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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20240924BHJP
   G01N 3/56 20060101ALI20240924BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20240924BHJP
   G01N 33/2045 20190101ALI20240924BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N3/56 M
G01N17/00
G01N33/2045 100
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021097064
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022188836
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 貴之
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-532681(JP,A)
【文献】特開2019-184364(JP,A)
【文献】特開平02-011783(JP,A)
【文献】特開2016-038355(JP,A)
【文献】特開2006-322808(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/404
G01N 27/414-27/416
G01N 17/00-19/10
G01N 33/00-33/46
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む試験装置:
容器;
前記容器内の溶液に浸漬された試料、第1の金属体および第2の金属体;
前記試料に押し当てられる治具;
前記試料と前記第1の金属体との間の電流を測定する電流測定部;および
前記第1の金属体と前記第2の金属体との間の電圧を測定する電圧測定部、
ここで、前記試料と前記第1の金属体と前記第2の金属体とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有し、
前記試料に対して相対的に回転する前記治具を前記試料の表面に押し当てながら、前記試料と前記第1の金属体との間の電流を前記電流測定部により測定し、かつ、前記第1の金属体と前記第2の金属体との間の電圧を前記電圧測定部により測定する。
【請求項2】
請求項1記載の試験装置において、
前記試料は、摩耗と腐食に対する耐性を評価すべき金属材料からなる、試験装置。
【請求項3】
請求項1記載の試験装置において、
前記試料は、樹脂製品の製造装置における樹脂の混練に寄与する構成部材に使用する金属材料からなる、試験装置。
【請求項4】
請求項1記載の試験装置において、
前記試料は、樹脂製品の製造装置におけるスクリュまたはシリンダに使用する金属材料からなる、試験装置。
【請求項5】
請求項1記載の試験装置において、
前記治具が回転することにより、前記試料に対して前記治具が相対的に回転する、試験装置。
【請求項6】
請求項1記載の試験装置において、
前記容器が回転することにより前記容器と一緒に前記試料が回転することで、前記試料に対して前記治具が相対的に回転する、試験装置。
【請求項7】
請求項1記載の試験装置において、
前記試料に対して相対的に回転する前記治具が前記試料の表面に押し当てられることにより、前記試料の表面に摩耗痕が形成される、試験装置。
【請求項8】
請求項1記載の試験装置において、
前記溶液は、酸性またはアルカリ性の溶液である、試験装置。
【請求項9】
以下の工程を含む、試験方法:
(a)容器と、前記容器内の溶液に浸漬された試料、第1の金属体および第2の金属体と、前記試料に押し当てられるための治具と、電流測定部と、電圧測定部と、を有する試験装置を用意する工程;
(b)前記試料に対して相対的に回転する前記治具を前記試料の表面に押し当てながら、前記試料と前記第1の金属体との間の電流を前記電流測定部により測定し、かつ、前記第1の金属体と前記第2の金属体との間の電圧を前記電圧測定部により測定する工程、
ここで、前記試料と前記第1の金属体と前記第2の金属体とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有する。
【請求項10】
請求項9記載の試験方法において、
前記試料は、摩耗と腐食に対する耐性を評価すべき金属材料からなる、試験方法。
【請求項11】
請求項9記載の試験方法において、
前記試料は、樹脂製品の製造装置における樹脂の混練に寄与する構成部材に使用する金属材料からなる、試験方法。
【請求項12】
請求項9記載の試験方法において、
前記試料は、樹脂製品の製造装置におけるスクリュまたはシリンダに使用する金属材料からなる、試験方法。
【請求項13】
請求項9記載の試験方法において、
前記(b)工程では、前記治具が回転することにより、前記試料に対して前記治具が相対的に回転する、試験方法。
【請求項14】
請求項9記載の試験方法において、
