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  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図1
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図2
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図3A
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図3B
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図4
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図5
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図6
  • 特許-樹脂複合材料の製造方法および製造装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】樹脂複合材料の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/84 20060101AFI20240924BHJP
   B29B 7/90 20060101ALI20240924BHJP
   B29B 7/72 20060101ALI20240924BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20240924BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20240924BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240924BHJP
【FI】
B29B7/84
B29B7/90
B29B7/72
B29B9/06
B29C48/76
B29C48/92
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021096481
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188447
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将太
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 文香
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-326219(JP,A)
【文献】特開2002-103424(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179584(WO,A1)
【文献】実開昭60-179407(JP,U)
【文献】特開2001-205627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/84
B29B 7/90
B29B 7/72
B29B 9/06
B29C 48/76
B29C 48/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、樹脂複合材料の製造方法:
(1a)熱可塑性樹脂および吸水性フィラーを、原料供給部から第1のシリンダに供給する工程;
(1b)前記第1のシリンダ内で、前記熱可塑性樹脂を溶融可塑化し、溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂と前記吸水性フィラーとを混練する工程;
(1c)前記混練により得られた混練物を、前記第1のシリンダ内を通して搬送する工程;および
(1d)前記搬送された混練物を、前記第1のシリンダに設けられたダイスから押出し、吸水性フィラー/熱可塑性樹脂複合材料を製造する工程、
ここで、前記(1b)工程において、前記吸水性フィラーに含まれる成分が気化することにより生じる揮発性気体を、第1の脱気部から外部へ脱気し、
前記(1c)工程において、前記混練物に由来する気体成分を、前記第1の脱気部とは異なる第2の脱気部から外部へ脱気し、
前記第1の脱気部が設けられている場所は、前記第2の脱気部が設けられている場所よりも前記原料供給部に近い。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記第1の脱気部が、前記第1のシリンダ前記原料供給部との接続部分に設けられている、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項3】
以下の工程を含む、樹脂複合材料の製造方法:
(2a)熱可塑性樹脂を、樹脂供給部から第1のシリンダに供給する工程;
(2b)前記熱可塑性樹脂を溶融可塑化する工程;
(2c)吸水性フィラーを、吸水性フィラー供給部から前記第1のシリンダ内に供給し、溶融可塑化された前記熱可塑性樹脂と混練する工程;
(2d)前記混練により得られた混練物を、前記第1のシリンダ内を通して搬送する工程;および
(2e)前記搬送された混練物を、前記第1のシリンダに設けられたダイスから押出し、吸水性フィラー/熱可塑性樹脂複合材料を製造する工程、
ここで、前記(2c)工程において、前記吸水性フィラーに含まれる成分が気化することにより生じる揮発性気体を、前記吸水性フィラー供給部前記第1のシリンダとの接続部分に設けられた第1の脱気部から外部へ脱気し、
前記(2d)工程において、前記混練物に由来する気体成分を、前記第1の脱気部とは異なる第2の脱気部から外部へ脱気し、
前記第1の脱気部が設けられている場所は、前記第2の脱気部が設けられている場所よりも前記吸水性フィラー供給部に近い。
【請求項4】
請求項1または3記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記(1b)工程または前記(2c)工程における前記揮発性気体の脱気が、吸引により行われる、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1または3記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記混練物に由来する前記気体成分を、前記第1のシリンダの側面に接続された第2のシリンダを有するベント装置を用い、前記混練物を前記第1のシリンダ方向へ押し込みながら脱気する、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記混練物に由来する前記気体成分を、前記ベント装置により吸引しながら脱気する、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1または3記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記混練物の温度が、前記吸水性フィラーの分解温度を超えないように制御する、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1または3記載の樹脂複合材料の製造方法において、
