(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】アンテナモジュール、リーダライタ、及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20240924BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240924BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20240924BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G06K7/00 095
G06K7/10 284
G06K7/10 224
H01Q23/00
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2021087473
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 雄介
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10082569(US,B1)
【文献】特開2009-069934(JP,A)
【文献】特開2008-152463(JP,A)
【文献】特開2011-059240(JP,A)
【文献】特開2013-163579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00
G06K 7/10
H01Q 23/00
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタの接続部に取り付けられるアンテナモジュールであって、
前記リーダライタで生成された送信信号を送信し、外部からの応答信号を受信するアンテナ部と、
前記アンテナ部から送信された前記送信信号又は前記アンテナ部により受信された前記応答信号が通過する信号経路のインピーダンス
を確認することで自己診断を行い、前記リーダライタからの指示に基づいて自己が選択されているか否かを判
断する制御部を有する、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記制御部は、自己診断回路で構成される、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記制御部は、前記アンテナ部への前記インピーダンス
が所定閾値から外れている場合、消費電流をゼロ又は所定値以上にする、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記リーダライタの接続部に接続可能な第1接続部と、
他のアンテナモジュールを接続可能な第2接続部と、を更に有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記第1接続部及び前記アンテナ部間の第1信号経路と、前記第1接続部及び前記第2接続部間の第2信号経路と、を選択的に切り換える切換部を更に有する、請求項4に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記制御部は、前記リーダライタが生成する信号のオンオフに基づいて前記切換部を動作させる、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記制御部は、前記リーダライタからの給電電圧レベルに基づいて前記切換部を動作させる、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記制御部は、前記アンテナ部への前記インピーダンス
が所定閾値から外れている場合、前記第2信号経路を選択するように前記切換部を切り換える、請求項5から請求項7のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記制御部は、前記リーダライタから給電がない場合、前記第2信号経路を選択するように前記切換部を切り換える、請求項5から請求項8のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
信号の位相を制御する移相器を更に有する、請求項1から請求項9のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記アンテナ部に対する信号のゲインを制御する減衰器を更に有する、請求項1から請求項10のいずれかに記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のアンテナモジュールが取り付けられるリーダライタであって、
前記アンテナモジュールに対する給電用の直流給電回路を有する、リーダライタ。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のアンテナモジュールと、
