(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】作業車のアウトリガー装置
(51)【国際特許分類】
B60S 9/02 20060101AFI20240924BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B60S9/02
A62C27/00 506
(21)【出願番号】P 2021059575
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 令和3年2月24日 販売場所 春日・大野城・那珂川消防組合消防本部(福岡県春日市春日2丁目2番地1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】櫨本 勲
(72)【発明者】
【氏名】吉井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-42023(JP,U)
【文献】実開平4-16793(JP,U)
【文献】実開平2-143260(JP,U)
【文献】特開平5-155316(JP,A)
【文献】米国特許第10532722(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
B60S 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車に装備されたアウトリガーと、前記アウトリガーの先端部に設けられた操作機構とを備えたアウトリガー装置であって、
前記アウトリガーは、前記作業車の車体に固定されたアウトリガーボックスと、前記アウトリガーボックスに装着され、全縮状態で前記アウトリガーボックスに収納される収納位置と、前記収納位置から伸長して前記車幅方向に張り出した張出位置との間で、前記車幅方向に伸縮可能なアウトリガービームと、前記アウトリガービームの先端部に昇降可能に設けられたジャッキと、前記アウトリガービームを前記アウトリガーボックスに対して前記収納位置と前記張出位置でロック可能なアウトリガーロック機構と、前記アウトリガービームを前記アウトリガーボックスに対して前記収納位置でロック可能な走行用ロック機構とを備え、
前記操作機構は、前記アウトリガーロック機構による前記アウトリガービームのロックを解除するための第1のロック解除部と、前記走行用ロック機構による前記アウトリガービームのロックを解除するための第2のロック解除部と、前記第1のロック解除部と前記第2のロック解除部を連動して作動させるための操作ハンドルとを備え、前記操作ハンドルを前記アウトリガービームの伸長方向に引っ張る動作に連動して前記第1のロック解除部と前記第2のロック解除部が作動して、前記アウトリガーロック機構のロックと前記走行用ロック機構のロックが解除されることを特徴とする作業車のアウトリガー装置。
【請求項2】
前記第1のロック解除部により前記アウトリガーロック機構のロックが解除されるタイミングは、前記第2のロック解除部により前記走行用ロック機構のロックが解除されるタイミングと同時又は後になるように設定されている請求項1に記載の作業車のアウトリガー装置。
【請求項3】
前記アウトリガーロック機構は、そのロックとロック解除を操作する第1の操作レバーを有し、前記走行用ロック機構は、そのロックとロック解除を操作する第2の操作レバーを有し、前記第1のロック解除部は、その作動時に前記第1の操作レバーを作動させて、前記アウトリガーロック機構のロックを解除させ、前記第2のロック解除部は、その作動時に前記第2の操作レバーを作動させて、前記走行用ロック機構のロックを解除させる請求項1又は2に記載の作業車のアウトリガー装置。
【請求項4】
前記操作機構は、前記アウトリガーの先端部に装着された取付パネルと、前記取付パネルに設けられた開口部を外側から覆うと共に、前記車幅方向に可動な状態で前記取付パネルに取付けられた可動パネルとを更に備え、前記可動パネルの内面側に前記第1のロック解除部と前記第2のロック解除部が取付けられ、前記可動パネルの外面側に前記操作ハンドルが取付けられている請求項1から3の何れか一項に記載の作業車のアウトリガー装置。
【請求項5】
前記アウトリガービームが前記収納位置に在るとき、前記取付パネル及び前記可動パネルは、前記作業車の外装パネルの一部として、前記アウトリガーの搭載個所を外側から覆う請求項4に記載の作業車のアウトリガー装置。
【請求項6】
