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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240924BHJP
   A01B 59/042 20060101ALI20240924BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B59/042 Z
A01B63/10 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021104204
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003183
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡 智史
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-304737(JP,A)
【文献】特開2015-054640(JP,A)
【文献】特開2006-136962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0058934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01B 59/042
A01B 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエイトを取り付け可能な車体と、
前記車体に作業装置を連結する連結装置と、
前記車体の走行時の加速度を検出する加速度検出装置と、
前記加速度検出装置が検出した前記加速度と前記車体に関する車体情報に基づいて、前記車体におけるゼロモーメントポイントを演算する演算部と、
前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに基づいて、前記車体の車速を調整する車速調整部と、
を備え
前記車体情報は、前記車体に関する情報と、前記車体に取り付けられる前記ウエイトに関するウエイト情報と、に基づいて定義されている作業車両。
【請求項2】
前記演算部は、前記車体情報であり、且つ前記ウエイトを含む前記車体の重量と前記加速度とから得られる慣性力に基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記演算部は、前記慣性力と、前記車体に生じる重力と、の合成ベクトルに基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記車体情報として、前記車体の重量を入力する表示装置を備えている請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
車体と、
前記車体に作業装置を連結する連結装置と、
前記車体の走行時の加速度を検出する加速度検出装置と、
前記加速度検出装置が検出した前記加速度と、前記車体に関する車体情報と、前記作業装置に関する装置情報とに基づいて、前記車体に前記作業装置を連結したときのゼロモーメントポイントを演算する演算部と、
前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに基づいて、前記車体の車速を調整する車速調整部と、
を備えている作業車両。
【請求項6】
前記演算部は、前記車体情報である前記車体の重量と、前記装置情報である前記作業装置の重量と、前記加速度とから得られる慣性力に基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する請求項5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記演算部は、前記慣性力に加え、前記車体に生じる重力と、前記作業装置に生じる重力と、の合成ベクトルによって前記ゼロモーメントポイントを演算する請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記連結装置は、前記車体に前記作業装置を昇降可能に連結する昇降装置であり、
前記装置情報は、前記作業装置の上下方向の位置情報を含み、
前記演算部は、前記装置情報を参照し、前記慣性力と、前記車体に生じる重力と、前記作業装置に生じる重力と、の合成ベクトルを算出する請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記車体情報として前記車体の重量を入力し、前記装置情報として前記作業装置の重量を入力する表示装置を備えている請求項5~8のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項10】
前記車体に設けられた原動機を備え、
前記車体は、前記原動機が発生させた駆動力によって走行する走行装置と、前記走行装置の制動を行う制動装置と、を有し、
前記車速調整部は、前記原動機の回転を設定するアクセルの開度を調整、及び/又は前記制動装置を制御して前記車速を調整する請求項1~9のいずれかに記載の作業車両。
【請求項11】
前記加速度検出装置は、前記車体の走行時の加速度のうち、少なくとも前記車体の幅方向の加速度を検出し、
前記車速調整部は、前記ゼロモーメントポイントが前記幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、前記車速を減速調整する請求項1~10のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項12】
前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに基づいて、前記車体の加速を調整する加速調整部を備えている請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記加速度検出装置は、前記幅方向の加速度に加え、前記車体の前後方向の加速度を検出し、
前記加速調整部は、
前記ゼロモーメントポイントが前記前後方向の範囲を前側に超過する傾向にある場合、前記車体の加速を増加調整し、
前記ゼロモーメントポイントが前記前後方向の範囲を後側に超過する傾向にある場合、前記車体の加速を減少調整する請求項12に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼロモーメントポイントを演算することで車体の転倒を抑止する技術として特許文献1が知られている。特許文献1では、作業装置が装着可能で且つ走行可能な車体におけるゼロモーメントポイントを演算する演算部と、演算部で演算されたゼロモーメントポイントに基づいて作業機の安定に関する情報を表示可能な表示部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-192891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ゼロモーメントポイントに基づいて作業機の安定に関する情報を表示することができるため、車体の転倒等を抑止することができる。しかしながら、ゼロモーメントポイントを演算するためには、複数のロードセルを車輪に設けなければならず、大変であった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、車体の転倒を抑止することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、ウエイトを取り付け可能な車体と、前記車体に作業装置を連結する連結装置と、前記車体の走行時の加速度を検出する加速度検出装置と、前記加速度検出装置が検出した前記加速度と前記車体に関する車体情報に基づいて、前記車体におけるゼロモーメントポイントを演算する演算部と、前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに
