IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図1
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図2
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図3
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図4
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図5
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図6
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図7
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図8
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図9
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図10
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図11
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図12
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図13
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図14
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図15
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図16
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図17
  • 特許-注意喚起システム、及び注意喚起方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】注意喚起システム、及び注意喚起方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240924BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240924BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240924BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60K35/23
B60W50/14
G08G1/16 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021040552
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139953
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 俊明
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雄也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 実
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197407(JP,A)
【文献】特表2017-532644(JP,A)
【文献】国際公開第2013/011588(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60K 35/23
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体のフロントガラス上に前記移動体の操縦者が視認可能な視覚表示を出力する投光装置と、
前記投光装置を制御して、前記視覚表示により前記移動体の周囲の対象物に対する前記操縦者の注意を喚起する注意喚起装置と、
を備える、注意喚起システムであって、
前記注意喚起装置は、
前記移動体の周囲エリアにある対象物を検知する検知部と、
検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類する分類部と、
検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するリスク算出部と、
前記投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力する注意喚起部と、
前記移動体の室内に備えられた室内カメラにより、前記移動体の操縦者の視線の動き検知して、前記操縦者が前記対象物を視認したか否かを判断し、及び前記操縦者について、前記対象物を視認したときから前記移動体についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測する挙動検知部と、
前記対象物のそれぞれについて、前記実反応時間から、当該対象物が分類された前記カテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して得られる反応遅れ時間に基づき、当該操縦者の当該カテゴリについての反応習熟度を算出して、前記カテゴリごとの前記反応習熟度を反応習熟度情報として記憶装置に記憶する反応スキル評価部と、
を有し、
前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、
前記注意喚起部は、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、前記反応習熟度情報が示す当該対象物の前記カテゴリについての前記操縦者の反応習熟度と、当該対象物について算出されたリスク度と、に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、
注意喚起システム。
【請求項2】
記注意喚起部は、前記挙動検知部において前記操縦者が前記対象物を視認していないと判断されるときは、当該対象物についての前記視覚表示の誘目性のレベルを時間と共に上昇させる、
請求項1に記載の注意喚起システム。
【請求項3】
前記反応スキル評価部は、前記操縦者の視線が前記対象物に滞留した時間が所定時間を越えたときに、前記操縦者が前記対象物を視認したと判断する、
請求項に記載の注意喚起システム。
【請求項4】
コンピュータにより実行される注意喚起方法であって、
移動体の周囲エリアにある対象物を検知するステップと、
検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類するステップと、
検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するステップと、
前記移動体に設けられた投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力するステップと、
前記移動体の室内に備えられた室内カメラにより、前記移動体の操縦者の視線の動き検知して、前記操縦者が前記対象物を視認したか否かを判断するステップと、
前記操縦者について、前記対象物を視認したときから前記移動体についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測するステップと、
前記対象物のそれぞれについて、前記実反応時間から、当該対象物が分類された前記カテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して得られる反応遅れ時間に基づき、当該操縦者の当該カテゴリについての反応習熟度を算出して、前記カテゴリごとの前記反応習熟度を反応習熟度情報として記憶装置に記憶するステップと、
を有し、
前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、
前記視覚表示を出力するステップでは、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、前記反応習熟度情報が示す当該対象物の前記カテゴリについての前記操縦者の反応習熟度と、当該対象物について算出されたリスク度と、に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、
注意喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の操縦者に当該移動体の周囲の実在物に対する注意を喚起する注意喚起システム、及び注意喚起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操縦者に、当該車両(以下、自車両)の周囲環境において見落としがちな交通参加者に対する注意を喚起することができれば、便宜である。
【0003】
従来、自車両のフロントガラス上において、操縦者の位置から見た先行車両の実体に重ねて当該先行車両の輪郭画像を表示する車両用画像表示システムが知られている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、市街地のような交通参加者の多い交通環境において、上記従来の表示システムの技術を用いて運転者に交通参加者に関する注意喚起を行おうとすると、フロントガラス上には個々の交通参加者に重ねて多数の輪郭画像が表示されることとなり、却って操縦者の注意を散逸させることとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-021546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、操縦者の注意力を散逸させることなく、移動体の周囲環境に存在する様々な実在物に対する操縦者の注意を喚起することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、移動体のフロントガラス上に前記移動体の操縦者が視認可能な視覚表示を出力する投光装置と、前記投光装置を制御して、前記視覚表示により前記移動体の周囲の対象物に対する前記操縦者の注意を喚起する注意喚起装置と、を備える、注意喚起システムであって、前記注意喚起装置は、前記移動体の周囲エリアにある対象物を検知する検知部と、検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類する分類部と、検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するリスク算出部と、前記投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力する注意喚起部と、前記移動体の室内に備えられた室内カメラにより、前記移動体の操縦者の視線の動き検知して、前記操縦者が前記対象物を視認したか否かを判断し、及び前記操縦者について、前記対象物を視認したときから前記移動体についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測する挙動検知部と、前記対象物のそれぞれについて、前記実反応時間から、当該対象物が分類された前記カテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して得られる反応遅れ時間に基づき、当該操縦者の当該カテゴリについての反応習熟度を算出して、前記カテゴリごとの前記反応習熟度を反応習熟度情報として記憶装置に記憶する反応スキル評価部と、を有し、前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、前記注意喚起部は、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、前記反応習熟度情報が示す当該対象物の前記カテゴリについての前記操縦者の反応習熟度と、当該対象物について算出されたリスク度と、に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、注意喚起システムである。
