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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】薬液供給システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20240924BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240924BHJP
   B01D 37/04 20060101ALI20240924BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240924BHJP
   B67D 7/76 20100101ALI20240924BHJP
   B67D 7/78 20100101ALI20240924BHJP
【FI】
B01J4/00 103
B05C11/10
B01D37/04
H01L21/304 648F
B67D7/76 D
B67D7/78 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021022689
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124825
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】村中 寿行
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雄一
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080193(JP,A)
【文献】特表2004-537400(JP,A)
【文献】特開2016-192473(JP,A)
【文献】国際公開第2011/138881(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/058792(WO,A1)
【文献】特開平10-263456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 37/04
B01J 4/00
B05C 11/10
B67D 7/76-78
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯留するタンクと、
前記タンクに接続され、前記薬液を送液する第1配管と、
前記第1配管に接続され、前記薬液が濾過される第1フィルタを有する第1フィルタユニットと、
前記第1フィルタユニットに接続され、前記第1フィルタによって濾過された前記薬液を送液する第2配管と、
前記第1配管に接続された液中異物検知装置と、
前記タンクに接続され、前記薬液を送液し、減圧バルブを有し、前記第1配管より配管長の短い第3配管と、
前記第3配管に接続され、前記薬液が濾過される第2フィルタを有する第2フィルタユニットと、
前記第2フィルタユニットに接続され、前記第2フィルタによって濾過された前記薬液を送液する第4配管と、
を備える薬液供給システム。
【請求項2】
前記液中異物検知装置により検知された前記薬液内の異物の量、及び前記薬液の流量を用いて、前記第1フィルタの良否を判断する判断装置をさらに備える、
請求項1記載の薬液供給システム。
【請求項3】
前記第2配管に設けられ、前記薬液の前記流量を測定する流量計をさらに備える、
請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項4】
前記第1配管に設けられ、前記薬液を送液するポンプをさらに備え、
前記ポンプの送液量を用いて、前記薬液の前記流量を測定する、
請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項5】
前記判断装置の判断結果に基づき、前記第1フィルタへの前記薬液の送液量を制御する制御装置をさらに備える、
請求項2乃至請求項4いずれか一項記載の薬液供給システム。
【請求項6】
前記判断装置の前記第1フィルタの前記良否に基づく通報を発する通報装置をさらに備える請求項2乃至請求項5いずれか一項記載の薬液供給システム。
【請求項7】
