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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ワイピング装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240924BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B41J2/165 305
B41J2/165 303
B41J2/165 401
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021050023
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148370
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】武本 和大
(72)【発明者】
【氏名】福田 守
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022193(JP,A)
【文献】特開2007-163751(JP,A)
【文献】特開2015-085618(JP,A)
【文献】特開2013-141785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0101742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを複数有するインクジェットヘッドにおける前記ノズルのインク吐出口が配列されたインク吐出面をワイピングするワイパと、
洗浄液が貯留される洗浄液槽と、
前記洗浄液槽内の洗浄液に浸漬するように配置され、前記ワイパが接触することによって前記ワイパに付着した付着物を拭き取る拭き取り部材と、
前記拭き取り部材を押圧して前記拭き取り部材に吸収された洗浄液を前記洗浄液槽内に絞り出す押圧部とを備えたワイピング装置。
【請求項2】
前記洗浄液槽に前記洗浄液を供給する供給部と、
前記洗浄液槽に貯留された洗浄液を排出する排出部とを備えた請求項1記載のワイピング装置。
【請求項3】
前記押圧部を制御する制御部を備え、
前記制御部が、前記押圧部を制御して前記拭き取り部材の押圧および前記押圧の解除を交互に繰り返し行う請求項2記載のワイピング装置。
【請求項4】
前記拭き取り部材が取り外し可能に構成されており、
前記押圧部を制御する制御部を備え、
前記制御部が、前記拭き取り部材の取り外し作業開始を示す指示信号を受け付けた場合に、前記押圧部を制御して前記拭き取り部材の押圧と該押圧の解除を行う請求項2記載のワイピング装置。
【請求項5】
前記押圧部と前記排出部とを制御する制御部を備え、
前記制御部が、前記押圧部を制御して前記拭き取り部材を押圧し、前記拭き取り部材を押圧した状態で前記排出部を制御して前記洗浄液槽に貯留された洗浄液を排出し、該排出後に前記押圧部による前記拭き取り部材の押圧を解除する請求項2記載のワイピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル列のインク吐出面をワイピングするワイピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置においては、インクジェットヘッドのノズルのインク吐出口にインク凝集物が固着したり、用紙から発生した紙粉などのゴミやホコリが付着したりすることがある。ノズルのインク吐出口にインク凝集物が固着したり紙粉が堆積したりした場合、ノズルからのインクの吐出方向の乱れや不吐出などの吐出不良が発生することがある。
【0003】
このような吐出不良を低減するため、インクジェットヘッドのノズルからインクを強制的に吐出させる、いわゆるパージを行った後、ワイパによってノズルのインク吐出口を払拭する一連の動作が知られている。これによりノズルのインク吐出口に固着したインクとともに、ノズルのインク吐出口のゴミがワイプにより除去される。
【0004】
ここで、上述したようなワイピング動作によってインク吐出口の汚れを取り除くことができるが、これによりワイパ自身が汚れてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1および特許文献2においては、ワイパに付着した異物を取り除くための拭き取り部材を設け、その拭き取り部材を洗浄液で湿潤された状態とすることによって、異物除去性能の向上させる方法が提案されている。
【0006】
