m」の配置は代表的なものであり、単量体サブユニットがポリマー構造中にいずれかの順番で存在し得ることを認識するであろう(例えば、ランダム、ブロック、パターニングされた、またはそれらの組み合わせ)。
【0081】
PAZAMの分子量は、約10kDaから約1500kDaの範囲、特定の例では約312kDaとし得る。いくつかの例では、PAZAMは線状ポリマーである。いくつかの他の実施例では、PAZAMは軽く架橋したポリマーである。
【0082】
他の例では、ポリマーは、構造(I)の変形であってもよい。1つの例では、アクリルアミド単位はN,N-ジメチルアクリルアミド:
【化6】

で置き換えてもよい。この例においては、構造(I)中のアクリルアミド単位は
【化7】

式中、RD、RE、およびRFは各々HまたはC1-C6アルキルであり、RGおよびRHは各々C1-C6アルキルである(アクリルアミドの場合はHの代わりに)。この例では、qは1~100,000の範囲の整数であり得る。もう1つの例において、N,N-ジメチルアクリルアミドはアクリルアミド単位に加えて用い得る。この例では、構造(I)は繰り返し「n」および「m」の特徴に加えてRD、REおよびRFは各々HまたはC1-C6アルキルであり、RGおよびRHは各々C1-C6アルキルであることを含み得る。この例では、qは1~100,000の範囲の整数とし得る。
【0083】
官能化して活性化表面S14と相互作用し、つづいて適用したプライマー(複数可)24と相互作用する限り、他の分子を用いてポリマーを形成し得ることは理解される。適切なポリマーの他の例には、アガロースなどのコロイド状構造、またはゼラチンのようなポリマーメッシュ構造、または、ポリアクリルアミドポリマーおよびコポリマーのような架橋ポリマー構造、シランフリーアクリルアミド(SFA)、またはSFAのアジドライズド(azidolyzed)版を有するものが含まれる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例としては、アクリルアミドおよびアクリル酸またはビニル基を含有するアクリル酸から、またはフォーム[2+2]光環化付加反応を形成するモノマーから合成し得る。適切なポリマー26のさらに他の例は、アクリルアミドおよびアクリル酸の混合共重合体が含む。
【0084】
ポリマー(例えば、PAZAM)は、スピンコーティング、またはディッピングもしくはディップコーティング、または陽圧もしくは陰圧下での官能化分子のフロー、または他の適切な技術を用いて堆積させることができる。ポリマーは、混合物中に存在してもよい。一例では、混合物は、水中またはエタノールおよび水の混合物中のPAZAMを含む。
【0085】
コーティングされた後、ポリマーを含む混合物は、パターニングされた電極26の介在領域の22を横切り、凹部20にポリマーを形成するように硬化プロセスに曝すこともし得る。一例では、硬化は室温(例えば、約25℃)から約95℃の範囲の温度で約1ミリ秒から約数日間の範囲の時間で行い得る。別の例では、時間は10秒から少なくとも24時間の範囲とし得る。さらに別の例では、時間は約5分から約2時間の範囲とし得る。
【0086】
シラン化表面S14へのポリマー20の付着は共有結合を介してもよい。共有結合は、種々の用途の間に最終的に形成されたフローセル10の寿命をとおして凹部20においてプライマー(複数可)24を維持する助けになる。以下の記載は、活性化(例えば、シラン化)表面とポリマーとの間に起こり得る反応のいくつかの例である。
【0087】
シランまたはシラン誘導体が不飽和部分としてノルボルネンまたはノルボルネン誘導体を含む場合、ノルボルネンまたはノルボルネン誘導体は:i)PAZAMのアジド/アジド基とのストレイン-促進アルキン-ニトリル1,3-環化付加(SPAAC)反応を受けるか、ii)PAZAMに付着したニトリルオキシド基とのストレイン-促進アルキン-ニトリルオキシド環化付加反応を受け得る。
【0088】
シランまたはシラン誘導体が不飽和部分として、シクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体を含む場合、シクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体は、i)PAZAMのアジド/アジドとのストレイン-促進アジド-アルキン1,3-環化付加(SPAAC)反応を受けるか、ii)PAZAMに付着したニトリルオキシド基とのストレイン-促進アルキン-ニトリルオキシド環化付加反応を受け得る。
【0089】
シランまたはシラン誘導体が不飽和部分としてビシクロノニンを含む場合、ビシクロノニンは、二環式環系の歪み(ストレイン)によるPAZAMに付着したアジドまたはニトリルオキシドとの同様のSPAACアルキン環化付加を受け得る。
【0090】
