(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】シール部材組付治具
(51)【国際特許分類】
B25B 27/28 20060101AFI20240924BHJP
B23P 19/02 20060101ALI20240924BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20240924BHJP
F16D 65/00 20060101ALI20240924BHJP
F16D 55/228 20060101ALI20240924BHJP
F16D 65/14 20060101ALI20240924BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20240924BHJP
F16D 125/08 20120101ALN20240924BHJP
【FI】
B25B27/28
B23P19/02 E
F16J15/00 C
F16D65/00 E
F16D55/228
F16D65/14
F16D125:06 A
F16D125:08 A
F16D125:08 Z
(21)【出願番号】P 2021112243
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】関 雄峰
(72)【発明者】
【氏名】工藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】中村 和義
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博樹
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221603(JP,A)
【文献】特開2003-011024(JP,A)
【文献】米国特許第04222161(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 25/00-33/00;
B23P 19/00-21/00;
F16D 1/00-131/02;
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のシール部材の内径よりも小さな外径を有する円形状の保持部材と、該保持部材の外周面に設けられ、縮径させた状態の前記シール部材を保持する環状の保持溝部と、該保持溝部に開口して前記シール部材の一部が径方向に押し込まれて挿入される挿入溝部と、前記保持部材を環状のシール溝の内側に挿入した状態で、縮径された前記シール部材を元の状態に復帰させることにより、前記シール溝に前記シール部材を組み付ける復帰具とを有し、
前記保持部材は、前記シール部材の内径に対応する外径を備えた基板と、該基板の上面に配置され、該基板より小さな外径を有するとともに、直径方向に前記挿入溝部を有するガイド部材と、該ガイド部材の上面に配置され、前記基板の外径よりも大径に形成される天板部材とを有するシール部材組付治具において、
前記基板を上面に配置する支持部材と、該支持部材にスライド可能に装着され、先端側を基板上に突出させるとともに前記基板の径方向にスライド可能に配置し、前記保持溝部に保持された前記シール部材を前記シール溝の方向に押圧する一対のシール押圧爪とを設け、
前記基板は、前記挿入溝部に対応する位置に形成されるスライド溝と、該スライド溝に直交し、一対の前記シール押圧爪を前記基板の径方向にスライド可能にガイドするシール押圧爪ガイド部とを備え、
前記支持部材は、前記スライド溝に連通する空間部を内部に備えた筐体で、前記復帰具を内部に挿通させる復帰具挿通孔を備え、
前記復帰具は、前記復帰具挿通孔を介して前記スライド溝と平行方向にスライド可能に挿入されるスライド部材と、該スライド部材から上方に突設し、前記スライド溝を通して前記挿入溝部に先端部が挿入されて該挿入溝部に挿入されたシール部材の一部を元の状態に復帰させる戻し部材と、一対の前記シール押圧爪を
前記シール押圧爪ガイド部に沿って前記基板の径方向に移動させるシール押圧爪作動部とを備えていることを特徴とするシール部材組付治具。
【請求項2】
前記シール押圧爪作動部は、
シール押圧爪ガイド部方向の幅が狭い幅狭部と、該幅狭部から前記スライド部材の挿入端部側に向けて、漸次、幅が広くなるテーパー部とを備え、
一対の前記シール押圧爪は、前記支持部材にスライド可能に設けられる基部と、前記シール部材を押圧する爪部とを備え、前記基部を対向させてそれぞれ配置させるとともに、一対の前記基部の間に前記シール押圧爪作動部が配置され、
前記基部には、該基部を前記シール押圧爪作動部側に付勢する付勢部材が設けられ、
前記戻し部材は、前記テーパー部の幅狭部側に対応する位置に取り付けられ、
前記スライド部材の初期状態では、一対の前記基部は前記幅狭部に当接し、前記スライド部材をスライドさせるのに伴って一対の前記基部がテーパー部に沿って移動し、前記シール押圧爪作動部が作動するとともに、前記戻し部材が作動することを特徴とする請求項1記載のシール部材組付治具。
【請求項3】
前記保持部材に複数の前記保持溝部を多段的に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のシール部材組付治具。
【請求項4】
複数の前記保持溝部の間に配置される前記基板の外周部に、外端に向けて、漸次、薄肉となるテーパー面を形成したことを特徴とする請求項3記載のシール部材組付治具。
【請求項5】