具体的には、特許文献1においては、洗浄液槽と洗浄液を吸収する吸収部材(拭き取り部材)の組を2組設け、1組目の吸収部材を拭取用の吸収部材として用い、2組目の吸収部材を湿潤用の吸収部材として用いることによって、2組目の洗浄液槽内の洗浄液の汚染を抑制し、綺麗な洗浄液でワイパを湿潤させる方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2においては、洗浄液が吸収された吸収部材(拭き取り部材)を押圧部材で押圧することによって、吸収部材の表面に付着した異物を内部に拡散することによって、吸収部材の表面の目詰まりを防ぎ、寿命を延ばすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-154490号公報
【文献】特開2010-228214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、洗浄液槽と吸収部材の組を複数設ける必要があるため、構成が複雑となりコストもアップする。
【0010】
また、特許文献2の構成では、吸収部材の表面の汚れは拡散するものの、いずれは吸収部材の汚れが飽和し、吸収部材の拭き取り効果が低下する。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、簡易な構成によって、拭き取り部材の汚れの飽和を防止することができるワイピング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワイピング装置は、インクを吐出するノズルを複数有するインクジェットヘッドにおけるノズルのインク吐出口が配列されたインク吐出面をワイピングするワイパと、洗浄液が貯留される洗浄液槽と、洗浄液槽内の洗浄液に浸漬するように配置され、ワイパが接触することによってワイパに付着した付着物を拭き取る拭き取り部材と、拭き取り部材を押圧して拭き取り部材に吸収された洗浄液を洗浄液槽内に絞り出す押圧部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイピング装置によれば、ワイパに付着した付着物を拭き取る拭き取り部材を洗浄液槽内の洗浄液に浸漬するように配置し、その拭き取り部材を押圧部により押圧することによって、拭き取り部材に吸収された洗浄液を洗浄液槽内に絞り出すようにしたので、複数の洗浄液槽及び複数の拭き取り部材を要することなく簡易な構成によって、拭き取り部材の汚れの飽和を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のワイピング装置の一実施形態の概略構成を示す斜視図
図2】インクジェットヘッドの外観を示す斜視図
図3】ワイパの構成を示す図
図4図1に示すワイピング装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図5】ワイピング動作開始時のワイパの位置を示す図
図6】ワイパが拭き取り部材まで到達した状態を示す図
図7】ワイパがワイプ初期位置にある状態を示す図
図8】拭き取り部材が押圧されている状態を示す図
図9】本発明のワイピング装置の一実施形態の動作を説明するためのフローチャート
図10】洗浄液槽に設けられた粘度計の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明のワイピング装置の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態のワイピング装置1の概略構成を示す図である。本実施形態のワイピング装置1は、図1に示すインクジェットヘッド2をワイピングするものであるが、まず、そのワイピングの対象であるインクジェットヘッド2の構成について説明する。
【0016】
図2は、インクジェットヘッド2の外観を示す斜視図である。なお、図2においては、インクジェットヘッド2の説明に必要な部分のみを簡略化して示してある。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、ノズルプレート36と、ノズルガード32とを備えている。ノズルプレート36は、インクを吐出するノズルのインク吐出口37が、複数配列されたノズル列を有するものである。
【0017】
ノズルガード32は、図2に示すように、ノズルプレート36のノズル列に対応する部分に開口46を有し、その開口46の部分において、ノズル列のインク吐出面36aが露出している。なお、本実施形態において、インク吐出面36aとは、ノズルのインク吐出口37の開口が配列された面であり、ノズルプレート36の表面と同じ面である。
【0018】
ノズルガード32は、ノズルプレート36のインク吐出面36aを保護するものである。ノズルガード32は、具体的には、ノズル列の周囲を覆うように形成された底板44と、底板44の周縁に立設された側壁47とを有している。底板44には、上述した開口46が形成されている。
