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特許7558819保持装置、搬送装置、および保持装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】保持装置、搬送装置、および保持装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021004554
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109173
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴 岳人
(72)【発明者】
【氏名】平栗 一磨
(72)【発明者】
【氏名】大庭 典之
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/027251(WO,A1)
【文献】特開2010-162638(JP,A)
【文献】実開昭60-190592(JP,U)
【文献】特開平06-226671(JP,A)
【文献】特開2011-056595(JP,A)
【文献】米国特許第10556338(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象物を保持する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を開閉させる保持部材開閉部と、
前記保持部材が受ける荷重を検出する第1センサと、
前記保持部材の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の保持部材のうちの少なくとも一つは
前記保持部材の長さ方向に沿って変位可能に構成された爪部材と、
前記爪部材の変位量を検出する第2センサと、
前記爪部材が変位した量に応じた反力を前記爪部材に付与する反力付与部と、
を備え、
前記制御部は、前記爪部材の変位量に応じて、前記変位量が閾値以下である場合に前記第2センサの検出値に基づいて制御を行い、前記変位量が前記閾値を超える場合には前記第1センサの検出値に基づいて制御を行うように前記保持部材の動作の制御を変える、保持装置。
【請求項2】
保持対象物を保持する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を開閉させる保持部材開閉部と、
前記保持部材が受ける荷重を検出する第1センサと、
前記保持部材の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の保持部材のうちの少なくとも一つの保持部材は、
前記保持部材の長さ方向に沿って変位可能に構成された爪部材と、
前記爪部材の変位量を検出する第2センサと、
前記爪部材が変位した量に応じた反力を前記爪部材に付与する反力付与部と、
を備え、
前記制御部は、前記変位量が閾値以下である場合に前記第2センサの検出値に基づいて制御を行い、前記変位量が前記閾値を超える場合には前記第1センサの検出値に基づいて制御を行い、
反力付与部は、
前記変位量が前記閾値以下である場合に前記爪部材に第1反力を付与する第1反力付与部材と、
前記変位量が前記閾値を超える場合に前記爪部材に前記第1反力よりも大きい第2反力を付与する第2反力付与部材と、
を備える、保持装置。
【請求項3】
反力付与部は、
前記変位量が前記閾値以下である場合に前記爪部材に第1反力を付与する第1反力付与部材と、
前記変位量が前記閾値を超える場合に前記爪部材に前記第1反力よりも大きい第2反力を付与する第2反力付与部材と、
を備える、請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記複数の保持部材は、姿勢変更可能とされる、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の保持装置。
【請求項5】
前記爪部材は、
前記複数の保持部材の開閉方向の内側に配置され、保持対象物を挟持する内爪と、
前記内爪に対して前記開閉方向の外側に配置される外爪と、
を備える、請求項4に記載の保持装置。
【請求項6】
前記内爪は、前記開閉方向に弾性変形可能とされた板ばねで構成される、請求項5の保持装置。
【請求項7】
前記内爪は、初期状態において先端が前記開閉方向の内側に向く方向に反っている、請求項6に記載の保持装置。
【請求項8】
前記外爪は、任意の物体に接触した際に前記物体との摩擦を低減する摩擦低減部材を備える、請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の保持装置。
【請求項9】
前記外爪は、前記内爪に対して前記保持部材の長さ方向に変位可能に連結される、請求項8に記載の保持装置。
【請求項10】
前記摩擦低減部材は、ローラで構成される、請求項8または請求項9に記載の保持装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の保持装置と、
制御部によって制御されるように構成され、前記保持装置を移動させるアームと、
を備える搬送装置。
【請求項12】
保持対象物を保持する複数の保持部材と、
前記保持部材が物体に接触した際に前記保持部材が受ける荷重を検出する第1センサと、
