(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2021044433
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ紡織精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 喜久
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昇吾
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-099929(JP,A)
【文献】特開2018-047748(JP,A)
【文献】特開2020-045000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0291473(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04105231(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06 - B60N 2/08
B60N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに取り付け可能なアッパレールと、
前記アッパレールをスライド可能に支持しているロアレールと、
前記ロアレールと前記アッパレールの少なくとも一方のレールの長手方向の端に取り付けられているプロテクタと、
を備えており、
前記プロテクタは、
前記レールの前記長手方向の端面を覆う端面カバーと、
前記端面カバーから前記長手方向に沿って延びており、前記レールの外面を覆う外カバーと、
前記外カバーの裏面に設けられており前記レールに設けられた貫通孔に嵌合する突起と、
前記レールの内側にて前記突起の先端から前記長手方向のレール中央に向かって延びているツメと、
を備えている、シートスライド装置。
【請求項2】
前記突起の前記レール中央を向いている側面と前記外カバーの外面が
面一となってつながっている、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記レールは、
底板と、
前記レールの短手方向にて前記底板の端から上方へ延びている外縦板と、
前記外縦板の上端から前記底板に対向するように水平方向に延びている上板と、
前記上板の端から下方へ延びている内縦板と、
を備えており、
前記長手方向からみて、前記上板と前記内縦板の境界が湾曲しており、前記貫通孔が、前記境界の湾曲部に設けられており、前記突起は前記外カバーの裏面から下方へ延びている、請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記突起の前記短手方向を向いている側面と前記外カバーの外面が
面一となってつながっている、請求項3に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記突起の前記側面と前記内縦板の表面が面一である、請求項4に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
前記レールは、
上板と、
前記レールの短手方向にて前記上板の端から下方へ延びている縦板と、
を備えており、
前記長手方向からみて、前記上板と前記縦板の境界が湾曲しており、前記貫通孔が、前記境界の湾曲部に設けられており、前記突起は前記外カバーの裏面から下方へ延びている、請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項7】
前記突起の前記短手方向を向いている側面と前記外カバーの外面が
面一となってつながっている、請求項6に記載のシートスライド装置。
【請求項8】
前記突起の前記側面と前記縦板の表面が面一である、請求項7に記載のシートスライド装置。
【請求項9】
前記ツメは、前記湾曲部の裏面に沿って延びている、請求項3から8のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項10】