【0019】
開口46は、前後方向に細長い矩形状に形成され、全ノズルのインク吐出口37が露出するように形成されている。
【0020】
なお、図2においては図示省略したが、図1に示すインク供給管2aからインクジェットヘッド2に対してインクが供給される。
【0021】
本実施形態のワイピング装置1は、上述したインクジェットヘッド2のノズルガード32の外表面およびノズルガード32の開口46において露出したインク吐出面36aをワイプすることによって、その表面に付着したインクや汚れを除去する。
【0022】
次に、図1に示す本実施形態のワイピング装置1について説明する。
【0023】
本実施形態のワイピング装置1は、図1に示すように、ワイプ部10と、押圧部20と、拭き取り部材30と、洗浄液槽40とを備えている。
【0024】
ワイプ部10は、ワイパ11と、タイミングベルト12と、第1~第4のベルト搬送ローラ13~16とを備えている。
【0025】
ワイパ11は、図3に示すように、ワイパ本体11aと、ワイパ取り付け部材11bとから構成されている。ワイパ本体11aは、ゴムなどの柔軟性および弾性を有する部材から形成されており、矩形状に形成されている。
【0026】
ワイパ本体11aは、インクジェットヘッド2の幅(ノズル列に直交する方向の長さ)と同等の幅を有し、上述したようにインクジェットヘッド2のノズルガード32の外表面およびインク吐出面36aをワイプするのに十分な幅を有する。
【0027】
また、ワイパ本体11aは、可撓性を有し、ワイパ本体11aの先端部がインクジェットヘッド2のノズルガード32の外表面に押し当てられた場合には、その先端部が撓み、ワイパ本体11aの弾性力によって所定の圧力でノズルガード32の外表面およびインク吐出面36aに押し当てられるように形成される。
【0028】
ワイパ取り付け部材11bは、ワイパ本体11aをタイミングベルト12に取り付ける部材であり、たとえば金属などで形成される。ワイパ取り付け部材11bは、タイミングベルト12に立設され、そのワイパ取り付け部材11bに対して、ネジなどを用いてワイパ本体11aが取り付けられる。
【0029】
タイミングベルト12は、ワイパ11を搬送する環状ベルトである。タイミングベルト12は、図1に示すように、インクジェットヘッド2のノズル列の方向に延設されており、ワイパ11は、タイミングベルト12の幅方向とワイパ11のワイプ面が平行になるようにタイミングベルト12に取り付けられている。そして、タイミングベルト12が、インクジェットヘッド2のノズル列の方向に移動することによって、ワイパ11によってインクジェットヘッド2がワイプされる。
【0030】
第1~第4のベルト搬送ローラ13~16は、上述したタイミングベルト12が掛け渡されるローラである。第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14は、インクジェットヘッド2のノズル列の方向に並べて配列され、インクジェットヘッド2のインク吐出面36aから同じ距離の位置に配置されている。第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14との距離は、インクジェットヘッド2のノズル列の方向の長さよりも長くなるように設定されている。したがって、第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14の間をワイパ11が移動する間に、ワイパ11によってインクジェットヘッド2がワイプされる。
【0031】
第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16は、第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14よりも下側(インクジェットヘッド2から離れた位置)に配置される。第3のベルト搬送ローラ15は、第1のベルト搬送ローラ13の直下に配置される。第4のベルト搬送ローラ16は、第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14との距離よりも第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16との距離の方が長くなる位置に配置されている。そして、第4のベルト搬送ローラ16は、第3のベルト搬送ローラ15よりも高い位置(インクジェットヘッド2に近い位置)に配置されている。
【0032】
