(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光電変換装置、光電変換システム、および移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240924BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240924BHJP
H04N 25/705 20230101ALI20240924BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240924BHJP
H04N 25/77 20230101ALI20240924BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20240924BHJP
【FI】
H01L27/146 F
H04N25/70
H04N25/705
H04N25/76
H04N25/77
H04N25/773
(21)【出願番号】P 2021008440
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大田 康晴
(72)【発明者】
【氏名】笹子 知弥
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-123762(JP,A)
【文献】特開2021-005654(JP,A)
【文献】特開2014-082420(JP,A)
【文献】特開2019-007877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0243594(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0359620(US,A1)
【文献】国際公開第2020/262132(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0306314(US,A1)
【文献】国際公開第2014/061610(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02908351(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372539(US,A1)
【文献】特開2010-273095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0273895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
H04N 25/705
H04N 25/76
H04N 25/77
H04N 25/773
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、
前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層に、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層の中の1つの配線層であって、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、
それぞれに前記第1配線が配され
た第1配線層および第2配線層を含み、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、
平面視において、前記第1配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端と、前記第1方向と交差する第2方向の両端とが接続される
形状を備えるように構成されて
おり、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線は前記形状に含まれ、前記領域の前記第1方向の両端に接続されておらず、前記領域の前記第2方向の両端に接続されておらず、
平面視において、前記第2配線層の前記第1配線は前記形状に含まれ、前記領域の前記第2方向の両端に接続されていないことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
平面視において、前記第2配線層の前記第1配線は
前記形状に含まれ、前記領域の前記第1方向の両端に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、
前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層に、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層の中の1つの配線層であって、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、
それぞれに前記第1配線が配された第1配線層と第2配線層と第3配線層とを含み、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、
平面視において、前記第1配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端と、前記第1方向と交差する第2方向の両端とが接続される形状を備えるように構成されており、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線は、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の前記第1方向の両端に接続されており、
平面視において、
前記第2配線層の前記第1配線は、前記領域の前記第2方向の両端に接続されておらず、前記第3配線層の前記第1配線は、前記領域の前記第2方向の両端に接続されておらず、前記第2配線層と前記第3配線層の組み合わせにより、前記第1配線は、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の前記第2方向の両端に接続されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、
前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層に、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層の中の1つの配線層であって、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、
それぞれに前記第1配線が配された第1配線層と第2配線層と第3配線層とを含み、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線、前記第2配線層の前記第1配線、及び前記第3配線層の前記第1配線のそれぞれは、少なくとも前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端に接続されておらず、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線、前記第2配線層の前記第1配線、及び前記第3配線層の前記第1配線の少なくとも2つを組み合わせることにより、少なくとも前記領域の第1方向の両端に接続されるように構成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、
前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、
前記複数の画素回路のそれぞれは、カウンタを有しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層に、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層の中の1つの配線層であって、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、
それぞれに前記第1配線が配された第1配線層および第2配線層を含み、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、
平面視において、前記第1配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端と、前記第1方向と交差する第2方向の両端とが接続される形状を備えるように構成されており、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線と、前記第2配線層の前記第1配線とのそれぞれは前記形状に含まれ、少なくとも前記領域の前記第1方向の両端に接続されておらず、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線及び前記第2配線層の前記第1配線との組み合わせにより、少なくとも前記領域の前記第1方向の両端に接続されており、
前記複数の画素回路は、隣り合って配置された第1の画素回路と第2の画素回路と、を有し、
前記第1の画素回路の前記第1配線と、前記第2の画素回路の前記第1配線とは、ミラー対称に配置されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、
前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、
前記複数の画素回路のそれぞれは、カウンタを有しており、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層に、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配されており、
前記第2配線構造の前記複数の配線層は、
前記複数の配線層の中の1つの配線層であって、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、
それぞれに前記第1配線が配された第1配線層および第2配線層を含み、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、
平面視において、前記第1配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域において、第1方向における一方の端から他方の端まで繋がり、前記第1方向と交差する第2方向における一方の端から他方の端まで繋がる形状を備えるように構成されており、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線と、前記第2配線層の前記第1配線とのそれぞれは前記形状に含まれ、少なくとも前記領域の前記第1方向における一方の端から他方の端まで繋がっておらず、
平面視において、前記第1配線層の前記第1配線及び前記第2配線層の前記第1配線との組み合わせにより、少なくとも前記領域の前記第1方向における一方の端から他方の端まで繋がっており、
前記複数の画素回路は、隣り合って配置された第1の画素回路と第2の画素回路と、を有し、
前記第1の画素回路の前記第1配線と、前記第2の画素回路の前記第1配線とは、ミラー対称に配置されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
前記第1配線が供給する電圧は、前記アバランシェフォトダイオードに印加されることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1配線が供給する電源電圧とは異なる値の電源電圧を供給する第2配線が配され、かつ、前記複数の配線層の中で前記第2配線の占有面積が最も大きい配線層と、
前記第2配線が配され、かつ、前記複数の配線層の中で前記第2配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、前記配線層群と、を有し、
平面視において、前記第2配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端と、前記第1方向と交差する第2方向の両端とが接続されるように構成されていることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2配線が供給する電圧は、前記複数の画素回路に印加されることを特徴とする請求項
8に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記複数の画素回路のそれぞれが、ミラー対称配置となっていることを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記複数の画素回路は、第1画素の画素回路と第2画素の画素回路を有し、
前記第1画素の画素回路は、第1カウンタ回路を有し、
前記第2画素の画素回路は、第2カウンタ回路を有し、
前記第1画素と前記第2画素は隣り合って配されており、
前記第1カウンタ回路と前記第2カウンタ回路は、隣り合うように配されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記複数の画素回路は、第1画素の画素回路と第2画素の画素回路を有し、
前記第1画素の画素回路は、第1クエンチ素子を有し、
前記第1画素と前記第2画素は隣り合って配されており、
前記第1クエンチ素子は、前記第1画素の画素回路が設けられている領域の角部に配されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記複数の画素回路は、第1画素の画素回路と第2画素の画素回路を有し、
前記第1画素の画素回路は、第1クエンチ素子を有し、
前記第2画素の画素回路は、第2クエンチ素子を有し、
前記第1画素と前記第2画素は隣り合って配されており、
前記第1クエンチ素子と前記第2クエンチ素子は、隣り合うように配されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記複数の画素回路は、第1画素の画素回路と第2画素の画素回路を有し、
前記第1画素の画素回路は、第1波形整形回路を有し、
前記第2画素の画素回路は、第2波形整形回路を有し、
前記第1画素と前記第2画素は隣り合って配されており、
