(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エレベータ・ロボット制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 21/44 20130101AFI20240924BHJP
B66B 1/14 20060101ALN20240924BHJP
B66B 17/20 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
G06F21/44
B66B1/14 F
B66B17/20 A
(21)【出願番号】P 2021160487
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利光
(72)【発明者】
【氏名】松信 公一
(72)【発明者】
【氏名】八木沢 賢一
【審査官】▲柳▼谷 侑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111099462(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109573754(CN,A)
【文献】国際公開第2020/213516(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0287164(US,A1)
【文献】国際公開第2020/194395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/44
B66B 1/14
B66B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットがエレベータで移動するときにロボットによるエレベータ制御を管理するエレベータ・ロボット制御システムにおいて、
エレベータへのアクセス要求のあったロボットとエレベータ間の通信を行うエレベータゲートウェイを備え、
エレベータゲートウェイは、
ロボットがエレベータに近接したとき、近接したロボットへエレベータの制御権を与えるワンタイムパスワードをロボットに送付するワンタ
イムパスワード発行部と、
ロボットから前記ワンタイムパスワードとエレベータの制御要求を受付けたときロボットの制御要求に応じ
、ロボットの移動優先度情報を格納した優先度テーブルを参照して、制御要求のあったロボットの優先度に基づいてエレベータ制御を許可する制御部と
、
セキュリティ情報を検知するセンサからのイベント検出があったとき、イベントの検出を受付け、優先度テーブルの前記イベントに関連付けられたサービスを提供するロボットの優先順位を上げる優先度更新部とを備えるエレベータ・ロボット制御システム。
【請求項2】
移動優先
度情報は、ロボットの提供するサービス種別に基づいて定められている請求項
1に記載のエレベータ・ロボット制御システム。
【請求項3】
移動優先
度情報は、ロボットがエレベータで移動する時刻に基づいて定められている請求項
1に記載のエレベータ・ロボット制御システム。
【請求項4】
前記
移動優先度情報は、一度ロボットからアクセス要求を受付けたとき、次にアクセス要求を受付け可能になるまでの時間を示す再連動不可期間である請求項
2又は3に記載のエレベータ・ロボット制御システム。
【請求項5】
前記ワンタイムパスワードは、制御部がエレベータとの連動を可能とするまで有効である請求項
1に記載のエレベータ・ロボット制御システム。
【請求項6】
ロボットがエレベータで移動するときにロボットによるエレベータ制御を管理するエレベータ・ロボット制御システムにおいて実行されるエレベータ・ロボット制御方法であって、
前記エレベータ・ロボット制御システムは、
エレベータゲートウェイがエレベータへのアクセス要求のあったロボットとエレベータ間の通信を行い、
ワンタイムパスワード発行部が、ロボットがエレベータに近接したとき、近接したロボットへエレベータの制御権を与えるワンタイムパスワードを送付する第1のステップと、
制御部が、ロボットから前記ワンタイムパスワードとエレベータの制御要求を受付けたときロボットの制御要求に応じ
、ロボットの移動優先度情報を格納した優先度テーブルを参照して、制御要求のあったロボットの優先度に基づいてエレベータ制御を許可する第2のステップと
、
優先度更新部が、セキュリティ情報を検知するセンサからのイベント検出があったとき、イベントの検出を受付け、優先度テーブルの前記イベントに関連付けられたサービスを提供するロボットの優先順位を上げる第3のステップとを備えるエレベータ・ロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ・ロボット制御システム及び方法に関し、例えばロボットが各種API(Application Programming Interface)を通じてエレベータを制御可能なシステムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、清掃を行う清掃ロボットや、小型荷物を搬送する搬送ロボット、及び、来訪者の案内を行う案内ロボットなどの各種サービスを提供するロボットの社会実装が進められている。この種のロボットのうち、オフィスビル、商業ビル又はマンションなどにおいて複数階に跨ってサービスを提供するロボットは、エレベータを利用して各階を移動することになる。その際、この種のロボットは、APIを通じてエレベータを制御することにより、乗りかごの呼び出しや、行先階の指定及びドアの開閉などを行う。
【0003】
しかしながら、エレベータのAPIを公開した場合、遠隔でエレベータを制御できるようになるために悪意ある第三者(以下、これを悪意者と呼ぶ)による不正アクセスが可能となり、この結果として実際にエレベータを利用したい人やロボットがエレベータを利用できなくなるという事態が生じるおそれがある。
【0004】
ここで、不正アクセスを防止する認証方法として、特許文献1に開示された認証方法が知られている。この認証方法では、まず、携帯端末装置から認証サーバ装置に対してワンタイムパスワード(以下、OTP(One Time Password)と呼ぶ)の発行を依頼し、発行されたOTPを認証させたい家電製品に送信する。そして家電製品は、受信したOTPを認証サーバ装置に送信して認証を求める。認証サーバ装置は、携帯端末装置に対して家電製品の認証を許可するか否かの確認を求め、携帯端末装置が許可した場合にその家電製品の認証を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人と同じエレベータをロボットが利用するためには、家電製品と比べてより高い安全性や、不正操作及び誤操作に対する予防能力が求められる。しかしながら、OTPによるセキュリティ対策だけでは、遠隔地にいる悪意者からのシステムに対する不正アクセスを回避することや、遠隔地にいるロボットのエレベータに対する誤操作を完全には防止できない。この結果、悪意者の不正アクセスやロボットの誤操作により不測の事態が発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、遠隔地にいる悪意者の不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置の誤操作に起因する不測の事態の発生を防止し得る信頼性の高いエレベータ・ロボット制御システム及び方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、ロボットがエレベータで移動するときにロボットによるエレベータ制御を管理するエレベータ・ロボット制御システムにおいて、エレベータへのアクセス要求のあったロボットとエレベータ間の通信を行うエレベータゲートウェイを設け、エレベータゲートウェイに、ロボットがエレベータに近接したとき、近接したロボットへエレベータの制御権を与えるワンタイムパスワードをロボットに送付するワンタイムパスワード発行部と、ロボットから前記ワンタイムパスワードとエレベータの制御要求を受付けたときロボットの制御要求に応じ、ロボットの移動優先度情報を格納した優先度テーブルを参照して、制御要求のあったロボットの優先度に基づいてエレベータ制御を許可する制御部と、セキュリティ情報を検知するセンサからのイベント検出があったとき、イベントの検出を受付け、優先度テーブルの前記イベントに関連付けられたサービスを提供するロボットの優先順位を上げる優先度更新部とを設けるようにした。
【0009】
また本発明においては、ロボットがエレベータで移動するときにロボットによるエレベータ制御を管理するエレベータ・ロボット制御システムにおいて実行されるエレベータ・ロボット制御方法であって、前記エレベータ・ロボット制御システムは、エレベータゲートウェイがエレベータへのアクセス要求のあったロボットとエレベータ間の通信を行い、ワンタイムパスワード発行部が、ロボットがエレベータに近接したとき、近接したロボットへエレベータの制御権を与えるワンタイムパスワードを送付する第1のステップと、制御部が、ロボットから前記ワンタイムパスワードとエレベータの制御要求を受付けたときロボットの制御要求に応じ、ロボットの移動優先度情報を格納した優先度テーブルを参照して、制御要求のあったロボットの優先度に基づいてエレベータ制御を許可する第2のステップと、優先度更新部が、セキュリティ情報を検知するセンサからのイベント検出があったとき、イベントの検出を受付け、優先度テーブルの前記イベントに関連付けられたサービスを提供するロボットの優先順位を上げる第3のステップとを設けるようにした。
【0010】
本発明のエレベータ・ロボット制御システム及び方法によれば、エレベータ装置に物理的に近接した状態のロボット装置のみがエレベータゲートウェイを介してそのエレベータ装置を制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遠隔地にいる悪意者の不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置の誤動作に起因する不測の事態の発生を防止し得る信頼性の高いエレベータ・ロボット制御システム及び方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態によるエレベータ・ロボット連動システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施の形態のロボット装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第2の実施の形態のエレベータゲートウェイの構成を示すブロック図である。
【
図4】ロボット管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図5】エレベータ管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図6】ログイン管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図7】エレベータ稼動情報テーブルの構成例を示す図表である。
【
図8】エレベータ・ロボット連動管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図9】第1の実施の形態におけるエレベータ・ロボット連動処理のログインフェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図10】エレベータ・ロボット連動処理のエレベータ運転モード切替フェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図11】エレベータ・ロボット連動処理の乗車フェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図12】エレベータ・ロボット連動処理の行先階指定及びドア閉鎖フェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図13】エレベータ・ロボット連動処理の降車フェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図14】エレベータ・ロボット連動処理の連動停止フェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図15】(A)~(
E)は、エレベータ・ロボット連動システムにおける各種期間の説明に供する図である。
【
図16】優先度管理テーブルの構成例を示す図表である。
【