本発明の他の態様によると、記注意喚起部は、前記挙動検知部において前記操縦者が前記対象物を視認していないと判断されるときは、当該対象物についての前記視覚表示の誘目性のレベルを時間と共に上昇させる。
本発明の他の態様によると、前記反応スキル評価部は、前記操縦者の視線が前記対象物に滞留した時間が所定時間を越えたときに、前記操縦者が前記対象物を視認したと判断する。
本発明の他の態様は、コンピュータにより実行される注意喚起方法であって、移動体の周囲エリアにある対象物を検知するステップと、検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類するステップと、検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するステップと、前記移動体に設けられた投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力するステップと、前記移動体の室内に備えられた室内カメラにより、前記移動体の操縦者の視線の動き検知して、前記操縦者が前記対象物を視認したか否かを判断するステップと、前記操縦者について、前記対象物を視認したときから前記移動体についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測するステップと、前記対象物のそれぞれについて、前記実反応時間から、当該対象物が分類された前記カテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して得られる反応遅れ時間に基づき、当該操縦者の当該カテゴリについての反応習熟度を算出して、前記カテゴリごとの前記反応習熟度を反応習熟度情報として記憶装置に記憶するステップと、を有し、前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、前記視覚表示を出力するステップでは、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、前記反応習熟度情報が示す当該対象物の前記カテゴリについての前記操縦者の反応習熟度と、当該対象物について算出されたリスク度と、に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、注意喚起方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操縦者の注意力を散逸させることなく、移動体の周囲環境に存在する様々な実在物に対する操縦者の注意を喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る注意喚起システムが搭載される車両の、車室前方の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る注意喚起システムの構成を示す図である。
図3図2に示す注意喚起システムによりフロントガラスに表示される視覚表示の一例を示す図である。
図4図2に示す注意喚起システムにおける動作の手順を示すフロー図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る注意喚起システムの構成を示す図である。
図6図5に示す注意喚起システムの認知スキル評価部が記憶装置に保存する認知習熟度情報の一例を示す図である。
図7図5に示す注意喚起システムによりフロントガラスに表示される視覚表示の一例を示す図である。
図8図5に示す注意喚起システムにおける動作の手順を示すフロー図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る注意喚起システムの構成を示す図である。
図10図9に示す注意喚起システムによりフロントガラスに表示される視覚表示の一例を示す図である。
図11図10に示す視覚表示の時間変化の一例を示す図である。
図12図9に示す注意喚起システムにおける動作の手順を示すフロー図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る注意喚起システムの構成を示す図である。
図14図13に示す注意喚起システムが搭載される車両の車室内における投光装置の配置の例を示す図である。
図15図13に示す注意喚起システムにおいて定義される、車両を中心とする角度エリアの一例を示す図である。
図16図13に示す注意喚起システムにおいてHUDに表示される対象物レーダ表示の一例を示す図である。
図17】対象物レーダ表示における種々の表示態様の例を示す図である。
図18図13に示す注意喚起システムにおける動作の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る注意喚起システムが搭載される移動体である車両100の、車室前方の構成を示す図である。また、図2は、第1の実施形態に係る注意喚起システム120の構成を示す図である。なお、車両100の他の部分の構成については、後述において他の実施形態に関連付けて説明する。
【0011】
車両100は、本実施形態では、四輪自動車である。なお、図1において、Z軸は、車両100の車高方向、X軸は、車両100の車幅方向、及びY軸は、車両100の長さ方向(または、直進方向)を示す。以下では、車高方向(Z軸方向)に直交する方向(X軸方向およびY軸方向を含む)を水平方向ともいうものとする。
【0012】
図1を参照し、車両100の車室内には、運転席である操縦席102と助手席103とが設けられている。また、車両100の車室内には、ステアリングホイール104、車外と車室内とを区分するフロントガラス105、及びインストルメントパネル106が設けられている。また、車両100には、操縦者が車両100の後方および後側方を視認するためのルームミラー110、左フェンダミラー(又は左ドアミラー)112、および右フェンダミラー(又は右ドアミラー)114が設けられている。
【0013】
図2を参照し、注意喚起システム120は、車両100の室内に設けられた、フロントガラス105上に操縦者が視認可能な視覚表示を出力する前方投光装置122と、前方投光装置122を制御して上記視覚表示により対象物に対する操縦者の注意を喚起する注意喚起装置124と、により構成される。前方投光装置122は、フロントガラス105上に所定形状(例えば、矩形等の図形形状)の光を投光することにより視覚表示を出力する。
【0014】
図1を参照し、前方投光装置122は、本実施形態では、フロントガラス105の下方のインストルメントパネル106に車幅方向に沿って配された複数の光源で構成される光源アレイ、例えば複数の色の光を投光し得るLEDアレイである。前方投光装置122は、注意喚起装置124の制御の下に、フロントガラス105に投光することで、フロントガラス105の表示可能上限線L1の下方に、操縦者の視線を誘導する視覚表示VIを表示する。表示可能上限線L1は、像を表示可能なフロントガラス105の上下方向(車高方向)における上限の位置を示している。表示可能上限線L1が示す上限の位置は、法規で定められている。たとえば、この上限の位置は、国内法や国内規則等で制限されることもある。
【0015】
視覚表示VIは、フロントガラス105に投光された所定サイズの光で形成される。例えば、視覚表示VIは、上記投光された光の反射光により操縦者の視野に結像する虚像である。フロントガラス105上における視覚表示VIの位置および大きさ(水平方向の長さ)は、例えば、前方投光装置122を構成する複数の光源のうちフロントガラス105への投光に用いる光源を選択することにより決定され得る。
【0016】
フロントガラス105の表示可能上限線L1の下方には、視覚表示VIの表示範囲HAが延在する。表示範囲HAは、所定の幅(例えば、***)をもって車両100の車幅方向に延在するフロントガラス105上の帯状範囲である。表示範囲HAは、車両100の車高方向と直交する水平方向に延在する、フロントガラス105上の帯状範囲、ともいうことができる。
【0017】
なお、上述した光源アレイ又はLEDアレイは前方投光装置122の一例であって、前方投光装置122の構成はこれらには限られない。前方投光装置122は、上述した表示範囲HAに所定サイズ以上の視覚表示VIを投光できる限り、任意の構成を有し得る。例えば、前方投光装置122は、いわゆるプロジェクタであって、画像としての所定サイズ以上の視覚表示VIを表示範囲HAに表示するものであってもよい。
【0018】
図2を参照し、注意喚起装置124は、処理装置130と記憶装置131とを有する。記憶装置131は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。処理装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置130は、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有する構成であってもよい。そして、処理装置130は、機能要素又は機能ユニットとして、検知部132と、注意喚起部133と、を備える。
【0019】
処理装置130が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置130がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置130が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0020】
検知部132は、車両100の周囲エリアに存在する対象物を検知する。対象物としては、例えば車両100との相対速度から算出される当該車両100との接触確率が所定値以上である所定の実在物である。
【0021】
具体的には、検知部132は、車両100に設けられた当該車両100の前方の物体を検知する前方物体センサ140から映像(又は画像)を取得する。前方物体センサ140は、例えば、カメラ、レーザ、及び又はライダである。検知部132は、前方物体センサ140により得られる前方映像から、所定の実在物を検知し、例えば車両100との相対速度から算出される車両100との接触確率が所定値以上である実在物を、対象物として検知する。本実施形態では、所定の実在物は、車両および歩行者を含む交通参加者、並び道路標識、電柱および郵便ポスト等を含む固定物である。検知部132は、検知した対象物のそれぞれの位置情報を注意喚起部133へ送る。