基づいて、前記車体の車速を調整する車速調整部と、を備え、前記車体情報は、前記車体に関する情報と、前記車体に取り付けられる前記ウエイトに関するウエイト情報と、に基づいて定義されている。
【0006】
また、前記演算部は、前記車体情報であり、且つ前記ウエイトを含む前記車体の重量と前記加速度とから得られる慣性力に基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する。
また、前記演算部は、前記慣性力と、前記車体に生じる重力と、の合成ベクトルに基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する。
また、作業車両は、前記車体情報として、前記車体の重量を入力する表示装置を備えている。
【0007】
また、作業車両は、車体と、前記車体に作業装置を連結する連結装置と、前記車体の走行時の加速度を検出する加速度検出装置と、前記加速度検出装置が検出した前記加速度と、前記車体に関する車体情報と、前記作業装置に関する装置情報とに基づいて、前記車体に前記作業装置を連結したときのゼロモーメントポイントを演算する演算部と、前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに基づいて、前記車体の車速を調整する車速調整部と、を備えている。
【0008】
また、前記演算部は、前記車体情報である前記車体の重量と、前記装置情報である前記作業装置の重量と、前記加速度とから得られる慣性力に基づいて、前記ゼロモーメントポイントを演算する。
また、前記演算部は、前記慣性力に加え、前記車体に生じる重力と、前記作業装置に生じる重力と、の合成ベクトルによって前記ゼロモーメントポイントを演算する。
【0009】
また、前記連結装置は、前記車体に前記作業装置を昇降可能に連結する昇降装置であり、前記装置情報は、前記作業装置の上下方向の位置情報を含み、前記演算部は、前記装置情報を参照し、前記慣性力と、前記車体に生じる重力と、前記作業装置に生じる重力と、の合成ベクトルを算出する。
また、前記車体情報として前記車体の重量を入力し、前記装置情報として前記作業装置の重量を入力する表示装置を備えている。
【0010】
また、作業車両は、前記車体に設けられた原動機を備え、前記車体は、前記原動機が発生させた駆動力によって走行する走行装置と、前記走行装置の制動を行う制動装置と、を有し、前記車速調整部は、前記原動機の回転を設定するアクセルの開度を調整、及び/又は前記制動装置を制御して前記車速を調整する。
また、前記加速度検出装置は、前記車体の走行時の加速度のうち、少なくとも前記車体の幅方向の加速度を検出し、前記車速調整部は、前記ゼロモーメントポイントが前記幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、前記車速を減速調整する。
【0011】
また、作業車両は、前記演算部が演算した前記ゼロモーメントポイントに基づいて、前記車体の加速を調整する加速調整部を備えている。
また、前記加速度検出装置は、前記幅方向の加速度に加え、前記車体の前後方向の加速度を検出し、前記加速調整部は、前記ゼロモーメントポイントが前記前後方向の範囲を前側に超過する傾向にある場合、前記車体の加速を増加調整し、前記ゼロモーメントポイントが前記前後方向の範囲を後側に超過する傾向にある場合、前記車体の加速を減少調整する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、車体の転倒を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トラクタの構成及び制御ブロック図を示す図である。
図2】昇降装置を示す斜視図である。
図3A】作業車両が平坦な場所を直進している側面図である。
図3B】作業車両が緩やかな坂道を直進している側面図である。
図3C】作業車両が急な坂道を直進している側面図である。
図4A】作業車両が平坦な場所を直進している正面図である。
図4B】作業車両が平坦な場所を緩やかに左旋回している正面図である。
図4C】作業車両が平坦な場所を急に左旋回している正面図である。
図4D】作業車両が左下方に向かって傾斜している場所を緩やかに左旋回している正面図である。
図5A】入力画面Q1の一例を示す第1図である。
図5B】入力画面Q1の一例を示す第2図である。
図6A】作業装置を連結した作業車両が平坦な場所を走行している側面図である。
図6B】作業装置を連結した作業車両が緩やかな坂道を走行している側面図である。
図6C】作業装置を連結した作業車両が急な坂道を走行している側面図である。
図7A】作業装置を連結した作業車両が平坦な場所を直進している正面図である。
図7B】作業装置を連結した作業車両が平坦な場所を緩やかに左旋回している正面図である。
図7C】作業装置を連結した作業車両が平坦な場所を急に左旋回している正面図である。
図7D】作業装置を連結した作業車両が左下方に向かって傾斜している場所を緩やかに左旋回している正面図である。
図8A】入力画面Q2の一例を示す第1図である。
図8B】入力画面Q2の一例を示す第2図である。
図9】トラクタの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図9は作業車両1の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の場合、作業車両1はトラクタである。但し、作業車両1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0015】
以下、トラクタ(作業車両)1の運転席10に着座した運転者等の前側を前方、運転者等の後側を後方、運転者等の左側を左方、運転者等の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向(幅方向)として説明する。
図9に示すように、トラクタ(作業車両)1は、車体3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3は走行装置7を有していて走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。
【0016】
原動機4は、ディーゼルエンジン、電動モータ等であって、この実施形態ではディーゼルエンジンで構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3には運転席10が設けられている。
また、車体3の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8には、作業装置2を着脱可能である。作業装置2を連結装置8に連結することによって、車体3によって作業装置2を牽引することができる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0017】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、走行クラッチ5dと、PTO動力伝達部5eと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0018】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。副変速部5cは、伝達軸24を介して、前車軸29Fに伝達される。