前記突起は、上からみたときに前記外カバーの隣り合う2辺が形成する角の直下に設けられている、請求項1から9のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートを移動させるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートスライド装置は、シートに取り付け可能なアッパレールと、車体に取り付け可能であり、アッパレールをスライド可能に支持するロアレールを備えている。ロアレールとアッパレールはいずれも長尺であり、以下では説明の便宜上、ロアレールとアッパレールの長尺方向をレール長手方向と称し、ロアレールとアッパレールの水平短手方向をレール短手方向と称する。また、ロアレールとアッパレールのいずれか一方を単にレールと称する。
【0003】
レールのレール長手方向の端を保護するために樹脂製のプロテクタが取り付けられることがある。特許文献1に、プロテクタの一例が開示されている。プロテクタはレールの端面を覆うとともにレールの外面を覆う。プロテクタが簡単に外れないように、プロテクタの裏側に突起が設けられ、レールには孔が設けられる。プロテクタの突起がレールの孔に嵌合することで、プロテクタが外れ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突起と孔の嵌合により、プロテクタ全体をレール長手方向に沿って引っ張ってもプロテクタは簡単には外れない。しかしながら、プロテクタは樹脂で作られており変形し易く、突起の近傍でプロテクタの縁にユーザの指あるいは靴が引っ掛かるとプロテクタが変形して突起が孔から外れるおそれがある(すなわちプロテクタがレールから外れるおそれがある)。本明細書は、従来よりもプロテクタが外れ難い構造を有するシートスライド装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するシートスライド装置は、シートに取り付け可能なアッパレールと、アッパレールをスライド可能に支持しているロアレールと、ロアレールとアッパレールの一方のレールのレール長手方向の端に取り付けられているプロテクタを備えている。プロテクタは、端面カバーと外カバーと突起とツメを備えている。端面カバーは、レールのレール長手方向の端面を覆う。外カバーは、端面カバーからレール長手方向に沿って延びており、レールの外面(レール外面)を覆う。端面カバーはレールの端面の少なくとも一部を覆っていればよく、外カバーはレールの外面の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0007】
突起は、外カバーの裏面に設けられており、レールに設けられた貫通孔に嵌合する。ツメは、レールの内側にて突起の先端からレール長手方向のレール中央に向かって延びている。突起の近傍にてユーザの指あるいは靴がプロテクタの外カバーに引っ掛かると、外カバーをレールから引き剥がす方向の力(引き剥がし力)が作用する。本明細書が開示するシートスライド装置では、外カバーの裏面に沿ってレール中央に向けて延びているツメが引き剥がし力に抗する。その結果、外カバーがレールから浮き上がってしまうことが防止され、プロテクタは容易には外れない。
【0008】
本明細書が開示するシートスライド装置では、さらに、突起のレール中央を向いている側面と外カバーの外面(カバー外面)が滑らかにつながっているとよい。この構造によれば、突起の近傍においては、外カバーの縁が突起側面から突出するような段差が無く、ユーザの指あるいは靴が外カバーに引っ掛かる可能性が低くなる。
【0009】
ロアレールの典型的な形状は、底板と、レールの短手方向にて底板の端から上方へ延びている外縦板と、外縦板の上端から底板に対向するように水平方向に延びている上板と、上板の端から下方へ延びている内縦板を備える。その場合、レール長手方向からみて、上板と内縦板の境界が湾曲しており、貫通孔は境界の湾曲部に設けられているとよい。また、突起は外カバーの裏面から下方へ延びているとよい。レールの上板と内縦板の境界に相当する湾曲部には、ユーザの指あるいは靴が達し難い。そのような湾曲部に設けられた貫通孔を通るように、突起は外カバーの裏面から下方へ延びている。ユーザの指や靴が突起の近傍に接触し難くなる。
【0010】
アッパレールの典型的な形状は、上板と、レールの短手方向にて上板の端から下方へ延びている縦板を備える。その場合、レール長手方向からみて、上板と縦板の境界が湾曲しており、貫通孔は境界の湾曲部に設けられているとよい。また、突起は外カバーの裏面から下方へ延びているとよい。アッパレールにプロテクタを適用した場合も、ユーザの指や靴が外カバーに引っ掛かる可能性が低くなる。
【0011】
