(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】赤色系複層塗膜および赤色系複層塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240924BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240924BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240924BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240924BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240924BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240924BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240924BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240924BHJP
【FI】
C09D201/00
B05D1/36 B
B05D7/24 302E
B05D7/24 303A
B05D1/36 A
B05D5/06 G
B05D5/06 B
B05D5/06 101A
B32B27/20 A
B32B27/00 B
C09D7/61
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2021070536
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 友
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真一
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042891(JP,A)
【文献】特開2016-193385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061215(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/063614(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/099150(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/099151(WO,A1)
【文献】特開2016-185527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に隣接して、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜を含む、赤色系複層塗膜であって、
前記第1ベース塗膜は、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗膜は、着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
前記第1ベース塗膜と前記第2ベース塗膜の一方または両方の前記着色顔料が、赤色系顔料を含み、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%であ
り、
前記第2ベース塗膜の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗膜の前記着色顔料の全固形分質量の割合(以下「PWC」という)(%)と、第2ベース塗膜の乾燥膜厚(μm)とを乗じた値(以下「PT値」という)が、45~95(単位なし)である、赤色系複層塗膜。
【請求項2】
順に隣接して、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜を含む、赤色系複層塗膜であって、
前記第1ベース塗膜は、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗膜は、着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
前記第1ベース塗膜と前記第2ベース塗膜の一方または両方の前記着色顔料が、赤色系顔料を含み、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%であり、
着色顔料として1種類の着色顔料のみを含む第2ベース塗膜(PWC:10%、乾燥膜厚:7μm、以下「特定第2ベース塗膜」という)の光線透過率を測定した場合に波長440~560nmの光線の平均透過率が1.5%以下の着色顔料を前記第2ベース塗膜が含む、赤色系複層塗膜。
【請求項3】
前記第2ベース塗膜の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗膜の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である、請求項1
または2に記載の赤色系複層塗膜。
【請求項4】
前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が、8~14μmである、請求項1
~3のいずれか一項に記載の赤色系複層塗膜。
【請求項5】
前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜の前記着色顔料が、赤色系顔料を含む、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の赤色系複層塗膜。
【請求項6】
第1ベース塗膜を形成するための第1ベース塗料組成物と、第2ベース塗膜を形成するための第2ベース塗料組成物とを準備する工程Aと、
被塗物に、前記第1ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程Bと、
前記未硬化の第1ベース塗膜上に、前記第2ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程Cと、
前記未硬化の第1ベース塗膜および前記未硬化の第2ベース塗膜を一緒に硬化させ、前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜を形成する工程Dと、
を含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分および着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
前記第1ベース塗料組成物と前記第2ベース塗料組成物の一方または両方の前記着色顔料が、赤色系顔料を含み、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%であ
り、
前記第2ベース塗膜の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗膜の前記着色顔料の全固形分質量の割合(以下「PWC」という)(%)と、第2ベース塗膜の乾燥膜厚(μm)とを乗じた値(以下「PT値」という)が、45~95(単位なし)である、赤色系複層塗膜の形成方法。
【請求項7】
第1ベース塗膜を形成するための第1ベース塗料組成物と、第2ベース塗膜を形成するための第2ベース塗料組成物とを準備する工程Aと、
被塗物に、前記第1ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程Bと、
前記未硬化の第1ベース塗膜上に、前記第2ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程Cと、
前記未硬化の第1ベース塗膜および前記未硬化の第2ベース塗膜を一緒に硬化させ、前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜を形成する工程Dと、
を含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分および着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