他の例では、シラン化よりもプラズマアッシングを用いて、凹部20の基板14の曝露表面S14を官能化し得る。プラズマアッシングの後に、ポリマーを含有する混合物は、プラズマアッシュ処理(ashed)表面上に直接スピンコート(または堆積)し、ついで硬化してポリマーを形成し得る。この例では、プラズマアッシングは、ポリマーを介在領域22および凹部20の基板の露出面S14に付着し得る表面活性化剤(複数可)(例えば、-OH基)を生成し得る。これらの例では、プラズマアッシングによって生成した表面基と反応するように、ポリマーを選択する。
【0091】
シラン化またはプラズマアッシングを使用するにせよ、ついでパターニングされた電極26の介在領域22からポリマーを除去するために研磨を行い得る。いくつかの例では、研磨は、介在領域22に隣接するシランまたはシラン誘導体も除去し得てもし得なくてもよい。これらのシラン化部分が完全に除去された場合、下にあるパターニングされた電極26が露出すると理解される。
【0092】
研磨プロセスは、温和な化学スラリー(例えば、研磨剤、バッファー、キレート剤、界面活性剤、および/または分散剤を含む)を用いて行うことができ、それによって、薄いポリマーを除去でき、幾つかの例においては、シランまたはシラン誘導体の少なくとも一部分が、下にあるパターニングされた電極26に有害な影響を与えることなく、介在領域22から除去される。あるいはまた、研磨粒子を含まない溶液を用いて研磨を行い得る。
【0093】
化学スラリーは、化学的機械研磨システムに用いて介在領域22の表面を研磨し得る。研磨ヘッド(複数可)/パッド(複数可)または他の研磨工具(複数可)は、ポリマーを凹部20に残しながら介在領域22からポリマーを研磨し得る。一例として、研磨ヘッドは、ストラスバーグViPRRII研磨ヘッドとし得る。
【0094】
洗浄および乾燥プロセスは、研磨後に行ってもよい。洗浄プロセスは、ウォーターバスおよび超音波処理を利用し得る。ウォーターバスは約22℃から約30℃の範囲の比較的低温度に維持し得る。乾燥プロセスは、別の適切な技術を介して、スピン乾燥、または乾燥を含み得る。
【0095】
他の化学物質および/またはプロセスも使用してプライマー24付着の調製において基板表面S14を官能化し得ることは理解される。
【0096】
図1Cに示すように、プライマー(複数可)24は官能化した基板表面S14に付着している。本明細書に開示するプライマー24およびプライマー24をグラフトする方法のいずれも、プライマー24が基板表面S14の官能基(例えば、ポリマーの官能基)に付着し得る限り、図1Cに示す例において使用し得る。
【0097】
フローセル10は、図1Bに記載する構造または図1Cに記載する構造のいずれかで、凹部20のアレイを含む。図1Bに示す構造に対応するアレイ52を図3に示し、図1Cに示す構造に対応するアレイ52'を図5に示す。アレイ52または52'を含むフローセル10は、エレクトロケミルミネセンスを介して、光学的に検出する蛍光のシグナルを発生するシークエンシングワークフローに使用し得る。これらのワークフローの例を、図4Aから図4Cおよび図6A図6Cに参照して記載する。
【0098】
シークエンシングの前に、配列決定されるテンプレートポリヌクレオチド鎖40をプライマー24を使用してフローセル表面に上に形成し得る。テンプレートポリヌクレオチド鎖形成の開始時に、ライブラリーテンプレートは、任意の核酸サンプルから調製し得る(例えば、DNAサンプルまたはRNAサンプル)。核酸サンプルは、一本鎖、同様の大きさ(例えば、<1000bp)のDNAまたはRNA断片に断片化し得る。調製の間、アダプターをこれらの断片の末端に付加し得る。縮小サイクル増幅を介して、異なるモチーフを領域凹部20におけるプライマー24に相補的なシークエンシング結合部位、インディシーおよび領域のようなアダプターに導入し得る。最終的なライブラリテンプレートはDNAまたはRNA断片および両端のアダプターを含む。いくつかの例では、単一の核酸サンプルからの断片は、それに付加された同一のアダプターを有する。
【0099】
複数ライブラリーテンプレートをフローセル10に導入し得る。フローセル10は凹部20のアレイ52または52'を含むため、複数のライブラリテンプレートは、例えば、各凹部20の電極表面S16または基板表面S14に固定化された2のタイプのプライマー24のうちの1つにハイブリダイズする。
【0100】