を備え、
前記複数の保持部材のうちの少なくとも一つは、前記保持部材の長さ方向に伸縮可能とされるとともに、前記保持部材の先端の変位量を検出する第2センサを備える保持装置の制御方法であって、
前記保持部材の先端の変位量に応じて、前記保持部材の先端の変位量が閾値以下である場合に前記第2センサの検出値に基づいて前記保持部材の動作を制御し、前記変位量が前記閾値を超える場合には前記第1センサの検出値に基づいて前記保持部材の動作を制御するように前記保持部材の動作の制御を変える、保持装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保持装置、搬送装置、および保持装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
挟持ユニットを有するロボットハンドを備えたピッキングロボットが従来から知られている。この種の挟持ユニットは、複数の挟持爪によって物品を挟持する形態で保持する。挟持ユニットは、挟持爪が物体に接触したことを検出するセンサを備え、センサの検出値に基づいてロボットハンドの動作を制御する。この種のロボットハンドにおいて、繊細な接触検出を行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-226671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、挟持爪の繊細な動作を可能とする保持装置、搬送装置、および保持装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の保持装置は、複数の挟持爪と、挟持爪開閉部と、第1センサと、制御部と、を持つ。複数の挟持爪は、保持対象物を挟持する。挟持爪開閉部は、複数の挟持爪を開閉させる。第1センサは、挟持爪が受ける荷重を検出する。制御部は、挟持爪の動作を制御する。複数の挟持爪のうちの少なくとも一つの挟持爪は、爪部材と、第2センサと、反力付与部と、を持つ。爪部材は、挟持爪の長さ方向に沿って変位可能に構成される。第2センサは、爪部材の変位量を検出する。反力付与部は、爪部材が変位した量に応じた反力を爪部材に付与する。制御部は、変位量が閾値以下である場合に第2センサの検出値に基づいて制御を行い、変位量が閾値を超える場合には第1センサの検出値に基づいて制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態のピッキングロボットの模式図。
図2】実施形態のロボットハンドの側面図。
図3】実施形態のロボットハンドの正面図。
図4】挟持ユニットの要部の斜視図。
図5】挟持爪の正面図。
図6】挟持爪の内部構成を示す斜視図。
図7】爪部材の変位量と反力との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の保持装置、搬送装置および保持装置の制御方法を、図面を参照して説明する。
実施形態の保持装置および搬送装置の説明には、XYZ直交座標系を用いる。Z軸方向は鉛直方向に対応し、+Z方向を上方と定義し、-Z方向を下方と定義する。X軸方向およびY軸方向は、水平面内において互いに直交する。水平面内において、後述する挟持ユニット21の挟持爪29が開閉する方向をX軸方向と定義する。水平面内において、挟持爪29が開閉する方向と直交する方向をY軸方向と定義する。
【0008】
図1は、本実施形態のピッキングロボット10の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、ピッキングロボット10は、ロボットハンド11と、アーム12と、制御部13と、を備える。ロボットハンド11は、搬送対象となる保持対象物Pを保持する。アーム12は、ロボットハンド11を所定の場所に移動させる。制御部13は、ロボットハンド11およびアーム12の各部を制御する。ロボットハンド11の構成については、後で詳しく説明する。
本実施形態のピッキングロボット10は、特許請求の範囲の搬送装置に対応する。本実施形態のロボットハンド11は、特許請求の範囲の保持装置に対応する。
【0009】
以下、ピッキングロボット10の構成および動作の概要を説明する。
ピッキングロボット10は、例えば物流用のピッキングロボットとして用いられる。ピッキングロボット10は、搬送元S1に様々な状況に置かれた多様な保持対象物Pを保持し、搬送先S2に移動させる。なお、ピッキングロボット10の用途は、物流用に限定されず、産業用、その他の用途等にも広く適用可能である。本実施形態のピッキングロボット10は、保持対象物Pの搬送を主目的とした装置に限定されず、例えば製品の組立等、他の目的の一部として物品の搬送または移動を伴う装置も含む。
【0010】
搬送元S1は、例えば各種のコンベア、パレット、コンテナ等であるが、これらに限定されない。搬送元S1には、寸法や重量が異なる複数種の保持対象物Pが任意の姿勢でランダムな位置に置かれている。本実施形態では、搬送対象である保持対象物Pの寸法は、例えば数cm角程度から数十cm角程度まで様々である。保持対象物Pの重量は、例えば数十g程度から数kg程度まで様々である。なお、保持対象物Pの寸法および重量は、上記の例に限定されない。
【0011】