前記第1ベース塗料組成物と前記第2ベース塗料組成物の一方または両方の前記着色顔料が、赤色系顔料を含み、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%であり、
着色顔料として1種類の着色顔料のみを含む第2ベース塗膜(PWC:10%、乾燥膜厚:7μm、以下「特定第2ベース塗膜」という)の光線透過率を測定した場合に波長440~560nmの光線の平均透過率が1.5%以下の着色顔料を前記第2ベース塗料組成物が含む、赤色系複層塗膜の形成方法。
【請求項8】
前記第2ベース塗料組成物の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である、請求項
6または7に記載の赤色系複層塗膜の形成方法。
【請求項9】
前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が、8~14μmである、請求項
6~8のいずれか一項に記載の赤色系複層塗膜の形成方法。
【請求項10】
前記第1ベース塗料組成物および前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料が、赤色系顔料を含む、請求項
6~9のいずれか一項に記載の赤色系複層塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色系複層塗膜および赤色系複層塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車体用塗膜として、光輝顔料を含むメタリックベース塗膜(第1ベース塗膜)上に着色顔料を含む透明着色クリヤー塗膜(第2ベース塗膜)を積層した高彩度、高明度および色の深み感に優れた意匠性の高い複層塗膜が知られており、いわゆる「キャンディーカラー」塗膜と呼ばれている。キャンディーカラー塗膜は、その高い意匠性によって、自動車車体の外観として注目を浴びている。
【0003】
例えば、特許文献1では、メタリックベース塗膜の光線反射率が、波長650~700nmにおいて45~50%、かつ、波長410~440nmおよび510~590nmにおいて20%以下であり、着色ベース塗膜の光線透過率が、波長400~700nmにおいて50~70%、波長650~700nmにおいて88~92%、かつ、波長410~440nmおよび510~590nmにおいて20~60%である、複層塗膜の形成方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年では自動車への付加価値をより高めるために、さらに高い意匠性を有する複層塗膜が求められている。
【0006】
また、赤色の自動車は生産台数が多いことと、赤色は自動車の塗装色において展開される色数も多いことから、赤色は、主要な色の1つである。
【0007】
そこで、本発明者らは、赤色系の複層塗膜の意匠性を高める検討を行った。意匠性を高めるために、本発明者らは、意匠性の中でも、光輝感、彩度および色の深み感に着目した。
【0008】
はじめに、光輝感を高めるために、本発明者らは、特許文献1に記載のように波長650~700nmにおける第1ベース塗膜の平均光線反射率を高くした。平均光線反射率が高いほど、光輝感が高まるためである。しかし、第1ベース塗膜の平均光線反射率を上げると光輝感は高まるが、赤色系複層塗膜のメタルムラが顕著になり、赤色系複層塗膜の意匠性は特許文献1の複層塗膜に比べて高まらなかった。本明細書ではメタルムラは、複層塗膜における光輝感の不均一性を指す。
【0009】
次に、本発明者らは、メタルムラを抑えながら光輝感を高めるために、特許文献1に記載のように波長410~440nmおよび510~590nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率を高くした。第1ベース塗膜の平均光線反射率が一定であっても第2ベース塗膜の平均光線透過率が高いほど、光輝感が高まるためである。しかし、第2ベース塗膜の平均光線透過率を上げると光輝感は高まるが、赤色系複層塗膜の色ムラが顕著になり、赤色系複層塗膜の意匠性は特許文献1の複層塗膜に比べて高まらなかった。本明細書では色ムラは、赤色系複層塗膜における色のムラを指す。
【0010】
そこで、本発明は、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る赤色系複層塗膜は、順に隣接して、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜を含む、赤色系複層塗膜であって、
前記第1ベース塗膜は、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗膜は、着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%である、赤色系複層塗膜である。これによって、赤色系複層塗膜は、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない。
【0013】
本発明に係る赤色系複層塗膜の一実施形態では、前記第2ベース塗膜の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗膜の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である。
【0014】
本発明に係る赤色系複層塗膜の一実施形態では、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が、8~14μmである。
【0015】
本発明に係る赤色系複層塗膜の一実施形態では、前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜の前記着色顔料が、赤色系顔料を含む。
【0016】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法は、第1ベース塗膜を形成するための第1ベース塗料組成物と、第2ベース塗膜を形成するための第2ベース塗料組成物とを準備する工程Aと、
被塗物に、前記第1ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程Bと、
前記未硬化の第1ベース塗膜上に、前記第2ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程Cと、
前記未硬化の第1ベース塗膜および前記未硬化の第2ベース塗膜を一緒に硬化させ、前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜を形成する工程Dと、
を含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分および着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%である、赤色系複層塗膜の形成方法である。これによって、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜を形成することができる。
【0017】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第2ベース塗料組成物の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である。
【0018】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が、8~14μmである。
【0019】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第1ベース塗料組成物および前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料が、赤色系顔料を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る赤色系複層塗膜の層構成の一例を示した模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の一例を示した模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の別の一例を示した模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の別の一例を示した模式図である。