図17】第2の実施の形態によるエレベータ・ロボット連動システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図18】第2の実施の形態におけるエレベータ・ロボット連動処理のログインフェーズでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、以下においては、ロボットがエレベータのかごを呼ぶ、ドアを開くというような制御だけでなくより広い範囲の連動を行うエレベータ・ロボット連動システムとしてエレベータ・ロボット制御システムを説明する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
(1-1)本実施の形態によるエレベータ・ロボット連動システムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるエレベータ・ロボット連動システムを示す。このエレベータ・ロボット連動システム1は、ロボット装置2、エレベータゲートウェイ3及びエレベータシステム4を備えて構成される。またエレベータゲートウェイ3及びエレベータシステム4間がインターネット、LAN(Local Area Network)又は携帯電話回線などの有線又は無線のネットワーク7を介して通信自在に接続されている。
【0015】
ロボット装置2は、エレベータ装置5が設置されたオフィスビル、商業ビル又はマンションなどの建屋内を自律的に又は予め定められたルートに沿って移動可能な移動型ロボットであり、
図2に示すように、制御装置10、移動機構11、近距離無線通信装置12、無線通信装置13及び自己位置推定センサ14を備えて構成される。
【0016】
制御装置10は、演算装置15及びメモリ16を備えたコンピュータ装置から構成される。演算装置15は、ロボット装置2全体の動作制御を司るプロセッサでありCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などから構成される。またメモリ16は、演算装置15のワークメモリとして利用される記憶装置である。メモリ16には、ロボット装置2に特定のサービスを提供させるための各種プログラムや、自ロボット装置2が配置された建屋内の各階の構造(エレベータ装置の設置位置を含む)を表す図示しない地図情報などが予め格納される。
【0017】
また移動機構11は、ロボット装置2が移動するための推進力を発生させる機構部であり、人の脚を模倣した脚機構や車輪又はクローラなどの推進力発生部と、かかる推進力発生部を駆動するモータ等のアクチュエータとなどから構成される。
【0018】
近距離無線通信装置12は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、ZigBee若しくは無線LANなどの電波通信や、IrDA(Infrared Data Association)などの赤外線近距離通信、超音波通信、光通信又はこれらを複数組み合わせた近距離無線通信を行い得る通信装置から構成される。また無線通信装置13は、Wi-Fiや携帯電話回線などの所定の無線通信規格に準拠した通信装置から構成される。ロボット装置2は、この無線通信装置13を介してネットワーク7に接続することができる。
【0019】
自己位置推定センサ14は、LRF(Laser Range Finder)、LiDAR(Light imaging Detection and Ranging)、カメラ、GPS(Global Positioning System)受信機、超音波センサ、赤外線センサ、若しくはToF(Time of Flight)センサなどの各種センサ又はこれら複数センサの組み合わせから構成される。ロボット装置2は、演算装置15により、自己位置推定センサ14の自己位置推定結果と、メモリ16に格納された自ロボット装置2が配置された建屋内の地図情報とに基づいて、その建屋内における自ロボット装置2の現在位置を推定したり、周囲のエレベータ装置5を特定する。
【0020】
エレベータシステム4は、1又は複数のエレベータ装置5と、エッジ端末6及びEV利用状況確認センサ8とを備えて構成される。各エレベータ装置5は、それぞれ利用者が乗車する図示しない乗りかごと、昇降路内で乗りかごを昇降させる昇降機と、乗りかごのドアを開閉させるドア開閉機構と、これら昇降機及びドア開閉機構を制御する制御盤5Aとなどを備え、それぞれ独立したエレベータとしてのサービスを利用者に提供する。
【0021】
またエッジ端末6は、これらエレベータ装置5の制御盤5Aからそのエレベータ装置5の稼働状態を表す稼働情報を取得し、取得した稼働情報を要求に応じてネットワーク7を介してエレベータゲートウェイ3に送信したり、エレベータゲートウェイ3からネットワーク7を介して与えられた要求に従って対応するエレベータ装置5の制御盤5Aに必要な指示を与える機能を有するコンピュータ装置である。このためエッジ端末6は、ネットワーク7を介してエレベータゲートウェイ3と通信を行うためのネットワークインタフェース(図示せず)を備えている。
【0022】
EV利用状況確認センサ8は、カメラ、超音波センサ、赤外線センサ、若しくはToFセンサなどの各種センサ又はこれら複数センサの組み合わせから構成される。EV利用状況確認センサ8が取得したセンサ情報をエッジ端末6に送信することで、エッジ端末6は受信したセンサ情報を基にエレベータ装置5の稼働情報だけでは把握できない、エレベータホールでエレベータを待機している人やロボットの数などを把握することができる。なおエッジ端末6が、待機している人やロボットの数などをエレベータ装置5の稼働情報の一つとしてエレベータゲートウェイ3に送信するようにしてもよい。
【0023】
エレベータゲートウェイ3は、ネットワーク7を介して行われるロボット装置2及びエレベータシステム4間の通信を中継する中継サーバである。このエレベータゲートウェイ3は、
図3に示すように、演算装置20、記憶装置21、近距離無線通信装置22及びネットワークインタフェース23を備えた汎用のサーバ装置から構成される。なお、エレベータゲートウェイ3はエレベータ装置5が設置されている建物と同じ建物内に設置されてもよいし、クラウドサーバのように離れた場所に設置されてもよい。
【0024】
演算装置20は、エレベータゲートウェイ3全体の動作制御を司るプロセッサであり、CPUやGPUなどから構成される。また記憶装置21は、例えば、ハードディスク装置又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の大容量の記憶装置と、揮発性の半導体メモリとなどから構成される。記憶装置21が提供する記憶領域の一部は演算装置20のワークメモリとして利用され、残りの記憶領域が各種プログラムや各種制御情報を長期的に保持するために利用される。
【0025】
近距離無線通信装置22は、ロボット装置2の近距離無線通信装置12(
図2)と同様の通信装置であり、そのアンテナ(図示せず)が各エレベータ装置5の近傍又は各階のエレベータホールにそれぞれ設置されている。これによりエレベータゲートウェイ3は、ロボット装置2が物理的にエレベータ装置5に近接した場合にのみ、この近距離無線通信装置22を利用してそのロボット装置2と通信を行うことができる。またネットワークインタフェース23は、ネットワーク7の通信規格に準拠した通信装置である。エレベータゲートウェイ3は、このネットワークインタフェース23を介してネットワーク7経由でロボット装置2やエレベータシステム4のエッジ端末6と通信を行うことができる。
【0026】
(1-2)エレベータ・ロボット連動機能
次に、本エレベータ・ロボット連動システム1に搭載されたエレベータ・ロボット連動機能について説明する。このエレベータ・ロボット連動機能は、ロボット装置2が、自己が配置された建屋内の他の階に移動するためにエレベータゲートウェイ3を介してエレベータシステム4の所望するエレベータ装置5と連動し、そのエレベータ装置5をエレベータゲートウェイ3を介して制御する機能である。
【0027】
実際上、本エレベータ・ロボット連動システム1の場合、エレベータゲートウェイ3は、エレベータ装置5を制御するためのAPIをロボット装置2に提供する。本実施の形態の場合、このようなAPIとして、OTP発行要求API、ログイン要求API、エレベータ状態取得API、エレベータ連動要求API、エレベータ制御要求API、ドア制御要求API及びエレベータ連動停止APIがある。
【0028】
OTP発行要求APIは、ロボット装置2がエレベータゲートウェイ3にOTPの発行を要求するためのAPIである。なお、このOTP発行要求APIは、近距離無線通信装置12(
図2)を利用したエレベータゲートウェイ3との通信時にのみロボット装置2が利用するAPIである。これ以外の以下に説明するAPIは、無線通信装置13(
図2)を利用したネットワーク7経由でのエレベータゲートウェイ3との通信時に利用される。
【0029】
ログイン要求APIは、予めエレベータゲートウェイ3に登録されたロボットID、及びパスワードを利用してロボット装置2がエレベータゲートウェイ3へのログインを要求するためのAPIである。またエレベータ状態取得APIは、ロボット装置2が、所望するエレベータ装置5の現在の稼動情報の提供をエレベータゲートウェイ3に要求するためのAPIであり、エレベータ連動要求APIは、ロボット装置2が、所望するエレベータ装置5との連動をエレベータゲートウェイ3に要求するためのAPIである。
【0030】
さらにエレベータ制御要求APIは、ロボット装置2が、所望するエレベータ装置5に対して、乗りかごを呼んだり、行先階を指定するなどの制御を行うためのAPIであり、ドア制御要求APIは、ロボット装置2が、そのエレベータ装置5のドアを開閉制御するためのAPIである。さらにエレベータ連動停止APIは、ロボット装置2が、連動しているエレベータ装置5との連動を停止することをエレベータゲートウェイ3に要求するためのAPIである。
【0031】
そしてロボット装置2は、これらのAPIを利用してエレベータゲートウェイ3にログインし、当該エレベータゲートウェイ3を介して所望するエレベータ装置5と連動してその動作を制御することにより、そのエレベータ装置を利用して所望する階に移動する。
【0032】
このようなエレベータ・ロボット連動機能を実現するための手段として、エレベータゲートウェイ3の記憶装置21には、
図3に示すように、エレベータ・ロボット連動(制御)プログラム24、ロボット管理テーブル25、エレベータ管理テーブル26、ログイン管理テーブル27、エレベータ稼動情報テーブル28、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29及び優先度管理テーブル30が格納されている。
【0033】
エレベータ・ロボット連動(制御)プログラム24は、ロボット装置2のログイン管理を行うログイン管理部24A、ロボット装置2がエレベータ装置5との連動を要求してきた際にOTPを発行し認証を行うOTP発行部24B、認証したロボット装置2からの要求に応じてエレベータ装置5を制御するための各種処理をエレベータゲートウェイ3に実行させるためのエレベータ・ロボット連動部24Cから構成される一連のプログラムである。エレベータゲートウェイ3の演算装置20がこのエレベータ・ロボット連動(制御)プログラム24を実行することにより、エレベータゲートウェイ3全体としての後述のような各種処理が実行される。
【0034】
またロボット管理テーブル25は、エレベータゲートウェイ3が、予めエレベータ装置5の制御が許可された(予め登録された)ロボット装置2を管理し、悪意者や登録されていないロボット装置2からのアクセスを拒絶するために利用するテーブルである。このロボット管理テーブル25は、
図4に示すように、ロボットID欄25A、ロボットクラス欄25B、ID有効期限欄25C及びパスワード欄25Dを備えて構成される。ロボット管理テーブル25の1つのレコード(
図4の1つの行)は、予め登録された1台のロボット装置2に対応する。
【0035】
そしてロボットID欄25Aには、対応するロボット装置2に付与されたそのロボット装置2に固有の識別子(ロボットID)が格納され、ID有効期限欄25Cには、そのロボットIDの有効期限が格納される。ロボットIDはその有効期限内においてのみ有効であり、エレベータゲートウェイ3は、有効期限が超過したロボットIDが付与されたロボット装置2からのアクセスを拒絶する。
【0036】