以下の特徴は、ロアレールとアッパレールのいずれの場合にも適用可能である。突起のレール短手方向を向いている側面と外カバーの外面が滑らかにつながっているとよい。レール短手方向でも突起と外カバーとの間に段差が無く、ユーザの指あるいは靴が引っ掛かり難くなる。
【0012】
また、突起の側面(レール短手方向を向いている側面)とロアレールの内縦板の表面が面一であるとよい。あるいは、突起の側面とアッパレールの縦板の表面が面一であるとよい。内縦板(縦板)と突起の間に段差がないので、ユーザの指あるいは靴がさらに引っ掛かり難くなる。
【0013】
さらに、ツメが、湾曲部の裏面に沿って延びているとよい。ツメが外カバーをレールにしっかりと係止する。仮に指あるいは靴が外カバーに引っ掛かり、外カバーに強い力が加わっても、外カバーがレールの上板からまくれ上がることが防止される。
【0014】
突起は、上からみたときに外カバーの隣り合う2辺が形成する角の直下に設けられているとよい。別言すれば、外カバーの2辺のそれぞれにおいて、突起の側面と外カバーの外面が滑らかにつながっているとよい。外カバーの2辺において、外カバーの外面と突起の側面との間に段差が無く、ユーザの指あるいは靴が外カバーの縁に引っ掛かる可能性が低くなる。
【0015】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施例のシートスライド装置の側面図である。
【
図2】シートスライド装置の先端部の斜視図である。
【
図3】シートスライド装置の先端部の斜視図である。(プロテクタをロアレールから外した図)。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図10】プロテクタをアッパレールに適用した場合の斜視図である(プロテクタをアッパレールから外した図)
【
図11】アッパレールの断面図である(レール短手方向でカットした断面)。
【
図12】アッパレールの断面図である(レール長手方向でカットした断面)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して実施例のシートスライド装置2を説明する。
図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、ロアレール10とアッパレール20で構成されている。アッパレール20は、ロアレール10に対してスライド可能に取り付けられている。ロアレール10は車体のフロアパネル90に固定される。アッパレール20は、シート80のシートクッション81の下部に取り付けられる。シートスライド装置2は、シートクッション81の下部の左右に夫々取り付けられる。図中の座標系のX方向がロアレール10とアッパレール20のレール長手方向に相当する。Y方向がレール短手方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。説明の便宜上、+X方向を「前方」と称し、-X方向を「後方」と称する。座標系の各軸の意味は以降の図でも同じである。シートクッション81の下部の左右に取り付けられる1対のシートスライド装置は同じ構造を有しているので、以下では一方のシートスライド装置2を説明する。
【0018】
図2に、シートスライド装置2の前端部分の斜視図を示す。
図2を参照して、まず、ロアレール10の形状を説明する。ロアレール10は、車体に取り付けられる底板11と、一対の外縦板12と、一対の上板13と、一対の内縦板14を備えている。
図2では、一方の外縦板12と、一方の内縦板14は隠れて見えない。
【0019】
一対の外縦板12は、レール短手方向で底板11の両端の夫々から上方に向かって延びている。一対の上板13は、夫々の外縦板12の上端から、底板11に対向するように水平方向に延びている。一対の内縦板14は、夫々の上板13の内側端から下方へ延びている。一対の内縦板14は、互いに対向している。一対の内縦板14の間で、ロアレール10は上方に向けて開口している。アッパレール20は、ロアレール10の底板11と外縦板12に囲まれる空間に配置されるとともに、一対の内縦板14の間の開口から上方へ突出している。アッパレール20は、レール長手方向に沿ってロアレール10に対してスライドする。
【0020】
アッパレール20には不図示のロック機構が備えらえており、ロック機構は、ロアレール10に対してアッパレール20を固定する(ロックする)。ロック機構についての説明は省略する。
【0021】
ロアレール10のレール長手方向の端(前端)にプロテクタ30が取り付けられている。