ついで、クラスターの生成を行い得る。クラスタ生成の1つの例では、ライブラリテンプレートは、高忠実度DNAポリメラーゼを用いる3'伸長によってハイブリダイズしたプライマー24からコピーする。元のライブラリテンプレートは変性し、凹部20に固定化されたコピーを残す。等温ブリッジ増幅または増幅のいくつかの他の携帯を用いて、固定化されたコピーを増幅し得る。例えば、コピーしたテンプレートは隣接する、相補的プライマー24にハイブリダイズするようにオーバーループし、ポリメラーゼはコピーされたテンプレートをコピーして二本鎖のブリッジを形成し、それは変性して2本の一本鎖を形成する。これら2つの鎖は隣接する、相補的なプライマー24にループオーバーおよびハイブリダイズし、再び伸長して2つの新たな二本鎖ループを形成する。プロセスは、等温変性および増幅のサイクルによって各々のテンプレートコピーに対して繰り返して、稠密なクローンクラスターを生成する。二本鎖ブリッジの各クラスターは変性される。1つの例では、リバース鎖を特異的な塩基切断によって除去し、フォワードテンプレートポリヌクレオチド鎖が残る。単一のテンプレートポリヌクレオチド鎖40を図4A図4Cおよび図6A図6Cにおける凹部20に示すが、クラスター化が各々の凹部20に幾つかのテンプレートポリヌクレオチド鎖40の形成を生じることは理解される。クラスター化のこの例はブリッジ増幅であり、行い得る増幅の1つの例である。除外増幅(例)ワークフロー(イルミナ社)のような他の増幅技術を用い得ることは理解される。
【0101】
シークエンシングの間に、エレクトロケミルミネセンスを用いて蛍光シグナルが発生する。このように、シークエンシングの間にフローセル10に導入されるヌクレオチドの少なくともいくつかは、エレクトロケミルミネセンス標識を含む標識されたヌクレオチドである。標識されたヌクレオチド28A、28B、28Cの例を、図2に示す。標識ヌクレオチド28A、28B、28Cの各々は、30塩基またはヌクレオチド30との糖に付着3'OH遮断基32A、32B、32C、ヌクレオチド30の塩基または糖に付着した連結分子34、ならびに連結分子34に付着したエレクトロケミルミネセンス標識36を有するヌクレオチド30を含む。
【0102】
ヌクレオチド30は、複素環塩基、糖、および1つ以上のリン酸基を含む窒素を含む。ヌクレオチド30は、核酸配列の単量体単位である。RNAにおいては、糖はリボースであり、DNAにおいて、糖はデオキシリボース、すなわち、リボースの2'位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素を含有する複素環塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基またはピリミジン塩基となり得る。プリン塩基は、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにそれらの誘導体または類似体を含む。ピリミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびに修飾導体または類似体を含む。リボースまたはデオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。ヌクレオチド30は一リン酸、またはいくつかのリン酸基を含むポリリン酸形態(例えば、三リン酸(すなわち、ガンマホスフェート)、四リン酸、五リン酸、六リン酸など)となり得る。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、または改変された核酸塩基のいずれかを有し得る。核酸類似体の例は、例えば、ペプチド核酸(PNA)などのユニバーサル塩基またはリン酸-糖骨格類似体を含む。図2においては、ヌクレオチド30の塩基はシトシンであり、糖はデオキシリボースであり、リン酸はトリ-またはガンマ-ホスフェートである。
【0103】
本明細書に開示する例では、ヌクレオチド30は、それに付着した3'OH遮断基32A、32B、32Cを有する。3'OH遮断基32A、32B、32Cは、ヌクレオチド30における糖分子の酸素原子に結合し得る。3'OH遮断基32A、32B、32Cは、単一塩基のみの取り込みを各々のシークエンシングサイクルにおいて生じさせる可逆性ターミネーターとし得る(さらに、図4A図4Cおよび図6A図6Cに参照して論じる)。可逆的ターミネーターは、さらなる塩基がテンプレートポリヌクレオチド鎖40に相補的である新生鎖に取り込まれるのを停止する。これは、単一の取り込まれた塩基の検出および同定を可能にする。その後、3'OH遮断基32A、32B、32Cを除去して、各々のテンプレートポリヌクレオチド鎖40においてさらなるシークエンシングサイクルが起こることが可能になる。異なる3'OH遮断基32A、32B、32Cの例は図2に示し、それには3'-ONH2可逆的ターミネーター(32Aに示す)、3'-O-アリル可逆的ターミネーター(すなわち、32Bに示す-CH=CHCH2)、および3'-O-アミドメチル可逆的ターミネーター(すなわち、32Cに示す-CH2N3)が含まれる。他の適切な可逆的ターミネーターは、o-ニトロベンジルエーテル、アルキルo-ニトロベンジルカーボネート、エステル部分、他のアリル部分、アセタール(例えば、tert-ブトキシ-エトキシ)、MOM(-CH2OCH3)部分、2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル、テトラヒドロフラニルエーテル、3'リン酸、エーテル、-F、-H2、-OCH3、-N3、-HCOCH3および2-ニトロベンゼンカーボネートが含まれる。
【0104】