搬送先S2は、搬送元S1と同様、例えば各種のコンベア、パレット、コンテナ等であるが、これらに限定されない。なお、搬送元S1および搬送先S2のコンテナは、保持対象物Pを収容可能な部材、例えば箱状の部材を広く意味する。
【0012】
アーム12は、例えば6軸の垂直多関節アームから構成される。アーム12は、複数のアーム部材15と、複数の関節部16と、を備える。関節部16は、関節部16に連結されたアーム部材15同士を回転可能に連結する。なお、アーム12は、例えば4軸の垂直多関節アームから構成されていてもよいし、3軸の直交アームから構成されていてもよい。アーム12は、垂直多関節アームおよび直交アーム以外の構成によってロボットハンド11を所望の位置に移動させる機構であってもよい。図示を省略するが、アーム12は、各関節部16におけるアーム部材15のなす角度を検出するセンサ等を備える。
【0013】
図示を省略するが、ピッキングロボット10は、搬送元S1および搬送先S2の近傍に設置されたセンサをさらに備える。センサは、例えばRGB-Dセンサ、カメラ、接触センサ、距離センサ等で構成される。センサは、例えば搬送元S1に置かれた保持対象物Pに関する情報、搬送元S1または搬送先S2の状況に関する情報等を取得する。
【0014】
制御部13は、ピッキングロボット10の各部の管理および制御を行う。制御部13は、センサにより検出された種々の情報を取得し、取得した情報に基づいてロボットハンド11の位置および動作を制御する。制御部13は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えるマイクロコンピュータで構成される。制御部13は、例えばCPU等のプロセッサが、メモリまたは補助記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで実現される。制御部13の少なくとも一部は、LSI(LargeScale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0015】
以下、ロボットハンド11について説明する。
図2は、+X方向から見たロボットハンド11の側面図である。図3は、-Y方向から見たロボットハンド11の正面図である。本明細書において、各装置を+X方向から見た図を側面図と称し、各装置を-Y方向から見た図を正面図と称する。
【0016】
図2に示すように、ロボットハンド11は、ベースプレート20と、挟持ユニット21と、吸着ユニット22と、力覚センサ23と、を備える。
【0017】
ベースプレート20は、板状の部材であり、互いに対向する第1面20aと第2面20bとを有する。ベースプレート20は、挟持ユニット21と、吸着ユニット22と、を支持する。挟持ユニット21および吸着ユニット22は、ベースプレート20の第1面20aに対向し、Y軸方向に並んで配置されている。ベースプレート20は、挟持ユニット21および吸着ユニット22の一方の側のみに配置され、他方の側には配置されていない。すなわち、挟持ユニット21および吸着ユニット22は、ベースプレート20によって両側から挟み込まれる形態ではなく、ベースプレート20に対して片持ち構造によって支持されている。
【0018】
吸着ユニット22は、ベースプレート20の第1面20aに対向して配置されている。挟持ユニット21は、吸着ユニット22に対してベースプレート20が位置する側とは反対側に配置されている。すなわち、これら2つのユニット21,22は、ベースプレート20の第1面20a側から吸着ユニット22、挟持ユニット21の順に配置されている。ベースプレート20の一部、吸着ユニット22の一部、および挟持ユニット21の一部は、第1面20aの法線方向(Y軸方向)から見て、互いに重なり合う位置に配置されている。
【0019】
吸着ユニット22は、複数の吸着パッド32を有する。吸着ユニット22は、複数の吸着パッド32を用いて保持対象物Pを負圧吸着する形態で保持する。吸着ユニット22は、ベースプレート20に対して第1面20aに平行な面内(XZ面内)で回転可能に支持されている。
【0020】
挟持ユニット21は、複数の挟持爪29を有する。挟持ユニット21は、複数の挟持爪29を用いて保持対象物Pを側方から挟持する形態で保持する。挟持ユニット21は、ベースプレート20に対して第1面20aに平行な面内(XZ面内)で回転可能に支持されている。
【0021】
力覚センサ23は、ベースプレート20の上部に配置されている。力覚センサ23は、挟持爪29が床面、壁面、その他の障害物、保持対象物Pなどの任意の物体に接触した際に挟持爪29が受ける荷重を検出する。力覚センサ23の検出値は、制御部13に出力され、挟持ユニット21の各種動作の制御に用いられる。
本実施形態の力覚センサ23は、特許請求の範囲の第1センサに対応する。
【0022】
ロボットハンド11は、挟持ユニット21および吸着ユニット22のうち、いずれのユニット21,22を保持対象物Pの保持に使用するかを保持対象物Pに応じて切り替える機能、挟持ユニット21の姿勢を変更する機能、複数の吸着パッド32を含む吸着部31の姿勢を変更する機能、および挟持爪29を開閉する機能を有する。これらの機能を実現するため、ロボットハンド11は、第1モータ35、第2モータ36、第3モータ37、および第4モータ38を備える。
【0023】