ロボットクラス欄25Bには、そのロボット装置2のクラスが格納される。なお、ここでの「クラス」とは、そのロボット装置2が提供するサービスの職域を意味する。「クラス」の詳細については後述する。本実施の形態の場合、このような「クラス」として、例えば、建屋内の清掃を行う「清掃」、建屋内で物品の搬送を行う「搬送」、建屋内の警備を行う「警備」、建屋内で火災などが発生したときに消火作業等を行う「消防」などがある。
【0037】
またパスワード欄25Dには、対応するロボット装置2に予め設定された、そのロボット装置2に固有のパスワードが格納される。
【0038】
従って、
図4の例の場合、例えば、「A1001」というロボットIDが付与されたロボット装置2については、クラスが「搬送」であり、そのロボットIDの有効期限が「2022/07/27 12:34:56」、そのロボット装置2に設定されたパスワードが「AAAAA」であることが示されている。
【0039】
エレベータ管理テーブル26は、対象としている建屋(以下、これを対象建屋と呼ぶ)内に設置された各エレベータ装置5を管理するために利用されるテーブルであり、
図5に示すように、エレベータID欄26A、設置場所ID欄26B及び号機番号欄26Cを備えて構成される。エレベータ管理テーブル26の1つのレコード(
図5の1つの行)は、予め登録されている対象建屋内に設置された1つのエレベータ装置5に対応する。
【0040】
そしてエレベータID欄26Aには、対応するエレベータ装置5に付与されたそのエレベータ装置5に固有の識別子(エレベータID)が格納される。また設置場所ID欄26Bには、対象建屋の各階の各部位にそれぞれ付与されたその場所を表す識別子のうち、そのエレベータ装置5が設置された場所の識別子(設置場所ID)が格納される。
【0041】
さらに号機番号欄26Cには、対応する設置場所IDが付与された対象建屋内の対応する場所に複数のエレベータ装置5が設置されている場合に、対応するエレベータ装置5に付与されたそのエレベータ装置5に固有の号機番号が格納される。エレベータ装置5の号機番号としては、1から始まる連番が用いられる。
【0042】
従って、
図5の例の場合、「A1001」というエレベータIDが付与されたエレベータ装置5は、対象建屋内の「P3001」という設置場所IDが付与された場所に設置された複数のエレベータ装置5のうちの号機番号が「1」のエレベータ装置5であることが示されている。
【0043】
ログイン管理テーブル27は、エレベータゲートウェイ3が、自己にログイン中のロボット装置2を管理するために利用されるテーブルであり、
図6に示すように、ロボットID欄27A、OTP欄27B、OTP発行時刻欄27C、OTP有効期限欄27D、最終ログイン時刻欄27E、ログイン回数欄27F及び最終連動時刻欄27Gを備えて構成される。ログイン管理テーブル27の1つのレコード(図の1つの行)は、そのときログインしている1台のロボット装置2に対応する。
【0044】
そしてロボットID欄27Aには、そのレコードに対応するロボット装置2のロボットIDが格納され、OTP欄27Bには、そのロボット装置2に対して最後に発行されたOTPが格納される。なおOTPは、英数字と記号とを組み合わせた文字列から構成される。
【0045】
またOTP発行時刻欄27Cには、そのOTPをエレベータゲートウェイ3が発行した日時が格納され、OTP有効期限欄27Dには、そのOTPの有効期限が格納される。また最終ログイン時刻欄27Eには、そのロボット装置2がエレベータゲートウェイ3に最後にログインした日時が格納され、ログイン回数欄27Fには、そのロボット装置2がそれまでにエレベータゲートウェイ3にログインした合計回数が格納される。さらに最終連動時刻欄27Gには、そのロボット装置2が最後にエレベータ装置5と連動した日時が格納される。
【0046】
従って、
図6の例の場合、例えば、「A1001」というロボットIDのロボット装置2に対して最後に発行したOTPは「xxxx」、その発行日時は「2021/07/27 12:34:00」、有効期限は「2021/07/27 12:35:00」であり、そのOTPを用いてそのロボット装置2が最後にエレベータゲートウェイ3にログインした日時が「2021/07/27 12:34:21」、そのロボット装置2がそれまでにログインした合計回数は「11」回で、そのロボット装置2が最後にエレベータ装置5と連動した日時が「2021/07/26 18:57:04」であったことが示されている。
【0047】
なおログイン管理テーブル27は、登録されたロボット装置2にそれぞれ対応させて予めレコードが用意され(例えば、各レコードのロボットID欄27Aに既に登録された対応するロボット装置2のロボットIDが格納され、OTP欄27B、OTP発行時刻欄27C、OTP有効期限欄27D、最終ログイン時刻欄27E、ログイン回数欄27F及び最終連動時刻欄27Gが空欄の状態)ていてもよい。この場合、ロボット装置2がログインした後に、そのロボット装置2に対応するレコードのOTP欄27B、OTP発行時刻欄27C、OTP有効期限欄27D、最終ログイン時刻欄27E、ログイン回数欄27F及び最終連動時刻欄27Gに必要な情報を適宜格納すればよい。
【0048】
エレベータ稼動情報テーブル28は、エレベータゲートウェイ3がエレベータシステム4のエッジ端末6から最後に取得した各エレベータ装置5の稼動状態の情報である稼動情報を管理及び保持するために利用されるテーブルである。このエレベータ稼動情報テーブル28は、
図7に示すように、エレベータID欄28A、現在フロア欄28B、行先階欄28C、移動方向欄28D、ドア開閉状態欄28E、ロボット連動状態欄28F及び運転モード欄28Gを備えて構成される。エレベータ稼動情報テーブル28では、1つのレコード(
図7の1つの行)が建屋内に設置された1つのエレベータ装置5に対応する。
【0049】
そしてエレベータID欄28Aには、対応するエレベータ装置5のエレベータIDが格納され、現在フロア欄28Bには、そのエレベータ装置5の乗りかごが現在位置している階が格納される。また行先階欄28Cには、その乗りかごの行先階が格納される。ただし、乗りかごが停止中の場合(そのとき利用されていない場合)には、行先階欄28Cは空欄となる。
【0050】
さらに移動方向欄28Dには、その乗りかごの移動方向を表す情報(上昇の場合には「上」、下降の場合には「下」、停止している場合は「停止中」)が格納され、ドア開閉状態欄28Eには、そのとき乗りかごのドアが開放又は閉鎖のいずれの状態にあるかを表す情報(開放している場合には「開」、閉鎖している場合には「閉」)が格納される。
【0051】
さらにロボット連動状態欄28Fには、対応するエレベータ装置5がそのときいずれかのロボット装置2と連動しているか否かを表す情報(連動している場合には「連動中」、連動していない場合には空欄)が格納され、運転モード欄28Gには、そのときのそのエレベータ装置5の運転モードが格納される。なおエレベータ装置5の運転モードとしては、連動しているロボット装置2のみが利用可能なロボット専用モード(「ロボット専用」)と、ロボット専用モードではない通常の運転モード(「ロボット非専用」)の2つがある。
【0052】
従って、
図7の例の場合、例えば「E2001」というエレベータIDが付与されたエレベータ装置5については、運転モードが「ロボット専用」の運転モードに設定されており、現在の乗りかごの位置が「3」階で、行先階の「1」階に向けて「下」方向に移動しており、ドアは「閉」状態で、ロボット装置2と連動している(「連動中」)ことが示されている。
【0053】
エレベータ・ロボット連動管理テーブル29は、そのとき連動しているエレベータ装置5及びロボット装置2のペア(以下、これを連動ペアと呼ぶ)を管理するために利用されるテーブルであり、
図8に示すように、エレベータID欄29A、連動ロボットID欄29B、アクセストークン欄29C及びエレベータ連動要求承認時刻欄29Dを備えて構成される。エレベータ・ロボット連動管理テーブル29では、1つのレコード(
図8の1つの行)が1つの連動ペアに対応する。
【0054】
そしてエレベータID欄29Aには、対応する連動ペアを構成するエレベータ装置5のエレベータIDが格納され、連動ロボットID欄29Bには、その連動ペアを構成するロボット装置2のロボットIDが格納される。
【0055】
またアクセストークン欄29Cには、後述のようにエレベータゲートウェイ3がそのときそのロボット装置2に通知した各種API利用のためのアクセストークンが格納され、エレベータ連動要求承認時刻欄29Dには、そのロボット装置2からの近距離無線通信を通じた連動要求に応じてエレベータゲートウェイ3がそのロボット装置2とそのエレベータ装置5との連動を承認した日時が格納される。
【0056】
なお、アクセストークンは、エレベータゲートウェイ3がログインを認証したロボット装置2に対して通知する、英数字と記号とを組み合わせた文字列である。ロボット装置2は、エレベータゲートウェイ3にログイン中、エレベータゲートウェイ3に要求等を送信する際にその要求等にそのアクセストークンを付加する。これによりエレベータゲートウェイ3は、かかるアクセストークンに基づいて、その要求等が認証されたロボット装置2からのものであることを確認することができる。
【0057】
従って、
図8の例の場合、「E2001」というエレベータIDのエレベータ装置5は、「A1001」というロボットIDのロボット装置2と連動しており、そのときのログインでのアクセストークンは「xxxxx」で、そのエレベータ装置5とそのロボット装置2との連動を「2021/07/27 12:34:31」にエレベータゲートウェイ3が承認したことが示されている。
【0058】
なお、優先度管理テーブル30の詳細については後述する。
【0059】
(1-3)エレベータ・ロボット連動処理
次に、ロボット装置2がエレベータ装置5を利用して対象建屋の他の階に移動するためにロボット装置2、エレベータゲートウェイ3及びエレベータシステム4において行われる一連の処理(以下、これをエレベータ・ロボット連動処理と呼ぶ)の流れについて説明する。
【0060】
なお以下においては、ロボット装置2が行う各種処理の処理主体をロボット装置2として説明するが、実際上は、
図2について上述したそのロボット装置2の演算装置15がメモリ16に格納された対応するプログラムに基づいてその処理を実行することは言うまでもない。同様に、以下においては、エレベータゲートウェイ3が行う各種処理の処理主体をエレベータゲートウェイ3として説明するが、実際上は、
図3について上述したエレベータゲートウェイ3の演算装置20が記憶装置21に格納されたエレベータ・ロボット連動(制御)プログラム24に基づいてその処理を実行することは言うまでもない。
【0061】
(1-3-1)ログインフェーズにおける処理の流れ
図9は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置2がエレベータゲートウェイ3からOTPを通知されるまでのフェーズ(以下、これをログインフェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0062】
まず、エレベータゲートウェイ3は、ロボット装置2がAPIを利用して送信してくる各種要求に対する対応とは非同期に、周期的にエレベータシステム4のエッジ端末6から各エレベータ装置5の稼働情報を取得し、取得したこれらの稼働情報をエレベータ稼動情報テーブル28(
図7)に格納する(S1)。エレベータゲートウェイ3が各エレベータ装置5の稼働情報を取得する周期は、20ミリ秒周期などの固定値でもよく、またロボット装置2やエレベータ装置5の状況に応じて動的に変更するようにしてもよい。
【0063】
ロボット装置2はネットワーク7を介してエレベータゲートウェイ3にログイン要求APIを利用してログイン要求を送信する(S2)。この際、ロボット装置2は、自己のロボットID、パスワード及びクラスなどの各情報をかかるログイン要求に含めてネットワーク7経由でエレベータゲートウェイ3に送信する。なお、ログイン要求は任意の場所から送信することができ、ロボット装置2が対象建屋内にいなくても送信可能である。これは後述するエレベータの状態取得だけはロボット装置2が対象エレベータ装置5に近接していなくても任意の場所で行えるようにするためである。
【0064】
エレベータゲートウェイ3は、かかるログイン要求を受信すると、このログイン要求に含まれるそのロボット装置2のロボットID及びクラスと、パスワードとに基づいてそのロボット装置2のログイン認証を行う(S3)。具体的に、エレベータゲートウェイ3は、ログイン要求に含まれるロボットID、クラス及びパスワードに基づき、ロボット管理テーブル25(
図4)を参照して、そのロボット装置2が登録されたロボット装置であるか否か、ロボットIDが有効期限内であるか否かを判定する。