前記作業車は、消防車又は救助工作車である請求項1から5の何れか一項に記載の作業車のアウトリガー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防車、救助工作車、クレーン車、高所作業車等の作業車に装備されるアウトリガー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮式又は屈折式の梯子、ブーム、クレーン等の作業用移動体を車体上に搭載した作業車では、作業用移動体を伸長させて所要の作業を行う際の車体転倒を防止するために、アウトリガーが装備されている(例えば、下記の特許文献1)。アウトリガーは、車体の左右両側にそれぞれ装備され、車体に固定されたアウトリガーボックスと、アウトリガーボックスに装着されたアウトリガービームと、アウトリガーの先端部に昇降可能に設けられたジャッキを主要な要素として構成される。アウトリガービームは、アウトリガーボックスにテレスコピック式に装着され、アウトリガーボックスに全縮状態で収納される収納位置と、収納位置から伸長して車幅方向に所定距離だけ張り出した張出位置との間で、車幅方向に伸縮可能である。通常、アウトリガービームの張出位置として、最大張出位置と一又は複数の中間張出位置の中から作業に適した張出位置を選択できるようになっている。また、車両走行時、アウトリガービームが振動や急カーブなどでアウトリガーボックスから飛び出してしまうことを防止するために、アウトリガービームを収納位置でロックし、また、作業時、アウトリガービームが張出位置から収縮してしまうことを防止するために、アウトリガービームを張出位置でロックする、アウトリガーロック機構が設けられている。さらに、アウトリガービームを収納位置でロックする走行用ロック機構を設け、アウトリガービームをアウトリガーロック機構と走行用ロック機構の二重ロック機構により収納位置でロックすることにより、車両走行時のアウトリガービームの飛び出しをより厳重に防止している。
【0003】
図13(a)は、公知のアウトリガー10において、車体に固定されたアウトリガーボックスに10aに、アウトリガービーム10bが全縮状態で収納されている状態を示している(収納位置)。アウトリガービーム10bの先端部の一側部(同図で左側部)にアウトリガーロック機構の操作レバー(把持レバー11)が設けられ{
図13(b)}、他側部(同図で右側部)に走行用ロック機構の操作レバー(回動レバー12){
図13(c)}が設けられている。
【0004】
アウトリガーロック機構は、アウトリガービーム10bの収納位置と張出位置の各位置で、アウトリガービーム10bをアウトリガーボックス10aに対してロックピン等(図示省略)でロックする機構である。アウトリガーロック機構のロックとロック解除は、把持レバー11で操作する。アウトリガービーム10bが収納位置に在る状態で、把持レバー11を握り、
図13(b)に示す初期位置から把持方向(同図の白抜き矢印方向)に変位させると、ロックピン等が作動してロックが解除され、アウトリガービーム10bを収納位置から伸長させることが可能になる(走行用ロック機構のロックも解除されている必要がある)。この状態でアウトリガービーム10bを張出位置まで伸長させて、把持レバー11を開放すると、バネ等の弾性復元力により把持レバー11が
図13(b)に示す初期位置に自律復帰し、これに伴い、ロックピン等が作動してロックに切り替わり、アウトリガービーム10bが張出位置でロックされる。
【0005】
走行用ロック機構は、アウトリガービーム10bの収納位置で、アウトリガービーム10bをアウトリガーボックス10aに対して回動レバー12の係合爪12aと係合ピン12bでロックする機構である。係合ピン12bは、アウトリガーボックス10aの先端部の他側部{
図13(a)で右側部}に固定されている。アウトリガービーム10bが収納位置に在るとき、回動レバー12の係合爪12aが係合ピン12bに係合して、アウトリガービーム10bを収納位置でロックする。アウトリガービーム10bが収納位置に在る状態で、回動レバー12を握り、