前記(b)工程では、前記容器が回転することにより前記容器と一緒に前記試料が回転することで、前記試料に対して前記治具が相対的に回転する、試験方法。
【請求項15】
請求項9記載の試験方法において、
前記(b)工程では、前記試料に対して相対的に回転する前記治具が前記試料の表面に押し当てられることにより、前記試料の表面に摩耗痕が形成される、試験方法。
【請求項16】
請求項9記載の試験方法において、
前記溶液は、酸性溶液またはアルカリ溶液である、試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置および試験方法に関し、例えば、金属材料の摩耗と腐食に対する耐性を評価するための試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-322808号公報(特許文献1)には、腐食摩耗試験方法及び試験装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-322808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製品の製造装置においては、製造装置の動作に伴い、製造装置の構成部品に摩耗と腐食の両方が発生する虞がある。例えば、押出装置は、シリンダとシリンダに内蔵されたスクリュとを有しており、シリンダ内に樹脂材料などを供給し、回転するスクリュにより混練する。この際、回転するスクリュがシリンダの内壁と擦りあわされることにより、スクリュやシリンダが摩耗する虞がある。また、混練する樹脂材料中に含まれる腐食成分により、スクリュやシリンダが腐食する虞もある。このため、摩耗と腐食に対する耐性が高いスクリュやシリンダを開発するためには、スクリュまたはシリンダ用の金属材料に対して、摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価できるようにすることが求められる。従って、金属材料の摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価できる試験装置および試験方法を提供することが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、試験装置は、容器と、前記容器内の溶液に浸漬された試料、第1の金属体および第2の金属体と、治具と、電流測定部と、電圧測定部と、を含む。前記試料と前記第1の金属体と前記第2の金属体とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有している。前記試料に対して相対的に回転する前記治具を前記試料の表面に押し当てながら、前記試料と前記第1の金属体との間の電流を前記電流測定部により測定し、かつ、前記第1の金属体と前記第2の金属体との間の電圧を前記電圧測定部により測定する。
【0007】
一実施の形態によれば、試験方法は、(a)容器と、前記容器内の溶液に浸漬された試料、第1の金属体および第2の金属体と、を有する試験装置を用意する工程と、(b)前記試料に対して相対的に回転する治具を前記試料の表面に押し当てながら、前記試料と前記第1の金属体との間の電流を電流測定部により測定し、かつ、前記第1の金属体と前記第2の金属体との間の電圧を電圧測定部により測定する工程と、を含む。前記試料と前記第1の金属体と前記第2の金属体とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、試料の摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】押出装置の一例を示す模式図である。
図2】一実施の形態の試験装置を示す説明図である。
図3】一実施の形態の試験装置の容器内に配置された試料と金属体とを模式的に示す説明図である。
図4】一実施の形態の試験装置の容器内に配置された試料と金属体とを模式的に示す説明図である。
図5】電流計の測定値と電圧計の測定値の一例を示すグラフである。
図6】他の実施の形態の試験装置を示す説明図である。
図7図2の試験装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
(実施の形態1)
<検討の経緯>
樹脂製品の製造装置においては、製造装置の動作に伴い、製造装置の構成部材(金属部材)に摩耗と腐食の両方が発生する虞がある。これは、樹脂製品を製造するには、樹脂材料の混練が必要であるが、その混練のための製造装置の動作に伴い、樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)に摩擦が生じて摩耗するためである。また、混練する樹脂材料中に含まれる腐食成分、例えば樹脂材料に添加される難燃剤から発生するガス成分に起因して、樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)が腐食するためである。つまり、樹脂製品の製造装置における樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)は、摩耗と腐食の両方が発生する虞がある。
【0012】
図1は、押出装置(押出機)21の一例を示す模式図(側面図)である。なお、図1においては、理解を簡単にするために、シリンダ22に内蔵されたスクリュ23を透視して示してある。