前記シール部材組付治具は、前記保持溝部に、前記シール部材を縮径させた状態で保持させるシール部材縮径ガイドユニットを備え、該シール部材縮径ガイドユニットは、前記保持部材を挿入可能な内径を有する保持部材挿入穴と、該保持部材挿入穴の開口側内周部に設けられて前記シール部材を載置する環状のシール部材載置段部と、該シール部材載置段部に載置されたシール部材の一部を前記挿入溝部に押し込むことによって前記シール部材の残部を前記保持溝部に沿って縮径させる押し具とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシール部材組付治具。
【請求項6】
前記シール部材縮径ガイドユニットは、前記シール部材載置段部に載置したシール部材の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材を備え、該浮き上がり防止部材は、前記保持部材を前記保持部材挿入穴に挿入させた状態で、前記保持部材に被せる被せ部と、該被せ部から突出し、前記保持溝部に保持された前記シール部材の上部に配置される押え部とを備えたキャップ状に形成されることを特徴とする請求項5記載のシール部材組付治具。
【請求項7】
前記シール部材縮径ガイドユニットは、複数の前記シール部材載置段部を多段的に設けたことを特徴とする請求項5又は6記載のシール部材組付治具。
【請求項8】
複数の前記シール部材載置段部の間に、該シール部材載置段部の内周方向に突出する突出部を形成したことを特徴とする請求項7記載のシール部材組付治具。
【請求項9】
前記シール溝は、ディスクブレーキ用のキャリパボディのシリンダ孔に形成されたシール溝であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のシール部材組付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材組付治具に関し、例えば、ディスクブレーキのキャリパボディのシリンダ孔等に形成されたシール溝にシール部材を組み付けるシール部材組付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同一面に開口する2つの環状シール溝に、2つの環状シール部材を組み付ける際、例えば、ディスクブレーキのキャリパボディのシリンダ孔に形成されたピストンシール溝とダストシール溝とに、ピストンシールあるいはダストシールをそれぞれ組み付ける際等に、2つの環状シール溝に2つの環状シール部材を同時に、且つ、良好に組み付けることができるように、シール部材組付治具が用いられることがあった。
【0003】
このシール部材組付治具としては、環状のシール部材の内径よりも小さな外径を有する円形状の保持部材と、該保持部材の外周面に設けられ、縮径させた状態の前記シール部材を保持する環状の保持溝部と、該保持溝部に開口して前記シール部材の一部が径方向に押し込まれて挿入される挿入溝部と、前記保持部材を環状のシール溝の内側に挿入した状態で、縮径された前記シール部材を元の状態に復帰させることにより、前記シール溝に前記シール部材を組み付ける復帰具とを有し、前記保持部材は、前記シール部材の内径に対応する外径を備えた基板と、該基板の上面に配置され、該基板より小さな外径を有するとともに、直径方向に前記挿入溝部を有するガイド部材と、該ガイド部材の上面に配置され、前記基板の外径よりも大径に形成される天板部材とを有し、復帰具は、天板部材に、挿入溝部と平行な方向にスライド可能に設けられたスライド部材と、スライド部材から基板方向に突設され、天板部材に設けた挿入溝部と平行な方向のスリットを通して挿入溝部に先端部が挿入されて挿入溝部に挿入されたシール部材の一部を元の状態に復帰させる戻し部材とを備えたものがあった。
【0004】
このようなシール部材組付治具では、例えば、ピストンシールとダストシールとを縮径させた状態で保持させた保持部材を、キャリパボディのシリンダ孔開口部から挿入し、保持部材に保持させたピストンシールと、シリンダ孔に形成したピストンシール溝の位置を合致させるとともに、ダストシールとシリンダ孔に形成したダストシール溝の位置を合致させ、復帰具によってピストンシールとダストシールとを元の状態に復帰させ、弾発力にてダストシールとピストンシールとをダストシール溝とピストンシール溝にそれぞれ組み付けていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1のものでは、シール部材を縮径させた状態で保持させた保持部材を用いてシール部材をシール溝に組み付ける際、特に、シール部材の表面にグリースが塗布されている場合では、グリースによりシール部材が保持溝部から持ち上がりやすくなり、シール溝に確実に組み付けられないことがあった。
【0007】
そこで本発明は、シール部材をシール溝に確実に組み付けることができるシール部材組付治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のシール部材組付治具は、環状のシール部材の内径よりも小さな外径を有する円形状の保持部材と、該保持部材の外周面に設けられ、縮径させた状態の前記シール部材を保持する環状の保持溝部と、該保持溝部に開口して前記シール部材の一部が径方向に押し込まれて挿入される挿入溝部と、前記保持部材を環状のシール溝の内側に挿入した状態で、縮径された前記シール部材を元の状態に復帰させることにより、前記シール溝に前記シール部材を組み付ける復帰具とを有し、前記保持部材は、前記シール部材の内径に対応する外径を備えた基板と、該基板の上面に配置され、該基板より小さな外径を有するとともに、直径方向に前記挿入溝部を有するガイド部材と、該ガイド部材の上面に配置され、前記基板の外径よりも大径に形成される天板部材とを有するシール部材組付治具において、前記基板を上面に配置する支持部材と、該支持部材にスライド可能に装着され、先端側を基板上に突出させるとともに前記基板の径方向にスライド可能に配置し、前記保持溝部に保持された前記シール部材を前記シール溝の方向に押圧する一対のシール押圧爪