これにより、第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16との間のタイミングベルト12は、第1のベルト搬送ローラ13と第2のベルト搬送ローラ14との間のタイミングベルト12に対して傾斜を有するように構成されている。したがって、第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16との間をワイパ11が移動する際には、その先端の移動軌跡が傾斜を有することになるが、その移動軌跡の傾斜については、後で詳述する。なお、図5に示す1点鎖線が、ワイパ11の先端部が撓んでないと想定した場合におけるワイパ11の先端の移動軌跡Tを示している。
【0033】
第1~第4のベルト搬送ローラ13~16は、図4に示す駆動モータ17によって回転する。
【0034】
洗浄液槽40は、洗浄液を貯留する。洗浄液槽40は、略直方体形状に形成されており、その中央部分に凹部41が形成され、その凹部41内に洗浄液が貯留される。洗浄液槽40の凹部41は、洗浄液が貯留される第1の底部41aと、洗浄液が貯留されるとともに、拭き取り部材30および後述する押圧部材21が設置される第2の底部41bとを備えている。第1の底部41aと第2の底部41bとの間には段差面41cが形成されており、その段差面41cによって、第1の底部41aの底面よりも第2の底部41bの底面の方が低くなるように形成されている。
【0035】
そして、段差面41cに拭き取り部材30の端面の一部が当接して配置される(図5参照)。これにより洗浄液槽40の凹部41の底面における拭き取り部材30の位置が固定される。
【0036】
第2の底部41bの底面は、第1の底部41aに向けて次第に低くなるような傾斜を有する。これにより、拭き取り部材30が自重によって段差面41c側に落下して段差面41cに当接する。
【0037】
また、第2の底部41bの底面の傾斜角度は、上述した第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16との間のタイミングベルト12の傾斜角度と同じ大きさに設定されている。第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16の間のタイミングベルト12と、拭き取り部材30との距離は、拭き取り部材30の上方をワイパ11が通過する際、ワイパ本体11aが拭き取り部材30の表面を摺動するような距離に設定されている。上述したように第2の底部41bの底面の傾斜角度と、第3のベルト搬送ローラ15と第4のベルト搬送ローラ16の間のタイミングベルト12の傾斜角度とを同じ大きさにすることによって、ワイパ本体11aが拭き取り部材30から離間することなく、ワイパ本体11aを拭き取り部材30によって十分に拭き取ることができる。
【0038】
また、洗浄液槽40の側壁部には、凹部41内に洗浄液を供給する供給孔42が形成されている。また、第1の底部41aの底壁部には、第1の底部41aに貯留された洗浄液を排出する排出孔43が形成されている。供給孔42には、後述する供給部50(図4参照)から洗浄液が供給される。また、第1の底部41aおよび第2の底部41bに貯留された洗浄液は、後述する排出部60(図4参照)によって排出孔43を介して洗浄液槽40外に排出される。
【0039】
なお、洗浄液としては、公知なものを使用することができる。
【0040】
拭き取り部材30は、上述したように洗浄液槽40内の洗浄液に浸漬するように配置され、ワイパ11が接触することによってワイパ11に付着したインクや汚れを拭き取る。拭き取り部材30は、吸収性、柔軟性および復元性を有する材料から形成され、たとえばウレタンなどの発泡材が用いられる。
【0041】
拭き取り部材30は、上述したように洗浄液をその内部全体に吸収可能な吸収性を有する。また、拭き取り部材30は、後述する押圧部20による押圧によって収縮し、内部に吸収した洗浄液を外部に絞り出すことが可能な柔軟性を有する。さらに、拭き取り部材30は、押圧部20による押圧が解除された場合には、元の形状に戻ることが可能な復元性を有する。拭き取り部材30は、上述したような吸収性、柔軟性および復元性を有するものであれば、如何なる材料を用いてもよい。
【0042】
拭き取り部材30は、上述したように第2の底部41bに設置されるが、取り外して交換可能に構成されている。
【0043】
押圧部20は、拭き取り部材30を押圧して拭き取り部材30に吸収された洗浄液を第1の底部41aに絞り出す。押圧部20は、具体的には、押圧部材21と、送りネジ22と、ベルト23と、モータ24とを備えている。押圧部20は、後述する制御部70(図4参照)によって制御され、モータ24が動作する。モータ24の回転がベルト23を介して送りネジ22に伝達され、送りネジ22が回転する。
【0044】