前記第1フィルタの前記良否の判断に用いられる閾値保存装置をさらに備える請求項2乃至請求項6いずれか一項記載の薬液供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬液供給システム及び薬液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程では、様々な薬液が用いられる。一般に薬液には製造工程や送液工程等において異物が混入するため、かかる異物を除去するためのフィルタを有するフィルタユニットを、薬液を送液する配管に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-212373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、健全な状態でフィルタを利用可能な薬液供給システム及び薬液供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の薬液供給システムは、薬液を貯留するタンクと、タンクに接続され、薬液を送液する第1配管と、第1配管に接続され、薬液が濾過される第1フィルタを有する第1フィルタユニットと、第1フィルタユニットに接続され、第1フィルタによって濾過された薬液を送液する第2配管と、第1配管に接続された液中異物検知装置と、タンクに接続され、薬液を送液し、減圧バルブを有し、第1配管より配管長の短い第3配管と、第3配管に接続され、薬液が濾過される第2フィルタを有する第2フィルタユニットと、第2フィルタユニットに接続され、第2フィルタによって濾過された薬液を送液する第4配管と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の薬液供給システムの模式図である。
図2】第1実施形態の第1フィルタユニットの模式図である。
図3】第1実施形態の薬液供給方法のフローチャートである。
図4】第1実施形態の薬液供給システムにおける、フィルタによる異物の捕集率と、フィルタ交換後からの経過時間及びフィルタ通過総粒子数の関係を示す模式図である。
図5】第2実施形態の薬液供給システムの模式図である。
図6】第2実施形態の第2フィルタユニットの模式図である。
図7】第3実施形態の薬液供給システムの模式図である
図8】第3実施形態の薬液供給方法のフローチャートである。
【0007】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。なお、図面中、同一又は類似の箇所には、同一又は類似の符号を付している。
【0008】
(第1実施形態)
本実施形態の薬液供給システムは、薬液を貯留するタンクと、タンクに接続され、薬液を送液する第1配管と、第1配管に接続され、薬液が濾過される第1フィルタを有する第1フィルタユニットと、第1フィルタユニットに接続され、第1フィルタによって濾過された薬液を送液する第2配管と、第1配管に接続された液中異物検知装置と、を備える。
【0009】
本実施形態の薬液供給方法は、薬液を貯留するタンクから、タンクに接続された第1配管を用いて、第1フィルタを有する第1フィルタユニットに薬液を送液し、第1フィルタユニットに接続された第2配管を用いて、第1フィルタによって濾過された薬液を送液し、第1配管内の薬液内の異物の量、及び薬液の流量を用いて、第1フィルタの良否を判断する。
【0010】
図1は、本実施形態の薬液供給システムの模式図である。図2は、本実施形態のフィルタユニットの模式図である。
【0011】
図1図2及び図3を用いて、本実施形態の薬液供給システム100について説明をする。
【0012】
薬液供給システム100は、タンク2と、ポンプ4と、第1配管8と、第2配管10と、第5配管16と、第6配管18と、第1バルブ30と、第2バルブ32と、第5バルブ34と、第6バルブ40と、液中異物検知装置50と、計算装置52と、判断装置54と、閾値保存装置56と、制御装置58と、通報装置60と、第1フィルタユニット70と、流量計80と、を備える。
【0013】
タンク2は内部に薬液を貯留するタンクである。薬液は、例えばHCl(塩酸)、HSO(硫酸)、DIW(DE-IONIZED WATER:超純水)、NH(アンモニア)水溶液、CHCOOH(酢酸)、HF(フッ化水素)水溶液又はIPA(イソプロピルアルコール)等であるが、特に上記のものに限定されるものではない。
【0014】
第1配管8は、タンク2及び第1フィルタユニット70に接続されている。第1配管8は、タンク2内の薬液を、第1フィルタユニットに送液する。
【0015】
なお、第1配管8には、第1バルブ30が設けられている。
【0016】
図2(a)は、ノンカートリッジ方式の、第1フィルタユニット(フィルタユニットの一例)70の模式図である。第1フィルタユニット70は、第1容器70aと、第1容器70a内に設けられた第1フィルタ70bと、蓋70cと、第1フィルタユニット接続バルブ71aと、第2フィルタユニット接続バルブ71bと、を有する。第1フィルタユニット接続バルブ71aは、第1配管8に接続されている。第2フィルタユニット接続バルブ71bは、第2配管10に接続されている。第1フィルタ70bを交換する場合には、蓋70cを開けて、第1容器70aから第1フィルタ70bを取出し、新しい第1フィルタ70bを第1容器70a内に入れて蓋70cを締める。薬液は、第1配管8から第1フィルタユニット接続バルブ71aを経由して第1容器70a内に入る。第1容器70a内に入った薬液は、例えば図2(a)に点線で示したような経路を通り、第1フィルタ70bにより濾過される。その後薬液は、第2フィルタユニット接続バルブ71bを経由して第2配管10へ供給される。