【
図5】
図5は、塗膜Aの層構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0024】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。本発明において、電着塗膜と下塗り塗膜は相互互換的に用いることができる。
【0025】
数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、15~40%は、15%以上40%以下の範囲を意味する。
【0026】
本明細書において、第1ベース塗料組成物を単に「第1ベース塗料」ということがある。本明細書において、第2ベース塗料組成物を単に「第2ベース塗料」ということがある。また、本明細書において、第1ベース塗料および第2ベース塗料をまとめて「ベース塗料」ということがある。
【0027】
本明細書において、ある塗料組成物(第1ベース塗料または第2ベース塗料)における、全固形分質量に対する、ある顔料(着色顔料または光輝顔料)の全固形分質量の割合(%)を、「顔料質量濃度」または「PWC」ということがある。
【0028】
本発明では、光輝顔料の平均粒径は、日機装社のマイクロトラック粒度分布測定装置(商品名「MT3300」)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を指す。
【0029】
本明細書では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、水であるものを水性塗料組成物という。本明細書では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、溶剤であるものを溶剤系塗料組成物という。
【0030】
本明細書において、不揮発分を「固形分」ということがある。
【0031】
添付の図面は、本発明の理解を容易にすることを優先した模式図であるため、図中の各塗膜の縮尺は正確ではない。
【0032】
本発明において、平均光線反射率は、波長360~700nmの領域での光線反射率の平均値を指す。塗膜Aのクリヤー塗膜における波長360~700nmの領域での平均光線反射率は、実施例に記載の方法により測定する。
【0033】
本発明において、平均光線透過率は、所定の波長領域での光線透過率の平均値を指す。第2ベース塗膜の平均光線透過率は、実施例に記載の方法により測定する。
【0034】
本発明において、「赤色系」は、マンセル表色系で10RP~10R、すなわち、10RP、1R、2R、3R、4R、5R、6R、7R、8R、9Rおよび10Rの範囲の色相を指す。
【0035】
本発明において、「未硬化」とは塗膜の硬化反応が完了していない状態を指す。また、本明細書において、プレヒートとは、塗装した塗料が硬化しない程度の温度、時間などの条件で塗料を加熱乾燥することを指す。
【0036】
(赤色系複層塗膜)
本発明に係る赤色系複層塗膜は、順に隣接して、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜を含む、赤色系複層塗膜であって、
前記第1ベース塗膜は、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗膜は、着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%である、赤色系複層塗膜である。
【0037】
以下、本発明に係る赤色系複層塗膜の必須要素である第1ベース塗膜と第2ベース塗膜について説明する。
【0038】
(第1ベース塗膜)
第1ベース塗膜は、着色顔料と光輝顔料を含む。第1ベース塗膜は通常、着色顔料と光輝顔料に加えて、樹脂成分を含む。第1ベース塗膜は、第2ベース塗膜よりも被塗物側、すなわち、自動車の車体側に位置する。第1ベース塗膜は、後述する第1ベース塗料組成物から形成される。
【0039】
(第1ベース塗料組成物)
第1ベース塗料組成物は、第1ベース塗膜を形成する。第1ベース塗料は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含む。以下、第1ベース塗料の樹脂成分、着色顔料および光輝顔料について説明する。
【0040】
・樹脂成分
樹脂成分としては、従来公知のベース塗料の樹脂成分を用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、樹脂成分として、例えば、特許文献1に記載のアクリルエマルション樹脂、ポリエーテルポリオール、ウレタンエマルション樹脂などの塗膜形成性樹脂;特開2020-099888号公報に記載の水分散性樹脂などを用いてもよい。
【0041】
樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1ベース塗料組成物の樹脂成分は、後述する第2ベース塗料組成物の樹脂成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
第1ベース塗料中の樹脂成分の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第1ベース塗料の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して40~90質量部であり、60~80質量部が好ましい。
【0043】
・着色顔料
着色顔料は、従来公知のベース塗料の着色顔料を用いることができる。着色顔料としては、例えば、有機系顔料と無機系顔料が挙げられる。
【0044】
有機系顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料などが挙げられる。
【0045】
無機系顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなどが挙げられる。
【0046】
着色顔料は、いずれの色でもよい。着色顔料の色としては、例えば、グレー、シルバー、黒、赤、黄、緑、青などが挙げられる。一実施形態では、着色顔料は、黒、赤、グレーおよびシルバーからなる群より選択される1種以上である。
【0047】
一実施形態では、第1ベース塗料の着色顔料は、赤色系顔料を含む。別の実施形態では、第1ベース塗料および第2ベース塗料の着色顔料は、赤色系顔料を含む。
【0048】
着色顔料の市販品としては、例えば、Clariant社製の商品名「Hostaperm(登録商標) Red P2GL-WD」(赤色)、BASF社製の商品名「Paliogen(登録商標) Red L3875」(赤色)、大日精化工業社製の商品名「ダイピロ TMレッド」(赤色)、コロンビアカーボン社製の商品名「カーボンブラックR-5000」(黒色)、BASF社製の商品名「Cinquasia Magenta RT-355-D」(赤紫色)などが挙げられる。
【0049】
着色顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1ベース塗料の着色顔料は、後述する第2ベース塗料の着色顔料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
第1ベース塗料中の着色顔料の量は、適宜調節すればよい。第1ベース塗料中の着色顔料の全固形分質量は、例えば、第1ベース塗料の全固形分質量に対して、0~20%であり、好ましくは、5~15%である。
【0051】