連結分子34はヌクレオチド30のプリン塩基またはピリミジン塩基に付着している。いくつかの例では、連結分子34は、図2に矢印で識別される切断部位を含む。エレクトロケミルミネセンス標識36をヌクレオチドの塩基または糖に付着することができるいずれの適切な切断可能なリンカーを用い得ることは理解されるが、適当な連結分子34のいくつかの例を図2に示す。他の例では、連結分子34は切断可能ではない。このタイプの連結分子34は、1-チャネル検出を用い、ECL標識36の切断化学を用いて取り込んだヌクレオチド塩基を区別する場合に望ましい場合がある。
【0105】
エレクトロケミルミネセンス(ECL)標識36は、連結分子34に付着している。連結分子34に結合し得、流体(例えば、水溶液)中でエレクトロケミルミネセンスを示し得る化合物はECL標識36として用い得る。
【0106】
いくつかのECL標識36は自己消滅を受け、それによって標識36は正から負に掃引される電位に応答して励起状態を直接的に生成する。標識のこのタイプの1つの例は、クロルプロマジンである。このタイプの標識36は、ECL放射を生成するための共-反応物を必要としない。
【0107】
他のECL36は、それがそれぞれ酸化または還元によって活性化されるかに応じて、陽極ECL化合物または陰極ECL化合物のいずれかとして分類し得る。
【0108】
陽極ECLタグヌクレオチドは、印加した正電位下で酸化され、それはその後に共反応体(この例では、還元剤)との電子移動反応を受けることができるラジカルカチオンを生成して発光性である中性励起状態を形成し得る。陽極ECL標識36の例には、トリス(2,2'-バイピリジン)ルテニウム(II)、2-チアントレンカルボン酸、9,10-ジフェニル-2-スルホン酸ナトリウム(DPAS)が含まれ、それらの構造をそれぞれ以下に示す。
【化8】
陽極ECLタグの適切な還元剤共反応体には、トリアルキルアミン(例えば、トリ-n-プロピルアミン)のような脂肪族アミンおよびシュウ酸が含まれる。
【0109】
陰極ECLヌクレオチドは印加した負電位下で還元され、それは、その後、共反応体(この例では、酸化剤)との電子移動反応を受けることができるラジカルアニオンを発生させて発光性である中性励起状態を形成し得る。陰極ECL標識36の例は、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物およびメソ-テトラ(4-スルホナトフェニル)ポルフィリンを含み、その構造はそれぞれ以下に示す:
【化9】
陰極ECLタグに適切な共反応体には、ペルオキシジスルフェート(S2O8 2-)(例えば、カリウムペルオキシシスルフェート)が含まれる。9,10-ジフェニルアントラセン-2-スルホン酸ナトリウム(DPAS)(負ECL標識として上記に示した)は、適当な負電位を共反応体としてのカリウムペルオキシスルフェートと印加した場合に正ECL標識36としても機能し得る。
【0110】
いくつかの例のECL標識36および共反応体を提供しているが、他のECL36および共反応体を用い得ることは標識される。
【0111】
ここで、標識ヌクレオチド28A、28B、28Cおよび光学検出を用いるシークエンシングの方法を図4A図4Cおよび図6A図6Cにを参照して記載する。図4A図4Cは、図1Bのフローセル構造および図3のアレイ52を用いる方法を図示し、図6A図6C図1Cのフローセル構造および図5のアレイ52'を用いる方法を図示する。
【0112】
シークエンシングサイクルの前に、テンプレートポリヌクレオチド鎖/鎖40の3'-末端およびいずれかのフローセル結合プライマー24(テンプレートポリヌクレオチド鎖/鎖40に付着していない)をブロックして、シークエンシング反応との干渉を防ぐ、特に望ましくないプライミングを防ぎ得る。
【0113】
図4Aおよび図6Aに示すように、シークエンシングプライマー53をフローセル10に導入し、そこでそれがテンプレートポリヌクレオチド鎖40のアダプターの相補的配列にハイブリダイズし得る。これにより、テンプレートポリヌクレオチド鎖40のシークエンシングの準備ができる。
【0114】
シークエンシング方法には、ポリメラーゼ42およびヌクレオチド(例えば、標識したヌクレオチド28)を含む流体(例えば、水溶液)を、凹部20に付着したテンプレートポリヌクレオチド鎖40を含む凹部20を部分的に画定する電極16または26を含むフローセルに導入することが含まれ、そこでヌクレオチドの少なくともいくつかは本明細書に記載する標識ヌクレオチド28である。高または低処理能力のいずれかのポリメラーゼ42を使用し得る。いくつかの例は、Phi29、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bst)およびクレノウ断片(KF)を含むが、他のものを使用し得る。ポリメラーゼ(複数可)42および標識したヌクレオチド(複数可)28に加えて、流体は、水、バッファー、非-標識ヌクレオチドなども含み得る。バッファーの例には、トリスバッファー、生理食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)バッファー、硫酸アンモニウムバッファー、リン酸バッファーなどが含まれる。いくつかの例において、バッファーは、カリウム、マグネシウム、マンガンまたは他のような他の塩カチオンとし得る。