前記ダイスは、前記混練物を押出すダイス孔の直径Dに対する長さLの比(L/D)が5以下である、樹脂複合材料の製造方法。
【請求項9】
以下を含む樹脂複合材料の製造装置:
第1のシリンダ;
前記第1のシリンダに、熱可塑性樹脂および吸水性フィラーを供給する原料供給部;および
前記熱可塑性樹脂と前記吸水性フィラーとの混練物を押出成形するためのダイス、
ここで、前記樹脂複合材料の製造装置は、
前記吸水性フィラーに含まれる成分が気化することにより生じる揮発性気体を外部へ脱気する第1の脱気部と、
前記混練物に由来する気体成分を外部へ脱気する第2の脱気部と、
を有し、
前記第1の脱気部が設けられている場所は、前記第2の脱気部が設けられている場所よりも前記原料供給部に近い。
【請求項10】
請求項記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記第1の脱気部が、前記第1のシリンダ前記原料供給部との接続部分に設けられている、樹脂複合材料の製造装置。
【請求項11】
以下を含む樹脂複合材料の製造装置:
第1のシリンダ;
前記第1のシリンダに、熱可塑性樹脂を供給する樹脂供給部;
前記第1のシリンダに吸水性フィラーを供給する吸水性フィラー供給部;および
前記熱可塑性樹脂と前記吸水性フィラーとの混練物を押出成形するためのダイス、
ここで、前記樹脂複合材料の製造装置は、
前記吸水性フィラー供給部前記第1のシリンダとの接続部分に、前記吸水性フィラーに含まれる成分が気化することにより生じる揮発性気体を外部へ脱気する第1の脱気部と、
前記混練物に由来する気体成分を外部へ脱気する第2の脱気部と、
を有し、
前記第1の脱気部が設けられている場所は、前記第2の脱気部が設けられている場所よりも前記吸水性フィラー供給部に近い。
【請求項12】
請求項9または11記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記第1の脱気部は、前記揮発性気体を吸引して脱気可能である、樹脂複合材料の製造装置。
【請求項13】
請求項9または11記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記第2の脱気部は、前記混練物を前記第1のシリンダ方向へ押し込みながら脱気可能な第2のシリンダを有するベント装置と接続されている、樹脂複合材料の製造装置。
【請求項14】
請求項13記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記ベント装置は、前記混練物に由来する気体成分を吸引して脱気可能である、樹脂複合材料の製造装置。
【請求項15】
請求項9または11記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記混練物の温度が、前記吸水性フィラーの焙焼温度を超えないように制御する制御装置を有する、樹脂複合材料の製造装置。
【請求項16】
請求項9または11記載の樹脂複合材料の製造装置において、
前記ダイスは、前記混練物を押出すダイス孔の直径Dに対する長さLの比(L/D)が5以下である、樹脂複合材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合材料の製造方法および製造装置に係り、特に、押出成形により、吸水性フィラー/熱可塑性樹脂複合材料を製造する製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業資源としてのバイオマス材が注目されている。バイオマス材とは、植物などの生物を由来とした材料を意味する。バイオマス材は有機物であるため、燃焼させると二酸化炭素が排出される。しかしこれに含まれる炭素は、そのバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素に由来するため、バイオマス材を使用しても全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えてよいとされる。この性質をカーボンニュートラルと呼ぶ。
【0003】
地球温暖化問題等の地球環境問題を背景として、省資源化、及び廃棄物の原材料を目指すマテリアルリサイクル、そして、生分解性プラスチックに代表される環境循環サイクルの推進が急務となっており、我が国でも改正リサイクル法やグリーン購入法等が整備され、これに対応した製品のニーズも高まっている。
【0004】
こうした状況において、自動車部品の材料から日用品まで幅広く使用されている樹脂成形品にバイオマス材を配合することは、カーボンニュートラルの理念の実践を促進するところである。
【0005】
このようなバイオマス材をフィラーとして用いる場合、熱可塑性樹脂組成物を成形する際によく用いられる押出機により(例えば、特許文献1参照)、ペレット化して、樹脂複合材料とできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-128032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、押出機によりバイオマス材をフィラーとして配合する樹脂複合材料を製造しようとした場合、フィラーが原料供給部のシューターに付着したり、原料供給部の投入口で塊を形成したりして、原料供給量が安定しなくなる場合があった。原料供給量が安定しなくなると、それに伴い、樹脂複合材料の単位時間当たりの製造量(押出量)が減ってしまい、効率的な製造ができなくなる。
【0008】
このため、原料供給量を安定させ、樹脂複合材料の製造効率を向上できる樹脂複合材料の製造装置および製造方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される樹脂複合材料の製造方法は、吸水性フィラーを含有する樹脂複合材料を用いて押出成形するにあたって、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーとを混練して混練物とする際に、混練物から生じる揮発性気体を第1のシリンダから外部へ脱気する。
【0010】
本願において開示される樹脂複合材料の製造装置は、第1のシリンダに、混練物から生じる揮発性気体を外部へ脱気する第1の脱気部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される樹脂複合材料の製造方法および製造装置によれば、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーを含む樹脂複合材料を効率よく製造できる。特に、原料の供給量を安定させ、押出量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1の樹脂複合材料の製造装置の概略構成を示す側面図である。
図2図1の脱気部の一構成例としての吸引脱気可能な脱ガスシリンダの構成を示す模式図である。
図3A】実施の形態2の樹脂複合材料の製造装置の構成を示す側面図である。
図3B図3Aの樹脂複合材料の製造装置の構成を示す上面図である。
図4】実施の形態3の樹脂複合材料の製造装置の概略構成を示す側面図である。
図5図4の脱気部の一構成例としての吸引脱気装置の概略構成を示す図である。