前記アンテナモジュールが取り付けられる接続部を有するリーダライタと、を備え、
前記アンテナモジュールは、
前記リーダライタの接続部に接続可能な第1接続部と、
他のアンテナモジュールを接続可能な第2接続部と、を備える、無線通信装置。
【請求項14】
複数の前記アンテナモジュールが、前記第2接続部を介して直列接続される、請求項13に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記リーダライタは、複数の前記アンテナモジュールに対する給電用の直流給電回路を有する、請求項14に記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記アンテナモジュールは、前記第1接続部及び前記アンテナ部間の第1信号経路と、前記第1接続部及び前記第2接続部間の第2信号経路と、を選択的に切り換える切換部を更に有し、
前記制御部は、前記直流給電回路から給電されることにより、複数の前記アンテナモジュールのそれぞれの前記切換部を動作させる、請求項15に記載の無線通信装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記直流給電回路から供給される合計の電流量と単体の前記アンテナモジュールが消費する電流量に基づいて、前記アンテナモジュールの接続数を検知する、請求項15又は請求項16に記載の無線通信装置。
【請求項18】
前記制御部は、所定の前記アンテナモジュールの電流消費量が所定範囲外の場合、前記アンテナ部が故障している、又は前記アンテナモジュールと前記リーダライタとの接続に不具合があると判断する、請求項17に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナモジュール、リーダライタ、及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信装置としてRFID(Radio Frequency Identifier)を用いたRFIDタグリーダライタが用いられている(特許文献1-2参照)。RFIDタグリーダライタは、RFIDタグと通信する装置である。RFIDタグは、例えばパッシブタイプ(電源を持たないタイプ)のICチップで構成され、識別・管理の対象の商品に貼付されて使用される、いわゆる識別タグである。
【0003】
例えばRFIDタグリーダライタは、送信回路において生成された送信信号をアンテナから空中へ放射する。RFタグは、RFIDタグリーダライタから送信された送信信号を受け、バックスキャッタ方式にてRFIDタグリーダライタに向けて応答信号を返送する。RFIDタグリーダライタは、RFIDタグからの応答信号を受信する。更にRFIDタグリーダライタは、受信した応答信号を受信回路で増幅・復調してRFIDタグの応答を受信している。このようにして、RFIDタグリーダライタとRFIDタグとの間で情報の通信が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-147681号公報
【文献】特開2019-068367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RFIDタグリーダライタは、リーダライタ本体の接続部にアンテナが取り付けられている。通常このようなアンテナは、信号の送受信という本来的な機能しか有しておらず、例えばリーダライタ側で信号を適切に送受信できない場合、その原因がタグ側の問題なのか、アンテナ側の問題なのかを判断することは困難であった。
【0006】
本発明は、上述課題に鑑み、RFIDタグリーダライタにおいて、通信不具合の要因を判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述目的を達成するために、本発明のアンテナモジュールは、リーダライタの接続部に取り付けられるアンテナモジュールであって、前記リーダライタで生成された送信信号を送信し、外部からの応答信号を受信するアンテナ部と、前記アンテナ部から送信された前記送信信号又は前記アンテナ部により受信された前記応答信号が通過する信号経路のインピーダンスを確認することで自己診断を行い、前記リーダライタからの指示に基づいて自己が選択されているか否かを判断する制御部を有する。
【0008】
また、本発明のリーダライタは、上記のアンテナモジュールが取り付けられるリーダライタであって、前記アンテナモジュールに対する給電用の直流給電回路を有する。
【0009】
また、本発明の無線通信装置は、上記のアンテナモジュールと、前記アンテナモジュールが取り付けられる接続部を有するリーダライタと、を備え、前記アンテナモジュールは、前記リーダライタの接続部に接続可能な第1接続部と、他のアンテナモジュールを接続可能な第2接続部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信不具合の要因を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】RFIDタグリーダライタシステムの概念図である。