【0017】
図2(b)は、カートリッジ方式の、第1フィルタユニット(フィルタユニットの一例)70の模式図である。カートリッジ方式の第1フィルタユニット70は、第1容器70aの内部に第1フィルタ70bを有している。しかし、第1フィルタユニット70は、蓋70cを有していない。いわば、第1容器70aと第1フィルタ70bは一体となっており、第1フィルタ70bを交換する際には、第1フィルタユニット70ごと交換する。
【0018】
実施形態の薬液供給システム100においては、図2(a)に示したノンカートリッジ方式の第1フィルタユニット70、及び図2(b)に示したカートリッジ方式の第1フィルタユニット70のいずれであっても、好ましく用いることができる。
【0019】
第5配管16は、第2配管10に接続されている。第5配管16は、第1フィルタ70bによって濾過された薬液を、半導体製造装置のチャンバに供給する。本実施形態の半導体製造装置は、例えば、「チャンバA」、「チャンバB」、「チャンバC」、「チャンバD」、「チャンバE」を有する。ここで、半導体製造装置は、例えば枚葉式洗浄装置だが、これに限定されるものではない。本実施形態の薬液供給システム100は、このような半導体製造装置に対して、フィルタを用いて異物を除去した後の薬液を送液するためのシステムである。
【0020】
流量計80は、第2配管10に設けられている。流量計80は、第2配管10内を流れる薬液の流量を測定する。
【0021】
なお、第2配管10には、第2バルブ32が設けられている。
【0022】
第6配管18は、第2配管10に接続されている。第6配管18は、半導体製造装置に供給される薬液をサンプリングするために設けられている配管である。なお、第6配管18には、第5バルブ34が設けられている。
【0023】
第7配管20は、第1バルブ30を介して第1配管8に接続されている。なお、第7配管20には、第6バルブ40が設けられている。
【0024】
液中異物検知装置50は、第7配管20及び第1バルブ30を介して第1配管8に接続されている。液中異物検知装置50は、第1配管8内の薬液内の異物を検知する。ここで、異物とは、例えば金属又はシリカ(SiOx)であるが、これに限定されるものではない。
【0025】
例えば、液中異物検知装置50は、図示しない透明流路を有する。かかる透明流路に、薬液が供給される。薬液が供給された透明流路に流れ、レーザー光を照射しその後、液中異物検知装置50は、図示しないカメラやセンサ等を用いて、透明容器内の薬液中に浮遊する異物を検出する。なお、液中異物検知装置50の機構は、これに限定されるものではない。
【0026】
計算装置52は、流量計80及び液中異物検知装置50に接続されている。計算装置52は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量、経過時間測定装置62により測定された第1フィルタ70bの使用時間、及び流量計80により測定された、第2配管10内を流れる薬液の流量を用いて、フィルタ通過総粒子数を計算する。ここで、フィルタ通過総粒子数は、第1フィルタ70bを通過した異物の数の総和であり、例えば「フィルタ通過総粒子数=異物(counts/ml)×1000(ml)×積算流量(L)」で計算されるものである。異物(counts/ml)は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量である。例えば、流量計80により測定された薬液の流量が一定である場合を考える。第1フィルタ70bの使用時間(第1フィルタ70bが薬液を濾過するために使用された時間)を、経過時間測定装置62により測定する。経過時間測定装置62は、例えばストップウォッチや時計である。そして、流量計80により測定された流量と、経過時間測定装置62により測定された使用時間の積を求めることにより、積算流量が計算される。なお、フィルタ通過総粒子数の計算方法は上記のものに限定されない。例えば、第2配管10内の流量の時間変化が大きい場合には、あらかじめ流量の時間変化を流量計80及び経過時間測定装置62を用いて測定しておく。流量の時間変化が測定されれば、積算流量(L)の計算は、流量の時間による積分を求めることにより容易に計算される。
【0027】
液中異物検知装置50、経過時間測定装置62及び計算装置52は、フィルタ通過総粒子数推定部として機能する。