図6】ダイスの一部拡大図である。
図7】比較例で用いた樹脂複合材料の製造装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施の形態1)
<樹脂複合材料の製造装置>
図1は、本実施の形態の樹脂複合材料の製造装置の構成例を示す図である。図2は、図1に示す揮発性気体の脱気部(第1の脱気部)として、吸引脱気可能な脱ガスシリンダの構成を示した模式図である。
【0015】
図1に示す樹脂複合材料の製造装置10は、吸水性フィラーと熱可塑性樹脂を含む樹脂複合材料を製造するのに適した押出装置であり、主として、この樹脂複合材料からなる成形品を製造する前処理装置として、原料となるペレットを製造するために用いられる。
【0016】
この樹脂複合材料の製造装置10は、原料供給部11と、スクリュを有するシリンダ12と、シリンダ12の上流側に設けられた揮発性気体の脱気部13と、ダイス14と、シリンダ12のスクリュを駆動する回転駆動機構15と、を有する。
【0017】
原料供給部11は、樹脂複合材料の原料を、シリンダ12へ供給するものである。本実施の形態では、原料として、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーとが、例えば、フィーダー等により原料供給部11のシューター11aに上部から投入され、それら原料が混合されて、シリンダ12へ供給される。ここで用いる原料については、後で詳細に説明する。
【0018】
シリンダ12は、内部にスクリュを有する。このスクリュを回転させることにより、原料を混練して得られた混練物が、シリンダ12内を搬送される。このスクリュとしては2本のスクリュを設けた二軸スクリュを用いると、二軸押出装置を構成できる。二軸押出装置は、スクリュの回転速度やバレル設定温度などの運転条件が自由に変更できる柔軟性があり、また、高い混練性、連続生産性などの種々の利点を有する。
【0019】
シリンダ12は、例えば、複数のシリンダブロックが連結されてなり、各シリンダブロックには、内部に熱可塑性樹脂と吸水性フィラーとの混練物を搬送可能な空間が設けられている。この空間には、スクリュが設けられており、スクリュは、回転駆動機構15に接続されている。この回転駆動機構15によりスクリュを回転させて、シリンダ12において混練物を搬送できる。
【0020】
また、シリンダ12は、その温度を調節できるようにヒータ(図示せず)が設けられている。このヒータにより、原料である熱可塑性樹脂を溶融し、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーとの混練物が容易に得られる。また、このように得られた混練物はシリンダ12内を容易に搬送可能となる。なお、このとき、過度に混練物の温度を上昇させないように、温度を制御することが好ましい。
【0021】
揮発性気体の脱気部13は、主として、樹脂複合材料から生じる揮発性気体を、シリンダ12の外部へ除去する機能を有しており、例えば、シリンダ12の上流側に設けられる。この揮発性気体の脱気部13は、シリンダ12の側面または上面に開口部(脱気口)を有していればよく、このような開口部を有することで、シリンダ12内で生じた揮発性気体を外部に除去できる。
【0022】
さらに、揮発性気体を効率的に除去するために、この脱気部13として、減圧吸引可能な脱気装置を用いてもよい。このような脱気装置を有することで、シリンダ12内で生じた揮発性気体をより効率的に除去できる。
【0023】
ここで、シリンダ12の上流側とは、原料が混練され、シリンダ12内を搬送される混練物の流れ方向の上流側(原料供給部11に近い側)を意味する。また、本実施の形態における上流側とは、シリンダ12において、原料供給部11から熱可塑性樹脂が溶融可塑化される位置までを意味する。脱気部13を設ける位置は、原料供給部11からスクリュ全長の70%以内が好ましく、原料供給部11からスクリュ全長の40%以内がより好ましく、シリンダ12の原料供給部11との接続部分(原料供給部11の直後)が特に好ましい。また、脱気部13を設ける数は特に1箇所に限定されるものではない。
【0024】
なお、熱可塑性樹脂が溶融可塑化される位置とは、シリンダ温度が結晶性樹脂の場合は溶融開始温度以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上である領域を意味し、より好ましくはシリンダ温度が結晶性樹脂の場合は融解温度(融点)以上、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度以上である領域を指す。ここで、結晶性樹脂の溶融開始温度・融解温度(融点)は、例えば示差走査型熱量測定装置(DSC, PerkinElmer DSC8500)を用いることで求めることができる。DSC曲線において、結晶性樹脂の融解に起因するピークの前のベースラインが融解ピークの左側の変曲点の接線に接する点に相当する温度が溶融開始点であり、融解ピークを示す温度が融点である。
【0025】
ダイス14は、シリンダ12内を搬送されてきた混練物を押し出して、成形するための部材であり、押出成形用の孔を有する。ダイス14に設けられた孔の形状により、成形される形状が決まる。このとき、孔の形状は、製造する樹脂複合材料の形状に応じて、種々の形状とでき、適した形状を選択すればよい。例えば、ストランド状に成形する場合には、円形の孔が複数設けられており、シート状に成形する場合には、スリット形状の孔が設けられている。
【0026】
回転駆動機構15は、シリンダ12内に設けられるスクリュを回転させるための装置である。回転駆動機構15により回転されたスクリュにより、原料がシリンダ12内を搬送される。
【0027】
なお、次に説明する図2の脱ガスシリンダ130では、シリンダ12内にスクリュを2本設ける場合に用いる脱ガスシリンダを例示しているが、本実施形態に用いる押出装置は、2本のスクリュが設けられた二軸押出装置でも、1本のスクリュが設けられた単軸押出装置でもよい。
【0028】
この複合樹脂材料の製造装置が二軸押出装置の場合、2本のスクリュは、互いに噛み合うように配置されて回転する。スクリュの数を2本とした場合には、空間容積を大きくとれるため、スクリュ口径が同一の場合、スクリュが1本の単軸よりもスクリュが2本の二軸の方が押出量を高くでき好ましい。シリンダ12の延在方向と、シリンダ12内のスクリュの延在方向とは同じである。
【0029】
<揮発性気体の脱気部について>
本実施の形態で、揮発性気体の脱気部13は、上記した通り、シリンダ12内で生じた揮発性気体を外部に除去できるような開口部を有していればよい。また、この脱気部13が吸引脱気可能な脱ガスシリンダで構成されていると、揮発性気体の除去を効率的にでき好ましい。
【0030】
脱ガスシリンダの一例として、図2に、その構成例を示した。この脱ガスシリンダ130は、シリンダ12の一部として、原料供給部11との接続部分に設けられている。この脱ガスシリンダ130は、原料供給部11からシリンダ12へと内部空間を連通して設けられ、原料である熱可塑性樹脂と吸水性フィラーが流通可能となっている。この連通する空間には、スクリュが配置される。そして、脱ガスシリンダ130には、シリンダ12の内部で生じた揮発性気体を外部に排出できるように脱気口が設けられている。