第1モータ35の回転は、回転伝達機構(図示略)を介して挟持ユニット21に伝達される。挟持ユニット21は、第1モータ35によって回転する。図3に示すように、挟持ユニット21は、保持中心線H1が鉛直方向下方を向いた姿勢を0°として、保持中心線H1が例えば反時計回りに角度-θをなす方向を向くように、姿勢を変更することができる。挟持ユニット21は、図3とは逆に、保持中心線H1が時計回りに角度+θをなす方向を向くように姿勢を変更することもできる。このように、複数の挟持爪29は、姿勢の変更が可能とされている。なお、保持中心線H1は、挟持ユニット21の初期位置(姿勢変更前の位置)において、Z軸に平行な直線であり、かつ、2つの挟持爪29の開閉方向(X軸方向)の中心および1つの挟持爪29の幅方向(Y軸方向)の中心を通る直線と定義される。
【0024】
ユニット21,22を切り替える際には、挟持ユニット21と吸着ユニット22とは、一体となって第1モータ35によって回転する。これに対して、挟持ユニット21の姿勢を変更する際には、第1モータ35の回転とともに第2モータ36の回転によって、吸着ユニット22は、挟持ユニット21の姿勢変更に伴う吸着ユニット22の姿勢変化を相殺する向きに回転する。これにより、図3に示すように、挟持ユニット21の姿勢が変化しても、吸着ユニット22は鉛直方向上方を向いたまま姿勢が変化しない。
【0025】
第3モータ37の回転は、回転伝達機構(図示略)を介して複数の吸着パッド32を含む吸着部31に伝達される。これにより、吸着部31は、第3モータ37の回転に伴って回転し、姿勢が変更される。
【0026】
図3に示すように、挟持ユニット21は、複数の挟持爪29と、挟持爪開閉部26と、を備える。挟持爪開閉部26は、リンク部51と、第1ギア61と、第2ギア62と、第3ギア63と、を備える。
【0027】
本実施形態の挟持ユニット21は、リンク部51に連結された2つの挟持爪29を備える。なお、挟持爪29の数は、3つ以上であってもよく、特に限定されない。
【0028】
リンク部51は、2つの平行リンク52から構成されている。2つの挟持爪29の各々は、2つの平行リンク52の各々に連結されている。2つの挟持爪29は、リンク部51の動きによって、挟持ユニット21の高さ方向において上昇しつつ互いに間隔が開く方向に移動し、挟持ユニット21の高さ方向において下降しつつ互いに間隔が狭まる方向に移動することによって開閉する。
【0029】
第1ギア61は、第4モータ38に連結されている。第2ギア62は、第1ギア61と噛み合っている。第3ギア63は、第2ギア62と噛み合っている。第4モータ38の駆動によって第1ギア61が回転すると、第2ギア62と第3ギア63とがXZ面内において互いに逆方向に回転し、2つの平行リンク52が移動する。2つの挟持爪29は、第2ギア62と第3ギア63とがいずれの方向に回転するかによって、開動作または閉動作のいずれかを行う。
【0030】
以下、挟持爪29の構成について説明する。
図4は、挟持ユニット21の要部を示す斜視図である。図5は、挟持爪29の正面図である。図6は、挟持爪29の内部構成を示す斜視図である。図6においては、挟持爪29の内部構成を見やすくするため、外側を囲む部材の図示を適宜省略する。
【0031】
図4に示すように、2つの挟持爪29は、互いに同一の構成を有する。2つの挟持爪29は、後述する内爪79の第1面79a同士が互いに対向する向きに配置されている。
【0032】
図4図5および図6に示すように、挟持爪29は、ベース部材71と、リニアガイド72と、爪部材73と、反力付与部74と、変位センサ75と、透過式センサ76と、を備える。
本実施形態の変位センサ75は、特許請求の範囲の第2センサに対応する。
【0033】
図5に示すように、ベース部材71は、板状の部材で構成される。ベース部材71は、第1面71aと、第1面71aとは反対側の第2面71bと、を有する。ベース部材71の上端は、平行リンク52に連結されている。ベース部材71の第1面71aには、ベース部材71の長さ方向(Z軸方向)に沿って延びるリニアガイド72が設けられている。
【0034】
爪部材73は、スライドベース78と、内爪79と、外爪80と、を備える。爪部材73は、ベース部材71の第1面71aに対向して配置されている。爪部材73は、リニアガイド72を介してベース部材71に連結されている。爪部材73は、リニアガイド72に沿って平行移動することにより、挟持爪29の長さ方向(Z軸方向)に変位可能とされている。換言すると、挟持爪29は、爪部材73がリニアガイド72に沿って平行移動することにより、伸縮可能とされている。
【0035】
スライドベース78は、板状の部材で構成されている。スライドベース78は、第1面78aと、第1面78aとは反対側の第2面78bと、を有する。スライドベース78の第1面78aの上部には、内爪79が連結されている。スライドベース78の第2面78bの下部には、外爪80が連結されている。スライドベース78は、リニアガイド72を介してベース部材71に連結されている。
【0036】
内爪79は、爪部材において、挟持爪29の開閉方向(X軸方向)の内側(保持対象物Pが位置する側)に配置される。内爪79は、第1面79aと、第1面79aとは反対側の第2面79bと、を有する。内爪79は、第1面79aを保持対象物Pに接触させた状態で保持対象物Pを挟持する。内爪79は、板ばねで構成されている。板ばねは、挟持爪29の開閉方向(X軸方向)に弾性変形可能とされている。内爪79の下端は、スライドベース78の下端よりも下方に位置する。