【0115】
ヌクレオチドの一つは、それぞれのポリメラーゼ42により、シークエンシングプライマー53を伸長し、テンプレートポリヌクレオチド鎖40に相補的である新生鎖に取り込まれる。換言すれば、フローセル10を横切る各々のテンプレートポリヌクレオチド鎖40において、それぞれのポリメラーゼ42は、溶液中のヌクレオチドの1つ(標識または非標識)によってハイブリダイズしたシークエンシングプライマー53を伸長する。溶液中のヌクレオチドは、単一の、別個の分子として存在し、したがって天然の競争が取り込みバイアスを最小限に抑える。図4Bおよび図6Bにおいて、組み込まれたヌクレオチドは、ECL標識ヌクレオチド28である。
【0116】
本明細書に開示する実施例において、標識ヌクレオチド28およびいずれかの非標識ヌクレオチドの両方が可逆的ターミネーターを含む。このように、標識ヌクレオチド28または非-標識ヌクレオチドの新生鎖への取り込みは、重合のターミネーターとして機能する。これによって、電気化学的な信号の発生および検出が生じることが可能となる。
【0117】
取り込み後、いずれかの取り込まれなかったヌクレオチドを含む流体をフローセル10から除去し得る。これは、洗浄溶液(例えば、水)を用いて行い得る。
【0118】
取り込みおよび取り込まれなかったヌクレオチドを除去した後、方法は、電極16(図4B図4C)またはパターニングした電極(図6B図6C)に電位を印加し、印加した電位に応答した光学的発光54を検出することを含む(図4Cおよび図6C)。電極16またはパターニングした電極26に印加する電位は、新生鎖に取り込まれたその塩基を有するに組み込まれ、そのベース有する任意の標識ヌクレオチド28のECL反応を駆動するのに十分である。いくつかの例において、異なるECL標識36のECL反応を駆動するために、一連の異なる電位を順次印加し得る。
【0119】
いくつかの例では、電位はプラスからマイナスにスイープして、それは標識ECL標識36の励起状態を直接的に発生させ、発光54を生じる。
【0120】
他の例では、共反応体は、ポリメラーゼ42およびヌクレオチドと流体に導入する。これらの例では、印加した電位が標識36および共反応体を含む酸化還元反応経路を開始する。例として、印加電位はECL標識36の電気化学的な酸化または還元を開始し、次いで、それは共反応体によって還元または酸化されて励起状態を形成し得る。励起状態は発光54を生じる。
【0121】
さらに他の例では、レドックスシャトルを共反応物質と添加し得る。レドックスシャトルは、活性種へまたはそれから流体を介し電荷を移動し得る。レドックスシャトルは、電極表面S16またはパターニングされた電極26によって画定された凹部壁に拡散し得、酸化または還元されるようになる。酸化または還元されたレドックスシャトルは、その後に拡散し、ECL標識36と反応して酸化または還元されたECL標識を形成し得る。ついで、酸化または還元されたECL標識は、発光状態を形成するために共反応体と反応する必要がある。レドックスシャトルは、ECL標識36が電極16または26と直接物理的に接触していない場合は、ECL標識が酸化還元イベントを受けることを可能にすることができる。
【0122】
図4Cおよび図6Cに示す例では、発光54は、発光色をキャプチャするカメラを用いて撮像される。
【0123】
ついで、脱-ブロッキング剤を、フローセル10に導入し得る。脱-ブロッキング剤は、i)取り込まれた標識ヌクレオチド28からいずれか切断可能な連結分子34を切断し(それはECL標識36を除去もする)、ii)取り込まれた標識ヌクレオチド28から3'OH遮断基32A、32B、32Cを除去し得る(図2参照)。(それに付着したECL標識36を含まない)非標識ヌクレオチドが新生鎖に取り込まれた場合、脱-ブロッキング剤が非-標識ヌクレオチドから3'OH遮断基32A、32B、32Cを除去することは理解される。いずれかの例において、3'OH遮断基32A、32B、32Cの除去は、つづくシークエンシングサイクルが行われることを可能にする。