【0031】
ここで示した脱ガスシリンダ130は、その脱気口として、供給された固形物(原料)は通過させずに、揮発性気体を通過可能とするスクリーン131が設けられている場合を例示している。このスクリーン131を設けることで、原料を外部に漏出させることなく、除去したい揮発性気体をシリンダ12から外部へ除去できる。
【0032】
さらに、この脱ガスシリンダ130においては、脱気口(スクリーン131)から揮発性気体を効率的に脱気できるように、脱ガスシリンダ130に設けられた吸引口132が、真空ポンプ等の吸引装置と接続されていると好ましい。図2では、吸引口132を4か所有する場合を例示している。
【0033】
なお、この脱気部13は、上記実施の形態では1つを設けた場合を例に説明しているが、2つ以上設けてもよい。2つ以上設ける場合においても、その設置位置は、全てシリンダ12における上流側に設けられる。
【0034】
<樹脂複合材料の原料について>
次に、本実施の形態の樹脂複合材料の製造方法で使用する原料について説明する。ここで使用する原料は、熱可塑性樹脂と、吸水性フィラーを含む。
【0035】
熱可塑性樹脂は、熱により可塑化し成形が可能である樹脂であれば、どのような樹脂でも用いられる。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、等が挙げられ、中でも、混練物の温度を低く維持しやすい低密度ポリエチレンやポリプロピレンは成形性の観点から好ましい。
【0036】
また、本実施の形態においては、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を用いてもよい。熱可塑性を有する生分解性樹脂としては、これらに限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0037】
本実施の形態で用いる熱可塑性樹脂は、どのような形態でもよいが、粒状に成形されたものが扱い易さの点で好ましい。また、2種類以上の熱可塑性樹脂を同時に利用することもできる。さらに、吸水性フィラーとの混練時には、均一性及び密着性を高める目的で、熱可塑性樹脂でもある相溶化樹脂(相溶化材)を添加してもよい。
【0038】
相溶化樹脂としては、公知の相溶化樹脂が用いられ、例えば、これに限定されないが、マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1010、三洋化成製)、モディック(登録商標)P908(三菱化学製)等が挙げられる。相溶化樹脂は、吸水性フィラーと熱可塑性樹脂との均一混合や密着性を高める働きをする。相溶化樹脂は用いなくともよいが、用いる場合には、混練により得られる樹脂複合材料中に、最大で15質量%程度の量で用いられる。
【0039】
本実施の形態で用いる吸水性フィラーは、吸水性を有するフィラーであれば特に限定されずに用いることができる。吸水性フィラーとしては、天然材料や化学材料のフィラーが挙げられる。ここで、吸水性フィラーとは、フィラーの材料自体が水分を保持し得るものの他、フィラーの形態によって水分を保持できる場合(例えば、繊維状のフィラーであって、繊維間に水分を保持できる場合など)も含む。
【0040】
天然材料としては、植物材料、動物材料、鉱物材料等が挙げられ、植物材料または動物材料が好ましい。植物材料としては、綿(コットン)、カポック、アクンド等の種子毛;リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)、ジュート(黄麻)、ケナフ等のじん皮;マニラ麻、サイザル麻、アロエ等の葉脈;ヤシの実、バナナ等の種皮;などのセルロースが挙げられ、動物材料としては、アンゴラ、カシミヤ、ウール(羊毛)、ヤギ、ウサギ、モヘヤ、ラクダ、アルパカ等の動物の毛;家蚕絹、野蚕絹等の絹;ダウン、フェザー、羽毛等の羽毛;カニ、ホヤ等の殻;などが挙げられる。また、鉱物材料としては、石綿等の天然鉱物;などが挙げられる。
【0041】
化学材料としては、再生セルロース、半合成または合成材料、高性能材料、無機材料等が挙げられる。なかでも、化学材料としては、例えば、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、精製セルロース等の再生セルロース材料や、ポリエステル系材料、ポリアミド系材料、ポリビニルアルコール系材料等の合成材料が好ましい。
【0042】
吸水性フィラーは、一般に吸水性を有している材料が多く、カーボンニュートラルの観点から、天然材料が好ましい。また、吸水性フィラーの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、粒子状、繊維状等が挙げられる。なかでも、植物繊維(セルロース繊維)、動物繊維(たんぱく質繊維)が好ましい。
【0043】
本実施の形態で用いられる吸水性フィラーは、上記した熱可塑性樹脂との混練する際に、原料の投入のし易さから、塊状態とすることが好ましい。繊維状の材料の場合でも、これを集合したものとして塊状にすることが好ましい。このとき、そのサイズが50mm以下の原料が好ましい。また、サイズの大きい原料に対しては、適宜、粉砕することによって50mm以下のサイズに調整すればよく、1mm以上50mm以下のサイズの吸水性フィラーが好ましい。なお、本実施の形態において、吸水性フィラーのサイズは、篩い分け器の穴の大きさによって篩い分け選択できる。吸水性フィラーの粉砕は、例えば、ハンマーミル等を用いて粉砕処理すればよい。
【0044】
本実施の形態で用いる吸水性フィラーは成形物としてもよい。すなわち、吸水性フィラーの粉砕物状の出発原料をブリケットやペレット状に成形処理する。成形物とすることにより、取り扱いを容易とし、高密度化されるので輸送コストを削減できる。高密度化処理した後の成形物の嵩密度は500kg/m以上が好ましく、600kg/m以上がより好ましい。嵩密度は、JIS K 2151の「6.かさ密度試験方法」に従って測定できる。
【0045】
本実施の形態において、吸水性フィラーを成形物とするための装置は特に限定されていないが、例えば、ブリケッター(北川鉄工所製)、リングダイ式ペレタイザー(CPM製)、フラットダイ式ペレタイザー(Kahl製、ダルトン製)等が望ましい。
【0046】
本実施の形態において、吸水性フィラーを成形物とする際には、吸水性フィラーの水分率は3~50%が好ましく、10~30%がさらに好ましい。水分率が8%より少ないとブリケッターやペレタイザーの内部で閉塞が発生し、安定した成形物の製造ができない。水分率が50%を超えると成形が困難となり、粉体状またはペースト状で排出される。
【0047】
本実施の形態において、吸水性フィラーに対してバインダーを添加してもよい。バインダーは特に限定されていないが、例えば、澱粉やリグニンなどの有機高分子、アクリル酸アミドなどの無機高分子、ふすま(小麦粉製造時に発生する残渣)などの農業残渣を好適に使用できる。吸水性フィラーを効率よく有効利用する観点からは、バインダー添加部数は少ない方が望ましく、吸水性フィラー100質量部に対して50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。ただし、50質量部を超えて添加しても高密度化が不可能であるというわけではない。