走行クラッチ5dは、走行装置7(前輪7F、後輪7R)に動力を伝達する接続状態と、走行装置7への動力の伝達を切断する切断状態とに切り換え可能なクラッチである。走行クラッチ5dは、シャトル軸12と、クラッチ切換部13とを有している。シャトル軸12には、原動機4から出力された動力が伝達される。クラッチ切換部13は、前進側、後進側及び中立側に切り換えられる油圧クラッチである。
【0019】
クラッチ切換部13は、油路(図示省略)等を介して接続された前進切換弁及び後進切換弁に接続されている。前進切換弁及び後進切換弁は、例えば、二位置電磁切換弁である。前進切換弁のソレノイドが励磁された場合は、クラッチ切換部13は、前進側に切り換わり、後進切換弁のソレノイドが励磁された場合は、クラッチ切換部13は、後進側に切り換わる。前進切換弁及び後進切換弁のソレノイドのそれぞれが消磁された場合は、クラッチ切換部13は、中立側に切り換わる。
【0020】
シャトル軸12は、推進軸5aに接続されている。推進軸5aの動力は、主変速部5b及び副変速部5cに伝達され、副変速部5cから出力された動力は後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。つまり、走行クラッチ5dは、クラッチ切換部13が前進側及び後進側のいずれかに切り換えられた場合は、接続状態であって走行装置7(前輪7F、後輪7R)に動力を伝達する。また、走行クラッチ5dは、クラッチ切換部13が中立側に切り換えられた場合は、切断状態であって走行装置7への動力の伝達を切断する。
【0021】
PTO動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力が伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り換わる。
【0022】
図1に示すように、作業車両1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、制御弁22と、ステアリングシリンダ23とを含んでいる。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0023】
図1に示すように、作業車両1は、制動装置26を備えている。制動装置26は、走行装置7に設けられている。制動装置26は、本実施形態においては、例えばディスク型の制動装置であり、制動する制動状態と、制動を解除する解除状態に切換可能である。
また、制動装置26は、後車軸21Rの左側に設けられた左制動装置26Lと、後車軸21Rの右側に設けられた右制動装置26Rと、を含んでいる。例えば、運転席10の近傍には、一対のブレーキペダル(左ブレーキペダル、右ブレーキペダル、図示省略)が設けられている。作業車両1を操作する運転者等が左ブレーキペダルを操作する(踏み込む)ことによって、左ブレーキペダルに連結された左連結部材27Lが左制動装置26Lを制動状態にすることができる。運転者等が右ブレーキペダルを操作する(踏み込む)ことによって、右ブレーキペダルに連結された右連結部材27Rが右制動装置26Rを制動状態にすることができる。
【0024】
また、左連結部材27Lには、作動油により作動する左油圧作動部28Lが連結されている。左油圧作動部28Lには、油路を介して第1作動弁(左制動弁)29Lが接続されている。第1作動弁29Lによって、左油圧作動部28Lを作動させることにより、左連結部材27Lを制動方向に移動させることができる。
右連結部材27Rには、作動油により作動する右油圧作動部28Rが連結されている。右油圧作動部28Rには、油路を介して第2作動弁(右制動弁)29Rが接続されている。第2作動弁29Rによって、右油圧作動部28Rを作動させることにより、右連結部材27Rを制動方向に移動させることができる。
【0025】
即ち、左制動装置26L及び右制動装置26Rは、左ブレーキペダル及び右ブレーキペダルの操作だけでなく、左油圧作動部28L及び右油圧作動部28Rの作動によっても、左の後輪7R及び右の後輪7Rのそれぞれを独立して制動状態にすることができる。
なお、本実施形態において、左制動装置26Lは、後車軸21Rの左側に設けられ、右制動装置26Rは、後車軸21Rの右側に設けられ、制動装置26は、後輪7Rの制動を行うが、制動装置26は、左制動装置26L及び右制動装置26Rに代えて、或いは加えて前車軸29Fの左側及び右側に設けられ、前輪7Fの制動を行ってもよい。
【0026】
本実施形態において、連結装置8は、作業装置2を昇降、即ち車体3に対して作業装置2の上下位置を変更可能な昇降装置である。図2に示すように、連結装置8は、作業装置2を連結する端部側が上昇又は下降する方向に車体3に設けられた連結部材と、伸縮によって連結部材の端部側を上昇又は下降させる油圧シリンダとを有している。連結装置(昇降装置)8は、作業装置2を下降させることで、作業装置2が作業を行う作業状態と、作業装置2を上昇させることで、作業装置2が作業を行わない非作業状態と、に切換可能である。
【0027】
図2に示すように、連結部材は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8dである。油圧シリンダは、リフトシリンダ8eである。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。
【0028】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0029】
なお、本実施形態において連結装置8は、車体3に作業装置2を昇降可能に連結する昇降装置であるが、連結装置8は、車体3に作業装置2を昇降可能に連結できればよく、その構成は、上述した構成に限定されない。また、連結装置8は、作業装置2を車体3に連結することができればよく、作業装置2と車体3の相対位置を固定して作業装置2を車体3に連結するような構成であってもよい。
図1に示すように、作業車両1は、制御装置40を備えている。制御装置40は、作業車両1における走行系の制御、作業系の制御等を行う装置である。また、制御装置40は、記憶部50aを有し、記憶部50aは、不揮発性のメモリ等から構成されており、作業車両1、作業装置2に関する様々な情報を格納する。
【0030】
図1に示すように、作業車両1は、複数の検出装置41を備えている。複数の検出装置41は、作業車両1の状態を検出する装置であり、制御装置40と接続されている。複数の検出装置41は、例えば、水温を検出する水温センサ41a、燃料の残量を検出する燃料センサ41b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)41c、アクセルペダル43の操作量を検出するアクセルペダルセンサ41d、操舵装置11の操舵角を検出する操舵角センサ41e、リフトアーム8aの角度を検出する角度センサ41f、車体3の幅方向(右方向又は左方向)の傾きを検出する傾き検出センサ41g、車体3の車速(速度)を検出する速度センサ41h、PTO軸の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)41i、バッテリー等の蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ41j、車体3の位置を検出する測位装置41k、作業車両1の周囲をセンシングする監視装置41l、車体3の走行時の加速度を検出する加速度センサ(加速度検出装置)41m、角速度を検出するジャイロセンサ41n等である。なお、上述した検出装置41は一例であり、その組み合わせは、上述したセンサに限定されない。
【0031】
以下、複数の検出装置41のうち、一部の検出装置41について詳しく説明する。