【0037】
図5に2点鎖線で示すように、初期状態において、内爪79は、内爪79の先端が開閉方向の内側に向く方向に反っている。したがって、初期状態において、内爪79の第2面79bの下部は、スライドベース78の第1面78aから離れた位置にある。なお、ここで言う初期状態は、挟持爪29が保持対象物Pを保持していない状態を意味する。図5に実線で示すように、挟持爪29が保持対象物Pを保持した状態において、内爪79は、先端が開閉方向の外側に開く方向に弾性変形し、第2面79bがスライドベース78の第1面78aに接触する。
【0038】
内爪79の第2面79bに、ストッパ82が設けられている。ストッパ82は、ピン状の形状を有する。ストッパ82は、スライドベース78に設けられた孔を貫通し、頭部がスライドベース78の第2面78bに対向する。保持対象物Pを保持した状態を示す図5では、ストッパ82の頭部とスライドベース78との間には隙間がある。一方、保持対象物Pを保持していない初期状態では、ストッパ82の頭部がスライドベース78に接触する。内爪79は、初期状態においてストッパ82がスライドベース78に接触することにより、開閉方向の内側に向けて必要以上に反ることが抑止されている。
【0039】
外爪80は、爪部材73において、挟持爪29の開閉方向(X軸方向)の外側(保持対象物Pが位置する側とは反対側)に配置されている。外爪80は、第1面80aと、第1面80aとは反対側の第2面80bと、を有する。外爪80は、支持板83と、2つのローラ84と、を備える。外爪80の下端は、スライドベース78の下端よりも下方に位置する。
本実施形態のローラ84は、特許請求の範囲の摩擦低減部材に対応する。
【0040】
図4に示すように、支持板83の上部には、挟持爪29の長さ方向(Z軸方向)に延びる長孔83hが設けられている。支持板83は、長孔83hに挿通されたねじ85を介してスライドベース78に支持されている。この構成により、外爪80は、内爪79に対して挟持爪29の長さ方向に変位可能に連結される。図5に示すように、挟持爪29の長さ方向において、外爪80の下端(ローラ84の外周面)の位置が内爪79の下端の位置に一致する位置を外爪80の基準位置R0とする。外爪80の下端は、基準位置R0に対して上方位置R1にも変位可能であるし、下方位置R2にも変位可能である。なお、基準位置R0に対する外爪80の上方変位量および下方変位量は、適宜調整が可能である。
【0041】
ローラ84は、支持板83の下端に設けられている。ローラ84は、Y軸方向に沿う回転軸を中心として回転可能とされている。ローラ84は、挟持爪29が例えば床面等の任意の物体に接触した際に挟持爪29と物体との摩擦を低減する。本実施形態では、支持板83の幅方向(Y軸方向)に互いに間隔をおいて2つのローラ84が設けられている。なお、この構成に代えて、Y軸方向の幅が広い1つのローラが設けられてもよいし、ローラの数は特に限定されない。また、支持板83の下端にローラ84を設ける構成に代えて、例えば摩擦低減加工が施された他の部材を設けてもよい。
【0042】
図4に示すように、透過式センサ76は、スライドベース78の第1面78aに設けられている。一方の挟持爪29に設置された透過式センサ76は、内爪79に設けられた開口部79hを介して他方の挟持爪29に設けられた透過式センサ76と対向する。透過式センサ76は、可視光、赤外光等の光の透過または遮断を検出することによって、2つの挟持爪29の間に位置する物体の有無を検出する。
【0043】
図6に示すように、反力付与部74は、引張ばね87と、圧縮ばね88と、を備える。反力付与部74は、爪部材73が初期位置から変位した場合に爪部材73を初期位置に復帰させる反力を爪部材73に付与する。すなわち、反力付与部74は、爪部材73が変位した量に応じた反力を爪部材73に付与する。
本実施形態の引張ばね87は、特許請求の範囲の第1反力付与部材に対応する。本実施形態の圧縮ばね88は、特許請求の範囲の第2反力付与部材に対応する。
【0044】
図5および図6に示すように、スライドベース78の上部には、第1ばね固定部89が設けられている。ベース部材71の下部には、第2ばね固定部90が設けられている。引張ばね87は、第1ばね固定部89と第2ばね固定部90との間に配置されている。引張ばね87の上端は、第1ばね固定部89に連結されている。引張ばね87の下端は、第2ばね固定部90に連結されている。引張ばね87は、ベース部材71のY軸方向における両側方にそれぞれ設けられている。
【0045】
この構成によれば、爪部材73が例えば床面に接触し、初期位置から上方に変位した際に、引張ばね87が伸長される。このとき、引張ばね87が縮む方向の反力が生じ、引張ばね87は、爪部材73を下方に移動させて初期位置に復帰させる反力を爪部材73に付与する。
【0046】
図6に示すように、圧縮ばね88は、ベース部材71と爪部材73との間に配置されている。圧縮ばね88の下端は、爪部材73のスライドベース78に支持されている。圧縮ばね88の上端は、初期状態においてベース部材71とは接触しておらず、圧縮ばね88とベース部材71の頂板部71Aとの間には隙間Cが設けられている。隙間Cは、一例として5mmであるが、特に限定されず、適宜調整が可能である。