【0048】
また、原料として、熱可塑性樹脂と吸水性フィラー以外の有機物および/または無機物を含む他の成分を含有させてもよい。他の成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ;クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイ力、二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機填料;カーボンブラック、グラファイト、ガラスフレーク等の有機填料;ベンガラ、アゾ顔料、フタロシアニン等の染料又は顔料;分散剤、滑剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、結晶化促進剤(造核剤)、発泡剤、架橋剤、抗菌剤等の改質用添加剤等が挙げられる。
【0049】
なお、本実施の形態において、吸水性フィラーを熱可塑性樹脂と混練する前に粉砕しておくと好ましい。粉砕物の平均粒径は500μm以下が好ましく、300μm以下がさらに好ましく、200μm以下が特に好ましい。吸水性フィラーの粉砕物の平均粒径が500μmより大きいと、樹脂との均一な混合が困難になり、粉砕した吸水性フィラーと樹脂との混練物を射出する装置出口で、混練物の樹脂体が細かく切れる場合がある。このような場合、押出により得られる成形体の冷却処理装置への搬出が困難となる、などの問題が生じ得る。なお、本明細書で「平均粒径」とは、レーザー光散乱法(レーザー回折法)により測定した体積50%平均粒子径(D50)であり、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン製、機器名:マスターサイザー2000)等で測定できる。
【0050】
吸水性フィラーを粉砕する時に用いる粉砕機は、例えば、有機物を粉砕可能な装置であればよく、例えば、これらに限定されないが、ボールミル、ロッドミル、ビーズミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、ハンマーミル、乳鉢、ペレットミル、VSIミル、ウィリーミル、ローラーミル、ジェットミル、マスコロイダーなどが挙げられる。また、粉砕機として、二軸混練押出機(TEX30等のTEXシリーズ、日本製鋼所製)などを用いてもよい。
【0051】
本実施の形態の樹脂複合材料は、以下のように、上記の吸水性フィラーを熱可塑性樹脂と加熱混練し、これを押出成形することにより、得られる。カーボンニュートラルを高いレベルで実現するためには、樹脂複合材料中の吸水性フィラーとして天然繊維を用い、その配合率は高い方が好ましいが、得られる樹脂複合材料、成形品の製造や強度を考慮すると、10質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。
【0052】
<樹脂複合材料の製造方法>
次に、本実施の形態の樹脂複合材料の製造方法について、上記説明した図1の樹脂複合材料の製造装置10を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0053】
まず、上記のように用意した樹脂複合材料の原料を原料供給部11から、シリンダ12へ供給する〔(1a)原料供給工程〕。原料である熱可塑性樹脂と吸水性フィラーは、それぞれ別々に、例えば、フィーダー等により原料供給部11のシューターに上部から投入され、投入された原料は混合されて、シリンダ12へ供給される。
【0054】
シリンダ12に供給された原料は、シリンダ12の外部に設けられたヒータや、原料がせん断される際に発生する熱などにより加熱され、熱可塑性樹脂は溶融可塑化される〔(1b)混練工程〕。溶融可塑化した熱可塑性樹脂と、吸水性フィラーは、シリンダ12内に設けられたスクリュにより混練され、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーの混練物が得られる。
【0055】
本実施の形態で、混練(加熱、溶融、混練等の処理)する際の温度は、通常100~300℃程度、好ましくは100~250℃程度、特に好ましくは100~200℃程度である。
【0056】
本実施の形態の樹脂複合材料の製造方法おいて、吸水性フィラー及び熱可塑性樹脂を加熱混練するには、例えば、一般的な押出機が用いられる。押出機としては二軸混練押出機が好ましく、二軸混練押出機は、吸水性フィラーを粉砕する工程、粉砕した吸水性フィラーと熱可塑性樹脂を加熱混練する工程のどちらでも使用できる。そのため、二軸混練押出機を連結させる、あるいは1つの装置でこれら2つの工程を連続的に行い、樹脂複合材料を連続的に製造することも可能である。
【0057】
次いで、得られた混練物は、スクリュによりシリンダ12内を通して、その下流側(ダイス14側)に搬送される〔(1c)搬送工程〕。この搬送時に、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーは十分に混練され、均一な混練物となる。ここで、十分に混練されていない場合、次の押出工程において、所望の形状に混練物を成形できなかったり、求める特性が得られなかったりすることがある。
【0058】
この(1c)搬送工程では、混練物が、円滑に流動するように、シリンダ12内の温度が保持される。すなわち、上記(1b)混練工程により加熱された温度を維持または混練物が流動可能な温度を維持すればよい。搬送工程で、シリンダ12の下流側に移動してきた混練物は、最終的にはダイス14から所望の形状になるように押し出され〔(1d)押出工程〕、さらに冷却により固化されて樹脂複合材料となる。
【0059】
ここで得られる樹脂複合材料の形状は、特に限定されないが、ストランド状やシート状等が挙げられる。ストランド状やシート状に成形された樹脂複合材料は、所望の大きさに切断され、製品成形の材料として用いられる。
【0060】
(揮発性気体の脱気について)
上記(1b)混練工程において、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーとを混練して得られる混練物から生じる揮発性気体を、シリンダ12の上流側に設けられた脱気部13から外部へ脱気する。ここで、脱気部13は、上記説明した通りシリンダ12の上流側に設けられる。すなわち、揮発性気体の脱気部13を設ける位置は、原料供給部11との接続部分から熱可塑性樹脂が溶融可塑化される位置の間であり、原料供給部11からスクリュ全長の70%以内が好ましく、原料供給部11からスクリュ全長の40%以内がより好ましく、シリンダ12の原料供給部11との接続部分(原料供給部11の直後)がより好ましい。
【0061】
また、脱気部13が吸引脱気可能な脱ガスシリンダで構成されていると、効率的に揮発性気体が除去でき好ましい。
【0062】
このように、脱気部13を設けておくことで、混練物から発生する揮発性気体を効率的に脱気できる。この脱気により、混練物中に揮発性気体が混入したまま搬送や押出成形されることを抑制できる。また、原料投入時に、原料投入量を多くした場合でも、安定して原料を供給できる。
【0063】
(検討の経緯)
本発明者らは、熱可塑性樹脂とカーボンニュートラルを達成し得る材料として木質系バイオマス等を用いた押出成形による樹脂複合材料の製造について検討していた。