とを設け、前記基板は、前記挿入溝部に対応する位置に形成されるスライド溝と、該スライド溝に直交し、一対の前記シール押圧爪を前記基板の径方向にスライド可能にガイドするシール押圧爪ガイド部とを備え、前記支持部材は、前記スライド溝に連通する空間部を内部に備えた筐体で、前記復帰具を内部に挿通させる復帰具挿通孔を備え、前記復帰具は、前記復帰具挿通孔を介して前記スライド溝と平行方向にスライド可能に挿入されるスライド部材と、該スライド部材から上方に突設し、前記スライド溝を通して前記挿入溝部に先端部が挿入されて該挿入溝部に挿入されたシール部材の一部を元の状態に復帰させる戻し部材と、一対の前記シール押圧爪を前記シール押圧爪ガイド部に沿って前記基板の径方向に移動させるシール押圧爪作動部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、前記シール押圧爪作動部は、シール押圧爪ガイド部方向の幅が狭い幅狭部と、該幅狭部から前記スライド部材の挿入端部側に向けて、漸次、幅が広くなるテーパー部とを備え、一対の前記シール押圧爪は、前記支持部材にスライド可能に設けられる基部と、前記シール部材を押圧する爪部とを備え、前記基部を対向させてそれぞれ配置させるとともに、一対の前記基部の間に前記シール押圧爪作動部が配置され、前記基部には、該基部を前記シール押圧爪作動部側に付勢する付勢部材が設けられ、前記戻し部材は、前記テーパー部の幅狭部側に対応する位置に取り付けられ、前記スライド部材の初期状態では、一対の前記基部は前記幅狭部に当接し、前記スライド部材をスライドさせるのに伴って一対の前記基部がテーパー部に沿って移動し、前記シール押圧爪作動部が作動するとともに、前記戻し部材が作動すると好ましい。
【0010】
さらに、前記保持部材に複数の前記保持溝部を多段的に設けると良い。
【0011】
また、複数の前記保持溝部の間に配置される前記基板の外周部に、外端に向けて、漸次、薄肉となるテーパー面を形成すると好適である。
【0012】
さらに、前記シール部材組付治具は、前記保持溝部に、前記シール部材を縮径させた状態で保持させるシール部材縮径ガイドユニットを備え、該シール部材縮径ガイドユニットは、前記保持部材を挿入可能な内径を有する保持部材挿入穴と、該保持部材挿入穴の開口側内周部に設けられて前記シール部材を載置する環状のシール部材載置段部と、該シール部材載置段部に載置されたシール部材の一部を前記挿入溝部に押し込むことによって前記シール部材の残部を前記保持溝部に沿って縮径させる押し具とを備えていると好ましい。
【0013】
また、前記シール部材縮径ガイドユニットは、前記シール部材載置段部に載置したシール部材の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材を備え、該浮き上がり防止部材は、前記保持部材を前記保持部材挿入穴に挿入させた状態で、前記保持部材に被せる被せ部と、該被せ部から突出し、前記保持溝部に保持された前記シール部材の上部に配置される押え部とを備えたキャップ状に形成されると好適である。
【0014】
さらに、前記シール部材縮径ガイドユニットは、複数の前記シール部材載置段部を多段的に設けると良い。
【0015】
また、複数の前記シール部材載置段部の間に、該シール部材載置段部の内周方向に突出する突出部を形成すると好適である。
【0016】
さらに、前記シール溝は、ディスクブレーキ用のキャリパボディのシリンダ孔に形成されたシール溝であると好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシール部材組付治具によれば、シール押圧爪を備えていることにより、シール部材をシール溝に組み付ける際に、保持部材に保持させた縮径したシール部材を、シール溝の位置と合致させ、復帰具によってシール部材を元の状態に復帰させ、さらに、シール押圧爪作動部によって一対のシール押圧爪を基板の径方向に移動させ、シール部材をシール溝の方向に押圧することにより、シール部材をシール溝に確実に組み付けることができる。特に、シール部材にグリースを塗布した場合でも、シール部材をシール溝に確実に組み付けることができる。
【0018】
また、シール押圧爪作動部は、シール押圧爪ガイド部方向の幅が狭い幅狭部と、該幅狭部から前記スライド部材の挿入端部側に向けて、漸次、幅が広くなるテーパー部とを備え、一対のシール押圧爪は、支持部材にスライド可能に設けられる基部とシール部材を押圧する爪部とを備え、基部を対向させてそれぞれ配置させるとともに、一対の基部の間にシール押圧爪作動部が配置され、基部には、該基部を前記シール押圧爪作動部側に付勢する付勢部材を備え、スライド部材は、テーパー部の幅狭部側に対応する位置に戻し部材が取り付けられることにより、スライド部材をスライドさせることにより、戻し部材が縮径されたシール部材の一部を元の状態に復帰させ、これに伴って、シール押圧爪が基板の径方向外側に移動し、爪部がシール部材をシール溝の方向に押圧させることから、シール部材をシール溝に装着させながらシール部材をシール溝の方向に押圧することができる。これにより、シール部材をシール溝に確実に装着させることができるとともに、作業の効率性を向上させることができる。
【0019】
さらに、保持部材に、複数の保持溝部を多段的に設けたことにより、複数のシール部材を複数のシール溝にそれぞれ同時に組み付けることができる。
【0020】
また、複数の保持溝部の間に配置される基板の外周部に、外端に向けて、漸次、薄肉となるテーパー面を形成したことにより、シール部材載置段部に複数載置されたシール部材同士を、グリースによって密着させることなく、保持溝部に沿って良好に縮径させることができる。
【0021】