【
図2】本実施の形態に係るRFIDタグリーダライタの概略構成図である。
【
図3】本実施の形態に係るリーダライタ本体の構成図である。
【
図4】本実施の形態に係るアンテナモジュールの構成図である。
【
図5】比較例に係るRFIDタグリーダライタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、RFIDタグリーダライタシステムの概念図である。なお、以下に示すRFIDタグリーダライタシステムはあくまで一例に過ぎず、これに限定されることなく適宜変更が可能である。
【0013】
図1に示すように、RFIDタグリーダライタシステム100は、RFIDタグリーダライタ1(無線通信装置)と、複数(例えばn個)のRFIDタグ2により構成されている。RFIDタグリーダライタ1は、RFIDタグ2に対して所定波長の無線信号(連続波(CW:Continuous Wave))を送信し、RFIDタグ2から返送された応答信号を受信するように構成されている。RFIDタグ2は、識別・管理の対象の物品に貼付される識別タグであり、例えば商品に貼付されて使用される。
【0014】
RFIDタグ2は、例えば、図示しないアンテナを含んでおり、このアンテナは、RFIDタグリーダライタ10から送信される送信信号の周波数に整合するように形成される。具体的にRFID、例えば、アルミ箔によるアンテナパターンで作られた、ダイポールアンテナ等である。RFIDタグ2は、RFIDタグリーダライタ10から送信される送信信号を受け、バックスキャッタ方式にてRFIDタグリーダライタ10へ応答信号を返送する。そして、RFIDタグリーダライタ10は、RFIDタグ2からの応答信号を受信・復調することで、RFIDタグ2との間で情報の通信を実現する。
【0015】
図2は、本実施の形態に係るRFIDタグリーダライタの概略構成図である。
図2に示すように、RFIDタグリーダライタ1は、リーダライタ本体3(単にリーダライタと呼ばれてもよい)に単数又は複数(n個)のアンテナモジュール4(アンテナユニットと呼ばれてもよい)を取り付けて構成される。なお、アンテナモジュール4の個数(n)は適宜変更が可能である。詳細は後述するが、複数のアンテナモジュール4は、直列接続される。リーダライタ本体3は、複数のアンテナモジュール4に対して給電を実現するように構成されている。
【0016】
図3は、本実施の形態に係るリーダライタ本体の構成図である。
図3に示すように、リーダライタ本体3は、アンテナモジュール4を取り付けるための本体側接続部30を備えている。本体側接続部30は、例えばリーダライタ本体3とアンテナモジュール4とを電気的に接続する接続端子(コネクタ)で構成される。本体側接続部30には、ケーブル等の配線部(不図示)を介して、直接的には単一のアンテナモジュール4のみ取り付け可能である。
【0017】
また、リーダライタ本体3は、RFIDタグリーダライタ1全体を制御する不図示のCPU(Central Processing Unit)と記憶部の他、送信回路31、受信回路32、カプラ33、及び直流給電回路34を有している。これらの構成は、図示しない回路によって電気的に接続されている。
【0018】
CPUは、RFIDタグリーダライタ1全体の制御を行う。この場合、CPUはコンピュータとして機能する。CPUは、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、各種制御を行う。CPUは、制御部として機能する。記憶部には、CPUによる処理に必要な各種データ、CPUに実行させるプログラム、アプリケーションプログラム等が格納される。
【0019】
送信回路31は、種々の処理回路を有しており、アンテナモジュール4(後述するアンテナ部42)から送信する送信信号の生成・増幅等を実施する。送信回路31は、送信部として機能し、送信系と呼ばれてもよい。
【0020】
受信回路は、種々の処理回路を有しており、RFIDタグ2から返送された応答信号の受信処理(ノイズ除去・増幅等)を実施する。受信回路32は、受信部として機能し、受信系と呼ばれてもよい。
【0021】
本体側接続部30と送信回路31及び受信回路32との間には、カプラ33が設けられている。カプラ33は、信号を中継する機能を有しており、例えば送信回路31で生成・増幅された信号をアンテナモジュール4側(本体側接続部30側)に導く。また、カプラ33は、アンテナモジュール4が受信したRFIDタグ2からの応答信号を受信回路32に導く。
【0022】