【0013】
図1に示されるように、樹脂製品の製造装置として代表的な押出装置21は、シリンダ22とシリンダ22に内蔵されたスクリュ23とを有している。ホッパ(樹脂投入部)24からシリンダ22内に樹脂材料などを供給し、回転駆動機構25によって回転するスクリュ23により、その樹脂材料などを混練する。シリンダ22内において、回転するスクリュ23によって混練されて搬送された樹脂材料は、シリンダ22の先端に取り付けられたダイ(ダイス、金型)26から押し出される。
【0014】
スクリュ23は、樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)である。押出装置21の動作時において、回転するスクリュ23がシリンダ22の内壁と擦りあわされることにより、スクリュ23やシリンダ22の摩耗が発生し得る。また、混練する樹脂材料中に含まれる腐食成分、例えば樹脂材料に添加される難燃剤から発生するガス成分に起因して、スクリュ23やシリンダ22の腐食が発生し得る。
【0015】
本発明者は、樹脂製品の製造装置(例えば押出装置)の開発に携わっているが、そのような製造装置における樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)については、摩耗と腐食に対する耐性を高めることが求められる。このため、樹脂の混練に寄与する構成部材(金属部材)に用いる金属材料について、摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価できるようにすることが求められる。例えば、摩耗と腐食に対する耐性が高いスクリュやシリンダを開発するためには、スクリュまたはシリンダ用の金属材料に対して、摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価できるようにすることが求められる。従って、金属材料の摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価できる試験装置および試験方法を提供することが望まれる。
【0016】
そこで、本発明者は、金属材料の摩耗と腐食に対する耐性を評価するための試験装置と試験方法(評価方法)について検討を行った。
【0017】
<摩耗と腐食に対する耐性を評価するための試験装置について>
図2は、本実施の形態の試験装置(評価装置)1を示す説明図である。図3および図4は、試験装置1の容器2内に配置された試料12と金属体13,14とを模式的に示す説明図である。なお、図3には、回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12の表面に押し当てられる(擦りつけられる)前の段階が示されているため、図3では、試料12の表面に摩耗痕15は形成されていない。一方、図4には、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12の表面に押し当てられる(擦りつけられる)ことにより、試料12の表面に摩耗痕15が形成された状態が示されている。
【0018】
図2に示される本実施の形態の試験装置1は、容器2と、摩擦用の治具3と、を備えている。容器2内には、溶液(腐食性の溶液)11が貯えられており、容器2内に貯えられた溶液11中に、金属材料からなる試料(金属試料)12と金属体13,14とが浸漬されている(図3参照)。容器2内に配置された試料12および金属体13,14は、容器2内で不必要に移動しないように、容器2に対して固定することができる。なお、金属体13,14は図3および図4に示されているが、図2では、簡略化のために、金属体13,14の図示は省略してある。
【0019】
試料12は、摩耗と腐食に対する耐性を評価すべき金属材料からなる試験片である。容器2内に貯えられた溶液11は、金属(金属材料)を腐食させる作用を有する溶液(腐食性の溶液)であり、例えば、硫酸水溶液などの酸性溶液(酸性水溶液)を好適に用いることができるが、アルカリ溶液(アルカリ性水溶液)を用いる場合もあり得る。
【0020】
治具3は、モータ4により回転可能に構成されている。治具3は、モータ4が動作することによって、軸方向を中心に回転する。治具3の先端には、硬質の圧子3aが取り付けられている(固定されている)。圧子3aは、試料12よりも高い硬度を有する材料からなることが好ましい。圧子3aとしては、例えば、アルミナボールなどを用いることができる。また、治具3にトルクセンサ6を取り付けることもできる。圧子3aは、治具3の一部(先端部)とみなすこともできる。
【0021】
容器2は、レバー7の一方の端部に支持されている。レバー7の他方の端部には、おもり8を取り付けることができる。レバー7は、支点(軸)9を中心に回転可能であり、いわゆる「てこ」として作用することができる。レバー7の他方の端部に取り付けられたおもり8によって、レバー7の他方の端部(おもり8を取り付けた側の端部)が下がり、レバー7の一方の端部(容器2を支持する側の端部)が上がることにより、容器2が上方に持ち上げられる力が発生し、容器2内に配置された試料12が、回転する治具3の先端部(圧子3a)に押し付けられる力が発生する。おもり8の重さを調整することにより、試料12が、回転する治具3の先端部(圧子3a)に押し付けられる力を制御することができ、言い換えると、回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12に押し付けられる力(荷重)を制御することができる。