【0022】
注意喚起部133は、前方投光装置122を制御して、車両100のフロントガラス105上の表示範囲HAに視覚表示を出力する。具体的には、注意喚起部133は、操縦者の位置から見た対象物の、フロントガラス105上の水平位置と同じ表示範囲HA内の水平位置に、視覚表示VIを表示する。
【0023】
より具体的には、注意喚起部133は、操縦席102に着座した標準的な操縦者の眼の位置と、検知部132から受信した対象物のそれぞれの位置情報から、操縦者がそれらの対象物を見たときの当該操縦者の視線が、フロントガラス105と交わる交点をそれぞれ算出する。そして、注意喚起部133は、上記算出したそれぞれの交点の水平位置と同じ、表示範囲HA内の水平位置のそれぞれに視覚表示VIを表示する。
【0024】
また、注意喚起部133は、車両100の周囲エリアのうち、車両100の操縦席に着座した操縦者の位置を中心として定義される所定の前方視野範囲から外れた位置において対象物が検知されたときは、車室内に分散して備えられた複数の室内スピーカ142により、操縦者に対し、当該対象物の方向定位のための音響を車室内に生じさせる。
【0025】
上記前方視野範囲は、操縦席に座った操縦者が顔を前方に向けたまま無理なく視認することのできる視野範囲であり、例えば、操縦席に座った操縦者の車両100の直進方向前方(図1に示すY方向)に向かう視線を中心として所定の視野角(例えば45度)で規定される範囲である。注意喚起部133は、検知部132から受信するそれぞれの対象物の位置情報から、上記所定の前方視野範囲から外れた位置で対象物が検知されたか否かを判断することができる。
【0026】
上記の構成を有する注意喚起システム120は、従来のようにフロントガラス上において対象物の実体に重ねて画像を表示するのではなく、フロントガラス105上において車幅方向に延在する帯状の表示範囲HAの、操縦者の位置から見た対象物の水平方向位置と同じ水平方向位置に、視覚表示VIを表示する。このため、注意喚起システム120では、操縦者にとって対象物と視覚表示VIとが重なって見える機会が減少するので、操縦者の注意力をより集中させる形で、車両100の周囲環境に存在する様々な交通参加者に対する操縦者の注意を喚起することができる。
【0027】
また、前方投光装置122は、フロントガラス105上に所定形状(例えば、矩形等の図形形状)の光を投光することにより視覚表示VIを出力するので、操縦者は、シンプルな視覚表示VIにより、その注意力を散逸させることなく、対象物に対する注意が喚起され得る。
【0028】
また、前方投光装置122は、例えば、フロントガラス105の下方において車幅方向に沿って配された複数の光源で構成され得るので、注意喚起システム120は、シンプルな構成により、操縦者に対し、対象物に対する注意を喚起することができる。
【0029】
また、注意喚起部133は、車両100の周囲エリアのうち、操縦席に着座した操縦者の位置を中心として定義される所定の前方視野範囲から外れた位置において対象物が検知されたときは、対象物の方向定位のための音響を車室内に生じさせる。このため、注意喚起システム120によれば、その視認に際して操縦者が顔を動かすことが必要となり得るエリアにおいて検知された対象物については、操縦者は音響によりその対象物の方向を定位することができるので、操縦者は、その注意力を散逸させることなく、対象物に対する注意が喚起され得る。
【0030】
また、注意喚起システム120では、対象物は、車両100との接触確率が所定値以上である実在物である。すなわち、注意喚起システム120は、車両100の運行にとってリスクとなり得る実在物に絞り込んで、その方向を示す視覚表示VIを表示するので、操縦者に対し、その注意力をより集中させる形で、対象物に対する注意を喚起することができる。
【0031】
図3は、注意喚起システム120によりフロントガラス105に表示される視覚表示VIの一例を示す図である。図3には、車両100の操縦者がフロントガラス105を介して見ている車両100の前方エリアの情景が示されている。図示のように、市街地の交差点がある前方エリアには、交差点の手前左方に駐車されている車両200と、前方の交差道路の左方から到来する車両201と、交差道路の右方から到来するバイク202が存在する。また、前方エリアには、自車両である車両100が走行する自車道路を横断する歩行者203と、自車道路の対向車線を走行する車両204と、が存在している。
【0032】
このとき、検知部132は、車両100と接触可能性のある対象物として、駐車中の車両200を除く車両201、204と、バイク202と、横断中の歩行者203と、を検知する。そして、注意喚起部133は、前方投光装置122により、フロントガラス105上の表示範囲HA内(図示点線で示す矩形の範囲)において、上記検知された対象物である車両201、204、バイク202、および歩行者203のそれぞれに対応する水平位置に、視覚表示VI-11、VI-12、VI-13、VI-14(図示ハッチングした矩形)を表示する。
【0033】
図4は、注意喚起システム120における動作の手順を示すフロー図である。図4に示す処理は、図2に示す検知部132が少なくとも一つの対象物を検知したときに、当該検知した対象物ごとに開始される。
【0034】
処理を開始すると、まず、注意喚起部133は、検知部132が検知した対象物のそれぞれの位置情報に基づき、前方投光装置122により、フロントガラス105上の表示範囲HA内に、上記検知された対象物のそれぞれに対応する水平位置に視覚表示VIを表示する(S100)。
【0035】
続いて、注意喚起部133は、検知部132から受信したその対象物の位置情報に基づき、その対象物が所定の前方視野範囲から外れた位置で検知されたものか否かを判断する(S102)。そして、その対象物が所定の前方視野範囲から外れた位置で検知されたものであるときは(S102、YES)、注意喚起部133は、操縦者に対しその対象物の方向定位のための音響を室内スピーカ142により出力する(S104)。
【0036】
続いて、注意喚起部133は、検知部132によりその対象物が検知されなくなったか否かを判断する(S106)。そして、その対象物が検知されなくなったときは(S106、YES)、注意喚起部133は、本処理を終了する。一方、その対象物が検知され続けているときは(S106、NO)、注意喚起部133は、ステップS100に戻って処理を繰り返す。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る注意喚起システム300の構成を示す図である。この注意喚起システム300は、第1の実施形態において説明した図1に示す車両100に、注意喚起システム120に代えて搭載される。なお、図5において、図2に示す構成要素と同じ構成要素については、図2に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図2についての説明を援用する。
【0038】
注意喚起システム300は、フロントガラス105上に操縦者が視認可能な視覚表示を出力する前方投光装置122と、前方投光装置122を制御して上記視覚表示により対象物に対する操縦者の注意を喚起する注意喚起装置324と、により構成される。
【0039】
注意喚起装置324は、図2に示す注意喚起装置124と同様の構成を有するが、処理装置130および記憶装置131に代えて処理装置302および記憶装置303を備える点が異なる。記憶装置303は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成され、後述する処理装置302の認知スキル評価部310により認知習熟度情報312が保存される。
【0040】
処理装置302は、処理装置130と同様の構成を有するが、機能要素又は機能ユニットとして、注意喚起部133に代えて注意喚起部304を有する点が異なる。また、処理装置302は、機能要素又は機能ユニットとして、さらに、挙動検知部306と、分類部308と、認知スキル評価部310と、を更に有する点が、処理装置130と異なる。
【0041】
処理装置302が備えるこれらの機能要素は、処理装置130と同様に、例えば、コンピュータである処理装置302がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置302が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0042】
挙動検知部306は、車両100の車室内に備えられた室内カメラ144により、操縦者の視線移動および顔の向きの移動(以下、顔移動ともいう)を検知する。室内カメラ144は、操縦者を観察するいわゆるドライバモニタリングカメラ(DMC)である。
【0043】
分類部308は、検知された対象物のそれぞれを、少なくとも対象物の種別および当該対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類する。ここで対象物のカテゴリとは、対象物の種別のほか、例えば現在の交通シーンにおけるその対象物の出現場所、出現タイミング、及び又は出現の際の動き、等を表す区分であり得る。
【0044】
対象物の種別とは、歩行者、車両、障害物等の区別をいう。歩行者は、さらに、大人、子供、老人等に細分されてもよく、車両は、自動車、バイク、バス、自転車等に細分されてもよい。障害物は、さらに、ボール、落下物、故障車等に細分され得る。
【0045】
上記交通シーンとは、直進路、踏切、交差点、曲がり角等の区別である。交差点は、さらに、駐車車両のある交差点、駐車車両のない交差点、建物のある見通しの悪い交差点、見通しのよい交差点等に細分することができる。また、交通シーンは、そのシーンに存在する交通参加者の数、及び又は交通参加者の平均速度等により細分されてもよい。
【0046】
上記のように分類されるカテゴリは、例えば、“交差点の駐車車両の影から出現する子供”、“見通しの悪い交差点の建物の影から出現する自転車”、“交差点で対向車線を直進するバイク”等々であり得る。
【0047】
認知スキル評価部310は、上記カテゴリのそれぞれに属する対象物についての認知の習熟度合いを示す認知習熟度を算出し、算出したカテゴリ毎の認知習熟度を認知習熟度情報312として記憶装置303に記憶する。ここで、対象物についての認知の習熟度合いとは、例えば、その対象物の認知に至るまでの行動(視線や顔の動き)の計画性の程度をいう。上記認知に至るまでの行動の計画性は、その対象物のカテゴリ、すなわち、対象物の種別のほか、現在の交通シーンにおけるその対象物の出現場所、出現タイミング、及び又は出現の際の動き等に依存し得る。このため、認知スキル評価部310は、対象物について算出した認知習熟度を、その対象物のカテゴリに関連付け、カテゴリ毎の認知習熟度を表す認知習熟度情報312として記憶装置303に記憶する。
【0048】
具体的には、認知スキル評価部310は、操縦者が対象物を視認した際に、当該対象物への視線移動に先行して、当該対象物の方向へ顔を移動したか否かに基づいて、当該対象物が分類されているカテゴリについての、当該操縦者の認知習熟度を算出する。一般に、操縦者は、或る程度の予測に基づいて計画的に交通参加者の有無を視認しようとする場合には、その交通参加者が出現し易いタイミングにおける出現し易い場所、すなわち実在物の方向への視線移動に先立って、その実在物の方向へ顔を向ける傾向があるためである。
【0049】