図13(c)に示す初期位置から回動方向(同図の白抜き矢印方向:半時計方向)に変位させると、回動レバー12の係合爪12aが係合ピン12bから外れてロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなアウトリガーロック機構と走行用ロック機構の二重ロック機構を備えたアウトリガーでは、アウトリガービームを収納位置から張出位置まで伸長させる際、作業者は、アウトリガーロック機構の操作レバーを一方の手で握り、走行用ロック機構の操作レバーを他方の手で握って、両ロック機構のロックを解除し、その状態で後ろ向きに移動してアウトリガービームを伸長させてゆく必要がある。このような両手が塞がれた状態での後ろ向き移動は、特に足場の悪い作業現場では、体のバランスを崩し易いので、作業者は、転倒に注意しながらアウトリガービームを伸長させてゆかなければならない。また、アウトリガーのより安定した接地を可能にするために、ジャッキの接地個所に敷板を敷く場合があるが、アウトリガービームの伸長時、作業者は両手が塞がれた状態であるので、アウトリガービームを張出位置まで伸長させた後、敷板を取りに車体側に戻り、そしてジャッキの接地個所に戻って敷板を敷くという作業を強いられる。これらの理由により、アウトリガーの伸長開始から接地完了までの時間が長くなる傾向がある。
【0008】
作業車が作業現場に到着した後、アウトリガーを接地し、接地完了後に作業用移動体を作動させて所要の作業を行うが、アウトリガーの接地完了までに時間が掛かると、その分、作業開始が遅れることになる。従って、作業を速やかに開始するために、アウトリガーの接地に要する時間を短縮する必要性が認められる。特に、消防車や救助工作車では、災害現場に到着後、速やかに消火活動や救助活動を開始することが求められる。
【0009】
本発明の課題は、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構の二重ロック機構を備えたアウトリガーの接地完了までの時間を短縮することができるアウトリガー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、作業車に装備されたアウトリガーと、前記アウトリガーの先端部に設けられた操作機構とを備えたアウトリガー装置であって、前記アウトリガーは、前記作業車の車体に固定されたアウトリガーボックスと、前記アウトリガーボックスに装着され、全縮状態で前記アウトリガーボックスに収納される収納位置と、前記収納位置から伸長して前記車幅方向に張り出した張出位置との間で、前記車幅方向に伸縮可能なアウトリガービームと、前記アウトリガービームの先端部に昇降可能に設けられたジャッキと、前記アウトリガービームを前記アウトリガーボックスに対して前記収納位置と前記張出位置でロック可能なアウトリガーロック機構と、前記アウトリガービームを前記アウトリガーボックスに対して前記収納位置でロック可能な走行用ロック機構とを備え、前記操作機構は、前記アウトリガーロック機構による前記アウトリガービームのロックを解除するための第1のロック解除部と、前記走行用ロック機構による前記アウトリガービームのロックを解除するための第2のロック解除部と、前記第1のロック解除部と前記第2のロック解除部を連動して作動させるための操作ハンドルとを備え、前記操作ハンドルを前記アウトリガービームの伸長方向に引っ張る動作に連動して前記第1のロック解除部と前記第2のロック解除部が作動して、前記アウトリガーロック機構のロックと前記走行用ロック機構のロックが解除されることを特徴とする作業車のアウトリガー装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構の二重ロック機構を備えたアウトリガーの接地完了までの時間を短縮することができるアウトリガー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】アウトリガー装置を車体の左側方側から見た図である。
【
図4】アウトリガー装置を車体の前方側から見た図である。
【
図5】アウトリガー装置を車体の後方側から見た図である。
【
図6】アウトリガー装置を車体の上方側から見た図であり、
図6(a)は可動パネルが初期位置に在る状態を示し、
図6(b)は可動パネルが
図6(a)の初期位置からアウトリガービームの伸長方向に移動した状態を示している。
【
図7】可動パネルが初期位置に在る状態を示し、
図7(a)はアウトリガー装置を車体の前方側から見た図、
図7(b)はアウトリガー装置を車体の後方側から見た図である。
【
図8】可動パネルが初期位置から距離X=δ20だけ移動した状態を示し、
図8(a)はアウトリガー装置を車体の前方側から見た図、
図8(b)はアウトリガー装置を車体の後方側から見た図である。
【
図9】可動パネルが初期位置から距離X=δ10だけ移動した状態を示し、
図9(a)はアウトリガー装置を車体の前方側から見た図、
図9(b)はアウトリガー装置を車体の後方側から見た図である。
【
図10】可動パネルが初期位置から距離X=X1だけ移動した状態を示し、