前記第1波形整形回路と前記第2波形整形回路は、隣り合うように配されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記第1画素の画素回路は、第1クエンチ素子を有し、
前記第1波形整形回路と前記第1クエンチ素子は、隣り合うように配されていることを特徴とする請求項14に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第1画素の画素回路と前記第2画素の画素回路が、ミラー対称配置となっていることを特徴とする請求項
11から
15のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記第1配線構造の接合面に配された第1接合部と、前記第2配線構造の接合面に配された第2接合部と、が接合された複数の金属接合部を有することを特徴とする請求項1
から16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記複数の金属接合部のうちの一部には、前記電源電圧が供給されることを特徴とする請求項
17に記載の光電変換装置。
【請求項19】
請求項1から
18のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置が出力する信号を処理する信号処理部と、を有することを特徴とする光電変換システム。
【請求項20】
請求項1から
18のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく測距情報から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、を有する移動体であって、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、光電変換システム、および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のアバランシェフォトダイオード(以下、APD:Avalanche Photo Diode)を含む画素が平面的に2次元アレイ状に配置されるように構成された画素アレイを含む光電変換装置が知られている。各画素においては、PN接合ダイオードに対して、逆バイアスの電圧を印加することで、単一光子に起因した光電荷がアバランシェ増倍を起こす。APDの動作には少なくとも2つのモードがある。逆バイアスの電圧が供給される場合において、アノードおよびカソードの電位差が降伏電圧より大きいな電位差で動作させるガイガーモードと、アノードおよびカソードの電位差が降伏電圧近傍、またはそれ以下の電圧差で動作させるリニアモードである。このうち、ガイガーモードで動作させるAPDをSPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ぶ。
【0003】
特許文献1には、第1基板と第2基板を積層したSPADセンサであって、第1基板にAPDを有し、第2基板にAPDからの信号を処理する信号処理回路が設けられた構成が開示されている。また、特許文献1には、光子の入射個数をカウントするカウンタ回路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
APDセンサは、CMOSセンサと比較して、画素の回路数が多く、回路への電源配線や、回路への入出力配線が多く、配線密度が高くなる。しかしながら、特許文献1では、APDセンサで配線密度が高くなった場合に生じる課題を解決する配線の構成が提案されていない。
【0006】
そこで、本発明は、APDセンサで配線密度が高くなった場合に生じる課題を解決する配線の構成を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光電変換装置は、複数の光電変換部を備えた第1半導体層と、少なくとも1つの配線層を備えた第1配線構造を有する第1基板と、前記複数の光電変換部のそれぞれに対応して、それぞれ設けられた複数の画素回路を備えた第2半導体層と、複数の配線層を備えた第2配線構造を有する第2基板と、を有し、前記複数の光電変換部のそれぞれは、アバランシェフォトダイオードを有しており、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に、前記第1配線構造と前記第2配線構造が設けられるように、前記第1基板と前記第2基板が積層されており、前記第2配線構造の前記複数の配線層は、前記複数の画素回路に電源電圧を供給する第1配線が配され、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と、前記第1配線が配され、かつ、前記複数の配線層の中で前記第1配線の占有面積が最も大きい配線層と前記第2半導体層との間に設けられた、配線層群と、を有し、平面視において、前記第1配線は、前記配線層群の組み合わせにより、前記複数の画素回路のそれぞれが設けられている領域の第1方向の両端と、前記第1方向と交差する第2方向の両端とが接続されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、APDセンサで配線密度が高くなった場合に生じる課題を解決する配線の構成を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】第1基板および第2基板が有する機能ブロック図
【
図5】APDの動作と出力信号との関係を模式的に示した図
【
図7】実施形態1の電源電圧の配線レイアウトを示した図
【
図8】実施形態1の電源電圧の配線レイアウトを示した図
【
図9】実施形態1の電源電圧の配線レイアウトを示した図
【
図10】実施形態2の電源電圧の配線レイアウトを示した図
【
図11】実施形態2の電源電圧の配線レイアウトを示した図
【
図12】実施形態3の画素回路のレイアウトを示した図
【
図13】実施形態3の画素回路のレイアウトを示した図
【
図14】実施形態4の画素回路のレイアウトを示した図
【
図15】実施形態4の画素回路のレイアウトを示した図
【
図16】実施形態5の光電変換装置の構成と配線レイアウトを示した図
【
図17】実施形態6の光電変換装置の構成と配線レイアウトを示した図
【
図18】実施形態7の光電変換システムの機能ブロック図
【
図21】実施形態10の光電変換システムおよび移動体の図
【
図22】実施形態11の内視鏡手術の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。以下の説明において、同一の構成については同一の番号を付して説明を省略することがある。
【0011】
以下に示す形態は、特にアバランシェダイオードに入射するフォトンの数を数えるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を備える光電変換装置に関する。光電変換装置は、少なくともアバランシェダイオードを備えていればよく、ガイガーモードだけでなく、リニアモードで動作させてもよい。
【0012】
以下の説明において、アバランシェダイオードのアノードを固定電位とし、カソード側から信号を取り出している。したがって、信号電荷と同じ導電型の電荷を多数キャリアとする第1導電型の半導体領域とはN型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはP型半導体領域である。なお、アバランシェダイオードのカソードを固定電位とし、アノード側から信号を取り出す場合でも本発明は成立する。この場合は、信号電荷と同じ導電型の電荷を多数キャリアとする第1導電型の半導体領域はP型半導体領域であり、第2導電型の半導体領域とはN型半導体領域である。以下では、アバランシェダイオードの一方のノードを固定電位とする場合について説明するが、両方のノードの電位が変動してもよい。
【0013】
本明細書において、平面視とは、半導体層の光入射面に対して垂直な方向から視ることである。また、断面視とは、半導体層の光入射面と垂直な方向における面をいう。なお、微視的に見て半導体層の光入射面が粗面である場合は、巨視的に見たときの半導体層の光入射面を基準として平面視を定義する。
【0014】
また、本明細書において、便宜上、半導体層に最も近い配線層を第1配線層とし、半導体層から遠ざかる方向の順序で第2配線層、第3配線層等と説明することがある。しかし、特許請求の範囲においては、特許請求の範囲に記載の文言で特定されていない限り、「第1配線層」は半導体層に最も近い配線層ではないし、序数は配線層の順番を意味しない。
【0015】
(実施形態1)
(光電変換装置の全体ブロック図)
図1は、光電変換装置100の全体像を示す図である。第1基板11は、センサチップともいい、光電変換部を有する画素が二次元状に配列されている画素領域12が設けられている。また、画素領域12と光電変換装置100のチップ端部の間には、周辺領域13が設けられている。第2基板21は、画素回路チップともいい、光電変換部からの信号を処理する信号処理回路領域22が設けられている。第1基板11と、第2基板21が積層されることにより、光電変換装置100が構成されている。なお、不図示であるが、第3基板を第1基板と第2基板の積層体にさらに積層することも可能である。この場合、第3基板には、第2基板21から出力された信号を処理する信号処理回路を設けることが可能である。例えば、信号処理回路として、メモリに格納されているプログラムを実行することで、機械学習によって作成された学習済みモデルを用いて各種処理を実行する処理回路を設けてもよい。学習済みモデルは、ディープニューラルネットワーク(DNN)を利用した機械学習によって作成される。この信号処理回路は、画素領域から出力した信号を用いて、学習済みモデルに基づいた演算処理を実行する。演算結果には、学習済みモデルを用いた演算処理を実行することで得られた画像データや、その画像データから得られる各種情報(メタデータ)が含まれる。
【0016】
(第1基板の構成図)
図2は、第1基板11の構成図である。第1基板には、アバランシェフォトダイオード(以下、APD)を含む光電変換部102を有する画素101が二次元状に配された画素領域12が設けられている。画素領域12における画素101の配列は1次元状に配されていてもよい。光電変換部102の詳細については、後述する。
【0017】
画素101は、典型的には、画像を形成するための画素であるが、TOF(Time of Flight)に用いる場合には、必ずしも画像を形成しなくてもよい。すなわち、画素101は、光が到達した時刻と光量を測定するための素子であってもよい。
【0018】
(第2基板の構成図)
図3(A)は、第2基板21の構成図である。第2基板21は、光電変換部102で光電変換された信号を処理する信号処理部103が複数設けられている。複数の信号処理部103は、2次元状に配された信号処理回路領域22に設けられている。信号処理部103は各画素に対応して配される画素回路でもある。信号処理部103は、カウンタやメモリなどが設けられており、メモリにはデジタル値が保持される。信号処理部103から出力される信号は、垂直走査回路110と、水平走査回路111を用いて、信号線113に伝達される。
【0019】
垂直走査回路110は、制御パルス生成部115から供給された制御パルスを受け、各画素に制御パルスを供給する。垂直走査回路110にはシフトレジスタやアドレスデコーダといった論理回路が用いられる。
【0020】
水平走査回路111は、デジタル信号が保持された各画素のメモリから信号を読み出すために、各列を順次選択する制御パルスを信号処理部103に入力する。
【0021】
信号線113には、選択されている列について、垂直走査回路110により選択された画素の信号処理部103から信号が出力される。
【0022】
信号線113に伝達された信号は、読み出し回路112および出力回路114から外部に出力される。信号線113は上下方向に延在するように配されている。垂直走査回路110、水平走査回路111、読み出し回路112は、制御パルス生成部115からのパルスによって制御される。
【0023】
図3(B)は、第2基板21の別形態である。
図3(A)では、信号線が上下方向(列方向)に延在するように配されていたが、
図3(B)では、信号線が左右方向(水平方向)に延在するように配されている点が異なる。このため、
図3(A)では、信号処理回路領域22の下部に読み出し回路112が設けられているのに対して、
図3(B)では、信号処理回路領域22の右に読み出し回路112が設けられている。
【0024】
図2および
図3では、1つの画素101に対応して1つの信号処理部103が設けられていた。しかし、信号処理部103は、例えば、複数の画素101によって1つの信号処理部103が共有され、順次信号処理が行われてもよい。これにより、信号処理回路領域22の省スペース化を図ることができる。
【0025】
(光電変換装置の機能ブロック図)
図4は、
図2および
図3で説明したブロック図をより詳細に説明する図である。
【0026】
図4において、APD3100は、第1基板11に設けられており、その他の部材は、第2基板21に設けられていることを示している。
【0027】
APD3100は、光が入射すると、光電変換により電荷対が生成される。APD3100のアノードには、電圧VPDL(第1電圧)が供給される。また、APD3100のカソードには、アノードに供給される電圧VPDLよりも高い電圧VDD(第2電圧)が供給される。
【0028】
アノードとカソードには、APD3100がアバランシェ増倍動作をするような逆バイアス電圧が供給される。このような電圧を供給した状態とすることで、入射光によって生じた電荷がアバランシェ増倍を起こし、アバランシェ電流が発生する。
【0029】
逆バイアスの電圧が供給される場合において、アノードおよびカソードの電位差が降伏電圧より大きい電位差で動作させるモードをガイガーモードという。また、アノードおよびカソードの電位差が降伏電圧近傍、もしくはそれ以下の電圧差で動作させるモードをリニアモードという。このうち、ガイガーモードで動作させるAPDをSPADと呼ぶ。例えば、電圧VPDL(第1電圧)は、-30V、電圧VDD(第2電圧)は、1Vである。この場合、例えば、電圧VSS(第3電圧)である0Vと電圧VPDL(第1電圧)の電位差は、電圧VSS(第3電圧)と電圧VH(第2電圧)の電位差よりも大きい。そのため、電圧VPDL(第1電圧)を高電圧と表現することもある。
【0030】