測位装置41kは、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置41kは、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、作業車両1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。なお、測位装置41kは、加速度を検出する加速度検出装置、角速度を検出するジャイロセンサ等の慣性計測装置を搭載していてもよい。慣性計測装置は、加速度検出装置41m、ジャイロセンサ41nを内蔵していて、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができ、検出した車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角を用いて、車体位置を補正することができる。なお、慣性計測装置は、測位装置41kと別体に、作業車両1に設けてもよい。
【0032】
加速度検出装置41mは、車体3の走行時の加速度のうち、少なくとも車体3の前後方向の加速度Aと、車体3の幅方向の加速度A´と、を検出することができる。特に、車体3の前後方向の加速度Aは、主に走行装置7の推進力によって生じる加速度に相当し、車体3の幅方向の加速度A´は、車体3が旋回する際に生じる向心加速度A´である。
監視装置41lは、CCDカメラ等であって、少なくとも作業車両1の前方を撮像することができる。
【0033】
以下、検出装置41のうち、一部の検出装置41及びその検出情報を用いた制御について簡単に説明する。
制御装置40は、原動機回転センサ41cが検出した検出情報(原動機4の回転数)、及びアクセルペダルセンサ41dが検出した検出情報(アクセルペダル43の操作量)を用いて、原動機4の回転数の制御を行う。具体的には、制御装置40は、アクセルペダル43の操作量に応じて制御弁44の開度を変化させ、原動機4の回転数が目的の回転数になるように、原動機4に供給される空気量を変化させることで当該原動機4の回転数を変動させる。
【0034】
また、記憶部50aが、リフトアーム8a、ロアリンク8b等の長さを記憶している場合、当該制御装置40は、角度センサ41fが検出したリフトアーム8aの角度や、リフトアーム8aの長さ、任意の演算式等に基づいて、連結装置8が作業装置2を上昇、下降させた場合の当該作業装置2の上下方向の位置を算出することができる。
なお、複数の検出装置41が角度センサ41fとは別の検出装置41を含み、制御装置40は、当該別の検出装置41が検出した検出情報に基づいて作業装置2の上下方向の位置を算出してもよい。別の検出装置41は、例えば、作業装置2の上下方向の位置を検出する検出装置41として赤外線検知センサ、マグネットスイッチ、シーソースイッチ等のセンサであり、上記センサによって作業装置2の実際の位置を定点で検出し、制御装置40は、当該検出した情報に基づいて作業装置2の上下方向の位置を算出する。
【0035】
図3A図3C図4A図4Dに示すように、作業車両1は、車体3が走行している際に、ゼロモーメントポイント(ZMP)を演算することによって、当該作業車両1の転倒を抑止している。なお、図3A図3C図4A図4Dは、作業車両1を模式的に示した図である。
具体的には、図1に示すように、作業車両1は、演算部50と、加速調整部51と、車速調整部52と、を備えている。演算部50、加速調整部51、及び車速調整部52は、例えば、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40の記憶部50aに格納されたプログラム等から構成されている。
【0036】
演算部50は、加速度センサ(加速度検出装置)41mが検出した車体3の走行時の加速度A,A´と、車体3に関する車体情報に基づいて、車体3の走行時のゼロモーメントポイント(ZMP)を演算する。車体情報は、作業車両1に設けられた表示装置60に入力することができる。
表示装置60は、画像を表示する画面を有し、主に作業車両1の制御等の情報を表示可能である。表示装置60は、画面に表示する情報を記憶する表示記憶部60aを有し、表示記憶部60aは、不揮発性のメモリ等から構成されている。表示装置60に対して所定の操作を行うと、図5Aに示すように、車体情報を入力する入力画面Q1が表示される。
【0037】
図5Aに示すように、入力画面Q1は、作業車両1(車体3)の重量を入力する重量入力部61と、作業車両1(車体3)の重心位置を入力する重心入力部62とを含んでいる。なお、本実施形態における「重量」は、物体の重量を計測機械(重量計)で計測した際の「質量」であり、当該質量(重量)と重力加速度の積によって、後述する重力G1、慣性力F1,F2が算出される。また、以下の説明の都合上、重心入力部62に入力された重心位置、即ちZMPの演算に用いられる重心位置(後述の合成ベクトルB1,B2の始点)に符号P10を付して説明する。重量入力部61には、作業装置2を連結していないときの車体3の重量(車体重量M1という)M1を運転者等が入力する。車体3にウエイトを装着している場合は、ウエイトの重量も含む車体重量M1を運転者等が入力する。重心入力部62には、例えば、作業車両1の図形D1が表示され、図形D1の任意の位置にポインタ部65を指し示すことにより、ポインタ部65で指し示した位置が重心位置P10に設定される。
【0038】
図5Aにおける入力画面Q1では、重心入力部62は、作業車両1の側方視の図形D1を表示し、当該側方視の作業車両1の任意の位置をポインタ部65で指し示すことで、重心位置P10の前後及び上下方向の位置設定を行う。つぎに、図5Aに示す入力画面Q1の「OKボタン」を選択操作すると、表示装置60は、図5Bに示す入力画面Q1に遷移する。
【0039】
図5Bにおける入力画面Q1では、重心入力部62は、作業車両1の正面視の図形D1を表示し、重心位置P10の幅方向の位置設定を行う。図5Bにおける入力画面Q1の重心入力部62は、図5Aの重心入力部62で設定された上下方向の位置に対応する位置に配置されたバー表示部66と、スライダ表示部67と、を表示する。スライダ表示部67の先端は、設定される重心位置P10の幅方向の位置を指し示す。バー表示部66は、作業車両1の幅方向の一端側から他端側に延びて配置されており、スライダ表示部67は、バー表示部66上を移動可能である。スライダ表示部67は、バー表示部66上を幅方向に移動することにより、重心位置P10の幅方向の位置を変更する。運転者等は、ポインタ部65でスライダ表示部67をバー表示部66上で幅方向に操作することによって、重心位置P10の幅方向の位置設定を行う。
【0040】
これにより、運転者等が重量入力部61に車体重量M1を入力し、重心入力部62に重心位置P10を入力することで、表示装置60は、車体重量M1及び重心位置P10を車体情報に設定する。
なお、上述した実施形態では、作業車両1の図形D1の任意の位置を指し示すことで、重心位置P10を設定していたが、表示記憶部60aが、作業車両1の機種ごとに対応付けられた重心位置を記憶している場合、表示装置60は、入力された作業車両1の機種情報に基づいて、表示記憶部60aから重心位置を取得し、当該取得した重心位置を重心位置P10として設定する構成であってもよい。斯かる場合において、入力画面Q1は、作業車両1の機種情報の入力を受け付け、表示装置60は、当該入力された機種に応じて、表示記憶部60aから情報を取得し、重心位置P10を設定する。入力画面Q1は、例えば作業車両1の機種を複数含むリストを表示し、ポインタ部65で任意の機種を選択することで作業車両1の機種の選択を受け付ける。
【0041】
なお、上記変形例においては、表示記憶部60aは、機種ごとに対応付けられた重心位置を記憶し、表示装置60に入力された作業車両1の機種情報に基づいて、表示記憶部60aから重心位置を取得、設定するが、表示記憶部60aが機種ごとに対応付けられた重心位置及び車体重量を記憶し、表示装置60に入力された作業車両1の機種情報に基づいて、表示記憶部60aから重心位置及び車体重量を取得し、当該取得した重心位置及び車体重量を重心位置P10及び車体重量M1として設定するような構成であってもよい。
