IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-駅務システム 図1
  • 特許-駅務システム 図2
  • 特許-駅務システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】駅務システム
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20240924BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20240924BHJP
【FI】
G07B15/00 C
G07B15/00 501
G06Q50/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005838
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110428
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 知明
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154678(JP,A)
【文献】特開2004-185210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 11/00-17/04
G06Q 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録された情報を読み取り、読み取った前記情報に基づいて前記媒体の改札を行って利用者の通過を許可もしくは禁止する改札機と、
前記媒体から読み取られた前記情報を前記改札機から取得して前記利用者の通過可否を判定し、その判定結果に応じて前記媒体の改札内容を示す明細データを生成する処理を並行してそれぞれ行う複数の第1の装置と、を備え
前記第1の装置は、前記判定結果を前記改札機に通知し、
前記改札機は、複数の前記第1の装置から通知された複数の前記判定結果の中から最先に通知された前記判定結果に対応する改札内容を示す記録情報を前記媒体に書き込み、書き込み完了を複数の前記第1の装置に通知し、前記利用者の通過を許可し、最先の前記判定結果の受信後に受信した前記利用者の同一通過可否判定における前記判定結果を破棄し、破棄した前記判定結果に対応する改札内容を示す記録情報の前記媒体への書き込みを行わない
駅務システム。
【請求項2】
複数の前記第1の装置から前記明細データをそれぞれ取得し、取得した前記明細データの中から最先に取得したものを選択する第2の装置と、
前記第2の装置が選択した最先の前記明細データを取得し、取得した前記明細データを保存する第3の装置と、を備える
請求項に記載の駅務システム。
【請求項3】
複数の前記第1の装置は、前記改札機において最先に通知された前記判定結果に対応する改札内容を示す記録情報が前記媒体に書き込まれたことに応じて、前記明細データを前記第2の装置に付与する
請求項に記載の駅務システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駅務システム、駅務装置、駅務システムの制御方法、および駅務システムの制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの交通機関では、IC(Integrated Circuit)カードにより改札を行う自動改札機(以下、単に改札機という)が広く利用されている。旅客などの利用者が改札機を通る際、ICカードを改札機の読取部にかざすと、該ICカードに記録された情報(以下、記録情報という)が読み取られ、読み取られた記録情報に基づいて改札機内の制御部が利用者の通過可否(入場可否もしくは出場可否)、つまりICカードの改札可否を判定する。
【0003】
改札可能と判定した場合、制御部は、その処理履歴として、例えば利用日、利用者ID、カード発行ID、利用駅、利用機器ID、利用開始時間、利用終了時間、SF(Stored Fare)残額、利用区分、ステータスなどの明細データ、換言すればICカードの改札内容を示す明細データ(以下、一件明細という)を作成する。制御部は、作成した一件明細を改札機の記憶部(ディスク装置)に保存するとともに、一件明細に対応する記録情報をICカードに書き込む。その後、改札機が開扉されることで、利用者が改札機を通過可能となる。そして、制御部は、かかる一件明細を上位サーバ(例えば各駅に設置された駅務サーバ)に送付し、さらに複数の駅務サーバを管理する管理サーバに改札処理の完了を通知する。このような一連の改札処理は、改札機、駅務サーバ、管理サーバなどにより構成される駅務システムによって行われる。