クエンチ素子3010は、電圧VDDを供給する電源とAPD3100に接続される。クエンチ素子3010は、APD3100で生じたアバランシェ電流の変化を電圧信号に置き換える機能を有する。クエンチ素子3010は、アバランシェ増倍による信号増倍時に負荷回路(クエンチ素子)として機能し、APD3100に供給する電圧を抑制して、アバランシェ増倍を抑制する働きを持つ(クエンチ動作)。
【0031】
画素回路3000は、クエンチ素子3010の他に、波形整形回路3020、処理回路3030、カウンタ回路3040、出力回路3050を有する。
【0032】
波形整形回路3020は、光子検出時に得られるAPD3100のカソードの電位変化を整形して、パルス信号を出力する。波形整形回路3020としては、例えば、インバータ回路が用いられる。波形整形回路212は、1つのインバータを用いてもよいし、複数のインバータを直列接続した回路を用いてもよいし、波形整形効果があるその他の回路を用いてもよい。
【0033】
処理回路3030は、任意の信号処理を行う回路である。例えば、処理回路3030は、波形整形回路3020から出力する信号をカウンタ回路3040に入力するか否かを選択する回路である。より具体的には、露光期間では、処理回路3030は、波形整形回路3020から出力されたパルス信号をカウンタ回路3040に入力するように構成される。他方、非露光期間では、処理回路3030は、波形整形回路3020からパルス信号が出力したとしても、カウンタ回路3040には入力しないように構成される。ところで、露光期間と非露光期間を設定するためには、後述するように、クエンチ素子3010の制御により、これらの期間の切り替えが可能である。上記した処理回路3030を設ければ、クエンチ素子3010の制御によらず、露光期間と非露光期間の制御が可能である。
【0034】
カウンタ回路3040は、波形整形回路3020から出力されたパルス信号をカウントおよびカウント値を保持する。駆動線(不図示)を介して制御パルスpRESが供給されたとき、カウンタ回路3040に保持された信号がリセットされる。画素毎に設けるカウンタ回路3040は、回路規模が大きくなる。そのため、第3基板を有する構成とし、カウンタ回路3040を第2基板21に設けるだけでなく、カウンタ回路3040の一部を第3基板にも設けてもよい。
【0035】
図4では、クエンチ素子3010がMOSトランジスタで構成されており、このMOSトランジスタのゲートにクロック周期のパルスを与えるようにしてもよい。この場合、不図示のPLL(Phase Locked Loop)回路から、所定のクロック周期を有するパルスがクエンチ素子3010のゲートに入力される。例えば、PLL回路からのパルスがハイレベルの場合に、クエンチ素子3010はPMOSであるため、クエンチ素子3010はオフ状態となる。この場合、APD3100はリチャージされず、非検出モードとなる。他方、PLL回路からのパルスがローレベルの場合に、クエンチ素子3010はオン状態となり、APD3100がリチャージされ、検出モード(待機モード)となる。このPLL回路からのクロックパルスが所定の周期を有することから、クロック周期ごとに出力信号が強制的にリセットされる。このため、1パルスに対して、光子のカウントは1つとなり、高輝度下でも、入射光子数に応じた数の信号生成が可能となる。PLL回路は、第1基板11あるいは第2基板21のいずれかに設けられる。
【0036】
出力回路3050は、カウンタ回路3040から出力されるデジタル信号を外部に出力する。例えば、出力回路3050としては、オープンドレインバッファを用いる。上記のとおり、光電変換装置100でさらに演算を行う場合には、出力回路3050は、外部への出力ではなく、光電変換装置100内に設けられた信号処理回路への出力である。
【0037】
波形整形回路3020、処理回路3030、カウンタ回路3040、出力回路3050には、駆動電圧として、電圧VDD(第2電圧)と電圧VSS(第3電圧)が供給されている。
【0038】
なお、上記では、カウンタ回路3040を設ける例を説明した。しかし、カウンタ回路を設けずに、時間計測回路としての時間・デジタル変換回路(Time to Digital Converter:以下、TDC回路)を設けるように構成してもよい。これにより、パルス検出タイミングを取得する光電変換装置100が構成される。
【0039】
このとき、波形整形回路3020から出力されたパルス信号の発生タイミングは、TDC回路によってデジタル信号に変換される。TDC回路には、パルス信号のタイミングの測定に、
図3の垂直走査回路110から駆動線を介して、制御パルスpREF(参照信号)が供給される。TDC回路は、制御パルスpREFを基準として、波形整形回路3020を介して各画素から出力された信号の入力タイミングを相対的な時間としたときの信号をデジタル信号として取得する。
【0040】
TDC回路は、例えば、RSフリップフロップと、コースカウンタと、ファインカウンタとを有する。駆動pREFは、発光部を駆動するとともに、RSフリップフロップをセットし、各画素から入力された信号パルスにより、RSフリップフロップはリセットされる。これにより、光の飛行時間に応じたパルス幅を持った信号が生成される。生成された信号は、所定の時間分解能をそれぞれ有するコースカウンタとファインカウンタによりカウントされる。これにより、デジタルコードが出力されることになる。
【0041】
TDC回路の駆動pREFのパルスを生成するPLL回路は、第1基板11もしくは第2基板21、または、第1基板11および第2基板21の両方に設けられている。ただし、TDC回路に入力される駆動pREFパルスが遅延すると、TDC回路から出力される情報の精度に影響を与えることになる。そのため、PLL回路は、TDC回路が設けられている基板と同一基板に設ける方がよい。例えば、本実施形態では、第2基板21に、TDC回路とPLL回路とが設けられる。
【0042】
また、カウンタ回路3040に代えてTDC回路を設けるだけでなく、カウンタ回路3040およびTDC回路の両方を備える構成も可能である。
【0043】
(APDの動作と出力信号の関係)
図5は、APDの動作と出力信号との関係を模式的に示した図である。
図4に戻り、波形整形回路3020の入力側であるVcathをnodeA,出力側をnodeBとする。
図5(A)は、
図4のnodeAの波形変化を示し、
図5(B)は、
図4のnodeBの波形変化をそれぞれ示す。
【0044】
時刻t0からt1の間において、アバランシェ増倍可能な電位差が印加されている。時刻t1においてフォトンが入射すると、クエンチ素子3010にアバランシェ増倍電流が流れ、nodeAの電圧は降下する。電圧降下量がさらに大きくなり、APD3100に印加される電位差が小さくなると、APD3100のアバランシェ増倍が停止し、nodeAの電圧レベルはある一定値以上降下しなくなる。その後、nodeAには電圧VPDLから電圧降下分を補う電流が流れ、時刻t3においてnodeAは元の電位レベルに静定する。このとき、nodeAにおいて出力波形がある閾値を越えた部分は、波形整形回路3020で波形整形され、nodeBで信号として出力される。
【0045】
(光電変換装置の断面図)
図6は、光電変換装置100の断面図であり、
図6の上側から光が入射する。光入射面側から、第1基板11と第2基板21が積層されている。
【0046】
第1基板11は、第1基板の半導体層302(第1半導体層)と、第1基板の配線構造303(第1配線構造)とから構成されている。また、第2基板21は、第2基板の半導体層402(第2半導体層)と、第2基板の配線構造403(第2配線構造)とから構成されている。
【0047】
第1基板11と第2基板21は、第1配線構造303と第2配線構造403とが対向して接するように接合される。
【0048】
第1半導体層302中に、第1導電型の第1半導体領域311と、第2導電型の第2半導体領域316が配されており、PN接合を形成し、
図4に示すAPD3100が構成されている。
【0049】
第2半導体領域316よりも光入射面側には、第2導電型の第3半導体領域312が構成されている。第3半導体領域312の不純物濃度は、第2半導体領域316の不純物濃度よりも低い。ここで「不純物濃度」とは、逆導電型の不純物によって補償された正味の不純物濃度を意味している。つまり、「不純物濃度」とは、NET濃度を指す。例えば、P型の添加不純物濃度がN型の添加不純物濃度より高い領域は、P型半導体領域である。反対に、N型の添加不純物濃度が、P型の添加不純物濃度より高い領域はN型半導体領域である。
【0050】
各画素は、第2導電型の第4半導体領域314により分離されている。また、第4半導体領域314よりも光入射面側には、第2導電型の第5半導体領域315が設けられている。第5半導体領域315は、各画素に共通に設けられている。
【0051】
第4半導体領域314には、
図4に示す電圧VPDL(第1電圧)が供給され、第1半導体領域311には、
図4に示す電圧VDD(第2電圧)が供給される。第4半導体領域314に供給される電圧と、第1半導体領域311に供給される電圧とにより、第2半導体領域312と第1半導体領域311には逆バイアス電圧が供給される。これにより、APD3100がアバランシェ増倍動作をするような逆バイアス電圧が供給されることになる。
【0052】
第5半導体領域315よりも光入射面側には、ピニング層341が設けられている。ピニング層341は暗電流抑制のために配される層である。ピニング層341は、例えば、酸化ハフニウム(HfO2)を用いて形成される。二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)などを用いて、ピニング層341を形成してもよい。
【0053】
ピニング層341の上には、絶縁層342とカラーフィルタ343を介して、マイクロレンズ344が設けられている。絶縁層342やカラーフィルタ343は任意の構成である。マイクロレンズ344とピニング層341の間には、各画素を光学的に分離するためのグリッド形状の遮光膜などを設けてもよい。遮光膜の材料としては、光を遮光しうる材料であればよく、例えば、タングステン(W)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)などを用いることができる。
【0054】
第2半導体層は、半導体領域からなる活性領域411と分離領域412が設けられている。分離領域412は、絶縁体からなるフィールド領域である。
【0055】
第1配線構造303には、複数の絶縁体層と複数の金属層を積層することにより構成された複数の配線層380が設けられている。本明細書において、配線層とは、絶縁体層からなる層間膜の上または下に配されている金属層と当該金属層の間の絶縁体部材が設けられている層のことをいう。そのため、本明細書では、第1配線層の配線と第2配線層の配線とを接続するために、層間膜内に設けられている金属層(ビア配線やコンタクト配線)は配線層とは言わない。複数の配線層380は、第1半導体層302側から、第1配線層(M1)、第2配線層(M2)、第3配線層(M3)で構成されている。第1配線構造303の最上層には、第1接合部385が第1配線構造303から露出するように設けられている。また、第1配線構造303には、パッド開口353と355が形成されており、パッド開口353と355のそれぞれの底部には、パッド電極354と352がそれぞれ設けられている。パッド電極352は、第1基板の回路に電圧を供給するための電極である。例えば、パッド電極352からは、ビア配線(不図示)やコンタクト配線(不図示)を介して、第4半導体領域314に電圧VPDL(第1電圧)が供給される。
【0056】
第2配線構造403には、複数の絶縁体層と複数の金属層を積層することにより構成された複数の配線層390が設けられている。複数の配線層390は、第2半導体層402側から、第1配線層(M1)から第5配線層(M5)で構成されている。第2配線構造403の最上層には、第2接合部395が第2配線構造403から露出するように設けられている。第1基板の接合部385は、第2基板の接合部395と接触しており、電気的に接続している。このように、第1基板の接合面に露出された第1接合部385と、第2基板の接合面に露出させた第2接合部395による接合をメタルボンディング(MB)構造、あるいは、金属接合部ということもある。この接合は、銅(Cu)同士で行われることが多いため、Cu-Cu接合(Cu-Cuボンディング)ということもある。
【0057】
第1配線構造303に設けられているパッド電極354は、第1接合部385、第2接合部395を介して、複数の配線層390に設けられている複数の配線のいずれかに電気的に接続されている。例えば、パッド電極354からは、画素回路3000に設けられている回路に対して、電圧VSS(第3電圧)が供給される。また、パッド電極354からは、画素回路3000に設けられている回路に対して、電圧VDD(第2電圧)が供給される。さらに、パッド電極354からは、第1接合部385と第2接合部395を介して、複数の配線層390の配線に電圧が供給され、第2接合部395と第1接合部385を介して、複数の配線層380の配線に電圧が供給される。例えば、このような経路では、クエンチ素子3010に電気的に接続される電圧VDD(第2電圧)がパッド電極354から供給される。具体的には、パッド電極354からは、第1接合部385、第2接合部395、複数の配線層390の配線に、VDD(第2電圧)が供給される。そして、複数の配線層390の配線から、第2基板に設けられているクエンチ素子3010、複数の配線層390の配線、第2接合部395、第1接合部385を介して、VDD(第2電圧)が第1半導体領域311に供給される。
【0058】
図6では、パッド電極354として、1つのパッド電極のみを図示しているが、パッド電極354を複数設けて、異なる値を有する電圧を供給するように構成する。
【0059】
(複数配線層による配線構成例1-1)
図7は、
図4に示した電圧VDD(第2電圧)の配線配置を示す図である。