さらに、シール部材組付治具は、保持溝部に、シール部材を縮径させた状態で保持させるシール部材縮径ガイドユニットを備え、シール部材縮径ガイドユニットは、保持部材を挿入可能な内径を有する保持部材挿入穴と、該保持部材挿入穴の開口側内周部に設けられてシール部材を載置する環状のシール部材載置段部と、該シール部材載置段部に載置されたシール部材の一部を挿入溝部に押し込むことによってシール部材の残部を保持溝部に沿って縮径させる押し具とを備えていることにより、保持溝部に、シール部材を縮径させた状態で良好に保持させることができる。
【0022】
また、シール部材縮径ガイドユニットは、シール部材載置段部に載置したシール部材の浮き上がりを防止する浮き上がり防止部材を備えたことにより、シール部材縮径ガイドユニットを用いて保持部材にシール部材を縮径させた状態で保持させる際に、シール部材組付ユニットの保持溝部にシール部材を確実に保持させることができる。特に、シール部材にグリースを塗布した場合でも、シール部材が持ち上がることを防止でき、シール部材組付ユニットの保持溝部にシール部材を確実に保持させることができる。
【0023】
さらに、シール部材縮径ガイドユニットに、複数のシール部材載置段部を多段的に設けたことにより、複数のシール部材を保持部材に同時に保持させることができる。
【0024】
また、複数のシール部材載置段部の間に、シール部材載置段部の内周方向に突出する突出部を形成したことにより、グリースを塗布した複数のシール部材がグリースにより密着することを防止できる。
【0025】
さらに、シール溝は、ディスクブレーキ用のキャリパボディのシリンダ孔に形成されたシール溝であることにより、シリンダ孔に形成されたピストンシール溝やダストシール溝に、ピストンシールやダストシールを良好に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1形態例を示すシール部材組付治具の分解斜視図である。
【
図6】シール部材を載置したシール部材縮径ガイドユニットにシール部材組付ユニットをセットした状態の平面図である。
【
図10】シール部材を載置したシール部材縮径ガイドユニットにシール部材組付ユニットをセットし、浮き上がり防止部材を装着した状態の平面図である。
【
図13】シール部材を縮径させて保持部材に保持させた状態の平面図である。
【
図17】
図16のXVII-XVII断面図で、シール部材組付ユニットをシリンダ孔に挿入した状態を示す説明図である。
【
図19】
図20のXIX-XIX断面図で、シール部材組付ユニットにてピストンシールとダストシールとをピストンシール溝とダストシール溝とに組み付けた状態を示す説明図である。
【
図22】本発明の第2形態例を示すシール部材縮径ガイドユニットの本体部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1乃至
図21は本発明のシール部材組付治具の第1形態例を示す図で、キャリパボディのシリンダ孔に形成されたピストンシール溝にピストンシールを、ダストシール溝にダストシールをそれぞれ同時に組み付ける際に用いられるシール部材組付治具を示している。
【0028】
本形態例のディスクブレーキ1は、車輪と一体に回転するディスクロータと、該ディスクロータの一側部で車体に固設されるモノコック構造ピストン対向型のキャリパボディ2と、該キャリパボディ2の内部にディスクロータを挟んで対向配置される一対の摩擦パッドとを備えている。
【0029】
キャリパボディ2は、ディスクロータの両側部に配置される一対の作用部2a,2aと、ディスクロータの外周を跨ぐブリッジ部2bとを一体に備え、作用部2a,2aには、ディスクロータ側が開口したシリンダ孔3が2個づつ並列してそれぞれ設けられている。各シリンダ孔3には、ピストンシール6が組み付けられるピストンシール溝4と、ダストシール7が組み付けられるダストシール溝5がそれぞれ周設され、シリンダ孔3には、ピストンがピストンシール6とダストシール7とを介して収容される。
【0030】
ピストンシール6及びダストシール7は、シール部材組付治具10を用いて、ピストンシール溝4とダストシール溝5とにそれぞれ組み付けられる。シール部材組付治具10は、ピストンシール溝4とダストシール溝5にピストンシール6とダストシール7とを組み付けるシール部材組付ユニット11と、該シール部材組付ユニット11に、ピストンシール6とダストシール7とをそれぞれ縮径させた状態で保持させるシール部材縮径ガイドユニット31とで構成されている。
【0031】
また、本形態例のシール部材組付治具10は、キャリパボディ2の作用部2aに、並列して設けられた2つのシリンダ孔3,3にピストンシール6やダストシール7を同時に組み付けられるように、同一構造の2組のシール部材組付治具10,10を並列に設けている。
【0032】
シール部材組付ユニット11は、ピストンシール6及びダストシール7の内径よりも小さな外径を有する円形状の保持部材12と、該保持部材12の外周面に設けられて、シリンダ孔3の内径よりも小さな外径に縮径させた状態のピストンシール6及びダストシール7をそれぞれ保持する、環状のピストンシール保持溝部13及びダストシール保持溝部14と、該ピストンシール保持溝部13及びダストシール保持溝部14にそれぞれ開口して、ピストンシール6あるいはダストシール7の一部が径方向にそれぞれ押し込まれて挿入されるピストンシール挿入溝部15及びダストシール挿入溝部16と、前記保持部材12を上面に配置する支持部材17と、保持部材12と支持部材17とをシリンダ孔3に挿入した状態で、縮径させたピストンシール6及びダストシール7の一部を元の状態に復帰させる復帰具18と、支持部材17にスライド可能に装着され、復帰具18によって元の状態に復帰したピストンシール6及びダストシール7を、ピストンシール溝の方向あるいはダストシール溝の方向にそれぞれ押圧する一対のシール押圧爪19,19とを備えている。