【0004】
駅務システムにおいて、通過可否の判定を改札機の制御部で行う場合、改札機の処理負荷が高くなるとともに、改札機の構造が複雑化しやすい。このため、改札機の処理負荷を軽減するとともに構造をより簡素化させるための一案として、例えば通過可否の判定および一件明細の保存を改札機ではなく、上位サーバで行うことが挙げられる。しかしながら、かかる判定を上位サーバで行ったとしても、サーバのディスク装置への一件明細の保存速度は判定処理速度よりも遅く、一連の処理の高速化を図るためには、この点を考慮する必要がある。例えば、ディスク装置への一件明細の保存を待たずに、一件明細に対応する記録情報をICカードに書き込むことで処理の高速化は可能である。
【0005】
その一方で、例えばディスク装置への一件明細の保存中に上位サーバで障害が生じた場合など、ICカードに書き込まれた一件明細が適切にバックアップされないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-8588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本実施形態が解決しようとする課題は、改札機の処理負荷の軽減と構造の簡略化、改札処理の高速化を図りつつ、一件明細を適切にバックアップ可能な駅務システム、駅務装置、駅務システムの制御方法、および駅務システムの制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の駅務システムは、改札機と複数の第1の装置とを備える。前記改札機は、媒体に記録された情報を読み取り、読み取った前記情報に基づいて前記媒体の改札を行って利用者の通過を許可もしくは禁止する。複数の前記第1の装置は、前記媒体から読み取られた前記情報を前記改札機から取得して前記利用者の通過可否を判定し、その判定結果に応じて前記媒体の改札内容を示す明細データを生成する処理を並行してそれぞれ行う。前記第1の装置は、前記判定結果を前記改札機に通知する。前記改札機は、複数の前記第1の装置から通知された複数の前記判定結果の中から最先に通知された前記判定結果に対応する改札内容を示す記録情報を前記媒体に書き込み、書き込み完了を複数の前記第1の装置に通知し、前記利用者の通過を許可する。その一方で、前記改札機は、最先の前記判定結果の受信後に受信した前記利用者の同一通過可否判定における前記判定結果を破棄し、破棄した前記判定結果に対応する改札内容を示す記録情報の前記媒体への書き込みを行わない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る駅務システムの構成を概略的に示すブロック図。
図2】同実施形態に係る駅務システムで用いられる明細データ(一件明細)の項目例および該項目値の一例を示す図。
図3】同実施形態に係る駅務システムにおける通過可否判定処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駅務システム1の構成を概略的に示すブロック図である。駅務システム1は、利用者の駅構内への入出場処理、換言すれば利用者が所持する媒体を用いた改札処理を行う。図1に示すように、駅務システム1は、自動改札機2、第1の装置4、第2の装置6、第3の装置8を備えて構成されている。第1の装置4、第2の装置6、および第3の装置8は、自動改札機2とは離れた遠隔地(リモートエリア)に配置されている。これらの各装置4,6,8は、互いに別々のリモートエリアに配置されていてもよいし、同一のローカルエリアに配置されていてもよい。自動改札機2、および第1、第2、第3の装置4,6,8は、駅務システム1を構成する駅務装置にそれぞれ相当する。第1の装置4、第2の装置6、および第3の装置8は、自動改札機2の上位の駅務装置3に相当し、自動改札機2とともに改札処理を行う。
【0011】
自動改札機(以下、単に改札機という)2は、鉄道駅の改札口などに設置されて改札処理を行い、利用者の通過(入出場)を許可または禁止する改札処理を行う装置である。その際、改札機2は、利用者が所持する媒体Cに記録された情報を読み取り、読み取った情報に基づいて媒体Cの改札を行う。また、改札機2は、利用者が通行可能な所定の通路を規定し、媒体Cの改札結果に応じて利用者に対する該通路の通過を許可または禁止する。利用者は、鉄道を利用する旅客(乗降客)、駅構内の入出場者、駅務員、保守作業員などである。
【0012】
図1に示すように、改札機2は、媒体制御部21、主制御部22、通信制御部23、扉開閉制御部24を有している。
媒体制御部21は、利用者が所持する媒体Cに記録された情報(以下、記録情報という)を読み取る。本実施形態において、媒体制御部21は媒体Cとの無線通信により記録情報を読み取る。