【0042】
また、本実施形態において、表示装置60(入力画面Q1)を用いて重心位置P10の設定を行っているが、記憶部50aが作業車両1の重心位置及び車体重量を予め記憶しているような構成、言い換えると重心位置及び車体重量が予め設定されているような構成であってもよい。
また、表示記憶部60aが作業車両1の機種ごとにウエイトの取り付け位置、及びウエイトそれぞれの重量(ウエイト情報)を記憶しており、入力画面Q1がウエイトの個数の入力を受け付け、ウエイトが取り付けられた作業車両1の車体重量M1、及びウエイトを含む重心位置を自動で演算するような構成であってもよいし、重心位置P10及び車体重量M1の設定方法は、上述した方法に限定されない。斯かる場合、表示装置60は、入力画面Q1が受け付けた作業車両1の機種に基づいて、表示記憶部60aからウエイト情報(ウエイトの取り付け位置、ウエイトそれぞれの重量の情報)を取得する。表示装置60は、取得したウエイト情報と、入力画面Q1が受け付けたウエイトの個数と、に基づいて、ウエイトが取り付けられた作業車両1の車体重量M1、及びウエイトを含む重心位置を自動で演算する。
【0043】
また、本実施形態において、重心位置P10の設定を、表示装置60(入力画面Q1)で行っているが、制御装置40に接続された他の入力手段で行ってもよい。斯かる場合、例えば、制御装置40には、ウエイトの個数を入力する図示しない入力スイッチが接続され、作業車両1の車体重量、重心位置、ウエイトの取り付け位置、及びウエイトそれぞれの重量(ウエイト情報)を記憶した記憶部50aを備えている。制御装置40は、記憶部50aに記憶された作業車両1の重心位置、その重量、ウエイトの取り付け位置、及びウエイトの総重量に基づいて、ウエイトが取り付けられた作業車両1の車体重量M1、及びウエイトを含む重心位置P10を自動で演算する。
【0044】
演算部50は、車体情報(車体重量M1、重心位置P10)が設定されると、図3A図3Cに示すように、車体重量M1と加速度検出装置41mが検出した車体3の前後方向の加速度Aによって、前後方向の慣性力F1を求める。また、演算部50は、前後方向の慣性力F1と重力G1の合成ベクトルB1を求め、合成ベクトルB1を延長して、走行装置7との接地面(圃場や道路等の地面)G10と交差する位置をZMPの前後方向の位置として設定する。
【0045】
また、演算部50は、図4A図4Dに示すように、車体重量M1と加速度検出装置41mが検出した車体3の幅方向の加速度A´によって、幅方向の慣性力F2を求める。また、演算部50は、幅方向の慣性力F2と重力G1の合成ベクトルB2を求め、合成ベクトルB2を延長して、接地面G10と交差する位置をZMPの幅方向の位置として設定する。
【0046】
加速調整部51は、演算部50が演算したZMPに基づいて、作業車両1(車体3)の加速を調整する。図3A及び図3Bに示すように、加速調整部51は、作業車両1(車体3)の前後方向(進行方向)において予め定められた第1エリアK1の範囲内に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作量)に応じて制御弁44の調整し、原動機4の回転数を設定する。
【0047】
ここで、第1エリアK1は、走行装置7と接地面G10とが接する接地部が形成するエリア(支持基底面)以内の前後方向の範囲であり、本実施形態において、第1エリアK1は、例えば、前輪7Fの後端から後輪7Rの前端までの範囲である。なお、第1エリアK1の範囲は、少なくとも前後方向の範囲であって、且つ支持基底面以内の範囲であればよく、上記範囲に限定されない。
【0048】
一方、図3Cに示すように、第1エリアK1の範囲外に演算部50が演算したZMPが位置する場合、加速調整部51は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44の制御に適用せず、制御弁44の制御として、手動操作量時の開度(第1開度)とは別の開度に設定し、作業車両1(車体3)の加速度Aを調整する。
具体的には、加速調整部51は、第1エリアK1の後側に演算部50が演算したZMPが位置する場合、即ちZMPが前後方向の範囲の後側に超過する傾向にある場合、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44の制御に適用せず、制御弁44の開度を第1開度よりも小さい第2開度に設定することで、原動機4の回転数を低下させて、作業車両1(車体3)の加速度Aを低下させる。
【0049】
従って、例えば、図3Cに示すように、作業車両1が図3Bに比べて急な坂道(登り勾配)を走行し、ZMPが作業車両1の後側になる場合、加速調整部51がZMPに基づいて車体3の加速を調整することにより、前後方向の加速度Aを調整し、ZMPを作業車両1の前側に向かって移動させることによって、転倒(後転)を抑止することができる。
なお、上述した説明において、加速調整部51は、ZMPが前後方向の範囲の後側に超過する傾向にある場合、作業車両1の加速度Aを低下させているが、加速調整部51は、上記制御に代えて、或いは加えて、ZMPが前後方向の範囲の前側に超過する傾向にある場合、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44に適用せず、制御弁44の開度が、第1開度よりも大きい第3開度に設定することで、作業車両1(車体3)の加速度Aを増加させるような構成であってもよい。即ち、作業車両1が登り勾配とは逆に急な下り勾配を走行し、ZMPが作業車両1の前側になる場合、加速度Aを調整してZMPを作業車両1の後側に向かって移動させることによって、転倒(前転)を抑止することができる。
【0050】
車速調整部52は、演算部50が演算したZMPに基づいて、作業車両1(車体3)の車速を調整する。図4A及び図4Bに示すように、車速調整部52は、作業車両1(車体3)の幅方向において予め定められた第2エリアK2の範囲内に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作量)に応じて制御弁44の調整し、原動機4の回転数を設定する。
【0051】
ここで、第2エリアK2は、走行装置7と接地面G10とが接する接地部が形成するエリア(支持基底面)以内の範囲であり、本実施形態においては、例えば、右側の前輪7F及び後輪7Rの幅方向内端部から、左側の前輪7F及び後輪7Rの幅方向内端部までの範囲である。なお、第2エリアK2の範囲は、少なくとも幅方向の範囲であって、且つ支持基底面以内の範囲であればよく、その範囲は上記範囲に限定されない。
【0052】
一方、図4C図4Dに示すように、第2エリアK2の範囲外に演算部50が演算したZMPが位置する場合、車速調整部52は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44の制御に適用せず、速度センサ41hが検出した車速を取得し、手動操作量時の開度(第1開度)とは別の開度に設定し、作業車両1(車体3)の車速を調整する。
【0053】
具体的には、第2エリアK2の幅方向外側に演算部50が演算したZMPが位置する場合、即ちZMPが幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、車速調整部52は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44の制御に適用せず、制御弁44の開度が、第1開度よりも小さい第4開度に設定することで、原動機4の回転数を低下させ、作業車両1(車体3)の車速を低下させる。
【0054】