図10(a)はアウトリガー装置を車体の前方側から見た図、
図10(b)はアウトリガー装置を車体の後方側から見た図である。
【
図11】変形例に係るアウトリガー装置を車体の上方側から見た図であり、
図11(a)は可動パネルが初期位置に在る状態を示し、
図11(b)は可動パネルが
図11(a)の初期位置からアウトリガービームの伸長方向に移動した状態を示している。
【
図12】他の変形例に係るアウトリガー装置を車体の上方側から見た図であり、
図12(a)は可動パネルが初期位置に在る状態を示し、
図12(b)は可動パネルが
図12(a)の初期位置からアウトリガービームの伸長方向に移動した状態を示している。
【
図13】公知のアウトリガーを示す斜視図{
図13(a)}、把持レバーの側面図{
図13(b)}、回動レバーを含む走行用ロック機構の斜視図{
図13(c)}である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1は、作業車としての救助工作車の一例を示している。救助工作車は、火災や自然災害といった災害現場での救助活動等に必要な資機材を積載した車両である。救助工作車の中には、消火活動に必要な資機材も積載し、消防車の機能を兼ね備えたものもある。同図に示す救助工作車は、ハイルーフの前部キャビン1とその後方の後部キャビン2からなるダブルキャビンの車両で、後部キャビン2の後方に、救助活動等に必要な資機材を収納するシャッター開閉式の収納室3等が設けられ、収納室3の上部に作業用移動体、例えば伸縮式のクレーン4が積載され、さらに、収納室3の後方の下部に左右のアウトリガー装置5が装備されている。また、アウトリガー装置5の上部には、クレーン4の基部4aを支持し、クレーン4を旋回及び起伏移動させる機器類や、その他の機器類、機材等が積載される。
【0015】
以下、アウトリガー装置5について説明するが、左右のアウトリガー装置5は実質的に同じ構成であるので、
図1に現れている側のアウトリガー装置5(車体前方に向かって左側のアウトリガー装置5)について説明し、その反対側のアウトリガー装置5については説明を省略することとする。
【0016】
図3~
図6に示すように、アウトリガー装置5は、アウトリガー6と、アウトリガー6の先端部に設けられた操作機構7とを備えている。
【0017】
この実施形態において、アウトリガー6は、
図13に示す公知のアウトリガー10と実質的に同一構成のものであり、救助工作車の車体に固定されたアウトリガーボックス6aと、アウトリガーボックス6aに装着されたアウトリガービーム6bと、アウトリガービーム6bの先端部に昇降可能に設けられたジャッキ6cを主要な要素として構成される。アウトリガービーム6bは、全縮状態でアウトリガーボックス6aに収納される収納位置と、収納位置から伸長して車幅方向に張り出した張出位置との間で、車幅方向に伸縮可能である。通常、アウトリガービーム6bの張出位置として、最大張出位置と一又は複数の中間張出位置の中から作業に適した張出位置を選択できるようになっている。さらに、アウトリガービーム6bをアウトリガーボックス6aに対して収納位置と張出位置でロック可能なアウトリガーロック機構と、アウトリガービーム6bをアウトリガーボックス6aに対して収納位置でロック可能な走行用ロック機構が設けられている。アウトリガーロック機構の操作レバー(把持レバー6d)は、アウトリガービーム6bの先端部の一側部(
図3の左側部)に設けられ、走行用ロック機構の操作レバー(回動レバー6e)は、アウトリガービーム6bの先端部の他側部(
図3の右側部)に設けられている。アウトリガーロック機構、把持レバー6d、走行用ロック機構、回動レバー6eの構成及び動作も、
図13に示す公知のアウトリガー10と実質的に同じである。
【0018】
図4~
図6に示すように、操作機構7は、アウトリガーロック機構によるアウトリガービーム6bのロックを解除するための第1のロック解除部7aと、走行用ロック機構によるアウトリガービーム6bのロックを解除するための第2のロック解除部7bと、第1のロック解除部7aと第2のロック解除部7bを連動して作動させるための操作ハンドル7cを備えている。
【0019】