【0028】
第2配管10内の薬液の流量は、流量計80を用いて測定する方法の他に、他の方法によっても測定することが出来る。例えば、第2配管10内の薬液の流量は、タンク2内の薬液の残量の変化を用いて測定することが出来る。また、第2配管10内の薬液の流量は、例えば、ポンプ4の送液量を用いて測定することが出来る。
【0029】
判断装置54は、液中異物検知装置50により検知された薬液内の異物の量、前記薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bの良否を判断する。例えば、判断装置54は、上記のフィルタ通過総粒子数を用いて第1フィルタ70bの良否を判断する。しかし、判断装置54が第1フィルタ70bの良否を判断する手法は、これに限定されない。
【0030】
閾値保存装置56は、判断装置54が第1フィルタ70bの良否の判断に用いるための閾値を保存する。
【0031】
制御装置58は、判断装置54の判断に基づき、例えばポンプ4を用いて、第1フィルタ70bへの薬液の送液量を制御する。例えば、制御装置58は、ポンプ4を停止させて、第1フィルタへの薬液の送液を停止することが出来る。なお、制御装置58は、例えば、第1バルブ30、第2バルブ32、第5バルブ34及び第6バルブ40の開閉を制御してもかまわない。
【0032】
通報装置60は、判断装置54の第1フィルタ70bの良否に基づく通報を発する。通報装置90は、チャイム、サイレン、ランプ、液晶等のモニタ、等である。
【0033】
計算装置52、判断装置54及び制御装置58は、例えば、電子回路である。計算装置52、判断装置54及び制御装置58は、例えば、演算回路等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアの組み合わせで構成されるコンピュータである。
【0034】
閾値保存装置56は、ハードディスクドライブ又は半導体メモリ等である。
【0035】
図3は、本実施形態の薬液供給方法のフローチャートである。
【0036】
まず、経過時間測定装置62は、第1フィルタ70bを薬液が流れはじめてから経過した時間の計測を開始する(S2)。
【0037】
次に、液中異物検知装置50は、第1配管8の計測を行う(S4)。そして、液中異物検知装置50は、第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S6)。
【0038】
次に、第2配管10の流量の計測を行う(S8)。例えば、第2配管10に設けられた流量計80を用いて、第2配管10の流量の計測を行うことが出来る。しかし、第2配管10の流量の計測方法は、これに限定されるものではない。
【0039】
次に、計算装置52は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量、及び第2配管10内の薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bを通過した、フィルタ通過総粒子数を計算する(S10)。
【0040】
次に、判断装置54は、計算装置52によって計算されたフィルタ通過総粒子数と、閾値保存装置56に保存された第1閾値(閾値の一例)を比較し、フィルタ通過総粒子数が第1閾値より小さいか否かを判断する(S12)。フィルタ通過総粒子数が第1閾値より小さい場合には、再び第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S6)。一方、フィルタ通過総粒子数が第1閾値以上である場合には、通報装置60は、フィルタ状態が第1状態である旨の通報を行う(S14)。
【0041】
次に、液中異物検知装置50は、第1配管8の計測を行う(S16)。そして、液中異物検知装置50は、第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S18)。次に、第2配管10の流量を計測する(S20)。次に、計算装置52は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量、及び第2配管10内の薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bを通過した、フィルタ通過総粒子数を計算する(S22)。
【0042】
次に、判断装置54は、計算装置52によって計算されたフィルタ通過総粒子数と、閾値保存装置56に保存された第2閾値(閾値の一例)を比較し、フィルタ通過総粒子数が第2閾値より小さいか否かを判断する(S12)。フィルタ通過総粒子数が第2閾値より小さい場合には、再び第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S18)。一方、フィルタ通過総粒子数が第2閾値以上である場合には、通報装置60は、フィルタ状態が第2状態である旨の通報を行う(S26)。