従って、例えば、図4Cに示すように、作業車両1が図4Bに比べて急な旋回走行を行い、ZMPが作業車両1の幅方向外側になる場合、車速調整部52がZMPに基づいて車体3の車速を調整することにより、向心加速度A´が減少、即ち遠心力(幅方向の慣性力)F2を減少することでZMPを作業車両1の幅方向内側に向かって移動させ、転倒(横転)を抑止することができる。
【0055】
さらに、図4Dに示すように、例えば作業車両1が旋回方向と反対側に向かって下方に傾斜している斜面で旋回走行を行い、ZMPが作業車両1の幅方向外側になる場合、車速調整部52がZMPに基づいて車体3の車速を調整することにより、遠心力F2を減少することでZMPを作業車両1の幅方向内側に向かって移動させて、転倒(横転)を抑止することができる。
【0056】
なお、上述した説明において、車速調整部52は、ZMPが幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、制御弁44の開度が、第1開度よりも小さい第4開度に設定することで、作業車両1の車速を低下させるが、車速調整部52は、制御弁44の開度の調整に代えて、或いは加えて制動装置26を制御し、作業車両1の車速を低下させてもよい。
さて、上述した実施形態では、作業車両1に作業装置2を装着していない場合を例にあげて説明したが、作業車両1に作業装置2を連結した場合について説明する。
【0057】
演算部50は、作業装置2を連結した車体3(作業機という)の走行時の加速度を検出する加速度センサ(加速度検出装置)41mが検出した車体3の前後方向の加速度A及び車体3の幅方向の加速度(向心加速度)A´と、車体情報及び作業装置2に関する装置情報に基づいて、作業機の走行時のゼロモーメントポイント(ZMP)を演算する。本実施形態において、車体情報及び装置情報は、作業車両1に設けられた表示装置60に入力することができる。図8Aに示すように、表示装置60に対して所定の操作を行うと、車体情報及び装置情報を入力する入力画面Q2が表示される。
【0058】
入力画面Q2は、重量入力部71と、重心入力部72とを含んでいる。重量入力部71には、車体重量M1と作業装置2の装置重量M2とを運転者等が入力する。重心入力部72には、例えば、作業機(作業車両1に作業装置2を連結した機械)の図形D2が表示され、図形D2の任意の位置にポインタ部65を指し示すことにより、ポインタ部65で指し示した位置が重心位置P10に設定される。図8Aにおける入力画面Q2では、重心入力部62は、作業車両1の側方視の図形D2を表示し、作業車両1の側方の任意の位置をポインタ部65で指し示すことで、重心位置P10の前後及び上下方向の位置の設定を行う。つぎに、図8Aに示す入力画面Q2の「OKボタン」を選択操作すると、表示装置60は、図8Bに示す入力画面Q2に遷移する。
【0059】
図8Bにおける入力画面Q2では、重心入力部62は、作業車両1の正面視の図形D2を表示し、重心位置P10の幅方向の位置設定を行う。図5Bにおける入力画面Q2の重心入力部62は、図8Aの重心入力部62で設定された上下方向の位置に対応する位置に配置されたバー表示部66と、スライダ表示部67と、を表示する。運転者等は、ポインタ部65でスライダ表示部67をバー表示部66上で幅方向に操作することによって、重心位置P10の幅方向の位置設定を行う。
【0060】
これにより、運転者等は、重量入力部71に車体重量M1及び装置重量M2を入力し、重心入力部72に重心位置P10を入力すると、表示装置60は、車体重量M1、重心位置P10を車体情報に設定し、装置重量M2を装置情報に設定する。
なお、上述した実施形態では、作業車両1の図形D2の任意の位置を指し示すことで、重心位置P10を設定していたが、この方法に限定されず、作業車両1の重心位置と、作業装置2の重心位置とをそれぞれ別々に重心入力部72に入力できるようにしてもよい。斯かる場合において、表示装置60又は制御装置40は、入力された作業車両1の重心位置及び車体重量と、作業装置2の重心位置及び装置重量に基づいて、作業車両1と作業装置2全体(作業機全体)の重心位置及び重量を演算する。
【0061】
また、表示装置60が記憶領域を有する表示記憶部60a(図示省略)を備え、重心入力部62の代わりに、当該表示記憶部60aが、作業車両1の機種ごとに対応付けられた重心位置及び車体重量、並びに作業装置2の機種ごとに対応付けられた重心位置及び装置重量を記憶し、表示装置60に入力された作業車両1の機種情報、及び作業装置2の機種情報に基づいて、表示記憶部60aから作業車両1及び作業装置2の重心位置及び装置重量を取得し、作業機全体の重心位置及び重量を設定する構成であってもよい。
【0062】
また、制御装置40は、複数の検出装置41が検出した検出情報(例えば角度センサ41fが検出したリフトアーム8aの角度)に基づいて、作業装置2の高さを演算可能である場合、当該演算結果を参照して作業装置2の上下方向の位置を考慮した実際の重心位置を演算し、設定してもよい。なお、斯かる場合において、記憶部50aが作業装置2の高さに対応する作業機の重心位置、又は作業装置2の重心位置を予め記憶しており、制御装置40は、演算した作業装置2の高さに応じて、作業機の重心位置、又は作業装置2の重心位置を取得し、設定するような構成であってもよい。
【0063】
さらに、制御装置40は、複数の検出装置41が検出した検出情報に基づいて、作業装置2の状態(作業状態又は非作業状態)を演算可能であり、且つ記憶部50aが作業装置2の状態に対応する作業機の重心位置、又は作業装置2の重心位置を記憶している場合、制御装置40は、演算した作業装置2の状態に応じて、作業機の重心位置、又は作業装置2の重心位置を取得し、設定するような構成であってもよい。
【0064】
演算部50は、車体情報(車体重量M1、装置重量M2、重心位置P10)が設定されると、図6A図6Cに示すように、車体重量M1と装置重量M2とを加算した重量と、加速度検出装置41mが検出した車体3の前後方向の加速度Aによって、前後方向の慣性力F1を求める。また、演算部50は、前後方向の慣性力F1と重力G1の合成ベクトルB1を求め、合成ベクトルB1を延長して、地面などの接地面G10と交差する位置をZMPの前後方向の位置として設定する。
【0065】
また、演算部50は、図7A図7Dに示すように、車体重量M1と加速度検出装置41mが検出した車体3の幅方向の加速度A´によって、幅方向の慣性力F2を求める。また、演算部50は、幅方向の慣性力F2と重力G1の合成ベクトルB2を求め、合成ベクトルB2を延長して、接地面G10と交差する位置をZMPの幅方向の位置として設定する。
【0066】
加速調整部51は、演算部50が演算したZMPに基づいて、作業車両(作業機)1の加速を調整する。図7A及び図7Bに示すように、加速調整部51は、作業車両(作業機)1の前後方向(進行方向)において予め定められた第1エリアK1の範囲内に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作量)に応じて制御弁44の調整し、原動機4の回転数を設定する。
【0067】
一方、図7Cに示すように、加速調整部51は、第1エリアK1の範囲外に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44に適用せず、手動操作量時の開度(第1開度)とは別の開度に設定し、作業車両1(車体3)の加速度Aを調整する。
具体的には、加速調整部51は、第1エリアK1の後側に演算部50が演算したZMPが位置する場合、即ちZMPが前後方向の範囲の後側に超過する傾向にある場合、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44に適用せず、制御弁44の開度が、第1開度よりも小さい第2開度に設定することで、作業車両1(車体3)の加速度Aを低下させる。
【0068】