【0064】
ところで、このようなカーボンニュートラルを達成し得る材料をフィラーとして用い、押出機により樹脂複合材料を製造しようとしたとき、フィラーの材料によっては、そのフィラーが原料供給部のシューターに付着したり、原料供給部の投入口で塊を形成したりして、原料供給量が安定しなくなる場合があった。原料供給量が安定しなくなると、樹脂複合材料の単位時間当たりの製造量(押出量)が減ってしまい、効率的な製造ができなくなる。
【0065】
本発明者らは、この原料供給量が安定しない原因を突き止めるため、使用しているフィラーから発生する気体の量が加熱温度との関係でどのように変化するかを熱重量分析により調べた。具体的には、フィラーとして使用しているセルロースパウダー(日本製紙製、KCフロックW50GK;平均粒径 45μm)について、熱重量分析装置(TG-DTA)を用い、20℃/minの昇温速度で加熱したときの質量変化(質量減少率)を調べた。
【0066】
この結果、上記フィラーは、加熱していくと100℃前後で5%程度の質量減少が生じることがわかった。この質量減少は、主として、フィラーに含まれる水分が気化して水蒸気となり、これが放出されることに起因すると考えられる。この点、上記(1b)工程においては、熱可塑性樹脂が溶融可塑化される温度にまで加熱されるため、熱可塑性樹脂と混練されるフィラーも加熱され、このときフィラー中に水分が含まれていると揮発性気体(水蒸気)が発生する。この発生した水蒸気が、原料供給部11に流入し、フィラーがシューターへ付着したり、原料供給部11の投入口で塊を形成したりする原因となり、原料の供給量の不安定化は、このような現象の発生により生じていると考えられる。
【0067】
そこで、本発明者らは、このような水蒸気をシリンダ12から発生してすぐに外部に放出することで、上記不具合を解消し、原料の供給量を安定化できることを見出した。そして、この原料の供給量の安定化により、混練物の押出量を増大させ、樹脂複合材料の製造効率を向上できることがわかった。また、上記経緯からカーボンニュートラルを考慮していたが、本実施形態においては、この点を外して、原料供給量の安定化、樹脂複合材料の製造効率の向上の点に注目すれば、水分を含有し得る吸水性フィラーであれば広く適用可能であることもわかった。
【0068】
なお、さらに高温に加熱していくと、吸水性フィラー自体が分解することで発生する気体(混練物に由来する気体成分)が生じるおそれもあると考えられ、その場合大きな質量減少が生じることが想定される。この点に対する対策については、以下に改めて述べる。
【0069】
(実施の形態2)
<樹脂複合材料の製造装置>
この実施の形態2は、原料である熱可塑性樹脂と吸水性フィラーの供給を、それぞれ異なる位置で行うようにした実施の形態であり、その他の構成は実施の形態1と同一とできる。
【0070】
例えば、図3Aおよび図3Bに示したように、この実施の形態2に係る樹脂複合材料の製造装置20は、樹脂供給部21と、シリンダ12と、吸水性フィラー供給部22と、揮発性気体の脱気部23と、ダイス14と、回転駆動機構15と、を有する。以下、実施の形態1とは異なる部分を中心に説明する。
【0071】
この樹脂複合材料の製造装置20は、樹脂供給部21と、吸水性フィラー供給部22が、それぞれ異なる位置に設けられており、まず樹脂供給部21から熱可塑性樹脂を供給し、熱可塑性樹脂を加熱して溶融可塑化して、吸水性フィラーを後から溶融可塑化した熱可塑性樹脂に供給するようになっている。
【0072】
ここで、樹脂供給部21は、実施の形態1の原料供給部11と同一の位置に設けられ、その構成も原料供給部11と同一である。この樹脂供給部21は、熱可塑性樹脂が原料として供給されるが、吸水性フィラーを供給しない点で、原料供給部11と異なる。
【0073】
吸水性フィラー供給部22は、シリンダ12において、樹脂供給部21よりも下流側に設けられ、先に供給された熱可塑性樹脂を、加熱して溶融可塑化し、溶融可塑化された熱可塑性樹脂中に吸水性フィラーを供給、混合できるようになっている。
【0074】
この吸水性フィラー供給部22は、シリンダ12内に吸水性フィラーを供給できればよく、例えば、シリンダ12の側面に設けられた開口部と接続されたスクリュ式の供給装置(サイドフィーダ)を使用できる。
【0075】
図3Aおよび図3Bに示したように、吸水性フィラー供給部22は、シリンダ12の途中に接続されて(図3Aにおいては、シリンダ12の奥側に(シリンダ12と同じ水平面で、シリンダ12の延在方向と直交する方向に)設けられている。なお、シリンダ12は実施の形態1と基本的に同一であるが、脱気部13が設けられていない点で異なる。
【0076】
この吸水性フィラー供給部22は、スクリュ式のフィーダ(例えば、サイドフィーダ)とできる。このとき、吸水性フィラー供給部22は、スクリュを有するシリンダ22aを、シリンダ12の側面に接続して、シリンダ12内を搬送されている溶融可塑化された樹脂に、途中から吸水性フィラーを添加できるようにすればよい。このシリンダ22aは、吸水性フィラーを投入するシューター22bを有し、このシューター22bから投入された吸水性フィラーは、回転駆動機構22cと接続されたスクリュによりシリンダ22a内を搬送される。吸水性フィラーは、シリンダ12へ向かって搬送されていき、シリンダ12とシリンダ22aとの接続部分で、シリンダ12内の溶融可塑化された熱可塑性樹脂に添加、混合される。
【0077】
そして、この実施の形態では、揮発性気体の脱気部23が、シリンダ12と、吸水性フィラー供給部22との間に設けられ、主として、溶融可塑化された熱可塑性樹脂に吸水性フィラーを添加した際に生じる揮発性気体を、シリンダ12から外部へ除去できる。
【0078】
さらに、揮発性気体を効率的に除去するために、この脱気部23として、減圧吸引可能な脱気装置を用いてもよい。このような脱気装置を設けることで、シリンダ12内で生じた揮発性気体をより効率的に除去できる。この減圧吸引可能な脱気装置は、実施の形態1で説明した脱気装置と同じものを使用できる。
<樹脂複合材料の製造方法>
次に、本実施の形態の樹脂複合材料の製造方法について、上記説明した図3Aおよび図3Bの樹脂複合材料の製造装置20を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0079】
まず、上記のように用意した樹脂複合材料の原料を樹脂供給部21から、シリンダ12へ供給する〔(2a)樹脂供給工程〕。原料である熱可塑性樹脂は、例えば、フィーダー等により樹脂供給部21のシューター21aに上部から投入され、投入された原料はシリンダ12へ供給される。
【0080】
シリンダ12に供給された熱可塑性樹脂は、シリンダ12の外部に設けられたヒータや原料がせん断される際に発生する熱等により加熱され、溶融可塑化される〔(2b)溶融可塑化工程〕。
【0081】
次に、吸水性フィラーが、吸水性フィラー供給部22からシリンダ12内に供給され、溶融可塑化された樹脂に対して吸水性フィラーが添加され、シリンダ12内に設けられたスクリュにより混練され、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーの混練物が得られる〔(2c)混練工程〕。