媒体Cは、例えばIC(Integrated Circuit)チップが埋め込まれたICカードであってもよいし、スマートフォンなどの電子機器に設けられた機能として実現されるものであってもよい。媒体Cは、例えば制御回路、メモリ、媒体制御部21との間で無線通信を行う送受信部、アンテナなどを備えている。記録情報は、例えば利用日、利用者の識別情報(利用者ID)、媒体Cに固有の識別情報(カード発行ID)、利用駅、利用機器ID、利用開始時間、利用終了時間、SF残額、利用区分、有効期間、有効区間、ステータスなどを組み合わせた各種情報である。記録情報は、媒体Cのメモリに記録されている。
【0013】
また、媒体制御部21は、後述する第1の装置4で判定された利用者の通過可否(媒体Cの改札可否)の判定結果に応じて、媒体Cの改札内容を示す記録情報(後述する明細データ)を該媒体Cに書き込む。例えば、媒体Cに対して入場時の改札処理が行われ、利用者が改札機2を通過することが認められた場合、媒体制御部21は、入場日、利用者ID、カード発行ID、入場駅、入場機器ID、入場開始時間、入場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む入場情報を媒体Cに書き込む。また、媒体Cに対して出場時の改札処理が行われ、利用者が改札機2を通過することが認められた場合、媒体制御部21は、出場日、利用者ID、カード発行ID、出場駅、出場機器ID、出場開始時間、出場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む出場情報を媒体Cに書き込む。媒体制御部21は、これらの記録情報(後述する明細データ)を媒体Cに書き込むと、その完了を後述する判定装置4の判定処理部41に通知する。
【0014】
媒体制御部21は、利用者が所持する媒体Cと通信可能なエリアを有している。かかるエリア内に媒体Cがかざされると、媒体制御部21は、記録情報の読み取りもしくは書き込みのコマンドを無線通信により媒体Cに送信し、媒体Cに対して記録情報の読み取りもしくは書き込みを行う。
【0015】
主制御部22は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発性メモリ)、入出力回路、タイマなどを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、主制御部22は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて媒体制御部21、通信制御部23、扉開閉制御部24などの動作を制御する。かかる動作制御により、改札機2における改札処理が実行される。
【0016】
通信制御部23は、第1の装置4、具体的には後述する通信制御部42との間で改札処理に必要な各種データの送受信を行い、データ送受信の通知や受信したデータを主制御部22に付与する。通信制御部23は、例えば主制御部22によって動作制御された媒体制御部21の動作に応じて、前記改札処理に必要な各種データの送受信や通知を行う。通信制御部23と第1の装置4の通信制御部42とは、有線で接続されている。ただし、両者は、一部もしくはすべてが無線で接続されていてもよい。
【0017】
扉開閉制御部24は、主制御部22による改札処理の処理結果、端的には後述する第1の装置4での改札可否判定(通過可否判定)の結果の通知を受けて、改札機2の扉(図示省略)を適宜開閉させる。改札機2の扉は、例えば改札機2の筐体(図示省略)に対して回動可能に、利用者が改札機2を通過する方向の上流側(入口側)および下流側(出口側)にそれぞれ設けられている。扉開閉制御部24は、利用者の通過を許可する場合、改札機2を開扉し、利用者の通過を禁止する場合、改札機2を閉扉する。扉を開閉させる際、扉開閉制御部24は、改札機2の扉を開閉するための図示しない開閉機構、例えばモータやソレノイドなどのアクチュエータを動作させる。
【0018】
第1の装置4、第2の装置6、および第3の装置8は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発性メモリ)、入出力回路、タイマなどを含んでそれぞれ構成されている。これらの各装置4,6,8は、例えば、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUでそれぞれ所定の演算処理を実行し、所望の機能を実現する。
【0019】