本体側接続部30とカプラ33との間には、直流給電回路34が設けられている。詳細は後述するが、直流給電回路34は、アンテナモジュール4へ供給するための電力を生成する機能を有している。例えば直流給電回路34は、アンテナモジュール4の接続個数に応じた直流電力を生成可能である。
【0023】
図4は、本実施の形態に係るアンテナモジュールの構成図である。
図4に示すように、アンテナモジュール4は、リーダライタ本体3に接続可能な第1接続部40と、中継用の第2接続部41と、アンテナ部42と、を備えている。第1接続部40は、リーダライタ本体3の本体側接続部30又は他のアンテナモジュール4と接続可能である。第2接続部41は、他のアンテナモジュール4の第1接続部40と接続可能である。
【0024】
アンテナ部42は、端部で信号の送受信するものである。例えばアンテナ部42は、RFIDタグ2に向けて送信信号を送信し、RFIDタグ2からの応答信号を受信する。
【0025】
第1接続部40と、第2接続部41及びアンテナ部42との間には、自己診断回路43、カプラ44、デコーダ45、及びRFスイッチ46が設けられている。自己診断回路43、カプラ44、デコーダ45、及びRFスイッチ46は、総じて制御回路と呼ばれてもよく、アンテナモジュール4における制御部を構成する。詳細は後述するが、制御部は、内蔵されたアンテナ部42(自身のアンテナ部42)に対する給電と、他のアンテナモジュール42に対する給電とを制御したり、受信した信号に基づいて自己判断を行う。
【0026】
自己診断回路43は、第1接続部40とカプラ44との間に設けられている。自己診断回路43は、電源回路を含み、リーダライタ本体3から給電を受けることで動作する。また、自己診断回路43は、リーダライタ本体3からの指示に応じて、自己が選択されている否かを判断する。
【0027】
カプラ44は、第1接続部40とRFスイッチ46との間に設けられている。カプラ44は、信号を中継する機能を有しており、例えばリーダライタ本体3からの信号をRFスイッチ46側(アンテナ部42側)に導く。また、カプラ44は、アンテナ部42が受信したRFIDタグ2からの応答信号をデコーダ45に導く。
【0028】
デコーダ45は、カプラ44とRFスイッチ46との間に設けられている。デコーダ45は、リーダライタ本体3からの符号化された信号をを復号化する機能を有する。
【0029】
RFスイッチ46は、カプラ44と、第2接続部41及びアンテナ部42との間に設けられている。RFスイッチ46は、アンテナ部42と第2接続部41との間で信号経路を切り換える切換部として機能する。具体的にRFスイッチ46は、第1接続部40及びアンテナ部42間の信号経路(第1信号経路)と、第1接続部40及び第2接続部41間の信号経路(第2信号経路)と、を選択的に切り換え可能である。RFスイッチ46は、セレクタと呼ばれてもよい。
【0030】
ところで、RFIDタグリーダライタにおいては、接続するアンテナの数に応じてリーダライタ本体側で複数の接続端子を保有する必要があった。ここで、
図5を参照して従来のRFIDタグリーダライタの構成について説明する。
図5は、比較例に係るRFIDタグリーダライタの概略構成図である。なお、
図5では、既出の構成と同一名称の構成について、便宜上異なる符号を付しているが、その機能は既出の構成と同一のため、適宜詳細説明は省略する。
【0031】
図5に示すように、比較例に係るRFIDタグリーダライタは、リーダライタ本体5に複数(
図5では4個)のアンテナ6を取り付けて構成される。リーダライタ本体5は、アンテナ6を取り付けるための本体側接続部50を複数(
図5では4個)備えている。本体側接続部50は、例えばリーダライタ本体5とアンテナ6とを電気的に接続する接続端子(コネクタ)で構成される。また、アンテナ6は、リーダライタ本体5に接続可能なアンテナ側接続部60を有している。
【0032】
また、リーダライタ本体5は、送信回路51、受信回路52、カプラ53、及びRFスイッチ54を有している。これらの構成は、図示しない回路によって電気的に接続されている。RFスイッチ54は、複数のうち所定のアンテナ6に対する信号経路を選択的に切り換えるセレクタで構成される。
【0033】
このように、比較例では、リーダライタ本体5に対して複数のアンテナ6が並列接続されている。すなわち、リーダライタ本体5側では、1つのアンテナ6に対して1つの接続部(本体側接続部50)が必須であり、アンテナ6を増設する場合はその拡張性に問題があった。
【0034】
また、アンテナ6は、信号の送受信という本来的な機能しか有しておらず、例えばリーダライタ5側で信号を適切に送受信できない場合、その原因がタグ(RFIDタグ2)側の問題なのか、アンテナ6側の問題なのかを判断することは困難であった。より具体的には、送信された信号が実際にアンテナ端から空中に放射されているか、また、アンテナ端から入ってきた受信信号が、タグの応答がないから受信できないのか、受信回路系に不調があって受信できていないかの判断をリーダライタ側で行うことは困難であった。このように、従来のRFIDタグリーダライタには備えられていない、故障モードの判別機能が求められていた。