また、認知スキル評価部310は、習熟度算出の対象である対象物が、他の対象物への視線の移動に際してその視線が通過した実在物であるか否か、および当該視線の移動は先行する顔の移動を伴うものであったか否か、に基づいて、上記習熟度算出の対象である対象物のカテゴリの認知習熟度を算出する。
【0050】
上記において、操縦者が対象物を視認したか否かは、挙動検知部306により、操縦者の視線がその対象物に所定時間以上滞留したか否かに基づいて判断され得る。
【0051】
より具体的には、認知スキル評価部310は、対象物のカテゴリについての認知習熟度を以下のように算出する。
a)先行する顔向き移動に続く視線移動の後に視線が所定時間以上滞留した対象物のカテゴリについては、認知習熟度を1とする。
b)先行する顔向き移動に続く視線移動の途中でその視線が通過した対象物のカテゴリについては、認知習熟度を2とする。
c)先行する顔向き移動を伴わない視線移動の後に視線が所定時間以上滞留した対象物のカテゴリについては、認知習熟度を3とする。
d)先行する顔向き移動を伴わない視線移動の途中でその視線が通過した対象物のカテゴリについては、認知習熟度を4とする。
e)視線の滞留も視線の通過もなかった対象物のカテゴリについては、習熟度を5とする。
【0052】
注意喚起部304は、注意喚起部133と同様に、前方投光装置122を制御して、図1に示す車両100のフロントガラス105上の表示範囲HAに、視覚表示VIを出力する。ただし、注意喚起部304は、注意喚起部133とは異なり、視覚表示VIの出力に際して記憶装置303に記憶された認知習熟度情報312を参照し、当該認知習熟度情報312に基づき、検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す視覚表示VIを、当該対象物のカテゴリについて算出された操縦者の認知習熟度に応じた態様で、フロントガラス105の表示範囲HAに表示する。
【0053】
ここで、視覚表示VIを操縦者の認知習熟度に応じた態様で表示するとは、例えば、投影光である視覚表示VIを、操縦者の認知習熟度に応じた色、輝度、及びまたは大きさで表示することをいう。
【0054】
図6は、認知スキル評価部310が記憶装置303に記憶する認知習熟度情報312の例である。図6には、一の操縦者の認知習熟度情報が表形式で示されている。認知スキル評価部310は、操縦者ごとに、図6に示すような認知習熟度情報を記憶装置303に記憶する。図6に示す表において、最も左の列から右に向かって順に、第1列、第2列、…、第6列と呼ぶものとする。また、最も上の行から下に向かって順に第1行、第2行、…、と呼ぶものとする。
【0055】
図6に示す認知習熟度情報は、第1列に、分類部308が対象物を分類する際に用いるカテゴリが示されている。図6の第1列に示すカテゴリは記述的に記載されているが、従来技術に従い、遮蔽物の有無、交差道路か自車道路か、歩行者か車両か、等々の区分をコード化した記号の組み合わせを、カテゴリとして用いることもできる。
【0056】
図6の第2列から第6列は、それぞれのカテゴリに分類された対象物について認知スキル評価部310により算出された、直近5回分の認知習熟度を示している。すなわち、図6の表の3行目の第2列から第6列には、この操縦者が最近においてカテゴリ“遮蔽物のない交差道路から出現する車両”に分類された車両に5回遭遇したときの、それぞれの遭遇時において算出された認知習熟度が示されている。
【0057】
図7は、図6に示す認知習熟度情報に基づいて注意喚起部304がフロントガラス105に表示する視覚表示VIの一例を示している。図7に示す車両100の前方エリアの交通シーンは、図3に示した交通シーンと同様である。ここで、分類部308は、車両201をカテゴリ“遮蔽物のある交差道路から出現する車両”に分類し、車両204をカテゴリ“交差点で自車道路の対向車線を直進する車両”に分類したとする。また、分類部308は、バイク202および歩行者203を、それぞれ、カテゴリ“遮蔽物のない交差道路から出現する車両”および“交差点で自車道路を横断する歩行者”に分類したものとする。
【0058】
注意喚起部304は、検知部132が検知した対象物である車両201、204、バイク202、及び歩行者203についての視覚表示VIをフロントガラス105の表示範囲HAに表示するに際し、まず、記憶装置303に記憶されている図6に示すような認知習熟度情報312を参照する。
【0059】
そして、注意喚起部304は、認知習熟度情報312が示すそれぞれのカテゴリの認知習熟度に応じて、例えば、認知習熟度が1から5に近づくに従って、当該カテゴリに分類された対象物についての視覚表示VIを、誘目性がより高い態様で表示する。ここで、「誘目性がより高い態様で表示する」とは、例えば、認知習熟度が1から5に近づくに従って視覚表示VIの色相を寒色系から暖色系へ、より目立つ色に順次変化させることをいう。ただし、認知習熟度に応じて変化させる視覚表示VIの態様は、色相に限らず、輝度(色調)、点滅の速さ、サイズ等々であってもよい。本実施形態では、例えば、認知習熟度の数値が1から5へ1段階ずつ増加するにつれて、視覚表示VIが、青色、緑色、黄色、橙色、赤色で表示されるものとする。
【0060】
図6に示す例では、この操縦者についての、カテゴリ“遮蔽物のある交差道路から出現する車両”の直近5回の認知習熟度の最頻値が4であることから、注意喚起部304は、図7に示すフロントガラス105の表示範囲HAにおいて、当該カテゴリに分類された車両201についての視覚表示VI-21を橙色で表示する。また、カテゴリ“遮蔽物のない交差道路から出現する車両”の直近5回の認知習熟度の最頻値が3であることから、注意喚起部304は、図7に示すフロントガラス105の表示範囲HAにおいて、当該カテゴリに分類されたバイク202についての視覚表示VI-22を黄色で表示する。
【0061】
同様に、カテゴリ“交差点で自車道路を横断する歩行者”の直近5回の認知習熟度の最頻値が2であることから、注意喚起部304は、図7に示すフロントガラス105の表示範囲HAにおいて、当該カテゴリに分類された歩行者203についての視覚表示VI-23を緑色で表示する。また、カテゴリ“交差点で自車道路の対向車線を直進する車両”の直近5回の認知習熟度の最頻値が1であることから、注意喚起部304は、図7に示すフロントガラス105の表示範囲HAにおいて、当該カテゴリに分類された車両204についての視覚表示VI-24を青色で表示する。
【0062】
なお、上記においては、視覚表示VIの表示態様である表示色の選択に際して、それぞれのカテゴリについての直近5回分の認知習熟度の最頻値を用いるものとしたが、これに限らず、例えば、当該5回分の平均値を切り上げ、切り下げ、四捨五入等により整数値としたものや、直近5回分の最小値、最大値を用いるものとしてもよい。
【0063】
上記の構成を有する注意喚起システム300は、注意喚起システム120と同様に、フロントガラス105上の帯状の表示範囲HAにおいて、対象物に対応する水平方向位置に視覚表示VIを表示する。このため、注意喚起システム300は、注意喚起システム120と同様に、操縦者の注意力を散逸させることなく、車両100の周囲環境に存在する様々な交通参加者に対する操縦者の注意を喚起することができる。
【0064】
また、注意喚起システム300では、特に、対象物についての視覚表示VIは、その対象物のカテゴリについての操縦者の認知習熟度に応じた態様で表示される。このため、注意喚起システム300では、操縦者は、表示された視覚表示VIにより認知習熟度に応じた優先度で各対象物を視認することができ、車両100の周囲環境に存在する様々な交通参加者に対する操縦者の注意が、当該操縦者の運転行動にとってより効果的な態様で喚起され得る。
【0065】
また、注意喚起システム300では、操縦者について、認知の計画性を表す視線移動前の顔移動の有無に基づいて対象物のカテゴリ毎の認知習熟度が算出されるので、簡易な処理で認知習熟度が算出され得る。
【0066】
また、注意喚起システム300では、特定の対象物を視認するための計画的な視線移動に伴って視線が通過した対象物か否かによっても、当該対象物(すなわち、視線が通過した対象物)のカテゴリについての認知の習熟度が判断される。このため、注意喚起システム300では、視認の対象でなかった対象物についても、その操縦者の視線の移動経路の傾向に基づく認知の習熟度が把握されて、視覚表示の表示態様に反映され得る。
【0067】
図8は、注意喚起システム300における動作の手順を示すフロー図である。図8に示す処理は、図5に示す検知部132が少なくとも一つの対象物を検知したときに、当該検知した対象物ごとに開始される。
【0068】
処理を開始すると、まず、分類部308は、検知された対象物をカテゴリに分類する(S200)。続いて、注意喚起部304は、記憶装置303に保存されている認知習熟度情報312を参照し(S202)、表示範囲HA内の対象物に対応する水平位置に、視覚表示VIを認知習熟度に応じた態様で表示する(S204)。
【0069】
次に、注意喚起部304は、検知部132によりその対象物が検知されなくなったか否かを判断する(S206)。そして、その対象物が検知され続けているときは(S206、NO)、注意喚起部304は、ステップS204に戻って処理を繰り返す。一方、その対象物が検知されなくなったときは(S206、YES)、認知スキル評価部310は、それまでの間に操縦者が行った挙動、すなわち、挙動検知部306が検知した操縦者の視線移動および顔の向きの移動の態様に基づいて、その対象物についてのその操縦者の認知習熟度を算出する(S208)。
【0070】
続いて、認知スキル評価部310は、上記算出した認知習熟度をその対象物のカテゴリに関連付けて、認知習熟度情報として記憶装置303に記憶する。具体的には、例えば、認知スキル評価部310は、上記算出した認知習熟度を、記憶装置303に保存されている認知習熟度情報312に追加して、認知習熟度情報312を更新する(S210)。認知スキル評価部310が認知習熟度情報312を更新したあとは、処理装置302は、本処理を終了する。
【0071】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る注意喚起システム400の構成を示す図である。この注意喚起システム400は、第1の実施形態において説明した図1に示す車両100に、注意喚起システム120に代えて搭載される。なお、図9において、図2および図5に示す構成要素と同じ構成要素については、図2および図5に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図2および図5についての説明を援用する。
【0072】
注意喚起システム400は、フロントガラス105上に操縦者が視認可能な視覚表示を出力する前方投光装置122と、前方投光装置122を制御して上記視覚表示により対象物に対する操縦者の注意を喚起する注意喚起装置424と、により構成される。
【0073】
注意喚起装置424は、図5に示す注意喚起装置324と同様の構成を有するが、処理装置302および記憶装置303に代えて処理装置402および記憶装置403を備える点が異なる。記憶装置403は、記憶装置303と同様の構成を有し、後述する処理装置402の反応スキル評価部410により反応習熟度情報414が保存される。
【0074】