一実施形態では、第1ベース塗料中の着色顔料のPWCは、0.0%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上、7.5%以上、8.0%以上、8.5%以上、9.0%以上、9.5%以上、10.0%以上、10.5%以上、11.0%以上、11.5%以上、12.0%以上、12.5%以上、13.0%以上、13.5%以上、14.0%以上、14.5%以上、15.0%以上、16.0%以上、17.0%以上、18.0%以上または19.0%以上である。別の実施形態では、第1ベース塗料中の着色顔料のPWCは、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.5%以下、14.0%以下、13.5%以下、13.0%以下、12.5%以下、12.0%以下、11.5%以下、11.0%以下、10.5%以下、10.0%以下、9.5%以下、9.0%以下、8.5%以下、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下または1.0%以下である。
【0052】
・光輝顔料
光輝顔料としては、従来公知のベース塗料の鱗片状光輝顔料などの光輝顔料を用いることができる。
【0053】
光輝顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムなどの金属;これらの合金;干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレーク、アルミナフレークなどの光輝顔料;これらの金属、合金、干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレークまたはアルミナフレークが、金属酸化物(例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化鉄)もしくは金属(例えば、金、銀)で被覆された鱗片状光輝顔料が挙げられる。この他、例えば、特開2016-221473号公報に記載のアルミナフレーク顔料(a);金属基材またはガラスフレーク基材が金属酸化物もしくは金属で被覆された鱗片状光輝顔料;金属基材またはガラスフレーク基材の表面に着色顔料が化学吸着した鱗片状光輝顔料;アルミニウム基材の表面に酸化アルミニウム層を形成したアルミニウム顔料;アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料;干渉マイカ、グラファイトまたはシリカフレークの表面が二酸化チタンで被覆された鱗片状光輝顔料;板状酸化鉄顔料などが挙げられる。好ましい鱗片状光輝顔料は、ガラス基材が金属酸化物で被覆された鱗片状光輝顔料、アルミニウムフレークである。
【0054】
一実施形態では、光輝顔料は、アルミニウムフレークである。
【0055】
光輝顔料は、無色と有色のいずれでもよいし、これらの組合せでもよい。有色の色としては、例えば、グレー、シルバー、黒、赤、黄、緑、青などが挙げられる。一実施形態では、光輝顔料は、グレーおよびシルバーからなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、光輝顔料は、グレー、シルバーおよび黒色からなる群より選択される1種以上である。
【0056】
光輝顔料の平均粒径は、適宜調節すればよく、例えば、5μm~25μmである。一実施形態では、光輝顔料の平均粒径は、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上、20μm以上、21μm以上、22μm以上、23μm以上または24μm以上である。別の実施形態では、光輝顔料の平均粒径は、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下または6μm以下である。さらに別の実施形態では、光輝顔料の平均粒径は、9~15μmである。
【0057】
光輝顔料は、市販品を用いてもよい。光輝顔料の市販品としては、例えば、日本板硝子社製のST1018シリーズ、ST1025シリーズ、GT1020シリーズなどのメタシャイン(登録商標)シリーズ;東洋アルミニウム社製の76シリーズ、TCRシリーズ、54シリーズ、WXシリーズ、WLシリーズなどの商品名「アルペースト(登録商標)」シリーズ;旭化成社製の商品名「アルミペースト」のGXシリーズ、ECKART社製の商品名「B001」などの商品名「LUXAN」シリーズなどが挙げられる。光輝顔料の市販品は、特に、東洋アルミニウム社製の76シリーズ、TCRシリーズ、54シリーズなどの商品名「アルペースト(登録商標)」シリーズ;旭化成社製の商品名「アルミペースト」のGXシリーズなどが好ましい。
【0058】
光輝顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
第1ベース塗料中の光輝顔料の量は、適宜調節すればよい。第1ベース塗料中の光輝顔料の全固形分質量は、例えば、第1ベース塗料の全固形分質量に対して、0~25%であり、好ましくは、5~15%である。
【0060】
一実施形態では、第1ベース塗料中の光輝顔料のPWCは、0.0%以上、5.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上、14.0%以上、15.0%以上または20.0%以上である。別の実施形態では、第1ベース塗料中の光輝顔料のPWCは、25.0%以下、20.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下または5.0%以下である。
【0061】
・その他の成分
第1ベース塗料は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料の他に、硬化剤、体質顔料、水、有機溶剤、腐食防止剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの公知のベース塗料の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
・硬化剤
第1ベース塗料は硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、従来公知のベース塗料の硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、例えば、特開2020-099888号公報に記載のアミノ樹脂、ブロックイソシアネートなどが挙げられる。
【0063】
第1ベース塗料中の硬化剤の量は、適宜調節すればよいが、硬化剤を用いる場合、例えば、第1ベース塗料の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して10~60質量部であり、20~40質量部が好ましい。
【0064】
第1ベース塗料の硬化剤は、後述する第2ベース塗料の硬化剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
第1ベース塗料は、水性塗料組成物または溶剤系塗料組成物のいずれでもよい。一実施形態では、第1ベース塗料および第2ベース塗料は、水性塗料組成物である。
【0066】
第1ベース塗料における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、第1ベース塗料100質量部に対して、5~50質量部であり、好ましくは、10~30質量部である。
【0067】
・第1ベース塗料組成物の調製方法
第1ベース塗料の調製方法は、上述した樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含めば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料をニーダーまたはロールを用いて、混練し、分散することによって第1ベース塗料を調製することができる。
【0068】
第1ベース塗膜の乾燥膜厚は、適宜調節すればよい。第1ベース塗膜の乾燥膜厚は、例えば、4~20μmであり、6~12μmが好ましい。一実施形態では、第1ベース塗膜の乾燥膜厚は、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上または15μm以上である。別の実施形態では、第1ベース塗膜の乾燥膜厚は、20μm以下、15μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下または5μm以下である。
【0069】
本発明では、赤色系複層塗膜の光輝感に関係する第1ベース塗膜の平均光線反射率は、第1ベース塗膜のみについて測定するのではなく、順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜の4層からなる塗膜Aについて測定する。