本実施形態の隙間Cは、特許請求の範囲における爪部材の変位量の閾値に対応する。
【0047】
この構成によれば、爪部材73が例えば床面に接触して初期位置から上方に変位する際に、爪部材73の変位量が5mmに達するまでの間は、引張ばね87が作用する一方、圧縮ばね88は、ベース部材71に接触しないため、作用が生じない。次に、爪部材73の変位量が5mmに達した時点で、圧縮ばね88がベース部材71に接触して圧縮ばね88が作用し始める。爪部材73の変位量が5mmを超えると、圧縮ばね88が縮んだ状態から伸びる方向の反力が作用する。このように、圧縮ばね88は、爪部材73を下方に移動させて初期位置に復帰させる反力を爪部材73に付与する。
【0048】
圧縮ばね88のばね定数は、引張ばね87のばね定数よりも大きい。具体的には、例えば圧縮ばね88を構成する線材は、引張ばね87を構成する線材よりも太い。そのため、圧縮ばね88が爪部材73に付与する反力は、引張ばね87が爪部材73に付与する反力よりも大きい。このように、反力付与部74は、爪部材73の変位量が5mm以下である場合に爪部材73に第1反力を付与する引張ばね87と、爪部材73の変位量が5mmを超える場合に爪部材73に第1反力よりも大きい第2反力を付与する圧縮ばね88と、を備える。
【0049】
図7は、爪部材73の変位量と反力との関係の一例を示す図である。図7において、横軸は変位量(mm)であり、縦軸は反力(N)である。
上述したように、爪部材73の変位量が5mm以下の場合、引張ばね87が反力を生成し、爪部材73の変位量が5mmを超えた場合、圧縮ばね88が反力を生成する。また、圧縮ばね88による反力は、引張ばね87による反力よりも大きい。
【0050】
そのため、図7に示すように、変位量が0~5mmの範囲では、変位量の増加に伴って反力が直線的に増加する。変位量が5mmのとき、反力は例えば2Nとなる。また、変位量が5~20mmの範囲においても、変位量の増加に伴って反力が直線的に増加する。ただし、変位量が5~20mmの範囲における直線の傾きは、変位量が0~5mmの範囲における直線の傾きよりも大きい。変位量が20mmのとき、反力は例えば40Nとなる。なお、これらの数値は一例であり、特に限定されない。図7における変位量に対応する反力の数値は、ばねの太さ(ばね定数)に応じて決まる。そのため、変位量の閾値は、ばねの太さ(ばね定数)の組み合わせを変えることによって、適宜変更が可能である。
【0051】
図6に示すように、変位センサ75は、ベース部材71の上方に配置されている。変位センサ75は、挟持爪29が任意の物体に接触して爪部材73が変位した際に爪部材73の変位量を検出する。変位センサ75が爪部材73の変位量を検出する仕組みとしては、爪部材73が物体に当接して逃げる(変位する)ことで、爪部材73と変位センサ75との距離が変化するため、変位センサ75はこの距離の変化量によって爪部材73の変位量を検知する。変位センサ75の検出値は、制御部13に出力され、挟持爪29の動作の制御に用いられる。変位センサ75としては、レーザ変位センサ、磁気式変位センサ、静電容量式変位センサなど、各種の変位センサが用いられる。
【0052】
制御部13は、変位センサ75からの検出信号を受け、変位センサ75および力覚センサ23のいずれの検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御するかを判断する。制御部13は、爪部材73の変位量が閾値の5mm以下である場合、変位センサ75の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御する。制御部13は、爪部材73の変位量が閾値の5mmを超えた場合、力覚センサ23の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御する。
【0053】
すなわち、本実施形態のロボットハンド11の制御方法は、挟持爪29の先端の変位量が閾値以下である場合に変位センサ75の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御し、挟持爪29の先端の変位量が閾値を超える場合には力覚センサ23の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御する。
【0054】
以下、本実施形態のロボットハンド11およびピッキングロボット10の効果について説明する。
この種のロボットハンドにおいて、物品または障害物に対する挟持爪の接触状態を検出する目的で、力覚センサが広く用いられる。一般的な力覚センサは、荷重を受けた際にセンサ内に設けられた構造体に生じる歪みを種々の手法で検出する。一方、挟持爪の動作を精密に行うため、挟持爪の接触状態を繊細に検出したいという要求がある。この場合、繊細な接触検出を行う目的で、低域の検出範囲を有する力覚センサを用いることが考えられる。ところが、この場合、例えば誤動作等によって挟持爪が床面に強く衝突した際、力覚センサ内の構造体に過大な荷重が掛かり、力覚センサが損傷するおそれがある。
【0055】