図3に、プロテクタ30をロアレール10から外した斜視図を示す。プロテクタ30は樹脂で作られており、ロアレール10の端を保護する。より正確には、プロテクタ30は、ユーザの指がロアレール10の端に触れないようにする。
【0022】
プロテクタ30は、端面カバー31と外カバー32を備えている。端面カバー31は、ロアレール10のレール長手方向の端面10aを覆う。外カバー32は、端面カバー31からレール長手方向に沿って延びており、ロアレール10の端部の外面10bを覆う。より詳しくは、外カバー32は、ロアレール10の端部にて、ロアレール10の側面(外縦板12)と上面(上板13)を覆う。
【0023】
外カバー32の裏面に第1突起33と第2突起35が設けられている。第1突起33は、ロアレール10に設けられた第1貫通孔15に嵌合する。第2突起35は、ロアレール10に設けられた第2貫通孔16に嵌合する。第1貫通孔15は、ロアレール10の上板13と内縦板14の境界に設けられており、第2貫通孔16は外縦板12に設けられている。第1突起33が第1貫通孔15に嵌合し、第2突起35が第2貫通孔16に嵌合することで、プロテクタ30はロアレール10に係止される。
【0024】
第1突起33の先端からレール長手方向に沿ってツメ34が延びている。ツメ34は、ロアレール10の中央(レール中央)に向かって延びている。ツメ34はロアレール10の裏面に当接する。ツメ34によって、プロテクタ30がロアレール10から外れ難くなる。
【0025】
図4にロアレール10の前端部分の平面図を示し、
図5にロアレール10の前端部分の側面図を示す。
図4、
図5では、理解を助けるために、プロテクタ30の第1突起33とツメ34を破線で描いてある。
【0026】
図6に、
図4のVI-VI線に沿った断面図を示す。
図6は、図中の座標系のXZ平面に平行な平面であって第1突起33を横断する平面でカットしたロアレール10とプロテクタ30を示している。先に述べたように、プロテクタ30の端面カバー31はロアレール10の端面10aを覆っており、外カバー32はロアレール10の先端部分の外面10bを覆っている。外カバー32の裏面に第1突起33が設けられており、第1突起33の先端にはツメ34が設けられている。第1突起33は外カバー32のレール長手方向の縁に沿って延びており、ロアレール10の第1貫通孔15に嵌合する。第1突起33は第1貫通孔15を貫通し、第1突起33の先端はロアレール10の内部空間に達している。第1突起33の先端からレール長手方向に沿ってレール中央に向けて延びているツメ34は、ロアレール10の裏面10cに接する。
図6の左方向がレール中央の方向に相当する。
【0027】
先に述べたように、ツメ34がロアレール10の裏面10cに接することで、プロテクタ30がロアレール10から外れ難くなる。より詳しくは、ツメ34は次の効果を奏する。プロテクタ30は樹脂で作られており、変形し易い。第1突起33の近傍でユーザの指あるいは靴が外カバー32に引っ掛かると、外カバー32をロアレール10から引き剥がす方向の力(引き剥がし力)が作用する。引き剥がし力は、外カバー32を変形させ、その結果、外カバー32がロアレール10から外れるおそれがある。ロアレール10の裏面10cにツメ34が当接していることで、ツメ34が引き剥がし力に抗し、外カバー32がロアレール10から浮き上がることが防止される。
【0028】
さらに、第1突起33のレール中央側の側面33aと、外カバー32の外面(外カバー外面32a)が面一になっている。別言すれば、第1突起33の側面33aと外カバー外面32aが滑らかに連続している。この構造により、外カバー外面32aと第1突起33の側面33aの境界に段差が無く、第1突起33の近傍にて、ユーザの指あるいは靴が外カバー32の縁に引っ掛かり難くなる。この構造的特徴も、プロテクタ30をロアレール10から外れ難くすることに大きく貢献する。
【0029】
図7に、
図5のVII-VII線に沿った断面図を示す。
図7は、YZ平面に平行な平面であって第1突起33を横断する平面でカットしたロアレール10とプロテクタ30を示している。
図7には、第2突起35と第2貫通孔16も現れている。
【0030】
先に述べたように、ロアレール10は、底板11と、一対の外縦板12と、一対の上板13と、一対の内縦板14を備えている。ロアレール10は左右でほぼ対称であり、第1貫通孔15と第2貫通孔16は、左右の夫々の側に設けられる。プロテクタ30には、一対の第1貫通孔15のそれぞれに対して第1突起33が設けられ、一対の第2貫通孔16のそれぞれに対して第2突起35が設けられている。