【0022】
なお、本実施の形態の場合は、容器2と一緒に試料12が上方に移動して、回転する治具3の先端部(圧子3a)に試料12が押し当てられる(擦りつけられる)が、これは、試料12と治具3との相対的な関係で考えると、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12に押し当てられる(擦りつけられる)ことと等価である。一方、後述する実施の形態2の場合は、容器2と一緒に回転する試料12に治具3の先端部(圧子3a)が押し当てられる(擦りつけられる)が、これも、試料12と治具3との相対的な関係で考えると、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12に押し当てられる(擦りつけられる)ことと等価である。従って、本実施の形態の場合も、後述する実施の形態2の場合も、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が容器2内(すなわち溶液11中)の試料12に押し当てられる(擦りつけられる)とみなすことができる。
【0023】
試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が容器2内(溶液11中)の試料12の表面に押し当てられる(擦りつけられる)ことにより、試料12の表面が、治具3の先端部(圧子3a)による摩擦によって摩耗して、試料12の表面に摩耗痕15(図14参照)が発生する。摩耗痕15は、試料12の表面における治具3の先端部(圧子3a)の接触箇所に発生する。摩耗痕15は、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦によって試料12が機械的に研磨される(削られる)ことにより生じた窪みである。
【0024】
試料12と金属体13と金属体14とは、それぞれ、金属材料からなる。特徴的なのは、試料12と金属体13と金属体14とが、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有していることである。一例を挙げると、例えば、試料12と金属体13と金属体14とは、いずれも同種のステンレスからなり、かつ、試料12と金属体13と金属体14との各表面積は、互いに同じである。
【0025】
試料12と金属体13と金属体14とは、共通の腐食性の溶液11中に浸漬されており、具体的には、容器2に入っている腐食性の溶液11中に浸漬されている。そして、試料12と金属体13との間に流れる電流を電流計(電流測定装置、電流測定部、直流電流計)16によって測定可能となっている。また、金属体13と金属体14との間の電圧(電位差)を電圧計(電圧測定装置、電圧測定部、直流電圧計)17によって測定可能となっている。このため、試験装置1は、電流測定部としての電流計16と、電圧測定部としての電圧計17も備えている。電流計16および電圧計17は、容器2の外部に配置することができる。他の形態として、電圧計17によって試料12と金属体14との間の電圧(電位差)を測定する場合もあり得る。なお、電流計16および電圧計17は図3に示されているが、図2では、簡略化のために、電流計16および電圧計17の図示は省略してある。
【0026】
試料12と金属体13と金属体14とのうち、回転する治具3の先端部(圧子3a)が押し当てられる(擦りつけられる)のは、試料12である。金属体13と金属体14には、回転する治具3の先端部(圧子3a)は押し当てられない(擦りつけられない)。このため、摩耗痕15が発生するのは、試料12であり、金属体13,14には摩耗痕15は発生しない。
【0027】
<摩耗と腐食に対する耐性を評価するための試験方法について>
次に、本実施の形態の試験装置1を用いて、金属材料からなる試料12の摩耗と腐食に対する耐性を評価(試験)する手法について、説明する。
【0028】
摩耗と腐食に対する耐性を評価したい金属材料を用いて、試料12と金属体13,14とを作製(準備)する。例えば、樹脂製品の製造装置(例えば押出装置)における樹脂の混練に寄与する構成部材(スクリュまたはシリンダなど)に用いる金属材料の候補を選定し、その候補となる金属材料を用いて、試料12および金属体13,14を作製(準備)する。試料12と金属体13,14は、いずれも金属片(板状部材)とすることができるが、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有する。表面積を同じにするには、試料12と金属体13と金属体14の形状を互いに同じにすればよい。例えば、同じ平面寸法(平面積)を有する板状部材として、試料12および金属体13,14を作製することができる。なお、この段階では、図3のように、試料12に摩耗痕15は形成されていない。
【0029】
それから、試験装置1の容器2内に、試料12と金属体13,14とを配置し、腐食性の溶液11を入れる。これにより、図3に示されるように、容器2内の溶液11中に、試料12および金属体13,14が浸漬された状態になる。原理的には、いわゆる3電極法が用いられ、試料12は作用電極として機能し、金属体13はカウンター電極(対極)として機能し、金属体14は参照電極として機能する。