送りネジ22には、押圧部材21が接続されている。押圧部材21は、第2の底部41b内において拭き取り部材30に隣接して配置される。そして、モータ24および送りネジ22が正回転することによって、押圧部材21が拭き取り部材30に向けて移動する。この押圧部材21の移動によって拭き取り部材30が押圧される。拭き取り部材30は、押圧部材21の押圧によって、押圧部材21と段差面41cとの間で収縮し、これにより、拭き取り部材30に吸収された洗浄液が、第1の底部41a側に向けて絞り出される。
【0045】
一方、モータ24および送りネジ22が逆回転することによって、押圧部材21が拭き取り部材30の方とは逆方向に移動する。この押圧部材21の移動によって拭き取り部材30の押圧が解除され、押圧部材21が元の位置に戻る。
【0046】
図4は、本実施形態のワイピング装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、ワイピング装置1は、制御部70を備える。
【0047】
制御部70は、ワイピング装置1全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)および半導体メモリなどを備える。制御部70は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたワイピング動作プログラムをCPUに実行させることによって、ワイピング装置1のワイプ部10、押圧部20、供給部50および排出部60を制御する。
【0048】
供給部50は、制御部70による制御によって、上述したように洗浄液槽40の供給孔42に洗浄液を供給する。具体的には、供給部50は、図示省略した洗浄液タンク、供給ポンプ、供給弁および配管などを備え、供給ポンプおよび供給弁が制御されることによって洗浄液の供給が制御される。
【0049】
排出部60は、制御部70による制御によって、上述したように洗浄液槽40の排出孔43から洗浄液を排出される。具体的には、排出部60は、図示省略した廃液タンク、排出ポンプ、排出弁および配管などを備え、排出ポンプおよび排出弁が制御されることによって洗浄液の排出が制御される。
【0050】
なお、供給部50による洗浄液の供給および排出部60による洗浄液の排出は、ポンプを用いることなく、水頭差による圧力を利用するようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態の制御部70は、押圧部20を制御して拭き取り部材30の押圧および押圧の解除を交互に繰り返し行った後、排出部60を制御して洗浄液槽40の第1の底部41aに貯留された洗浄液を排出する。このように拭き取り部材30の押圧および押圧の解除を交互に繰り返し行うことによって、拭き取り部材30に付着したインクや汚れを拭き取り部材30に吸収された洗浄液とともに、第1の底部41aに十分に流し出すことができる。
【0052】
次に、本実施形態にワイピング装置1の動作について、図5図8並びに図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0053】
まず、ワイパ11は、図7に示すワイプ初期位置に設置されている(S10)。そして、インクジェットヘッド2のワイピング動作を行う際には、ワイピング装置1がインクジェットヘッド2に向けて移動するとともに、制御部70が駆動モータ17を動作させ、第1~第4のベルト搬送ローラ13~16を回転させることによってタイミングベルト12を移動させる。これによりワイパ11が図7に示す矢印A4に移動し、図5に示すように、ワイパ11の先端部が、インクジェットヘッド2のノズルガード32の開口46の一方の短辺の位置に配置される(S12)。
【0054】
次に、制御部70は、駆動モータ17を動作させ第1~第4のベルト搬送ローラ13~16を回転させることによってタイミングベルト12を移動させ、これによりワイパ11を図5に示す矢印A1の方向に移動させる。このワイパ11の移動によって、インクジェットヘッド2のノズルガード32およびインク吐出面36aがワイプされる(S14)。
【0055】
続いて、制御部70は、第1~第4のベルト搬送ローラ13~16を回転させることによってワイパ11を図5に示す矢印A2に移動させ、さらに第4のベルト搬送ローラ16から第3のベルト搬送ローラ15に向けて図6に示す矢印A3方向に移動させる。
【0056】
そして、ワイパ11が、拭き取り部材30の上方まで移動した際には、図6に示すようにワイパ11(ワイパ本体11a)が拭き取り部材30に押し当てられ、その状態でワイパ11が移動することによって拭き取り部材30の表面上をワイパ11(ワイパ本体11a)が摺動する。これにより、上述したワイピング動作によってワイパ本体11aに付着したインクや汚れが拭き取り部材30によって拭き取られる(S16)。
【0057】