【0043】
次に、例えば判断装置54は、例えばフィルタ状態が第1状態である旨の通報(S14)を行ってからフィルタ状態が第2状態である旨の通報(S26)がされるまでの時間に基づき、第3閾値を修正する(S28)。例えば判断装置54は、かかる時間が短い場合に、第3閾値を低くする。なお、上記の記載は一例に過ぎない。例えば判断装置54は、フィルタ状態が第1状態である旨の通報がされてから、フィルタ状態が第2状態である旨の通報がされるまでの時間に基づき、第3閾値を修正してもかまわない。
【0044】
次に、液中異物検知装置50は、第1配管8の計測を行う(S30)。そして、液中異物検知装置50は、第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S32)。次に、第2配管10の流量を計測する(S34)。次に、計算装置52は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量、及び第2配管10内の薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bを通過した、フィルタ通過総粒子数を計算する(S36)。
【0045】
次に、判断装置54は、計算装置52によって計算されたフィルタ通過総粒子数と、閾値保存装置56に保存された第3閾値(閾値の一例)を比較し、フィルタ通過総粒子数が第3閾値より小さいか否かを判断する(S38)。フィルタ通過総粒子数が第3閾値より小さい場合には、再び第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S32)。一方、フィルタ通過総粒子数が第3閾値以上である場合には、通報装置60は、フィルタ状態が第3状態である旨の通報を行う(S40)。
【0046】
例えば「第1状態」は、第1フィルタ70bが「交換アラート」の状態であることを示す。例えば「第1状態」は、第1フィルタ70bはまだ十分に使用可能であるが、少しずつ劣化しつつある状態であることを示す。
【0047】
例えば「第2状態」は、第1フィルタ70bが「交換警報」の状態であることを示す。例えば「第2状態」は、第1フィルタ70bの交換時期が近いことを示す。
【0048】
例えば「第3状態」は、第1フィルタ70bが「交換」の状態であることを示す。例えば「第3状態」は、第1フィルタ70bの交換が求められていることを示す。
【0049】
次に、本実施形態の薬液供給システム及び薬液供給方法の作用効果を示す。
【0050】
第1比較例として、第1配管8及び第2配管10の圧力を測定し、第1フィルタ70bに加わる差圧ΔPを計算に基づいて第1フィルタ70bの交換が求められているか否かを判断することが考えられる。すなわち、差圧ΔPが所定の圧力より大きくなったか否かに基づいて、第1フィルタ70bに異物が一定量以上蓄積しているか否かを判断することが考えられる。また、第2比較例として、第1フィルタ70bを所定の期間以上使用したか否かに基づいて、第1フィルタ70bに異物が一定量以上蓄積しているか否かを判断することが考えられる。
【0051】
上記のように、第1比較例および第2比較例は、第1フィルタ70bに異物が一定量以上蓄積しているか否かを、差圧ΔPおよび/または使用期間に基づいて、間接的に判断している。しかし、差圧ΔPは、異物の蓄積以外の理由によっても低下する場合がある。また、第1フィルタ70bが所定の使用期間を超えて使用されても、異物が一定量以上蓄積されていない場合がある。
【0052】
図4は、本実施形態の薬液供給システム100における、第1フィルタ70bによる異物の捕集率と、第1フィルタ70b交換後からの経過時間及びフィルタ通過総粒子数の関係を示す模式図である。
【0053】
図4(a)は、本実施形態の薬液供給システム100における、第1フィルタ70bによる異物の捕集率と、第1フィルタ70b交換後からの経過時間の関係を示す模式図である。例えば、経過時間が短くても異物の捕集率が早期に低下してしまうフィルタ1や、経過時間が長くても異物の捕集率がなかなか低下しないフィルタ3が存在する場合、フィルタ交換後からの経過時間(期間)のみでは、フィルタの交換時期を適切に見積もることができない。
【0054】
本実施形態の薬液供給システムは、薬液を貯留するタンク2と、タンク2に接続され、薬液を送液する第1配管8と、第1配管8に接続され、薬液が濾過される第1フィルタ70bを有する第1フィルタユニット70と、第1フィルタユニット70に接続され、第1フィルタ70bによって濾過された薬液を送液する第2配管10と、第1配管8に接続された液中異物検知装置と、を備える。