この実施形態において、第1のロック解除部7aは、把持レバー6dと係合可能な係合部材7a1を、位置調整ネジ7a2及びブラケット7a3を介して、後述する可動パネル7eに取付けることにより構成される。係合部材7a1の先端部は、把持レバー6dと車幅方向(アウトリガービーム6bの長手方向)に対向する。係合部材7a1の基端部は、位置調整ネジ7a2のネジ軸に外挿され、ネジ軸に螺合するナット(ダブルナット)で位置調整可能にネジ軸に固定される。また、位置調整ネジ7a2のネジ軸の基端部はブラケット7a3に固定され、ブラケット7a3は後述する可動パネル7eの内面側に固定される。位置調整ネジ7a2のネジ軸は、車幅方向と平行に配置されており、ネジ軸に対する係合部材7a1の基端部の固定位置をナットで調整することにより、係合部材7a1の先端部と把持レバー6dとの間の車幅方向の隙間δ1を所望の値(初期隙間δ10)に設定することができる。
【0020】
また、この実施形態において、第2のロック解除部7bは、回動レバー6eと係合可能な係合部材7b1を、位置調整ネジ7b2及びブラケット7b3を介して、後述する可動パネル7eに取付けることにより構成される。係合部材7b1の先端部は、回動レバー6eと車幅方向に対向する。係合部材7b1の基端部は、位置調整ネジ7b2のネジ軸に外挿され、ネジ軸に螺合するナット(ダブルナット)で位置調整可能にネジ軸に固定される。また、位置調整ネジ7b2のネジ軸の基端部はブラケット7b3に固定され、ブラケット7b3は後述する可動パネル7eの内面側に固定される。位置調整ネジ7b2のネジ軸は、車幅方向と平行に配置されており、ネジ軸に対する係合部材7b1の基端部の固定位置をナットで調整することにより、係合部材7b1の先端部と回動レバー6eとの間の車幅方向の隙間δ2を所望の値(初期隙間δ20)に設定することができる。
【0021】
さらに、この実施形態において、操作機構7は、アウトリガー6の先端部に着脱可能に装着された取付パネル7dと、取付パネル7dに設けられた開口部7d1の周縁部に当接して、開口部7d1を外側から覆う可動パネル7eを備えている。取付パネル7dは、例えば、ジャッキ6cのジャッキボックス6c1に取付部材7d2で着脱可能に装着される。可動パネル7eは、例えば、伸縮自在なストッパ7e1を介して取付パネル7dに取付けられ、取付パネル7dに対して車幅方向に可動である。取付パネル7dに対する可動パネル7eの車幅方向への移動はストッパ7e1によってガイドされ、また、取付パネル7dに対する可動パネル7eの車幅方向への最大移動量はストッパ7e1によって規制される。尚、ストッパ7e1は、ガス式、スプリング式、油圧式等のダンパー機構を備えたものであってもよい。
【0022】
上述した第1のロック解除部7aと第2のロック解除部7bは、可動パネル7eの内面側に取付けられ、操作ハンドル7cは、可動パネル7eの外面側に取付けられる。以下で詳述するように、操作ハンドル7cを握り、可動パネル7eを操作ハンドル7cと伴に取付パネル7dに対して車幅方向に移動させると、可動パネル7eの内面側に取付けられた第1のロック解除部7aと第2のロック解除部7bが連動して作動して、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構のロックとロック解除が切り替わる。
【0023】
図7は、アウトリガービーム6bが収納位置に在るときの状態(初期状態)を示している。
図7に示す初期状態では、操作機構7の可動パネル7eは、取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接して、開口部7d1を外側から覆う位置に在る。この可動パネル7eの初期位置において、第1のロック解除部7aの係合部材7a1と第2のロック解除部7bの係合部材7b1は、それぞれ、把持レバー6dと回動レバー6eから離間した位置に在り、アウトリガービーム6bは、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構の二重ロック機構でアウトリガーボックス6aに対してロックされる。この可動パネル7eの初期位置における、係合部材7a1の先端部と把持レバー6dとの間の車幅方向の隙間δ1は、位置調整ネジ7a2により、所定の初期隙間δ10に設定され{
図7(a)}、また、係合部材7b1の先端部と回動レバー6eとの間の車幅方向の隙間δ2は、位置調整ネジ7b2により、所定の初期隙間δ20に設定される{
図7(b)}。係合部材7a1は、初期隙間δ10の位置からアウトリガービーム6bの伸長方向{
図7(a)の右方向}に距離δ10だけ移動すると、その先端部が把持レバー6dに当接し、その位置から更に上記方向に移動すると、把持レバー6dを把持方向{
図7(a)の右方向}に変位させる(把持レバー6dの作動)。そして、係合部材7a1が初期隙間δ10の位置から上記方向に所定距離X1だけ移動すると、把持レバー6dの変位量が所定量に達して、アウトリガーロック機構のロックが解除される。また、係合部材7b1は、初期隙間δ20の位置からアウトリガービーム6bの伸長方向{