図4を用いて説明したように、SPADを含むAPDセンサは、画素毎に設けられている画素回路3000を構成する回路数が多い。このため、各回路への電源配線、各回路への入出力用の配線が多く、回路間の配線密度が高くなる。配線密度が高くなると、各回路への電源となる電圧VDD(第2電圧)や、電圧VSS(第3電圧)の配線が、分断されやすくなり、安定的な電流供給を妨げる理由となる。ここで、分断とは、ある配線層において、2次元方向で電源の配線が配されていないことをいう。また、2次元方向に電源の配線を配されるとは、1画素分の画素回路が設けられている領域において、第1方向の両端と第2方向の両端に到達するように配線が配されていることである。このように配線が配されていないと、複数画素分の画素回路をレイアウトした際に、隣り合う画素の画素回路間の配線が電気的に接続されなくなるからである。
【0060】
特に、SPADにおいては、高照度時に多くのフォトンをカウントすることになり、画素回路を構成する回路の電源配線に流れる電流量も大きくなる。このため、各画素回路への電源となる配線を分断せずに、各画素回路に対して配する必要がある。また、画素回路毎に、フォトンが入射する数やタイミングが異なることから、各画素回路に電流が流れる大きさやタイミングも異なる。このため、各画素回路への電源となる配線を分断せずに、各画素回路に対して配する必要がある。
【0061】
図7(A)(B)は、第2基板21が有する画素回路3000のうち、1画素分の画素回路が設けられている領域をピックアップしたものである。このような領域を1ユニット分の画素回路が設けられている領域ともいう。
【0062】
図7(A)は、平面視において、第1配線層(M1)に設けられている電圧VDD(第2電圧)の配線1010の配置例を示している。また、
図7(B)は、平面視において、第2配線層(M2)に設けられている電圧VDD(第2電圧)の配線1020の配置を示している。
【0063】
図7(A)において、配線1010は、第2方向40に延在して配されている。具体的には、1画素分の画素回路が設けられている領域において、配線1010は、前記領域の両端である端41から端42に至るまで、第2方向40に延在して配されている。他方、配線1010は、第2方向40と交差する方向(ここでは直交する方向)である第1方向30には延在して配されていない。第1配線層(M1)には、画素回路を構成する回路同士を接続する配線やゲート配線などが、高密度で配置されている。そのため、第1配線層(M1)において、他の配線が障害物となり、配線1010を第1方向30に延在させることができない。
【0064】
そこで、
図7(B)に示すように、第2配線層(M2)の配線1020を、上記領域において、第1方向30の両端である端31から端32に至るまで、第1方向30に延在して配し、配線1020と配線1010とをビア配線1030で電気的に接続する。これにより、2つの配線層の組み合わせによって、電圧VDD(第2電圧)の配線が、第1方向30と第2方向40の両方向において延在することになる。
【0065】
このように、1画素分の画素回路が設けられている領域について、第1方向30の両端を第2配線層の配線1020が接続し、第2方向40の両端を第1配線層の配線1010が接続している。すなわち、2つの配線層の配線の組み合わせにより、1画素分の画素回路が設けられている領域について、第1方向の両端と第2方向の両端とが平面視で接続されるように構成されている。
【0066】
上記した構成によれば、配線密度が高くなり、1つの配線層を用いただけでは、電源電圧用の配線を2次元方向に配置できない場合においても、電源配線を2次元的に配することが可能となる。このため、電流消費が多い第1画素と電流消費が少ない第2画素が隣り合う場合において、第1画素の画素回路の電源配線からの電流消費が多くても、第2画素の画素回路の電源配線から第1画素の画素回路に電流供給することが可能である。これにより、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0067】
図7(C)は、1つの画素について、2つの配線層を用いて、第1方向30と第2方向40の両方向において延在させるように配線を配置させた例を示したものである。また、
図7(D)は、4つの画素を図示したものである。各画素の配線レイアウトは、各画素の境界線に対して、線対称の配置となっている。このような配置をミラー対称配置ともいう。不図示であるが、図示している4つの画素と隣り合う他の画素も、このような線対称の配置となっている。
【0068】
図7(D)に示すように、1画素分の画素回路が設けられている領域は、所定の配線パターンが繰り返されている領域でもある。
図7(D)ではミラー対称配置の例を示したが、このようなミラー対称配置であっても、1画素分の画素回路が設けられている領域は繰り返されている。また、
図7(D)ではミラー対称配置の例を示したが、並進対称の配置であってもよい。この場合においても、1画素分の画素回路が設けられている領域は繰り返されることになる。
【0069】
なお、上記では、紙面に対して、横方向を第1方向とし、縦方向を第2方向としたが、縦方向を第1方向とし、横方向を第2方向としてもよい。
【0070】
(複数配線層による配線構成例1-2)
図8は、第1配線層(M1)と第2配線層(M2)よりも、上層の配線層である第3配線層(M3)に設けられている配線を示す図である。
【0071】
図8(A)と(B)は、
図7(A)(B)と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
図8(C)は、第3配線層(M3)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線1040を示す図である。
図8(D)に示すように、第3配線層(M3)に設けられている配線1040と第2配線層(M2)に設けられている配線1020は、ビア配線1050で電気的に接続されている。1画素分の画素回路が設けられている領域について、第3配線層(M3)の配線1040は、第3配線層(M3)のみで、第1方向の両端と第2方向の両端とが平面視で接続されている。他方、第1配線層(M1)と第2配線層(M2)は、2つの配線層の配線の組み合わせにより、1画素分の画素回路が設けられている領域について、第1方向の両端と第2方向の両端とが平面視で接続されるように構成されている。
【0073】
図8(E)は、ミラー対称配置されている4つの画素を示したものである。
【0074】
一般的に、半導体プロセスのルール上、半導体層から遠い側の配線層(上層の配線層)に配置される配線の配線幅は、半導体層から近い側の配線層(下層の配線層)に配置される配線の配線幅よりも広くすることが可能である。すなわち、第3配線層(M3)は、複数の配線層の中で、電圧VDD(第2電圧)の配線の占有面積が最も大きい配線層である。これにより、
図8(C)に示すように、第3配線層(M3)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線の配線幅を大きくして抵抗を下げている。
【0075】
また、第3配線層(M3)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線は、第1方向30の両端と第2方向40の両端とが接続するように延在して配されている。しかし、この第3配線層(M3)と、画素回路が設けられている第2半導体層402との距離は、第2配線層(M2)と第2半導体層402との距離や、第1配線層(M1)と第2半導体層402との距離よりも長い。そのため、第3配線層(M3)だけでは、電流消費が少ない画素の画素回路から、電流消費が多い画素の画素回路への電流供給が不十分となる可能性がある。そこで、このような場合においても、第1配線層(M1)と第2配線層(M2)を組み合わせることにより、電源配線を2次元的に配する。これにより、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0076】
上記例において、第1配線層(M1)と第2配線層(M2)は、配線の占有面積が最も大きい配線層と第2半導体層402との間に設けられている複数の配線層であることから、下層配線層群と言うこともある。あるいは、単に、配線層群と言うこともある。
【0077】
(複数配線層による配線構成例1-3)
図9は、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)に設けられている配線を示す図である。
図9(C)は、
図8(C)と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
図9(A)は、第1配線層(M1)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線1010を示す図である。
図8(A)では、配線1010が、1画素分の画素回路が設けられている領域の第2方向40の両端に到達するように、第2方向40に延在していた。これに対して、
図9(A)では、前記領域において、第1方向30の両端にも、第2方向40の両端にも到達していない点が異なる。
【0079】
図9(B)は、第2配線層(M2)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線1020を示す図である。
図8(B)と同様に、
図9(B)でも、配線1020が、1画素分の画素回路が設けられている領域の第1方向30の両端に到達するように、第1方向に延在する。これに加えて、
図9(B)では、前記領域において、第2方向40にも延在する配線1025が設けられている。
【0080】
すなわち、
図9に示す例では、第1配線層(M1)および第2配線層(M2)のそれぞれにおいて、1画素分の画素回路が設けられている領域では、2次元方向において、前記領域の両端に接続するように配線が設けられていない。しかし、第1配線層(M1)および第2配線層(M2)の組み合わせにより、配線は、前記領域の第1方向の両端と、第2方向の両端とが接続されるように構成されている。
【0081】
図7および8に示した例では、第1配線層(M1)は、1画素分の画素回路が設けられている領域の両端に接続するように配線が設けられていた。また、第2配線層(M2)においても、1画素分の画素回路が設けられている領域の両端に接続するように配線が設けられていた。他方、
図9に示すように、第1配線層(M1)に設けられている配線は、1画素分の画素回路が設けられている領域の一方の端に接続されており、他方の端に接続されていない構成であってもよい。
【0082】
(その他の形態例)
上記例では、電圧VDD(第2電圧)の配線の例を示したが、電圧VDD(第2電圧)の配線だけでなく、電圧VSS(第3電圧)の配線について、
図7から
図9に示したように配置してもよい。
【0083】
また、上記例では、第2基板21が有する半導体層に最も近い配線層である第1配線層(M1)と、次に近い配線層である第2配線層(M2)に電圧VDD(第2電圧)の配線を配置する例を示した。しかし、複数の配線層を用いて2次元的に電源配線を配すればよいため、第2配線層(M2)よりも第1基板11に近い第3配線層(M3)と第4配線層(M4)を用いて電源配線を2次元的に配してもよい。あるいは、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)の全てを用いて、2次元的に電源配線を配してもよい。
【0084】
さらに、上記例では、配線層群により組み合わされた配線は、2つの直線からなる2次元配線であった。しかし、1画素分の画素回路が設けられている領域の第1方向の両端と第2方向の両端に到達するように配線が配されていればよいため、この条件を満たす限り、組み合わせた後の配線は、より複雑な形状を有していてもよい。
【0085】
(実施形態2)
本実施形態では、電圧VDD(第2電圧)の配線、および、電圧VSS(第3電圧)の配線について、複数の配線層を組み合わせることにより、電源配線を2次元的に配する例を説明する。また、本実施形態では、3層の配線層(配線層群)を組み合わせることにより、電源配線を2次元的に配する例を説明する。
【0086】
(複数配線層による配線構成例2-1)
図10は、
図4に示した電圧VDD(第2電圧)の配線の配置を示す図である。
図4を用いて説明したように、SPADを含むAPDセンサは、画素毎に設けられている画素回路3000を構成する回路数が多い。このため、各回路への電源配線、各回路への入出力用の配線が多く、回路間の配線密度が高くなる。配線密度が高くなると、各回路への電源となる電圧VDD(第2電圧)および電圧VSS(第3電圧)の配線が、分断されやすくなり、安定的な電流供給を妨げる理由となる。
【0087】
図10(A)から(C)は、第2基板21が有する画素回路3000のうち、1画素分の画素回路が設けられている領域をピックアップしたものである。
【0088】
図10(A)は、平面視において、第1配線層(M1)に設けられている電圧VDD(第2電圧)の配線1110と電圧VSS(第3電圧)の配線1115の配置例を示している。1画素分の画素回路が設けられている領域において、配線1110と1115は、第2方向40の前記領域の両端に至るまで、第2方向40に延在して配されている。これは、画素回路を構成する回路同士を接続する配線やゲート配線などが、高密度で配置されているため、2次元方向に配線を延在して配置できないためである。
【0089】
図10(B)は、平面視において、第2配線層(M2)に設けられている電圧VDD(第2電圧)の配線1120と、電圧VSS(第3電圧)の配線1025の配置を示している。配線1120と1125は、前記領域の一方の端から第1方向30に延在して配されているが、前記領域の他方の端まで至っていない。これは、画素回路を構成する回路同士を接続する配線やゲート配線などが、高密度で配置されているため、1次元方向のみに配線を延在させる場合であっても、前記領域の両端に至るまで配線を配することができないためである。
【0090】
図10(C)は、平面視において、第3配線層(M3)に設けられている電圧VDD(第2電圧)の配線1140と、電圧VSS(第3電圧)の配線1145の配置を示している。配線1140と1145は、前記領域の他方の端から第1方向30に延在して配されているが、前記領域の一方の端まで至っていない。これは、画素回路を構成する回路同士を接続する配線やゲート配線などが、高密度で配置されているため、1次元方向のみに配線を延在させる場合であっても、前記領域の両端に至るまで配線を配することができないためである。
【0091】
このように、第1配線層(M1)、第2配線層(M2)、第3配線層(M3)のいずれも、1つの配線層だけでは、2次元状に電源配線を配置することができない。
【0092】