【0065】
そしてエレベータゲートウェイ3は、これらの判定によりそのロボット装置2がログイン可能なロボット装置であるとの最終判定が得られなかった場合(ログイン認証できなかった場合)には、その旨をそのロボット装置2に通知する。
【0066】
これに対して、エレベータゲートウェイ3は、ステップS3において、そのロボット装置2がログイン可能なロボット装置であるとの最終判定が得られた場合(ログイン認証ができた場合)には、そのロボット装置2にアクセストークンを通知する(S4)。このアクセストークンは、認証済みのロボット装置2を識別するための文字列であり、ロボット装置2は、この後、このアクセストークンを付加して各種API要求をエレベータゲートウェイ3に送信することになる。
【0067】
またエレベータゲートウェイ3は、ステップS3においてロボット装置2のログイン認証ができた場合には、ログイン管理テーブル27におけるそのロボット装置2に対応するレコードの最終ログイン時刻欄27Eに現在の時刻を最終ログイン時刻として格納し、ログイン回数欄27Fを更新する(S5)。
【0068】
またロボット装置2は、そのとき提供しているサービス内容に応じて現在の階よりも上の階又は下の階に移動する必要が発生したときに、所望するエレベータ装置(以下、これを対象エレベータ装置と呼ぶ)5の前にまで移動する(S6)。
【0069】
そしてロボット装置2は、近距離無線通信によりエレベータゲートウェイ3と通信可能な距離にまで対象エレベータ装置に接近すると、近距離無線通信装置12(
図2)を介してエレベータゲートウェイ3と近距離無線通信で接続し(S7)、その近距離無線通信を介してエレベータゲートウェイ3にOTPの発行要求(OTP発行要求)を送信する(S8)。この際、ロボット装置2は、予め設定されてメモリ16(
図2)に格納されている自己のロボットID及びパスワードと、ステップS4にてエレベータゲートウェイ3より通知されたアクセストークンとをかかるOTP発行要求に含めてエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0070】
エレベータゲートウェイ3は、かかるOTP発行要求を受信すると、ロボット管理テーブル25(
図4)の各レコードの中から、OTP発行要求に含まれるロボットID及びパスワードがそれぞれロボットID欄25Aやパスワード欄25Dにそれぞれ格納されているレコードであるか否か、及びエレベータ・ロボット連動管理テーブル29(
図8)の各レコードの中から、OTP発行要求に含まれるアクセストークンが格納されているアクセストークンであるか否かを判定する。そしてエレベータゲートウェイ3は、登録済みのレコードと判定できた場合には、そのロボット装置2が登録済みのロボット装置であると判断してOTPを発行し(S9)、発行したOTPを近距離無線通信装置12を介して近距離無線通信によりそのロボット装置2に通知する(S10)。
【0071】
なお、ステップS9で発行されるOTPは、ロボット装置2からのOTP発行要求を受信した時刻や、そのロボット装置2からそれまでに与えられたOTP発行要求の回数などに応じて動的に変化し、一定時間で無効となる有効期限が設定される。またエレベータゲートウェイ3は、ステップS9でOTPを発行した場合には、このとき発行したOTPと、そのOTPの発行時刻及び有効期限とをログイン管理テーブル27(
図6)に登録する。
【0072】
具体的に、OTP発行要求を送信してきたロボット装置2が過去にもOTP発行要求を送信してきたことがある場合には、既にロボットID欄27Aにそのロボット装置2のロボットIDが格納されたレコードがログイン管理テーブル27に存在するため、エレベータゲートウェイ3は、そのレコードのOTP欄27B及びOTP発行時刻欄27C及びOTP有効期限欄27Dにそれぞれそのとき発行したOTPと、そのOTPの発行時刻と、そのOTPの有効期限とを格納する。
【0073】
また、OTP発行要求を送信してきたロボット装置2が過去にOTP発行要求を送信してきたことがない場合には、エレベータゲートウェイ3は、ログイン管理テーブル27上に新たなレコードを作成し、そのレコードのロボットID欄27Aにそのロボット装置2のロボットIDを格納すると共に、そのレコードのOTP欄27B、OTP発行時刻欄27C及びOTP有効期限欄27Dにそれぞれそのとき発行されたOTPと、そのOTPの発行時刻と、そのOTPの有効期限とを格納する。
【0074】
これに対して、エレベータゲートウェイ3は、ステップS9において、ロボット管理テーブル25のレコードの中から上述のようなレコードを検出できなかった場合にはOTPを発行せず、続くステップS10において、そのロボット装置2に対してOTPを発行できない旨を通知する。
【0075】
他方、ロボット装置2は、ステップS10でエレベータゲートウェイ3からOTPを通知されると、これ以降、無線通信装置13(
図2)を介してネットワーク7経由でエレベータゲートウェイ3にアクセスするようになる。
【0076】
なお、本実施例ではステップS8で近距離無線通信に接続したロボット装置2からエレベータゲートウェイ3に対してOTPを発行要求したが、その他の実施の形態として、近距離無線通信を通じてエレベータゲートウェイ3が一定時間で変わるOTPを発信し続けることで(S9及びS10の間)、ロボット装置2はエレベータ前に移動して近距離無線通信に接続すると、OTPの発行を要求せずにOTPを受信するようにしてもよい。
【0077】
(1-3-2)エレベータ運転モード切替フェーズにおける処理の流れ
一方、
図10は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、上述のようにしてエレベータゲートウェイ3からのOTPを取得したロボット装置2が対象エレベータ装置5との連動を開始し、その対象エレベータ装置5の運転モードをロボット専用モードに切り替えるまでのフェーズ(以下、これをエレベータ運転モード切替フェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0078】
ロボット装置2は、上述のようにしてエレベータゲートウェイ3にログインした状態で、エレベータ状態取得APIを用いて、エレベータゲートウェイ3に対して、対象エレベータ装置5の稼働情報の提供を要求するエレベータ状態取得要求を送信する(S11)。
【0079】
なお、エレベータ状態取得APIは、他のAPIと異なり、ロボット装置2から任意のタイミングで他のAPIとは非同期に実行することができ、OTPによるエレベータとの連動を必要としない。エレベータ状態取得APIを用いたエレベータ状態取得要求では、
図9のステップS4でエレベータゲートウェイ3から通知されたアクセストークン、対象エレベータ装置5の設置場所ID及び対象エレベータ装置5の号機番号となどの対象エレベータ装置5を特定するための情報(以下、これを対象エレベータ装置特定情報と呼ぶ)をエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0080】
エレベータゲートウェイ3は、かかるエレベータ状態取得要求を受信すると、対象エレベータ装置5の稼働情報をエレベータ稼動情報テーブル28(
図7)から読み出してエレベータ状態取得要求の送信元のロボット装置に送信する(S12)。具体的に、エレベータゲートウェイ3は、まず、ロボット装置2から送信されてきた対象エレベータ装置5の設置場所ID及び号機番号に基づき、エレベータ管理テーブル26(
図5)を参照して、対象エレベータ装置を特定する。またエレベータゲートウェイは、特定した対象エレベータ装置5のエレベータIDを利用してエレベータ稼動情報テーブル28から対象エレベータ装置5の稼働情報を読み出し、読み出した稼動情報をかかるロボット装置2に送信する。
【0081】
また、この稼動情報を受信したロボット装置2は、エレベータ連動要求APIを用いて、対象エレベータ装置5と連動したい旨の要求(以下、これをエレベータ連動要求と呼ぶ)をエレベータゲートウェイ3に送信する(S13)。この際、ロボット装置2は、ステップS4で取得したアクセストークンと、ステップS10で取得したOTPと、ステップS11について上述した対象エレベータ装置特定情報とを、かかるエレベータ連動要求に含めてエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0082】
そしてエレベータゲートウェイ3は、このエレベータ連動要求を受信すると、そのエレベータ連動要求に含まれる対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定する。また、エレベータゲートウェイ3は、ログイン管理テーブル27(
図6)を参照し、エレベータ連動要求に含まれるOTPとその有効期限、及び最終連動時刻に基づいて、後述する再連動不可期間を経過しており、そのロボット装置2がエレベータ連動可能なロボット装置であるか否かを判定し、エレベータ連動が可能なロボット装置である場合、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29(
図8)のエレベータID及び連動するロボットIDに該当するレコードにエレベータ連動要求承認時刻を記録する。またエレベータゲートウェイ3は、この後、エレベータ稼動情報テーブル28を参照して、その対象エレベータ装置5が他のロボット装置2と連動中であるか否かを判定し、連動していない場合には、対象エレベータ装置5の運転モードをロボット専用モードに切り替えることを要求するエレベータモード切替要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S14)。
【0083】
かくしてエッジ端末6は、このエレベータモード切替要求を受信すると、対象エレベータ装置5の制御盤5A(
図1)に対して運転モードをロボット専用モードに切り替えるよう指示を与える。また対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、この指示に従って自エレベータ装置5の運転モードをロボット専用モードに切り替える(S15)。
【0084】
そしてエッジ端末6は、対象エレベータ装置5の運転モードがロボット専用モードに切り替えるよう指示を与えた後、指示を与えた旨をモード切替結果としてエレベータゲートウェイ3に通知する(S16)。なお、エッジ端末6は、故障やメンテナンス中などの理由により対象エレベータ装置5の運転モードをロボット専用モードに切り替えられない場合には、その旨のモード切替結果をエレベータゲートウェイ3に通知する。
【0085】
エレベータゲートウェイ3は、かかるモード切替結果を受信後、ステップS13のエレベータ連動要求に対する結果をその送信元のロボット装置2に送信する(S17)。またエレベータゲートウェイ3は、ステップ1の周期的な対象エレベータ装置5の情報取得により対象エレベータ装置5の運転モードが変わったことを確認すると、これと併せて、エレベータ稼動情報テーブル28に格納されている対象エレベータ装置5の稼働情報を更新する(S18)。具体的に、エレベータゲートウェイ3は、エレベータ稼動情報テーブル28における対象エレベータ装置5に対応するレコードのロボット連動状態欄28F(
図7)に格納された値を、ロボット装置2と連動中であることを意味する「連動中」に書き換える。またエレベータゲートウェイ3は、かかるレコードの運転モード欄28G(
図7)に格納された値を、その対象エレベータ装置5の運転モードがロボット専用モードであることを表す「ロボット専用」に書き換える。
【0086】
(1-3-3)乗車フェーズにおける処理の流れ
図11は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置2が、
図10について上述したエレベータ運転モード切替フェーズの終了後に、対象エレベータ装置5を制御して乗りかごを呼び出し、その乗りかごに乗車するまでのフェーズ(以下、これを乗車フェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0087】
ロボット装置2は、
図10について上述したエレベータ運転モード切替フェーズの終了後、エレベータ制御要求APIを用いて、そのロボット装置2が位置する階にまで対象エレベータ装置5の乗りかごを呼ぶべきことを要求するエレベータ制御要求(以下、エレベータかご呼び制御要求と呼ぶ)をエレベータゲートウェイ3に送信する(S19)。この際、そのロボット装置2は、自己のロボットIDと、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、上述の対象エレベータ特定情報とを、エレベータかご呼び制御要求に含めてエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0088】