従って、例えば、図6Cに示すように、作業車両1が図6Bに比べて急な坂道(登り勾配)を走行し、ZMPが作業車両1の後側になる場合、加速調整部51がZMPに基づいて車体3の加速を調整することにより、前後方向の加速度Aを調整してZMPを作業車両1の前側に向かって移動させることによって、転倒(後転)を抑止することができる。
なお、作業車両1が図6Bに比べて急な坂道(下り勾配)を走行し、ZMPが作業車両1の前側になる場合、加速調整部51がZMPに基づいて車体3の加速を調整してもよい。加速調整部51は、前後方向の加速度Aを調整して、ZMPを作業車両1の後側に向かって移動させることによって、転倒(前転)を抑止することができる。
【0069】
車速調整部52は、演算部50が演算したZMPに基づいて、作業車両1(車体3)の車速を調整する。図7A及び図7Bに示すように、車速調整部52は、作業車両1(車体3)の幅方向において予め定められた第2エリアK2の範囲内に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作量)に応じて制御弁44の調整し、原動機4の回転数を設定する。
【0070】
一方、図7C図7Dに示すように、車速調整部52は、第2エリアK2の範囲外に演算部50が演算したZMPが位置する場合は、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44に適用せず、速度センサが検出した車速を取得し、手動操作量時の開度(第1開度)とは別の開度に設定し、作業車両1(車体3)の車速を調整する。具体的には、車速調整部52は、演算部50が演算したZMPが第2エリアK2の幅方向外側に位置する場合、即ちZMPが幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、運転者等が操作したアクセルペダル43の操作量(手動操作)を制御弁44に適用せず、制御弁44の開度が、第1開度よりも小さい第4開度に設定することで、作業車両1(車体3)の車速を低下させる。
【0071】
従って、例えば、図7Cに示すように、作業車両1が図7Bに比べて急に旋回走行し、ZMPが作業車両1の幅方向外側になる場合、加速調整部51がZMPに基づいて車体3の加速を調整することにより、向心加速度A´が減少、即ち遠心力(幅方向の慣性力)F2を減少することでZMPを作業車両1の幅方向内側に向かって移動させ、転倒(横転)を抑止することができる。さらに、図7Dに示すように、作業車両1が旋回方向と反対側に向かって下方に傾斜している斜面を走行する場合は、ZMPが作業車両1の幅方向外側になるため、車速を調整し、遠心力F2を減少することでZMPを作業車両1の幅方向内側に向かって移動させて、転倒(横転)を抑止することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態において、作業車両1は、加速調整部51と車速調整部52との両方を備え、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づき、加速と車速の両方を調整すること車体3の転倒を抑止するが、前後方向の転倒を抑止するために加速調整部51のみを備えていても、幅方向の転倒を抑止するために車速調整部52のみを備えていてもよいし、その構成は、上述した構成に限定されない。
【0073】
上述した作業車両1は、車体3と、車体3に作業装置2を連結する連結装置8と、車体3の走行時の加速度を検出する加速度検出装置41mと、加速度検出装置41mが検出した加速度Aと車体3に関する車体情報に基づいて、車体3におけるゼロモーメントポイントを演算する演算部50と、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づいて、車体3の加速を調整する加速調整部51と、を備えている。これによれば、走行の状態、即ち、加速度Aによって簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、車体3の加速度Aを調整することで車体3の転倒を抑止することができる。
【0074】
演算部50は、車体情報である車体3の重量M1と加速度Aとから得られる慣性力F1に基づいて、ゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、車体3の重量M1がわかれば簡単に、ゼロモーメントポイントを求めることができる。
車体情報として、車体3の重量M1を入力する表示装置60を備えている。これによれば、運転者等が表示装置60を操作するだけで簡単に車体3の重量M1を入力することができる。特に、車体3にウエイトなどの重量物を装着した場合もウエイトを含む車体3の重量M1を適正に反映することができる。
【0075】
作業車両1は、車体3と、車体3に作業装置2を連結する連結装置8と、車体3の走行時の加速度Aを検出する加速度検出装置41mと、加速度検出装置41mが検出した加速度Aと、車体3に関する車体情報と、作業装置2に関する装置情報とに基づいて、車体3に作業装置2を連結したときのゼロモーメントポイントを演算する演算部50と、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づいて、車体3の加速を調整する加速調整部51と、を備えている。これによれば、車体3に作業装置2を装着しながら走行しているときのゼロモーメントポイントを簡単に求めることができ、車体3の加速度Aを調整することで車体3の転倒を抑止することができる。
【0076】
演算部50は、車体情報である車体3の重量M1と、装置情報である作業装置2の重量と、加速度Aとから得られる慣性力F1に基づいて、ゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、農作業等の作業に応じて装着される作業装置2の重量を反映したゼロモーメントポイントを簡単に求めることができる。
車体情報として車体3の重量M1を入力し、装置情報として作業装置2の重量を入力する表示装置60を備えている。これによれば、運転者等が表示装置60を操作するだけで、車体3の重量M1だけでなく、作業に用いる作業装置2の重量を入力することができる。
【0077】
作業車両1は、車体3に設けられた原動機4を備え、加速調整部51は、原動機4の回転を設定するアクセルの開度を調整する。これによれば、ゼロモーメントポイントを求めた後に、簡単に車体3の加速度Aを調整することができる。
また、上述した作業車両1は、車体3と、車体3に作業装置2を連結する連結装置8と、車体3の走行時の加速度A,A´を検出する加速度検出装置41mと、加速度検出装置41mが検出した加速度A,A´と車体3に関する車体情報に基づいて、車体3におけるゼロモーメントポイントを演算する演算部50と、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づいて、車体3の車速を調整する車速調整部52と、を備えている。これによれば、加速度検出装置41mが検出した加速度A,A´に基づく車体3の走行の状態、即ち車体3に付与されている慣性力F1,F2によって、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができる。また、これにより、車速調整部52が当該求めたゼロモーメントポイントによって車体3の車速を調整することで慣性力F2の大きさを変更し、作業車両1は、車体3の転倒を抑止することができる。
【0078】
また、演算部50は、車体情報である車体3の重量と加速度A,A´とから得られる慣性力F1,F2に基づいて、ゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、演算部50は、車体3の重量M1を取得することで簡単に、ゼロモーメントポイントを求めることができ、作業車両1は、当該ゼロモーメントポイントに基づく車速調整によって車体3の転倒を抑止できる。