【0030】
それから、図2および図4に示されるように、モータ4によって治具3が回転し、おもり8の荷重により容器2が上昇して容器2内(溶液11中)の試料12が治具3の先端部(圧子3a)に押し当てられる。これにより、試料12に対して相対的に回転する治具3の先端部(圧子3a)が容器2内(溶液11中)の試料12に押し当てられた(擦りつけられた)状態となり、試料12の表面が、治具3の先端部(圧子3a)による摩擦によって摩耗して、図4のように試料12の表面に摩耗痕15が発生する。
【0031】
電流計16は、試料12と金属体13との間に流れる電流を測定(モニタ)し、電圧計17は、金属体13と金属体14との間の電圧(電位差)を測定(モニタ)する。電流計16および電圧計17によるモニタは、回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦が試料12に生じる前から開始し、回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦が試料12に生じている間も継続される。
【0032】
回転する治具3による摩擦が試料12に生じる前の段階では、試料12と金属体13と金属体14とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有していることから、電流計16の測定値(試料12と金属体13との間に流れる電流)と、電圧計17の測定値(金属体13と金属体14との間の電圧)とは、基本的にゼロとなるか、非常に小さな値になる。これは、試料12と金属体13と金属体14とで、腐食性の溶液11中に溶け出す金属イオンの量がほぼ同じになるからである。
【0033】
しかしながら、回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦が試料12に生じた後は、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わる(摩耗痕15が発生する)ことにより、試料12から腐食性の溶液11中に溶け出す金属イオンの量が、金属体13,14のそれぞれから腐食性の溶液11中に溶け出す金属イオンの量と相違した状態になる。これにより、試料12と金属体13との間に電流が流れ、また、金属体13と金属体14との間に電圧(電位差)が発生することになるため、この電流と電圧とをそれぞれ電流計16と電圧計17とによって測定(モニタ)することができる。
【0034】
例えば、治具3による摩擦の影響によって試料12に摩耗痕15が発生し、試料12から溶液11中に金属イオンが溶けやすくなり、試料12から腐食性の溶液11中に溶け出す金属イオンの量が、金属体13,14のそれぞれから腐食性の溶液11中に溶け出す金属イオンの量よりも大きくなった場合を考える。この場合は、試料12を構成する金属が溶液11中に溶けて金属イオンとなったことにより生じた電子(図4に示されるeに対応)が、試料12から金属体13に移動することに起因して、金属体13から試料12に電流(図4に示される電流iに対応)が流れ、この電流が電流計16により測定(モニタ)される。また、試料12を構成する金属が溶液11中に溶けて金属イオンとなったことにより生じた電子が、試料12から金属体13に移動することに起因して、金属体13の電位が金属体14の電位よりも低くなり、この電位差が電圧計17により測定(モニタ)される。
【0035】
このため、回転する治具3による摩擦が試料12に生じた後の段階では、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わる(摩耗痕15が発生する)ことにより、試料12と金属体13との間に電流が流れ、また、金属体13と金属体14との間に電圧(電位差)が発生することになる。このときの電流計16の測定値(試料12と金属体13との間に流れる電流)と、電圧計17の測定値(金属体13と金属体14との間の電圧)とは、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことのみに起因して生じたものとなる。このため、電流計16の測定値(試料12と金属体13との間に流れる電流)と、電圧計17の測定値(金属体13と金属体14との間の電圧)とから、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことにより、試料12の腐食性がどのように変化したかを判別することができる。例えば、電流計16の測定値や電圧計17の測定値が大きい場合は、摩擦の影響によって試料12を構成する金属が溶液11中に溶けやすくなった(イオン化しやすくなった)ことを意味し、すなわち、試料が摩擦の影響によって試料12が腐食されやすくなったことを意味する。従って、回転する治具3による摩擦が試料12に生じた後の電流計16の測定値や電圧計17の測定値が大きいか小さいかにより、摩擦の影響によって試料12の腐食性がどの程度大きくなったかを判別することができる。
【0036】