3'OH遮断基および適切な脱-ブロッキング剤の例には、以下のものが含まれる:光分解的に除去し得るo-ニトロベンジルエーテルおよびアルキルo-ニトロベンジルカーボネート;塩基の加水分解によって除去し得るエステル部分;Nalで除去し得る、NaI、クロロトリメチルシランおよびNa2S2O3またはアセトン/水中のHg(II)を用いて除去し得るできるアリル部分;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)またはトリ(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)などのホスフィンで切断し得るアジドメチル;酸性条件下で切断し得るtert-ブトキシ-エトキシのようなアセタール;LiBF4およびCH3CN/H2Oを用いて切断し得るMOM(-CH2OCH3)部分;チオフェノールおよびチオ硫酸塩のような求核試薬で切断し得る2,4-ジニトロベンゼンスルフェニル;銀(I)または水銀(II)で切断し得るテトラヒドロフラニルエーテル;およびホスファターゼ酵素(例えば、ポリヌクレオチドキナーゼ)によって切断し得る3'ホスフェート。他の有用な可逆部分には、エーテル、-F、-H2、-OCH3、-N3、-HCOCH3および2-ニトロベンゼンカーボネートが含まれ、有用な脱-ブロッキング処理には、光の照射(例えば、光開裂を誘導する)、加熱、化学反応体への暴露、触媒への暴露、電流への暴露(例えば、電気分解を誘導する)などが含まれる。
【0124】
図示および理解を容易にするために、図4A図4Cおよび図6A図6Cは、単一のテンプレートポリヌクレオチド鎖40およびテンプレートポリヌクレオチド鎖40に相補的に形成された新生鎖への単一標識ヌクレオチド28の取り込みを含む単一シークエンシングサイクルを図示する。しかしながら、各々の凹部20がいくつかの(例えば、最大数百万までの)テンプレートポリヌクレオチド鎖40(アンプリコン)を含み、単一の塩基取り込みが各々の凹部20における各々のテンプレートポリヌクレオチド鎖40において同時に起こり得ることは理解される。画像は、様々な取り込み事象および印加電位(複数可)から生じる発光54を捕捉し、それぞれ取り込まれた塩基は、画像から特定し得る。撮影された画像は、イメージ分析ソフトウェアを用いて処理して、フローセルを横切る各々のクラスター位置にどのヌクレオチドが取り込まれたかを決定し得る。
【0125】
本明細書において開示する例において、ECL標識36は、特定の発光スペクトル、特定の酸化または還元電位、特定の発光寿命、特定の発光強度、および/または特定の切断化学を有し得る。これらのユニークな特性は、異なるECL標識36を特定し得ることを可能にする。例えば、それぞれの(および異なる)発光により、酸化および還元を開始するために用いたそれぞれの(および異なる)電位によって、それぞれ(および異なる)発光寿命によって、および/または特定の切断活性の存在または非存在によって、特定し得ることを可能にする。1つの例において、いずれか1つのECL標識36のそれぞれのおよび異なる発光、電位、発光寿命、および/または切断活性は、複数の標識ヌクレオチド26に使用したいずれか他のECL標識36の発光、電位、発光寿命、および/または切断活性と異なる。このように、これらのユニークな特徴の1つ以上を有する特定のECL標識36は、特定のヌクレオチド塩基(例えば、A、T、CおよびG)に結合し得る。シークエンシングの間に標識ヌクレオチド28A、28B、28Cが新生鎖中に取り込まれると、ECL標識36のユニークな特徴を検出でき、それを利用して取り込まれた塩基を同定し得る。
【0126】
一例として、4つの異なる発光スペクトルを有する4つの異なるECL標識(すなわち、四つの異なる波長帯域で発光する)をそれぞれ4つのヌクレオチド塩基、A、T、CおよびGに付着し得る。シークエンシングサイクルにおけるイメージングの間に、4つの異なる波長帯域を使用する4つの異なる画像を撮像し得、加工してどのヌクレオチドが取り込まれたかを同定し得る。
【0127】
別の例では、3つの異なる発光スペクトルを有する3つの異なるECL標識(すなわち、3つの異なる波長帯域で発光し得る)は、それぞれ3つのヌクレオチド塩基、A、T、およびCに付着し得、ヌクレオチド塩基Gは自然のままにし得る(すなわち、標識しない)。(すなわち、四つの異なる波長帯域で発光する)シークエンシングサイクルにおける撮像の間に、3つの異なる波長帯域を使用する3つの異なる画像を捕捉し得、それを加工してどのヌクレオチドが取り込まれたかを同定し得る。画像では、非発光(すなわち、暗い応答)は、4つのヌクレオチド塩基の同定を可能にする。
【0128】
さらに別の例では、4つの異なる酸化または還元電位を有する4つの異なるECL36は、4つのヌクレオチド塩基、A、T、C、およびGにそれぞれ付着し得る。シークエンシングサイクルの間に、特定の発光を開始するために用いた酸化または還元電位を特定の画像で記録し得る。4つの塩基の同定は、発光を開始する印加しあた酸化または還元電位と発光とを相関することによって達成し得る。この例では、発光を引き起こす酸化または還元電位を用いて信号を区別するために、発光は同一の光学チャネルに存在してもよい。
【0129】
さらなる例では、4つの異なる発光寿命を有する4つの異なるECL標識は、4つのヌクレオチド塩基、A、T、C、およびGにそれぞれ付着し得る。イメージングの間に、異なる発光寿命がを記録し得る。このデータにより、4つの異なるヌクレオチド塩基のいずれか1つ以上を同定し得る。