【0082】
得られた混練物は、スクリュにより、シリンダ12内を通して、その下流側(ダイス14側)に搬送される〔(2d)搬送工程〕。この搬送時に、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーは十分に混練され、均一な混合状態とされる。ここで、十分に混練されていない場合、次の押出工程において、求める特性を有する成形体が得られない。
【0083】
搬送工程で、シリンダ12の下流側に移動してきた混練物は、最終的にはダイス14から所望の形状になるように押し出され〔(2e)押出工程〕、さらに冷却することで固化されて樹脂複合材料となる。
【0084】
この実施の形態2は、熱可塑性樹脂と吸水性フィラーの供給位置が異なる以外は、実施の形態1と同様の構成を有する。すなわち、この実施の形態2では、まず熱可塑性樹脂がシリンダ12に供給され、これが加熱されて溶融可塑化し、その後に吸水性フィラーが添加され、熱可塑性樹脂と混練される。
【0085】
そして、このように原料の供給位置を分けたことにより、実施の形態2における脱気部23を設ける位置を、吸水性フィラー供給部22のシリンダ12との接続部分に変更している。
【0086】
この実施の形態2では、溶融可塑化された熱可塑性樹脂に、吸水性フィラーが混合されると、混合されてすぐに吸水性フィラーから揮発性気体が発生する。その際、脱気部23が、その混合位置の上流に設けられているため、発生した揮発性気体は直ちにシリンダ12から外部に除去できる。これにより、水蒸気の発生に起因する不具合を解消できる。
【0087】
すなわち、実施の形態1と同様に、原料の供給量の安定化が達成できる。そして、これにより、混練物の押出量を増大させ、樹脂複合材料の製造効率を向上できる。
【0088】
(実施の形態3)
<樹脂複合材料の製造装置>
この実施の形態3は、シリンダ12の混練物の搬送時に発生する混練物に由来する気体成分をシリンダ12から外部に放出できる脱気部13とは異なる脱気部を有する実施の形態であり、その他の構成は実施の形態1と同一とできる。
【0089】
例えば、図4に示したように、この実施の形態3に係る樹脂複合材料の製造装置30は、原料供給部11と、シリンダ12と、脱気部13と、ダイス14と、回転駆動機構15と、脱気部31と、を有する。以下、実施の形態1とは異なる部分を中心に説明する。
【0090】
この実施の形態3に係る樹脂複合材料の製造装置30は、実施の形態1の樹脂複合材料の製造装置10の全ての構成を備え、それに加えて、シリンダ12に接続されている脱気部31を有している。
【0091】
この脱気部31は、主として、混練物に由来する気体成分をシリンダ12から外部に除去できる開口部を有していればよく、図4では、脱気部31として、強制的に吸引脱気する装置を備えた構成を例示している。この吸引脱気装置は、実施の形態2の吸水性フィラー供給部22と同様に、シリンダ12の途中に接続されて(図4においては、シリンダ12の奥側に(シリンダ12と同じ水平面で、シリンダ12の延在方向と直交する方向に)設けられている。
【0092】
また、図5には、吸引脱気装置の構成の一例を示した。この図5は、シリンダ12と吸引脱気装置との接続構造を、ダイス14側から見た場合の模式図である。この吸引脱気装置は、シリンダ310と、その内部に設けられた2本のスクリュS2a,S2bと、シリンダ310内の空間と連通して設けられ、減圧状態とできるベント部320と、スクリュS2a,S2bと接続された回転駆動機構330と、を有する。ベント部320は、例えば、真空ポンプと接続することで減圧状態とでき、スクリュS2a,S2bと回転駆動機構330との間には、軸シール部340が設けられている。また、吸引脱気装置のシリンダ310近傍の構成は、シリンダ12の構成と類似しているが、スクリュ径やシリンダ径は、シリンダ12よりもはるかに大きく設計できる。また、吸引脱気装置のスクリュは、特に2本に限定されるものではない。
【0093】
脱気部31として、このような吸引脱気装置を設けると、回転駆動機構330によりスクリュS2a、S2bを回転させることで、シリンダ12内を搬送される混練物が吸引脱気装置内に逆流してくることを防ぐ(混練物をシリンダ12方向に押し込む)とともに、混練物に由来する気体成分をシリンダ12外へ排出できる。排出された混練物に由来する気体成分は、シリンダ310からベント部320を経由して、外部に除去される(図5の破線矢印)。
【0094】
ここで、脱気部31として、吸引脱気装置に代えて、ベント装置を設けることもできる。ベント装置としては真空ベント装置が好ましく、真空ベント装置は、シリンダ12に設けられたベント孔から真空ポンプにより直接混練物に由来する気体成分を除去する構成の装置である。
【0095】
図4の樹脂複合材料の製造装置30では、脱気部31を、シリンダ12の中流部、下流部の2箇所に設けた場合を例示しているが、シリンダ12内を搬送される混練物について、それに由来する気体成分を効果的に除去できれば、設ける数は1つでも、3つ以上でもよい。また、設ける場所も、用いる製造装置、製造条件等により適宜変更できる。
【0096】
本実施の形態で想定している「混練物に由来する気体成分」とは、主として、混練物が比較的長く加熱されたり、加熱温度が高温になったりすることにより発生する気体である。例えば、吸水性フィラーを原料として含む本実施の形態では、吸水性フィラーが、焙焼温度以上の温度に加熱されることで分解されて発生する気体が挙げられ、もともと吸水性フィラー中に含まれており、加熱により気化して発生した揮発性気体は含まない。
<樹脂複合材料の製造方法>
次に、本実施の形態の樹脂複合材料の製造方法について、上記説明した図4の樹脂複合材料の製造装置30を用いる場合を例に、各工程を説明する。
【0097】
この樹脂複合材料の製造装置30を用いた樹脂複合材料の製造方法は、実施の形態1で説明した操作と同一の工程((1a)工程~(1d)工程)により行われる。そして、本実施の形態では、(1c)工程(搬送工程)において、混練物から発生した混練物由来の気体を脱気部31を通じてシリンダ12から外部へ除去できる。これにより、シリンダ12内で、混練物由来の気体が発生した場合でも、混練物中にその気体が混入することを抑制し、混練物を安定して搬送できる。したがって、ダイス14から押出して得られる樹脂複合材料は、その求められる品質を維持でき、製造効率を向上できる。
【0098】
上記実施の形態3の説明は、実施の形態1に対して、脱気部31を追加して設けた場合を説明したが、実施の形態2においても同様に適用できる。
【0099】
(変形例)
上記実施の形態で説明したダイス14は、既に説明したように、押出機として用いられる公知のダイスであれば特に限定されずに使用できる。
【0100】
本明細書で記載の樹脂複合材料は、吸水性フィラーを含有する混練物を押出すため、できるだけ吸水性フィラーが分解するような温度にまで上昇しないように搬送し、押出すことが好ましい。混練物は、ダイスの内部(滞留部)においても、そのかかるせん断力により温度が上昇する場合があるため、可能な限りダイス孔からの混練物の押出しを容易にすることが好ましい。また、このとき滞留部を小さくすることも好ましい。
【0101】