処理装置402は、処理装置302と同様の構成を有するが、機能要素又は機能ユニットとして、注意喚起部304および挙動検知部306に代えて注意喚起部404および挙動検知部406を有する点が異なる。また、処理装置402は、認知スキル評価部310を有さず、反応スキル評価部410およびリスク算出部412を有する点が、処理装置302と異なる。
【0075】
処理装置402が備える機能要素は、処理装置302と同様に、例えば、コンピュータである処理装置402がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置402が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0076】
リスク算出部412は、検知部132により検知された対象物のそれぞれについて、分類部308により当該対象物が分類されたカテゴリに基づき、車両100と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出する。このリスク度は、検知部132が、検知した対象物のそれぞれについて少なくとも車両100との相対速度に基づいて算出する接触確率とは異なり、例えば、実際に発生した事故を上記カテゴリに分類して、事故の全件数に対するカテゴリ毎の発生件数の比率を、所定の閾値範囲と比較して多段階評価値に対応付けたものである。本実施形態では、リスク度は、10段階評価であり、リスク度1が最も事故発生確率が低く、リスク度10が最も事故発生確率が高いものとする。
【0077】
リスク算出部412は、例えば、記憶装置403に予め保存されたカテゴリ毎のリスク度を示すリスク情報を参照することにより、上記検知された対象物のそれぞれのリスク度を求めるものとすることができる。あるいは、リスク算出部412は、リスク算出の対象である対象物が分類されたカテゴリと、当該対象物の事故確率との関係を機械学習した学習済みのリスク算出モデルを用いて、その対象物のカテゴリについてのリスク度を算出するものとすることができる。
【0078】
挙動検知部406は、挙動検知部306と同様に、室内カメラ144により操縦者の視線移動および顔移動を検知し、および操縦者が対象物を視認したか否かを判断する。具体的には、挙動検知部406は、操縦者の視線が対象物に滞留した時間が所定時間を越えたときに、操縦者がその対象物を視認したと判断する。
【0079】
挙動検知部406は、更に、検知部132が検知した対象物について、操縦者がその対象物を視認したときから車両100についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測する。本実施形態では、挙動検知部406は、上記操縦操作として、ブレーキペダルセンサ146及び又はアクセルペダルセンサ148により、ブレーキペダル又はアクセルペダルの操作を検知する。
【0080】
反応スキル評価部410は、検知部132が検知した対象物のそれぞれについて、挙動検知部406が計測した実反応時間から、当該対象物が分類されたカテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して、反応遅れ時間を算出する。そして、反応スキル評価部410は、算出した反応遅れ時間に基づき、そのカテゴリについての操縦者の反応習熟度を算出して、カテゴリごとの反応習熟度を、反応習熟度情報414として記憶装置403に記憶する。
【0081】
反応習熟度は、例えば、5段階評価であり、反応遅れ時間(負数を含む)が小さいほど反応習熟度は小さな値をとるものとする。例えば、反応スキル評価部410は、反応遅れ時間について予め定められた閾値のセットを用いて、上記算出した反応遅れ時間を0以上4以下の反応習熟度のいずれかの数値に対応付けるものとすることができる。
【0082】
注意喚起部404は、図2に示す注意喚起部133と同様に、前方投光装置122を制御して、車両100のフロントガラス105上の水平方向に延在する帯状の表示範囲HAに、視覚表示VIを出力する。ただし、注意喚起部404は、注意喚起部133とは異なり、検知部132が検知した対象物のそれぞれの方向位置を示す視覚表示VIをフロントガラス105の表示範囲HAに表示する際に、その視覚表示VIを、少なくともリスク算出部412が当該対象物について算出したリスク度に応じた態様で表示する点が異なる。
【0083】
例えば、注意喚起部404は、カテゴリのリスク度が10に近いほど、当該カテゴリに分類された対象物についての視覚表示VIを、誘目性がより高い態様で表示する。ここで、「誘目性がより高い態様で表示する」とは、例えば、リスク度が1から10に近づくに従って視覚表示VIの色相を寒色系から暖色系へ、より目立つ色に順次変化させることをいう。ただし、認知習熟度に応じて変化させる視覚表示VIの態様は、色相に限らず、輝度(色調)、点滅の速さ、サイズ等々であってもよい。
【0084】
具体的には、例えば、注意喚起部404は、寒色系から暖色系までの10個の色を、1から10まで値をとる10個の色コードにより表す。そして、注意喚起部404は、少なくとも、検知された対象物のカテゴリについて算出された1から10までのリスク度の値を、同じ値の色コードに対応付けて、当該対応付けられた色コードに対応する色を用いて、当該対象物についての視覚表示VIを表示する。色コードと色との関係は、例えば、色コード1から10へ1段階ずつ増加するにつれて、視覚表示VIの表示色が、紫色、青紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、黄橙色、橙色、赤色になるものと定義される。
【0085】
これにより、リスク度のより高い対象物について、より誘目性の高い視覚表示VIが提示されることとなるので、操縦者は、よりリスク度の高い対象物へと視線が誘導され得る。
【0086】
本実施形態では、注意喚起部404は、さらに、上記リスク度に加えて、対象物のカテゴリごとの、操縦者の反応スキルを加味して、視覚表示VIの表示態様を決定する。具体的には、注意喚起部404は、対象物についての視覚表示VIを表示範囲HAに表示する際に、反応スキル評価部410が記憶装置403に記憶した操縦者についての反応習熟度情報414を参照する。
【0087】
そして、注意喚起部404は、反応習熟度情報が示す上記対象物のカテゴリについての操縦者の反応習熟度(上述したとおり、本実施形態では、0から4の値を持つ)を、上述のリスク度に加算して、危険度を算出する。そして、注意喚起部404は、算出した危険度の値と同じ値を持つ色コードの色により、その対象物についての視覚表示VIを表示する。なお、算出した危険度が値10を超える対象物については、色コードの最大値10に対応する色により、その対象物についての視覚表示VIを表示するものとすることができる。
【0088】
注意喚起部404は、また、検知された対象物のそれぞれについて、上記のように決定した表示態様(本実施形態では表示色)で視覚表示VIを表示した後に、操縦者がその対象物を視認していないと判断されるときは、当該対象物についての視覚表示VIの誘目性のレベルを時間と共に上昇させる。
【0089】
具体的には、例えば、注意喚起部404は、対象物についての視覚表示VIを表示した後の経過時間を計測し、所定の時間(例えば1秒)が経過するごとに、その視覚表示VIを現在より一つ上の色コードの色に変更することにより、その視覚表示VIの誘目性を上げていく。視覚表示VIの誘目性のレベルの上昇変化は、色コードが最高値10まで増加したところで停止するか、または、操縦者がその対象物を視認したことを挙動検知部406が検出したときに停止する。
【0090】
図10は、注意喚起部404がフロントガラス105に表示する視覚表示VIの一例を示している。図10に示す車両100の前方エリアの交通シーンおよび各対象物のカテゴリ分類は、図7の例と同じである。図10は、各対象物についての視覚表示VIの表示を開始した直後の状態を示している。このときの、各対象物の視覚表示VIの色、すなわち、車両201、バイク202、歩行者203、および車両204についての視覚表示VI-31、VI-32、VI-33、およびVI-34の色は、それぞれ、上述したように、車両201、バイク202、歩行者203、および車両204が分類されたカテゴリについてのリスク度に基づいて決定される。図10に示す例では、車両201、バイク202、歩行者203、および車両204が分類されたカテゴリについての、リスク度と反応習熟度を加算した危険度は、例えば、9、4、6、6であり、これに対応して、視覚表示VI-31、VI-32、VI-33、およびVI-34は、橙色、青緑色、黄緑色、黄緑色で表示される。
【0091】
そして、これらの視覚表示VI-31、VI-32、VI-33、VI-34のそれぞれは、これらの視覚表示に対応する車両201、バイク202、歩行者203、および車両204を操縦者が視認するまで、それらの表示色が時間の経過とともに変化する。図11は、一例として、車両204に対する操縦者の視認が行われないまま時間が経過した場合の、当該車両204についての視覚表示VI-34の表示態様の変化を示す図である。
【0092】
図11には、図示左から右へ順に、表示範囲HA内への表示開始時の視覚表示VI-34、並びに、表示開始から1秒後、2秒後、3秒後、及び4秒後の視覚表示VI-34が示されている。図11では、表示開始から3秒後に、視覚表示VI-34に対応する車両204を操縦者が視認したものとしている。
【0093】
車両204の危険度は6(上述)であることから、表示開始時の視覚表示VI-34の色コードは6(黄緑色)である。その後、注意喚起部404は、1秒ごとに視覚表示VI-34を現在より一つ上の色コードの色に変更し、1秒後に色コード7(黄色)、2秒後に色コード8(黄橙色)、3秒後に色コード9(橙色)に変更する。そして、3秒後において、注意喚起部404は、操縦者が車両204を視認したことに応じて、視覚表示VI-34についての色コードのインクリメントを停止する。これにより、4秒後以降は、視覚表示VI-34は、色コード9(橙色)による表示が継続される。
【0094】
上記の構成を有する注意喚起システム400は、注意喚起システム120と同様に、フロントガラス105上の帯状の表示範囲HAにおいて、対象物に対応する水平方向位置に視覚表示VIを表示する。このため、注意喚起システム400は、注意喚起システム120と同様に、操縦者の注意力を散逸させることなく、車両100の周囲環境に存在する様々な交通参加者に対する操縦者の注意を喚起することができる。
【0095】
また、注意喚起システム400では、特に、対象物についての視覚表示VIは、少なくともその対象物のカテゴリについてのリスク度に応じた態様で表示される。このため、注意喚起システム400では、操縦者は、例えば車両100との接触リスクの程度に応じた優先度で各対象物を視認することができ、車両100の周囲環境に存在する様々な対象物に対する操縦者の注意が、当該操縦者の運転行動にとってより効果的な態様で喚起され得る。
【0096】
また、注意喚起システム400では、対象物についての視覚表示VIの表示態様は、さらに、その対象物のカテゴリについての操縦者の反応習熟度にも基づいて決定される。このため、注意喚起システム400では、視認から操縦操作までの操縦者の実反応時間が標準反応時間に比べてより遅い対象物については、より誘目性の高い視覚表示VIにより示され得るので、車両100の周囲環境に存在する様々な対象物に対する操縦者の注意が、当該操縦者の反応行動の速さに応じた優先度で喚起され得る。
【0097】