【0130】
さらに別の例では、4つの異なる発光強度を有する4つの異なるECL標識を、4つのヌクレオチド塩基、A、T、C、およびGにそれぞれ付着し得る。イメージングの間に、異なる発光強度を記録し得る。このデータは、4つの異なるヌクレオチド塩基のいずれか1つ以上の同定を可能にする。このデータは、4つの異なるヌクレオチド塩基のいずれか1つ以上の同定を可能にする。別の例において、3つの異なる発光強度を有する3つの異なるECL標識を、3つのヌクレオチド塩基、A、T、およびCにそれぞれ付着し得、ヌクレオチド塩基Gは自然のままにし得る(例えば、標識しない)。
【0131】
さらに別の例について、同じタイプのECL標識36を、異なる切断化学を有する連結分子34と結合し得る。この例では、4つの異なるヌクレオチドは流体で使用し得る。1つの例においいて、流体には以下のものが含まれる:ECL標識36に付着した切断可能な連結分子34を含む第1の標識ヌクレオチド28A、28B、28C;ECL標識36に付着した非-切断可能な連結分子34を含む第2の標識ヌクレオチド28A、28B、28C;3'OH遮断基を有し、ECL標識36に付着することのできる連結分子34を含む第3の非-標識ヌクレオチド;および3'OH遮断基を有する第4の非-標識ヌクレオチド。1つのECL36(同一の電位で活性化し、1つのチャネルで発光する)は、溶液中のいくつかのヌクレオチドに付着しているかまたは付着可能であるため、2つの化学ステップ、2つの電極電位印加、および2つの撮像ステップをシークエンシングサイクルあたりに利用する。この例では、第1~第4の異なるヌクレオチドを第1の化学ステップで添加し、ECL標識36の酸化または還元電位を印加し、画像を取り込み;ついで、新しい試薬を、第1の標識ヌクレオチドからECL標識36を除去し、ECL標識36を第3の非ー標識ヌクレオチドに付加する第2の化学ステップで添加し、ECL標識36の酸化または還元電位を再び印加し、別の画像を取り込む。この例では、第1の標識ヌクレオチドは、そのECL標識36が第2の画像を撮影する前に除去されるために第1の画像にのみ撮像され;ECL標識36は永久的に付着しているので、第2の標識ヌクレオチドは第1および第2の画像の両方で撮像され;ECL標識36は第1の画像が撮像された後に導入され、付着するので、第3の非-標識ヌクレオチドは第2の画像のみで撮像され;第4の非-標識ヌクレオチドはECL標識36を含まないかまたはそれに導入されたECL標識を有するため、第4の非-標識ヌクレオチドは永久に暗い。この例では、異なるヌクレオチドは、2つの画像にわたる各塩基に対する異なる発光パターンの分析によって同定される。
【0132】
シークエンシングサイクルを繰り返して、テンプレートポリヌクレオチド鎖40中の配列を、一度に一つの塩基、決定し得る。
【0133】
電気化学的に生成された信号の光学的検出を説明してきたが、図1Bおよび図1Cに示すフローセル構造の例は、ECL発生蛍光信号(発光54)が電気的に検出されるように相補性の金属酸化膜半導体(CMOS)と統合してもよいことは理解される。図7はCMOS(検出デバイス44)を組み入れた図1Bに示すフローセル構造を図示し、図8はCMOS(検出デバイス44)を組み入れた図1Cに示すフローセル構造を図示する。
【0134】
図7に示すフローセル10'の例において、電極16は透明であり;基板14は透明であり;および、検出デバイス44(例えば、CMOS)は基板14と接触している。検出デバイス44は、各々の凹部20と作動的に関連するそれぞれのフォトダイオード50;および、それぞれのフォトダイオード50に電気的に接続されたデバイス回路を含む。
【0135】
図8に示すフローセル10'の例では、基板14は透明であり;および検出デバイス44(例えば、CMOS)は基板14と接触している。検出デバイス44は、各々の凹部20と作動的に関連するそれぞれのフォトダイオード50;およびそれぞれのフォトダイオード50に電気的に接続されたデバイス回路を含む。
【0136】
図7および図8に示す例において、「透明」なる用語は、透明の電極および/または透明の基板が光の放射54がそれを通過することを許容することを意味する。また、透明の基板は、CMOSデバイスにおけるパッシベーション層と同様とし得る。
【0137】
これらの例における検出デバイス44は、例えば、シリコン層(複数可)、誘電体層(S)、金属-誘電層(複数可)、金属層(複数可)などを含む複数の積層された層を含むCMOSである。積層は、検出回路を構成する。検出回路44は、電流を導電することができる相互接続された導電性要素(例えば、コンダクター、トレース、バイアス、配線など)を含み得る。回路は、検出された光子に基づいてデータ信号を選択的に伝送するために構成し得る。回路は、信号増幅、デジタル化、保存、および/または処理するようにも構成し得る。回路は、検出した光放射54を収集および解析し、検出データを伝達するためのデータ信号を生成する。回路はまた、検出デバイス44におけるさらなるアナログおよび/またはデジタル信号処理も実行し得る。