このエレベータかご呼び制御要求を受信したエレベータゲートウェイ3は、まず、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29を参照し、そのエレベータかご呼び制御要求に含まれる対象エレベータ特定情報、ロボットID及びアクセストークンが有効なものであるか否かを判断し、有効であると判断された場合、対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定し、特定した対象エレベータ装置5の乗りかごを、エレベータかご呼び制御要求において指定された階まで移動させるべき旨のかご呼び要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S20)。
【0089】
そして、このかご呼び要求を受信したエッジ端末6は、そのかご呼び要求において指定された階(対象とするロボット装置2が位置する階)にまで乗りかごを移動すべき旨の指示を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに与える。かくして、対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、自エレベータ装置5の昇降機を制御するなどして乗りかごを指定された階に移動させる(S21)。
【0090】
またエッジ端末6は、対象エレベータ装置5の制御盤5Aに乗りかごを移動すべき旨の指示を与えると、指示を与えた旨をステップS20のかご呼び要求に対する結果(以下、これをかご呼び結果)としてエレベータゲートウェイ3に返信する(S22)。
【0091】
そして、このかご呼び結果を受信したエレベータゲートウェイ3は、かご呼び結果を受信した旨を、ステップS19のエレベータかご呼び制御要求の結果(以下、これをエレベータかご呼び制御要求結果と呼ぶ)としてそのエレベータかご呼び制御要求の送信元のロボット装置2に送信する(S23)。
【0092】
このエレベータかご呼び制御要求結果を受信したロボット装置2は、エレベータ状態取得APIを用いて、エレベータゲートウェイ3に対して、対象エレベータ装置5の稼働情報の提供を要求するエレベータ状態取得要求を送信する。そして、ロボット装置2は、このエレベータ状態取得要求の結果としてエレベータゲートウェイ3から送信されてきた対象エレベータ装置5の稼働情報に基づき対象エレベータ装置5の乗りかごが自ロボット装置2が位置する階に実際に到着し停止しているか否かを確認する(S24)。
【0093】
またロボット装置2は、かかるステップS24の結果として対象エレベータ装置5の乗りかごが自ロボット装置2が位置する階に停止していることを認識すると、ドア制御要求APIを用いて、エレベータゲートウェイ3に対して、対象エレベータ装置5のドアを開放すべきことを要求するドア制御要求(以下、これをドア開放制御要求と呼び)をエレベータゲートウェイ3に送信する(S25)。この際、かかるロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、対象エレベータ装置特定情報と、自己のロボットIDと、要求するドア状態(開放状態)とを、ドア開放制御要求に含ませてエレベータゲートウェイ3に送信する。なお、このドア開放制御要求はロボット装置2が乗りかごに乗車するまで継続する。
【0094】
エレベータゲートウェイ3は、このドア制御開放要求を受信すると、まず、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29を参照し、そのエレベータかご呼び制御要求に含まれる対象エレベータ特定情報、ロボットID、アクセストークンが有効なものであるか否かを判断し、有効であると判断された場合、ドア制御開放要求に含まれる対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定し、特定した対象エレベータ装置5のドアを開放すべきことを要求するドア開放要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S26)。
【0095】
そして、このドア開放要求を受信したエッジ端末6は、ドアを開放すべき旨の指示を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに与える。かくして、対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、自エレベータ装置5のドア開閉機構を制御するなどして対象エレベータ装置5のドア(乗りかご側のドア及びエレベータホール側のドアの双方。以下、同様。)を開放させる(S27)。
【0096】
またエッジ端末6は、ステップS27のドア開放を制御盤5Aに指示すると、その旨をステップS26のドア開放要求に対する結果(以下、これをドア開放結果)としてエレベータゲートウェイ3に返信する(S28)。
【0097】
そしてエレベータゲートウェイ3は、かかるドア開放結果を受信後、ドア開放結果を受信した旨をステップS25のドア開放制御要求に対する結果(以下、これをドア開放制御要求結果と呼ぶ)としてその送信元のロボット装置2に送信する(S29)。かくして、このドア開放制御要求結果を受信したロボット装置2は、この後、ステップS24と同様にしてエレベータゲートウェイ3から対象エレベータ装置5の稼動情報を取得し(S30)、取得した稼動情報に基づいて対象エレベータ装置5のドアが開放されていることを確認すると、対象エレベータ装置5の乗りかご内に移動する(S31)。
【0098】
(1-3-4)行先階指定及びドア閉鎖フェーズにおける処理の流れ
図12は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置2が、
図11について上述した乗車フェーズの終了後に、乗りかごの行先階を指定し、さらに対象エレベータ装置5のドアを閉鎖させるまでのフェーズ(以下、これを行先階指定及びドア閉鎖フェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0099】
ロボット装置2は、上述のようにして対象エレベータ装置5の乗りかごに乗車すると、まず、エレベータ制御要求APIを用いて、行先階を指定するエレベータ制御要求(以下、これをエレベータ行先階指定制御要求と呼ぶ)をエレベータゲートウェイ3に送信する(S32)。この際、そのロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、自己のロボットIDと、対象エレベータ装置特定情報及び対象エレベータ装置5の行先階などの情報
をエレベータ行先階指定制御要求に含めてエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0100】
このエレベータ行先階指定制御要求を受信したエレベータゲートウェイ3は、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29を参照し、そのエレベータかご呼び制御要求に含まれる対象エレベータ特定情報、ロボットID、アクセストークンが有効なものであるか否かを判断し、有効であると判断された場合、エレベータ行先階指定制御要求に含まれる対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定し、特定した対象エレベータ装置5の乗りかごの行先階を行先階に設定すべきことを要求する行先階設定要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S33)。
【0101】
そして、この行先階設定要求を受信したエッジ端末6は、その行先階設定要求において指定された行先階を乗りかごの行先階に設定すべき旨の指示を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに与える。かくして、対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、そのときエッジ端末6により指示された階を自エレベータ装置5の乗りかごの行先階に設定する(S34)。
【0102】
またエッジ端末6は、行き先階を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに通知すると、通知した旨をステップS33の行先階設定要求に対する結果(以下、これを行先階設定結果)としてエレベータゲートウェイ3に返信する(S35)。
【0103】
そして、この行先階設定結果を受信したエレベータゲートウェイ3は、行先階設定結果を受信した旨を、ステップS32のエレベータ行先階指定制御要求の結果(以下、これをエレベータ行先階指定制御要求結果と呼ぶ)としてそのエレベータ行先階指定制御要求の送信元のロボット装置2に送信する(S36)。
【0104】
このエレベータ行先階指定制御要求結果を受信したロボット装置2は、ドア制御要求APIを用いて、対象エレベータ装置5のドア開放要求を解除する旨のドア制御要求(以下、これをドア閉鎖制御要求と呼ぶ)をエレベータゲートウェイ3に送信する(S37)。この際、かかるロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、自己のロボットIDと、対象エレベータ装置特定情報と、要求するドア状態(閉鎖状態)とを、ドア閉鎖制御要求に含ませてエレベータゲートウェイ3に送信する。なお、ドア閉鎖制御要求はロボット装置2から通知されずとも、エレベータ装置5の制御盤5Aがエレベータ装置5に搭載のセンサでドアを閉めても安全と判断した場合、制御盤5Aによって自動的にドアが閉鎖される。
【0105】
このドア閉鎖制御要求を受信したエレベータゲートウェイ3は、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29を参照し、そのエレベータかご呼び制御要求に含まれる対象エレベータ特定情報、ロボットID、アクセストークンが有効なものであるか否かを判断し、有効であると判断された場合、ドア閉鎖制御要求に含まれる対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定し、特定した対象エレベータ装置5のドア開放要求を停止することを通知するドア制御要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S38)。
【0106】
そして、このドア閉鎖要求を受信したエッジ端末6は、ドアの開放継続を停止すべき旨の指示を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに与える。対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、自エレベータ装置5の各種センサによってドアを閉塞して問題なく安全であると判断した後にドア開閉機構を制御するなどして対象エレベータ装置5のドアを閉鎖させる(S39)。
【0107】
またエッジ端末6は、対象エレベータ装置5の制御盤5Aにドア閉鎖制御要求を通知すると、通知した旨をステップS38のドア閉鎖要求に対する結果(以下、これをドア閉鎖結果)としてエレベータゲートウェイ3に送信する(S40)。そして対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、この後、自エレベータ装置5の乗りかごをステップS34で設定した階に移動させるよう昇降機等を制御する(S42)。
【0108】
一方、かかるドア閉鎖結果を受信したエレベータゲートウェイ3は、ステップS37のドア閉鎖制御要求に対する結果(以下、これをドア閉鎖制御要求結果と呼ぶ)をその送信元のロボット装置2に送信する(S41)。
【0109】
(1-3-5)降車フェーズにおける処理の流れ
図13は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置2が、
図12について上述した行先階指定及びドア閉鎖フェーズの終了後に、対象エレベータ装置5の乗りかごから降車し、その後、その対象エレベータ装置5のドアを閉鎖させるまでのフェーズ(以下、これを降車フェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0110】