例えば、図6は、ダイス14の一例として、ダイス孔14a(押出孔)とそれに接続している滞留部14bを拡大して示した図である。このとき、ダイス孔14aにおける長さをL、直径をD、とすると、混練物の押出を容易にし、混練物の温度上昇を抑制するには、上記のうちダイス孔14aのパラメータである直径Dに対する長さLの比(L/D)は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。この関係は、数値が小さいほど、滞留部内部の圧力上昇を過度に引き起こす可能性が低く、滞留部からの押出を容易にできるため好ましい。
【0102】
また、ダイス14の滞留部内において、その圧力や混練物の温度を確認しながら、圧力や温度が過度に高くならないように制御することも好ましい。このとき、ダイス14に、圧力計や温度計等を設け、所定の圧力や温度を設定しておき、その設定値を超えるか否かをモニターする。そして、設定値を超えた場合には、設定値内に収まるように制御する制御装置を設けることが好ましい。例えば、これら圧力や温度が所定の値を超えた場合には、シリンダ12の加熱温度を低くしたり、シリンダ12のスクリュの回転速度を遅くしたり、滞留部内の気体を外部に放出したり、などのフィードバック制御をすることで、圧力や温度を調整できる。
【0103】
なお、実施の形態1で説明した吸水性フィラーの分解が生じてしまうと、ダイス14の滞留部における圧力の上昇、樹脂複合材料の製造効率の低下や品質の低下が生じるおそれがある。そのため、そのような分解を抑制することが好ましく、混練物(吸水性フィラー)の温度を、その分解温度を超えないように維持して、樹脂複合材料を製造することが好ましい。このとき、混練物の温度が上昇しやすいのが、ダイス14で押出成形を行う部分であり、混練物の温度が分解温度を超えないように制御するために、ダイス14に温度計を取り付ければよい。
【0104】
上記のように、いくつかの実施形態を説明したが、本実施の形態で得られる樹脂複合材料は、種々の目的に合わせた成形が可能であり、例えば、プラスチック製品の代替品、即ちトレー等、自動車部品、自動車のダッシュボード等の内装、飛行機の荷物入れ、輸送用機器の構造部材、家電製品の筐体(ハウジング)、カード、トナー容器等の各種容器、建築材、育苗ポット、農業用シート、筆記具、木製品の代替品、家庭用器具、ストロー、コップ、玩具、スポーツ用品、港湾用部材、建築部材、発電機用部材、工具、漁具、包装材料、3Dプリンター造形物、パレット等の製造に幅広く適用可能である。これらの製品は不要となった場合、廃棄処分されることとなるが、例えば、焼却処理され二酸化炭素を排出することになっても、配合された吸水性フィラーが天然材料からなる場合、その廃棄分は、大気中の二酸化炭素量を増加させていないものとして取り扱うことができる。
【0105】
(実施例)
以下に、本実施の形態の樹脂複合材料の製造装置および製造方法を、実施例および比較例を用いて詳細に説明する。
【0106】
<吸水性フィラー>
まず、原料となる吸水性フィラーとして、セルロースパウダー(日本製紙製、KCフロックW50GK;平均粒径 45μm)を用意した。
【0107】
(実施例1)
図4に示した樹脂複合材料の製造装置30を用いて、上記吸水性フィラーと、樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名:BC10HRF、メルトフローレート(MI):100g/10min)とを原料とし、これら原料を混合しながら、連続的に加熱混練し、樹脂複合材料を製造した。
【0108】
このとき樹脂複合材料を、表1に示したように複数の条件で行い、そのときのストランド状に押出成形される樹脂複合材料の製造状況(ストランド状況)を次の基準で評価し、その結果を併せて表1に示した(実施例1-1~1-3)。
[評価基準]
〇:樹脂複合材料がストランド状に製造でき、ストランドカッターでペレットの作製ができた、
△:樹脂複合材料がストランド状に製造できたが、ストランドカッターでペレットの作製ができなかった、
×:樹脂複合材料がストランド状に製造できなかった。
【0109】
【表1】
【0110】
なお、表中の「混練物温度」は、ダイス14に設けた温度計により、押出直前の混練物の温度を測定した値である。また、樹脂複合材料の製造装置30としては、二軸混練押出機(日本製鋼所社製、商品名:TEX30)に、脱気部13として図2に示した脱ガスシリンダ130を、ダイス14としてダイス孔14aのL/Dが2.0のダイスを用い、脱気部31として図5に示した吸引脱気装置を組み込んだ装置を用いた。
【0111】
(比較例1)
図7に示した樹脂複合材料の製造装置50を用いて、上記吸水性フィラーと、樹脂としてポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名:J106G、メルトフローレート(MI):15g/10min)とを原料とし、これら原料を混合しながら、連続的に加熱混練し、樹脂複合材料を製造した。
【0112】
このとき樹脂複合材料を、表2に示したように複数の条件で行い、そのときのストランド状に押出成形される樹脂複合材料の製造状況(ストランド状況)を評価し、その結果を併せて表2に示した(比較例1-1~1-3)。
【0113】
なお、ここで用いた樹脂複合材料の製造装置50は、樹脂供給部21と、吸水性フィラー供給部22(図3Aおよび図3Bで示したサイドフィードする供給装置)と、シリンダ12と、ダイス14と、回転駆動機構15と、脱気口51と、を有する。実施の形態2で説明した樹脂複合材料の製造装置と同様の構成であるが、脱気部(図3Aおよび図3Bの脱気部23に相当する脱気部)を有しておらず、ダイス14としてダイス孔14aのL/Dが4.5のダイスを用い、シリンダ12の下流部に、脱気口51を有している点で構成が異なるが、それ以外は同一の構成を有する製造装置である。なお、脱気口51は真空ポンプに接続されている。
【0114】
【表2】
【0115】
樹脂複合材料の製造状況(ストランド状況)の評価基準は上記と同様である。なお、比較例1-3では、フィードネックが発生し、原料供給ができなかったため、混練物温度、ストランド状況の評価を「-」としている。
【0116】
以上の結果から、実施例1においては、吸水性フィラーが原料供給部のシューターに付着したり、押出装置の投入口でプラグを形成したりすることなく、原料供給量が安定していた。また、上記不具合がなくなったため、原料供給量を増加させても、安定して押出成形ができ、樹脂複合材料の効率的な製造も可能であった。得られるストランド状況も良好であった。
【0117】
一方、比較例1においては、吸水性フィラーが原料供給部のシューターに付着したり、原料供給部の投入口で塊を形成したりしたため、原料供給量が不安定で、安定した押出成形ができなかった。そのため、原料供給量を増加させることは検討すらできなかった。また、このような原料供給量の不安定化により、ストランド状況も良くなかった。
【符号の説明】
【0118】
10,20,30 樹脂複合材料の製造装置
11 原料供給部
11a,21a,22b シューター
12 シリンダ
13,23,31 脱気部
14 ダイス
15 回転駆動機構
21 樹脂供給部
22 吸水性フィラー供給部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7