この問題に対し、本実施形態のロボットハンド11においては、挟持爪29の先端部を構成する爪部材73が挟持爪29の長さ方向に変位可能とされ、制御部13は、爪部材73の変位量が閾値以下である場合に変位センサ75の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御し、爪部材73の変位量が閾値を超える場合には力覚センサ23の検出値に基づいて挟持爪29の動作を制御する。
【0056】
このように、挟持爪29の接触状態の検出に際し、爪部材73が受ける荷重が小さく、爪部材73の変位量が小さい領域は変位センサ75が担当し、爪部材73が受ける荷重が大きく、爪部材73の変位量が大きい領域は力覚センサ23が担当する。したがって、検出範囲が低域の変位センサ75と検出範囲が高域の力覚センサ23とを組み合わせて使用することにより、センサの損傷を生じることなく、挟持爪29の繊細な接触検出を行うことができる。その結果、挟持爪29の精密な動作を高精度に制御することができる。また、爪部材73が物体に接触した際の衝撃が爪部材73の変位によって緩和される。これにより、保持対象物Pまたは挟持爪29の損傷を抑えることができる。また、爪部材73の変位量に基づいて変位センサ75から力覚センサ23に切り替えることにより、保持対象物や周囲の物体と爪部材73の干渉(接触、衝突)を防止する効果が得られる。
【0057】
本実施形態のロボットハンド11において、反力付与部74は、爪部材73の変位量が閾値以下である場合に爪部材73に第1反力を付与する引張ばね87と、爪部材73の変位量が閾値を超える場合に爪部材73に第1反力よりも大きい第2反力を付与する圧縮ばね88と、を備える。
【0058】
この構成によれば、反力付与部74は、爪部材73の変位量が相対的に小さいときに、爪部材73に相対的に小さい反力を付与し、爪部材73の変位量が相対的に大きいときには、爪部材73に相対的に大きい反力を付与する。このように、反力付与部74において2種類のばねを使い分けるため、爪部材73の変位量に応じて適切な反力が付与され、挟持爪29の繊細な動作を可能とすることができる。換言すると、より小さく細い(ばね定数がより小さい)方の引張ばね87の変位量を変位センサ75で測定し、変位量が閾値を超えると、より大きく太い(ばね定数がより大きい)方の圧縮ばね88に切り替わり、力覚センサ23の測定に切り替わる。圧縮ばね88の役割は、爪部材73の変位によって生じる、より大きくなった(閾値を超えた)力(荷重)を力覚センサ23に伝えることである。したがって、より大きく太い圧縮ばね88を設けることによって、力覚センサ23に力(荷重)を伝えることができる。
【0059】
本実施形態のロボットハンド11において、複数の挟持爪29は、姿勢変更が可能とされている。
【0060】
例えば図1に示すように、搬送元S1の保持対象物P1が平板部を有し、平板部が水平方向を向く姿勢で置かれていたとする。この場合、挟持爪29が鉛直方向を向いた姿勢のままで上下動するだけでは、挟持爪29が保持対象物Pを保持することが難しい。その場合、本実施形態では、挟持爪29の姿勢が変更可能とされている。そのため、挟持爪29を鉛直方向から傾けた姿勢で平板部をすくい上げるようにすれば、挟持爪29が保持対象物P1を保持することができる。このように、本実施形態のロボットハンド11は、多様な姿勢でランダムに置かれた保持対象物Pに対応が可能である。
【0061】
本実施形態のロボットハンド11において、爪部材73は、挟持爪29の開閉方向の内側に配置され、保持対象物Pを挟持する内爪79と、内爪79に対して開閉方向の外側に配置される外爪80と、を備える。
【0062】
この構成によれば、挟持爪29を鉛直方向から傾けた姿勢とした際に、保持対象物Pを挟持する内爪79と、内爪79よりも先に床面に接する可能性が高い外爪80と、で機能を分担することができる。これにより、挟持爪29の保持性能を高めることができる。
【0063】
具体的には、本実施形態の場合、内爪79は、挟持爪29の開閉方向に弾性変形可能とされた板ばねで構成される。
【0064】
この構成によれば、内爪79が保持対象物Pを挟持した際、内爪79は、開閉方向の外側に開く方向に弾性変形する。この際、内爪79は、初期状態に弾性復帰しようとする反力によって保持対象物Pを安定して挟持することができる。
【0065】
さらに本実施形態の場合、内爪79を構成する板ばねは、初期状態において先端が開閉方向の内側に向く方向に反っている。
【0066】
この構成によれば、内爪79の先端が保持対象物Pの表面に引っ掛かりやすいため、保持対象物Pを確実に保持することができる。この場合、内爪79は、保持対象物Pを例えばピンセットのように繊細に挟持できるため、床面に置かれた小型、軽量の保持対象物Pの挟持に好適である。
【0067】
また、保持対象物Pを繊細に挟持する他の方法として、挟持爪の内面にゴムシート等の弾性体を貼り付けることも考えられる。ところが、その場合、ゴムシートの表面に粘着性があるため、表面がビニール製の保持対象物、サイズの小さい保持対象物等を挟持した際に、ゴムシート表面に保持対象物が付着して剥がれない現象が発生することがある。これに対して、本実施形態では、内爪79に板ばねを用いることで上記の現象を抑えることができる。
【0068】
さらに本実施形態の場合、内爪79がストッパ82を有し、初期状態において内爪79が必要以上に内側に反ることが抑止されている。