図7(b)の左方向}に距離δ20だけ移動すると、その先端部が回動レバー6eに当接し、その位置から更に上記方向に移動すると、回動レバー6eを回動方向{
図7(b)の半時計方向}に変位させる(回動レバー6eの作動)。そして、係合部材7b1が初期隙間δ20の位置から上記方向に所定距離X2だけ移動すると、回動レバー6eの変位量が所定量に達し、回動レバー6eの係合爪6e1が係合ピン6a1(アウトリガーボックス6aの先端部の他側部に固定)から外れて、走行用ロック機構のロックが解除される。
【0024】
この実施形態では、距離X1≧距離X2となるように、言い換えれば、係合部材7a1の上記方向への移動により、アウトリガーロック機構のロックが解除されるタイミングが、係合部材7b1の上記方向への移動により、走行用ロック機構のロックが解除されるタイミングと同時又は(僅かに)後になるように、初期隙間δ10と初期隙間δ20を設定している(δ10>δ20)。これは、アウトリガーロック機構のロックが走行用ロック機構よりも前に解除されると、作業者がアウトリガービーム6bを収納位置から伸長させる際、走行用ロック機構のロックが解除された瞬間に、アウトリガービーム6bが急に伸長方向に動いてしまい、作業者が体のバランスと崩してしまうことが起こり得るからである。アウトリガーロック機構のロックが解除されるタイミングを、走行用ロック機構のロックが解除されるタイミングと同時又は(僅かに)後にすることにより、上記のような事態を防止することができる。
【0025】
図8は、操作ハンドル7cを片方の手で握り、アウトリガービーム6bの伸長方向{
図8(a)の右方向、
図8(b)の左方向}に引っ張って、可動パネル7eを操作ハンドル7cと伴に取付パネル7dに対して上記方向に距離X=δ20だけ移動させた状態を示している。この可動パネル7eの移動に伴い、第1のロック解除部7aの係合部材7a1と第2のロック解除部7bの係合部材7b1も、
図7に示す初期位置から上記方向に距離δ20だけ移動する。
図8(b)に示すように、この可動パネル7eの移動位置で、係合部材7b1の先端部が回動レバー6eに当接して(δ2=0)、回動レバー6eの作動(走行用ロック機構のロック解除動作)が開始される。一方、
図8(a)に示すように、係合部材7a1の先端部と把持レバー6dとの間には隙間δ1(=δ10-δ20)が残っており、この可動パネル7eの移動位置では、把持レバー6dの作動(アウトリガーロック機構のロック解除動作)は未だ開始されない。
【0026】
図9は、操作ハンドル7cを更に引っ張り、可動パネル7eを取付パネル7dに対して上記方向に距離X=δ10(
図7に示す初期位置からの距離)だけ移動させた状態を示している。この可動パネル7eの移動に伴い、第1のロック解除部7aの係合部材7a1と第2のロック解除部7bの係合部材7b1も、
図7に示す初期位置から上記方向に距離δ10だけ移動する。
図9(a)に示すように、この可動パネル7eの移動位置で、係合部材7a1の先端部が把持レバー6dに当接して(δ1=0)、把持レバー6dの作動(アウトリガーロック機構のロック解除動作)が開始される。
図9(b)に示すように、回動レバー6eの作動(走行用ロック機構のロック解除動作)は、
図8(b)に示す状態から進行するが、この可動パネル7eの移動位置では、回動レバー6eの作動(走行用ロック機構のロック解除動作)は未だ完了しない。
【0027】
図10は、操作ハンドル7cを更に引っ張り、可動パネル7eを取付パネル7dに対して上記方向に距離X=X1(
図7に示す初期位置からの距離)だけ移動させた状態を示している。この可動パネル7eの移動に伴い、第1のロック解除部7aの係合部材7a1と第2のロック解除部7bの係合部材7b1も、
図7に示す初期位置から上記方向に距離X1だけ移動する。尚、可動パネル7eが取付パネル7dに対して上記の距離X1だけ移動すると、ストッパ7e1が働き、可動パネル7eの取付パネル7dに対する移動量が距離X1に制限される。
図10(a)に示すように、この可動パネル7eの移動位置で、把持レバー6dの作動(アウトリガーロック機構のロック解除動作)が完了して、アウトリガーロック機構のロックが解除される。また、
図10(b)に示すように、この可動パネル7eの移動位置では、回動レバー6eの作動(走行用ロック機構のロック解除動作)も完了し、回動レバー6eの係合爪6e1が係合ピン6a1から外れて、走行用ロック機構のロックも解除されるが、走行用ロック機構のロックが解除されるタイミングは、上述のように、可動パネル7eが距離X2(