そこで、第2配線層(M2)と第3配線層(M3)を用いて、第1方向30に延在し、かつ、前記領域の両端に至る配線を構成する。具体的には、第2配線層(M2)の電圧VDD(第2電圧)の配線1120と、第3配線層(M3)の配線1140をビア配線1150で電気的に接続する。同様に、第2配線層(M2)の電圧VSS(第3電圧)の配線1125と、第3配線層(M3)の配線1145をビア配線1155で電気的に接続する。
【0093】
また、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)を用いて、第1方向30および第2方向40に延在し、かつ、前記領域の両端に至る配線を構成する。具体的には、第1配線層(M1)の電圧VDD(第2電圧)の配線1110と、第2配線層(M2)の電圧VDDの配線1120とをビア配線1130で電気的に接続する。同様に、第1配線層(M1)の電圧VSS(第3電圧)の配線1115と、第2配線層(M2)の電圧VSSの配線1125とをビア配線1135で電気的に接続する。
【0094】
以上のように構成すれば、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)の組み合わせにより、電源配線を2次元的に配することが可能となる。このため、電流消費が多い第1画素と電流消費が少ない第2画素が隣り合う場合において、第1画素の画素回路の電源配線からの電流消費が多くても、第2画素の画素回路の電源配線から第1画素の画素回路に電流供給することが可能である。これにより、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0095】
(複数配線層による配線構成例2-2)
図11は、第3配線層(M3)よりも、上層の配線層である第4配線層(M4)と第5配線層(M5)に設けられている配線を示す図である。
【0096】
図11(A)から(C)は、
図10(A)から(C)と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
図11(D)は、第4配線層(M4)に設けられている電圧VSS(第3電圧)を供給するための配線1160と、電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線1165の配置を示す図である。第4配線層(M4)に設けられている配線1160と、第3配線層(M3)に設けられている配線1145は、ビア配線1170で電気的に接続されている。
【0098】
図11(F)は
図11(D)と同じ図である。
図11(G)は、ミラー対称配置されている4つの画素を示したものである。第4配線層(M4)に設けられている配線1160は、第4配線層(M4)のみで、第1方向の両端と第2方向の両端とが平面視で接続されている。第4配線層(M4)は、複数の配線層の中で、電圧VSS(第3電圧)の配線の占有面積が最も大きい配線層である。これにより、第4配線層(M4)に設けられている電圧VSS(第3電圧)を供給するための配線の配線幅を大きくして抵抗を下げている。この第4配線層(M4)と画素回路が設けられている第2半導体層402の間の距離は、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)までのいずれかの配線層と、第2半導体層402との間の距離よりも長い。そのため、第4配線層(M4)だけでは、電流消費が少ない画素の画素回路から、電流消費が多い画素の画素回路への電流供給が不十分となる可能性がある。そこで、本実施形態では、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)を組み合わせることにより、電源配線を2次元的に配する。これにより、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0099】
図11(E)は、第5配線層(M5)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線1180の配置を示す図である。第5配線層(M5)に設けられている配線1180と、第4配線層(M4)に設けられている配線1165とは、ビア配線1190で電気的に接続されている。また、第4配線層(M4)に設けられている配線1165と、第3配線層(M3)に設けられている配線1140は、ビア配線1175で電気的に接続されている。
【0100】
図11(H)は
図11(E)と同じ図である。
図11(I)は、ミラー対称配置されている4つの画素を示したものである。第5配線層(M5)に設けられている配線1180は、第5配線層(M5)のみで、第1方向の両端と第2方向の両端とが平面視で接続されている。第5配線層(M5)は、複数の配線層の中で、電圧VDD(第2電圧)の配線の占有面積が最も大きい配線層である。これにより、第5配線層(M5)に設けられている電圧VDD(第2電圧)を供給するための配線の配線幅を大きくして抵抗を下げている。この第5配線層(M5)と画素回路が設けられている第2半導体層402の間の距離は、第1配線層(M1)から第4配線層(M4)までのいずれかの配線層と、第2半導体層402との間の距離よりも長い。そのため、第5配線層(M5)だけでは、電流消費が少ない画素の画素回路から、電流消費が多い画素の画素回路への電流供給が不十分となる可能性がある。そこで、本実施形態では、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)を組み合わせることにより、電源配線を2次元的に配する。これにより、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0101】
上記の例では、2種類の電源電圧のそれぞれについて、配線の占有面積が最も大きい配線層として、第4配線層(M4)と第5配線層(M5)を割り振った。また、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)を組み合わせて、電源配線を2次元的に配置した。他方、2種類の電源電圧のそれぞれについて、配線の占有面積が最も大きい配線層として、第3配線層(M3)と第5配線層(M5)を割り振ってもよい。この場合、第1配線層(M1)、第2配線層(M2)、第4配線層(M4)を組み合わせて、電源配線を2次元的に配置してもよい。
【0102】
(実施形態3)
本実施形態では、
図4で説明した画素回路3000のレイアウト例を説明する。
【0103】
図12(A)は、1つの画素に対応した画素回路3000が有するクエンチ素子3010、波形整形回路3020の配置例である。
図12(A)には、処理回路3030、カウンタ回路3040、出力回路3050の配置例も示している。クエンチ素子3010(例えば、MOSトランジスタであるため、クエンチ回路ともいう)、カウンタ回路3040、出力回路3050のそれぞれは、画素の端と接するように設けられている。すなわち、第1画素と、第1画素に隣り合う第2画素との間の境界に、これらの画素回路が接するように配されている。ここで、接するとは、厳密に、画素の端と接していることや、画素間の境界に接していることではなく、他の機能を有する回路が隣り合う画素との間に配されていないことをいう。例えば、第1画素の画素回路のうち、第2画素の画素回路に最も近い回路が、第1画素のクエンチ素子301、カウンタ回路3040、出力回路3050のいずれかであることをいう。
【0104】
このような画素回路の配置によれば、第1画素の画素回路の素子・回路で多くの電流を消費したとしても、第2画素の画素回路に電圧を供給する配線から電流を供給することが容易となる。このため、画素回路に対して、安定した電流供給をすることができる。
【0105】
また、
図12(A)において、クエンチ素子3010と波形整形回路3020は隣り合って配されている。
図4に示すように、クエンチ素子3010であるMOSトランジスタの一方のノードと、波形整形回路3020の入力ノードは電気的に接続している。そのため、配線容量の低減などのメリットを享受するために、クエンチ素子3010と波形整形回路3020は、レイアウトとしても近接して配置する。
【0106】
図12(B)は、4つの画素に対応した画素回路3000の配置例を示したものである。各画素の画素回路がミラーレイアウトの配置となっている。これにより、各画素の画素回路の同じ機能をもつ回路が隣り合って配されることになる。例えば、第1画素(右上の画素)と第2画素(不図示)が第1方向30で隣り合って配されている場合、第1画素と第2画素のカウンタ回路3040が隣り合うことになる。また、第1画素(左上の画素)と第2画素(右上の画素)は、第1画素と第2画素のクエンチ素子3010および波形整形回路3020が隣り合うことになる。これにより、回路をレイアウトするに際して、省スペース化を図ることが可能である。
【0107】
具体的には、
図12(A)では、クエンチ素子3010が、画素回路が設けられている領域の角部に配されている。ここで、角部とは、画素回路が設けられている領域の第1方向30の第1辺と、第2方向40の第2辺とにより成す角に配置されていることである。また、角部とは、1画素に対応する画素回路が設けられている領域が、第1方向30の辺と第2方向40の辺により画定されており、それぞれの辺の1/3の長さ以内に配されていることをいう。例えば、
図12(A)では、クエンチ素子3010は、左右方向で左下の頂点から辺の長さの1/3以内、かつ、上下方向で左下の頂点から辺の長さの1/3以内に設けられている。
【0108】
例えば、
図4に示すようにクエンチ素子3010をPMOSトランジスタとし、その他の回路を構成するトランジスタをNMOSトランジスタにする場合がある。この場合、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタで異なる導電型のウエル構造とする必要がある。しかし、
図12(B)の配置例によれば、4画素分のクエンチ素子3010をまとめて配置することが可能である。このため、クエンチ素子3010用のNウエル構造を4画素で共有かすることが可能である。また、以下の
図14や
図15を用いて説明するように、拡散領域や、電源配線(例えば、コンタクト配線)を複数の画素で共有する配置も可能となる。
【0109】
(カウンタ回路のレイアウト例)
図13(A)は、1つの画素に対応した画素回路3000を示している。カウンタ回路3040に注目しており、カウンタ回路3040以外の回路等については、非表示となっている。3041がカウンタの1ビット目の回路である。また、3042、3043、3044、3045、3046の順で、それぞれ、カウンタの2ビット目、3ビット目、4ビット目、5ビット目、6ビット目の回路である。ここでは、6ビットのカウンタを例示しているため、1ビット目がLSB(Least Significant Bit)となり、6ビット目がMSB(Most Significant Bit)となる。
【0110】
図12(A)および12(A)に示すように、画素回路3000の中で、カウンタ回路3040が占める面積は、他の回路が占める面積よりも大きい。他方で、カウンタ回路3040では、1ビット目の回路3041から6ビット目の回路3016まで信号処理のために、これらの回路は連続して配置する必要がある。そのため、
図12(A)および12(A)に示すように、カウンタ回路3040を構成する回路は、途中で折り返すような配置となっており、画素回路3000の省スペース化を図っている。具体的には、1ビット目の回路3041、2ビット目の回路3042、3ビット目の回路3043の回路は、この順で第2方向40の方向に配されている。また、4ビット目の回路3044は、3ビット目の回路3043に対して、第1方向30に隣り合って配されている。そして、第4ビット目の回路3044、第5ビット目の回路3045、第6ビット目の回路3046は、この順で第2方向40と逆方向に配されている。
【0111】
仮に、上記のように、これらの回路のレイアウトを折り返さずに直線的に配するとすると、画素回路3000が占める領域が縦長形状や横長形状となる。この結果、第1基板11に配されている複数の光電変換部102と、これらの光電変換部102と対応して配されている画素回路3000との配線レイアウトが複雑化する可能性がある。これに対して、
図13(A)のようなレイアウトによれば、画素回路3000の省スペース化が図られるとともに、複数の光電変換部102と、これらに対応する画素回路3000との電気的な接続関係を行う配線レイアウトの複雑化を抑制することもできる。
【0112】
図13(B)は、2行3列の合計6つの画素の画素回路3000を配置した例を示している。換言すれば、
図13(B)は、
図12(B)に示した2行2列の計4つの画素の画素回路3000に対して、3列目を追加したときの画素回路3000の配置である。
【0113】
ここで、
図13(B)において、1行2列目の画素回路3000(第1画素の画素回路)と、1行3列目の画素回路3000(第2画素の画素回路)に着目する。第1画素のカウンタ回路3040は、第1画素の端と接するように設けられており、第2画素のカウンタ回路3040は、第2画素の端と接するように設けられている。すなわち、第1画素と第2画素との間の境界に、第1画素と第2画素のカウンタ回路3040が接するように配されている。ここで、接するとは、厳密に、画素の端と接していることや、画素間の境界に接していることではなく、他の機能を有する回路が隣り合う画素との間に配されていないことをいう。例えば、第1画素のカウンタ回路3040と、第2画素のカウンタ回路3040の間に、カウンタ回路以外の回路が配置されていないことをいう。
【0114】
また、
図13(B)において、第1画素の回路3041(LSB)と第2画素の回路3041(LSB)との間の最短距離は、第1画素の回路3046(MSB)と第2画素の回路3041(LSB)との間の最短距離よりも短い。カウンタ回路において、LSBの回路が駆動している時間は、MSBの回路が駆動している時間よりも多いため、LSBの回路の方がMSBの回路よりも電流消費が大きい。そのため、第1画素のLSBの回路での電流消費が多くても、第2画素の画素回路の電源配線から第1画素の画素回路に電流供給することが可能である。他方、第1画素のMSBの回路での電流消費量は、LSBの回路での電流消費量よりも相対的に大きくないため、このような対策は必ずしも必要ではない。
【0115】