第1の装置4は、改札機2の媒体制御部21で媒体Cから読み取られた記録情報を取得して、利用者が改札機2を通過することを認めるか否か(利用者の通過可否)を判定する装置(以下、判定装置4という)である。改札機2に対する利用者の通過可否の判定にあたって、判定装置4は、例えば記録情報に記録された所定の項目が所定の条件(以下、通過許可条件という)を満たすか否かを判定する。換言すれば、かかる利用者の通過可否判定は、改札機2において媒体Cの改札が可能であるか否か(改札可否)の判定に相当する。
【0020】
判定装置4は、利用者の通過可否、つまり媒体Cの改札可否の判定処理を行うべく、判定処理部41と通信制御部42を有している。
判定処理部41は、利用者の通過可否の判定を実行し、その判定結果に応じて利用者の通過可否、つまり媒体Cの改札内容を示す明細データを生成する。明細データは、直近の通過可否の判定に対応する媒体Cの利用明細を示すデータ(一件明細)である。図2には、明細データDの項目例および該項目値の一例を示す。図2に示す例では、明細データDの具体的な項目として、利用日、利用者ID、カード発行ID、利用駅、利用機器ID、利用開始時間、利用終了時間、SF残額、利用区分、ステータスが適用されている。
【0021】
例えば、入場時の改札処理(通過可否判定)を行った場合、判定処理部41は、入場日、利用者ID、カード発行ID、入場駅、入場機器ID、入場開始時間、入場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む入場情報を明細データとして生成する。かかる入場情報は、入場時の改札内容を示すデータである。このうち、入場日、入場駅、入場機器ID、入場開始時間、入場終了時間は、利用日、利用駅、利用機器ID、利用開始時間、利用終了時間にそれぞれ相当する。また、出場時の改札処理(通過可否判定)を行った場合、判定処理部41は、出場日、利用者ID、カード発行ID、出場駅、出場機器ID、出場開始時間、出場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む出場情報を明細データとして生成する。かかる出場情報は、出場時の改札内容を示すデータである。このうち、出場日、出場駅、出場機器ID、出場開始時間、出場終了時間は、利用日、利用駅、利用機器ID、利用開始時間、利用終了時間にそれぞれ相当する。入出場の場合、例えば利用区分には改札、ステータスには通過可否の判定結果(例えばOKもしくはNGなど)を示す値が入る。
【0022】
改札機2における利用者の通過可否の判定にあたって、判定処理部41は、通過許可条件の成否を判定する。例えば、記録情報として入場駅から出場駅までの運賃に充当可能なSF残額が記録されている場合、入場駅から出場駅までの区間が記録情報の有効区間内に含まれるとともに、利用が有効期間内である場合などは、利用者の通過が許される場合に相当する。したがってこの場合、判定処理部41は、通過許可条件が成立すると判定する。一方、運賃に充当可能なSF残額が記録されていない場合、有効区間外や有効期限外である場合などは、利用者の通過が許されない場合に相当する。したがってこの場合、判定処理部41は、通過許可条件が成立しないと判定する。
【0023】
通信制御部42は、改札機2の通信制御部23および後述する第2の装置6の通信制御部62との間で改札処理に必要な各種データの送受信を行う。具体的には、媒体制御部21で媒体Cから記録情報が読み取られると、通信制御部42は、通信制御部23を介して該記録情報を受信し、判定処理部41に付与する。また、判定処理部41で利用者の通過可否の判定処理がなされると、通信制御部42は、通信制御部23を介して判定結果、つまり通過許可もしくは通過不可のいずれかの通知を媒体制御部21に送信する。さらに、判定処理部41で明細データが生成されると、通信制御部42は、通信制御部62を介して該明細データを後述する第2の装置6の最先明細データ選択部61に送信する。
【0024】
本実施形態において、駅務システム1は、複数の判定装置4を備えている。図1には、二台の判定装置4a,4bを備えた駅務システム1の構成を一例として示す。ただし、判定装置4は三台以上であってもよい。二台の判定装置4a,4bは、判定処理部41a,41bと通信制御部42a,42bをそれぞれ有し、互いに独立して利用者の通過可否を判定し、その判定結果に応じて利用者の通過可否に対応する(媒体Cの改札可否を示す)明細データを生成する。すなわち、二台の判定装置4a,4bは、利用者の通過可否を判定して明細データを生成する処理を並行してそれぞれ行う。このように、二台の判定装置4a,4bは、主従関係がなく、それぞれ同一の通過可否判定を並行して実行可能とされている。ただし、いずれか一方をメイン、他方をサブとして通過可否判定を実行させてもよい。
【0025】