【0055】
本実施形態の薬液供給システム100では、第1配管8に接続された液中異物検知装置50を用い、第1配管8内の薬液の異物を検出する。言い換えると、第1フィルタ70bに入る前の薬液の異物を検出する。これにより、第1フィルタ70bを通過する異物の粒子数を求めて、フィルタの交換時期を精度良く求めることが出来る。そのため、フィルタを無駄に交換することによるコストを抑制しつつ、健全な状態でフィルタを利用可能な薬液供給システムの提供が可能となる。
【0056】
図4(b)は、本実施形態の薬液供給システム100における、第1フィルタ70bによる異物の捕集率と、フィルタ通過総粒子数の関係を示す模式図である。捕集率とフィルタ通過総粒子数の間には良い相関がある。そのため、第1フィルタ70bを通過する異物の粒子数を用いて、フィルタの交換時期を精度良く求めることが出来る。
【0057】
本実施形態の薬液供給システム100は、液中異物検知装置50により検知された薬液内の異物の量、及び薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bの良否を判断する判断装置54をさらに備えることが好ましい。薬液の流量を用いることにより、第1フィルタ70bを通過する異物の粒子数をさらに精度良く求めることが出来るためである。
【0058】
ここで流量は、例えば第2配管10に設けられた流量計80を用いて測定することが出来る。第2配管10は、第1フィルタ70bを通過した薬液が流れる配管である。そのため、第2配管10に流量計80を設けることにより、実際に第1フィルタ70bを通過した薬液はどの程度の量なのかを求めることが出来る。なお、流量は、第1配管8に設けられ薬液を送液するポンプの送液量を用いて測定しても良いし、タンク2内の薬液の残量の変化を用いて測定しても良い。
【0059】
本実施形態の薬液供給システム100は、判断装置54の判断結果に基づき、第1フィルタ70bへの薬液の送液量を制御する制御装置58をさらに備えることが好ましい。例えば、第1フィルタ70bの交換が求められている場合にまで薬液の送液を続行すると、第1フィルタ70bが急に詰まってしまうことが考えられるためである。そのため、例えば、第1フィルタ70bに異物が蓄積されるに従い、薬液の送液量を少なくすることが好ましい。
【0060】
判断装置54の第1フィルタ70bの良否に基づく通報を発する通報装置60を備えることにより、薬液供給システム100のオペレータはより容易に第1フィルタ70bの交換時期を把握することが出来る。
【0061】
第1フィルタ70bの良否の判断に用いられる閾値保存装置56をさらに備えることにより、判断装置54の判断を再現性良く行うことが出来る。
【0062】
判断装置54は、例えば時間計測を開始してからフィルタ状態が第2状態である旨の通報がされるまでの時間に基づき、第3閾値を修正することが好ましい。また、判断装置54は、フィルタ状態が第1状態である旨の通報がされてから、フィルタ状態が第2状態である旨の通報がされるまでの時間に基づき、第3閾値を修正しても良い。これは、たとえフィルタ通過総粒子数に基づき第1フィルタ70bを管理してもフィルタ寿命にどうしてもバラツキが出来るため、フィルタ状態の変化の速度に応じてフィルタを精度良く管理しようとするものである。
【0063】
例えば、第1フィルタ70bの捕集率を、フィルタ通過総粒子数に基づき、図4(c)に示すように、「フィルタX」のような特性であると仮定して管理することを考える。しかし、実際には、図4(c)に示した「フィルタY」のように、より少ないフィルタ通過総粒子数で捕集率が低下する場合が想定し得る。また、実際には、図4(c)に示した「フィルタZ」のように、より多いフィルタ通過総粒子数で捕集率が低下する場合が想定し得る。そこで、例えば第3閾値等の閾値を修正することにより、さらにフィルタを精度良く管理しようとするものである。
【0064】
本実施形態の薬液供給システム及び薬液供給方法によれば、健全な状態でフィルタを利用可能な薬液供給システム及び薬液供給方法の提供が可能となる。
【0065】
(第2実施形態)
本実施形態の薬液供給システム110は、タンク2に接続され、薬液を送液し、第1配管8と同一の配管長を有する第3配管12と、第3配管12に接続され、薬液が濾過される第2フィルタ72bを有する第2フィルタユニット72と、第2フィルタユニット72に接続され、第2フィルタ72bによって濾過された薬液を送液する第4配管14と、を備える点で、第1実施形態の薬液供給システム100と異なっている。ここで、第1実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0066】