図5は、塗膜Aの層構成を示した模式図である。塗膜Aでは、順に隣接して、電着塗膜4、中塗り塗膜5、第1ベース塗膜1およびクリヤー塗膜6の4層からなる。本発明では、この塗膜Aのクリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%である。塗膜Aの具体的な構成は、実施例に記載する。
【0070】
本発明において、塗膜Aの中塗り塗膜、第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜は、ウェットオンウェット塗装で、3コート1ベークで形成する。すなわち、電着塗膜上に、中塗り塗料を塗装して未硬化の中塗り塗膜を形成する。次いで、未硬化の中塗り塗膜上に第1ベース塗料を塗装して未硬化の第1ベース塗膜を形成する。次いで、未硬化の第1ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成する。そして、未硬化の中塗り塗膜、未硬化の第1ベース塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を一緒に硬化させ、中塗り塗膜、第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成する。塗膜Aの具体的な形成方法は、実施例に記載する。
【0071】
一実施形態では、波長360~700nmにおける塗膜Aの平均光線反射率は、15%以上、18%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上または35%以上である。別の実施形態では、波長360~700nmにおける塗膜Aの平均光線反射率は、40%以下、35%以下、30%以下、29%以下、28%以下、27%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、18%以下または16%以下である。さらに別の実施形態では、波長360~700nmにおける塗膜Aの平均光線反射率は、18~38%である。
【0072】
塗膜Aは、赤色系複層塗膜の光輝感に関係する第1ベース塗膜の平均光線反射率を測定および評価するために用いる評価用塗膜に過ぎない。本発明の赤色系複層塗膜は、塗膜Aの材料、層構成、膜厚などに限定されない。
【0073】
(第2ベース塗膜)
第2ベース塗膜は、着色顔料を含む。第2ベース塗膜は通常、着色顔料に加えて、樹脂成分を含む。第2ベース塗膜は、第1ベース塗膜よりも観察者側に位置する。第2ベース塗膜は、後述する第2ベース塗料組成物から形成される。
【0074】
第2ベース塗膜の平均光線透過率は、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%である。
【0075】
波長440~560nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率が3%以下であることによって、赤色系複層塗膜の色ムラが抑制され、赤色系複層塗膜の意匠性が高まる。
【0076】
波長440~560nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率を3%以下とする手法としては、例えば、(1)後述するPT値を45以上とすること;および(2)顔料として1種類の顔料のみを含む第2ベース塗膜(PWC:10%、乾燥膜厚:7μm)の光線透過率を測定した場合に、440~560nmの波長の光線を透過しない顔料、例えば、440~560nmの波長の光線の平均透過率が1.5%以下の顔料を選択することなどが挙げられる。
【0077】
上記手法(2)の顔料の具体例としては、Clariant社製の商品名「Hostaperm(登録商標) Red P2GL-WD」(赤色)、BASF社製の商品名「Paliogen(登録商標) Red L3875」(赤色)などが挙げられる。好適な実施形態では、440~560nmの波長の光線の透過率が1.5%以下の顔料を第2ベース塗膜中の着色顔料のうち、90~100質量%または95~100質量%の範囲で含む。
【0078】
上記手法(2)の1種類の顔料のみを含む第2ベース塗膜の光線透過率の測定は、PWC:10%、乾燥膜厚:7μmとすること以外は、後述する実施例の「平均光線透過率の測定」と同様である。
【0079】
一実施形態では、波長440~560nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下または0.2%以下である。別の実施形態では、波長440~560nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、2.0%以上または2.5%以上である。さらに別の実施形態では、波長440~560nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、0.4~2.9%である。
【0080】
波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率が80%以上であることによって、赤色が高彩度で発色し、赤色系複層塗膜の意匠性が高まる。波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率が90%以下であることによって、赤色の深み感が強くなり、赤色系複層塗膜の意匠性が高まる。
【0081】
波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率を80~90%とする手法としては、例えば、(1)後述するPT値を95以下とすること;および(2)顔料として1種類の顔料のみを含む第2ベース塗膜(PWC:10%、乾燥膜厚:7μm)の光線透過率を測定した場合に、650nm以上の波長の光線を透過しやすい顔料、例えば、650nmの波長の光線の透過率が75%以上の顔料を選択することなどが挙げられる。
【0082】
上記平均光線透過率を80~90%とする手法(2)の顔料の具体例としては、Clariant社製の商品名「Hostaperm(登録商標) Red P2GL-WD」(赤色)、BASF社製の商品名「Paliogen(登録商標) Red L3875」(赤色)などが挙げられる。好適な実施形態では、650nmの波長の光線の透過率が75%以上の顔料を第2ベース塗膜中の着色顔料のうち、90~100質量%または95~100質量%の範囲で含む。
【0083】
一実施形態では、波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上または89%以上である。別の実施形態では、波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、90%以下、89%以下、88%以下、87%以下、86%以下、85%以下、84%以下、83%以下、82%以下または81%以下である。さらに別の実施形態では、波長650~700nmにおける第2ベース塗膜の平均光線透過率は、81~87%である。
【0084】
(第2ベース塗料組成物)
第2ベース塗料組成物は、第2ベース塗膜を形成する。第2ベース塗料は、樹脂成分および着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まない。以下、第2ベース塗料の樹脂成分および着色顔料について説明する。
【0085】
・樹脂成分
樹脂成分としては、従来公知のベース塗料の樹脂成分を用いることができる。樹脂成分の例としては、上記第1ベース塗料で挙げた樹脂成分と同様である。
【0086】
樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
第2ベース塗料中の樹脂成分の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第2ベース塗料の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して40~90質量部であり、60~80質量部が好ましい。
【0088】
・着色顔料
着色顔料は、従来公知のベース塗料の着色顔料を用いることができる。着色顔料の例としては、上記第1ベース塗料で挙げた着色顔料と同様である。着色顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