したがって、判定処理部41a,41bは、互いに独立して利用者の通過可否の判定を実行し、その判定結果に応じて利用者の通過可否に対応する(媒体Cの改札可否を示す)明細データをそれぞれ生成する。その際、媒体制御部21で媒体Cから記録情報が読み取られると、通信制御部42a,42bは、互いに独立して通信制御部23を介して該記録情報を取得し、判定処理部41a,41bにそれぞれ付与する。そして、判定処理部41a,41bで明細データがそれぞれ生成されると、通信制御部42a,42bは、通信制御部23を介して判定結果を媒体制御部21にそれぞれ送信するとともに、通信制御部62を介して該明細データを最先明細データ選択部61にそれぞれ送信する。
【0026】
第2の装置6は、媒体Cに対する改札処理(利用者の通過可否判定処理)における明細データを複数の判定装置4a,4bからそれぞれ取得し、取得した明細データの中から最先に取得されたものを選択する装置である(以下、バックアップ装置という)。最先の明細データは、媒体Cに対する同一改札処理において、複数の判定装置4a,4bからバックアップ装置6に送信された明細データ、ここでは二つの明細データのうち、バックアップ装置6に送信されたタイミングが最も早い明細データ(以下、最先明細データという)である。
【0027】
バックアップ装置6は、媒体Cに対する同一の改札処理における最先明細データの選択を行うべく、最先明細データ選択部61と通信制御部62を有している。
最先明細データ選択部61は、判定処理部41a,41bが生成した明細データを通信制御部62を介して取得し、取得した明細データの中から最先明細データを選択する。また、最先明細データ選択部61は、同一改札処理で取得した最先明細データ以外の媒体Cの明細データを破棄する。
【0028】
例えば、判定処理部41bよりも先に判定処理部41aから明細データを取得した場合、最先明細データ選択部61は、判定処理部41aから取得した明細データを最先明細データとして選択する。一方、最先明細データ選択部61は、同一改札処理における媒体Cの明細データ(最先明細データ)が既に判定処理部41aから取得されているものとして、判定処理部41bから取得した媒体Cの明細データを破棄する。逆に、判定処理部41aよりも先に判定処理部41bから媒体Cの明細データを取得した場合、最先明細データ選択部61は、判定処理部41bから取得した該明細データを最先明細データとして選択し、判定処理部41aから取得した媒体Cの明細データを破棄する。
【0029】
通信制御部62は、判定装置4a,4bの通信制御部42a,42bおよび後述する第3の装置8の通信制御部82との間で改札処理に必要な各種データの送受信を行う。具体的には、判定処理部41a,41bで明細データが生成されると、通信制御部62は、通信制御部42を介して該明細データを受信し、最先明細データ選択部61に付与する。また、最先明細データ選択部61で最先明細データが選択されると、通信制御部62は、通信制御部82を介して該最先明細データを後述する明細データ保存部81に送信する。
【0030】
第3の装置8は、バックアップ装置6から最先明細データを取得し、取得した最先明細データを保存して管理する装置である(以下、管理装置という)。管理装置8は、最先明細データの保存処理を行うべく、明細データ保存部81と通信制御部82を有している。
明細データ保存部81は、最先明細データを保存する磁気ディスク装置や不揮発性メモリ装置、入出力インターフェースなどを含んで構成されている。ここでの最先明細データは、改札処理がなされた媒体Cの直近の明細データであり、媒体Cに直近で書き込まれた記録情報に対応する明細データである。したがって、明細データ保存部81に最先明細データが保存されることで、改札処理で媒体Cに書き込まれた記録情報に対応する明細データがバックアップされる。すなわち、最先明細データは、媒体Cに書き込まれた記録情報に対応する明細データと一意に紐付けられて、明細データ保存部81に保存される。
【0031】
通信制御部82は、バックアップ装置6の通信制御部62との間で改札処理に必要な各種データの送受信を行う。具体的には、最先明細データ選択部61で最先明細データが選択されると、通信制御部82は、通信制御部62を介して該最先明細データを受信し、明細データ保存部81に付与する。
【0032】
ここで、このような駅務システム1で行われる改札処理、端的には利用者の通過可否判定処理について、図3を参照して説明する。図3は、駅務システム1における通過可否判定処理の一例を示すフローチャートである。かかる通過可否判定処理は、所定のプログラム(駅務システムの制御プログラム)によって駅務システム1で実行される。
【0033】
通過可否判定処理は、媒体Cを所持した利用者が改札機2で規定される所定の通路に進入することで開始される。
【0034】