【0033】
保持部材12は、ダストシール7及びピストンシール6の内径に対応する外径を備え、支持部材17の上面に配置される第1の基板12aと、該第1の基板12aの上方に配置され、第1の基板12aと同径に形成される第2の基板12bと、第2の基板12bの上面に配設され、ピストンシール6を縮径させて保持するピストンシールガイド部材12cと、第2の基板12bの下面に配設され、ダストシール7を縮径させて保持するダストシールガイド部材12dと、ピストンシールガイド部材12cの上面に配置され、第2の基板12bと同径に形成される天板部材12eとで形成されている。
【0034】
第1の基板12aは、支持部材17の上面に一体的に設けられ、ダストシール挿入溝部16及びピストンシール挿入溝部15に対応する位置に、復帰具18の戻し部材18aが挿通される第1スライド溝12fと、該第1スライド溝12fの中心位置で第1スライド溝12fに直交し、一対の前記シール押圧爪19,19を第1の基板12aの径方向にスライド可能にガイドするシール押圧爪ガイド溝12g(本発明のシール押圧爪ガイド部)とを備えている。
【0035】
第2の基板12bは、第1の基板12aと同様に、ダストシール挿入溝部16及びピストンシール挿入溝部15に対応する位置に、復帰具18の戻し部材18aが挿通される第2スライド溝12hを備えている。さらに、第2の基板12bの上面及び下面の中間位置には、ダストシール挿入溝部16及びピストンシール挿入溝部15の反開口側に向けて漸次肉厚となる上面肉厚部12iと下面肉厚部12jとがそれぞれ設けられている。また、第2の基板12bの外周部には、外端に向けて、漸次、薄肉となるテーパー面12kが形成されている。
【0036】
ダストシールガイド部材12dとピストンシールガイド部材12cとは、第2の基板12bよりも小さな外径をそれぞれ有するとともに、ダストシールガイド部材12dには、直径方向に前記ダストシール挿入溝部16が、ピストンシールガイド部材12cには、直径方向に前記ピストンシール挿入溝部15がそれぞれ同一方向に形成されている。また、ダストシールガイド部材12dとピストンシールガイド部材12cと第2の基板12bとには、シール押圧爪ガイド溝12gに対応する位置に、該シール押圧爪ガイド溝12gに連通する開口部12m(本発明のシール押圧爪ガイド部)が形成されている。
【0037】
天板部材12eは、第2の基板12bと同径の円盤状に形成され、天板部材12eと第2の基板12bとの間に前記ピストンシール保持溝部13が形成される。
【0038】
支持部材17は、上面に第1の基板12aが一体に形成され、第1スライド溝12f及びシール押圧爪ガイド溝12gに連通する空間部E1を内部に備えた略箱状に形成されている。また、一側面には、復帰具18を、第1スライド溝12fと平行方向に空間部E1に挿入させる復帰具挿通孔17aが設けられている。また、支持部材17の底部には、一対のシール押圧爪19,19を第1の基板12aの径方向にスライド可能にガイドするガイド部17bが形成されている。
【0039】
シール押圧爪19は、ガイド部17bにスライド可能に設けられる基部19aと、該基部19aからシール押圧爪ガイド溝12gに突出し、第1の基板上を径方向にスライド可能に配置される第1爪部19bと、該基部19aから開口部12mを介して、第2の基板上に突出するとともに、第2の基板上を径方向にスライド可能に配置される第2爪部19cとを備えている。一対のシール押圧爪19,19は、基部19a,19aを対向させた状態でガイド部17bに配置され、一対の基部19a,19aの間に後述する復帰具18のシール押圧爪作動部18bが配置される。また、基部19a,19aと支持部材17との間には、基部19a,19aを後述するスライド部材側に付勢するスプリング20(本発明の付勢部材)がそれぞれ設けられている。
【0040】
復帰具18は、支持部材17の復帰具挿通孔17aから挿入され、第1スライド溝12f及び第2スライド溝12hと平行方向にスライド可能に配置される棒状のスライド部材18cと、該スライド部材18cから第1の基板12a及び第2の基板12b方向に突設される戻し部材18aと、スライド部材18cに形成され、一対のシール押圧爪19,19を第1の基板12a及び第2の基板12bの径方向にスライドさせるシール押圧爪作動部18bとを備えている。
【0041】
シール押圧爪作動部18bは、スライド部材18cの軸線方向中間部に形成され、シール押圧爪ガイド溝方向の幅が狭い幅狭部18dと、該幅狭部18dからスライド部材18cの挿入端部18e側に向けて、漸次、幅が広くなるテーパー部18fとを備え、テーパー部18fの中間位置には、戻し部材18aを装着させる上下方向の装着孔18gが形成されている。なお、本形態例では、支持部材17に並列して設けられた一対の復帰具挿通孔17a,17aにそれぞれ挿通される一対のスライド部材18c,18cが連結部材18hで連結されている。
【0042】
そして、これら天板部材12eと、ピストンシールガイド部材12cと、第2の基板12bと、ダストシールガイド部材12dと、第1の基板12a及び支持部材17とを複数のボルトと連結ピンで連結することにより、天板部材12eと第2の基板12bとの間に、前記ダストシール保持溝部14とダストシール挿入溝部16とが形成されるとともに、第2の基板12bと第1の基板12aとの間に、前記ピストンシール保持溝部13とピストンシール挿入溝部15とが形成される。さらに、ピストンシール挿入溝部15は、押し込んだピストンシール6の一部を保持可能な形状に、ダストシール挿入溝部16は、押し込んだダストシール7の一部を保持可能な形状にそれぞれ形成される。また、シール押圧爪19は、第1爪部19bが、第1の基板12aの上面に、第1の基板12aの径方向にスライド可能に配置されるとともに、第2爪部19cが、第2の基板12bの上面に、第2の基板12bの径方向にスライド可能に配置される。