一実施形態では、第2ベース塗料の着色顔料は、赤色系顔料を含む。
【0090】
第2ベース塗料中の着色顔料の量は、適宜調節すればよい。第2ベース塗料中の着色顔料の全固形分質量は、例えば、第2ベース塗料の全固形分質量に対して、1.0~15.0%であり、好ましくは、4.0~8.0%である。
【0091】
一実施形態では、第2ベース塗料中の着色顔料のPWCは、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、5.5%以上、6.0%以上、6.5%以上、7.0%以上、7.5%以上、8.0%以上、9.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上または14.0%以上である。別の実施形態では、第2ベース塗料中の着色顔料のPWCは、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.0%以下または2.0%以下である。さらに別の実施形態では、第2ベース塗料中の着色顔料のPWCは、4.1%~7.8%である。
【0092】
第2ベース塗料は、光輝顔料を実質的に含まない。すなわち、第2ベース塗料に意図的に光輝顔料を配合しない。第2ベース塗料が光輝顔料を含むと、赤色系複層塗膜の透明性の低下、彩度の欠如または色の深み感の欠如の不具合があり得る。
【0093】
・その他の成分
第2ベース塗料は、樹脂成分および着色顔料の他に、硬化剤、体質顔料、水、有機溶剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの公知のベース塗料の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
・硬化剤
硬化剤としては、従来公知のベース塗料の硬化剤を用いることができる。硬化剤の例としては、上記第1ベース塗料で挙げた硬化剤と同様である。
【0095】
第2ベース塗料中の硬化剤の量は、適宜調節すればよいが、硬化剤を用いる場合、例えば、第2ベース塗料の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して10~60質量部であり、20~40質量部が好ましい。
【0096】
第2ベース塗料組成物は、水性塗料組成物または溶剤系塗料組成物のいずれでもよい。
【0097】
第2ベース塗料における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、第2ベース塗料100質量部に対して、5~50質量部であり、好ましくは、10~30質量部である。
【0098】
・第2ベース塗料組成物の調製方法
第2ベース塗料の調製方法は、上述した樹脂成分および着色顔料を含めば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1ベース塗料の調製方法で説明した手段を用いることができる。
【0099】
本発明に係る赤色系複層塗膜の一実施形態では、前記第2ベース塗膜の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗膜の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である。
【0100】
第2ベース塗膜の乾燥膜厚は、適宜調節すればよい。第2ベース塗膜の乾燥膜厚は、例えば、4~20μmであり、8~14μmが好ましい。一実施形態では、第2ベース塗膜の乾燥膜厚は、4μm以上、5μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上または15μm以上である。別の実施形態では、第2ベース塗膜の乾燥膜厚は、20μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下または5μm以下である。
【0101】
第2ベース塗膜では、第2ベース塗膜のPWC(%)と第2ベース塗膜の乾燥膜厚(μm)を乗じた値(以下、「PT値」ということがある)が、45~95(単位なし)であることが好ましい。PT値が45以上であると、第2ベース塗膜の下地隠蔽性が高まり、光輝顔料を含む第1ベース塗膜のメタルムラが抑えられる。加えて、PT値が45以上であると、赤色系複層塗膜の明度が適度になり、色の深み感が強まる。また、PT値が95以下であると、第2ベース塗膜の下地隠蔽性が適度になり、第1ベース塗膜の光輝感が高まる。
【0102】
一実施形態では、第2ベース塗膜のPT値は、45以上、49以上、50以上、55以上、59以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上または90以上である。別の実施形態では、第2ベース塗膜のPT値は、95以下、94以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下または50以下である。さらに別の実施形態では、第2ベース塗膜のPT値は、49~94である。
【0103】
一実施形態では、本発明に係る赤色系複層塗膜は、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜からなる。別の実施形態では、本発明に係る赤色系複層塗膜は、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる。
【0104】
図1は、本発明に係る赤色系複層塗膜の層構成の一例を示した模式図である。
図1では、赤色系複層塗膜は、順に隣接して、第1ベース塗膜1および第2ベース塗膜2からなる。
【0105】
図2は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の一例を示した模式図である。
図2では、車体3は、車体3側から順に隣接して、電着塗膜4、中塗り塗膜5、第1ベース塗膜1、第2ベース塗膜2およびクリヤー塗膜6を有する。本明細書では、この電着塗膜4、中塗り塗膜5、第1ベース塗膜1、第2ベース塗膜2およびクリヤー塗膜6の5層からなる塗膜を塗膜Bということがある。
【0106】
図3は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の別の一例を示した模式図である。
図3では、車体3は、車体3側から順に隣接して、電着塗膜4、第1ベース塗膜1、第2ベース塗膜2およびクリヤー塗膜6を有する。
【0107】
図4は、本発明に係る赤色系複層塗膜を有する自動車の車体の別の一例を示した模式図である。
図4では、車体3は、車体3側から順に隣接して、電着塗膜4、第1ベース塗膜1および第2ベース塗膜2を有する。
【0108】
電着塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜は、それぞれ、従来公知の自動車に用いられる複層塗膜の電着塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜を用いることができる。
【0109】
電着塗膜としては、例えば、特開2020-100732号公報に記載の電着塗膜の構成を採用することができる。電着塗膜の乾燥膜厚は、例えば、15~40μmとすればよい。一実施形態では、電着塗膜の乾燥膜厚は、15μm以上、20μm以上または30μm以上である。別の実施形態では、電着塗膜の乾燥膜厚は、40μm以下、30μm以下または20μm以下である。
【0110】
中塗り塗膜としては、例えば、特開2020-099888号公報に記載の中塗り塗膜の構成を採用することができる。中塗り塗膜の乾燥膜厚は、例えば、10~100μmとすればよい。一実施形態では、中塗り塗膜の乾燥膜厚は、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上または90μm以上である。別の実施形態では、中塗り塗膜の乾燥膜厚は、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下または20μm以下である。
【0111】