図5は、本実施形態の薬液供給システム110の模式図である。タンク2に配管6が接続されている。配管6にポンプ4が設けられている。配管6の配管端部6aに、第1配管8及び第3配管12が接続されている。すなわち、第1配管8は、配管6を介してタンク2に接続されている。また、第3配管12は、配管6を介してタンク2に接続されている。第1配管8の配管長はL+Lである。第3配管12の配管長はL+Lである。そして、L+L=L+Lである。すなわち、第1配管8の配管長と、第3配管12の配管長は、等しい。
【0067】
第2フィルタユニット72は、第3配管12に接続されている。
【0068】
なお、第3配管12には、第3バルブ36が設けられている。
【0069】
図6(a)は、ノンカートリッジ方式の、第2フィルタユニット72の模式図である。第2フィルタユニット72は、第2容器72aと、第2容器72a内に設けられた第2フィルタ72bと、蓋72cと、第3フィルタユニット接続バルブ73aと、第4フィルタユニット接続バルブ73bと、を有する。第3フィルタユニット接続バルブ73aは、第3配管12に接続されている。第4フィルタユニット接続バルブ73bは、第4配管14に接続されている。第2フィルタ72bを交換する場合には、蓋72cを開けて、第2容器72aから第2フィルタ72bを取出し、新しい第2フィルタ72bを第2容器72a内に入れて蓋72cを締める。薬液は、第3配管12から第3フィルタユニット接続バルブ73aを経由して第2容器72a内に入る。第2容器72a内に入った薬液は、例えば図6(a)に点線で示したような経路を通り、第2フィルタ72bにより濾過される。その後薬液は、第4フィルタユニット接続バルブ73bを経由して第4配管14へ供給される。
【0070】
図6(b)は、カートリッジ方式の、第2フィルタユニット72の模式図である。カートリッジ方式の第2フィルタユニット72は、第2容器72aの内部に第2フィルタ72bを有している。しかし、第2フィルタユニット72は、蓋72cを有していない。いわば、第2容器72aと第2フィルタ72bは一体となっており、第2フィルタ72bを交換する際には、第2フィルタユニット72ごと交換する。
【0071】
実施形態の薬液供給システム110においては、図6(a)に示したノンカートリッジ方式の第2フィルタユニット72、及び図6(b)に示したカートリッジ方式の第2フィルタユニット72のいずれであっても、好ましく用いることができる。
【0072】
本実施形態の薬液供給システム110においては、フィルタユニットが2個(第1フィルタユニット70及び第2フィルタユニット72)設けられている。これにより、例えば、一方のフィルタユニットのフィルタを交換している間にも、他方のフィルタユニットを使って薬液の供給を継続出来る。ここで、もしも第1フィルタ70bの寿命と第2フィルタ72bの寿命が大幅に異なる場合、健全な状態で複数のフィルタを利用可能とすることが困難になる。
【0073】
そこで、本実施形態の薬液供給システム110では、第3配管12の配管長と第1配管8の配管長を等しいものとしている。これにより、第1フィルタ70bを流れる薬液の流量と、第2フィルタ72bを流れる薬液の流量の差を、より少なくすることが出来る。そのため、第1フィルタ70bに対応する第1配管8と第2フィルタ72bに対応する第3配管12のうち一方にフィルタ通過総粒子数推定部(液中異物検知装置50、経過時間測定装置62及び計算装置52)を設けることにより、フィルタを無駄に交換することによるコストを抑制しつつ、健全な状態で両方のフィルタを利用することが可能となる。
【0074】
第3配管12には、液中異物検知装置50は接続されていない。上記の通り、本実施形態の薬液供給システム110では、第1フィルタ70bを流れる薬液の流量と、第2フィルタ72bを流れる薬液の流量の差を、より少なくすることが出来る。よって、第1フィルタ70bのフィルタ通過総粒子数と第2フィルタ72bのフィルタ通過総粒子数の差は少ないと考えられるため、第1配管8にのみ液中異物検知装置50を接続すれば良い。言い換えると、第3配管12に液中異物検知装置50を接続しなくてもよい。なお、一般的に、液中異物検知装置50に流れる薬液の流量は、第1配管8を流れる薬液の流量に比べればはるかに少ないため、無視できる。なお、第1配管8ではなく第3配管に液中異物検知装置50が設けられていてもかまわない。
【0075】
本実施形態の薬液供給システム及び薬液供給方法によれば、健全な状態で複数のフィルタを利用可能な薬液供給システム及び薬液供給方法の提供が可能となる。
【0076】
(第3実施形態)