図5は、電流計16の測定値(試料12と金属体13との間に流れる電流)と電圧計17の測定値(金属体13と金属体14との間の電圧)の一例を示すグラフである。図5のグラフの横軸は、時間に対応しており、図5のグラフにおいて「摩擦中」と示された範囲が、回転する治具3による摩擦が試料12に生じていた範囲に対応している。図5のグラフの縦軸は、電流(電流計16の測定値)または電圧(電圧計17の測定値)に対応している。図5のグラフでは、回転する治具3による摩擦が試料12に生じる前は、電流計16の測定値(電流)や電圧計17の測定値(電圧)は、ゼロに近い値であるが、回転する治具3による摩擦が試料12に生じると、試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことに起因して、試料12と金属体13との間に電流が流れ、金属体13と金属体14との間に電位差(電圧)が発生することが、示されている。
【0037】
また、試料12の機械的な摩耗に対する耐性は、摩耗痕15の寸法(大きさ)を測定することにより、判定することができる。例えば、回転する治具3の先端部(圧子3a)を試料12の表面に所定の時間、押し当てた後に、容器2から試料12を取り出して、試料12の表面に形成されている摩耗痕15の寸法(大きさ)を測定する。この際、例えば、形状測定機などを用いて、摩耗痕15の寸法(大きさ)を測定することができる。あるいは、試料12の表面や断面を撮影し、その表面写真や断面写真から、摩耗痕15の寸法(大きさ)を測定することもできる。そして、摩耗痕15の直径や深さが小さければ、回転する治具3の先端部(圧子3a)を押し当てても試料12は研磨(摩耗)されにくい、すなわち、試料12の機械的な摩耗に対する耐性は高いと判別(判定)することができる。また、摩耗痕15の直径や深さが大きければ、回転する治具3の先端部(圧子3a)を押し当てることで、試料12は研磨(摩耗)されやすい、すなわち、試料12の機械的な摩耗に対する耐性は低いと判別(判定)することができる。
【0038】
このため、ある金属材料Aを用いて試料12および金属体13,14を作製した第1の場合と、他の金属材料Bを用いて試料12および金属体13,14を作製した第2の場合とについて、それぞれ試験装置1を用いて上述した試験を行うことにより、金属材料Aと金属材料Bのいずれが摩耗と腐食に対する耐性が高いかを判別(判定)することができる。第1の場合と第2の場合とで、試験条件は同じにする。具体的には、第1の場合と第2の場合とで、溶液11は同じ(成分および濃度が同じ)とし、治具3の回転速度は同じとし、回転する治具3が試料12に押し付けられる力(荷重)を同じとし、回転する治具3を試料12の表面に押し当てる時間も同じとする。また、第1の場合と第2の場合とで、試料12の形状(特に表面積)は同じとすることが好ましい。そして、第1の場合と第2の場合とで、試料12の表面に形成された摩耗痕15の寸法(大きさ)を測定し、第1の場合よりも第2の場合の方が、摩耗痕15の寸法(大きさ)が小さければ、第1の場合で用いた金属材料Aよりも、第2の場合で用いた金属材料Bの方が、機械的な摩耗に対する耐性は高いと判別(判定)することができる。また、第2の場合よりも第1の場合の方が、摩耗痕15の寸法(大きさ)が小さければ、第2の場合で用いた金属材料Bよりも、第1の場合で用いた金属材料Aの方が、機械的な摩耗に対する耐性は高いと判別(判定)することができる。
【0039】
第1の場合と第2の場合とで、回転する治具3の先端部(圧子3a)が試料12の表面に押し当てられた状態で、試料12と金属体13との間に流れる電流が電流計16で測定(モニタ)され、金属体13と金属体14との間の電圧が電圧計17で測定(モニタ)される。この電流計16の測定値(試料12と金属体13との間に流れる電流)と電圧計17の測定値(金属体13と金属体14との間の電圧)とを、第1の場合と第2の場合とで比較する。第1の場合よりも第2の場合の方が、電流計16の測定値や電圧計17の測定値が小さければ、第1の場合で用いた金属材料Aよりも、第2の場合で用いた金属材料Bの方が、摩擦が生じても腐食性は高くなりにくく、腐食に対する耐性が高いと判別(判定)することができる。また、第2の場合よりも第1の場合の方が、電流計16の測定値や電圧計17の測定値が小さければ、第2の場合で用いた金属材料Bよりも、第1の場合で用いた金属材料Aの方が、摩擦が生じても腐食性は高くなりにくく、腐食に対する耐性が高いと判別(判定)することができる。
【0040】
このため、様々な種類の金属材料を用いて試料12および金属体13,14を作製し、それぞれに対して試験装置1を用いて上述した試験を行う。摩耗痕15の寸法が小さいほど、機械的な摩耗に対する耐性は高いと判別(判定)することができる。また、摩耗痕15の寸法が小さくとも、回転する治具3が試料12の表面に押し当てられた状態で、試料12と金属体13との間に流れる電流や金属体13と金属体14との間の電圧が大きければ、腐食に対する耐性は低いと判別(判定)することができる。このため、摩耗痕15の寸法が小さく、かつ、回転する治具3が試料12の表面に押し当てられた状態で、試料12と金属体13との間に流れる電流や金属体13と金属体14との間の電圧が小さくなるような金属材料(試料12および金属体13,14に用いる金属材料)を見つけることにより、機械的な摩耗と化学的な腐食に対する耐性が高い金属材料を見つけることができる。そのような金属材料を用いて、樹脂の混練に寄与する構成部材(例えばスクリュまたはシリンダ)を作製することにより、樹脂製品の製造装置(例えば押出装置)の信頼性や性能を向上させることができる。