【0043】
シール部材縮径ガイドユニット31は、本体部32と、押し具33と、浮き上がり防止部材34とを備えている。本体部32は、保持部材12の第1の基板12aと、ダストシールガイド部材12dと、第2の基板12bと、ピストンシールガイド部材12cとを挿入可能な内径と深さとを有する保持部材挿入穴32aと、保持部材挿入穴32aの上部側に設けられ、ピストンシール6を載置する環状のピストンシール載置段部32bと、該保持部材挿入穴32aの下部側に設けられ、ダストシール7を載置する環状のダストシール載置段部32cと、本体部32の外面とピストンシール載置段部32b及びダストシール載置段部32cの周壁とに開口して押し具33を径方向に挿通する押し具挿通部32dとを備えている。ピストンシール載置段部32bは、周壁と底壁とを備えた段状に形成され、底壁にピストンシール6が載置され、周壁上方は解放されている。また、ダストシール載置段部32cも、周壁と底壁とを備えた段状に形成され、底壁にダストシール7が載置される。そして、保持部材挿入穴32aに保持部材12を挿入した際に、ピストンシール載置段部32bの底壁と、ピストンシール保持溝部13を構成する第2の基板12bとが同一平面上に、ダストシール載置段部32cの底壁と、ダストシール保持溝部14を構成する第1の基板12aとが同一平面上にそれぞれ配置される。
【0044】
押し具33は、ダストシール載置段部32cに載置されたダストシール7の一部を、ダストシール挿入溝部16に押し込み、さらに、ピストンシール載置段部32bに載置されたピストンシール6の一部を、ピストンシール挿入溝部15に同時に押し込むことができる高さ寸法及び長さ寸法を有し、さらに、先端部には、幅狭の押込部33aが形成されている。なお、本形態例の押し具33は、本体部32に並列して設けられた一対の保持部材挿入穴32a,32aにそれぞれ挿通される一対の押し具33が連結部材33bで連結されている。
【0045】
浮き上がり防止部材34は、保持部材12を保持部材挿入穴32aに挿入させた状態で、天板部材12eの上部に被せる被せ部34aと、該被せ部34aから突出し、ピストンシール保持溝部13に保持されたピストンシール6の上方に配置される押え部34bとを備えたキャップ状に形成され、ピストンシール6の浮き上がりを防止する。
【0046】
次に、
図6乃至
図21に基づいて、シール部材組付治具10を用いて、ピストンシール溝4とダストシール溝5とに、ピストンシール6とダストシール7とを組み付ける組付工程について説明する。
【0047】
まず、
図2乃至
図5に示されるように、シール部材組付ユニット11は、スライド部材18cを支持部材17の復帰具挿通孔17aから挿入し、シール押圧爪19,19の基部19a,19aをスライド部材18cの挿入端部18e側の軸部に当接させ、戻し部材18aを、第1スライド溝12fと第2スライド溝12hとを通して第2の基板12bよりも上方に突出させる。この状態で、第1爪部19b,19bは、外周面がダストシールガイド部材12dの外周面よりも外周側に突出して配置され、第2爪部19c,19cは、外周面がピストンシールガイド部材12cの外周面よりも外周側に突出して配置される。また、戻し部材18aは、第1スライド溝12fと第2スライド溝12hの復帰具挿通孔17a側に配置される。なお、
図2では、左側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを省略し、保持部材12の内部状態を表し、右側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを装着した状態を表している。
【0048】
次いで、スライド部材18cを支持部材17内にさらに押し込む。このとき、シール押圧爪19,19は、基部19a,19aがスプリング20によりシール押圧爪作動部18b方向に付勢されていることから、基部19a,19aは、軸部からテーパー部18fに沿って、互いに近づく方向に移動し、幅狭部18dに当接する。これに伴って、第1爪部19b,19bは、第1の基板12aの径方向内側に移動し、第2爪部19c,19cは、第2の基板12bの径方向内側に移動する。そして、第1爪部19b,19bは、外周面がダストシールガイド部材12dの外周面よりも内周側に配置され、第2爪部19c,19cは、外周面がピストンシールガイド部材12cの外周面よりも内周側に配置される。また、戻し部材18aは第1スライド溝12fと第2スライド溝12hの奥部に移動する。
【0049】
次に、
図6乃至
図9に示されるように、シール部材縮径ガイドユニット31は、ダストシール載置段部32cにグリースを塗布したダストシール7を、ピストンシール載置段部32bにグリースを塗布したピストンシール6をそれぞれ載置させる。さらに、スライド部材18cを上述のように支持部材17内に押し込んだ状態のシール部材組付ユニット11の保持部材12の上部から、シール部材縮径ガイドユニット31の保持部材挿入穴32aを被せ、第1の基板12aの上部にシール部材縮径ガイドユニット31をセットする。この状態で、第1の基板12aの上面と、ダストシール載置段部32cとが面一となり、第2の基板12bの上面と、ピストンシール載置段部32bとが面一となる。なお、
図6において、左側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを省略し、保持部材12の内部状態を表し、右側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを装着した状態を表している。
【0050】
次に、
図10乃至