また、注意喚起システム400では、注意喚起部404は、操縦者が対象物を視認していないと判断されるときは、その対象物についての視覚表示VIの誘目性のレベルを時間と共に上昇させる(本実施形態では、例えば、表示色をより暖色へ変更する)。これにより、注意喚起システム400では、操縦者がその対象物を視認しないまま長い時間が経過してしまうことが防止される。その結果、注意喚起システム400では、操縦者は、出現した対象物に対する対処行動が遅れてしまうのを避けることができる。
【0098】
また、注意喚起システム400では、操縦者の視線が対象物に滞留した時間が所定時間を越えたときに、操縦者がその対象物を視認したと判断されるので、簡易な処理で、その対象物についての視認の有無が判断され得る。
【0099】
図12は、注意喚起システム400における動作の手順を示すフロー図である。図12に示す処理は、図9に示す検知部132が少なくとも一つの対象物を検知したときに、当該検知した対象物ごとに開始される。
【0100】
処理を開始すると、まず、分類部308は、検知された対象物をカテゴリに分類する(S300)。また、リスク算出部412は、その対象物が分類されたカテゴリに基づいてリスク度を算出する(S302)。
【0101】
また、注意喚起部404は、記憶装置403が記憶する反応習熟度情報414を参照し、その対象物のカテゴリについての反応習熟度を読み出す(S304)。次に、注意喚起部404は、リスク度と反応習熟度とに基づいて、その対象物についての視覚表示VIの表示態様を設定する(S306)。そして、注意喚起部404は、表示範囲HA内の対象物に対応する水平位置に、視覚表示VIを、上記設定した表示態様で表示する(S308)。
【0102】
次に、注意喚起部404は、検知部132によりその対象物が検知されなくなったか否かを判断する(S310)。そして、その対象物が検知されなくなったときは(S310、YES)、注意喚起部404は、本処理を終了する。
【0103】
一方、その対象物が検知され続けているときは(S310、NO)、注意喚起部404は、その対象物が既に視認されているか否かを判断する(S312)。そして、その対象物が既に視認されているときは(S312、YES)、注意喚起部404は、視覚表示VIの表示態様の設定を変更することなく、ステップS308に戻って処理を繰り返す。
【0104】
一方、その対象物が未だ視認されていないときは(S312、NO)、注意喚起部404は、挙動検知部406が検知する操縦者の視線移動により、操縦者がその対象物を視認したか否かを判断する(S314)。そして、操縦者が対象物を視認していないときは(S314、NO)、注意喚起部404は、視覚表示VIの表示態様を、現在の表示態様より誘目性を1段上げた表示態様に設定したのち(S316)、ステップS308に戻って処理を繰り返す。上述したように、本実施形態では、例えば、視覚表示VIに用いる表示色をより暖色(例えば赤色)に近い色に変更することで、視覚表示VIの表示態様の誘目性を1段引き上げる。
【0105】
一方、ステップS314において操縦者が対象物を視認しているときは(S314、YES)、反応スキル評価部410は、挙動検知部406が計測した実反応時間を取得する(S318)。続いて、反応スキル評価部410は、取得した実反応時間から、その対象物についての反応習熟度を算出し、算出した反応習熟度をその対象物のカテゴリに関連付けて、記憶装置403が記憶する反応習熟度情報414に追加保存する(S320)。その後、処理装置402は、視覚表示VIの表示態様の設定を変更することなく、ステップS308に戻って処理を繰り返す。
【0106】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図13は、本発明の第4の実施形態に係る注意喚起システム500の構成を示す図である。上述した第1の実施形態に係る注意喚起システム120では、操縦者の視線を誘導する対象は、車両100の前方に存在する対象物であるのに対し、本実施形態に係る注意喚起システム500は、車両100を中心とする360度の全方向を対象として、車両100の周囲における対象物の存在を操縦者に通知する。
【0107】
なお、図13において、図2に示す構成要素と同じ構成要素については、図2における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図2についての説明を援用する。
【0108】
注意喚起システム500は、車両100の室内構造物上に車両100の操縦者が視認可能な視覚表示を出力する前方投光装置122、左右投光装置504、および後方投光装置506と、これらの投光装置を制御して上記視覚表示により車両100の周囲の対象物に対する操縦者の注意を喚起する注意喚起装置502と、を備える。
【0109】
図14は、車両100の車室内における投光装置の配置の例を示す図である。なお、図14において、図1に示す構成要素と同じ構成要素については、図1における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図1についての説明を援用する。
【0110】
車室前方のインストルメントパネル106には、前方投光装置122が設けられている。前方投光装置122は、図1を参照して説明した前方投光装置122であり、室内構造物としてのフロントガラス105の表示範囲HAに視覚表示VIを表示する。インストルメントパネル106には、従来技術に従いフロントガラス105に表示を行うHUD(ヘッドアップディスプレイ)156も設けられている。
【0111】
左右投光装置504および後方投光装置506は、車両100のルーフの内側前方(車室内の前方)および内側後方に、それぞれ設けられている。左右投光装置504および後方投光装置506は、例えばプロジェクタである。左右投光装置504および後方投光装置506は、それぞれ、車両100の車室内の左右にある室内構造物、および車室内の後方にある室内構造物の所定の表示範囲に、視覚表示を投光する。本実施形態では、左右投光装置504が投光する室内構造物は、左ドアガラス158および右ドアガラス160である。また、後方投光装置506が視覚表示を投光する室内構造物は、例えばリアガラス162である。なお、車両100が左右にフロントベンチガラスを備えるときは、それらのフロントベンチガラスを、左右投光装置504が視覚表示を出力する室内構造物に含めてもよい。
【0112】
左右投光装置504および後方投光装置506が視覚表示を表示する室内構造物上の上記所定の表示範囲は、例えば、図1に示した前方投光装置122におけるフロントガラス105上の表示範囲HAと同様に、車両100の車高方向と直交する水平方向に延在する帯状範囲である。
【0113】
左右投光装置504および後方投光装置506が室内構造物に投光する視覚表示も、前方投光装置122がフロントガラス105に表示する視覚表示VIと同様に、所定サイズの投影光である。以下、左右投光装置504および後方投光装置506が室内構造物に投光する視覚表示も、前方投光装置122がフロントガラス105に投光する視覚表示と同様に、視覚表示VIと称するものとする。
【0114】
図13を参照し、注意喚起装置502は、処理装置508と記憶装置510とを有する。記憶装置510は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。処理装置508は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置508は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、処理装置508は、機能要素又は機能ユニットとして、検知部512と、注意喚起部514と、を備える。
【0115】
処理装置508が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置508がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置508が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0116】
検知部512は、車両100の周囲エリアにある対象物を検知する。具体的には、検知部512は、車両100に設けられた前方物体センサ140、後方物体センサ150、右側方物体センサ152、および左側方物体センサ154により、それぞれ、車両100の前方エリア、後方エリア、右側方エリア、および左側方エリアにある対象物を検知する。後方物体センサ150、右側方物体センサ152、および左側方物体センサ154は、前方物体センサ140と同様に、例えば、カメラ、レーザ、及び又はライダである。
【0117】
検知部512は、前方物体センサ140、後方物体センサ150、右側方物体センサ152、および左側方物体センサ154から、それぞれ、車両100の前方エリア、後方エリア、右側方エリア、および左側方エリアの映像を取得する。検知部512は、取得したこれらの映像から、所定の実在物を検知し、例えば車両100との相対速度から算出される車両100との接触確率が所定値以上である実在物を、対象物として検知する。本実施形態では、所定の実在物は、第1の実施形態と同様に、車両および歩行者を含む交通参加者並びに障害物等である。検知部512は、検知した対象物のそれぞれの位置情報を注意喚起部514へ送る。
【0118】
ここで、前方物体センサ140、後方物体センサ150、右側方物体センサ152、および左側方物体センサ154は、例えば、車両100のフロントバンパー、リアバンパー、右フェンダーミラー・ボディ、及び左フェンダーミラー・ボディに設けられ得る。
【0119】
注意喚起部514は、検知部512が検知した車両100の周囲エリアに存在する対象物の方向を、視覚的な表示により、操縦者に通知する。具体的には、注意喚起部514は、前方投光装置122、左右投光装置504、および後方投光装置506を制御して、車両100の室内構造物上の所定の表示範囲内の、操縦者の位置から見た対象物の方向と一致する水平位置に、視覚表示VIを出力する。
【0120】
より具体的には、注意喚起部514は、車両100を中心とする周囲をいくつかの角度エリアに分けて、検知部512が検知した対象物がいずれのエリアに存在するかに応じて、前方投光装置122、左右投光装置504、または後方投光装置506により、上記視覚表示VIを出力する。
【0121】
図15は、車両100を中心とする角度エリアの例である。なお、図15において、図1に示す構成要素と同じ構成要素については図1における符号を用いて示すものとし、上述した図1についての説明を援用する。
【0122】
図15に示す例では、車両100の操縦席に座った操縦者が顔を前方に向けたまま無理なく視認することのできる中心前方エリアCFAと、操縦者が顔を左右に45度程度回すことで視認が可能となる左前側方エリアLFAおよび右前側方エリアRFAと、が定義されている。また、図15に示す例では、操縦者が、身体を左右に軽くひねる程度で視認可能となる車両100の左側方エリアLAおよび右側方エリアRAが定義されている。
【0123】
また、図15の例では、操縦者がルームミラー110、左フェンダミラー112、及び右フェンダミラー114により視認可能な後方エリアREAが定義されている。後方エリアREAは、さらに、操縦者がルームミラー110により視認可能なルームミラーエリアRMA、左フェンダミラー112により視認可能な左フェンダミラーエリアLFMA、及び右フェンダミラー114により視認可能な右フェンダミラーエリアRFMAに分けられる。