図7に示す初期位置からの距離)だけ移動した時点であり、X1=X2の場合、走行用ロック機構は、同図に示す可動パネル7eの移動位置で、アウトリガーロック機構と同時にロック解除され、X1>X2の場合、走行用ロック機構は、同図に示す可動パネル7eの移動位置よりも前の位置で、アウトリガーロック機構よりも前にロック解除される。
【0028】
図10に示す態様で、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構のロックが解除されると、アウトリガービーム6bが収納位置から伸長可能になる。作業者が、
図10に示す状態から引き続き片方の手で操作ハンドル7cを引っ張りながら、アウトリガービーム6bの伸長方向に移動すると、把持レバー6dに当接する係合部材7a1と、回動レバー6eに当接する係合部材7b1により、アウトリガービーム6bが車幅方向に引っ張られて伸長する。そして、アウトリガービーム6bを所定の張出位置まで伸長させた後、操作ハンドル7cを押し、可動パネル7eを操作ハンドル7cと伴に取付パネル7dに対して車体側に移動させて、取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接する位置まで戻す。そうすると、係合部材7a1が把持レバー6dから初期隙間δ10だけ離間した位置に戻り、これに伴い、把持レバー6dが
図7に示す初期位置に自立復帰して、アウトリガーロック機構がロックに切り替わる。これにより、アウトリガービーム6bがアウトリガーロック機構により張出位置でロックされ、張出位置からの収縮が防止されて、作業の安全性が確保される。このとき、係合部材7b1は
図7に示す初期位置に戻り、これに伴い、回動レバー6eが
図7に示す初期位置の方向に回動するが、回動レバー6eは係合ピン6a1から離れた位置に在るので、走行用ロック機構は働かない。
【0029】
アウトリガービーム6bを張出位置から収納位置に戻す際は、一方の手を取付パネル7dにあてがいながら、他方の手で操作ハンドル7cを引っ張り、可動パネル7eを操作ハンドル7cと伴に取付パネル7dに対して距離X1だけ移動させて、アウトリガーロック機構のロックを解除し(
図10に示す状態)、その状態で一方の手で取付パネル7d押しながら車体方向に移動して、アウトリガービーム6bを収納位置まで収縮させる。そして、アウトリガービーム6bを収納位置まで収縮させた後、操作ハンドル7cを押し、可動パネル7eを操作ハンドル7cと伴に取付パネル7dに対して車体側に移動させて、取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接する位置まで戻す。そうすると、アウトリガーロック機構と走行用ロック機構が自律的にロックに切り替わり、
図7に示す初期状態に戻る。尚、走行用ロック機構については、アウトリガービーム6bを収納位置に戻す過程で、回動レバー6eの係合爪6e1は、係合ピン6a1に当接し、回動レバー6eの回動により係合ピン12bを乗り越えて、
図7に示す初期位置に自律復帰する。
【0030】
この実施形態のアウトリガー装置5は、操作ハンドル7cを片方の手で握り、アウトリガービーム6bの伸長方向に引っ張る動作だけで、アウトリガービーム6bを収納位置から伸長させることができるので、作業者は、アウトリガービーム6bを伸長させる際の体のバランスを保ち易く、アウトリガービーム6bを速やかに所定の張出位置まで伸長させることができる。また、アウトリガー6のより安定した接地を可能にするために、ジャッキ6cの接地個所に敷板を敷く場合、作業者は、片方の手で操作ハンドル7cを握り、他方の手で敷板を持ちながら、アウトリガービーム6bを伸長させることができる。そして、アウトリガービーム6bを所定の張出位置まで伸長させて、アウトリガーロック機構でロックした後、他方の手に持った敷板をジャッキ6cの接地個所に敷いて、ジャッキ6cの下降動作を開始させることができる。そのため、アウトリガー6の伸長開始から接地完了までの時間が、従来よりも短くなり、救助工作車が災害現場に到着した後、速やかに消火活動や救助活動を開始することができる。
【0031】
また、
図1及び
図2に示すように、アウトリガービーム6bの収納位置において、取付パネル7d及び可動パネル7eは、車体の外装パネルの一部として、アウトリガー6の搭載個所を外側から覆い、アウトリガー6の搭載個所が外部に露呈しなくなる。そのため、救助工作車の外観のデザイン性が高まる。また、作業者等がアウトリガー6の搭載個所の隙間部分に入り込むことが防止されるので、安全性が高まる。