ロボット装置2は、上述のようにして対象エレベータ装置5の乗りかごに乗車すると、この後、
図10のステップS11と同様の手法により対象エレベータ装置5の稼働情報を一定間隔で取得する(S43)。
【0111】
そしてロボット装置2は、取得した稼動情報に基づいて対象エレベータ装置5の乗りかごが行先階に到着したことを認識すると、ドア制御要求APIを用いて、対象エレベータ装置5のドアの開放を要求するドア開放制御要求をエレベータゲートウェイ3に送信する(S44)。この際、かかるロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、自己のロボットIDと、対象エレベータ装置特定情報と、要求するドア状態(開放状態)とをドア開放制御要求に含ませてエレベータゲートウェイ3に送信する。なお、このドア開放制御要求はロボット装置2が乗りかごから降車するまで継続する。
【0112】
この結果、この後、
図11のステップS26~ステップS30と同様の処理がエレベータゲートウェイ3、エレベータシステム4のエッジ端末6及びロボット装置2間において実行される(S45~S49)。そしてロボット装置2は、ステップS49で取得した対象エレベータ装置5の稼動情報に基づいて当該対象エレベータ装置5のドアが開放されていることを確認すると、対象エレベータ装置5の乗りかごの外に移動(対象エレベータ装置5の乗りかごから降車)する(S50)。
【0113】
この後、ロボット装置2は、ドア制御要求APIを用いて、対象エレベータ装置5のドア開放要求を解除する旨のドア閉鎖制御要求をエレベータゲートウェイ3に送信する(S51)。この際、かかるロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、自己のロボットIDと、対象エレベータ装置特定情報と、要求するドア状態(閉鎖)とをドア閉鎖制御要求に含ませてエレベータゲートウェイ3に送信する。なお、ドア閉鎖制御要求はロボット装置2から通知されずとも、エレベータ装置5の制御盤5Aがエレベータ装置5に搭載のセンサでドアを閉めても安全と判断した場合、制御盤5Aによって自動的にドアが閉鎖される。
【0114】
この結果、この後、
図12のステップS38~ステップS40と同様の処理がエレベータゲートウェイ3、エレベータシステム4のエッジ端末6及びロボット装置2間において実行され(S52~S54)、これにより対象エレベータ装置5のドアが閉鎖されると共に、ドア閉鎖制御要求が対象エレベータ装置5に通知された旨のドア閉鎖制御要求結果がエレベータゲートウェイ3からロボット装置2に送信される(S55)。
【0115】
(1-3-6)連動停止フェーズにおける処理の流れ
図14は、エレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置2が、
図13について上述した降車フェーズの終了後に、対象エレベータ装置5との連動を停止するまでのフェーズ(以下、これを連動停止フェーズと呼ぶ)の流れを示す。
【0116】
ロボット装置2は、上述のようにして対象エレベータ装置5から降車してドア閉鎖要求を通知した後、エレベータ連動停止要求APIを用いて、対象エレベータ装置5との連動停止を要求する連動停止要求をエレベータゲートウェイ3に送信する(S56)。この際、かかるロボット装置2は、
図9のステップS9で取得したアクセストークンと、自己のロボットID、対象エレベータ装置特定情報とを連動停止要求に含ませてエレベータゲートウェイ3に送信する。
【0117】
エレベータゲートウェイ3は、かかる連動停止要求を受信すると、連動停止要求に含まれる対象エレベータ装置特定情報に基づいて対象エレベータ装置5を特定し、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29を参照し、そのエレベータかご呼び制御要求に含まれる対象エレベータ特定情報、ロボットID、アクセストークンが有効なものであるか否かを判断し、有効であると判断された場合、エレベータ稼動情報テーブル28(
図7)を参照して、特定した対象エレベータ装置5がそのロボット装置2と連動中であるか否かを判定する。そしてエレベータゲートウェイ3は、対象エレベータ装置5がそのロボット装置2と連動中である場合には、対象エレベータ装置5の運転モードを非ロボット専用モードに切り替えることを要求するエレベータモード切替要求をエレベータシステム4のエッジ端末6に送信する(S57)。
【0118】
かくしてエッジ端末6は、このエレベータモード切替要求を受信すると、対象エレベータ装置5の制御盤5Aに対して運転モードをロボット専用モードから非ロボット専用モードに切り替えるよう指示を与える。また対象エレベータ装置5の制御盤5Aは、この指示に従って自エレベータ装置5の運転モードを非ロボット専用モードに切り替える(S58)。
【0119】
そしてエッジ端末6は、対象エレベータ装置5の運転モードを非ロボット専用モードに切り替える旨の指示を対象エレベータ装置5の制御盤5Aに与えると、指示を与えた旨のモード切替結果をエレベータゲートウェイ3に通知する(S59)。
【0120】
エレベータゲートウェイ3は、かかるモード切替結果を受信すると、ステップS56のエレベータ連動停止要求に対する結果としてその送信元のロボット装置2に送信する(S60)。
【0121】
またエレベータゲートウェイ3は、これと併せて、エレベータ稼動情報テーブル28に格納されている対象エレベータ装置5の稼働情報を更新すると共に、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29(
図8)を更新する(S61)。
【0122】
具体的に、エレベータゲートウェイ3は、エレベータ稼動情報テーブル28における対象エレベータ装置5に対応するレコードの運転モード欄28Gに格納された値を、その対象エレベータ装置5の運転モードが非ロボット専用モードであることを表す「非ロボット専用」に書き換える。またエレベータゲートウェイ3は、かかるレコードのロボット連動状態欄28Fに格納されている値(「連動中」)を削除する。またエレベータゲートウェイ3は、エレベータ・ロボット連動管理テーブル29(
図8)におけるそのロボット装置2に対応するレコードを削除する。
【0123】
さらに本実施の形態の場合、ロボット装置2がエレベータ装置5との連動を停止した場合に、そのロボット装置2がエレベータゲートウェイ3からログアウトしたものとして取り扱う。そこでエレベータゲートウェイ3は、ログイン管理テーブル27(
図6)におけるそのロボット装置2に対応するレコードを、そのロボット装置がログアウトしたものとして更新する(S62)。具体的に、エレベータゲートウェイ3は、ログイン管理テーブル27におけるそのロボット装置2に対応するレコードのOTP欄27B(
図6)、及びOTP発行時刻欄27C(
図6)に格納されている情報をすべて削除し、最終ログイン時刻欄27E(
図6)と、最終連動時刻欄27G(
図6)を更新する。
【0124】
以上によりエレベータ・ロボット連動処理が終了する。
【0125】
(1-4)本エレベータ・ロボット連動システムにおける各種期間
図15は、本実施の形態のエレベータ・ロボット連動システム1における各種有効期間を示す。この
図15に示すように、本エレベータ・ロボット連動システム1では、OTP、ログイン状態及びアクセストークンと、エレベータ連動要求承認後にロボット装置2がエレベータ装置5を制御可能な期間と、エレベータ連動状態とにそれぞれ有効期間が設けられている。
【0126】
また本エレベータ・ロボット連動システム1では、ロボット装置2がエレベータ装置5との連動を停止してから再度そのエレベータ装置5に連動するまでの期間に対しても再度連動することができない期間(以下、これを再連動不可期間と呼ぶ)が設定されている。以下、これらの有効期間及び再連動不可期間について説明する。
【0127】
(1-4-1)アクセストークン有効期間
図15(A)は、アクセストークンの有効期間(以下、これをアクセストークン有効期間と呼ぶ)P1を示す。アクセストークン有効期間P1は、ロボット装置2がエレベータゲートウェイ3に長時間ログインした状態が維持されるのを防止することや、通信異常やロボット装置2の異常などにより対象エレベータ装置5の乗りかご内で制御不能となり対象エレベータ装置5が利用できなくなるのを防ぐことなどを目的として設けられたものである。アクセストークン有効期間P1が経過した場合、経過時点におけるロボット装置2及びエレベータ装置5の連動状態に応じて有効期間の延長又は連動状態の強制切断が行われる。
【0128】
例えば、ロボット装置2が対象エレベータ装置5の乗りかご内にいない状態でアクセストークン有効期間P1が経過した場合、そのアクセストークンは無効となり、そのロボット装置2のエレベータゲートウェイ3へのログインも無効となる。
【0129】
一方で、ロボット装置2が対象エレベータ装置5の乗りかご内にいる状態でアクセストークン有効期間P1が経過した場合には、エレベータゲートウェイ3はアクセストークン有効期間を延長する。これはアクセストークンが無効となると、そのロボット装置2が対象エレベータ装置5のドア制御を行えなくなり、乗りかご内に取り残される事態が発生することから、これを防止するためである。
【0130】
なお、アクセストークン有効期間P1の延長時間は、例えば5分間のように一定期間であってもよく、さらにはエレベータ装置5の利用状況や乗りかご内のロボット装置2の状況に応じて動的に切り替えるようにしてもよい。アクセストークン有効期間P1が経過した場合においても後述するエレベータ制御有効期限P4内であれば、そのロボット装置2のエレベータゲートウェイ3へのログイン状態は維持される。
【0131】
(1-4-2)OTP有効期間
図15(B)は、OTPの有効期間(以下、これをOTP有効期間と呼ぶ)P2を示す。OTP有効期間P2は、ロボット装置2からのOTP発行要求に応じてエレベータゲートウェイ3が発行したOTPを用いてそのロボット装置2が制御要求を所望するエレベータ装置5と連動可能な期間である。
【0132】
このOTP有効期間P2は、1分間のように一定期間としてもよいし、環境に応じてエレベータゲートウェイ3が動的に変更してもよい。なお、OTPは、OTP有効期間P2内であっても、そのOTPを用いてロボット装置2が対象エレベータ装置5と連動し終えた段階で無効化される。
【0133】
(1-4-3)エレベータ連動要求承認後かご呼びまでのタイマ
図15(C)は、エレベータ連動要求承認後にロボット装置2がエレベータ装置5のかごを呼び出す制御が可能な期間(以下、これをエレベータ連動要求承認後かご呼びまでのタイマと呼ぶ)P3を示す。エレベータ連動要求承認後かご呼びまでのタイマP3は、ロボット装置2がエレベータ装置5と連動した際、即座に対象のエレベータ装置5を制御することを促すことを目的として設定される。
【0134】
エレベータゲートウェイ3は、エレベータ連動要求の承認後、エレベータ連動要求承認後かご呼びまでのタイマP3内にロボット装置2からのエレベータ制御要求を受信しなかった場合には、そのロボット装置2と、対応するエレベータ装置5との連動状態を解除し、そのエレベータ装置5を開放する。
【0135】
(1-4-4)エレベータ制御有効期間
図15(D)は、エレベータと連動し制御可能な状態の有効期間(以下、これをエレベータ制御可能有効期間と呼ぶ)P4は、ロボット装置2及びエレベータ装置5の連動状態を維持可能な期間であり、通信異常やロボット装置2の異常などによりロボット装置2及びエレベータ装置5の連動状態が長時間維持されてしまうことを回避するために設定される。
【0136】
ロボット装置2及びエレベータ装置5の連動承認後、一定時間以内にその連動が停止されなかった場合(そのロボット装置2から連動停止要求が与えられなかった場合)に、エレベータゲートウェイ3は、かかるロボット装置2及びエレベータ装置5の連動状態を強制的に解除し、そのエレベータ装置5を開放する。
【0137】
(1-4-5)再連動不可期間
図15(E)は、再連動不可期間P5を示す。再連動不可期間P5は、ロボット装置2が連動停止要求を送信後、一定時間内に同じエレベータ装置5を対象とするエレベータ連動要求をエレベータゲートウェイ3に送信したとしても、エレベータゲートウェイ3がそのエレベータ連動要求を拒否する期間である。ただし、再連動不可期間P5内であっても、ロボット装置2は、エレベータゲートウェイ3へのログイン、エレベータゲートウェイ3からのOTPの取得、及び、エレベータゲートウェイ3からのエレベータ装置5の稼動情報の取得は可能である。
【0138】