図13(B)に示したレイアウトは以下のように記述できる。すなわち、第1画素のカウンタ回路3040と、第1画素と隣り合う第2画素のカウンタ回路3040が、ミラー対称(線対称)で配置されている。また、第1画素のLSBの回路3041と、第2画素のLSBの回路3041もミラー対称で配置されている。また、第1画素のLSBの回路3041と第2画素のLSBの回路3041との最短距離は、第1画素のMSBの回路3046と第2画素のMSBの回路3046との最短距離よりも短い。このような関係を満たすことにより、画素回路に対して、より安定した電流供給をすることができる。
【0116】
(実施形態4)
本実施形態では、
図4で説明した画素回路3000のうち、クエンチ素子3010をMOSトランジスタで構成する場合のレイアウトと、波形整形回路3020をインバータで構成する場合のレイアウトを説明する。
【0117】
(クエンチ素子のレイアウト例)
図14(A)は、平面視した場合の2画素分の画素回路3000のレイアウト図を示したものである。クエンチ素子3010に注目しており、クエンチ素子3010以外の回路については、非表示となっている。1行1列目の回路を第1画素の画素回路3000とし、2行1列目の回路を第2画素の画素回路3000とする。第1画素の画素回路3000と、第2画素の画素回路3000とがミラー対称(線対称)に配されている。
【0118】
図14(B)は、上記第1画素のクエンチ素子3010と第2画素のクエンチ素子3010の回路図を示すものである。このように、2つの画素のクエンチ素子3010を構成するPMOSトランジスタのソース側には、共通の電圧である電圧VDD(第2電圧)が供給される構成となっている。
【0119】
図14(A)に戻ると、第1画素のクエンチ素子3010のMOSトランジスタと、第2画素のクエンチ素子3010のMOSトランジスタとで、1つの活性領域が共有化されている。具体的には、クエンチ素子3010のPMOSトランジスタのソース側の拡散領域が共有化されており、拡散領域には2つのコンタクト配線3015が設けられている。コンタクト配線3015には、電圧VDD(第2電圧)が供給されるため、クエンチ素子3010のPMOSトランジスタのソースにも電圧VDD(第2電圧)が供給されることになる。
【0120】
上記の構成により、クエンチ素子3010となるMOSトランジスタのソースまたはドレイン(NMOSトランジスタの場合はドレイン)である拡散領域を2つの画素の画素回路で共有化することができる。これにより、画素回路の省スペース化を図ることができる。
【0121】
上記では、共有化した拡散領域に、2つのコンタクト配線を接続するように設けていたが、コンタクト配線は1つでも構わないし、あるいは3つ以上のコンタクト配線を設けてもよい。1つのコンタクト配線を2つの画素で共通化することにより、レイアウトの簡素化が図られる。
【0122】
(波形整形回路のレイアウト例)
図15(A)は、平面視した場合の2画素分の画素回路3000のレイアウト図を示したものである。波形整形回路3020に注目しており、波形整形回路3020以外の回路については、非表示となっている。1行1列目の回路を第1画素の画素回路3000とし、1行2列目の回路を第2画素の画素回路3000とする。第1画素の画素回路3000と、第2画素の画素回路3000とがミラー対称(線対称)に配されている。
【0123】
図15(B)には、上記第1画素の波形整形回路3020と第2画素の波形整形回路3020の回路図が示されている。このように、2つの画素の波形整形回路3020の一方には、共通の電圧である電圧VDD(第2電圧)が供給され、2つの画素の波形整形回路3020の他方には、共通の電圧である電圧VSS(第3電圧)が供給される。
【0124】
図15(C)には、
図15(B)をより詳細に記載した回路図が示されている。波形整形回路3020は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを有するインバータ回路で構成されている。入力はVcathであり、出力はVpで示している。
【0125】
図15(A)に戻り、1行2列目に配されている第2画素の画素回路に着目する。第2画素の画素回路3000が有する波形整形回路3020は2つのトランジスタを有しており、一方のトランジスタと他方のトランジスタは共通のゲートを有する。ゲートには、コンタクト配線3065が接続されている。コンタクト配線3065には、波形整形回路の入力である電圧Vcathが供給される。
図15(A)に示されている一方のトランジスタ(例えば、NMOSトランジスタのソースおよびドレインには、コンタクト配線3035とコンタクト配線3055がそれぞれ接続されている。また、同様に、他方のトランジスタ(例えば、PMOSトランジスタ)のソースおよびドレインには、コンタクト配線3025とコンタクト配線3055がそれぞれ接続されている。コンタクト配線3035には、電圧VSS(第3電圧)が供給される。他方、コンタクト配線3015には、電圧VDD(第2電圧)が供給される。また、コンタクト配線3055からは、電圧Vpが出力される。
【0126】
図15(A)に示されているように、第1画素の波形整形回路3020のコンタクト配線3035が接続する拡散領域と、第2画素の波形整形回路3020のコンタクト配線3035が接続する拡散領域は、共有化されている。
【0127】
また同様に、第1画素の波形整形回路3020のコンタクト配線3025が接続する拡散領域と、第2画素の波形整形回路3020のコンタクト配線3025が接続する拡散領域は、共有化されている。
【0128】
上記の構成により、波形整形回路を構成するトランジスタのソースまたはドレインである拡散領域を2つの画素の画素回路で共有化することができる。これにより、画素回路の省スペース化を図ることができる。
【0129】
また、上記の構成では、共有化された拡散領域に2つのコンタクト配線(例えば、2つのコンタクト配線3025、2つのコンタクト配線3035)が設けられた例を説明した。しかし、これらの2つのコンタクト配線を1つに共通化して、共有化された拡散領域に配してもよい。
【0130】
(実施形態5)
本実施形態では、パイルアップ対策のためのクロック駆動を行う光電変換装置の構成と配線レイアウトについて説明を行う。
【0131】
図16(A)にクロック駆動を行う場合のAPD3100と画素回路3000を示す。画素回路3000では、クエンチ素子3010、波形整形回路3020と、カウンタ回路3040と、信号生成回路4000を図示しており、他の回路は省略している。
【0132】
APD3100でのアバランシェ増倍に応じてクエンチ素子3010を用いたクエンチ動作とリチャージ動作とを行うことが可能であるが、光子の検出タイミングによっては出力信号として判定されない場合がある。例えば、APD3100でアバランシェ増倍が生じてノードnodeAへの入力電位がローレベルとなり、リチャージ動作が行われているときを想定する。一般的に、波形整形回路3020の判定閾値はAPDでアバランシェ増倍が生じる電位差よりも高い電位に設定される。リチャージ動作によりノードnodeAの電位が判定閾値よりも低い状態であり、APDでのアバランシェ増倍可能な電位のときに光子が入射すると、APDでアバランシェ増倍が生じてnodeAの電圧が下がる。つまり、判定閾値よりも低い電圧でnodeAの電位が下がるため、光子を検出しているにも関わらず、ノードnodeBからの出力電位が変化しない。したがって、アバランシェ増倍が生じているにも関わらず、信号として判定されなくなる。特に、高照度下においては、光子が短い期間で連続して入るため、信号として判定されにくくなる。これにより、高照度であるにも関わらず、実際の光子の入射数と出力された信号とが乖離しやすい。この事象をパイルアップ現象ということもある。
【0133】
そこで、
図16(A)に示すように、PMOSトランジスタで構成されているクエンチ素子3010のオンとオフを信号QGで制御することにより、短時間に光子が連続してAPDへと入る場合にも信号として判定することが可能となる。
【0134】
信号生成回路4000は、論理回路で構成される。ここでは、信号生成回路4000は、NAND回路で構成されており、露光期間を制御する制御信号P_EXPと、制御信号P_CLKが入力される。2つの入力信号が「1」の場合に「0」が論理回路から出力される。この出力が制御信号QGである。他方、2つの入力信号のいずれかが「0」である場合には、「1」が論理回路から出力される。制御信号QGが「0」の場合に、PMOSトランジスタのクエンチ素子3010がオン状態となり、制御信号QGが「1」の場合にPMOSトランジスタのクエンチ素子3010がオフ状態になる。
【0135】
図16(B)のパルス図を参照すると、制御信号P_EXPがハイレベルの状態であって、制御信号P_CLKがハイレベルの状態になった場合に、制御信号QGはローレベルとなり、クエンチ素子3010であるPMOSトランジスタは、オンになる。クエンチ素子3010がオンになると、PMOSトランジスタの抵抗値が低くなり、リチャージ動作が行われる。他方、制御信号P_EXPおよび制御信号P_CLKのいずれかがローレベルの場合に、制御信号QGはハイレベルとなり、クエンチ素子3010であるPMOSトランジスタはオフになる。クエンチ素子301がオフになると、PMOSトランジスタの抵抗値が高くなり、リチャージ動作が行われにくくなる。このため、APD3100でアバランシェ増倍動作が停止する。
【0136】
時刻t1において、制御信号QGはハイレベルからローレベルへと遷移して、クエンチ素子3010がオンとなり、APDのリチャージ動作が開始される。これにより、APDのカソードの電位Vcath(nodeA)がハイレベルへと遷移する。そして、APDのアノードとカソードへと印加される電位の電位差がアバランシェ増倍可能な状態となる。Vcathがローレベルからハイレベルへと遷移するときに、時刻t2でVcathは判定閾値以上となる。このとき、Vp(ノードnodeB)から出力されるパルス信号は反転して、ハイレベルからローレベルとなる。その後、APDには、アバランシェ増倍が可能となる電位差が印加される状態となる。また、制御信号QGがローレベルからハイレベルに遷移し、スイッチはオフとなる。
【0137】
次に、時刻t3において、光子がAPDに入射すると、APDでアバランシェ増倍が生じ、クエンチ素子3010にアバランシェ増倍電流が流れ、Vcathは降下する。電圧降下量がさらに大きくなり、APDに印加される電圧差が小さくなると、時刻t2のようにAPDのアバランシェ増倍が停止し、Vcathの電圧レベルはある一定値以上降下しなくなる。Vcathの電圧が降下する途中でVcathが判定閾値よりも低くなると、Vpの電圧はローレベルからハイレベルとなる。つまり、Vcathにおいて出力波形が判定閾値を越えた部分は、波形整形回路3020で波形整形され、nodeBで信号として出力される。そして、カウンタ回路でカウントされ、カウンタ回路から出力されるカウンタ信号のカウント値が1LSB分増加する。
【0138】
時刻t3と時刻t4の間にAPDに光子が入射しているが、制御信号QGがハイレベルでクエンチ素子3010がオフの状態であり、APDへの印加電圧がアバランシェ増倍可能な電位差となっていない。そのため、Vcathの電圧レベルは判定閾値を超えない。
【0139】
時刻t4において、制御信号QGがハイレベルからローレベルに変わり、クエンチ素子3010がオンとなる。これに伴い、Vcathは、電圧降下分を補う電流が流れ、Vcathの電圧は元の電圧レベルへと遷移する。このとき、時刻t5でVcathの電圧が判定閾値以上となるため、Vpのパルス信号は反転し、ハイレベルからローレベルになる。
【0140】
時刻t6において、Vcathは元の電圧レベルに静定し、制御信号QGはローレベルからハイレベルになる。したがって、クエンチ素子3010はオフとなる。以降においても、時刻t1から時刻t6で説明したように制御信号QGや光子の入射に応じて各ノードや信号線などの電位が変化する。
【0141】
以上説明したように、制御信号QGによって、リチャージ動作が所定の周期でおこなわれ、リチャージされていない期間では、光子はカウントされない。このため、光子が短い期間で連続して入る場合においても、1つの光子が信号として判定され、それ以外の光子はカウントされないこととなる。例えば、
図16(B)の例では、時刻t3に入射した光子はカウントされ、時刻t3と時刻t4の間に入射された光子はカウントされないように構成されている。
図16(B)に示すように、制御信号QGをクロック駆動する場合には、所定の露光期間である信号P_EXPがオン状態のときに制御信号QGがオフになる回数がカウントできる光子の数が上限数となる。このため、上記の構成によれば、高照度であるにも関わらず、実際の光子の入射数と出力された信号とが乖離しやすいという現象を低減することが可能となる。
【0142】
図16(C)は、制御信号P_EXPを伝達する配線と制御信号P_CLKを伝達する配線を含む信号配線群7000のレイアウトを示す図である。
図16(C)は、1画素の画素回路用の配線層のうち、所定の配線層を抜き出して平面視で表示したものである。制御信号P_EXP用の配線7010と制御信号P_CLK用の配線7020は、第1方向30に延在して配されている。また、符号を付していないが、その他の配線も、第1方向30に延在して配されている。
【0143】
図16(B)に示すように、制御信号P_EXPがハイレベルになっている状態で、制御信号P_CLKが複数回遷移するため、制御信号P_EXPの周波数は、制御信号P_CLKの周波数よりも大きい。配線同士の容量カップリングを考慮するのであれば、周波数が大きい配線と当該配線と隣り合う配線との間隔は、周波数が小さい配線と当該配線と隣り合う配線との間隔よりも、大きくした方がよい。すなわち、制御信号P_CLK用の配線と当該配線と隣り合う配線との間隔は、制御信号P_EXP用の配線と当該配線と隣り合う配線との間隔よりも大きくする方がよい。
【0144】
図16(C)は、制御信号用の配線や他の信号配線のレイアウト図である。制御信号P_CLK用の配線7020と、配線7020と隣り合う配線との間隔はs1とs2である。また、制御信号P_EXP用の配線7010と、配線7010と隣り合う配線との間隔はs3とs4である。そして、s1>s3、s4を満たし、かつ、s2>s3、s4を満たしている。このように制御信号用配線を配線層に配置することで、配線同士の容量カップリングを抑制し、制御信号P_CLKのオンオフによる他の配線への影響を低減することができる。