【0041】
あるいは、樹脂の混練に寄与する構成部材(例えばスクリュまたはシリンダ)に使用する候補となる金属材料を用いて試料12および金属体13,14を作製し、試験装置1を用いて上述した試験を行うことにより、その金属材料の機械的な摩耗と化学的な腐食とに対する耐性を評価することができる。これにより、その候補となる金属材料が、樹脂の混練に寄与する構成部材(例えばスクリュまたはシリンダ)に相応しいかを判別することができる。従って、樹脂製品の製造装置(例えば押出装置)の信頼性や性能を向上させることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態とは異なり、試料12と金属体13と金属体14とを、互いに異なる材料により作製した場合を仮定する。この場合、回転する治具3による摩擦が試料12に生じる前においても、試料12のイオン化傾向と金属体13のイオン化傾向との差に起因して、試料12と金属体13との間に電流が流れることになる。このため、回転する治具3による摩擦が試料12に生じた後の段階で、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧は、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことのみに起因して生じたものとはならず、試料12を構成する金属材料のイオン化傾向と金属体13を構成する金属材料のイオン化傾向との差をも反映したものとなる。このため、摩擦の影響によって試料12の腐食性(溶液11への溶けやすさ)がどの程度変化したかを、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧から高い精度で推定することは、難しくなる。
【0043】
また、試料12と金属体13と金属体14とを、互いに異なる材料により作製した場合には、回転する治具3による摩擦を試料12に生じさせて摩耗痕15が試料12に形成されると、内部電池作用によって試料12中に電流(内部電流)が流れる虞があり、その内部電流の分だけ、試料12と金属体13との間に流れる電流が減少してしまう虞がある。この点でも、摩擦の影響によって試料12の腐食性(溶液11への溶けやすさ)がどの程度変化したかを、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧から高い精度で推定することは、難しくなる。
【0044】
また、試料12と金属体13と金属体14とを、互いに同じ材料により作製するが、試料12と金属体13と金属体14との表面積が互いに異なる場合を仮定する。この場合、回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦が試料12に生じた後の段階で、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧は、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことのみに起因して生じたものとはならず、試料12と金属体13と金属体14との表面積の差による影響も受けてしまう。この点で、摩擦の影響によって試料12の腐食性(溶液11への溶けやすさ)がどの程度変化したかを、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧から高い精度で推定することは、難しくなる。
【0045】
それに対して、本実施の形態では、試料12と金属体13と金属体14とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有している。これにより、回転する治具3の先端部(圧子3a)による摩擦が試料12に生じた後の段階で、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧は、摩擦の影響によって試料12の表面状態が変わった(摩耗痕15が発生した)ことのみに起因して生じたものとなり得る。このため、摩擦の影響によって試料12の腐食性(溶液11への溶けやすさ)がどの程度変化したかを、試料12と金属体13との間に流れる電流や、金属体13と金属体14との間に生じる電圧から高い精度で推定することできるようになる。
【0046】
このように、本実施の形態の試験装置および試験方法によれば、金属材料の摩耗と腐食に対する耐性を適切に評価することができる。これにより、樹脂の混練に寄与する構成部材(例えばスクリュまたはシリンダ)に適した金属材料(すなわち摩耗と腐食に対する耐性が高い金属材料)を選定することができるため、樹脂製品の製造装置(例えば押出装置)の信頼性や性能を向上させることができる。
【0047】
(実施の形態2)
図6は、本実施の形態2の試験装置(評価装置)1aを示す説明図である。
【0048】
上記実施の形態1の試験装置1と本実施の形態2の試験装置1aとが主として相違しているのは、上記実施の形態1の試験装置1では、試料12が回転せずに、摩擦用の治具3が回転するのに対して、本実施の形態2の試験装置1aでは、摩擦用の治具3が回転せずに、試料12が回転することである。これを実現するために、上記実施の形態1の試験装置1と本実施の形態2の試験装置1aとは、一部の構成が相違している。