利用者が改札機2を通る際、所持する媒体Cを媒体制御部21にかざすと、媒体制御部21は、媒体Cから記録情報を読み取る(S101)。
【0035】
媒体Cから記録情報を読み取ると、媒体制御部21は、通信制御部23,42を介して該記録情報を判定装置4の判定処理部41に送信する(S102)。本実施形態では、二つの判定処理部41a,41bに同一の記録情報がそれぞれ送信される。
【0036】
記録情報が送信されると、判定処理部41は、利用者の通過可否を判定する(S103)。すなわち、媒体制御部21からの記録情報の送信は、判定処理部41での通過可否判定の開始要求(トリガー)に相当する。通過可否の判定にあたって、判定処理部41は、例えば通過許可条件の成否を判定する。上述したとおり、通過許可条件は、利用者が改札機2を通過することが許されるか否かの判定条件である。例えば、判定処理部41は、入場時であれば初乗り運賃に、出場時であれば入場駅から出場駅までの運賃(乗車運賃)に充当可能なSF残額が記録情報として記録されている場合、通過許可可能条件が成立すると判定する。これに対し、判定処理部41は、入場時であれば初乗り運賃に、出場時であれば乗車運賃に充当可能なSF残額が記録情報として記録されていない場合、通過許可条件が成立しないと判定する。
【0037】
本実施形態では、このような通過可否の判定が二つの判定処理部41a,41bで並行して実行される。記録情報が同一であるため、二つの判定処理部41a,41bでは同一の判定結果が得られる。
【0038】
通過許可条件が成立する場合、つまり媒体Cが改札可能で利用者が改札機2を通過することが認められる場合、判定処理部41は、通過許可通知を行う(S104)。すなわち、判定処理部41a,41bは、通信制御部42a,42bおよび通信制御部23を介して、利用者が通過可能(媒体Cの改札が可能)である旨の判定結果を示す信号を媒体制御部21にそれぞれ送信する。
【0039】
また、通過許可条件が成立する場合、上述した通過許可通知を行うとともに、判定処理部41は、明細データを生成する(S105)。例えば、入場時の通過可否判定(改札可否判定)を行った場合、判定処理部41は、入場日、利用者ID、カード発行ID、入場駅、入場機器ID、入場開始時間、入場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む入場情報を明細データとして生成する。また、出場時の通過可否判定(改札可否判定)を行った場合、判定処理部41は、出場日、利用者ID、カード発行ID、出場駅、出場機器ID、出場開始時間、出場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む出場情報を明細データとして生成する。本実施形態では、同一の改札内容を示す明細データが二つの判定処理部41a,41bで並行してそれぞれ生成される。なお、通過許可通知(S104)と明細データ生成(S105)とは、先後が逆であってもよいし、同時であってもよい。
【0040】
通過可能である旨の判定結果が送信されると、媒体制御部21は、該判定結果に対応する記録情報、具体的には改札内容を示す記録情報を媒体Cに書き込む(S106)。ここでの記録情報は、次のような明細データに相当する。例えば、媒体Cに対する入場時の改札処理(通過可否判定)の結果が送信された場合、媒体制御部21は、入場日、利用者ID、カード発行ID、入場駅、入場機器ID、入場開始時間、入場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む入場情報を媒体Cに書き込む。また、媒体Cに対する出場時の改札処理(改札可否判定)の結果が送信された場合、媒体制御部21は、出場日、利用者ID、カード発行ID、出場駅、出場機器ID、出場開始時間、出場終了時間、SF残額、利用区分、ステータスを含む出場情報を媒体Cに書き込む。入場時および出場時のいずれにおいても、媒体制御部21は、送信された判定結果に応じたステータス、つまり改札可能であることを示す値(例えばOK)を媒体Cに書き込む。なお、これらの媒体Cへの書き込み(以下で説明する場合も含む)は、主制御部22が媒体制御部21の動作を制御することにより行われる。
【0041】
ここでは、二つの判定処理部41a,41bから通過可能(改札可能)である旨の判定結果が媒体制御部21にそれぞれ通知される。媒体制御部21は、通知された二つの判定結果のうち、最先の判定結果の受信をトリガーとして、該判定結果に対応する改札内容を示す記録情報を媒体Cに書き込む。一方、媒体制御部21は、その後に受信した同一の改札処理(通過可否判定)における判定結果を破棄し、かかる判定結果に対応する記録情報の書き込みを行わない。
【0042】