図12に示されるように、天板部材12eの上部に浮き上がり防止部材34を被せ、ピストンシール6の上方に押え部34bを配置する。なお、
図10の左側に示すシール部材組付治具10は、天板部材12eと浮き上がり防止部材34とを省略し、保持部材12の内部状態を表し、右側に示すシール部材組付治具10は、天板部材12eと浮き上がり防止部材34とを装着した状態を表している。
【0051】
さらに、
図13乃至
図15に示されるように、押し具33を押し具挿通部32dに挿入し、押込部33aによって、ダストシール載置段部32cに載置したダストシール7の一部をダストシール挿入溝部16に押し込むとともに、ダストシール7の残部をダストシール保持溝部14に沿って縮径させる。この時、ダストシール7の内周面が、ダストシールガイド部材12dの外周面と、シール押圧爪19の第2爪部19cの先端面とに当接するまで、ダストシール7の一部をダストシール挿入溝部16に押し込むことにより、ダストシール7の残部が縮径して、ダストシール保持溝部14に配置される。
【0052】
また、これと同時に、ピストンシール載置段部32bに載置したピストンシール6の一部をピストンシール挿入溝部15に押し込むとともに、ピストンシール6の残部をピストンシール保持溝部13に沿って縮径させる。この時、ピストンシール6の内周面が、ピストンシールガイド部材12cの外周面と、シール押圧爪19の第1爪部19bの先端面とに当接するまで、ピストンシール6の一部をピストンシール挿入溝部15に押し込むことにより、ピストンシール6の残部が縮径して、ピストンシール保持溝部13に配置される。なお、
図13の左側に示すシール部材組付治具10は、天板部材12eと浮き上がり防止部材34とを省略し、保持部材12の内部状態を表し、右側に示すシール部材組付治具10は、天板部材12eと浮き上がり防止部材34とを装着した状態を表している。
【0053】
次に、天板部材12eの上部から浮き上がり防止部材34を取り外すとともに押し具33を押し具挿通部32dから抜き出す。このとき、ダストシール挿入溝部16に押し込まれたダストシール7の一部は、下面肉厚部12jによって第2の基板12bとの上下幅が狭くなった部分に押し込まれることにより、ダストシール挿入溝部16への押し込み状態が維持され、ダストシール7の縮径状態が保持される。さらに、ピストンシール挿入溝部15に押し込まれたピストンシール6の一部は、上面肉厚部12iによって天板部材12eとの上下幅が狭くなった部分に押し込まれることにより、ピストンシール挿入溝部15への押し込み状態が維持され、ピストンシール6の縮径状態が保持される。さらに、ダストシール7及びピストンシール6を縮径状態で保持した保持部材12の上部から、シール部材縮径ガイドユニット31を取り外す。
【0054】
次いで
図16及び
図18に示されるように、ダストシール7及びピストンシール6を縮径状態で保持したシール部材組付ユニット11を、シリンダ孔3に挿入し、キャリパボディ2のシリンダ孔開口部先端面と支持部材17とを当接させ、ダストシール7とダストシール溝5、ピストンシール6とピストンシール溝4の位置をそれぞれ合致させた状態とする。なお、
図16では、左側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを省略し、保持部材12の内部状態を表し、右側に示すシール部材組付ユニット11は、天板部材12eを装着した状態を表している。
【0055】
次に、
図19及び
図21に示されるように、スライド部材18cを反ブリッジ部側にスライドさせ、これに伴って、戻し部材18aを、第1スライド溝12f及び第2スライド溝12hに沿って、反ブリッジ側にスライドさせる。これにより、ピストンシール挿入溝部15に挿入されたピストンシール6の一部と、ダストシール挿入溝部16に挿入されたダストシール7の一部とを元の状態に復帰させ、ピストンシール6とダストシール7の弾発力にてピストンシール6とダストシール7とをピストンシール溝4とダストシール溝5とにそれぞれ挿入させる。さらに、スライド部材18cのスライドに伴って、シール押圧爪19,19の基部19a,19aの当接位置が、幅狭部18dからテーパー部18fに移動し、第1爪部19bをシール押圧爪ガイド溝12gに沿って、第1の基板12aの径方向外側に移動させ、ダストシール7をダストシール溝の方向に押圧するとともに、第2爪部19cを開口部12mを介して第2の基板12bの径方向外側に移動させ、ピストンシール6をピストンシール溝の方向に押圧し、ダストシール7とピストンシール6とをダストシール溝5とピストンシール溝4にそれぞれ組み付ける。
【0056】
本形態例は上述のように形成されることにより、シール部材組付治具10を用いて、キャリパボディ2に設けられたシリンダ孔3のピストンシール溝4とダストシール溝5とに、グリースを塗布したピストンシール6とダストシール7とを良好に組み付けることができる。特に、モノコック構造ピストン対向型のキャリパボディ2では、対向するシリンダ孔3,3の間に設けられる作業空間が狭くなるが、シール部材組付治具10を用いることでピストンシール6とダストシール7とを確実に組み付けることができる。
【0057】
また、シール押圧爪19,19を作動させるシール押圧爪作動部18bは、戻し部材18aを取り付けたスライド部材18cに設けられ、戻し部材18aが縮径されたダストシール7及びピストンシール6を元の状態に復帰させるのに伴って、シール押圧爪19,19の第1爪部19bと第2爪部19cとがダストシール7とピストンシール6とをダストシール溝の方向とピストンシール溝の方向に押圧することから、ピストンシール6とダストシール7とをピストンシール溝4とダストシール溝5とに確実に装着させることができるとともに、作業の効率性を向上させることができる。
【0058】