この再連動不可期間P5は、ロボット装置2が繰り返し同じエレベータ装置5との連動を要求することにより、人や他のロボット装置2がそのエレベータ装置5を利用できなくなることを防止することを目的として設定される。再連動不可期間P5は、例えば1分間のように一定時間としてもよく、さらには再連動を要求されたエレベータ装置5や他のエレベータ装置5の利用状況、同一建屋内で稼働するロボット装置2の数等に応じて動的に変化させるようにしてもよい。
【0139】
エレベータ装置5の利用状況の一例として、エレベータ装置5の連続停止時間やエレベータシステム4に搭載されたEV利用状況確認センサ8で取得したエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数などが考えられる。エレベータ装置5の連続停止時間が短い場合やエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数が多い場合、エレベータゲートウェイ3は再連動不可期間P5を一定時間長くし、逆にエレベータ装置5の連続停止時間が長い場合やエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数が少ない場合、エレベータゲートウェイ3は再連動不可期間P5を一定期間短くするなどが考えられる。
【0140】
(1-5)エレベータ連動要求の優先処理
本エレベータ・ロボット連動システム1において、同一の建屋内にロボット装置2が複数配置される場合、ロボット装置2のクラスと、エレベータ装置5の利用状況とに応じて各ロボット装置2に優先度が予めそれぞれ設定される。
【0141】
ここでの「クラス」とは、上述のようにそのロボット装置2が提供するサービスの職域を意味し、「清掃」、「搬送」、「警備」、「案内」及び「消防」などがある。また、ここでのエレベータ装置5の「利用状況」とは、エレベータ装置5が配置された建屋の種類(オフィスビル、商業ビル又はマンションなど)と、昼夜の区分(日中又は夜間)との組合せであり、例えば、「オフィスビルの日中」、「オフィスビルの夜間」、「商業ビルの日中」、「商業ビルの夜間」、「マンションの日中」、「マンションの夜間」などがある。その他にも、エレベータシステム4に含まれるEV利用状況確認センサ8で取得した利用状況を用いて動的に変化させてもよい。
【0142】
そしてエレベータゲートウェイ3は、このようなロボット装置2のクラスごとのエレベータ装置5の利用状況に応じた優先度を
図16に示す優先度管理テーブル30に格納して管理している。
【0143】
実際上、優先度管理テーブル30は、
図16に示すように、それぞれ異なる利用状況に対応した複数のレコード(
図16における各行)を備えて構成される。そして各レコードは、それぞれロボット装置2の各クラスにそれぞれ対応させて複数のサービス欄30Aに区分されており、各サービス欄30Aにそれぞれ対応するサービスの優先度が格納されている。
【0144】
従って、
図16の例の場合、例えば、混雑度合いが通常の「オフィスビル」については、「清掃」ロボット、「搬送」ロボット、「警備」ロボット、「案内」ロボット及び「消防」ロボットの「日中」の優先度がそれぞれ「4」、「2」、「4」、「3」、「1」に設定されると共に、「夜間」の優先度がそれぞれ「3」、「4」、「2」、「2」、「1」に設定されており、日中は「清掃」ロボットや「警備」ロボットよりも「搬送」ロボットの優先度が高く、夜間は「搬送」ロボットよりも「清掃」ロボットや「警備」ロボットの優先度が高く設定されていることが示されている。
【0145】
また混雑時の「オフィスビル」については「清掃」ロボット、「搬送」ロボット、「警備」ロボット、「案内」ロボット及び「消防」ロボットの「日中」の優先度はそれぞれ「4」、「3」、「4」、「3」、「1」に設定されると共に、「夜間」の優先度はそれぞれ「4」、「4」、「4」、「3」、「1」に設定されており全般的にロボットの優先順位を下げて人の利用を優先させる優先順位とすることができる。
【0146】
このほかマンション用や商業ビル用の優先度管理テーブル30のテンプレートを用意して、実際に使用する建物の利用状況に応じた優先順位を指定するようにしてもよい。
【0147】
本実施の形態では「日中」、「出勤時」、「昼休み」、「退勤時」及び「夜間」で優先度を分けているが、特定の建物の利用状況に即したロボットの運用を行うためには時間帯をさらに細かく指定して設定できるようにしても良い。
【0148】
また特定のロボットが頻繁にエレベータを使用することにより人や他のロボットの利用を妨げないよう予め定められた回数、特定のロボットがエレベータを使用した場合は一時的に当該ロボットの優先順位を下げて当該ロボットのエレベータ利用頻度を下げる優先度更新部をエレベータゲートウェイに設けても良い。
【0149】
さらに、本実施の形態では混雑度を「通常」と「混雑時」に分けて優先順位を決めているが、さらに多くの混雑度を定義して、混雑度に応じた適切な優先度としてもよい。優先度更新部はセキュリティカメラ等センサから得たエレベータホールの混雑や制御盤から得られたエレベータの混雑、スケジュール情報から得られた休日情報、特定階で実施される催し物スケジュール等イベント情報を受け付けてイベントの発生したフロアを特定したロボットの優先度変更をリアルタイムに行うようにしてもよい。
【0150】
そして本実施の形態の場合、エレベータゲートウェイ3は、同一の建屋内にロボット装置2が複数配置される場合、あるロボット装置2からエレベータ連動要求を受け付けてからエレベータ装置5とロボット装置2の連動が開始するより前の一定の時間範囲内で別のロボット装置2からもエレベータ連動要求が与えられた場合、この優先度管理テーブル30を参照して、最も優先度の高いロボット装置2からのエレベータ連動要求を優先して処理するようになされている。
【0151】
これは、ロボット装置2に優先度が設定されていない場合、エレベータゲートウェイ3は、常にエレベータ連動要求の受信順にロボット装置2及びエレベータ装置5の連動を承認することとなる。ところが、このような仕様では、連動しているロボット装置2が提供するサービスの内容や、連動しているエレベータ装置5の利用状況によっては、エレベータ装置5を利用したい人や他のロボット装置2が提供するサービスを期待する人の満足度を高めることができないことがあることから、これを回避するためである。以下、このようなエレベータゲートウェイ3の機能について、より具体的に説明する。
【0152】
図10について上述したように、エレベータゲートウェイ3は、ロボット装置2からのエレベータ連動要求を受信した場合(ステップS13)、エレベータシステム4(
図1)のエッジ端末6(
図1)に対して対象エレベータ装置5の運転モードの切り替えを要求し(ステップS14)、この後、エッジ端末6から対象エレベータ装置5の運転モードがロボット専用モードに切り替えられた旨のモード切替結果が与えられると(ステップS16)、エレベータ連動要求の結果をその送信元のロボット装置2に通知する(ステップS17)。
【0153】
この間、他のロボット装置2は、そのエレベータ装置(上述の対象エレベータ装置)5の状態をエレベータゲートウェイ3から取得することができる。このとき、かかる他のロボット装置2がエレベータゲートウェイ3から取得するそのエレベータ装置5のロボット装置2との連携状態を表すステータスは、連動していないことを示す「空欄」、「他のロボット装置との連動運転中」、「(エレベータ連動要求後)連動運転待機中」、「(エレベータ制御要求後)連動中」及び「(再連動不可期間の場合)連動一時停止中」のいずれかである。
【0154】
ここで、「(エレベータ連動要求後)連動運転待機中」とは、あるロボット装置2がエレベータゲートウェイ3にあるエレベータ装置5との連動を要求するエレベータ連動要求を送信後、そのロボット装置2がそのエレベータ装置5と未だ連動していない状態を表す。そして本実施の形態の場合、ロボット装置2は、エレベータゲートウェイ3から取得した所望するエレベータ装置5の状態が「(エレベータ連動要求後)連動運転待機中」の場合、エレベータゲートウェイ3に対してそのエレベータ装置5との連動を要求するエレベータ連動要求を送信できるものとしている。
【0155】
そしてエレベータゲートウェイ3は、あるロボット装置2からあるエレベータ装置5との連動を要求するエレベータ連動要求を受信後、エレベータシステム4のエッジ端末6からのモード切替結果を受信するまでの間に、そのロボット装置2よりも優先度が高いロボット装置2からのそのエレベータ装置5を対象とするエレベータ連動要求が与えられた場合、優先度が高いロボット装置2からのエレベータ連動要求を優先し、エレベータシステム4のエッジ端末6から送信されてきた運転モード切替結果を優先度の高いロボット装置2に送信する。
【0156】
このようにすることにより、優先度の高いロボット装置2は、先にエレベータ連動要求をエレベータゲートウェイ3に送信していた優先度の低いロボット装置2よりも先に、対象となるエレベータ装置5に対してエレベータ制御要求を送信することができ、そのエレベータ装置5と連動することができるようになる。
【0157】
(1-6)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のエレベータ・ロボット連動システム1では、エレベータゲートウェイ3がロボット装置2から近距離無線通信を利用してOTP発行要求が与えられたときに、これに応じてそのロボット装置2に近距離無線通信を利用してOTPを送信し、このOTPを利用してロボット装置2がネットワーク7経由で制御を所望するエレベータと連動する。
【0158】
従って、本エレベータ・ロボット連動システム1では、ロボット装置2がエレベータ装置5に物理的に近接した状態であるときにのみ、そのロボット装置2がOTPを取得し、取得したOTPを利用してそのエレベータ装置5と連動状態となり制御することができるようになるため、遠隔地にいる悪意者からの不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置2によるエレベータ装置5への誤操作を防止することができる。これにより本実施の形態によれば、遠隔地にいる悪意者の不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置2の誤操作に起因する不測の事態の発生を防止でき、信頼性の高いエレベータ・ロボット連動システム1を構築することができる。また、このように遠隔地にいるロボット装置2によるエレベータ装置5の誤操作を防止することができるため、人が利用するエレベータ装置5をロボット装置2が利用する際の人の利用への影響を軽減することもできる。
【0159】
さらに、本エレベータ・ロボット連動システム1では、ロボット装置2の各クラスに対して優先順位が設定され、優先順位の高いクラスのロボット装置2のログインが優先されるため、時間帯や状況に応じて適切なクラスのロボット装置2が優先的にエレベータ装置5を利用できるようにすることができる。よって、その時間帯や状況に対して最適なクラスのロボット装置2によるサービスを優先することができる。
【0160】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態として、第1の実施形態で示した
図16における優先度管理テーブル30に基づいて、エレベータゲートウェイ3は
図15の再連動不可期間P5を変更するようにしてもよい。
【0161】
例えば、優先度管理テーブル30において設定されている優先度に反比例するように再連動不可期間P5を設定する。優先度管理テーブル30において優先度が「1」と設定される条件において再連動不可期間P5が1分の場合、優先度「4」と設定されている条件では再連動不可期間P5が優先度「1」の条件の1/4、つまり15秒となるように設定される。
【0162】
また、それ以外にも再連動不可期間P5は再連動を要求されたエレベータ装置5や他のエレベータ装置5の利用状況、同一建屋内で稼働するロボット装置2の数等に応じて動的に変化させるようにしてもよい。エレベータ装置5の利用状況の一例として、エレベータ装置5の連続停止時間やエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数などが考えられる。エレベータ装置5の連続停止時間が短い場合やエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数が多い場合、エレベータゲートウェイ3は再連動不可期間P5を一定時間長くし、逆にエレベータ装置5の連続停止時間が長い場合やエレベータ装置5と接するエレベータホール内の滞留人数が少ない場合、エレベータゲートウェイ3は再連動不可期間P5を一定期間短くするなどが考えられる。なお、エレベータ装置5の利用状況を把握する手段として、EV利用状況確認センサ8として防犯カメラなどを用いてもよい。防犯カメラの映像を、同じエレベータシステム4に設置されたエッジ端末6が映像解析することによりエレベータホール内の滞留人数を把握することなどが考えられる。