【0124】
図15に示す残りのエリアは、左死角エリアLBAおよび右死角エリアRBAであり、操縦者が対象物を視認できないエリアでる。
【0125】
注意喚起部514は、検知部512が中心前方エリアCFA、左前側方エリアLFAおよび右前側方エリアRFAにおいて検知した対象物については、第1の実施形態に係る注意喚起部133と同様に、その対象物の方向を示す視覚表示VIを、前方投光装置122によりフロントガラス105上の表示範囲HAに表示する。
【0126】
これに加えて、注意喚起部514は、検知部512が左側方エリアLAおよび右側方エリアRAにおいて検知した対象物については、その対象物の方向を示す視覚表示VIを、左右投光装置504により左ドアガラス158および右ドアガラス160に、それぞれ表示する。
【0127】
また、注意喚起部514は、検知部512が後方エリアREAにおいて検知した対象物については、その対象物の方向を示す視覚表示VIを、後方投光装置506によりリアガラス162に表示する。
【0128】
これにより、注意喚起部514は、操縦者から対象物を視認することができないエリアである左死角エリアLBAおよび右死角エリアRBAを除き、車両100のほぼ全周囲を対象として、車両100と接触する可能性のある対象物の方向を操縦者に知らせて、操縦者の注意を喚起し、およびその視線を誘導することができる。
【0129】
注意喚起部514は、さらに、車両100からの方向を表す円表示を表示装置に表示する。そして、注意喚起部514は、上記円表示のうち、対象物の方向に対応する円弧部分に視覚表示を出力する。本実施形態では、上記表示装置はHUD156である。
【0130】
具体的には、注意喚起部514は、左死角エリアLBAおよび右死角エリアRBAを含む車両100の全周囲を対象として、検知部512により検知された対象物の方向を示すレーダ様の表示画面を、HUD156に表示する。以下、注意喚起部514が対象物の方向を示すためにHUD156に表示するレーダ様表示画面を、対象物レーダ表示というものとする。
【0131】
図16は、注意喚起部514がHUD156に表示する対象物レーダ表示の一例を示す図である。対象物レーダ表示520は、車両100を表す車両アイコン522と、車両100を中心とする360度の全周を表す円表示524と、で構成される。注意喚起部514は、円表示524の円弧に、対象物の方向に応じた視覚表示を出力する。具体的には、注意喚起部514は、円表示524のうち、検知部512が検知した対象物のある方向に対応する円弧部分に視覚表示ADを行う。図16の円表示524に示す上方に伸びた矢印526は、車両100の直進方向を示している。矢印526は、本実施形態では単に説明のために示されているが、対象物レーダ表示520の一部を構成するものとしてもよい。
【0132】
図16に示す例では、円表示524のうち車両アイコン522の直進方向(矢印526が指す方向)から右へ約30度の円弧部分に視覚表示ADが示されており、この視覚表示ADにより、車両100の右30度前方に、車両100と接触する可能性のある対象物が存在していることが示されている。
【0133】
図17は、注意喚起部514による対象物レーダ表示520における種々の表示態様を表形式で示した図である。図17に示す表の1段目(最上段)は、検知された複数の対象物を、同じ態様の視覚表示により、それぞれ個別に表示する例である。図示の例では、円表示524に表示された視覚表示AD-10およびAD―12により、それぞれ、車両100の右30度付近と左15度付近に対象物が存在していることが示されている。
【0134】
図17に示す表の2段目の例は、1段目と同様に複数の対象物についてのそれぞれの視覚表示を個別に表示する例であるが、それぞれの視覚表示は、対応する対象物のリスクの程度に応じた態様、例えば車両100と接触する確率に応じた色で、表示されている。図示の例では、例えば、視覚表示AD-14は緑色で、視覚表示AD―16は黄色で表示されている。なお、車両100との接触確率は、例えば、検知部512が、検知した対象物と車両100との相対速度から算出し得る。注意喚起部514は、上記算出された相対速度の範囲と視覚表示に用いる表示色との対応関係を示す予め定められた対応情報に基づいて、検知された対象物についての視覚表示の表示色を決定し得る。
【0135】
図17に示す表の3段目の例は、2段目と同様に複数の対象物についての視覚表示を、それらのリスクの程度に応じた態様で個別に表示する例である。ただし、3段目の例では、2段目の例とは異なり、リスクの程度が視覚表示の色ではなく、その大きさで示されている。図示の例では、例えば、視覚表示AD-18およびAD-20は、それぞれ、中心角が10度程度および20度程度の帯状円弧により表示されている。これにより、大きい方の視覚表示AD-20により示された対象物は、小さい方の視覚表示AD-18により示された対象物よりも接触確率が高いことが判る。なお、車両100との接触確率は、例えば、検知部512が、検知した対象物と車両100との相対速度から算出し得る。注意喚起部514は、上記算出された接触確率の範囲と視覚表示に用いる帯状円弧の中心角との対応関係を示す予め定められた対応情報に基づいて、検知された対象物についての視覚表示のサイズを決定し得る。
【0136】
図17に示す表の4段目(最下段)の例は、車両100の周囲に所定数以上の数の対象物が検知されたときに、円表示524の全周に視覚表示を表示する例である。図示の例では、例えば、円表示524の全周に延在して視覚表示AD-22が表示されることにより、車両100の周囲に所定数である3個以上の対象物が検知されたことが通知される。なお、上記所定数は、3個に限らず、任意の数とすることができる。また、視覚表示AD22は、検知された複数の対象物の接触確率のうち、最も高い接触確率に応じた色で表示されるものとしてもよい。
【0137】
上記の構成を有する注意喚起システム500は、注意喚起システム120と同様に、フロントガラス105上の帯状の表示範囲HAにおいて、対象物に対応する水平方向位置に視覚表示VIを表示する。このため、注意喚起システム500は、注意喚起システム120と同様に、操縦者の注意力を散逸させることなく、車両100の周囲環境に存在する様々な交通参加者に対する操縦者の注意を喚起することができる。
【0138】
また、注意喚起システム500では、特に、車両100の側方及び後方に存在する対象物についても、操縦者から見たその方向を示す視覚表示VIを、室内構造物上の水平方向に延在する表示範囲に表示する。このため、注意喚起システム500では、操縦者が視認可能な車両100の周囲エリアの全てについて、対象物の方向を操縦者に提示して注意を喚起することができる。
【0139】
また、注意喚起システム500では、注意喚起部514は、視覚表示に加えて、車室内に設けられた室内スピーカ142により、操縦者に対し、対象物の方向定位のための音響を生成する。これにより、注意喚起システム500では、視覚および聴覚の両面から、対象物に対する操縦者の注意が喚起され得る。
【0140】
また、前方投光装置122、左右投光装置504、および後方投光装置506は、フロントガラス105等の室内構造物上に所定形状の光を投光することにより視覚表示VIを出力する。これにより、注意喚起システム500では、操縦者にとって直感的に把握し得る態様で視覚表示が提示され得る。
【0141】
また、注意喚起システム500では、前方投光装置122、左右投光装置504、および後方投光装置506が視覚表示VIを表示する室内構造物は、車両100のフロントガラス105、左ドアガラス158、右ドアガラス160、及び又はリアガラス162であり、車両100がこれを備える場合にはフロントベンチガラスであってもよい。すなわち、注意喚起システム500では、それらを通して車両100の外部を視認し得る室内構造物上に視覚表示が出力されるので、操縦者は、対象物についての注意が喚起されると同時に、その対象物を即座に視認することができる。
【0142】
また、注意喚起システム500では、前方投光装置122は、フロントガラス105上に所定形状の光を投光することにより視覚表示VIを出力する。これにより、注意喚起システム500によれば、少なくともフロントガラス105上において、操縦者が最も注意する必要のある車両前方の情景に重ねて対象物の方向を示す視覚表示が表示されるので、車両100の操縦の際に特に注意すべき対象物について、操縦者の注意が効果的に喚起され得る。
【0143】
また、フロントガラス105上に視覚表示VIを出力する前方投光装置122は、フロントガラス105の下方において水平方向(車幅方向)に沿って配された複数の光源で構成される。これにより、フロントガラス105上に視覚表示VIを出力する前方投光装置を、簡易な構成で実現することができる。
【0144】
また、注意喚起システム500では、HUD156における円表示である対象物レーダ表示520において、操縦者にとっての死角を含む車両100の全周エリアについて、対象物の存在を操縦者に通知する。このため、注意喚起システム500では、操縦者は、車両100の全周囲における対象物の存在を円表示により一括して容易に把握することができ、車両100の周囲エリア全体の状況を容易に把握することができる。
【0145】
また、対象物レーダ表示520は、対象物の方向を示す視覚表示ADを、車両100に対するその対象物の接触確率に応じた態様で表示するので、操縦者は、接触リスクの程度に応じた優先度で各対象物を視認することができ、移動体の周囲環境に存在する様々な対象物に対する操縦者の注意が、当該操縦者の運転行動にとってより効果的な態様で喚起され得る。
【0146】
また、対象物レーダ表示520は、対象物の数が所定数を越えた場合には、円表示524の円周の全体に延在する視覚表示ADを表示するので、操縦者は、多数の対象物の一つ一つに気を取られることがない。このため、注意喚起システム500では、操縦者は、注意力を散逸させることなく、車両100の周囲の対象物の存在を把握することができる。
【0147】
また、注意喚起システム500では、対象物は、車両100との接触確率が所定値以上である実在物である。これにより、注意喚起システム500では、車両100の運行にとってリスクとなり得る実在物に絞り込んで、その方向を示す視覚表示が示されるので、操縦者に対し、その注意力を散逸させることなく、対象物に対する注意を喚起することができる。
【0148】
図18は、注意喚起システム500における動作の手順を示すフロー図である。図18に示す処理は、図13に示す検知部512が少なくとも一つの対象物を検知したときに、当該検知した対象物ごとに開始される。
【0149】
処理を開始すると、まず、注意喚起部514は、検知された対象物の方向と一致する室内構造物上の水平位置に、視覚表示VIを表示する(S400)。また、注意喚起部514は、HUD156の対象物レーダ表示520に、上記検知された対象物の方向を示す視覚表示ADを表示する(S402)。このとき、注意喚起部514は、図17に示すように、検知部512により検知されているその対象物の、車両100との接触確率に応じた態様で、視覚表示ADを表示するものとすることができる。また、注意喚起部514は、検知部512により検知されている対象物の数が所定数を越えているときは、円表示524の全周に延在する視覚表示ADを表示するものとしてもよい。
【0150】