そして、ワイパ11は、拭き取り部材30を通過した後、図7に示すように洗浄液槽40の第1の底部41a内に貯留された洗浄液L内に浸漬される(S18)。これにより、ワイパ11に洗浄液を付着させることができる。また、上述したように拭き取り部材30によってワイパ11のインクや汚れを拭き取った後に、ワイパ11を洗浄液Lに浸漬させるので、洗浄液Lの汚染も防止することができる。なお、洗浄液Lは、図7に示す液面Sの位置まで貯留されており、拭き取り部材30の大半は洗浄液Lに浸漬した状態であるが、その表面(拭き取り面)を含む一部分は、洗浄液Lの液面Sよりも上方に位置し、洗浄液Lに浸漬していない。これにより、拭き取り部材30によって拭き取られたインクや汚れが、洗浄液L内に流れ出すのを抑制することができる。ただし、拭き取り部材30の表面は毛細管現象によって湿潤状態となっている。
【0058】
そして、制御部70は、ワイパ11を洗浄液Lに浸漬させた後、引き続きワイパ11を移動させ、図7に示すワイプ初期位置まで到達した時点でワイパを停止する(S20)。
【0059】
次に、制御部70は、押圧部20のモータ24を駆動し、送りネジ22を正回転させることによって押圧部材21を拭き取り部材30の方に(図8に示す矢印B1方向)に移動させ、これにより拭き取り部材30を押圧する。この押圧によって拭き取り部材30が収縮し、拭き取り部材30に付着したインクや汚れが絞り出されて第1の底部41a内の洗浄液Lに流れ出す。
【0060】
続いて、制御部70は、押圧部20のモータ24を駆動し、送りネジ22を逆回転させることによって押圧部材21を拭き取り部材30の方とは逆方向(図8に示す矢印B2方向)に移動させ、これにより拭き取り部材30の押圧を解除する。
【0061】
そして、制御部70は、上述した拭き取り部材30の押圧と押圧の解除とを交互に複数回繰り返す(S22)。
【0062】
次いで、制御部70は、拭き取り部材30を押圧した状態で排出部60を制御し、排出孔43を介して、汚染された洗浄液Lを外部に排出する(S24)。このように、拭き取り部材30を押圧した状態で洗浄液Lを排出することによって、拭き取り部材30の解除によって、汚染された洗浄液Lが再び拭き取り部材30に戻ってしまうのを防止することができる。
【0063】
そして、制御部70は、汚染された洗浄液Lが排出された後、押圧部20による拭き取り部材30の押圧を解除する(S26)。次いで、制御部70は、排出部60の排出弁を閉じ、供給部50を制御して供給孔42から新しい洗浄液Lを供給する(S28)。制御部70は、洗浄液Lの液面が、図8に示す液面Sの位置にくるまで洗浄液を供給する。このように、拭き取り部材30の押圧を解除した後に新しい洗浄液Lを供給することによって、拭き取り部材30の押圧の解除によって洗浄液Lの量が減ってしまうのを防止することができる。
【0064】
そして、洗浄液が供給された後、ワイピング装置1が移動し、インクジェットヘッド2からワイピング装置1が離間して配置される。以上が、ワイピング装置1の一連の動作の説明である。
【0065】
本実施形態のワイピング装置1によれば、ワイパ11に付着した付着物を拭き取る拭き取り部材30を洗浄液槽40内の洗浄液に浸漬するように配置し、その拭き取り部材30を押圧部20により押圧することによって、拭き取り部材30に吸収された洗浄液を洗浄液槽内に絞り出すようにしたので、簡易な構成によって、拭き取り部材の汚れの飽和を防止することができる。すなわち、拭き取り部材30の汚れが少ない状態を長期間にわたり維持することができる。
【0066】
また、洗浄液槽40内に拡散された汚染された洗浄液を排出し、新鮮な洗浄液を供給するようにしたので、拭き取り部材30の拭き取り効果をさらに長期間に亘って維持することができる。
【0067】
なお、上記実施形態においては、上述したように拭き取り部材30を押圧部材21によって押圧するようにしたが、この押圧動作は、必ずしもワイパ11によるワイピング動作を行う度に行わなくてもよい。たとえばワイパ11によるワイピング動作を予め設定された回数をおこなったときに押圧部材21による押圧を行うようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、上述したように拭き取り部材30が取り外し可能に構成されているが、制御部70が、拭き取り部材30の取り外し作業開始を示す指示信号を受け付けた場合に、押圧部20を制御して拭き取り部材30を押圧し、排出部60を制御して洗浄液槽40に貯留された洗浄液を排出するようにしてもよい。上述した拭き取り部材30の取り外し作業開始を示す指示信号については、たとえばユーザが、インクジェットヘッド2およびワイピング装置1が設けられたインクジェット印刷装置の操作パネル(図示省略)などにおいて設定入力するようにすればよい。
【0069】