【0035】
そこで、本件発明者は、リーダライタとアンテナとの接続方式及びアンテナ側の制御構成に着目し、本発明に想到した。本実施の形態では、先ずアンテナ側において、所定の信号に基づいて自己がアンテナとして選択されているか否かを判断する制御部として、自己診断回路43を設ける構成とした。これにより、アンテナ部42への無線給電状態、インピーダンス等をアンテナモジュール4側で確認することができ、リーダライタ本体3及びアンテナモジュール4間の異常を検出することが可能となる。
【0036】
また、複数のアンテナモジュール4が第2接続部41を介して直列接続されるため、リーダライタ本体側では、単一のアンテナモジュール4を接続可能な接続部(本体側接続部30)だけで複数のアンテナモジュール4をリーダライタ本体3に取り付けることが可能である。よって、複数のアンテナモジュール4を数珠繋ぎ(デイジーチェーン)で接続することが可能となり、アンテナモジュール4の接続数を増やす場合の拡張性が向上されている。この場合、リーダライタ本体3側では、直流給電回路により各アンテナモジュール4に重畳給電が可能となるため、電力不足に陥ることもない。
【0037】
従来リーダライタ本体3側に設けられていた制御構成を一部アンテナモジュール4側に移したことで、リーダライタ本体3の構成を簡略化できると共に、任意のアンテナモジュール4への給電及びアンテナ切換制御が容易となった。
【0038】
このように、本発明では、RFIDリーダライタ1とRFIDタグ2との通信用無線信号に、直流給電回路34で直流電圧を重畳給電する。その電力により、リーダライタ本体3に対して複数接続されたアンテナモジュール4内のセレクタ回路(RFスイッチ46:切換部)が駆動されることで、リーダライタ本体3の1つのアンテナポート(本体側接続部30)に複数のアンテナモジュール4を接続してデイジーチェーンを形成することが可能となる。更に、各アンテナモジュール4に対する給電機能を設けることで、任意のアンテナモジュール4へのアクセス、制御(位相、ゲイン等)が可能なる。更に、アンテナへの無線給電状態、インピーダンス等をアンテナ側で確認することで、リーダライタからアンテナ部の異常を検出可能とする。
【0039】
上記したように、本発明によれば、1つのアンテナ接続端(本体側接続部30)を用意するだけで、複数のアンテナモジュール4をデイジーチェーンで接続することが可能となるため、後付でのアンテナ増設が容易となる。また、リーダライタ本体3からアンテナモジュール4までの経路の故障が要因に判別可能となるため、アンテナモジュール4、もしくは、アンテナ接続ケーブルの断線故障等により、「気づかないうちにRFIDタグ2が読めない状態となっていた」といった問題を未然に防ぐことができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係る無線通信装置(RFIDリーダライタ1)の動作等について説明する。
【0041】
上記したように、リーダライタ本体3側において、直流給電回路34では、リーダライタ本体3とアンテナモジュール4間の無線RF信号に直流電圧を重畳する。
【0042】
アンテナモジュール4では、リーダライタ本体3からの制御を受けて、RFスイッチ46で信号経路の切り換えが可能である。例えば第1信号経路が選択されると、内蔵のアンテナ部42へのRF給電が実現される。一方で、第2信号経路が選択されると、そのアンテナモジュール4に接続された他のアンテナモジュール4へのRF給電が可能となる。この場合、第2信号経路が選択されたアンテナモジュール4は、中継器として機能する。
【0043】
また、アンテナモジュール4の制御部(自己診断回路443)は、直流給電回路34より受けた電力を取り出し、アンテナモジュール4内の動作電力を取り出す。また、信号経路内のインピーダンスを確認等することにより、自己診断を行う。
【0044】
具体的な動作の流れは以下の通りである。
(1)リーダライタ本体3は、アンテナモジュール4へRF給電する際に、直流給電回路34よって無線信号に直流電圧を重畳する。
(2)アンテナモジュール4は、直流給電を受け起動し、リーダライタ本体3からの指示で、自己が選択されているか否か判断する。
(2-1)自己が選択されている場合、アンテナモジュール4は、リーダライタ本体3からの無線RF信号を、内蔵のアンテナ部42に給電する。
(2-2)自己が選択されていなかった場合、アンテナモジュール4は、リーダライタ本体3からの無線RF信号を他のアンテナモジュールに給電(中継)すべく、内蔵のRFスイッチ46を第2信号経路に切り換える。