【0138】
検出デバイス44は、フォトダイオード50(または他の光センサ(複数可))および光導波路(複数可)48のような光学構成要素も含む。図7および図8に示す例では、光学構成要素が、単一の光導波路48および単一の凹部20と少なくとも実質的に整列し、したがって作動的に関連するように、配列されている。
【0139】
本明細書で使用される場合、フォトダイオード50は、1画素または1画素を超える画素を含む光センサーとし得る。例として、各フォトダイオード50は、約50μm2未満である検出面積とし得る。別の例として、検出面積は約10μm2未満とし得る。後者の例では、フォトダイオード50は、単一の画素を構成し得る。フォトダイオード50の各画素の平均読み出しノイズは、例えば、約150エレクトロン未満とし得る。他の例では、読み出しノイズは約5エレクトロン未満とし得る。光学センサー(複数可)18の解像度は、約0.5メガピクセル(Mピクセル)他の例では、解像度は、約5メガピクセルを超える、または約10メガピクセルを超えるものとし得る。
【0140】
本明細書中で用いる場合、単一の光導波路48は、発光54してそれを通して対応するフォトダイオード50に向けて貫通伝播させる材料を含む光導波路とし得る。本明細書に開示する方法は、電気化学的に発光54を発生させるため、光導波路48における材料は、励起光用のフィルタである必要はない。適切な光導波路の材料の例は、酸化物である。光導波路の材料は、光導波構造を形成する助けとなる誘電体または金属材料によって囲まれていてもよい。
【0141】
図7および図8に示す用フローセル10'について、シークエンシング方法は、図4A図4Cおよび図6A図6Bに参照して本明細書の記載のとおりに行い得る。検出デバイス44は固体撮像素子であり、したがって、本明細書に開示する例に従って発光54を撮像し得る。さらに、発光54は、検出デバイス44のフォトダイオード50によって検出される。フォトダイオード50は、発光54の光子を検出し、この信号を電気信号(例えば、電流または電圧)に変換し得る。電気信号は、様々なECL標識36の発光と相関し、したがって単一塩基取り込み事象の同定に使用し得る。
【0142】
図7および図8に示していないが、フローセル10'が、発光54の電気化学的発生が発光54の検知に直交するように2つのコントローラーを含み得ることは理解される。換言すれば、電極16またはパターニングされた電極26に印加される電位(複数可)は、検出デバイス44の回路から独立して制御し得る。
【0143】
また、蓋46が図7および図8に示されていることに留意されたい。蓋46は、本明細書に開示する例のいずれに用いてもよく、フローセル10、10'のフローチャネル(複数可)を作成するために使用し得る。図1Aおよび図3図6Cに示す例において、蓋46は発光54がディテクターによって受信され得るように透明な材料とし得る。図7および図8においては、励起源は存在せず、発光54は検出デバイス44を介してフォトダイオード50に導波されるためいずれの材料から製作されるものであってもよい。
【0144】
本明細書に開示する例は、ユニークで識別可能な信号を電気化学的に生成し、したがって励起源の必要性は排除される。これは、本明細書に開示するフローセル10、10'と一緒に使用し得る全体のシークエンシングシステムを簡素化する。
【0145】
本明細書を通して、「1つの例」、「他の例」、「例」などは、例と連結して記載する特定の要素(例えば、特徴、構造および/または特性)が本明細書に記載する少なくとも1つの例に含まれ、他の例においても存在するかもしれないことを意味する。また、いずれかの例について記載した要素は、別段明示しない限り、種々の例においていずれか適切な様式で結合し得ることは理解される。
【0146】
特許請求の範囲を含む本開示全体をとおして使用する「実質的に」および「約」なる語は、処理における変動に起因するような小さな変動を記載し、考慮するために使用している。例えば、それらは、±2%以下のような、±1%以下のような、±0.5%以下のような、±0.2%以下のような、±0.1%以下のような、±0.05%以下のような±5%以下をいうことができる。
【0147】
さらに、本明細書に提供される範囲は、明示的に引用しているかのように、記載した範囲および記載した範囲内のいずれかの数値または下位概念の範囲を含むことは理解される。例えば、約2mm~約300mmと表す範囲は、約2mm~約300mmの明示的に引用している限界のみならず、約5mm、222.5mm、275mmなど、ならびに約150mm~約180mmなどの下位概念の範囲も含むと解釈される。
【0148】
いくつかの例を詳細に説明してきたが、開示された例が修飾し得ることは理解される。したがって、上記の説明は、非限定的と見なされるべきである。
図1A-1C】
図2
図3-4A】
図4B
図4C
図5-6A】
図6B
図6C
図7
図8