【0145】
(実施形態6)
本実施形態では、実施形態5と同様に、クロック駆動を行う光電変換装置の構成と配線レイアウトについて説明を行う。
【0146】
図17(A)は、クロック駆動を行う場合の回路例を示している。実施形態5と同じ回路については、説明を省略する。また、波形整形回路やカウンタ回路は、
図16と同様であるため、図示していない。
【0147】
図17(A)と
図16(A)を比較すると、
図17(A)では、信号生成回路4000に入力される電源電圧が電圧VSS(第3電圧)と電圧VQG(第4電圧)とが選択可能になっている。電圧VSS(第3電圧)と電圧VQG(第4電圧)の切り替えは、制御信号R_VQSELにより行われる。このスイッチR_VQSELにより、制御信号QGのローレベルの電圧を可変とすることが可能となる。
【0148】
図17(B)のパルス図は、例えば、
図16(B)のパルス図で制御信号P_EXPがハイレベルになっている状態の一部を切りだしたものである。
図17(B)において、制御信号R_VQSELがローレベルの場合、信号生成回路4000は電圧VSS(第3電圧)と接続する。制御信号P_EXPがハイレベルなので、制御信号P_CLKがローレベルの場合には、制御信号QGがハイレベルとなり、クエンチ素子3010であるPMOSトランジスタはオフになる。制御信号QGがハイレベルの場合の電圧はVDD(第2電圧)である。他方、制御信号P_CLKがハイレベルの場合には、制御信号P_EXPがハイレベルなので、制御信号QGがローレベルとなり、クエンチ素子3010であるPMOSトランジスタはオンになる。制御信号QGがローレベルの場合の電圧はVSS(第3電圧)である。
【0149】
この後、制御信号R_VQSELがローレベルからハイレベルに遷移する。この場合、制御信号QGがハイレベルのときの電圧は、先ほどと同様にVDD(第2電圧)であるが、制御信号QGがローレベルのときの電圧は、VQG(第4電圧)となる。
【0150】
PMOSトラジスタであるクエンチ素子3010のゲートに入力される電圧が可変となるため、クエンチ素子3010の抵抗値が変わることになる。具体的には、VSS(第3電圧)をゲートに印加した場合のクエンチ素子3010の抵抗値は、VQG(第4電圧)をゲートに印加した場合のクエンチ素子3010の抵抗値よりも低くなる。このため、VSS(第3電圧)に設定した場合のリチャージ時間は、VQG(第4電圧)に設定した場合のリチャージ時間よりも短くなる。例えば、
図16(B)に戻ると、QGがローレベルからハイレベルに戻るタイミングで、Vcathのリチャージが完了するようになっている。仮に、VSS(第3電圧)の値がクエンチ素子のゲート電圧として低すぎる場合、クエンチ素子3010の抵抗値が低く、リチャージされるまでの時間が短くなる。このため、QGがローレベルからハイレベルに戻るまでの間で、リチャージが完了してしまう。そして、このタイミングで光子が入射すると、アバランシェ増倍が生じる。さらに、QGがローレベルからハイレベルに戻るまでの間に、再度リチャージが完了し、再度の光子入射により、2回目のアバランシェ増倍が生じうる。すなわち、このような場合、QGがローレベルからハイレベルに戻るまでの間に2回のアバランシェ増倍が生じることとなる。つまり、制御信号P_CLKの1個のパルスに対して、2回以上のアバランシェ増倍が生じることとなり、不必要な消費電力が発生することとなる。このような現象は、特に高照度時に生じうる。このように、リチャージ時間を可変とすることで、所定の露光期間において、消費電力を平均化することができ、結果的に消費電力を抑制することができるというメリットがある。
【0151】
なお、
図17(B)では、1つの露光期間中に、電圧VSS(第3電圧)と電圧VQG(第4電圧)を切り替えている。しかし、第1露光期間中は電圧VSS(第3電圧)とし、第1露光期間とは異なる第2露光期間中は電圧VQG(第4電圧)としてもよい。また、モード設定によって、電圧VSS(第3電圧)のみで光検出を行うようにしてもよいし、電圧VQG(第4電圧)のみで光検出を行うようにしてもよい。
【0152】
図17(C)は、1画素分の画素回路が設けられている領域における電圧VQGを供給するための配線のレイアウト図である。上記のように、電圧VQGはリチャージ時間を決定する電圧となる。そのため、他の信号配線からの影響を低減するために、低抵抗となる配線レイアウトとすることが好ましい。具体的には、平面視において、2次元方向に配線を配置することや、配線幅を太くすることが考えられる。しかし、上記のように、SPADを含むAPDセンサは、画素毎に設けられている画素回路を構成する回路数が多い。このため、各回路への電源配線、各回路への入出力用の配線が多く、回路間の配線密度が高くなる。配線密度が高くなると、低抵抗としたい配線が1つの配線層だけでは分断されて、2次元状に配置することが難しくなる。また、配線密度が高くなると、配線幅を太くするために必要なスペースを確保することが難しくなる。
【0153】
そこで、
図17(C)に示すように、第1配線層(M1)に、電圧VQG(第4電圧)の配線8010を第2方向40に延在させる。配線8010は、1画素分の画素回路が設けられている領域の両端に到達するように配されている。また、第2配線層(M2)に、電圧VQG(第4電圧)の配線8020を第1方向30に延在させる。配線8020も、前記領域の両端に到達するように配されている。そして、配線8010と配線8020は、ビア配線8030で電気的に接続させる。これにより、2次元的に電源配線を配置することができ、他の配線からの影響を低減することで、安定したリチャージ動作が可能となる。
【0154】
また、1画素分の画素回路が設けられている領域の配線層において、電圧VQG(第4電圧)を供給する配線の面積が占める割合は、例えば、1/5以上である。このように配線幅を太くすることにより、低抵抗化を図ることができ、他の配線からの影響を低減することで、安定したリチャージ動作が可能となる。
【0155】
また、上記では、第1配線層(M1)と第2配線層(M2)に電圧VQG(第4電圧)を供給する配線を設けたが、他の配線層に当該配線を設けてもよい。例えば、
図11に示すように、第1配線層(M1)から第3配線層(M3)の組み合わせで、電圧VSSと電圧VDDの配線の2次元配置化を達成する。そして、第4配線層(M4)と第5配線層(M5)の組み合わせで、電圧VQGの配線の二次元配置化を達成してもよい。
【0156】
(実施形態7)
図18は、本実施形態に係る光電変換システム11200の構成を示すブロック図である。本実施形態の光電変換システム11200は、光電変換装置11204を含む。ここで、光電変換装置11204は、上述の実施形態で述べた光電変換装置のいずれかを適用することができる。光電変換システム11200は例えば、撮像システムとして用いることができる。撮像システムの具体例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダー、監視カメラ等が挙げられる。
図18では、光電変換システム11200としてデジタルスチルカメラの例を示している。
【0157】
図18に示す光電変換システム11200は、光電変換装置11204、被写体の光学像を光電変換装置11204に結像させるレンズ11202を有する。また、レンズ11202を通過する光量を可変にするための絞り11203、レンズ11202の保護のためのバリア11201を有する。レンズ11202および絞り11203は、光電変換装置11204に光を集光する光学系である。
【0158】
光電変換システム11200は、光電変換装置11204から出力される出力信号の処理を行う信号処理部11205を有する。信号処理部11205は、必要に応じて入力信号に対して各種の補正、圧縮を行って出力する信号処理の動作を行う。光電変換システム11200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのバッファメモリ部11206、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)11209を有する。更に光電変換システム11200は、撮像データの記録または読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体11211、記録媒体11211に記録または読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)11210を有する。記録媒体11211は、光電変換システム11200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。また、記録媒体制御I/F部11210から記録媒体11211との通信や外部I/F部11209からの通信は無線によってなされてもよい。
【0159】
更に光電変換システム11200は、各種演算を行うとともにデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部11208、光電変換装置11204と信号処理部11205に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部11207を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システム11200は、少なくとも光電変換装置11204と、光電変換装置11204から出力された出力信号を処理する信号処理部11205とを有すればよい。全体制御・演算部11208およびタイミング発生部11207は、光電変換装置11204の制御機能の一部または全部を実施するように構成してもよい。
【0160】
光電変換装置11204は、画像用信号を信号処理部11205に出力する。信号処理部11205は、光電変換装置11204から出力される画像用信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。また、信号処理部11205は、画像用信号を用いて、画像を生成する。また、信号処理部11205は、光電変換装置11204から出力される信号に対して測距演算を行ってもよい。なお、信号処理部11205やタイミング発生部11207は、光電変換装置に搭載されていてもよい。つまり、信号処理部11205やタイミング発生部11207は、画素が配された基板に設けられていてもよいし、別の基板に設けられている構成であってもよい。上述した各実施形態の光電変換装置を用いて撮像システムを構成することにより、より良質の画像が取得可能な撮像システムを実現することができる。
【0161】
(実施形態8)
図19は、前述の実施形態に記載の光電変換装置を利用した電子機器である距離画像センサの構成例を示すブロック図である。
【0162】
図19に示すように、距離画像センサ12401は、光学系12407、光電変換装置12408、画像処理回路12404、モニタ12405、およびメモリ12406を備えて構成される。そして、距離画像センサ12401は、光源装置12409から被写体に向かって投光され、被写体の表面で反射された光(変調光やパルス光)を受光することにより、被写体までの距離に応じた距離画像を取得することができる。
【0163】
光学系12407は、1枚または複数枚のレンズを有して構成され、被写体からの像光(入射光)を光電変換装置12408に導き、光電変換装置12408の受光面(センサ部)に結像させる。
【0164】
光電変換装置12408としては、上述した各実施形態の光電変換装置が適用され、光電変換装置12408から出力される受光信号から求められる距離を示す距離信号が画像処理回路12404に供給される。
【0165】
画像処理回路12404は、光電変換装置12408から供給された距離信号に基づいて距離画像を構築する画像処理を行う。そして、その画像処理により得られた距離画像(画像データ)は、モニタ12405に供給されて表示されたり、メモリ406に供給されて記憶(記録)されたりする。
【0166】
このように構成されている距離画像センサ12401では、上述した光電変換装置を適用することで、画素の特性向上に伴って、例えば、より正確な距離画像を取得することができる。
【0167】
(実施形態9)
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0168】
図20は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0169】
図20では、術者(医師)13131が、内視鏡手術システム13003を用いて、患者ベッド13133上の患者13132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム13003は、内視鏡13100と、術具13110と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート13134と、から構成される。
【0170】
内視鏡13100は、先端から所定の長さの領域が患者13132の体腔内に挿入される鏡筒13101と、鏡筒13101の基端に接続されるカメラヘッド13102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒13101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡13100を図示しているが、内視鏡13100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0171】
鏡筒13101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡13100には光源装置13203が接続されており、光源装置13203によって生成された光が、鏡筒13101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光される。また、対物レンズを介して患者13132の体腔内の観察対象に向かってこの光が照射される。なお、内視鏡13100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0172】