【0163】
(3)第3の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す
図17は、第3の実施の形態によるエレベータ・ロボット連動システム40を示す。このエレベータ・ロボット連動システム40は、ロボット装置41、エレベータゲートウェイ42、近接検出器43及びエレベータシステム4を備えて構成され、これらがネットワーク7を介して通信自在に接続されている。
【0164】
ロボット装置41は、
図2について上述した近距離無線通信装置12を保有しない点と、これに伴って異なる手法でエレベータゲートウェイ42にログインする点とを除いて第1の実施の形態若しくは第2の実施の形態のロボット装置2と同様に構成されている。
【0165】
エレベータゲートウェイ42は、
図3について上述した近距離無線通信装置22を保有しない点と、これに伴って異なる手法でロボット装置41にOTPを通知する点とを除いて第1の実施の形態若しくは第2の実施の形態のエレベータゲートウェイ3と同様に構成されている。
【0166】
近接検出器43は、エレベータ装置5に近接してきたロボット装置41を検出する検出器であり、各エレベータ装置5にそれぞれ対応させて設置され又はエレベータホールごとにそれぞれ設置される。近接検出器43は、例えば、カメラによる撮影、Bluetoothを使ったビーコン、Wi-Fi測位、RFID(Radio Frequency Identification)タグによる測位、音波測位、レーダ測位、UWB(Ultra Wide Band)測位、又は、これらを組み合わせた測位方法により、対応するエレベータ装置5(設置先のエレベータホールに設置されたエレベータ装置5を含む)へのロボット装置41の近接を検出する。ただし、近接検出器43がこれら以外の方法によりエレベータ装置5へのロボット装置41の近接を検出するようにしてもよい。
【0167】
図18は、本実施の形態のエレベータ・ロボット連動システム40において実行されるエレベータ・ロボット連動処理のうち、ロボット装置41が連動を希望するエレベータ装置5に近接してエレベータゲートウェイ42がOTP発行するまでのOTP発行フェーズの流れを示す。
【0168】
なお、この
図18には図示していないが、エレベータゲートウェイ42は、ロボット装置41がAPIを利用して送信してくる各種要求に対する対応とは非同期に、周期的にエレベータシステム4のエッジ端末6から各エレベータ装置5の稼働情報を取得し、取得したこれらの稼働情報をエレベータ稼動情報テーブル28(
図7)に格納して管理する(
図9のステップS1の説明を参照)点は第1の実施の形態若しくは第2の実施の形態と同様である。
【0169】
本実施のエレベータ・ロボット連動システム40では、まず、ロボット装置41はネットワーク7を介してエレベータゲートウェイ42にログイン要求APIを利用してログイン要求を送信する(S70)。この際、ロボット装置41は、自己のロボットID、パスワード及びクラスなどの各情報をかかるログイン要求に含めてネットワーク7経由でエレベータゲートウェイ42に送信する。なお、ログイン要求は任意の場所から送信することができ、ロボット装置41が対象建屋内にいなくても送信可能である。これはエレベータの状態取得だけはロボット装置41が対象エレベータ装置5に近接していなくても任意の場所で行えるようにするためである。
【0170】
以降、第1の実施の形態もしくは第2の実施の形態と同様にエレベータゲートウェイ42はロボット装置41のログイン認証(S71)、ロボット装置41へのアクセストークンの通知(S72)、アクセス状態の更新(S73)を行う。
【0171】
続いて、他の階に移動しようとするロボット装置41が、自己位置推定センサ14(
図2参照)の測位結果と、メモリ16(
図2)に格納されている自ロボット装置41が配置された建屋内の各階の地図情報とに基づいて、階移動に利用としようとするエレベータ装置5の前にまで移動する(S74)。
【0172】
このとき近接検出器43は、対応するエレベータ装置5へのかかるロボット装置41の近接を検出すると(S75)、ロボット装置41の近接を検出した旨の通知(以下、これを近接検出通知と呼ぶ)を、ネットワーク7(
図17)を介してエレベータゲートウェイ42に送信する(S76)。そして、エレベータゲートウェイ42は、近接検出器43から上述の近接検出通知が与えられると、ロボット装置41が近接していることを表す近接ステータスフラグを内部に立てる(S77)。
【0173】
なお、この後、そのロボット装置41が後述のようにOTP発行要求をエレベータゲートウェイ42に送信することなくそのエレベータ装置5から離れていった場合には、近接検出器43は、エレベータゲートウェイ42に対してロボット装置41が対応するエレベータ装置5に近接していない旨の通知を送信する。そして、この場合、エレベータゲートウェイ42は、近接ステータスフラグを下げる。
【0174】
また、かかるロボット装置41は、所望するエレベータ装置5に所定距離まで近接すると、OTP要求APIを用いて、無線通信装置13(
図2参照)を介してネットワーク7経由でOTP発行要求をエレベータゲートウェイ42に送信する(S78)。この際、ロボット装置41は、予め設定されて制御装置10(
図2参照)のメモリ16(
図2参照)に格納されている自己のロボットID及び所定のパスワードをかかるOTP発行要求に含めてエレベータゲートウェイ42に送信する。
【0175】
このOTP発行要求を受信したエレベータゲートウェイ42は、近接ステータスフラグを参照し、近接ステータスフラグが立っていない場合には、OTPの発行を拒否し、その旨をそのロボット装置41に通知する。
【0176】
これに対して、エレベータゲートウェイ42は、かかる近接ステータスフラグが立っている場合には、ロボット管理テーブル25(
図4)の各レコードの中から、OTP発行要求に含まれるロボットID及びパスワードがそれぞれロボットID欄25Aやパスワード欄25Dに格納されているレコードを検索する。そしてエレベータゲートウェイ42は、そのようなレコードを検出できた場合には、そのロボット装置41が登録済みのロボット装置であると判断してOTPを発行し(S79)、発行したOTPをネットワークインタフェース23(
図3参照)を介してネットワーク7経由でそのロボット装置41に通知する(S80)。
【0177】
かくしてロボット装置41は、この後、このOTPを用いて
図10のステップS13~ステップS18と同様にして制御を所望するエレベータ装置5と連動要求をエレベータゲートウェイ42に取得したOTPと共に通知し、エレベータゲートウェイ42はこのエレベータ連動要求を受信すると、
図10のステップS14と同様にして対象エレベータ装置5と連動して問題なければ連動要求の送信元であるロボット装置41と対象エレベータ装置5を連動状態とする。
【0178】
なお、この後、そのロボット装置41、エレベータゲートウェイ42及びエレベータシステム4間で行われる処理は、
図10~
図14について上述した流れと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0179】
以上のように本実施の形態のエレベータ・ロボット連動システム40では、近接検出器43がロボット装置41のエレベータ装置5への近接を検出している場合にのみ、ロボット装置41からのOTP発行要求に応じてエレベータゲートウェイ42がOTPをそのロボット装置41に発行する。
【0180】
従って、本エレベータ・ロボット連動システム40では、ロボット装置2がエレベータ装置5に物理的に近接した状態であるときにのみ、そのロボット装置2がOTPを取得し、取得したOTPを利用してエレベータ装置5と連動し制御することができるため、遠隔地にいる悪意者からの不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置2によるエレベータ装置5への誤操作を防止することができる。これにより本実施の形態においても、第1の実施の形態若しくは第2の実施の形態と同様に、遠隔地にいる悪意者の不正アクセスや、遠隔地にいるロボット装置の誤操作に起因する不測の事態の発生を防止でき、信頼性の高いエレベータ・ロボット連動システム40を構築することができる。
【0181】
(4)他の実施の形態
なお上述の第1及び第3の実施の形態においては、ロボット装置の優先度を
図16について上述したように設定する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の設定を適用することができる。例えば、乗りかごに、人とロボット装置とが同乗可能か否かや、複数のロボット装置が同乗可能か否かなどによって優先度を設定するようにしてもよい。
【0182】
例えば、提供するサービス内容が同じ「搬送」であっても、人や他のロボット装置との同乗が不可のロボット装置と、人及び他のロボット装置との同乗が可能なロボット装置とが混在する場合には、人や他のロボット装置との同乗が可能なロボット装置の優先度を同乗が不可のロボット装置よりも高くするようにしてもよい。このようにすることによりロボット装置による運送効率を向上させることができる。
【0183】
また、例えばオフィスビルにおいて警備室にいる警備員が不審者を発見し、警備ロボット装置を至急現場に向かわせたい場合では、警備員が警備ロボット装置の優先度を高く設定することにより他のロボット装置よりも優先的にエレベータ装置との連動を行わせることができる。同様に、商業ビルにおいて、外部の画像解析システムが人流の滞りを防犯カメラなどにより検出した場合に、滞留した人たちに対して移動を促したり、整列を促す目的で警備ロボット装置をいち早く現場に派遣するため、外部システムが自動的に警備ロボット装置の優先度を一時的に高くするようにしてもよい。
【0184】
また上述の第1及び第3の実施の形態においては、ロボット装置2のクラスと、エレベータ装置5の利用状況とに応じて予めロボット装置2に優先度が設定され、エレベータゲートウェイ3が、より優先度の高いロボット装置2からエレベータ連動要求を優先するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば火災などの災害発生時には、「清掃」や「搬送」などの一般サービスを提供するロボット装置2からのエレベータ連動要求を受け付けず、「消防」ロボット装置2のみエレベータ連動要求を受け付けるようにしてもよい。これにより、災害発生時には、ロボット装置2の優先度とは全く関係なく、「消防」ロボット装置2のみがエレベータ装置5を利用することができるようにすることができる。
【0185】
さらに上述の第1及び第3の実施の形態においては、優先度やクラスに関わりなく
図15について上述した各種期間(各種有効期間や再連動不可期間)が一律である場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば日中の「案内」ロボットの再連動不可期間を長くする一方で、夜間「案内」ロボットの再連動不可期間を短くするなど、優先度やクラスによってこれらの各種期間の一部又は全部を変えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明は、ロボット装置がエレベータ装置と連動してエレベータ装置を制御する種々の構成のエレベータ・ロボット連動システムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0187】
1,40……エレベータ・ロボット連動(制御)システム、2,41……ロボット装置、3,42……エレベータゲートウェイ、4……エレベータシステム、5……エレベータ装置、5A……制御盤、6……エッジ端末、7……ネットワーク、8……EV利用状況確認センサ、10……制御装置、12,22……近距離無線通信装置、13……無線通信装置、14……GPS受信機、15,20……演算装置、16……メモリ、23……ネットワークインタフェース、24……エレベータ・ロボット連動(制御)プログラム、25……ロボット管理テーブル、26……エレベータ管理テーブル、27……ログイン管理テーブル、28……エレベータ稼動情報テーブル、29……エレベータ・ロボット連動管理テーブル、30……優先度管理テーブル、43……近接検出器。