(3)任意のタイミングで、アンテナモジュール4は、自己診断を行い、異常時はリーダライタ本体3へ異常を通知する。通知する手段には、リーダライタ本体3とのコマンド通信、消費電流を変動させることによる通知等がある。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係るアンテナモジュール4は、リーダライタ本体3の本体側接続部30に取り付けられる。アンテナモジュール4は、リーダライタ本体3で生成された送信信号を送信し、外部からの応答信号を受信するアンテナ部42と、送信信号又は応答信号に基づいて自己が選択されているか否かを判断して自己診断する制御部として、自己診断回路43を有する。これにより、アンテナモジュール4は、信号の状態に状態応じて通信不具合の要因を判別することが可能である。
【0046】
また、本実施の形態において、制御部は、アンテナ部へのインピーダンスが所定閾値から外れている場合、消費電流をゼロ又は所定値以上にすることが好ましい。この構成によれば、アンテナモジュール4の異常をリーダライタ本体3側に通知することが可能である。
【0047】
また、本実施の形態において、アンテナモジュール4は、リーダライタ本体3の本体側接続部30に接続可能な第1接続部40と、他のアンテナモジュール4を接続可能な第2接続部41と、有している。この構成によれば、複数のアンテナモジュール4を直列につないでデイジーチェーンを形成することが可能である。
【0048】
また、本実施の形態において、アンテナモジュール4は、第1接続部40及びアンテナ部42間の第1信号経路と、第1接続部40及び第2接続部41間の第2信号経路と、を選択的に切り換える切換部としてRFスイッチ46を有している。この構成によれば、自己のアンテナ部42をアクティブにする第1信号経路と、他のアンテナ部42をアクティブにする第2信号経路とを切り換えることが可能である。
【0049】
また、本実施の形態において、制御部は、リーダライタ本体3が生成する信号のオンオフに基づいて切換部を動作させることが好ましい。また、制御部は、リーダライタ本体3からの給電電圧レベルに基づいて切換部を動作させることが好ましい。このように、リーダライタ本体3からの信号状態に基づいて切換部を動作させることにより、適切に切換部の動作制御が可能である。
【0050】
また、本実施の形態において、制御部は、アンテナ部42へのインピーダンスが所定閾値から外れている場合、第2信号経路を選択するように切換部を切り換えることが好ましい。また、制御部は、リーダライタ本体3から給電がない場合、第2信号経路を選択するように切換部を切り換えることが好ましい。これらの構成によれば、所定の条件に基づいて第2信号経路に切り換えて自己のアンテナ部42が選択されていない状態(未セレクト状態)にすることで、不本意な電波放射をなくすことが可能である。
【0051】
また、本実施の形態において、アンテナモジュール4は、信号の位相を制御する移相器を更に有することが好ましい。この構成によれば、リーダライタ本体3から各アンテナモジュール4の位相の遅延等を制御することが可能である。
【0052】
また、本実施の形態において、アンテナモジュール4は、アンテナ部に対する信号のゲインを制御する減衰器を更に有することが好ましい。この構成によれば、リーダライタ本体3から各アンテナモジュール4に対する信号のゲインを制御することが可能である。
【0053】
また、本実施の形態において、制御部は、直流給電回路34から供給される合計の電流量と単体のアンテナモジュール4が消費する電流量に基づいて、アンテナモジュール4の接続数を検知することが好ましい。この構成によれば、直流給電回路34の給電量からアンテナモジュール4の接続数を推定でき、任意のアンテナモジュール4に不具合があるか否かを判別することが可能である。
【0054】
また、本実施の形態において、制御部は、所定のアンテナモジュール4の電流消費量が所定範囲外の場合、アンテナ部42が故障している、又はアンテナモジュール4とリーダライタ本体3との接続に不具合があると判断することが好ましい。この構成によれば、装置内の故障モードを推定することが可能である。
【0055】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0056】
下記に、上記実施の形態における特徴点を整理する。
【0057】
上記実施の形態に記載のアンテナモジュールは、リーダライタの接続部に取り付けられるアンテナモジュールであって、前記リーダライタで生成された送信信号を送信し、外部からの応答信号を受信するアンテナ部と、前記送信信号又は前記応答信号に基づいて自己が選択されているか否かを判断して自己診断する制御部を有する。
【0058】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、自己診断回路で構成される。
【0059】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、前記アンテナ部へのインピーダンスが所定閾値から外れている場合、消費電流をゼロ又は所定値以上にする。