さらに、シール部材縮径ガイドユニット31を用いてシール部材組付ユニット11にピストンシール6を縮径させた状態で保持させる際に、浮き上がり防止部材34により、グリースを塗布たピストンシール6が浮き上がることを防止できる。
【0059】
また、シール部材組付ユニット11の保持部材12に、ピストンシール保持溝部13とダストシール保持溝部14とを多段的に設けたことにより、ピストンシール6とダストシールとをピストンシール溝4とダストシール溝5とに同時に組み付けることができる。さらに、第2の基板12bの外周部に、外端に向けて、漸次、薄肉となるテーパー面12kを形成したことにより、ダストシール載置段部32cに載置したダストシール7の一部をダストシール挿入溝部16に押し込むとともに、ダストシール7の残部をダストシール保持溝部14に沿って縮径させ、これと同時に、ピストンシール載置段部32bに載置したピストンシール6の一部をピストンシール挿入溝部15に押し込むとともに、ピストンシール6の残部をピストンシール保持溝部13に沿って縮径させる際に、ダストシール載置段部32cに載置したダストシール7とピストンシール載置段部32bに載置したピストンシール6とがグリースによって密着した状態となっていたとしても、第2の基板12bのテーパー面12kによって、ピストンシール6とダストシール7の密着状態を解除させることができ、ダストシール7とピストンシール6とをダストシール保持溝部14とピストンシール保持溝部13に沿って良好に縮径させることができる。
【0060】
さらに、シール部材縮径ガイドユニット31に、ダストシール載置段部32cとピストンシール載置段部32bとを多段的に設けたことにより、ダストシール保持溝部14とピストンシール保持溝部13とを多段的に備えたシール部材組付ユニット11の保持部材12に、ピストンシール6とダストシール7を同時に保持させることができる。
【0061】
図22及び
図23は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0062】
本形態例のシール部材縮径ガイドユニット31の本体部32は、多段的に設けたピストンシール載置段部32bとダストシール載置段部32cとの間に、該ピストンシール載置段部32bの内周方向に突出する環状の突出部32eが形成されている。これにより、ピストンシール載置段部32bとダストシール載置段部32cに載置したピストンシール6とダストシール7とが、塗布したグリースにより密着することを防止できる。
【0063】
なお、上述の各形態例では、キャリパボディに並列して設けられた2つのシリンダ孔にピストンシールやダストシールを同時に組み付けられるように、同一構造の2組のシール部材組付治具を並列に設けているが、本発明はこれに限らず、キャリパボディに設けられたシリンダ孔の数に応じて、1組のシール部材組付治具のみでも良く、また、3組以上のシール部材組付治具を並列に設けてもよい。
【0064】
また、ピストンシールやダストシールを一度に組み付けるものでなくても良く、シール部材組付ユニットは、保持部材に複数の保持溝部を多段的に設けていなくてもよく、シール部材縮径ガイドユニットは、複数のシール部材載置段部を多段的に設けていなくてもよい。さらに、第2の基板の外周部にテーパー面を形成していなくてもよい。また、本発明のシール部材組付治具は、モノコック構造ピストン対向型のキャリパボディのシリンダ孔にピストンシールやダストシールを組み付ける際に用いられるものに限らず、どのようなタイプのキャリパボディのシリンダ孔にピストンシールやダストシールを組み付ける際にも、広く用いることができる。
【0065】
さらに、本発明のシール部材組付治具は、上述の形態例のように、キャリパボディのシリンダ孔に形成したピストンシール溝とダストシール溝とに、ピストンシールとダストシールとを装着させる際に用いるものに限らず、環状のシール溝にシール部材を組み付ける際に広く用いることができる。さらに、シール部材にグリースを塗布した場合に限らず、グリースを塗布しない場合でも適用することができる。また、上述の各形態例のシール部材組付治具は、シール部材組付ユニットと、シール部材縮径ガイドユニットとで構成されているが、本発明のシール部材組付治具は、シール部材縮径ガイドユニットを備えていなくても差し支えなく、保持部材にシール部材を縮径させた状態で保持させる方法は任意である。
【符号の説明】
【0066】
1…ディスクブレーキ、2…キャリパボディ、2a…作用部、2b…ブリッジ部、3…シリンダ孔、4…ピストンシール溝、5…ダストシール溝、6…ピストンシール、7…ダストシール、10…シール部材組付治具、11…シール部材組付ユニット、12…保持部材、12a…第1の基板、12b…第2の基板、12c…ピストンシールガイド部材、12d…ダストシールガイド部材、12e…天板部材、12f…第1スライド溝、12g…シール押圧爪ガイド溝、12h…第2スライド溝、12i…上面肉厚部、12j…下面肉厚部、12k…テーパー面、12m…開口部、13…ピストンシール保持溝部、14…ダストシール保持溝部、15…ピストンシール挿入溝部、16…ダストシール挿入溝部、17…支持部材、17a…復帰具挿通孔、17b…ガイド部、18…復帰具、18a…戻し部材、18b…シール押圧爪作動部、18c…スライド部材、18d…幅狭部、18e…挿入端部、18f…テーパー部、18g…装着孔、18h…連結部材、19…シール押圧爪、19a…基部、19b…第1爪部、19c…第2爪部、20…スプリング、31…シール部材縮径ガイドユニット、32…本体部、32a…保持部材挿入穴、32b…ピストンシール載置段部、32c…ダストシール載置段部、32d…押し具挿通部、32e…突出部、33…押し具、33a…押込部、33b…連結部材、34…浮き上がり防止部材、34a…被せ部、34b…押え部