本実施形態の薬液供給システム120は、タンク2に接続され、薬液を送液し、減圧バルブ42を有し、第1配管8より配管長の短い第3配管12と、第3配管12に接続され、薬液が濾過される第2フィルタ72bを有する第2フィルタユニット72と、第2フィルタユニット72に接続され、第2フィルタ72bによって濾過された薬液を送液する第4配管14と、をさらに備える点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。ここで、第1実施形態及び第2実施形態と重複する内容の記載は省略する。
【0077】
図7は、本実施形態の薬液供給システム120の模式図である。第1配管8の配管長はL+Lである。第3配管12の配管長はL+Lである。そして、L+L>L+Lである。すなわち、第3配管12の配管長は、第1配管8の配管長より短い。また、第3配管12には、第3バルブ36の代わりに、減圧バルブ42が設けられている。
【0078】
図8は、本実施形態の薬液供給方法のフローチャートである。
【0079】
まず、液中異物検知装置50は、第1配管8の計測を行う(S50)。そして、液中異物検知装置50は、第1配管8内の薬液内の異物の量を検知する(S52)。
【0080】
次に、第2配管10内の薬液の流量及び第4配管14内の薬液の流量の計測を行う(S8)。例えば、第2配管10に設けられた流量計80及び第4配管14に設けられた流量計82を用いて、第2配管10内の薬液の流量及び第4配管14内の薬液の流量の計測を行うことが出来る。しかし、第2配管10内の薬液の流量及び第4配管14内の薬液の流量の計測方法は、これに限定されるものではない。
【0081】
次に、計算装置52は、液中異物検知装置50により検知された第1配管8内の薬液内の異物の量、第2配管10内の薬液の流量、及び第4配管14内の薬液の流量を用いて、第1フィルタ70bのフィルタ通過総粒子数及び第2フィルタ72bのフィルタ通過総粒子数を計算する(S56)。ここで、例えば、第3配管12内の異物の量は、第1配管8内の異物の量と等しいものとする。第1配管8、第3配管12いずれを流れる薬液も、同一のタンク2に貯留されていたものだからである。
【0082】
次に、判断装置54は、第1フィルタ70bのフィルタ通過総粒子数及び第2フィルタ72bのフィルタ通過総粒子数を比較する(S58)。第1フィルタ70bのフィルタ通過総粒子数が第2フィルタ72bのフィルタ通過総粒子数より多い場合は、判断装置54は、減圧バルブ42を用いて、第1フィルタ70bによって濾過される薬液の流量を、第2フィルタ72bによって濾過される薬液の流量よりも少なくする。一方、第1フィルタ70bのフィルタ通過総粒子数が第2フィルタ72bのフィルタ通過総粒子数以下である場合には、減圧バルブ42を用いて、第2フィルタ72bによって濾過される薬液の流量を、第1フィルタ70bによって濾過される薬液の流量よりも少なくする(S60、S62、S68)。
【0083】
次に、判断装置54は、フィルタ通過総粒子数が閾値保存装置56に保存された閾値より小さいかどうかを判断する(S64、S70)。フィルタ通過総粒子数が閾値保存装置56に保存された閾値より小さい場合には、液中異物検知装置50は、第1配管8の計測を行う(S50)。一方、フィルタ通過総粒子数が閾値保存装置56に保存された閾値以上である場合には、フィルタ状態が所定状態である旨の通報を行う(S66、S72)。ここで、閾値は、例えば第1実施形態で記載した第1閾値、第2閾値及び第3閾値を好ましく用いることができる。また、所定状態としては、例えば第1実施形態で記載した第1状態、第2状態及び第3状態とすることができる。
【0084】
装置のレイアウトの関係等の理由で、第1配管8の配管長と第3配管12の配管長を等しくすることが出来ない場合に、本実施形態の薬液供給システム120は有用である。なお、減圧バルブ42を、配管長のより短い第3配管12に設ける理由は、配管長の短い第3配管12の方が、第1配管8と比較して、より多くの薬液が流れやすいためである。なお、勿論第1配管にも図示しない減圧バルブをさらに設けても構わない。
【0085】
本実施形態の薬液供給システム及び薬液供給方法によっても、健全な状態で複数のフィルタを利用可能な薬液供給システム及び薬液供給方法の提供が可能となる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 :フィルタ
2 :タンク
4 :ポンプ
8 :第1配管
10 :第2配管
12 :第3配管
14 :第4配管
42 :減圧バルブ
50 :液中異物検知装置
54 :判断装置
56 :閾値保存装置
58 :制御装置
60 :通報装置
70 :第1フィルタユニット
70b :第1フィルタ
72 :第2フィルタユニット
72b :第2フィルタ
80 :流量計
90 :通報装置
100 :薬液供給システム
110 :薬液供給システム
120 :薬液供給システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8