クリヤー塗膜としては、例えば、特開2020-099888号公報に記載のクリヤー塗膜の構成を採用することができる。クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、例えば、10~80μmとすればよい。一実施形態では、クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上または70μm以上である。別の実施形態では、クリヤー塗膜の乾燥膜厚は、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下または20μm以下である。
【0112】
赤色系複層塗膜の用途は、特に限定されず、例えば、自動車などの車両などが挙げられる。好適な実施形態では、本発明の赤色系複層塗膜の用途は、自動車用途である。
【0113】
(赤色系複層塗膜の形成方法)
【0114】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法は、第1ベース塗膜を形成するための第1ベース塗料組成物と、第2ベース塗膜を形成するための第2ベース塗料組成物とを準備する工程Aと、
被塗物に、前記第1ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する工程Bと、
前記未硬化の第1ベース塗膜上に、前記第2ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程Cと、
前記未硬化の第1ベース塗膜および前記未硬化の第2ベース塗膜を一緒に硬化させ、前記第1ベース塗膜および前記第2ベース塗膜を形成する工程Dと、
を含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分、着色顔料および光輝顔料を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分および着色顔料を含み、光輝顔料を実質的に含まず、
順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、前記第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Aの前記クリヤー塗膜における平均光線反射率が、波長360~700nmにおいて15~40%であり、
前記第2ベース塗膜の平均光線透過率が、波長440~560nmにおいて3%以下であり、波長650~700nmにおいて80~90%である、赤色系複層塗膜の形成方法である。
【0115】
以下、本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の各工程A~Dを例示説明する。
【0116】
・工程A
工程Aでは、上述した第1ベース塗料組成物と、第2ベース塗料組成物を準備する。工程Aでは、第1ベース塗料組成物および第2ベース塗料組成物に加えて、クリヤー塗膜を形成するためのクリヤー塗料を準備してもよい。クリヤー塗料は、公知のクリヤー塗料を用いることができる。
【0117】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第2ベース塗料組成物の全固形分質量に対する、前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料の全固形分質量の割合が、4~8%である。
【0118】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第1ベース塗料組成物および前記第2ベース塗料組成物の前記着色顔料が、赤色系顔料を含む。
【0119】
・工程B
工程Bでは、被塗物に、第1ベース塗料組成物を塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成する。
【0120】
第1ベース塗料を塗装する方法は特に限定されず、従来公知の自動車のベース塗料の塗装方法を用いることができる。第1ベース塗料を塗装する方法は、例えば、スプレー塗装、回転霧化静電塗装などが挙げられる。
【0121】
工程Bで第1ベース塗料組成物を塗装する対象である被塗物は、例えば、自動車の車体である。被塗物は、例えば、電着塗膜を有する自動車の車体であってもよいし、電着塗膜および中塗り塗膜を有する自動車の車体であってもよい。
【0122】
被塗物に第1ベース塗料を塗装した後、第1ベース塗料にプレヒート(予備乾燥ともいう)を行い、未硬化の第1ベース塗膜を形成してもよい。
【0123】
プレヒートの条件としては、例えば、60~90℃、120~300秒、より好ましくは80℃、180秒などである。
【0124】
未硬化の第1ベース塗膜の膜厚は特に限定されず、所望の乾燥膜厚に応じて適宜調節すればよい。
【0125】
・工程C
工程Cでは、未硬化の第1ベース塗膜上に第2ベース塗料を塗装して、未硬化の第2ベース塗膜を形成する。
【0126】
第2ベース塗料を塗装する方法は特に限定されず、従来公知のベース塗料の塗装方法を用いることができる。第2ベース塗料を塗装する方法は、例えば、スプレー塗装、回転霧化静電塗装などが挙げられる。工程Bの第1ベース塗料を塗装する方法と、工程Cの第2ベース塗料を塗装する方法は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0127】
第2ベース塗料を塗装した後、第2ベース塗料にプレヒートを行い、未硬化の第2ベース塗膜を形成してもよい。
【0128】
未硬化の第2ベース塗膜の膜厚は特に限定されず、所望の乾燥膜厚に応じて適宜調節すればよい。
【0129】
・工程D
工程Dでは、未硬化の第1ベース塗膜および未硬化の第2ベース塗膜を一緒に硬化させ、第1ベース塗膜および第2ベース塗膜を形成する。硬化方法は、例えば、加熱硬化が挙げられる。加熱硬化の条件は、例えば、温度120~160℃、10~30分とすることができる。
【0130】
工程Dは、未硬化の第1ベース塗膜と未硬化の第2ベース塗膜を硬化させ、第1ベース塗膜および未硬化の第2ベース塗膜を形成しさえすればよく、これら2層に加えて、未硬化の第2ベース塗膜上に形成された未硬化のクリヤー塗膜を一緒に硬化させてもよい。
【0131】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法の一実施形態では、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が、8~14μmである。
【0132】
本発明に係る赤色系複層塗膜の形成方法では、工程A~D以外に、従来公知の自動車の塗膜の形成工程を含んでいてもよい。例えば、自動車の車体に電着塗膜を形成する工程、電着塗膜上に中塗り塗膜を形成する工程、クリヤー塗料を未硬化の第2ベース塗膜上に塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、未硬化のクリヤー塗膜を硬化させ、クリヤー塗膜を形成する工程などが挙げられる。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0134】
平均光線反射率の測定に用いた材料および装置の詳細は以下のとおりである。
電着塗料:カチオン電着塗料、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「パワーニックス110」
中塗り塗料:ポリエステル・メラミン樹脂系中塗り塗料、日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「アクアレックスAR-620 8105」
鋼板:リン酸亜鉛処理したSPCC-SD鋼板、寸法20cm×30cm×厚さ0.8cm
分光光度計:日立社製の商品名「U-3310」、スキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmに設定
【0135】
平均光線透過率の測定に用いた材料および装置の詳細は以下のとおりである。
ポリプロピレン板:TP技研社製の商品名「ポリプリピレン」
クリヤー塗料:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「マックフローO-1860クリヤー」、酸エポキシ硬化型アクリル樹脂系塗料
分光光度計:日立社製の商品名「U-3310」、スキャンスピード300nm/min、サンプリング間隔0.5nmに設定
【0136】
彩度の測定に用いた装置の詳細は以下のとおりである。
分光測色計:コニカミノルタ社製の商品名「CM-512m3」
【0137】