例えば、判定処理部41bよりも先に判定処理部41aから判定結果を受信した場合、媒体制御部21は、判定処理部41aから受信した判定結果をトリガーとして媒体Cへの記録情報の書き込みを行う。一方、媒体制御部21は、同一媒体Cの直近の判定結果を既に判定処理部41aから受信しているものとして、判定処理部41bから受信した判定結果を破棄する。逆に、判定処理部41aよりも先に判定処理部41bから判定結果を受信した場合、媒体制御部21は、判定処理部41bから受信した判定結果をトリガーとして媒体Cへの記録情報の書き込みを行い、判定処理部41aから受信した判定結果を破棄する。
【0043】
記録情報を媒体Cに書き込むと、媒体制御部21は、通信制御部23,42を介して該記録情報の書き込み完了を判定装置4の判定処理部41に通知する(S107)。本実施形態では、同一の該記録情報に対する書込み完了通知が二つの判定処理部41a,41bにそれぞれ送信される。
【0044】
媒体制御部21が書き込み完了を通知すると、主制御部22は、扉開閉制御部24を動作させ、改札機2を開扉させる(S108)。これにより、改札機2によって規定された所定の通路が開放され、利用者が該通路を通過することが可能となる。なお、ここでは、本改札処理の開始時において改札機2が閉扉状態(例えば上流側が開扉、下流側が閉扉した状態)である場合を想定して、改札機2を開扉させている。ただし、本改札処理の開始時において改札機2が開扉状態(例えば上流側、下流側がいずれも開扉した状態)である場合、ここではその状態を維持すればよく、改札機2の開扉動作は不要となる。
【0045】
また、書き込み完了通知が送信されると、判定処理部41は、通信制御部42,62を介して、生成した明細データをバックアップ装置6の最先明細データ選択部61に付与する(S109)。本実施形態では、通信制御部42a,42bおよび通信制御部62を介して、同一の明細データが二つの判定処理部41a,41bからそれぞれ最先明細データ選択部61に送信される。なお、改札機2の開扉(S108)と明細データの送信(S109)とは、先後が逆であってもよいし、同時であってもよい。
【0046】
明細データが送信されると、最先明細データ選択部61は、送信された明細データの中から最先明細データを選択する(S110)。最先明細データ選択部61は、送信された複数(本実施形態では二つ)の明細データのうち、先に受信した媒体Cの明細データを最先明細データとして選択する。一方、最先明細データ選択部61は、その後に受信した同一改札処理における媒体Cの明細データを破棄する。
【0047】
例えば、判定処理部41bよりも先に判定処理部41aから明細データを受信した場合、最先明細データ選択部61は、判定処理部41aから受信した明細データを最先明細データとして選択する。一方、最先明細データ選択部61は、判定処理部41aから既に受信した媒体Cの明細データを最先明細データとして選択済みであるものとして、同一の改札処理において判定処理部41bから受信した媒体Cの明細データを破棄する。逆に、判定処理部41aよりも先に判定処理部41bから媒体Cの明細データを受信した場合、最先明細データ選択部61は、判定処理部41bから受信した該明細データを最先明細データとして選択し、判定処理部41aから受信した媒体Cの明細データを破棄する。
【0048】
最先明細データを選択すると、最先明細データ選択部61は、通信制御部62,82を介して最先明細データを管理装置8の明細データ保存部81に送信する(S111)。
【0049】
最先明細データが送信されると、明細データ保存部81は、該最先明細データ、換言すれば本改札処理で生成された明細データを保存する(S112)。これにより、本改札処理で媒体Cに書き込まれた記録情報に対応する最先明細データが磁気ディスク装置や不揮発性メモリ装置などにバックアップされる。すなわち、最先明細データは、媒体Cに書き込まれた記録情報に対応する明細データと一意に紐付けられて保存される。
【0050】
なお、S103において通過許可条件が成立しない場合、つまり媒体Cが改札不可で利用者が改札機2を通過することが認められない場合、判定処理部41は、通過不可通知を行う(S113)。すなわち、判定処理部41a,41bは、通信制御部42a,42bおよび通信制御部23を介して、通過不可である旨の判定結果を媒体制御部21にそれぞれ送信する。
【0051】
通過不可通知が送信されると、扉開閉制御部24は、改札機2を閉扉させる(S114)。これにより、改札機2によって規定された所定の通路が閉鎖され、利用者が該通路を通過することが不可能となる。
【0052】