【0031】
図7には、破線範囲Aの拡大図も示してある。第1貫通孔15は、上板13と内縦板14の境界の湾曲部17に設けられている。なお、
図7では湾曲部17は、第1突起33に隠れているので、破線で描いてある。プロテクタ30の第1突起33は、湾曲部17に対向する位置に設けられており、下方向に延びている。
図7に示されているように、外カバー32は、ロアレール10の上板13を覆う。湾曲部17は、ロアレール10の最上面(すなわち上板13の上面)よりも低い位置になる。第1突起33は、上板13よりも低く、かつ、レール短手方向でレール中央に近い位置に設けられることになる。この構造的特徴により、ユーザの指や靴が第1突起33に接触し難くなる。
【0032】
また、
図7に示すように、第1突起33のレール短手方向の中央寄りの側面33bと外カバー32の外面(外カバー外面32a)が面一である。別言すれば、第1突起33の側面33bと外カバー外面32aが滑らかに連続している。この構造的特徴により、第1突起33の側面33bと外カバー外面32aの間にも段差がなくなり、指あるいは靴が一層引っ掛かり難くなる。
【0033】
さらに、第1突起33のレール短手方向の中央寄りの側面33bと内縦板14の表面14aが面一である。第1突起33の側面33bと内縦板14の表面14aの間にも段差がなく、両者の間でも指あるいは靴が引っ掛かり難くなる。
【0034】
図4を参照すると理解されるように、上からみると、外カバー32の隣り合う2辺が形成する角の直下に第1突起33が設けられている。より詳しくは、第1突起33は、外カバー32のレール長手方向におけるロアレール10の中心寄りの辺と、レール短手方向におけるロアレール10の中心寄りの辺が形成する角の直下に設けられている。そして、先に述べたように、第1突起33の隣り合う側面33a、33bが、ともに、外カバー外面32aと滑らかにつながっている。第1突起33の残りの側面は外カバー32に覆われる。この構造的特徴により、外カバー外面32aの2辺のそれぞれと第1突起33の間には段差が無く、ユーザの指あるいは靴が外カバー32の角に引っ掛かる可能性が低くなる。
【0035】
図8に、
図5のVIII-VIII線に沿った断面を示す。
図8は、YZ平面に平行な平面であってツメ34を横断する平面でカットしたロアレール10とプロテクタ30の図である。
図8は、
図7の破線範囲Aに対応する図でもある。ロアレール10の上板13と内縦板14の境界に相当する湾曲部17の裏面の湾曲面17aに沿ってツメ34が延びており、湾曲面17aにツメ34の表面が面接触している。この構造的特徴により、ツメ34が外カバー32をロアレール10にしっかりと係止する。
【0036】
(変形例)
図9に、変形例のプロテクタ130の断面図を示す。
図9は、
図6に対応する断面図である。
図6と同様に、
図9でも、左側が、レール長手方向におけるロアレール10の中央側に相当する。
図9の右側へいくほど、ロアレール10のレール中央から遠くなる。プロテクタ130は、外カバー132を備えており、レール長手方向において、外カバー外面132aが第1突起33の側面33a(レール長手方向においてロアレール10のレール中央の側を向いている側面)よりもレール中央から遠くに位置している。また、外カバー外面132aと第1突起33の側面33aが滑らかにつながっている。第1突起33と外カバー132の境界には、第1突起33がレール中央側に突出するように段差が形成される。外カバー132の下側の第1突起33が出っ張るように段差が形成されているため、この段差にはユーザの指あるいは靴は引っ掛からない。変形例のプロテクタ130の構造的特徴も、プロテクタ130をロアレール10から外れ難くすることに大きく貢献する。
【0037】
図6と
図9に示されている構造的特徴は、次のように表現できる。外カバー32(132)の外面(外カバー外面32a)と第1突起33のレール中央側の側面33aが面一である、あるいは、レール長手方向において、外カバー外面132aが側面33aよりもレール中央から遠くに位置する。さらに別言すれば、外カバー132の縁において、外カバー外面132aと第1突起33の側面33aが滑らかにつながっている。
【0038】
次に、プロテクタをアッパレールに適用した例の構造について説明する。
図10は、アッパレール220の端部の斜視図である。ただし、プロテクタ230は、アッパレール220の端部から外して描いてある。