【0049】
具体的には、図6に示される試験装置1aは、容器2と、摩擦用の治具3と、を備えているが、モータ4aは、治具3ではなく容器2を回転させる。すなわち、容器2は、モータ4aにより回転可能に構成されている。上記実施の形態1の試験装置1と同様に、本実施の形態2の試験装置1aにおいても、上記図3および図4に示されるように、容器2内に貯えられた溶液11中に、試料12と金属体13,14とが浸漬されている。なお、上記図2と同様に図6でも、簡略化のために、金属体13,14、電流計16および電圧計17の図示は省略してある。
【0050】
本実施の形態2においても、試料12と金属体13と金属体14とは、互いに同じ金属材料からなり、かつ、互いに同じ表面積を有している。容器2内に配置された試料12および金属体13,14は、容器2内で不必要に移動しないように、容器2に対して固定することができる。容器2内に配置された試料12は、モータ4aにより容器2が回転すると、容器2と一緒に回転する。
【0051】
治具3の先端には、硬質の圧子3aが取り付けられている。容器2と一緒に回転する試料12の表面に、治具3の先端部(圧子3a)が押し当てられる(擦りつけられる)ことにより、試料12の表面が治具3の先端部(圧子3a)による摩擦によって摩耗して、上記図4のように試料12の表面に摩耗痕15が発生する。
【0052】
図6に示されるように、治具3は、レバー7aの一方の端部に支持されている。レバー7aは、支点(軸)9aを中心に回転可能であり、いわゆる「てこ」として作用することができる。また、レバー7aは、水平方向にも回転可能とすることができる。レバー7aの他方の端部側には、ロードセル10aが設けられている。ロードセル10aを利用して、回転する試料12に治具3の先端部(圧子3a)が押し当てられた際の摩擦係数を計測することもできる。また、治具3の後端部側には、荷重用のおもり8aを設けることもできる。おもり8aの重さを調整することにより、治具3の先端部(圧子3a)が回転する試料12に押し付けられる力(荷重)を制御することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態1の試験装置1の場合も、ロードセルを用いることができ、その場合を図7に示してある。図7は、上記実施の形態1の試験装置1の変形例を示す説明図であり、図7の場合は、容器2に連結されたバーにロードセル10が設けられている。
【0054】
上記実施の形態1(図2図7)では、試料12が回転せずに、摩擦用の治具3が回転するのに対して、本実施の形態2(図6)では、摩擦用の治具3が回転せずに、試料12が回転する。試料12に対して摩擦用の治具3が相対的に回転することは、上記実施の形態1と本実施の形態2とで共通している。すなわち、上記実施の形態1および本実施の形態2のいずれにおいても、試料12に押し当てられている治具3が試料12に対して相対的に回転することにより、試料12の表面が治具3の先端部(圧子3a)による摩擦によって摩耗して、試料12の表面に摩耗痕15が発生する。
【0055】
上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2においても、試料12と金属体13との間に流れる電流が電流計16によって測定(モニタ)され、金属体13と金属体14との間の電圧(電位差)が、電圧計17によって測定(モニタ)される。
【0056】
上記実施の形態1では、試料12が回転せずに、摩擦用の治具3が回転するのに対して、本実施の形態2(図6)では、摩擦用の治具3が回転せずに、試料12が回転する点は相違しているが、それ以外については、上記実施の形態1の試験装置1を用いた場合と同様にして、本実施の形態2の試験装置1aを用いて、試料12の摩耗と腐食に対する耐性を評価(試験)することができる。
【0057】
電流計16および電圧計17は、容器2の外部に配置するため、電流計16および電圧計17を試料12および金属体13,14に電気的に接続するための配線(導体線)が必要になる。このため、容器2を回転させないで済む上記実施の形態1の場合は、電流計16および電圧計17と、試料12および金属体13,14との間の電気的接続を容易に確保することができる。一方、容器2を回転させる本実施の形態2の場合は、例えば、容器2内の試料12および金属体13,14に接続された配線(導体線)を、中空のモータ4aから取り出して電流計16および電圧計17に接続することにより、電流計16および電圧計17と試料12および金属体13,14との間を配線によって電気的に接続することができる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1,1a 試験装置
2 容器
3 治具
3a 圧子
4 モータ
6 トルクセンサ
7,7a レバー
8,8a おもり
9,9a 支点
10,10a ロードセル
11 溶液
12 試料
13,14 金属体
15 摩耗痕
16 電流計
17 電圧計
21 押出装置
22 シリンダ
23 スクリュ
24 ホッパ
25 回転駆動機構
26 ダイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7