【0079】
また、演算部50は、慣性力F1,F2と、車体3に生じる重力G1と、の合成ベクトルB1,B2に基づいて、ゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、複雑な演算処理を行うことなく、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、作業車両1は、当該ゼロモーメントポイントに基づく車速調整によって車体3の転倒を抑止できる。
また、作業車両1は、車体情報として、車体3の重量を入力する表示装置60を備えている。これによれば、運転者等が表示装置60を操作するだけで簡単に車体3の重量M1を入力することができる。特に、車体3にウエイトなどの重量物を装着した場合であっても、ウエイトを含む車体3の重量M1を適正に反映することができ、車体3の転倒を一層正確に抑止することができる。
【0080】
また、作業車両1は、車体3と、車体3に作業装置2を連結する連結装置8と、車体3の走行時の加速度A,A´を検出する加速度検出装置41mと、加速度検出装置41mが検出した加速度A,A´と、車体3に関する車体情報と、作業装置2に関する装置情報とに基づいて、車体3に作業装置2を連結したときのゼロモーメントポイントを演算する演算部50と、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づいて、車体3の車速を調整する車速調整部52と、を備えている。これによれば、加速度検出装置41mが検出した加速度A,A´に基づく車体3の走行の状態、即ち車体3に付与されている慣性力F1,F2によって、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができる。また、これにより、車速調整部52が当該求めたゼロモーメントポイントによって車体3の車速を調整することで慣性力F1,F2の大きさを変更し、作業車両1は、車体3の転倒を抑止することができる。
【0081】
また、演算部50は、車体情報である車体3の重量と、装置情報である作業装置2の重量と、加速度A,A´とから得られる慣性力に基づいて、ゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、農作業等の作業に応じて装着される作業装置2の重量を反映したゼロモーメントポイントを簡単に求めることができ、車体3に作業装置2を連結している場合であっても、車体3の転倒を正確に抑止することができる。
【0082】
また、演算部50は、慣性力F1,F2に加え、車体3に生じる重力G1と、作業装置2に生じる重力G1と、の合成ベクトルB1,B2によってゼロモーメントポイントを演算する。これによれば、車体3に作業装置2を連結している場合であっても複雑な演算処理を行うことなく、簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、作業車両1は、当該ゼロモーメントポイントに基づく車速調整によって車体3の転倒を抑止できる。
【0083】
また、連結装置8は、車体3に作業装置2を昇降可能に連結する昇降装置であり、装置情報は、作業装置2の上下方向の位置情報を含み、演算部50は、装置情報を参照し、慣性力F1,F2と、車体3に生じる重力G1と、作業装置2に生じる重力G1と、の合成ベクトルB1,B2を算出する。これによれば、車体3に対する作業装置2の位置が変動する場合であっても、簡単且つ適切にゼロモーメントポイントを求めることができ、例えば作業装置2が上昇しており、作業車両1の作業車両1は、当該ゼロモーメントポイントに基づく車速調整によって車体3の転倒を抑止できる。
【0084】
また、車体情報として車体3の重量を入力し、装置情報として作業装置2の重量を入力する表示装置60を備えている。これによれば、運転者等が表示装置60を操作するだけで、車体3の重量M1だけでなく、作業に用いる作業装置2の重量を入力することができる。特に、車体3にウエイトなどの重量物を装着した場合や、車体3に連結する作業装置2を散布装置等の比較的軽量な作業装置2から、ロールベーラ等の比較的重量がある作業装置2に変更する場合であっても、ウエイトを含む車体3の重量M1や作業装置2の重量を適正に反映することができ、車体3の転倒を一層正確に抑止することができる。
【0085】
また、作業車両1は、車体3に設けられた原動機4を備え、車体3は、原動機4が発生させた駆動力によって走行する走行装置7と、走行装置7の制動を行う制動装置26と、を有し、車速調整部52は、原動機4の回転を設定するアクセルの開度を調整、及び/又は制動装置26を制御して車速を調整する。これによれば、車速調整部52が従来の作業車両1が備える機構を制御することによって、車体3の転倒を簡単に抑止することができ、大がかりな車速調整装置を設けることなく、上述した効果を奏する作業車両1を簡単に導入することができる。
【0086】
また、加速度検出装置41mは、車体3の走行時の加速度A,A´のうち、少なくとも車体3の幅方向の加速度A´を検出し、車速調整部52は、ゼロモーメントポイントが幅方向の範囲を超過する傾向にある場合、車速を減速調整する。これによれば、車体3の幅方向の加速度A´、即ち車体3に付与されている幅方向の慣性力F2によって車体3が転倒することを抑制することができ、特に車体3が旋回動作している場合に、作業車両1は、車体3の速度を調整し、車体3に付与される遠心力F2を減少させて、車体3の横転を抑止することができる。
【0087】
また、作業車両1は、演算部50が演算したゼロモーメントポイントに基づいて、車体3の加速を調整する加速調整部51を備えている。これによれば、走行の状態、即ち、加速度Aによって簡単にゼロモーメントポイントを求めることができ、車体3の加速度Aを調整することで車体3の転倒を防止することができる。
また、加速度検出装置41mは、幅方向の加速度A´に加え、車体3の前後方向の加速度Aを検出し、加速調整部51は、ゼロモーメントポイントが前後方向の範囲を前側に超過する傾向にある場合、車体3の加速を増加調整し、ゼロモーメントポイントが前後方向の範囲を後側に超過する傾向にある場合、車体3の加速を減少調整する。これによれば、車体3の前後方向の加速度A、即ち車体3に付与されている前後方向の慣性力F1によって車体3が転倒することを抑制することができ、特に車体3が傾斜面を走行している場合に、作業車両1は、車体3の加速度を調整し、車体3に付与される加速度Aを増加させて車体3の前転を抑止し、車体3に付与される加速度Aを減少させて車体3の後転を抑止することができる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上述した実施形態においては記憶部50aや表示記憶部60aが重心位置等を記憶している構成について説明したが、制御装置40と表示装置60が記憶領域を備える外部のサーバと通信可能である場合、当該サーバが重心位置等の情報を記憶しているような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 :作業車両
2 :作業装置
3 :車体
4 :原動機
7 :走行装置
8 :連結装置
26 :制動装置
40 :制御装置
41m :加速度検出装置
44 :原動機
50 :演算部
50a :記憶部
51 :加速調整部
52 :車速調整部
60 :表示装置
60a :表示記憶部
A :前後方向の加速度
A´ :幅方向の加速度
B1 :合成ベクトル
B2 :合成ベクトル
F1 :前後方向の慣性力
F2 :幅方向の慣性力(遠心力)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9