図10では、鉛直線VLの右と左で座標系の向きが異なっている点に留意されたい。
図10の右側の座標系は、左側の座標系をZ軸回りに反時計方向に90度回転させたものである。すなわち、アッパレール220の端面220aが、プロテクタ230の端面カバー231に覆われる。
【0039】
アッパレール220は、上板221と、レール短手方向にて上板221の両端から下方へ延びる縦板222を備えている。上板221と縦板222の境界に貫通孔224が設けられている。
【0040】
プロテクタ230は、アッパレール220の短面220aを覆う端面カバー231と、端面カバー231からレール長手方向に延びている外カバー232を備える。外カバー232は、アッパレール220の端部にて、アッパレール220の外面を覆う。
【0041】
外カバー232の裏面には、下方へ延びる突起233が設けられている。突起233の先端には、レール長手方向へ向けて延びるツメ234が設けられている。
図10に示されているように、突起233は、上からみたときに外カバー232の隣り合う2辺(Y軸に平行な辺とX軸に平行な辺の2辺)が形成する角の直下に設けられている。プロテクタ230がアッパレール220に取り付けられると、突起233が貫通孔224に嵌合するとともに、ツメ234は、アッパレール220の裏面に接触する。
【0042】
端面カバー231にはレール長手方向に沿って延びるフック235が設けられており、アッパレール220の縦板222には、フック235に係合する貫通孔216が設けられている。プロテクタ230をアッパレール220の端面220aに取り付けると、フック235が貫通孔216に嵌合し、プロテクタ230はアッパレール220に係止される。
【0043】
図11と
図12に、アッパレール220の断面を示す。
図11は、突起233を通り、レール短手方向に拡がる平面でアッパレール220をカットした断面を示している。
図12は、突起233を通り、レール長手方向に拡がる平面でアッパレール220をカットした断面を示している。
【0044】
図11に示されているように、突起233のレール短手方向を向いている側面233bと外カバー232の外面232aがつながっている。上板221と縦板222の境界に湾曲部227が形成されており、ツメ234は湾曲部227の裏側の湾曲面に沿って延びている。さらに、突起233のレール短手方向を向いている側面233bと、縦板222の表面222aが面一である。アッパレール220とプロテクタ230も、実施例のロアレール20とプロテクタ30の特徴を有しており、プロテクタ230が外れ難い。
【0045】
図12の左方向がレール中央の方向に相当する。
図12に示されているように、突起233のレール中央を向いている側面233aと、外カバー232の外面232aが滑らかにつながっている。別言すれば、側面233aと外面232aは面一である。この特徴も、アッパレール220からプロテクタ230を外れ難くすることに貢献する。
【0046】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例で説明したプロテクタ30(130)は、ロアレール10のレール長手方向の一端にのみに取り付けられていてもよいし、両端のそれぞれに取り付けられていてもよい。また、プロテクタ30(130)と同じ構造的特徴を有するプロテクタ230は、アッパレール220のレール長手方向の一端あるいは両端に取り付けられる。すなわち、実施例のプロテクタは、ロアレールとアッパレールの少なくとも一方のレールに取り付けられていればよい。
【0047】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
2:シートスライド装置
10:ロアレール
10a:端面
10b:外面
10c:裏面
11:底板
12:外縦板
13:上板
14:内縦板
15:第1貫通孔
16:第2貫通孔
17:湾曲部
17a:湾曲面
20、220:アッパレール
30、130、230:プロテクタ
31、231:端面カバー
32、132、232:外カバー
32a、132a、232a:外カバー外面
33:第1突起
33a、33b、233a、233b:側面
34、234:ツメ
35:第2突起
80:シート
81:シートクッション
90:フロアパネル
216:貫通孔
221:上板
222:縦板
222a:表面
224:貫通孔
227:湾曲部
233:突起
235:フック