また、注意喚起部514は、上記対象物が検知されたエリアが中心前方エリアCFAであるか否かを判断する(S404)。そして、上記対象物が検知されたエリアが中心前方エリアCFAでないときは(S404、NO)、室内スピーカ142により、操縦者に対し、上記対象物の方向定位のための音響を出力する(S406)。
【0151】
続いて、注意喚起部514は、検知部512によりその対象物が検知されなくなったか否かを判断する(S408)。そして、注意喚起部514は、その対象物が検知されなくなったときは(408、YES)、処理を終了する。
【0152】
一方、ステップS404において、上記対象物が検知されたエリアが中心前方エリアCFAであるときは(S404、YES)、注意喚起部514は、音響を出力することなく、ステップS408に処理を移す。また、一方、ステップS408において、上記対象物が検知され続けているときは(S408、NO)、注意喚起部514は、ステップS400に戻って処理を繰り返す。
【0153】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0154】
例えば、上述した各実施形態においては、対象物となり得る所定の実在物は、車両や歩行者等の移動する実在物に限らず、踏切、信号機、交通電光掲示板、交通標識等を含む交通基盤要素(Traffic Infrastructure)であってもよい。
【0155】
また、注意喚起システム120、300、400、500が搭載される移動体は、車両に限らず、航空機、船舶等の、操縦者がその動きを操作する任意の移動体であり得る。
【0156】
また、注意喚起システム120、300、400、500の任意の一つが備える技術的特徴は、これらの注意喚起システムの他の一つにおいても備えるものとすることができる。たとえば、注意喚起システム300,400において実現される、認知習熟度、リスク度、及び又は反応習熟度に応じた態様での、フロントガラス105への視覚表示VIの表示は、注意喚起システム500の、左ドアガラス158、右ドアガラス160、リアガラス162における視覚表示VIにおいても用いられ得る。
【0157】
例えば、注意喚起システム500は、注意喚起装置502において、図5に示す挙動検知部306、分類部308、認知スキル評価部310を備えることにより、及び又は図9に示す挙動検知部406、リスク算出部412、反応スキル評価部410を備えることにより、上記認知習熟度、リスク度、及び又は反応習熟度に応じた態様で、視覚表示VIを出力するものとすることができる。
【0158】
また、注意喚起システム500においては、注意喚起部514は、図15に示すルームミラーエリアRMA、左フェンダミラーエリアLFMA、及び右フェンダミラーエリアRFMAにおいて対象物が検知されたときは、それぞれ、ルームミラー110、左フェンダミラー112、および右フェンダミラー114の鏡面上に定義され得る所定の表示範囲に、視覚表示を出力してもよい。
【0159】
また、上述した各実施形態において、視覚表示VIは、矩形に限らず、任意の形状であり得る。そのような形状は、円形、三角形等の任意の多角形、あるいは線分であり得る。
【0160】
また、注意喚起システム500では、必ずしも、前方投光装置122、左右投光装置504、後方投光装置506の3つの投光装置を備える必要はない。投光装置は少なくとも一つあればよく、一つの投光装置でフロントガラス105、左ドアガラス158、右ドアガラス160、リアガラス162等の所定の室内構造物の全てに、視覚表示VIを出力してもよい。
【0161】
また、左右投光装置504および又は後方投光装置506は、前方投光装置122と同様に、表示対象である左ドアガラス158および右ドアガラス160、並びにリアガラス162のそれぞれの下方に設けられた光源アレイであってもよい。
【0162】
また、フロントガラス105、左ドアガラス158、右ドアガラス160、およびリアガラス162は、必ずしもガラスである必要はなく、これらを通して操縦者が車両100の周囲の対象物を視認できる透明度(光透過率)を有する任意の素材で構成され得る。
【0163】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0164】
(構成1)移動体のフロントガラス上に前記移動体の操縦者が視認可能な視覚表示を出力する投光装置と、前記投光装置を制御して、前記視覚表示により前記移動体の周囲の対象物に対する前記操縦者の注意を喚起する注意喚起装置と、を備える、注意喚起システムであって、前記注意喚起装置は、前記移動体の周囲エリアにある対象物を検知する検知部と、検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類する分類部と、検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するリスク算出部と、前記投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力する注意喚起部と、を有し、前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、前記注意喚起部は、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、当該対象物について算出されたリスク度に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、注意喚起システム。
構成1の注意喚起システムでは、操縦者の位置から見た対象物の水平方向位置と同じ水平方向位置に視覚表示が、その対象物のカテゴリについてのリスク度に応じた態様で表示される。このため、構成1の注意喚起システムでは、操縦者は、移動体との接触リスクの程度に応じた優先度で各対象物を視認することができ、移動体の周囲環境に存在する様々な対象物に対する操縦者の注意が、当該操縦者の運転行動にとってより効果的な態様で喚起され得る。
【0165】
(構成2)前記移動体の室内に備えられた室内カメラにより、前記移動体の操縦者の視線の動き検知して、前記操縦者が前記対象物を視認したか否かを判断する挙動検知部を更に備え、前記注意喚起部は、前記操縦者が前記対象物を視認していないと判断されるときは、当該対象物についての前記視覚表示の誘目性のレベルを時間と共に上昇させる、構成1に記載の注意喚起システム。
構成2の注意喚起システムでは、操縦者が対象物を視認するまで、その対象物についての視覚表示の誘目性が時間と共に高まるので、操縦者がその対象物を視認しないまま長い時間が経過してしまうことが防止される。このため、構成2の注意喚起システムでは、操縦者は、出現した対象物に対する対処行動が遅れてしまうのを避けることができる。
【0166】
(構成3)反応スキル評価部を備え、前記挙動検知部は、前記操縦者について、前記対象物を視認したときから前記移動体についての何らかの操縦操作を開始するまでの実反応時間を計測し、前記反応スキル評価部は、前記対象物のそれぞれについて、前記実反応時間から、当該対象物が分類された前記カテゴリについて予め定められた反応標準時間を減算して得られる反応遅れ時間に基づき、当該操縦者の当該カテゴリについての反応習熟度を算出して、前記カテゴリごとの前記反応習熟度を反応習熟度情報として記憶装置に記憶し、前記注意喚起部は、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、前記反応習熟度情報が示す当該対象物の前記カテゴリについての前記操縦者の反応習熟度と、当該対象物についての前記リスク度と、に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、構成2に記載の注意喚起システム。
構成3の注意喚起システムでは、対象物についての視覚表示VIの表示態様は、対象物のリスク度に加えて、その対象物のカテゴリについての操縦者の反応習熟度にも基づいて決定される。このため、構成3の注意喚起システムでは、視認から操縦操作までの操縦者の実反応時間が標準反応時間に比べてより遅い対象物については、より誘目性の高い視覚表示VIにより示され得るので、移動体の周囲環境に存在する様々な対象物に対する操縦者の注意が、当該操縦者の反応行動の速さに応じた優先度で喚起され得る。
【0167】
(構成4)前記反応スキル評価部は、前記操縦者の視線が前記対象物に滞留した時間が所定時間を越えたときに、前記操縦者が前記対象物を視認したと判断する、構成3に記載の注意喚起システム。
構成4の注意喚起システムでは、簡易な処理で、操縦者が対象物を視認したか否かが判断され得る。
【0168】
(構成5)コンピュータにより実行される注意喚起方法であって、移動体の周囲エリアにある対象物を検知するステップと、検知された前記対象物のそれぞれを、少なくとも前記対象物の種別および前記対象物が存在する交通シーンに基づいて、複数のカテゴリのいずれかに分類するステップと、検知された前記対象物のそれぞれについて、当該対象物に分類された前記カテゴリに基づき、前記移動体と接触するリスクの程度を示すリスク度を算出するステップと、前記移動体に設けられた投光装置を制御して前記移動体のフロントガラス上の所定の表示範囲に視覚表示を出力するステップと、を有し、前記表示範囲は、前記フロントガラス上の、前記移動体の幅方向である水平方向に延在する帯状範囲であって、前記視覚表示を出力するステップでは、前記検知された対象物のそれぞれの方向位置を示す前記視覚表示を、当該対象物について算出されたリスク度に応じた態様で、前記フロントガラス上の前記表示範囲内に表示する、注意喚起方法。
構成5の意喚起方法によれば、プログラムをコンピュータにより実行することによって、構成1の注意喚起システムの構成を実現することができる。
【符号の説明】
【0169】
100、200、201、204…車両、102…操縦席、103…助手席、104…ステアリングホイール、105…フロントガラス、106…インストルメントパネル、110…ルームミラー、112…左フェンダミラー、114…右フェンダミラー、120、300、400、500…注意喚起システム、122…前方投光装置、124、324、424、502…注意喚起装置、130、302、402、508…処理装置、131、303、403…記憶装置、132、512…検知部、133、304、404、514…注意喚起部、140…前方物体センサ、142…室内スピーカ、144…室内カメラ、146…ブレーキペダルセンサ、148…アクセルペダルセンサ、150…後方物体センサ、152…右側方物体センサ、154…左側方物体センサ、156…HUD、158…左ドアガラス、160…右ドアガラス、162…リアガラス、202…バイク、203…歩行者、306、406…挙動検知部、308…分類部、310…認知スキル評価部、312…認知習熟度情報、410…反応スキル評価部、412…リスク算出部、414…反応習熟度情報、504…左右投光装置、506…後方投光装置、520…対象物レーダ表示、522…車両アイコン、524…円表示、526…矢印、、HA…表示範囲、AD、AD-10、AD-12、AD-14、AD-16、AD-18、AD-20、AD-22、VI、VI-11、VI-12、VI-13、VI-14、VI-21、VI-22、VI-23、VI-24、VI-31、VI-32、VI-33、VI-34…視覚表示。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18