【0060】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールは、前記リーダライタの接続部に接続可能な第1接続部と、他のアンテナモジュールを接続可能な第2接続部と、を更に有する。
【0061】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールは、前記第1接続部及び前記アンテナ部間の第1信号経路と、前記第1接続部40及び前記第2接続部41間の第2信号経路と、を選択的に切り換える切換部を更に有する。
【0062】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、前記リーダライタが生成する信号のオンオフに基づいて前記切換部を動作させる。
【0063】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、前記リーダライタからの給電電圧レベルに基づいて前記切換部を動作させる。
【0064】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、前記アンテナ部へのインピーダンスが所定閾値から外れている場合、前記第2信号経路を選択するように前記切換部を切り換える。
【0065】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールにおいて、前記制御部は、前記リーダライタから給電がない場合、前記第2信号経路を選択するように前記切換部を切り換える。
【0066】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールは、信号の位相を制御する移相器を更に有する。
【0067】
また、上記実施の形態に記載のアンテナモジュールは、前記アンテナ部に対する信号のゲインを制御する減衰器を更に有する。
【0068】
また、上記実施の形態に記載のリーダライタは、上記のアンテナモジュールが取り付けられるリーダライタであって、前記アンテナモジュールに対する給電用の直流給電回路を有する。
【0069】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置は、上記のアンテナモジュールと、前記アンテナモジュールが取り付けられる接続部を有するリーダライタと、を備え、前記アンテナモジュールは、前記リーダライタの接続部に接続可能な第1接続部と、他のアンテナモジュールを接続可能な第2接続部と、を備える。
【0070】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置において、複数の前記アンテナモジュールが、前記第2接続部を介して直列接続される。
【0071】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置において、前記リーダライタは、複数の前記アンテナモジュールに対する給電用の直流給電回路を有する。
【0072】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置において、前記アンテナモジュールは、前記第1接続部及び前記アンテナ部間の第1信号経路と、前記第1接続部40及び前記第2接続部41間の第2信号経路と、を選択的に切り換える切換部を更に有し、前記制御部は、前記直流給電回路から給電されることにより、複数の前記アンテナモジュールのそれぞれの前記切換部を動作させる。
【0073】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置において、前記制御部は、前記直流給電回路から供給される合計の電流量と単体の前記アンテナモジュールが消費する電流量に基づいて、前記アンテナモジュールの接続数を検知する。
【0074】
また、上記実施の形態に記載の無線通信装置において、前記制御部は、所定の前記アンテナモジュールの電流消費量が所定範囲外の場合、前記アンテナ部が故障している、又は前記アンテナモジュールと前記リーダライタとの接続に不具合があると判断する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、通信不具合の要因を判別することができるという効果を有し、特に、RFIDタグリーダライタに適用可能なアンテナモジュール、リーダライタ、及び無線通信装置に有用である。
【符号の説明】
【0076】
100 RFIDタグリーダライタシステム
1 RFIDタグリーダライタ
2 RFIDタグ
3 リーダライタ本体(リーダライタ)
30 本体側接続部
31 送信部
32 受信部
33 カプラ
34 直流給電回路
4 アンテナモジュール
40 第1接続部
41 第2接続部
42 アンテナ部
43 自己診断回路(制御部)
44 カプラ
45 デコーダ
46 RFスイッチ(切換部)