改札機2が閉扉状態とされた場合、改札機2によって規定された所定の通路から利用者が離脱すると、駅務システム1は、媒体Cに対する一連の改札処理、つまり媒体Cを所持する利用者の通過可否判定処理を再び実行可能な状態に遷移する(S115:Yes)。媒体Cに対する改札処理が再び実行される場合、駅務システム1は、S101から順次、かかる改札処理を実行する。この場合、扉開閉制御部24は、改札機2を開扉状態(例えば上流側、下流側がいずれも開扉した状態)としてもよい。利用者の離脱有無は、例えば改札機2に設けられたセンサの検知結果などに応じて主制御部22が判定する。
【0053】
一方、かかる通路から利用者が離脱しない場合、駅務システム1は、媒体Cに対する一連の改札処理、つまり媒体Cを所持する利用者の通過可否判定処理を終了する(S115:No)。この場合、利用者が改札機2を通過することが認められない状態を解消するべく、別途の対処がなされる。例えば、所定の運賃に充当可能なSF残額となるように、利用者が媒体Cへのチャージ(入金)などを行う。またこの場合、利用者がかかる通路から離脱することで、扉開閉制御部24は改札機2を開扉状態(例えば上流側、下流側がいずれも開扉した状態)とする。
【0054】
改札機2が開扉状態もしくは閉扉状態とされることで、駅務システム1における媒体Cに対する一連の改札処理、つまり媒体Cを所持する利用者の通過可否判定処理が終了する。そして、駅務システム1は、別の媒体に対する新たな改札処理、つまり別の媒体を所持する新たな利用者の通過可否判定処理を開始可能な状態に遷移する。
【0055】
このように、本実施形態によれば、通過可否の判定は改札機2ではなく、判定装置4で実行される。したがって、かかる判定のために必要なリソースを改札機2から判定装置4に移行させることができ、改札機2の構造を簡略化できるとともに、改札機2の処理負荷を軽減できる。また、同一の改札処理における明細データ、つまり通過可否判定処理における一件明細の媒体Cへの書き込みは、かかる明細データ(一件明細)の管理装置8でのバックアップとは独立して実行される。したがって、管理装置8でのバックアップを待つことなく、明細データ(一件明細)の媒体Cへの書き込みを行うことができる。このため、一連の改札処理の高速化を図ることが可能となる。
【0056】
また、通過可否判定処理は、複数(一例として二台)の判定装置4で実行される。したがって、一つの判定装置4に不具合が生じた場合であっても、別の判定装置4で通過可否判定処理を継続させることができる。このため、通過可否判定を改札機2ではなく判定装置4で実行したとしても、通過判定処理における明細データ(一件明細)を生成することができ、生成した一件明細を管理装置8で適切にバックアップできる。これにより、一件明細に対応して媒体Cに書き込まれた記録情報と管理装置8でバックアップされた一件明細とを一意に紐付けることができる。
【0057】
すなわち、本実施形態によれば、改札機2の処理負荷の軽減と構造の簡略化、改札処理、具体的には通過可否判定時の一件明細の生成および保存のために必要な処理の高速化を図りつつ、一件明細を適切にバックアップでき、その消失を回避可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
例えば、図3に示すステップS113において、通過不可通知が送信された際、媒体制御部21は、送信された判定結果に応じたステータス、つまり通過不可であることを示す値(例えばNG)を含む記録情報(入場情報もしくは出場情報)を媒体Cに書き込んでもよい。その際、通過可能な場合と同様に、媒体制御部21には、判定処理部41a,41bからそれぞれ通過不可である旨の判定結果が送信される形態とすることができる。例えば、媒体制御部21は、送信された二つの判定結果のうち、最先の判定結果の受信をトリガーとして、改札内容を示す記録情報を媒体Cに書き込めばよい。一方、媒体制御部21は、その後に受信した同一の改札処理(通過可否判定)における判定結果を破棄し、かかる判定結果に対応する改札内容を示す記録情報の書き込みを省略すればよい。
【0060】
その後、図3のS106およびS107と同様の制御を実行し、次いでS114で改札機2を閉扉させ、さらにS109~S112と同様の制御を実行した後、利用者の離脱を判定(S115)してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…駅務システム、2…自動改札機(改札機)、3…駅務装置、4,4a,4b…第1の装置(判定装置)、6…第2の装置(バックアップ装置)、8…第3の装置(管理装置)、21…媒体制御部、22…主制御部、23…通信制御部、24…扉開閉制御部、41,41a,41b…判定処理部、42,42a,42b…通信制御部、61…最先明細データ選択部、62…通信制御部、81…明細データ保存部、82…通信制御部、C…媒体、D…明細データ(一件明細)。
図1
図2
図3