実施例で用いたベース塗料の成分の詳細は以下のとおりである。
樹脂成分1:特開2014-042891号公報の段落[0059]の製造例1に記載の日本ペイント社製のアクリル樹脂
樹脂成分2:特開2014-042891号公報の段落[0059]の製造例1に記載の三井化学社製のアミノ樹脂、商品名「ユーバン(登録商標)128」
光輝顔料1:東洋アルミニウム社製の商品名「WM-2025」、シルバー色、平均粒径15μm、表1では「1番」と表記
着色顔料1:Clariant社製の商品名「Hostaperm(登録商標) Red P2GL-WD」、赤色、表1では「1番」と表記
着色顔料2:BASF社製の商品名「Paliogen(登録商標) Red L3875」、赤色、表1では「2番」と表記
着色顔料3:大日精化工業社製の商品名「ダイピロ TMレッド」、赤色、表1では「3番」と表記
着色顔料4:コロンビアカーボン社製の商品名「カーボンブラックR-5000」、黒色、表1では「4番」と表記
着色顔料5:BASF社製の商品名「Cinquasia Magenta RT-355-D」、赤紫色、表1では「5番」と表記
【0138】
(実施例1~9および比較例1~9)
・第1ベース塗料組成物の調製
表1に示すPWC(%)の光輝顔料と着色顔料に加えて、以下の量の樹脂成分を配合し、均一に分散して、各実施例および比較例の第1ベース塗料組成物を得た。
樹脂成分1:100質量部(不揮発分60%)
樹脂成分2:66.7質量部(不揮発分60%)
【0139】
・第2ベース塗料組成物の調製
表1に示すPWC(%)の着色顔料に加えて、第1ベース塗料組成物と同量の樹脂成分を配合し、均一に分散して、各実施例および比較例の第2ベース塗料組成物を得た。
【0140】
・平均光線反射率の測定
鋼板に電着塗料を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱硬化させて電着塗膜を得た。次いで、その電着塗膜上に、中塗り塗料を乾燥膜厚が20μmとなるように塗装し、未硬化の中塗り塗膜を形成した。次いで、3分間静置後に、未硬化の中塗り塗膜を80℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化の中塗り塗膜上に、第1ベース塗料を乾燥膜厚が10μmとなるように塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成した。次いで、3分間静置後に、未硬化の第1ベース塗膜を80℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化の第1ベース塗膜上に、クリヤー塗料を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成した。次いで、10分間静置後に、未硬化の中塗り塗膜、未硬化の第1ベース塗膜および未硬化のクリヤー塗膜を一緒に、140℃で30分間焼付硬化して、塗膜Aを得た。なお、中塗り塗料、第1ベース塗料およびクリヤー塗料は、いずれもメタベルで塗装した。
【0141】
各実施例および比較例の塗膜Aのクリヤー塗膜において、分光光度計を用いて、波長スキャンモードで波長300~700nmの領域を10nm毎に測定し、各波長での塗膜Aの光線反射率を求めた。そして、その得られた光線反射率の波長360~700nmの領域の相加平均(算術平均)から、塗膜Aの平均光線反射率を求めた。その結果を表1に合わせて示す。
【0142】
・平均光線透過率の測定
ポリプロピレン板上に第2ベース塗料を乾燥膜厚が約12μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間加熱硬化させて第2ベース塗膜を得た。次いで、その第2ベース塗膜をポリプロピレン板から剥離した。その剥離した第2ベース塗膜について、分光光度計を用いて、波長スキャンモードで波長300~700nmの領域を10nm毎に測定し、各波長での第2ベース塗膜の光線透過率を求めた。そして、その得られた光線透過率の波長440~560nmの領域の相加平均(算術平均)および波長650~700nmの領域の相加平均(算術平均)から、第2ベース塗膜の波長440~560nmの領域と波長650~700nmの領域のそれぞれの平均光線透過率を求めた。その結果を表1に合わせて示す。
【0143】
・塗膜Bの作製
以下に示す手順で鋼板上に、順に隣接して、電着塗膜、中塗り塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる塗膜Bを作製した。塗膜Bの色相は、5Rであった。
【0144】
プレヒートを含め、未硬化の中塗り塗膜を形成する工程までを塗膜Aと同様に行った。次いで、未硬化の中塗り塗膜上に、表1に示した第1ベース塗料を乾燥膜厚が10μmになるようにメタベルで塗装し、未硬化の第1ベース塗膜を形成した。次いで、2分間静置後に、未硬化の第1ベース塗膜上に、表1に示した第2ベース塗料を乾燥膜厚が約12μmになるようにメタベルで塗装し、未硬化の第2ベース塗膜を形成した。次いで、3分間静置後に、未硬化の第2ベース塗膜を80℃で3分間プレヒートした。次いで、未硬化の第2ベース塗膜上に、塗膜Aと同じクリヤー塗料を乾燥膜厚が35μmになるようにメタベルで塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成した。次いで、10分間静置後に、140℃で20分間焼付硬化して、鋼板上の塗膜Bを得た。各第2ベース塗膜のPT値、すなわち、第2ベース塗膜のPWC(%)と第2ベース塗膜の乾燥膜厚(μm)を乗じた値も合わせて表1に示す。
【0145】
・意匠性の評価
得られた各実施例および比較例の塗膜Bの意匠性として、光輝感、彩度および深み感を以下のように評価した。
【0146】
・光輝感
得られた各実施例および比較例の塗膜Bを目視し、以下の評価基準で評価した。評価AおよびBが合格である。結果を表1に合わせて示す。
評価A:強い光輝感を感じる
評価B:やや強い光輝感を感じる
評価C:弱い光輝感を感じる
評価D:光輝感を感じない
【0147】
・彩度
得られた各実施例および比較例の塗膜Bの25°における彩度C*値を分光測色計を用いて測定した。ここで、25°における彩度は、塗膜Bに対して25°の角度で光を入射させ、塗膜Bに対して垂直方向に反射した光について測定した彩度である。結果を表1に合わせて示す。C値の値が大きいほど、彩度に優れることを表す。
【0148】
・色の深み感
得られた各実施例および比較例の塗膜Bを目視し、以下の評価基準で色の深み感を評価した。評価AおよびBが合格である。結果を表1に合わせて示す。
評価A:赤色の強い深み感を感じる
評価B:赤色のやや強い深み感を感じる
評価C:赤色の弱い深み感を感じる
評価D:赤色の深み感を感じない
【0149】
・色ムラの評価
得られた各実施例および比較例の塗膜Bを目視し、以下の評価基準で色ムラを評価した。評価AおよびBが合格である。結果を表1に合わせて示す。
評価A:塗膜全体が均一な色を有し、顕著な色ムラがない
評価B:塗膜の一部にわずかに色ムラが見られるが実用上の問題はない
評価C:塗膜の一部に顕著な色ムラが見られる
評価D:塗膜全体に顕著な色ムラが見られる
【0150】
・メタルムラの評価
得られた各実施例および比較例の塗膜Bを目視し、以下の評価基準で色ムラを評価した。評価AおよびBが合格である。結果を表1に合わせて示す。
評価A:塗膜全体が均一な光輝感を有し、顕著なメタルムラがない
評価B:塗膜の一部にわずかに光輝感の不均一が見られるが実用上の問題はない
評価C:塗膜の一部に顕著な光輝感の不均一が見られる
評価D:塗膜全体に顕著なメタルムラが見られる
【0151】
【0152】
表1に示したように、実施例1~9では、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によれば、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、光輝感、彩度および色の深み感に優れ、かつ、メタルムラおよび色ムラが少ない赤色系複層塗膜の形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0154】
1:第1ベース塗膜
2:第2ベース塗膜
3:車体
4:電着塗膜
5:中塗り塗膜
6:クリヤー塗膜