【0032】
尚、アウトリガービーム6bのロック位置(収納位置と張出位置)で、可動パネル7eが取付パネル7dに対して不意に移動しないように、可動パネル7eの外縁部が取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接した状態を保持する保持手段、例えば、マグネットのような吸着手段及び/又は機械的なロック機構を設けることが好ましい。この実施形態では、
図3及び
図4に符号7fで示すマグネットを設けると共に、
図3に符号7gで示すロック機構(例えば、レバーを起こすとロックが解除され、レバーを戻すとロックが掛かる形式のロック機構)を設けて、可動パネル7eの外縁部が取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接した状態を保持できるようにしている。
【0033】
図11、
図12は、操作機構7の変形例を示している。これら変形例に係る操作機構7は、可動パネル7eの自律復帰機能を有し、可動パネル7eを取付パネル7dに対してアウトリガービーム6bの伸長方向に移動させた状態で、操作ハンドル7cを開放すると、可動パネル7eが元の位置、すなわち、取付パネル7dの開口部7d1の周縁部に当接する位置まで自律的に戻る。
図11に示す変形例では、1又は複数のスプリング付きシャフト7e2を可動パネル7e及び取付パネル7dに取付けている。可動パネル7eを取付パネル7dに対してアウトリガービーム6bの伸長方向に移動させると、スプリング付きシャフト7e2のスプリング7e21が圧縮されて弾性力が蓄積される{
図11(b)}。この状態で、操作ハンドル7cを開放すると、スプリング7e21の弾性力により、可動パネル7eが取付パネル7dに対して車体側に移動して、元の位置に自律復帰する{
図11(a)}。また、
図12に示す変形例では、複数のストッパ7e1の一部または全部を、スプリング付きストッパ7e3に置き換えている。可動パネル7eを取付パネル7dに対してアウトリガービーム6bの伸長方向に移動させると、スプリング付きストッパ7e3のスプリング7e31が圧縮されて弾性力が蓄積される{
図12(b)}。この状態で、操作ハンドル7cを開放すると、スプリング7e31の弾性力により、可動パネル7eが取付パネル7dに対して車体側に移動して、元の位置に自律復帰する{
図12(a)}。その他の事項は、上述した実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
【0034】
また、第1のロック解除部と第2のロック解除部の構成及び動作は、上述した実施形態及び変形例のものに限られず、搭載するアウトリガーに装備されているアウトリガーロック機構と走行用ロック機構の操作レバーの構成及び動作に応じて、適宜に決めることができる。例えば、公知のアウトリガーの中には、走行用ロック機構の回動レバーがアウトリガーボックスの先端部の側部に設けられると共に、回動レバーの係合爪と係合する係合ピンがアウトリガービームの先端部の側部に設けられ、アウトリガービームが収納位置に在る状態で、回動レバーを車体側方向に回動させて、回動レバーの係合爪を係合ピンから外してロックを解除する構成のもある(アウトリガーロック機構の把持レバーは
図13に示す公知のアウトリガーや上述した実施形態及び変形例と同様)。このような構成のアウトリガーに対して本発明を適用する場合は、操作ハンドルを引っ張る動作に連動して、可動パネルが取付パネルに対してアウトリガービームの伸長方向に所定距離だけ移動する際に、可動パネルの内面側に設けられた走行用ロック機構のロック解除部の係合部材が上記方向と反対側(車体側)に移動し、回動レバーを押圧して車体側方向に回動させるように、走行用ロック機構のロック解除部を構成する(アウトリガーロック機構のロック解除部は上述した実施形態及び変形例と同様)。これは、例えば、走行用ロック機構のロック解除部の係合部材をリンク機構やラックピニオン機構等を介して可動パネルの内面側に取付けることにより実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
5 アウトリガー装置
6 アウトリガー
6a アウトリガーボックス
6b アウトリガービーム
6d 把持レバー
6e 回動レバー
7 操作機構
7a 第1のロック解除部
7b 第2のロック解除部
7c 操作ハンドル
7d 取付パネル
7e 可動パネル