この構成によれば、内爪79と外爪80との間隔が必要以上に開くことがなく、内爪79と外爪80との隙間に保持対象物P等の物体が挟まることが抑止される。
【0069】
本実施形態のロボットハンド11において、外爪80は、床面、保持対象物等の物体に接触した際に物体との摩擦を低減するローラ84を備える。
【0070】
この構成によれば、挟持爪29を鉛直方向から傾けた姿勢とし、外爪80が内爪79よりも先に床面等の物体に接した際に、ローラ84によって外爪80と物体との間の摩擦が低減される。これにより、爪部材73は、ベース部材71に対して滑らかに変位できる。また、例えば外爪80と床面との間の摩擦が大きく、外爪80が床面に引っ掛かった場合に、接触状態の誤検出によって挟持爪29の誤動作が生じるおそれがある。これに対し、上記の構成によれば、ローラ84によって外爪80と床面との間の摩擦が小さくなり、外爪80が床面上を滑るように移動する。これにより、挟持爪29の誤動作が生じるおそれが少なく、挟持爪29は保持対象物Pを円滑に保持することができる。
【0071】
さらに本実施形態の場合、外爪80は、内爪79に対して挟持爪29の長さ方向に変位可能に連結されている。
【0072】
この構成によれば、内爪79の先端に対する外爪80の先端の位置を調整することができる。これにより、ローラ84による摩擦低減効果を適切に調整することができる。
【0073】
本実施形態のピッキングロボット10は、上記の効果を奏するロボットハンド11を備える。
この構成によれば、ピッキングロボット10は、例えば搬送元S1の箱の中に様々な姿勢や状況で置かれた多様な保持対象物Pを保持し、搬送先S2に効率良く搬送することができる。
【0074】
上記実施形態のロボットハンド11は、2つの挟持爪29の双方がベース部材71に対して変位可能とされた爪部材73を有する。この構成に代えて、2つの挟持爪のうち、一方の挟持爪のみがベース部材に対して変位可能とされた爪部材を有していてもよい。例えば挟持爪を鉛直方向から傾ける向きが常に決まっている用途に用いるロボットハンドであれば、複数の挟持爪を鉛直方向から傾けた際に下側に位置し、床面に接する挟持爪のみを上記の構成としてもよい。すなわち、実施形態のロボットハンドは、複数の挟持爪のうち、少なくとも一つの挟持爪がベース部材に対して変位可能とされた爪部材を有していてもよい。
【0075】
なお、爪部材は、先端に向けて先細りとなるテーパー状の構造を有していてもよい。この構造によれば、保持対象物として例えば複数の円筒物がある場合などに、隣り合う円筒物の隙間に爪部材が進入しやすくなる。より具体的には、上記実施形態の爪部材73で言えば、爪部材73の厚み方向(図面のX軸方向)、幅方向(図面のY軸方向)の少なくとも一方でテーパー構造とすればよい。この場合、内爪79に対してこの種のテーパー構造を形成すればよく、外爪80に対しては、爪部材73全体、内爪79の先端部のY方向の幅を超えない程度に幅を狭くすることが望ましく、特にテーパーを形成しなくてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、挟持および吸着の2つの保持機能を組み合わせたロボットハンド11、いわゆるハイブリッドハンド方式のロボットハンドの一例を挙げた。この構成に代えて、例えば挟持ユニットのみを備えるロボットハンドに本発明を適用してもよい。
【0077】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、保持対象物Pを挟持する複数の挟持爪29と、複数の挟持爪29を開閉させる挟持爪開閉部26と、挟持爪29が物体に接触した際に挟持爪29が受ける荷重を検出する力覚センサ23と、挟持爪29の動作を制御する制御部13と、を持つ。複数の挟持爪29のうちの少なくとも一つの挟持爪29は、ベース部材71と、ベース部材71に対して挟持爪29の長さ方向に変位可能に連結された爪部材73と、爪部材73の変位量を検出する変位センサ75と、爪部材73が初期位置から変位した場合に爪部材73を初期位置に復帰させる反力を爪部材73に付与する反力付与部74と、を持つ。制御部13は、変位量が閾値以下である場合に変位センサ75の検出値に基づいて制御を行い、変位量が閾値を超える場合には力覚センサ23の検出値に基づいて制御を行う。これにより、センサが損傷するおそれを低減でき、挟持爪29の繊細な動作を可能とするロボットハンド11を実現することができる。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態およびその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
10…ピッキングロボット(搬送装置)、11…ロボットハンド(保持装置)、12…アーム、13…制御部、23…力覚センサ(第1センサ)、26…挟持爪開閉部、29…挟持爪、71…ベース部材、73…爪部材、74…反力付与部、75…変位センサ(第2センサ)、79…内爪、80…外爪、84…ローラ(摩擦低減部材)、87…引張ばね(第1反力付与部材)、88…圧縮ばね(第2反力付与部材)、P,P1…保持対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7