カメラヘッド13102の内部には光学系及び光電変換装置が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該光電変換装置に集光される。当該光電変換装置によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該光電変換装置としては、前述の各実施形態に記載の光電変換装置を用いることができる。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)13135に送信される。
【0173】
CCU13135は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡13100及び表示装置13136の動作を統括的に制御する。さらに、CCU13135は、カメラヘッド13102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0174】
表示装置13136は、CCU13135からの制御により、当該CCU13135によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0175】
光源装置13203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡13100に供給する。
【0176】
入力装置13137は、内視鏡手術システム13003に対する入力インターフェースである。ユーザは、入力装置13137を介して、内視鏡手術システム13003に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。
【0177】
処置具制御装置13138は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具13112の駆動を制御する。
【0178】
内視鏡13100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置13203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置13203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド13102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0179】
また、光源装置13203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド13102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0180】
また、光源装置13203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用する。具体的には、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置13203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0181】
(実施形態10)
本実施形態の光電変換システムおよび移動体について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21は、本実施形態による光電変換システムおよび移動体の構成例を示す概略図である。本実施形態では、光電変換システムとして、車載カメラの一例を示す。
【0182】
図21は、車両システムとこれに搭載される撮像を行う光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム14301は、光電変換装置14302、画像前処理部14315、集積回路14303、光学系14314を含む。光学系14314は、光電変換装置14302に被写体の光学像を結像する。光電変換装置14302は、光学系14314により結像された被写体の光学像を電気信号に変換する。光電変換装置14302は、上述の各実施形態のいずれかの光電変換装置である。画像前処理部14315は、光電変換装置14302から出力された信号に対して所定の信号処理を行う。画像前処理部14315の機能は、光電変換装置14302内に組み込まれていてもよい。光電変換システム14301には、光学系14314、光電変換装置14302および画像前処理部14315が、少なくとも2組設けられており、各組の画像前処理部14315からの出力が集積回路14303に入力されるようになっている。
【0183】
集積回路14303は、撮像システム用途向けの集積回路であり、メモリ14305を含む画像処理部14304、光学測距部14306、測距演算部14307、物体認知部14308、異常検出部14309を含む。画像処理部14304は、画像前処理部14315の出力信号に対して、現像処理や欠陥補正等の画像処理を行う。メモリ14305は、撮像画像の一次記憶、撮像画素の欠陥位置を格納する。光学測距部14306は、被写体の合焦や、測距を行う。測距演算部14307は、複数の光電変換装置14302により取得された複数の画像データから測距情報の算出を行う。物体認知部14308は、車、道、標識、人等の被写体の認知を行う。異常検出部14309は、光電変換装置14302の異常を検出すると、主制御部14313に異常を発報する。
【0184】
集積回路14303は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0185】
主制御部14313は、光電変換システム14301、車両センサ14310、制御ユニット14320等の動作を統括・制御する。主制御部14313を持たず、光電変換システム14301、車両センサ14310、制御ユニット14320が個別に通信インターフェースを有して、それぞれが通信ネットワークを介して制御信号の送受を行う(例えばCAN規格)方法も取り得る。
【0186】
集積回路14303は、主制御部14313からの制御信号を受け或いは自身の制御部によって、光電変換装置14302へ制御信号や設定値を送信する機能を有する。
【0187】
光電変換システム14301は、車両センサ14310に接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの自車両走行状態および自車外環境や他車・障害物の状態を検出することができる。車両センサ14310は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段でもある。また、光電変換システム14301は、自動操舵、自動巡行、衝突防止機能等の種々の運転支援を行う運転支援制御部1311に接続されている。特に、衝突判定機能に関しては、光電変換システム14301や車両センサ14310の検出結果を基に他車・障害物との衝突推定・衝突有無を判定する。これにより、衝突が推定される場合の回避制御、衝突時の安全装置起動を行う。
【0188】
また、光電変換システム14301は、衝突判定部での判定結果に基づいて、ドライバーに警報を発する警報装置14312にも接続されている。例えば、衝突判定部の判定結果として衝突可能性が高い場合、主制御部14313は、ブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして、衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置14312は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムやメーターパネルなどの表示部画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0189】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方または後方を光電変換システム14301で撮影する。
図21(b)に、車両前方を光電変換システム14301で撮像する場合の光電変換システム14301の配置例を示す。
【0190】
2つの光電変換装置14302は、車両14300の前方に配される。具体的には、車両14300の進退方位または外形(例えば車幅)に対する中心線を対称軸にとする。この対称軸に対して2つの光電変換装置1302が線対称に配されると、車両14300と被写対象物との間の距離情報の取得や衝突可能性の判定を行う上で好ましい。また、光電変換装置14302は、運転者が運転席から車両14300の外の状況を視認する際に運転者の視野を妨げない配置が好ましい。警報装置14312は、運転者の視野に入りやすい配置が好ましい。
【0191】
また、本実施形態では、他の車両と衝突しない制御を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。さらに、光電変換システム14301は、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機或いは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0192】
本発明の光電変換装置は、更に、距離情報など各種情報を取得可能な構成であってもよい。
【0193】
(実施形態11)
図22は、1つの適用例に係る眼鏡16600(スマートグラス)を説明する。眼鏡16600には、光電変換装置16602を有する。光電変換装置16602は、上記の各実施形態に記載の光電変換装置である。また、レンズ16601の裏面側には、OLEDやLED等の発光装置を含む表示装置が設けられていてもよい。光電変換装置16602は1つでもよいし、複数でもよい。また、複数種類の光電変換装置を組み合わせて用いてもよい。光電変換装置16602の配置位置は
図19(a)に限定されない。
【0194】
眼鏡16600は、制御装置16603をさらに備える。制御装置16603は、光電変換装置16602と上記の表示装置に電力を供給する電源として機能する。また、制御装置16603は、光電変換装置16602と表示装置の動作を制御する。レンズ16601には、光電変換装置16602に光を集光するための光学系が形成されている。
【0195】
図22(b)は、1つの適用例に係る眼鏡16610(スマートグラス)を説明する。眼鏡16610は、制御装置16612を有しており、制御装置16612に、光電変換装置16602に相当する光電変換装置と、表示装置が搭載される。レンズ16611には、制御装置16612内の光電変換装置と、表示装置からの発光を投影するための光学系が形成されており、レンズ16611には画像が投影される。制御装置16612は、光電変換装置および表示装置に電力を供給する電源として機能するとともに、光電変換装置および表示装置の動作を制御する。制御装置は、装着者の視線を検知する視線検知部を有してもよい。視線の検知は赤外線を用いてよい。赤外発光部は、表示画像を注視しているユーザの眼球に対して、赤外光を発する。発せられた赤外光の眼球からの反射光を、受光素子を有する撮像部が検出することで眼球の撮像画像が得られる。平面視における赤外発光部から表示部への光を低減する低減手段を有することで、画像品位の低下を低減する。
【0196】
赤外光の撮像により得られた眼球の撮像画像から表示画像に対するユーザの視線を検出する。眼球の撮像画像を用いた視線検出には任意の公知の手法が適用できる。一例として、角膜での照射光の反射によるプルキニエ像に基づく視線検出方法を用いることができる。
【0197】
より具体的には、瞳孔角膜反射法に基づく視線検出処理が行われる。瞳孔角膜反射法を用いて、眼球の撮像画像に含まれる瞳孔の像とプルキニエ像とに基づいて、眼球の向き(回転角度)を表す視線ベクトルが算出されることにより、ユーザの視線が検出される。
【0198】
本実施形態の表示装置は、受光素子を有する光電変換装置を有し、光電変換装置からのユーザの視線情報に基づいて表示装置の表示画像を制御してよい。
【0199】
具体的には、表示装置は、視線情報に基づいて、ユーザが注視する第一の視界領域と、第一の視界領域以外の第二の視界領域とを決定される。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。表示装置の表示領域において、第一の視界領域の表示解像度を第二の視界領域の表示解像度よりも高く制御してよい。つまり、第二の視界領域の解像度を第一の視界領域よりも低くしてよい。
【0200】
また、表示領域は、第一の表示領域、第一の表示領域とは異なる第二の表示領域とを有し、視線情報に基づいて、第一の表示領域および第二の表示領域から優先度が高い領域を決定されてよい。第一の視界領域、第二の視界領域は、表示装置の制御装置が決定してもよいし、外部の制御装置が決定したものを受信してもよい。優先度の高い領域の解像度を、優先度が高い領域以外の領域の解像度よりも高く制御してよい。つまり優先度が相対的に低い領域の解像度を低くしてよい。
【0201】
なお、第一の視界領域や優先度が高い領域の決定には、AIを用いてもよい。AIは、眼球の画像と当該画像の眼球が実際に視ていた方向とを教師データとして、眼球の画像から視線の角度、視線の先の目的物までの距離を推定するよう構成されたモデルであってよい。AIプログラムは、表示装置が有しても、光電変換装置が有しても、外部装置が有してもよい。外部装置が有する場合は、通信を介して、表示装置に伝えられる。
【0202】
視認検知に基づいて表示制御する場合、外部を撮像する光電変換装置を更に有するスマートグラスに好ましく適用できる。スマートグラスは、撮像した外部情報をリアルタイムで表示することができる。
【0203】
<その他の実施形態>
以上、各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に制限されるものではなく、様々な変更および変形が可能である。また、各実施形態は相互に適用可能である。すなわち、一方の実施形態の一部を他方の実施形態の一部と置換することもできるし、一方の実施形態の一部を他方の実施形態の一部と付加することも可能である。また、ある実施形態の一部を削除することも可能である。
【符号の説明】
【0204】
1010 第1配線層に設けられている配線
1020 第2配線層に設けられている配線
1030 第3配線層に設けられている配線
3000 画素回路
3010 クエンチ素子
3020 波形整形回路
3030 処理回路
3040 カウンタ回路
3050 出力回路