上述したように拭き取り部材30を交換するタイミングで拭き取り部材30を押圧し、洗浄液を排出し、押圧を解除した状態で拭き取り部材30を交換することで、拭き取り部材30に吸収された汚れた洗浄液を排出し、拭き取り部材30を交換する際の汚れを軽減することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、押圧部20は、送りネジ22とモータ24を備えた直動機構によって実現されているが、押圧部20の構成は、その他の構成としてもよい。たとえば押圧部材21にワイヤなどを接続し、そのワイヤを手動で操作することによって押圧する構成としてもよい。また、タイミングベルト12の送り駆動力を利用して押圧部材21を移動させる構成としてもよい。
【0071】
また、洗浄液槽40における洗浄液の排出および供給は、上述したタイミングに限らず、その他のタイミングにおいても行うようにしてもよい。たとえば洗浄液を洗浄液槽40に供給した時点から長期間経過すると洗浄液は乾燥によって少なくなり、かつ粘度が増加してしまう。このように洗浄液の粘度が増加した場合、ワイプ後に洗浄液がノズルプレート36の表面に残ってしまい、ワイパ11の洗浄能力が低下してしまう。
【0072】
そこで、洗浄液槽40に、フロート式などの液面センサ(図示省略)を設け、洗浄液の液面が、予め設定された閾値以下になった時点において、洗浄液の排出および供給を行うようにしてもよい。
【0073】
また、液面センサではなく、図10に示すように洗浄液槽40に粘度計45を設け、粘度計45によって計測された粘度が、予め設定された閾値以上になった時点において、洗浄液の排出および供給を行うようにしてもよい。なお、粘度計としては、たとえば超音波粘度計を用いることができるが、これに限られない。
【0074】
また、上記実施形態のワイピング装置1は、フルカラー印刷を行うインクジェット印刷装置に用いることができる。その場合、インクジェット印刷装置は、たとえばC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)の色毎のインクジェットヘッド2と、各色のインクジェットヘッド2毎に設けられたワイピング装置1と、印刷媒体を搬送する搬送機構などを備える。ワイピング装置1は、インクジェットヘッド2による印刷処理が行われていないときにインクジェットヘッド2に近づいて配置され、上述した一連の動作を行い、その後、各ワイピング装置1は、各インクジェットヘッド2から離間し、再び印刷処理が可能な状態となる。
【0075】
本発明のワイピング装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0076】
上記本発明のワイピング装置においては、洗浄液槽に洗浄液を供給する供給部と、洗浄液槽に貯留された洗浄液を排出する排出部とを備えることができる。
【0077】
また、上記本発明のワイピング装置においては、押圧部を制御する制御部を備えることができ、制御部は、押圧部を制御して拭き取り部材の押圧およびその押圧の解除を交互に繰り返し行うことができる。
【0078】
また、上記本発明のワイピング装置においては、拭き取り部材を取り外し可能に構成することができるともに、押圧部を制御する制御部を備えることができ、制御部は、拭き取り部材の取り外し作業開始を示す指示信号を受け付けた場合に、押圧部を制御して拭き取り部材の押圧と押圧の解除を行うことができる。
【0079】
また、上記本発明のワイピング装置においては、押圧部と排出部とを制御する制御部を備えることができ、制御部は、押圧部を制御して拭き取り部材を押圧し、拭き取り部材を押圧した状態で排出部を制御して洗浄液槽に貯留された洗浄液を排出し、該排出後に押圧部による拭き取り部材の押圧を解除することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ワイピング装置
2 インクジェットヘッド
10 ワイプ部
11 ワイパ
11a ワイパ本体
11b ワイパ取り付け部材
12 タイミングベルト
13 第1のベルト搬送ローラ
14 第2のベルト搬送ローラ
15 第3のベルト搬送ローラ
16 第4のベルト搬送ローラ
17 駆動モータ
20 押圧部
21 押圧部材
22 送りネジ
23 ベルト
24 モータ
30 拭き取り部材
32 ノズルガード
36 ノズルプレート
36a インク吐出面
37 インク吐出口
40 洗浄液槽
41 凹部
41a 第1の底部
41b 第2の底部
41c 段差面
42 供給孔
43 排出孔
44 底板
45 粘度計
46 開口
47 側壁
50 供給部
60 排出部
70 制御部
L 洗浄液
S 液面
T 移動軌跡
図1
図2
図3
図4
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図8
図9
図10